説明

拡散強調磁気共鳴データの生成方法、磁気共鳴システムおよびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体

【課題】拡散強調磁気共鳴データの位相誤差を補正する。
【解決手段】マルチショット拡散強調パルスシーケンスで磁気共鳴データ収集ユニットを操作して、位相誤差を示す拡散強調磁気共鳴データ及びナビゲータデータが収集され、マルチショット拡散強調パルスシーケンスにおける各ショット毎に、k空間中心の固定3Dブロックにナビゲータデータが入力され、固定3Dブロックとは少なくとも1つの空間方向が異なるk空間のオフセット3Dブロックに拡散強調磁気共鳴データが入力されることによって、k空間中心を有するk空間の点をそれぞれ表わす3D位置で電子メモリに拡散強調磁気共鳴データ及びナビゲータデータが入力され、k空間に入力されたナビゲータデータを用いてk空間に入力された拡散強調磁気共鳴データの位相誤差を補正し、位相補正された拡散強調磁気共鳴データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡散強調磁気共鳴画像法に関し、とりわけ、拡散強調磁気共鳴データの位相誤差(フェーズエラー)を補正する方法及び磁気共鳴装置、さらにはコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
脳のマルチショット拡散強調画像法(DWI)は、拡散エンコーディング勾配において、脳に対するCSF脈動及び心臓に関連した拍動の影響によって生じる空間依存性非線形位相誤差に影響されやすい。図1の位相画像には、典型的なショットS1、S2、S3、S4、S5に関して例示のように、これらの位相誤差が1つのショットから次のショットまでの間に実質的にどれほど変化するかが示されている。このため、補正を施さなければ、最終画像に深刻なアーティファクトを生じることになる。
【0003】
各画像平面が個別のスライス選択高周波(RF)パルスによって励起される2D収集の場合、これらの2D非線形位相誤差の補正を可能にするいくつかの技法が示されている。これらの方法では、励起されたスライスの平面内における二次元の空間位相変化をマッピングする「2Dナビゲータ」を利用し、この情報を用いて、関連する画像化データを補正する。これらの2D法は、読み取り方向に沿う線形位相変化を補正する1D技法であった、ナビゲータ補正の元の概念を拡張したものである。
【0004】
DWIのいくつかの用途では、拡散エンコーディング3D画像収集を実施可能であることが有利である。これによって、小さな病巣の可視化を改善し、SPACEまたはMPRAGEシーケンスタイプで収集された3D解剖学的データセットとの比較を容易にする、等方性分解能を備えたデータセットの収集が実現可能になる。これらの3Dデータセットによって、任意の配向による2Dスライスのボリュームレンダリングまたは再構成といった対話式及び自動的後処理手順が可能になる。3D拡散強調データは、拡散テンソル画像法(DTI)におけるトラクタグラフィ研究にも役立つであろう。
【0005】
しかしながら、3Dデータ収集を実施する場合、各ショット毎に全画像化ボリュームが励起され、2Dの場合のように単一画像化スライスだけが励起されるのではない。これは、この場合、三次元の全てにおける空間位相変化を補正しなければならないことを意味するが、2Dマルチショット画像法で用いられる既存の収集及びナビゲータ補正方式を利用して行うのは不可能である。従って、本レポートの主題は、真の3D位相補正の実施に適した画像化及びナビゲータデータに関する新規の3D収集方式である。
【0006】
3D DWIを実施するためのいくつかのシーケンスが提案されている。
【0007】
手法の1つは、先行技術文献(非特許文献1参照)に記載のように3D MPRAGEシーケンスにおいて各低フリップ角励起列の前に拡散準備モジュールを追加することである。このシーケンスではナビゲータ位相補正が施されないので、1つのエコー列から次のエコー列までの間に位相変化に影響を受けやすい。この方法は、麻酔下の動物試験でしか利用されなかったようである。
【0008】
人体研究で用いられたもう1つの方法は、制限されたボリュームからのシングルショット3D収集である(非特許文献2参照)。このシーケンスでは、各ボリューム収集毎に1回の拡散準備を利用して、ショット間位相変化に問題が生じないようにする。選択されたボリュームにおける信号は、一連の小さいフリップ角による誘導エコー手法を利用して、誘導エコー列を生じさせ、そのそれぞれをEPI読み取りでサンプリングして、二次元(平面内)エンコーディングすることにより空間的にエンコーディングされる。第3の次元における空間エンコーディングは、各個別誘導エコー信号毎に異なるスライス方向の位相エンコーディング勾配を適用して行われる。シングルショット読み取りに関連した歪みやぼけの問題を回避するため、このシーケンスの適用は、関心のある小ボリュームに制限される。誘導エコー収集と低フリップ角検出パルスの組合せも、信号対雑音比(SNR)が比較的低くなる可能性が高い。
【0009】
3D DWIにおけるナビゲータ補正のための手法の1つが、TURBINE法で提案されている(非特許文献3参照)。この技法では、TRの短い低フリップ角パルス列における各RF励起パルス後に、単極拡散エンコーディング勾配を適用すると生じる拡散強調定常自由歳差信号を利用する。各RFパルスによって、全測定ボリュームからの磁化が励起され、EPI読み取りを利用して、信号が二次元で空間的にエンコードされる。三次元で空間エンコーディングするために、EPI空間エンコーディングの面が1つの励起から次の励起までの間にその中心軸の1つのまわりで回転させられる。各EPI読み取り毎に、k空間の中心を通る面がサンプリングされるので、2D位相補正データが画像化データから直接得られ、個別のナビゲータ信号が不要になる。しかしながら、EPIエンコーディングの面に対して垂直な位相変化に関する情報はない。これは、測定中にECG信号を収集し、異なるRF励起によるデータであるが、心周期の同様のポイントで収集されたデータと組み合わせることによって対処される。こうして、心周期のある特定のポイントに関するマルチショット3Dナビゲータ信号が生成される。さらに、脈動効果が最も顕著な早期の収縮期中に収集されたデータは、画像再構成中に拒絶され、利用されない。
【0010】
2Dデータを利用して、3D拡散強調収集における位相誤差を補正するという着想については、ターボスピンエコー(TSE)シーケンスに関連した説明もなされている(非特許文献4参照)。
【0011】
2Dナビゲータで補正される読み取りセグメント化EPI(rs−EPI)技法については、先行技術文献に記載があり(特許文献1参照)、以下において新規の方法について述べる前に次のように簡単に概説することにする。
【0012】
図2に示すように、各ショットで、kx方向の制限された範囲およびky方向の全範囲に関するEPI読み取りを利用して、2つのスピンエコーがサンプリングされる。イメージングエコーのため、読み取り方向に沿って可変デフェーズ勾配GRを適用し、kxに沿うk空間オフセットを生じさせて、画像に必要なkx点の部分集合に関するk空間の「セグメント」が収集されるようにする。ナビゲータエコーの場合、固定デフェーズ勾配GRが適用されるので、この場合の読み取りセグメントは必ずk空間の中心に位置する。画像再構成中、ナビゲータデータを用いて、イメージングエコーによってサンプリングされた読み取りセグメントの画像領域位相補正が実施される。厳密には、画像化収集及びナビゲータ収集の両方とも、k空間の連続領域をサンプリングするので、kxおよびkyの両方向でナイキストサンプリング条件が満たされる。この結果、エイリアス信号が原因となる混乱を生じることなく、ナビゲータ位相補正を適用することが可能になる。
【0013】
x方向の範囲を縮小すると、EPI読み取りにおけるエコー間の間隔をシングルショットEPIの場合より大幅に短くすることが可能になり、その結果、影響されやすさによるアーティファクトが減少する。EPIエコー列長を相応して短縮すると、T2*減衰によるぼけが低減し、シングルショットEPIでは不可能な高空間分解能が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第7,205,763号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Numano T、Homma K、Hirose T、「Diffusion−weighted three−dimensional MP−RAGE MR imaging」、Magn Reson Imaging、2005年4月、第23巻、第3号、p.463−8
【非特許文献2】Jeong E−K、Kim S−E、Kholmovski EG、Parker DL、「High resolution DTI of a localized volume using 3D single−shot diffusion−weighted stimulated echo−planar imaging(3D ssDWSTEPI)」、Magn Reson Med、2006年、第56巻、p.1173−1181
【非特許文献3】McNab JA、Gallichan D、Miller KL、「3D steady−state diffusion−weighted imaging with trajectory using radially batched internal navigator echoes(TURBINE)」、Magn Reson Med、2010年1月、第63巻、第1号、p.235−42.0
【非特許文献4】von Mengershausen M、Norris DG、Driesel W、「3D diffusion tensor imaging with 2D navigated turbo spin echo」、MAGMA、2005年、第18巻、第4号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、拡散強調磁気共鳴データの位相誤差を補正する拡散強調磁気共鳴データの生成方法及び磁気共鳴装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
拡散強調磁気共鳴データの生成方法に関する課題は、本発明によれば、位相補正した拡散強調磁気共鳴データを生成する方法であって、
マルチショット拡散強調パルスシーケンスで磁気共鳴データ収集ユニットを操作して、位相誤差を示す拡散強調磁気共鳴データ、及び、ナビゲータデータが収集されるステップと、
前記マルチショット拡散強調パルスシーケンスにおける各ショット毎に、k空間中心の固定3Dブロックにナビゲータデータが入力され、前記固定3Dブロックとは少なくとも1つの空間方向が異なるk空間のオフセット3Dブロックに前記拡散強調磁気共鳴データが入力されることによって、前記k空間中心を有するk空間の点をそれぞれ表わす3D位置で電子メモリに前記拡散強調磁気共鳴データ及び前記ナビゲータデータが入力され、前記固定3Dブロックと前記オフセット3Dブロックのそれぞれが、k空間全体の部分集合であり、さらに前記k空間全体が前記拡散強調磁気共鳴データで充填されるまで、ショット間における前記オフセット3Dブロックの前記オフセットが変更されるステップと、
前記メモリにアクセスするコンピュータ化プロセッサにおいて、k空間に入力された前記ナビゲータデータを用いて、k空間に入力された前記拡散強調磁気共鳴データの前記位相誤差を補正し、それによって位相補正された拡散強調磁気共鳴データを生成し、前記位相補正された拡散強調磁気共鳴データを電子データファイルとしてさらなる処理に利用可能にするステップとが含まれることによって解決される(請求項1)。
【0018】
拡散強調磁気共鳴データの生成方法に関する本発明の実施態様は、次の通りである。
・磁気共鳴データ収集ユニットを操作して、核スピンの励起と拡散準備とデータ読み取りとを含むシーケンスで前記拡散強調磁気共鳴データ及び前記ナビゲーションデータが収集されるステップが含まれる(請求項2)。
・核スピンの励起に、スライス選択90°RFパルスの放射が含まれる(請求項3)。
【0019】
磁気共鳴システムに関する課題は、本発明によれば、位相補正された拡散強調磁気共鳴データを生成するための磁気共鳴システムであって、
磁気共鳴データ収集ユニットと、
マルチショット拡散強調パルスシーケンスで磁気共鳴データ収集ユニットを操作して、位相誤差を示す拡散強調磁気共鳴データ、及び、ナビゲータデータを収集するコンピュータ化制御ユニットと、
前記制御ユニットによって、前記マルチショット拡散強調パルスシーケンスにおける各ショット毎に、k空間中心の固定3Dブロックにナビゲータデータが入力され、前記固定3Dブロックとは少なくとも1つの空間方向が異なるk空間のオフセット3Dブロックに前記拡散強調磁気共鳴データが入力されることによって、前記k空間中心を有するk空間の点をそれぞれ表わす3D位置に前記拡散強調磁気共鳴データ及び前記ナビゲータデータが入力され、前記固定3Dブロックおよび前記オフセット3Dブロックのそれぞれがk空間全体の部分集合であり、このk空間全体が前記拡散強調磁気共鳴データで充填されるまで、ショット間における前記オフセット3Dブロックの前記オフセットが変更される電子メモリと、
前記メモリにアクセスし、k空間に入力された前記ナビゲータデータを用いて、k空間に入力された前記拡散強調磁気共鳴データの前記位相誤差を補正し、それによって位相補正された拡散強調磁気共鳴データを生成し、前記位相補正された拡散強調磁気共鳴データを電子データファイルとしてさらなる処理に利用可能にするコンピュータ化プロセッサとを備えることによって解決される(請求項4)。
【0020】
本発明によれば、磁気共鳴システムのコンピュータ化制御及び処理システム内に格納され、プログラミング命令でエンコードされる非一時的コンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、
前記磁気共鳴システムに磁気共鳴データ収集ユニットとメモリとが含まれ、
前記プログラミング命令によって、前記コンピュータ化制御および処理システムが、
マルチショット拡散強調パルスシーケンスで前記磁気共鳴データ収集ユニットを操作して、位相誤差を示す拡散強調磁気共鳴データ、及び、ナビゲータデータを収集し、
前記マルチショット拡散強調パルスシーケンスにおける各ショット毎に、k空間中心の固定3Dブロックにナビゲータデータを入力し、前記固定3Dブロックとは少なくとも1つの空間方向が異なるk空間のオフセット3Dブロックに前記拡散強調磁気共鳴データを入力することによって、前記k空間中心を有するk空間の点をそれぞれ表わす3D位置で電子メモリに前記拡散強調磁気共鳴データ及び前記ナビゲータデータを入力し、前記固定3Dブロックおよび前記オフセット3Dブロックのそれぞれがk空間全体の部分集合であり、このk空間全体が前記拡散強調磁気共鳴データで充填されるまで、ショット間における前記オフセット3Dブロックの前記オフセットを変更し、さらに、
k空間に入力された前記ナビゲータデータを用いて、k空間に入力された前記拡散強調磁気共鳴データの前記位相誤差を補正して、位相補正された拡散強調磁気共鳴データを生成し、前記位相補正された拡散強調磁気共鳴データを電子データファイルとしてさらなる処理に利用可能にするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体が提案される(請求項5)。
【0021】
本発明による方法によれば、各ショット毎に対応する画像化データの空間的に変化する位相誤差の補正に利用することが可能な真の3Dナビゲータデータを収集する方法が提供される。これを可能にするために、必要とされるk空間の全範囲の部分集合を形成する3次元(3D)k空間におけるk空間点の連続集合のサンプリングを行う(各ショット毎に)「モザイク」サンプリング方式が用いられる。ナビゲータデータは、k空間の中心の固定領域から収集される。画像化データは、3軸全てに沿ってk空間の中心からオフセットさせることが可能なk空間の領域から収集される。各ショット毎に、画像化データのオフセットを変化させて、k空間全体がマルチショット収集によってサンプリングされるようにする。データ点が連続しているので、この場合も、3次元全てにおいてナイキストサンプリング条件が満たされ、エイリアス信号による問題を生じることなく3D位相補正を施すことが可能になる。
【0022】
各次元におけるサンプリング領域の大きさは、一般に選択された画像分解能に必要なk空間の点の全範囲の大きさよりも小さい。しかしながら、走査プロトコルによっては、各ショット毎にk空間軸の1つまたは2つに沿ってk空間の完全な点集合をサンプリングすることができる場合もある。場合によっては、この手法によって画像アーティファクトを低減させるか、走査時間を速くすることができることもある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ショット間の非線形空間位相変化を示す、2DマルチショットDWIシーケンスで得られたナビゲータ画像を例示した図である。
【図2】2Dナビゲータ補正されるrs−EPIに関する既知のパルスシーケンス及びk空間図を例示した図である。
【図3】本発明による3Dモザイクセグメント化を利用して画像化データ及びナビゲータデータに関してサンプリングされるk空間領域を例示した概略図である。
【図4】本発明により図3に示されたように3次元(3D)k空間をサンプリングするためのパルスシーケンスを例示した図である。
【図5】本発明に従って構成され動作する磁気共鳴画像診断システムの基本構成部品を例示した概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図5には、本発明による傾斜パルスを発生する磁気共鳴断層撮影装置が概略的に例示されている。この磁気共鳴断層撮影装置の設計は、後述する例外はあるが、従来の断層撮影装置に対応する。基本磁場磁石1が、被検者の検査領域、例えば検査すべき人体の一部において核スピンを分極または整列させるために時間的に一定の強さの磁場を発生する。磁気共鳴データ収集に必要な基本磁場の高い均一性は、検査すべき人体部分が送り込まれる球形の測定ボリュームM内に生成される。均一性要件を維持し、とりわけ、時間的に不変の影響を排除するために、強磁性材料で作られたシム板が適切な位置に取り付けられる。時間的に可変の影響は、シム電流供給源15によって起動するシムコイル2によって排除される。
【0025】
基本磁場磁石1の中には、3つのコイル(巻線)から構成される円筒形傾斜磁場コイルシステム3が設けられている。各コイルは、増幅器14によって電流を供給され、直交座標系のそれぞれの方向に線形傾斜磁場を発生する。傾斜磁場システム3の第1のコイルはx方向に傾斜磁場Gxを発生し、第2のコイルはy方向に傾斜磁場Gyを発生し、第3のコイルはz方向に傾斜磁場Gzを発生する。各増幅器14は、シーケンスコントローラ18によって起動して、傾斜パルスを時間的に正確に発生するデジタルアナログ変換器を備えている。
【0026】
傾斜磁場システム3内には、核を励起させ、検査すべき被検者つまり検査すべき被検者の領域の核スピンを整列させるために、高周波電力増幅器16によって放出された高周波パルス(radio-frequency pulse ; RFパルス)を交番磁場に変換する高周波アンテナ4が配置されている。歳差核スピン(すなわち、通常は1つまたは複数の高周波パルスと1つまたは複数の傾斜パルスとから構成されるパルスシーケンスによって生じる核スピンエコー信号)から生じる交番磁場はやはり高周波アンテナ4によって電圧に変換され、この電圧は増幅器7を介して高周波システム22の高周波受信チャネル8に供給される。高周波システム22は、さらに、核スピンを励起させるための高周波パルスを発生する送信チャネル9も備えている。それぞれの高周波パルスは、システムコンピュータ20によってシーケンスコントローラ18内で予め定められたパルスシーケンスに従う一連の複素数としてデジタルで表現される。この一連の複素数は、それぞれの入力12を介して高周波システム22のデジタルアナログ変換器(DAC)に、さらに、ここから送信チャネル9に実数部及び虚数部として供給される。送信チャネル9において、パルスシーケンスが、測定ボリューム内の核スピンの共鳴周波数に相当する基本周波数を有する高周波搬送信号で変調される。
【0027】
送信モードから受信モードへの切替えは送信−受信ダイプレクサ6によって行われる。高周波アンテナ4が、測定ボリュームM内に高周波数パルスを放射して、核スピンを励起させ、その結果生じるエコー信号をサンプリングする。収集される核磁気共鳴信号は、高周波システム22の受信チャネル8で位相敏感に復調され、それぞれのアナログデジタル変換器で測定信号の実数部と虚数部とに変換される。このように収集された測定データから画像コンピュータ17によって画像が再構成される。測定データ、画像データ、及び、制御プログラムの管理がシステムコンピュータ20を介して行われる。制御プログラムに基づき、シーケンスコントローラ18が、それぞれの所望のパルスシーケンスの発生及びk空間の対応するサンプリングを監視する。シーケンスコントローラ18は、勾配の時間的に正確な切替え、規定の位相及び振幅を備えた高周波パルスの放出、磁気共鳴信号の受信を制御する。高周波システム22及びシーケンスコントローラ18の時間基準はシンセサイザ19によって与えられる。核磁気共鳴画像の発生並びに核磁気共鳴画像の表現のための制御プログラムの選択は、キーボード並びに1つまたは複数のスクリーンを備えた端末21を介して行われる。
【0028】
図3には、本発明に従って図5に示すシステムを操作することにより、3Dモザイクセグメント化を利用して画像化データ及びナビゲータデータを得るためにサンプリングされるk空間領域が概略的に例示されている。各領域は、連続するk空間点のブロックを形成するkz面集合から構成される。
【0029】
図4には、本発明に従って、図3に示すように3次元(3D)k空間をサンプリングするために利用可能なパルスシーケンスが示されている。このようなパルスシーケンスは、図5のシーケンスコントローラ18またはシステムコンピュータ20によって発生させることが可能である。このシーケンスは、1回の読み取り中に3方向全てにおいて空間エンコーディングを適用することが可能なシングルショットエコーボリュームイメージング法(EVI)(Mansfield P、Howseman AM、Ordidge RJ、「Volumar imaging using NMR spin echoes:echo−volumar imaging(EVI)at 0.1T」、J.Phys.E.1989年、第22巻、p.234;Mansfield P、Harvey PR、Stehling MK、「Echo−volumar imaging」、MAGMA、1994年、第2巻、p.291−294)に基づくものである。rs−EPIの場合と同様、急速に切り替えられる読み取り勾配を利用して、kx点の部分集合をサンプリングし、プリフェーズ勾配を利用して、イメージングエコーのための可変kxオフセット及びナビゲータエコーのための固定kxオフセットを生じさせる。
【0030】
y方向に沿う空間エンコーディングのために、急変する位相エンコーディング勾配が用いられるが、2次元(2D)rs−EPIシーケンス(図2)とは異なり、ky点の部分集合だけしかサンプリングされない。プリフェーズ勾配を利用して、イメージングエコーの開始時の可変kyオフセット及びナビゲータエコーの開始時の固定kyオフセットを生じさせる。このky空間エンコーディングモジュールは、画像化読み取りとナビゲータ読み取りとの両方において数回にわたって繰り返される。各適用後、y方向に沿ってもう1つの勾配を適用して、初期kyオフセットに戻し、スライスエンコーディング(z)方向に沿って急変勾配を適用して、次のkz面にナビゲートする。z方向に沿ってプリフェーズ勾配を利用して、それぞれイメージングエコー及びナビゲータエコーのための可変及び固定kzオフセットを生じさせる。
【0031】
各ショットのデータ収集後、まず3D逆フーリエ変換を用いて、画像化データとナビゲータデータの両方を画像(または実)空間に変換することによって、3Dナビゲータ位相補正を画像領域で施すことが可能である。次に、複素数画像化データI(x,y,z)が複素数ナビゲータデータN(x,y,z)のバージョンにピクセル毎に掛け合わせられて、全てのピクセルの大きさが1に正規化され、補正された複素数ピクセル値Icorの集合が生じる。
【0032】
【数1】

【0033】
留意すべきは、画像化データとナビゲータデータとの間における180°のリフォーカシングパルスの存在が、補正を施す際にナビゲータデータの共役複素数を用いる必要がないことを表わしている点である。
【0034】
補正の実施後、3D順フーリエ変換を用いて、補正された画像化データIcor(x,y,z)がk空間に逆変換され、異なるショットによるデータが複素数データ点の3D配列にて適切なk空間座標に記憶される。必要な全てのデータ点が補正され記憶されると、全記憶データセットに3D逆フーリエ変換を施して、最終的な3D画像データセットが生成される。
【0035】
2Dナビゲータ補正rs−EPIにおいて前述のように、読み取りセグメントのエッジで追加「オーバラップ」データ点を収集することによって、読み取りセグメント間の境界面における不整合に起因するアーティファクトを最小限に抑えることが可能である。同様に、3Dモザイクセグメント化の場合、3方向全てにおいてk空間のサンプリング領域のエッジで追加データ点を収集するのが有利であることである。この場合、追加データ点は、ナビゲータ位相補正中に用いられ、その後補正データを記憶すると、廃棄される。
【0036】
2Dナビゲータに関して前述のナビゲータ位相補正に対する代替手法(Miller KL、Pauly JP、「Nonlinear phase correction for navigated diffusion imaging」、Magn.Reson.Med.、2003年、第50巻、p.343−353;Miller K、Pauly JM、「Method of removing dynamic nonlinear phase errors from MRI data」、米国特許第6853191 B1号明細書(2005年))は、k空間における直接デコンボリューション(deconvolution)として補正を施すことである。これによって、補正を施すためにデータを画像領域に変換する必要がなくなり、2Dの場合には、処理時間が大幅に短縮されることが分かった。3Dモザイクセグメント化シーケンスを用いて収集されたデータに関する3Dデコンボリューションにこの考えを敷衍すると、3Dナビゲータ補正及び画像再構成全体の速度を大幅に速めることができる。
【0037】
z方向に沿う空間エンコーディングは相対的に遅いため、この方向は空間歪み及び影響されやすさによるアーティファクトに対して最も敏感になる。この問題を最小限に抑えるため、kyおよびkzの両方向に沿ってパラレルイメージング法(GRAPPAのような)を用いることで、サンプリングされるk空間点の数を減らすことが可能であり、その結果、kz面の収集間の時間も短縮される。画像化データセットとナビゲータデータセットの両方とも、同様にしてアンダーサンプリングされ、両方の場合とも、さらにGRAPPAを用いて、データが再構成されることになる。
【0038】
全走査時間を短縮するために、3次元(3D)k空間の1つの側面におけるデータの一部を省略し、部分フーリエ法を用いてそのデータを再構成することが可能である。この手法は、2次元(2D)rs−EPIにおけるショット数の減少に有効であることが既に確認されている。
【0039】
2次元(2D)rs−EPIにおける画質を改善することが分かっているもう1つの技法は、ナビゲータ位相補正手順によって除去できない極度の位相誤差が存在する場合に、再収集方式を利用して、測定データを置換することである。この方法の場合、このような位相誤差で損なわれたデータセットは、高レベルの高空間周波数位相誤差に対応するk空間の大きい信号分布幅によって識別される。同様の再収集手順は、新規のモザイクセグメント化3Dシーケンスにも利用可能である。この場合、k空間の3軸全てに沿う信号分布幅を考慮することが必要になるであろう。
【0040】
当業者によって修正及び変更が提案される可能性があるが、合理的にかつきちんと当該技術に対する寄与範囲内にある全ての変更及び修正を本書を根拠とする特許内で具現化することは発明者の意図するところである。
【符号の説明】
【0041】
1 基本磁場磁石
2 シムコイル
3 傾斜磁場システム
4 高周波アンテナ
6 送信−受信ダイプレクサ
7 増幅器
8 高周波受信チャネル
9 送信チャネル
14 増幅器
15 シムコイル電流供給源
16 高周波電力増幅器
17 画像コンピュータ
18 シーケンスコントローラ
19 シンセサイザ
20 システムコンピュータ
22 高周波システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相補正した拡散強調磁気共鳴データを生成する方法であって、
マルチショット拡散強調パルスシーケンスで磁気共鳴データ収集ユニットを操作して、位相誤差を示す拡散強調磁気共鳴データ、及び、ナビゲータデータが収集されるステップと、
前記マルチショット拡散強調パルスシーケンスにおける各ショット毎に、k空間中心の固定3Dブロックにナビゲータデータが入力され、前記固定3Dブロックとは少なくとも1つの空間方向が異なるk空間のオフセット3Dブロックに前記拡散強調磁気共鳴データが入力されることによって、前記k空間中心を有するk空間の点をそれぞれ表わす3D位置で電子メモリに前記拡散強調磁気共鳴データ及び前記ナビゲータデータが入力され、前記固定3Dブロックおよび前記オフセット3Dブロックのそれぞれがk空間全体の部分集合であり、さらに前記k空間全体が前記拡散強調磁気共鳴データで充填されるまで、ショット間における前記オフセット3Dブロックの前記オフセットが変更されるステップと、
前記メモリにアクセスするコンピュータ化プロセッサにおいて、k空間に入力された前記ナビゲータデータを用いて、k空間に入力された前記拡散強調磁気共鳴データの前記位相誤差を補正して、位相補正された拡散強調磁気共鳴データを生成し、前記位相補正された拡散強調磁気共鳴データを電子データファイルとしてさらなる処理に利用可能にするステップと
を含む拡散強調磁気共鳴データの生成方法。
【請求項2】
前記磁気共鳴データ収集ユニットを操作して、核スピンの励起と拡散準備とデータ読み取りとを含むシーケンスで前記拡散強調磁気共鳴データ及び前記ナビゲーションデータが収集されるステップが含まれる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記核スピンの励起に、スライス選択90°RFパルスの放射が含まれる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
位相補正された拡散強調磁気共鳴データを生成するための磁気共鳴システムであって、
磁気共鳴データ収集ユニットと、
マルチショット拡散強調パルスシーケンスで磁気共鳴データ収集ユニットを操作して、位相誤差を示す拡散強調磁気共鳴データ、及び、ナビゲータデータを収集するコンピュータ化制御ユニットと、
この制御ユニットによって、前記マルチショット拡散強調パルスシーケンスにおける各ショット毎に、k空間中心の固定3Dブロックにナビゲータデータが入力され、前記固定3Dブロックとは少なくとも1つの空間方向が異なるk空間のオフセット3Dブロックに前記拡散強調磁気共鳴データが入力されることによって、前記k空間中心を有するk空間の点をそれぞれ表わす3D位置に前記拡散強調磁気共鳴データ及び前記ナビゲータデータが入力され、前記固定3Dブロックおよび前記オフセット3Dブロックのそれぞれがk空間全体の部分集合であり、このk空間全体が前記拡散強調磁気共鳴データで充填されるまで、ショット間における前記オフセット3Dブロックの前記オフセットが変更される電子メモリと、
このメモリにアクセスし、k空間に入力された前記ナビゲータデータを用いて、k空間に入力された前記拡散強調磁気共鳴データの前記位相誤差を補正して、位相補正された拡散強調磁気共鳴データを生成し、前記位相補正された拡散強調磁気共鳴データを電子データファイルとしてさらなる処理に利用可能にするコンピュータ化プロセッサと
を備える磁気共鳴システム。
【請求項5】
磁気共鳴システムのコンピュータ化制御及び処理システム内に格納され、プログラミング命令でエンコードされる非一時的コンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、
前記磁気共鳴システムに磁気共鳴データ収集ユニットとメモリとが含まれ、
前記プログラミング命令によって、前記コンピュータ化制御および処理システムが、
マルチショット拡散強調パルスシーケンスで前記磁気共鳴データ収集ユニットを操作して、位相誤差を示す拡散強調磁気共鳴データ、及び、ナビゲータデータを収集し、
前記マルチショット拡散強調パルスシーケンスにおける各ショット毎に、k空間中心の固定3Dブロックにナビゲータデータを入力し、前記固定3Dブロックとは少なくとも1つの空間方向が異なるk空間のオフセット3Dブロックに前記拡散強調磁気共鳴データを入力することによって、前記k空間中心を有するk空間の点をそれぞれ表わす3D位置で電子メモリに前記拡散強調磁気共鳴データ及び前記ナビゲータデータを入力し、前記固定3Dブロックおよび前記オフセット3Dブロックのそれぞれがk空間全体の部分集合であり、このk空間全体が前記拡散強調磁気共鳴データで充填されるまで、ショット間における前記オフセット3Dブロックの前記オフセットを変更し、さらに、
k空間に入力された前記ナビゲータデータを用いて、k空間に入力された前記拡散強調磁気共鳴データの前記位相誤差を補正して、位相補正された拡散強調磁気共鳴データを生成し、前記位相補正された拡散強調磁気共鳴データを電子データファイルとしてさらなる処理に利用可能にする
コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−236022(P2012−236022A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−107778(P2012−107778)
【出願日】平成24年5月9日(2012.5.9)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【出願人】(599093720)アイシス・イノヴェイション・リミテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】Isis Innovation Limited
【Fターム(参考)】