説明

持効型活性を有する新規インスリン類似体

糖尿病の予防及び治療に役立つ可能性がある、持効型治療活性を有する組み換えヒトインスリンの新規生合成類似体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、持効型治療活性を有する組み換えヒトインスリンの新規生合成類似体に関するものであり、糖尿病の予防及び治療に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
インスリンとそのさまざまな誘導体は、糖尿病の治療に大量に使用され、しばしば工業的に大規模に製造される。インスリンの改変誘導体は数多く知られており、異なる活性プロファイルを有する多数の医薬製剤が存在するが、人体内で長時間にわたりグルコースを一定のレベルに保つことを可能とする薬品の探索は続いている。
【0003】
正常ヒトインスリン製剤には、遅効型及び/又は持効型の活性効果を得るために、例えば、さまざまな分量のプロタミンなどの特定の添加物を含有するものがある。プロタミンは、インスリンと共に不溶性の錯体を形成するタンパク質であり、皮下組織に沈着物を形成し、そこからインスリンが徐々に放出されるものである。
【0004】
糖尿病の治療に使用されるヒトインスリン誘導体には、アミノ酸が付加されたもの、あるいはいくつかのアミノ酸の配列が改変されたものなど、さまざまなものが知られている。インスリンの一次構造の変更は、その二次構造及び三次構造に影響し、それがタンパク質の化学的及び生物学的性質に影響を及ぼし、結果的に、薬物動態学及び薬力学上の効果をもたらす。これらの変更はさまざまな特徴を有し、改変されたインスリンの活性を即効型、又は、遅効型且つ持効型にしたりすることができる。インスリンの活性形は単量体で、これは皮下注射後に容易に血液中に浸透する。溶液中の外因生ヒトインスリンは6量体であり、これが接種後に2量体へ、続いて血流中に浸透する前には単量体へと解離することが分かっている。即効性を特徴とするインスリン誘導体の1つはリスプロ・インスリン(Humalog(登録商標))で、これは、B鎖中のプロリン(28)−リジン(29)の配列が反転されたものである。立体的な観点から、これは溶液中でのインスリン2量体の形成を困難にする。こうした誘導体の第2は、B鎖28位のプロリンがアスパラギン酸に置換されたものである。こうして導入された負電荷は、インスリン単量体の自己会合の可能性を引き下げる。これらのインスリン誘導体はいずれも、その構造のために、吸収速度が速くなる。
【0005】
持効型組み換えヒトインスリン類似体は、B鎖を塩基性アミノ酸で延長するか、又はB鎖のリジンのεアミノ基を12個前後の炭素原子を有する脂肪酸でアシル化することによって構成される。
【0006】
これらの追加塩基性アミノ酸の導入は、インスリンの化学的又は物理的な性質をいくつかに変更する。最も重要な変更は等電点の移行であり、過剰の正電荷が分子内に導入される結果、等電点は、改変されていない天然インスリンの5.4から、約5.5から約8.5までの範囲に移行する。その結果、これらの類似体の中性水環境における溶解性は低下し、そのためこうした改変インスリンを含む医薬製剤の生産における弱酸性環境の使用が必要になる。
【0007】
しかし、追加塩基性アミノ酸の導入による、明白な利点のほかに、主として酸性環境中で生じるA21位のアスパラギンの脱アミノ化反応に由来する新規類似体の安定性低下という欠点も観察される。
【0008】
この問題点は、A21Asnを、アスパラギン酸、グリシン、アラニン、トレオニンその他のアミノ酸に置換することによって対処される。こうした類似体の1つが、A鎖アスパラギン(21)をグリシン(21)に置換し、B鎖C末端に2個のアルギニン残基が結合した組み換えヒトインスリン誘導体である。これはいわゆるインスリンのグラルギン誘導体で、ランタスという名称で製造されている(米国特許第5656722号)。
【0009】
本発明の過程で、B鎖C末端にリジン(B31Lys)とアルギニン(B32Arg)の残基を付加したヒトインスリン誘導体は、グラルギン誘導体に類似した生物活性を示すことが実証され、すでに上市されている。動物で実施した予備試験では、リズアルグインスリンと称するこの製剤は、天然インスリンの分泌を模した持効型の活性と均一の放出プロファイルを特徴とし、臨床の観点から言えば−夜間低血糖を軽減することが示される。ヒトインスリン及びプロインスリンに酷似しているため、薬剤候補の漸進的な開発及びその最終的な商品化を可能とする良好な研究結果が期待される。ヒトインスリンのB鎖C末端のLysArg配列がヒトのプロインスリンに存在していることが重要であり、カルボキシペプチダーゼCの存在によるリズアルグインスリンのヒトインスリンへの転換を予想させるはずである。このことは、人体内でのリズアルグインスリンの最初の代謝産物は、外因生ホルモンの場合でも、周知の、容認できる特徴を有するヒトインスリンである可能性があることを意味する。ラットについて拡大前臨床試験が実施され、この新規インスリン類似体の持効型活性が確認された。
【0010】
しかしこの誘導体には、その有利な生物活性とは別に、酸性の注射溶液中での安定性に乏しいという特徴が判明した。第一義的に脱アミド反応として出現する安定性不足の主因は、A鎖C末端のアスパラギン残基の存在であり、酸性水環境中ではそこでカルボキシル基に由来するプロトンによる自己触媒脱アミド反応が発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5656722号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、酸性注射溶液(pH3.5〜5)中で適切な安定性を示すと同時に求められる生物活性を有するインスリンの新規類似体を提供することである。それらが天然インスリンの生物活性の特徴を示すことが特に望ましい。また、新規誘導体の活性開始が実用上迅速で、患者への投与直後に効果を発揮し、かつ投与量の一部分の持続的放出能力を有することが特に重要である。これにより、インスリン類似体を含有する医薬製剤の持つ即効型と持効型の両方の作用を提供することが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明において、予想外に上記の目標が達成された。
【0014】
本発明の基本態様は、A鎖及びB鎖を構成する2つのポリペプチドを含むインスリン誘導体又はその薬学的に許容される塩であり、ここでA鎖のアミノ酸配列はSEQ ID No.1〜5から選択されると共に、B鎖のアミノ酸配列はSEQ ID No.6〜8から選択される。本発明による好ましいインスリン誘導体又はその薬学的に許容される塩は、等電点5〜8.5の組み換えヒトインスリン類似体であり、且つ、式1であることを特徴とする。
【0015】
【化1】

【0016】
ここで、RはNH基又は式Asn−Rで表される基を示し、ここでRは中性L−アミノ酸又はNH基を示し、且つ、
は、B31Lys−B32Arg、又はB31Arg−B32Arg、又はB31Argを示し、ここでB3Asnは選択的に他のアミノ酸、有利にはGluに置換されていてもよい。
【0017】
有利には、本発明によるインスリン誘導体又はその生理学的に容認できる塩は下記を特徴とする:
式1のRは式Asn−Rの基を示し、ここでRはGlyを示し、RはB31Lys−B32Argを示すか、又は、
式1のRは式Asn−Rの基を示し、ここでRはAlaを示し、RはB31Lys−B32Argを示すか、又は、
式1のRは式Asn−Rの基を示し、ここでRはSerを示し、RはB31Lys−B32Argを示すか、又は、
式1のRは式Asn−Rの基を示し、ここでRはThrを示し、RはB31Lys−B32Argを示すか、又は、
式1のRは式Asn−Rの基を示し、ここでRはNH基を示し、RはB31Lys−B32Argを示すか、又は、
式1のRはNH基を示し、RはB31Lys−B32Argを示すか、又は、
式1のRは式Asn−Rの基を示し、ここでRはGlyを示し、RはB31Arg−B32Argを示すか、又は、
式1のRは式Asn−Rの基を示し、ここでRはAlaを示し、RはB31Arg−B32Argを示すか、又は、
式1のRは式Asn−Rの基を示し、ここでRはThrを示し、RはB31Arg−B32Argを示すか、又は、
式1のRは式Asn−Rの基を示し、ここでRはSerを示し、RはB31Arg−B32Argを示すか、又は、
式1のRは式Asn−Rの基を示し、ここでRはNH基を示し、RはB31Arg−B32Argを示すか、又は、
式1のRはNH基を示し、RはB31Arg−B32Argを示すか、又は、
式1のRは式Asn−Rの基を示し、ここでRはGlyを示し、RはB31Argを示すか、又は、
式1のRは式Asn−Rの基を示し、ここでRはAlaを示し、RはB31Argを示すか、又は、
式1のRは式Asn−Rの基を示し、ここでRはThrを示し、RはB31Argを示すか、又は、
式1のRは式Asn−Rの基を示し、ここでRはSerを示し、RはB31Argを示すか、又は、
式1のRは式Asn−Rの基を示し、ここでRはNH基を示し、RはB31Argを示すか、又は、
式1のRはNH基を示し、RはB31Argを示すか、又は、
式1のRは式Asn−Rの基を示し、ここでRはGlyを示し、RはB31Lys−B32Argを示し、B3AsnはB3Gluで置換されていること。
【0018】
上記のように、グラルギンの場合、低安定性の問題はA21位のアスパラギンをグリシンで置換することによって解決されている。本発明で説明される、持効性と酸性注射液中での安定性を呈するインスリン類似体を得ることを目的とする研究は、別の方向に進んだ。低安定性の原因であるカルボキシル基をブロックするために、遺伝子工学と酵素形質転換の手法を用いてアスパラギン残基中のカルボキシル基を別の方法で改変した、リズアルグインスリンの新規誘導体を得た。研究を実施した結果、予想外に、式1のヒトインスリンの誘導体で、A鎖のC末端を中性アミノ酸残基(A22)で延長し、又はA鎖C末端のアスパラギンもしくはシステインのカルボキシル基をカルボキシアミド基に変換し、かつ、B鎖C末端にリジンとアルギニンの残基(B31Lys−B32Arg)、又は2個のアルギニン残基(B31Arg−B32Arg)、又は1個のアルギニン残基(B31Arg)を付加したものが、グラルギン及びリズアルギン誘導体に似た化学的・生物学的性質を呈することが判明した。このような方法で得られた新規類似体は、酸性注射溶液(pH3.5〜5)中で適切な安定性を有すると同時に、所望の生物活性を呈する。
【0019】
導入された改変は、予想外に、安定なインスリン誘導体の医薬組成物を得ると同時に、生物活性を維持し、等電点のpH5〜8への移行をもたらした。このため、注射された場所の生理的pHにおける新規インスリン誘導体の溶解性が低下する。これにより、皮下組織中でのインスリン誘導体の微細沈着物が沈殿し、その後の同物質が血液中へ持続放出され、長時間にわたって治療レベルが維持されることになる。
【0020】
これらの化合物の特性とその組成は、安定性試験及び実験的糖尿病の動物における活性試験によって確認されている。この間に、予想外に、低血糖活性効果が著しく長時間にわたって発揮され、参照した市販の持効型インスリン誘導体で観察される効果と比較して、その効果が当該薬品の投与を停止した後も長時間持続することが判明した。このことから、本発明の主題である誘導体の性質は、薬品の投与頻度を著しく減らすことを可能にし、それによって患者治療の有効性、安全性及び快適性が向上することが予想できる。また、本発明による新規誘導体の活性開始は実用上迅速で、これはこれらの化合物が予想外に即効型及び持効型活性両方の既成インスリン類似体の生物活性の特徴を呈することを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
式1のインスリン誘導体の例には下記のものがあるが、これらに限定されない。
【0022】

【0023】
本発明の主題である組み換えヒトインスリン類似体の名称を単純化するために、「インスリン」の名称と、付加されるか又は元のヒトインスリン粒子中に存在するアミノ酸を置換したアミノ酸残基を示す2〜4個のアルファベット大文字とからなる記号を付した。大半の場合、これらの文字は、文献中で見られるアミノ酸残基の一文字表記と一致。自然には生じない2つの残基についてのみ、別の文字、すなわち「Z」と「X」を使用した。いずれの場合も、その文字はA鎖のC末端に位置する残基を示し、そこに末端COOH基に代わってCONH基が入ったものである。文字「Z」は対応するアスパラギンアミド(すなわちA21Asn−NH)を示し、文字「X」はシステインアミド(すなわちde(A21Asn)A20Cys−NH)を示す。
【0024】
式1のインスリン類似体は、遺伝子工学の標準的方法を使用する一連の遺伝子操作によって作成した。
【0025】
このために、例えば部位特異的突然変異導入などの遺伝子工学を使用して、組み換えヒトプロインスリンをコードする遺伝子の変異体を作成した。部位特異的突然変異導入反応は、ストラタジーンのキット(カタログ番号200518−5)を使用して実施し、テンプレートとしてプラスミドDNAのplGALZUINS−p5/ZUINS又はplGTETZUINS−p6/ZUINSを使用した。また、組み換えヒトプロインスリン又はプレプロインスリンの適当な配列を含むその他のDNAも、テンプレートとして使用できる。
【0026】
本発明によれば、一般に認められた用語に鑑み、組み換えヒトプロインスリンはヒトインスリンのA鎖とB鎖がジペプチドLys−Arg又はArg−Argによって連結されたポリペプチドの鎖と理解され、組み換えプレプロインスリンはプロインスリンと付加される、例えば、ユビキチン等のリーダーポリペプチドの組合せ、又はSODもしくはその断片と理解される。
【0027】
例としてDH5α、DH5又はHB101などの適当な大腸菌株のコンピテント細胞の形質転換のために反応混合物を使用したが、他の大腸菌株の細胞もしくは他の微生物の細胞、または組み換えタンパク質の発現に使用できるその他の既知の細胞株を使用することができる。ヌクレオチド配列の正確性を検証するために、組み換えヒトプロインスリンをコードする遺伝子の所与の改変を含むプラスミドを分離し、解読した。本発明の一変型では、コンピテント大腸菌DH5α細胞の形質転換に組み換えヒトプロインスリンをコードする改変遺伝子を含むプラスミドを使用し、細菌は選抜抗生物質(0.01mg/ml)を添加したLB培地500ml中で、温度37℃、200rpmで18時間培養した。菌株バンク用に細菌材料を作成し、細菌培養物と40%グリセロール1:1の試料は−70℃で保管した。
【0028】
大腸菌株における発現により得られた組み換えプレプロインスリンの変異体は、細胞が分解された後に封入体の形で分離され、その後、融合タンパク質精製の標準処理を行った。再生後に得られたハイブリッドタンパク質にインスリン類似体を加えた溶液は、例えばJ.Biol.Chem.,Vol.246,page6786〜6791(1971)にKemmlera他により、あるいは米国特許第6686177号及び同6100376号に記述された方法など、既知の多数の方法の例と同様に、トリプシンを加えて制御された処理を行った。得られたインスリン類似体は、主として低圧クロマトグラフィ、限外濾過、及び/又はHPLCの周知の方法を用いて精製処理を行った。生成物は、十分に精製したインスリン類似体溶液から沈殿させた。
【0029】
A鎖C末端に残基A21Asn−NH又はA20Cys−NHを含む誘導体を得るために、活性αアミド体に変換された反応基質である生物のプロホルモン中で自然に発現する転換を触媒するαアミド化酵素(α−AE)を使用した。
【0030】
酵素PAM(ペプチジルグリシンαアミド化モノオキシゲナーゼ)は、PHM(ペプチジルグリシンαヒドロキシル化モノオキシゲナーゼ)及びPAL(ペプチジルアミドグリコール酸リアーゼ活性)活性(図表1)として表される二つの活性を有するプロテアーゼであり、C末端アミドの取得を可能にする。調査により、オキシトシン又はバソプレシン等のペプチドホルモンの半数は、最適活性を達成するのにC末端アミド基を必要とすることが判明した。この反応において、C末端グリシン残基からアミド基が生成し、それがここでは直接の反応前駆体である(Satani M.,Takahashi K.,Sakamoto H.,Harada S.,Kaida Y.,Noguchi M.;Expression and characterization of human bifunctional peptidylglycine alpha−amidating monooxygenase.Protein Expr Purif.2003 Apr;28(2):293−302。Miller D.A.,Sayad K.U.,Kulathila R.Beaudry G.A.,Merkler D.J.,Bertelsen A.H.;Characterization of a bifunctional peptidylglycine alpha− amidating enzyme expressed in Chinese hamster ovary cells.Arch Biochem Biophys.1992 Nov 1;298(2):380−8)。
【0031】
【化2】

図表1.活性PAMプロテアーゼによるペプチドのαアミド化の概要(Satani M.,Takahashi K.,Sakamoto H.,Harada S.,Kaida Y.,Noguchi M.;Expression and characterization of human bifunctional peptidylglycine alpha−amidating monooxygenase.Protein Expr Purif.2003 Apr;28(2):293−302による)
【0032】
PAMプロテアーゼは、特にさまざまな長さのアミノ酸鎖を有する真核生物に見られるタンパク質である。本プロジェクトでは、ヒト(ホモサピエンス)由来のプロテアーゼが使用され、そこにはαアミド化プロテアーゼの活性を呈するタンパク質をコードする6個の遺伝子が見られる。
【0033】
式1の組み換えヒトインスリン類似体の基本的な物理化学的性質でヒトインスリンと異なるのは等電点の値で、約5から約8までの値である。これは、この化合物が酸性から弱酸性のpHの溶液への溶解性が良いことを意味する。この性質により、組成物(酸性pHの新規インスリン誘導体溶液)の調合が可能になる。
【0034】
本発明の一態様は、有効な作用を発揮する量の、本発明によるインスリン誘導体又はその薬学的に許容される塩を含むことを特徴とする医薬組成物でもある。好適には、本発明による医薬組成物は、10から50μg/mlの亜鉛も含む。
【0035】
本発明の更に他の態様は、糖尿病の治療又は予防のための薬品を製造するために、上記の本発明によるインスリン誘導体又はその薬学的に許容される塩の使用でもある。
【0036】
上記によれば、本発明による医薬組成物は、有効な作用を示す量の式1のヒトインスリン生合成類似体、又はその薬理学的に容認できる塩及び補助成分を含む。
【0037】
本発明による生合成ヒトインスリン類似体の塩は、例えばアルカリ金属塩又はアンモニウム塩が可能である。
【0038】
投与を目的として、本発明による組成物は溶液の形で調合され、有効な作用を示す量の式1のヒトインスリン生合成類似体又はその薬理学的に許容される塩、及び等張剤、防腐剤、安定化剤、任意に緩衝剤などの補助成分を含む。
【0039】
本発明による組成物に使用される有効成分の量は約1〜1600u/mlで、好適には10〜1200u/ml、特に好適には10〜500u/mlである。本発明の主題である各ヒトインスリン類似体の場合、1単位(1u)は1補助単位を意味し、6nモル(すなわち6×10−9モル)に対応するインスリンの1国際単位と同じモル数の類似体を含む。
【0040】
本発明による医薬組成物について、溶液のpH値は約3.5から約5であり、好適には4.0〜4.5である。
【0041】
一般に、本発明による組成物中の補助成分は、周知の組み換えヒトインスリンを含む製剤で使用されるものと同じ成分である。
【0042】
本発明による等張成分は、ヒト血漿と等浸透圧の溶液を得ることが可能な成分なら何でもよい。通常、薬品に使用される等張剤は、塩化ナトリウム、マンニトール、グリシン等であり、好ましくはグリセリンである。グリセリンの使用が好適である。
【0043】
本発明による組成物中に使用される有用な保存剤は、m−クレゾール、フェノール又はその混合物に属するグループから選択した化合物である。
【0044】
組み換えられた正常ヒトインスリンと同様、新誘導体は、とりわけ塩化亜鉛又は酸化亜鉛の形で溶液中に導入される亜鉛イオンを付加することによって安定化する。亜鉛の量は、約5μg/mlから約150μg/mlの範囲が可能である。
【0045】
以下の、本発明による組み換えヒトインスリン誘導体を含む組成物の含有成分の例を開発した:式1のヒトインスリン生合成類似体又はその薬理学的に容認できる塩10〜500u/ml、グリセリン16mg/ml、m−クレゾール2.7〜3mg/ml、亜鉛10〜50μg/ml、及び注射用水1mlになるまで。
【0046】
本発明の本質をより良く説明するために、この明細書本文では本発明の実施例について詳細に記述しており、添付の配列リスト及び以下の図が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】組み換えインスリンのGKRタンパク質をコードする遺伝子を含むプラスミドp5/ZUINSGly(22A)の構造を表す。
【図2−1】プラスミドp5/ZUINSGly(22A)のヌクレオチドとアミノ酸の配列を表す。
【図2−2】プラスミドp5/ZUINSGly(22A)のヌクレオチドとアミノ酸の配列を表す。
【図2−3】プラスミドp5/ZUINSGly(22A)のヌクレオチドとアミノ酸の配列を表す。
【図2−4】プラスミドp5/ZUINSGly(22A)のヌクレオチドとアミノ酸の配列を表す。
【図3】インスリンSKRタンパク質をコードする遺伝子を含むプラスミドp6/ZUINSSer(22A)の構造を表す。
【図4−1】プラスミドp6/ZUINSSer(22A)のヌクレオチドとアミノ酸の配列を表す。
【図4−2】プラスミドp6/ZUINSSer(22A)のヌクレオチドとアミノ酸の配列を表す。
【図4−3】プラスミドp6/ZUINSSer(22A)のヌクレオチドとアミノ酸の配列を表す。
【図4−4】プラスミドp6/ZUINSSer(22A)のヌクレオチドとアミノ酸の配列を表す。
【図5】ゲンスリンN製剤と比較した、正常血糖ラットの血中グルコース濃度への、GKRインスリンの単回投与(投与量5u/kg体重)の影響を表す。平均値±標準誤差。統計的有意性 **p<0.01:インスリンGKR対初期グルコース濃度;##p<0.01、p<0.05:ゲンスリンN対初期グルコース濃度;^^p<0.01:インスリンGKR対ゲンスリンN。
【図6】軽度のストレプトゾトシン誘発性糖尿病ラットの血中グルコース濃度への、GKRインスリンの単回投与(投与量体重kg当たり5u)の影響(ランタス製剤との比較)を表す。0−基準高血糖;対照−生理食塩水10μl/200g体重。統計的有意性:**p<0.01,p<0.05 GKR対ランタス。
【図7】重度のストレプトゾトシン誘発性糖尿病ラットの血中グルコース濃度への、GKRインスリンの単回投与(投与量体重kg当たり2.5u、5u、及び7.5u)の影響を表す。0−基準高血糖;対照−生理食塩水10μl/200g体重。統計的有意性:**p<0.01 p<0.05 GKR2.5u対対照;^^p<0.01 ^p<0.05 GKR5u対対照;##p<0.01 p<0.05 GKR7.5u対対照。
【図8】重度のストレプトゾトシン誘発性糖尿病ラットの血中グルコース濃度への、GKRインスリンの単回投与(投与量体重kg当たり7.5u)の影響(ランタス製剤との比較)を表す。0−基準高血糖;対照−生理食塩水10μl/200g体重。統計的有意性:**p<0.01,p<0.05 GKR対ランタス。
【図9】軽度のストレプトゾトシン誘発性糖尿病モデルにおける、投与量体重kg当たり5uでのGKRインスリンの複数回投与後のラットの血中グルコース濃度を表す(ランタス製剤との比較)。0−基準高血糖;対照−生理食塩水10μl/200g体重。
【図10】軽度のストレプトゾトシン誘発性糖尿病モデルにおける、投与量体重kg当たり5uでのGKRインスリン投与停止後の期間におけるラットの血中グルコース濃度を表す(ランタス製剤との比較)。
【図11】ランタス製剤と比較した、中等度のストレプトゾトシン誘発性糖尿病ラットの血中グルコース濃度への、GRインスリンの単回投与(投与量体重kg当たり10u)の影響を表す。0−基準高血糖;対照−生理食塩水10μl/200g体重。0−基準高血糖;対照−生理食塩水10μl/200g体重。統計的有意性:**p<0.01,p<0.05 GR対ランタス。
【図12】レベミル製剤と比較した、中等度のストレプトゾトシン誘発性糖尿病ラットの血中グルコース濃度への、GEKRインスリンの単回投与(投与量体重kg当たり10u)の影響を表す。0−基準高血糖。
【0048】
実施例1.p5/ZUINSGly(22A)プラスミドの構築及びこのプラスミドによって形質転換された菌株の取得
組み換えINSGly(22A)プロインスリンをコードする遺伝子を構築するために、合成ユビキチンの改変遺伝子に組み換えインスリン前駆体をコードするDNA断片が付加されたp5/ZUINSプラスミドを使用した。ユビキチン遺伝子内でアルギニンコドンがアラニンコドンに置換され、ユビキチン遺伝子のC末端に追加のアルギニンコドンが付加されている。ユビキチンの一部分を構成するペプチドは、インスリン前駆体のための担体であり、大腸菌内での高効率融合タンパク質合成のための条件である。改変融合タンパク質ユビキチン−ヒトインスリンをコードする領域は、pms(WO05066344A2)プロモーターの制御下におかれる。このプラスミドは、アンピシリン耐性遺伝子を保持する。p5/ZUINSベクターの構築のためにplGAL1プラスミドを使用し、遺伝子バンクに保管されている配列の番号はAY424310である。
【0049】
組み換えINSGly(22A)プロインスリン遺伝子は、A鎖C末端に追加のGGTコドンを付加してある点が、モデルヒトプロインスリン遺伝子と異なる。その結果、A鎖のアミノ酸配列は、22位にGly−グリシン−アミノ酸残基が延長されている。
【0050】
ヒト組み換えプロインスリン配列をコードする遺伝子を、C末端にGGT(Gly)コドンを付加することによって改変するために、点突然変異反応のための次のプライマーを設計した。
【0051】
【化3】

【0052】
点突然変異反応は、ストラタジーンのキット(カタログ番号200518−5)を使用して実施した。テンプレートとして、プラスミドDNAのp5/ZUINSを使用した。大腸菌DH5αのコンピテント細胞は反応混合物を使って形質転換した。グリシンをコードするGGTヌクレオチドの存在及びプラスミド配列の有効性を確認するために、プラスミドp5/ZUINSGly(22A)を分離し、解読した。コンピテント大腸菌DH5α細胞の形質転換には組み換えp5/ZUINSGly(22A)プロインスリンをコードする改変遺伝子を有するプラスミドを使用し、その後、このコンピテント大腸菌DH5α細胞を、アンピシリン(0.01mg/ml)を付加したLB培地500ml中で、37℃、200rpmで18時間培養した。細菌材料を菌株バンクのために作成し、細菌培養液と40%グリセロールを1:1で含む試料を−70℃で保管した。
【0053】
得られた大腸菌株は、実施例10に従った生合成によるGKRインスリン取得のプロセスにおいて、初期の生物素材を構成する。
【0054】
p5/ZUINSGly(22A)プラスミドの遺伝子構築
プラスミドp5/ZUINSGly(22A)は4775塩基対の長さがあり、次の調節配列と遺伝子で構築される:
−374番から1234番までの塩基対にアンピシリン耐性遺伝子AMP Rがあり、
−4158番から4323番までの塩基対にpmsプロモーターをコードする領域があり、
−4327番から4554番までの塩基対に改変合成ユビキチン遺伝子ZUBIをコードする配列があり、
−4558番から4722番までの塩基対に組み換えINSGly(22A)プロインスリン遺伝子をコードする配列があり、
−4729番から4775番までの塩基対に転写ターミネーターTerをコードする領域がある。
【0055】
組み換えヒトインスリンタンパク質(GKRインスリン)をコードする遺伝子を含むp5/ZUINSGly(22A)プラスミドの構造は、図1に概略図を、また図2にそのヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す。
【0056】
実施例2.p5/ZUINSGly(22A)Arg(31B)プラスミドの構築及びこれによって形質転換された菌株の取得
組み換えINSGly(22A)Arg(31B)プロインスリン遺伝子の構築において、p5/ZUINSGly(22A)プラスミドを使用した。組み換えINSGly(22A)Arg(31B)遺伝子は、B鎖31位のAAG(Lys)コドンをCGT(Arg)コドンで置換されていることを特徴とする。
【0057】
組み換えINSGly(22A)プロインスリン配列をコードする遺伝子を改変するために、点突然変異反応のための次のプライマーを設計した。
【0058】
【化4】

【0059】
点突然変異反応を実施するために、ストラタジーンのキット(カタログ番号200518−5)を使用した。プラスミドのヌクレオチド配列の分離及び有効性確認、ならびにp5/ZUINSGly(22A)Arg(31B)プラスミドを有する大腸菌DH5α細菌の取得は、実施例1と同様に行った。得られた大腸菌株は、実施例11に従った生合成によるGRインスリン製造のプロセスにおける初期の生物素材である。
【0060】
実施例3.p5/ZUINSSer(22A)Arg(31B)プラスミドの構築及びこれによって形質転換された菌株の取得
組み換えINSSer(22A)Arg(31B)プロインスリン遺伝子を構築するために、p5/ZUINSGly(22A)Arg(31B)プラスミドを使用した。組み換えINSSer(22A)Arg(31B)プロインスリンをコードする遺伝子と、組み換えプロインスリンINSGly(22A)Arg(31B)をコードする遺伝子との差異は、A鎖22位のGGT(Gly)コドンをTCT(Ser)コドンで置換していることである。
【0061】
組み換えINSGly(22A)Arg(31B)プロインスリン配列をコードする遺伝子をA鎖22位のGGT(Gly)をTCT(Ser)コドンで置換して改変するために、点突然変異反応のための次のプライマーを設計した。
【0062】
【化5】

【0063】
点突然変異反応を実施するために、ストラタジーンのキット(カタログ番号200518−5)を使用した。プラスミドのヌクレオチド配列の分離及び有効性確認、ならびにp5/ZUINSSer(22A)Arg(31B)プラスミドを有する大腸菌DH5α細菌の取得は、実施例1と同様に行った。
【0064】
得られた大腸菌株は、実施例12に従った生合成によるSRインスリン製造のプロセスにおける初期の生物素材である。
【0065】
実施例4.p5/ZUINSAla(22A)プラスミドの構築及びこれによって形質転換された菌株の取得
組み換えINSAla(22A)プロインスリン遺伝子を構築するために、p5/ZUINSプラスミドを使用した。組み換えINSAla(22A)プロインスリンの遺伝子と、モデルヒトプロインスリン遺伝子との差異は、前者のA鎖C末端にGCTコドンを付加していることである。その結果、A鎖のアミノ酸配列は、22位にAla−アラニンアミノ酸残基が延長された。
【0066】
組み換えヒトインスリン配列をコードする遺伝子をそのC末端にGCT(Ala)コドンを付加して改変するために、点突然変異のための次のプライマーを設計した。
【0067】
【化6】

【0068】
点突然変異反応を実施するために、ストラタジーンのキット(カタログ番号200518−5)を使用した。プラスミドのヌクレオチド配列の分離及び有効性確認、ならびにp5/ZUINSAla(22A)プラスミドを有する大腸菌DH5α細菌の取得は、実施例1と同様に行った。
【0069】
得られた大腸菌株は、実施例13に従った生合成によるAKRインスリン製造のプロセスにおける初期の生物素材である。
【0070】
実施例5.p5/ZUINSGly(22A)Glu(3B)プラスミドの構築及びこれによって形質転換された菌株の取得
組み換えp5/ZUINSGly(22A)Glu(3B)プロインスリン遺伝子を構築するために、p5/ZUINSGly(22A)プラスミドを使用した。組み換えINSGly(22A)Glu(3B)プロインスリンをコードする遺伝子と、組み換えINSGly(22A)プロインスリンをコードする遺伝子との差異は、B鎖3位のAAC(Asn)コドンをGAA(Glu)コドンで置換していることである。
【0071】
組み換えINSGly(22A)プロインスリン配列をコードする遺伝子をB鎖3位のAAC(Asn)をGAA(Glu)コドンで置換して改変するために、点突然変異反応のための次のプライマーを設計した。
【0072】
【化7】

【0073】
点突然変異反応を実施するために、ストラタジーンのキット(カタログ番号200518−5)を使用した。プラスミドのヌクレオチド配列の分離及び有効性確認、ならびにp5/ZUINSGly(22A)Glu(3B)プラスミドを有する大腸菌DH5α細菌の取得は、実施例1と同様に行った。
【0074】
得られた大腸菌株は、実施例14に従った生合成によるGEKRインスリン製造のプロセスにおける初期の生物素材である。
【0075】
実施例1〜5において、プラスミドの宿主としてDH5α大腸菌を使用したが、上記の本発明の実施モデルにおいて、例えばDH5又はHB101のような他の大腸菌株を使用することも可能である。
【0076】
実施例6.p6/ZUINSSer(22A)プラスミドの構築及びこれによって形質転換された菌株の取得
組み換えINSSer(22A)プロインスリンをコードする遺伝子を構築するために、合成ユビキチンをコードする改変遺伝子に組み換えインスリン前駆体をコードするDNA断片が付加されたp6/ZUINSプラスミドを使用した。ユビキチンをコードする遺伝子内でアルギニンコドンがアラニンコドンに置換され、ユビキチン遺伝子のC末端に追加のアルギニンコドンが付加されている。ユビキチンの一部分を構成するペプチドは、インスリン前駆体のための担体であり、これは大腸菌内での高効率融合タンパク質発現を調節するものである。改変ユビキチン−ヒトインスリン融合タンパク質をコードする領域は、pmsプロモーター(WO05066344A2)の制御下に置かれる。このプラスミドは、テトラサイクリン耐性遺伝子を保持する。p6/ZUINSベクターの構築のためにp5/ZUINSプラスミドを使用した。
【0077】
組み換えINSSer(22A)プロインスリンをコードする遺伝子と、モデルヒトプロインスリン遺伝子との差異は、前者のA鎖C末端に追加のTCTコドンを付加してある点である。その結果、A鎖のアミノ酸配列は、22位にSer−セリンアミノ酸残基が延長された。
【0078】
組み換えプロインスリン配列をコードする遺伝子を、C末端にTCT(Ser)コドンを付加することによって改変するために、点突然変異反応のための次のプライマーを設計した。
【0079】
【化8】

【0080】
点突然変異反応を実施するためにストラタジーンのキット(カタログ番号200518−5)を使用し、テンプレートとして、p6/ZUINSプラスミドDNAを使用した。大腸菌DH5αのコンピテント細胞を反応混合物を使って形質転換した。セリンをコードするTCTヌクレオチドの存在及びプラスミド配列の正確性を確認するために、p6/ZUINSSer(22A)プラスミドを分離し、解読した。大腸菌DH5α細菌の形質転換にはp6/ZUINSSer(22A)プロインスリンをコードする改変遺伝子を有するプラスミドを使用した。その後、この細菌を、テトラサイクリン(0.01mg/ml)を付加したLB培地500ml中で、37℃、200rpmで18時間培養した。
【0081】
細菌材料を菌株バンクのために作成し、細菌培養液と40%グリセロールを1:1で含む試料を−70℃で保管した。
【0082】
得られた大腸菌株は、実施例15に従った生合成によるSKRインスリン製造のプロセスにおいて、初期の生物素材を構成する。
【0083】
p6/ZUINSSer(22A)プラスミドの遺伝子構築
p6/ZUINSSer(22A)プラスミドは4911塩基対の長さがあり、次の調節配列と遺伝子で構築される:
−146番から1336番までの塩基対にテトラサイクリン耐性遺伝子TET Rがあり、
−4304番から4469番までの塩基対にpmsプロモーターをコードする領域があり、
−4473番から4703番までの塩基対に改変合成ユビキチンをコードする遺伝子をコードする領域があり、次の改変がある:ユビキチン遺伝子の42位、54位、72位、74位のアルギニンアミノ酸のアラニンによる置換、77位にユビキチンの除去を可能にするアルギニンの付加。
−4704番から4868番までの塩基対に組み換えINSSer(22A)プロインスリンをコードする遺伝子をコードする配列があり、
−4875番から4911番までの塩基対に転写ターミネーターTerをコードする領域がある。
【0084】
組み換えヒトインスリンタンパク質(SKRタンパク質)をコードする遺伝子を含むp6/ZUINSSer(22A)プラスミドの構造は、図3に概略図を、また図4にそのヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す。
【0085】
実施例7.p6/ZUINSGly(22A)プラスミドの構築及びこれによって形質転換された菌株の取得
組み換えINSGly(22A)プロインスリンをコードする遺伝子を構築するために、合成ユビキチンをコードする改変遺伝子に組み換えインスリン前駆体をコードするDNA断片が付加されたp6/ZUINSプラスミドを使用した。
【0086】
組み換えINSGly(22A)プロインスリンをコードする遺伝子と、モデルヒトプロインスリン遺伝子との差異は、前者のA鎖C末端に追加のGGTコドンを付加してある点である。その結果、A鎖のアミノ酸配列は、22位にGly−グリシンアミノ酸残基が延長された。
【0087】
組み換えヒトプロインスリン配列をコードする遺伝子を、C末端にGGT(Gly)コドンを付加することによって改変するために、点突然変異反応のための次のプライマーを設計した。
【0088】
【化9】

【0089】
点突然変異反応を実施するために、ストラタジーンのキット(カタログ番号200518−5)を使用した。プラスミドのヌクレオチド配列の分離及び有効性確認、ならびにp6/ZUINSGly(22A)プラスミドを有する大腸菌DH5細菌の取得は、実施例6と同様に行った。
【0090】
得られた大腸菌株は、実施例16に従った生合成によるGKRインスリン製造のプロセスにおける初期の生物素材を構成する。
【0091】
実施例8.p6/ZUINSGly(22A)Glu(3B)プラスミドの構築及びこれによって形質転換された菌株の取得
組み換えINSGly(22A)Glu(3B)プロインスリン遺伝子を構築するために、p6/ZUINSGly(22A)プラスミドを使用した。組み換えINSGly(22A)Glu(3B)プロインスリンの遺伝子と、組み換えINSGly(22A)プロインスリンの遺伝子との差異は、B鎖3位のAAC(Asn)コドンをGAA(Glu)コドンで置換していることである。
【0092】
組み換えINSGly(22A)プロインスリン配列をコードする遺伝子をB鎖3位のAAC(Asn)コドンをGAA(Glu)コドンで置換して改変するために、点突然変異を起こすための次のプライマーを設計した。
【0093】
【化10】

【0094】
点突然変異反応を実施するために、ストラタジーンのキット(カタログ番号200518−5)を使用した。プラスミドのヌクレオチド配列の分離及び有効性確認、ならびにp6/ZUINSGly(22A)Glu(31B)プラスミドを有する大腸菌DH5の取得は、実施例6と同様に行った。
【0095】
得られた大腸菌株は、実施例17に従った生合成によるGEKRインスリン製造のプロセスにおける初期の生物素材である。
【0096】
実施例9.p6/ZUINSGly(22A)Arg(31B)プラスミドの構築及びこれによって形質転換された菌株の取得
組み換えINSGly(22A)Arg(31B)プロインスリン遺伝子を構築するために、p6/ZUINSGly(22A)プラスミドを使用した。組み換えINSGly(22A)Arg(31B)プロインスリンをコードする遺伝子は、B鎖31位のAAG(Lys)コドンをCGT(Arg)コドンで置換していることを特徴とする。
【0097】
組み換えINSGly(22A)プロインスリン配列をコードする遺伝子を改変するために、点突然変異を起こすための次のプライマーを設計した。
【0098】
【化11】

【0099】
点突然変異反応を実施するために、ストラタジーンのキット(カタログ番号200518−5)を使用した。プラスミドのヌクレオチド配列の分離及び有効性確認、ならびにp6/ZUINSGly(22A)Arg(31B)プラスミドを有する大腸菌DH5の取得は、実施例6と同様に行った。
【0100】
得られた大腸菌株は、実施例18に従った生合成によるGRインスリン製造のプロセスにおける初期の生物素材である。
【0101】
実施例10.GKRインスリンの製造
GKRインスリンは、実施例1により得られたGKRインスリン前駆体をコードするDNA断片を有する大腸菌株を使用して、標準的な方法(接種、種培養、量産培養)で実現される生合成プロセスで製造した。量産培養は、150dm発酵タンク内で、pH、温度、最適密度、グルコース濃度及び曝気を制御しながら、37℃で20時間実施した。GKR類似体は、その発酵条件下で、封入体として細胞内で生産された。発酵終了後、発酵培養液を濃縮し、次いでリゾチームによって消化し、細菌細胞を分解した。得られた懸濁液を水で希釈し、トライトンと共に培養した後、遠心分離した。作成された封入体の粗沈殿物を先ず精製し、最終的に封入体ホモジネートを得た。
【0102】
得られたホモジネートは、EDTAを添加した炭酸ナトリウム溶液中で溶解し(10〜15mg/cm)、再生し、リジンの遊離アミノ基の保護のために、無水シトラコン酸を伴う反応によりシトラコニル化可逆工程に供した。溶解タンパク質は、リーダータンパク質を分解し、インスリン鎖を分割するためにトリプシンで消化した。トリプシンが作用した結果、GKRインスリンを得た。トリプシン消化後の溶液は、DEAEセファロースFFゲル上で低圧液体クロマトグラフィによって精製し、その後、膜分離と濃縮−QセファロースFFゲル上での2回目の低圧液体クロマトグラフィを行った。主要画分は、Kromasil−RPC8 100A 10μmゲル上で高圧液体クロマトグラフィによって精製した。主要画分は、透析を用いて濃度30〜40mg/cmまで濃縮し、精製GKRインスリンをクエン酸ナトリウム、酢酸亜鉛、クエン酸を用いた結晶化によって分離した。
【0103】
封入体1バッチから、HPLC純度97%の結晶GKRインスリン約5.4gを得た。
【0104】
生成物の構造は、次のデータによって確認された:
−質量分析によって決定された分子量は6149で、理論値(6149.1)と一致。
−ペプチドマップ:一致。
−配列及びアミノ酸組成:理論と一致。
キャピラリー電気泳動法によって決定される等電点は7.19であった。
【0105】
実施例11.GRインスリンの製造
実施例10と類似の手順で、実施例2により得られたGRインスリン前駆体をコードするDNA断片を有する大腸菌株を使用して、類似の封入体バッチから、HPLC純度97.5%のGRインスリン5.2gを得た。
【0106】
生成物の構造は、次のデータによって確認された:
−質量分析によって決定される分子量は6021で、理論値(6020.9)と一致。
−ペプチドマップ:一致。
−配列及びアミノ酸組成:理論と一致。
等電点:6.39。
【0107】
実施例12.SRインスリンの製造
実施例10と類似の手順で、実施例3により得られたSRインスリン前駆体をコードするDNA断片を有する大腸菌株を使用して、類似の封入体バッチから、HPLC純度97%のSRインスリン5.5gを得た。
【0108】
生成物の構造は、次のデータによって確認された:
−質量分析によって決定される分子量は6051で、理論値(6050.9)と一致。
−ペプチドマップ:一致。
等電点:6.55。
【0109】
実施例13.AKRインスリンの製造
実施例10と類似の手順で、実施例4により得られたAKRインスリン前駆体をコードするDNA断片を有する大腸菌株を使用して、類似の封入体バッチから、HPLC純度96.5%のAKRインスリン4.7gを得た。
【0110】
生成物の構造は、次のデータによって確認された:
−質量分析によって決定される分子量は6163で、理論値(6163.1)と一致。
−ペプチドマップ:一致。
等電点:7.07。
【0111】
実施例14.GEKRインスリンの製造
実施例10と類似の手順で、実施例5により得られたGEKRインスリン前駆体をコードするDNA断片を有する大腸菌株を使用して、類似の封入体バッチから、HPLC純度97.5%のGEKRインスリン5.0gを得た。
【0112】
生成物の構造は、次のデータによって確認された:
−質量分析によって決定される分子量は6164で、理論値(6164.1)と一致。
−ペプチドマップ:一致。
等電点:6.29。
【0113】
実施例15.SKRインスリンの製造
実施例10と類似の手順で、実施例6により得られたSKRインスリン前駆体をコードするDNA断片を有する大腸菌株を使用して、類似の封入体バッチから、HPLC純度98%のSKRインスリン5.3gを得た。
【0114】
生成物の構造は、次のデータによって確認された:
−質量分析によって決定される分子量は6179で、理論値(6179.1)と一致。
−ペプチドマップ:一致。
等電点:7.05。
【0115】
実施例16.GKRインスリンの製造
実施例10と類似の手順で、実施例7により得られたGKRインスリン前駆体をコードするDNA断片を有する大腸菌株を使用して、類似の封入体バッチから、HPLC純度95.5%のGKRインスリン6.3gを得た。
【0116】
生成物(GKRインスリン)の残余の属性は実施例10のとおりである。
【0117】
実施例17.GEKRインスリンの製造
実施例10と類似の手順で、実施例8により得られたGEKRインスリン前駆体をコードするDNA断片を有する大腸菌株を使用して、類似の封入体バッチから、HPLC純度97%のGEKRインスリン6.0gを得た。
【0118】
生成物(GEKRインスリン)の残余の属性は実施例14のとおりである。
【0119】
実施例18.GRインスリンの製造
実施例10と類似の手順で、実施例9により得られたGRインスリン前駆体をコードするDNA断片を有する大腸菌株を使用して、類似の封入体バッチから、HPLC純度96.5%のGRインスリン5.5gを得た。
【0120】
生成物(GRインスリン)の残余の属性は実施例11のとおりである。
【0121】
実施例19.ZKRインスリンの製造
pH5.0〜5.5の100mMのMES/KOH緩衝液中で、実施例10又は16により製造されたGKRインスリン溶液1000ml(濃度0.1mg/ml)に、1μMのCuSO、100μg/mlのカタラーゼ、5mMのアスコルビン酸及び2μMのPAM酵素(Satani M.,Takahashi K.,Sakamoto H.,Harada S.,Kaida Y.,Noguchi M.;Expression and characterization of human bifunctional peptidylglycine alpha−amidating monooxygenase.Protein Expr Purif.2003 Apr;28(2):293−302に従って得られたもの)を加え、その後、混合物を37℃で2時間静置した。1mMのNaEDTAを加えて反応を停止させた。
【0122】
ろ過後、得られた溶液をイオン交換クロマトグラフィ及びHPLC法によって精製した。
【0123】
ZKRインスリンを含む主要画分を濃縮し、クエン酸ナトリウム、クエン酸亜鉛、クエン酸を用いて結晶化した。反応混合物1バッチから、HPLC純度97%の結晶ZKRインスリン約10mgを得た。
【0124】
生成物の構造は、次の結果によって確認された:
−質量分析によって決定される分子量は6091で、理論値(6091.1)と一致。
−ペプチドマップ:一致。
等電点:7.54。
【0125】
実施例20.ZRインスリンの製造
pH4.5の100mMのMES/KOH緩衝液中で、実施例11又は18により製造されたGRインスリン溶液100ml(2mg/ml)に、1μMのCuSO、100μg/mlのカタラーゼ、5mMのアスコルビン酸及び2μMのPAM酵素を加え、その後、その溶液を37℃で1時間、穏やかに混合した。1mMのNaEDTAを加えて反応を停止させた。PAMを使った反応後の溶液は、イオン交換及びHPLC法によって精製した。
【0126】
インスリンを含む主要画分は濃縮し、クエン酸ナトリウム、クエン酸亜鉛、クエン酸を用いて結晶化した。反応混合物1バッチから、HPLC純度98%の結晶ZRインスリン22mgを得た。
【0127】
生成物の構造は、次の結果によって確認された:
−質量分析によって決定される分子量は5963で、理論値(5962.9)と一致。
−ペプチドマップ:一致。
等電点:6.97。
【0128】
実施例21.GKRインスリン医薬製剤(100u/ml)の製造
次の組成のGKRインスリン医薬製剤(100u/ml)100mlを作成した(1.0ml当たりの値):
【0129】

【0130】
調製手順は次のとおりである:
次の2つの溶液を作成した:
【0131】
溶液1
最終的な亜鉛イオン濃度が30μg/mlに達するために必要な量の酸化亜鉛を、10mMの塩酸40mlに溶解した。その後、得られた溶液に、インスリンGKR10,000uに対応する量のインスリンGKRを添加し、透明な溶液が得られるまで穏やかに撹拌し、その後、pHの値を4.5に調整した。
【0132】
溶液2
別に、m−クレゾール270mgと無水グリセロール1600mlを40mlの注射用水に溶解した。
【0133】
溶液1と2の混合
溶液1を、撹拌しながら溶液2に加え、注射用水を100mlになるまで加えて、必要な場合は10mMの塩酸又は0.2Mの水酸化ナトリウム溶液でpHを4.5に補正した。得られた混合物は、無菌状態で0.22μmのフィルターを通してろ過し、3mlのガラスバイアルに等分した。加速安定性試験において、GKRインスリンを含む製剤(100u/ml)は、56日間の実験期間中、室温で安定性を呈すると判断された(実施例24)。
【0134】
実施例22.GRインスリン医薬製剤(100u/ml)の製造
次の組成のGRインスリン医薬製剤(100u/ml)100mlを作成した(1.0ml当たりの値):
【0135】

【0136】
手順は、GKRインスリンに代わってGRインスリン(361mgの量、10,000u)を使用したこと、及び最終的なpHの値が4.0であることを除き、実施例21と同一である。
【0137】
実施例23.GEKRインスリン医薬製剤(100u/ml)の製造
次の組成のGEKRインスリン医薬製剤(100u/ml)100mlを作成した(1.0ml当たりの値):
【0138】

【0139】
手順は、GKRインスリンに代わってGEKRインスリン(量、10,000u)を使用したこと、及び最終的なpHの値が4.0であることを除き、実施例21と同一である。
【0140】
実施例24.GKRインスリン医薬製剤(100u/ml)の加速安定性試験
実施例21により作成されたGKRインスリン医薬製剤(100u/ml)について、加速安定性試験(25℃±2℃)を行った。この試験の間に、純度及びタンパク質汚染レベルの分析を実施した。下記に、生成物(GKRインスリン)のHPLC純度、及び「0」、28、42、及び56日の時点におけるHPLC試験での、単独で最も汚染の強い汚染物質、脱アミド誘導体及び重合体の寄与比を示す。
【0141】

【0142】
実施例25.GEKRインスリン医薬製剤(100u/ml)の加速安定性試験
実施例23により作成されたGEKRインスリン医薬製剤(100u/ml)について、加速安定性試験(25℃±2℃)を行った。この試験の間に、純度及びタンパク質汚染レベルの分析を実施した。下記に、生成物(GEKRインスリン)のHPLC純度、及び「0」、及び14日、1、2、及び3ヶ月の時点におけるHPLC試験での、単独で最も汚染の強い汚染物質、及び重合体の寄与比を示す。
【0143】

【0144】
実施例26.正常血糖動物におけるGKR活性の判定
組み換えヒトインスリン類似体(GKRインスリン)は、ゲンスリンN(組み換えイソフェンヒトインスリン)と同様に、活性時間延長が見られ、正常血糖ラットの低血糖は類似の過程をたどる。双方の製剤の低血糖活性における重大な差異は、投与後0.5時間及び1時間に観察された。この時点で、GKRインスリン投与後のグルコース濃度の急速かつ大幅な低下が観察された。GKRインスリンとゲンスリンNの活性ピークは2時間目であった。
【0145】
初期研究において、GKRインスリンは持効型低血糖活性を有する活性類似体であることが確認された。GKRインスリン投与後のグルコースレベルの低下は最大12時間観察され、一方、24時間後のグルコースレベルは初期と同等だった。GKRインスリン及びゲンスリンN製剤の単回投与に対する正常血糖ラットの反応結果(平均値±標準誤差を考慮)は、表1及び図5に示す。
【0146】
実施例27.実験的糖尿病動物におけるGKRインスリン活性の判定
ラット糖尿病の実験モデル(ストレプトゾトシンによる誘発)に関する研究により、GKRインスリンの低血糖活性が疑いなく確認された。この活性は、持効型活性を特徴としていた。
【0147】
単回投与後、実験ラットの血中グルコース濃度の低下は、対照と比較すると、最大8〜10時間目まで(糖尿病の重篤度及び投与量に依存する)統計的に有意な状態が続いた。研究の間に、参照製剤のインスリン・グラルギン(ランタス)と比較したGKRインスリンによる活性開始の早期化及びピーク活性到達の早期化(開始で30分、ピークで1〜2時間)が実証された。この現象の統計的有意性は、重度及び中等度の糖尿病で確認された。
【0148】
GKRインスリン及び参照製剤インスリン・グラルギンの複数回投与の研究でも、両類似体の同様の活性が実証された。製剤を21日間、1日当たり3回投与したところ、軽度糖尿病における血糖パラメータの改善が生じ、基本的には効果の程度に統計的な差は出なかった。唯一の差は、GKRインスリンの活性プロファイルが顕著に均等化したことであった。
【0149】
さらに、GKR製剤の投与終了後、低血糖効果が長く持続するという非常に興味深い現象が観察された。この観察は、類似体を投与量5u/kg体重で21日間投与された軽度糖尿病群のうち、GKR製剤で治療されたラット9匹及びランタスで治療された3匹に実施された。得られた結果は、GKRインスリンの組織内(おそらく皮下組織)における非常に強度の結合の存在の証拠になり得る。それらは、区画が存在し、そこにインスリンが蓄積され、ゆっくりと再配分されるという主張を裏付ける。この現象は、参照製剤では観察されなかった。この性質は、ヒトで確認されれば、例えば薬品の投与を1日1回未満にすることが可能になり、持効型インスリン類似体による治療の突破口になり得る。
【0150】
軽度ストレプトゾトシン誘発性糖尿病モデルにおける投与量5u/kg体重でのGKRインスリン単回投与後のラットの血中グルコース濃度を示す結果(ランタス製剤との比較)は、表2及び図6に示す。
【0151】
重度ストレプトゾトシン誘発性糖尿病モデルにおける、1回の投与量2.5u/kg体重、5u/kg体重及び7.5u/kg体重での単回投与後のラットの血中グルコース濃度へのGKRインスリンの影響を示す結果(ランタス製剤及び対照との比較)は、表3に示す。
【0152】
重度ストレプトゾトシン誘発性糖尿病モデルにおける、1回の投与量2.5u/kg体重、5u/kg体重及び7.5u/kg体重での単回投与後のラットの血中グルコース濃度へのGKRインスリンの影響を表す結果(対照との比較)は、図7に示す。
【0153】
重度ストレプトゾトシン誘発性糖尿病モデルにおける、投与量7.5u/kg体重での単回投与後のラットの血中グルコース濃度へのGKRインスリンの影響を表す結果(ランタス製剤との比較)は、図8に示す。
【0154】
軽度ストレプトゾトシン誘発性糖尿病モデルにおけるGKRインスリン5u/kg体重での複数回投与後のラットの血中グルコース濃度を示す結果(ランタス製剤との比較)は、表4及び図9に示す。
【0155】
軽度ストレプトゾトシン誘発性糖尿病モデルにおけるGKRインスリン5u/kg体重での投与終了後のラットの血中グルコース濃度を示す結果(ランタス製剤との比較)は、表5及び図10に示す。
【0156】
【表1】

【0157】
【表2】

【0158】
【表3】

【0159】
【表4】

【0160】
【表5】

【0161】
実施例28.実験的糖尿病動物におけるGRインスリン活性の判定
GRインスリンの低血糖活性は、ラットの中等度のストレプトゾトシン誘発性糖尿病において確認された。
【0162】
GRインスリンの、5u又は10u/kg体重単回投与後の活性は、急速かつ強力であると判定された。製剤投与後30分ですでに活性開始が見られ、最大2時間同じレベルが維持され、その後、24〜36時間目に初期レベルに到達まで低下した。
【0163】
中等度ストレプトゾトシン誘発性糖尿病モデルにおける投与量5u及び10u/kg体重での単回投与後のラットの血中グルコース濃度へのGRインスリン製剤の影響を示す結果(ランタス製剤との比較)は、表6に示す。GRインスリン5u/kg体重での投与後のグルコース濃度/時間変化のプロットは、図11に示す。
【0164】
実施例29.実験的糖尿病動物におけるGEKRインスリン活性の判定
GEKRインスリン類似体の低血糖活性は、中等度の経過をたどるストレプトゾトシン誘発性糖尿病のラットでの予備試験において確認された。
【0165】
GEKRインスリンの10u/kg体重単回投与後、非常に急速(0.5時間後にすでに)かつ強力な動物血中グルコース濃度を低下させる活性が見られた。この活性は、製剤投与後1時間ですでにピークに達し、ゆっくりと低下したが、投与後最大12時間まで、初期値と比較して有意なグルコースレベルの低下をもたらした。この研究は、持効型活性を有するインスリン類似体のレベミル製剤(インスリン・デテミル)と比較して実施された。
【0166】
レベミル製剤と比較した、糖尿病の中等度ストレプトゾトシン誘発性モデルにおける投与量10u/kg体重での単回投与後のラットの血中グルコース濃度へのGEKRインスリンの影響を示す結果を、表7に示し、GEKRインスリン10u/kg体重での投与後の時間の関数としてのグルコース濃度の変化を示すプロットは、図12に示す。
【0167】
【表6】

【0168】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A鎖及びB鎖を形成する2つのポリペプチドを含むインスリン誘導体又はその薬学的に許容される塩であって、A鎖のアミノ酸配列はSEQ ID No.1〜6から選択されると共に、B鎖のアミノ酸配列はSEQ ID No.7〜10から選択されるインスリン誘導体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
等電点5〜8.5の組み換えヒトインスリンの類似体であり、且つ、式1であることを特徴とする請求項1に記載のインスリン誘導体又はその薬学的に許容される塩。
【化1】

ここで、RはNH基、又は式Asn−Rの基を示し、ここでRは中性L−アミノ酸又はNH基を示し;且つ、
は、B31Lys−B32Arg、又はB31Arg−B32Arg、又はB31Argを示し、ここでB3Asnは任意選択的に他のアミノ酸、好適にはGluに置換することができる。
【請求項3】
式1のRは、式Asn−Rの基を示し、ここでRはGlyを示し、且つ、Rは、B31Lys−B32Argを示すか、又は、
式1のRは、式Asn−Rの基を示し、ここでRはAlaを示し、且つ、Rは、B31Lys−B32Argを示すか、又は、
式1のRは、式Asn−Rの基を示し、ここでRはSerを示し、且つ、Rは、B31Lys−B32Argを示すか、又は、
式1のRは、式Asn−Rの基を示し、ここでRはThrを示し、且つ、Rは、B31Lys−B32Argを示すか、又は、
式1のRは、式Asn−Rの基を示し、ここでRはNH基を示し、且つ、Rは、B31Lys−B32Argを示すか、又は、
式1のRは、NH基を示し、且つ、Rは、B31Lys−B32Argを示すか、又は、
式1のRは、式Asn−Rの基を示し、ここでRはGlyを示し、且つ、Rは、B31Arg−B32Argを示すか、又は、
式1のRは、式Asn−Rの基を示し、ここでRはAlaを示し、且つ、Rは、B31Arg−B32Argを示すか、又は、
式1のRは、式Asn−Rの基を示し、ここでRはThrを示し、且つ、Rは、B31Arg−B32Argを示すか、又は、
式1のRは、式Asn−Rの基を示し、ここでRはSerを示し、且つ、Rは、B31Arg−B32Argを示すか、又は、
式1のRは、式Asn−Rの基を示し、ここでRはNH基を示し、且つ、Rは、B31Arg−B32Argを示すか、又は、
式1のRは、NH基を示し、且つ、Rは、B31Arg−B32Argを示すか、又は、
式1のRは、式Asn−Rの基を示し、ここでRはGlyを示し、Rは、B31Argを示すか、又は、
式1のRは、式Asn−Rの基を示し、ここでRはAlaを示し、Rは、B31Argを示すか、又は、
式1のRは、式Asn−Rの基を示し、ここでRはThrを示し、Rは、B31Argを示すか、又は、
式1のRは、式Asn−Rの基を示し、ここでRはSerを示し、Rは、B31Argを示すか、又は、
式1のRは、式Asn−Rの基を示し、ここでRはNH基を示し、Rは、B31Argを示すか、又は、
式1のRは、NH基を示し、Rは、B31Argを示すか、又は、
式1のRは、式Asn−Rの基を示し、ここでRはGlyを示し、Rは、B31Lys−B32Argを示し、且つ、B3Asnは、B3Gluで置換されている、請求項2に記載のインスリン誘導体又はその生理学的に許容される塩。
【請求項4】
有効に作用する量の、請求項1から3のいずれか1項に記載のインスリン誘導体又はその薬学的に許容される塩を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項5】
10から50μg/mlの亜鉛を含むことを特徴とする請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
糖尿病の治療又は予防のための薬品を製造するための、請求項1から3のいずれか1項に記載のインスリン誘導体又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項7】
糖尿病を罹患する患者の治療方法であって、該治療を必要とする患者に対し、請求項4及び5に記載の有効に作用する量の医薬組成物を投与することを特徴とする治療方法。

【図2−1】
image rotate

【図2−2】
image rotate

【図2−3】
image rotate

【図2−4】
image rotate

【図4−1】
image rotate

【図4−2】
image rotate

【図4−3】
image rotate

【図4−4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−526886(P2011−526886A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516197(P2011−516197)
【出願日】平成21年7月4日(2009.7.4)
【国際出願番号】PCT/PL2009/050010
【国際公開番号】WO2010/002283
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(511005011)
【Fターム(参考)】