説明

持続放出性鎮痛性化合物

【課題】 血漿のような生理学的液に相対的に不溶性であり、かつ血漿のような生理学的液中に溶解される時に、一種以上の鎮痛性化合物又は組成物に戻る、血漿のような生理学的液に暴露される前に安定な化合物及び組成物を提供すること。
【解決手段】 製薬的に活性な化合物は、2つの独立に活性な鎮痛性成分を生理学的に不安定なリンカーを通して共有結合させてなる。好適な実施態様は、モルヒネのようなオピオイドをオピオイド又は非オピオイド化合物からなる群より選ぶ少なくとも1つの鎮痛性化合物に生理学的に不安定なリンカーを通して共有結合させてなる。適した共有リンカーを2つの独立に活性な鎮痛性化合物に1つ以上のラクトン、ラクタム、又はスルホンアミド結合を通して共有結合させる。適したリンカーは、内因性カルボキシレート、アミド、及びスルホンアミド成分、並びに前述したラクトン、ラクタム、又はスルホンアミド結合を形成する外因性成分を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的に哺乳動物における急性又は慢性の苦痛を治療するための化合物、組成物、製造品及び方法に関する。特に、本発明は、全身系の悪い副作用を低減し又は除きながら、局部的苦痛を取り除く持続放出性システムに関する。
【背景技術】
【0002】
苦痛応答は、保護反射であり、個人に好ましくない状況及び組織損傷を警告する。下記の検討は、ヒトにおける苦痛処理に焦点を合わせるが、当業者ならば、苦痛の一般的な概念が哺乳動物全般に適用可能であり、かつ苦痛処理の概念がヒト医学ばかりでなく獣医医学にも適用可能であることを認識するはずである。
【0003】
苦痛は、病因、持続期間及び激しさによって分類することができる。苦痛は、病理学的には、体因性(すなわち器質性)又は心因性(苦痛の激しさ及び/又は持続期間を説明するのに十分な器質性病理学が付随しないで起きる)として分類することができる。体因性苦痛は、更に傷害感受性(身体の又は内蔵の苦痛感応性神経繊維の刺激なしで起きる)或は神経病(神経システムの機能障害から生じる)として下位に分類することができる。
【0004】
持続期間に関しては、苦痛は、急性か又は慢性のいずれかとして分類されるのが普通である。急性苦痛は、1ヶ月よりも短い間続き、又は道理上続くと予想されるのに対し、慢性苦痛は、急性組織損傷の後1ヶ月よりも長い間続き、或は3ヶ月よりも長い間存続する又は再発するのが普通である。慢性苦痛は、また、経時的に悪くなる又は存続すると予想される、又は実際にそうなる苦痛(あるタイプの癌に伴う苦痛のようなもの)も含む。慢性苦痛は、睡眠低下、食欲低下、食欲不振、性欲減退、腸運動性の低下、及び終局的に鬱病の徐々の発症が伴われ得る。
【0005】
急性苦痛は、手術や外傷に伴うのがしばしばである。急性の術後の苦痛の強さは、実施される外科処置の程度、個人の苦痛の激しさ、及び手術中に用いられる痲酔処理のタイプに応じて相当に変わる。胸郭及び上腹の領域に関する大手術は、最も強い術後の苦痛を誘発するのが普通である。広範囲の整形外科手術もまた強い術後の苦痛を生じる。
【0006】
苦痛処理の最新の傾向は、予防の方に向いている、これは、事後に苦痛を治療することに比べて、苦痛を予防するのが一層容易でありかつ一層有効であるのが普通であるからである。また、苦痛を伴うホルモンストレス応答は、患者に有害と考えられ、かつ治癒プロセス及び総括回復を妨げる傾向にある。苦痛は、鎮痛剤を投与することによって制御されるのが普通である。鎮痛剤は、オピエート、アゴニスチック−アンタゴニスチック剤、及び抗炎症剤を含む。
【0007】
術後直ぐの期間中最も一般的に使用される苦痛治療は、オピオイドのようなオピエート鎮痛剤を、経口であろうと又は非経口であろうと(例えば、静脈内に、筋間に、又は皮下に)反復投与することである。すべてのオピオイドの効能は、おおよそ似ており、オピオイドは間隔を置いて適当に投与することにより最もひどい苦痛に対して一般的に有効であると考えられる。しかし、オピオイドは、広範囲の悪い副作用を有し、それらの有効性を最小にする。
【0008】
オピオイドを使用することに伴う副作用は、呼吸作用抑制、反射咳低下、気管支けいれん、悪心、嘔吐、ヒスタミンの放出、末梢血管拡張、起立性低血圧、心臓への迷走神経性衝撃、平滑筋(括約筋)の収縮、胃腸管ぜん動運動低下、尿遺残、アドレナリン及び抗利尿ホルモンの刺激される放出、体温及び睡眠パターンの調節、耐性及び嗜癖の変化を含む。
【0009】
呼吸作用機能への負の作用は、術後の哺乳動物患者にとって特に重要である。全身麻酔下の大手術の過程中に、哺乳動物患者は、麻酔剤によって睡眠の状態にされ、筋弛緩薬によって麻痺され、挿管され、機械的換気装置上に置かれ、鎮痛剤を与えられるのが典型的である。これらの処置のすべては、呼吸衝動を抑制することに直接的及び間接的作用を有し、術後に哺乳動物患者が呼吸困難を有し得るという最終結果になる。オピエートは、呼吸作用抑制、反射咳低下を引き起こし得、かつ気管支けいれんを引き起こし得るので、哺乳動物患者に手術直後に呼吸作用機能を妨げるのを回避するのに苦痛制御するためにオピエートを投与することは勧められない。逆に、哺乳動物患者は、オピエートの投与が、呼吸作用機能への衝撃により禁忌されることから、有効な術後苦痛制御がはばまれる。
【0010】
オピオイドに加えて、通常使用されるその他のクラスの鎮痛剤は、アゴニスチック−アンタゴニスチック鎮痛剤、非ステロイド系抗炎症薬剤、及び精神活性薬剤を含む。アゴニスチック−アンタゴニスチック鎮痛剤は、中等度〜ひどい苦痛に対して有効であるが、それらのアンタゴニスチック性質により、それらの鎮痛効能は、投与量を所定のレベルを超えて増大させることによって増大しない。その上に、アゴニスチック−アンタゴニスチック鎮痛剤の投与量が多くなる程、頻拍、血圧の上昇、及び興奮のような不快な交感神経作用及び心因性副作用を伴うのがしばしばである。しかし、呼吸作用抑制の危険もまた、投与量が多くなることの鎮痛活性減少に従って減少する。非ステロイド系抗炎症剤の副作用は、胃痛、ぜんそくの哺乳動物患者の気管支痙攣、及び耳鳴を含む。
【0011】
非オピオイド鎮痛剤のいくつかの化学的クラスは、アセトアミノフェン、インドール、例えばエトドラク(etodolac)(エトドール酸(etodolic acid)、抗炎症鎮痛剤)及びインドメタシン(抗炎症剤、解熱剤、鎮痛剤)のようなもの、ナフチルアルカノン、例えばナブメトン(抗炎症鎮痛剤)のようなもの、オキシカム、例えばピロキシカム(抗炎症薬剤)のようなもの、プロピオン酸、例えばフェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセンナトリウム、及びオキサプロジンのようなもの、サリチレート、例えばアスピリン、コリンマグネシウムトリサリチレート、及びジフルーニサルのようなもの、フェナメート、例えばメクロフェナム酸及びメフェナム酸のようなもの、並びにピラゾール、例えばフェニルブタゾンプレドニゾロンのようなものを含む。一層新規なシクロオキシゲナーゼII選択抑制剤(COX−2)、例えばロフェコキシブ、及びセロコキシブのようなものも同様に苦痛を長期処置するための表示を有する抗炎症鎮痛薬剤である。
【0012】
NSAIDは、それらがシクロオキシゲナーゼを有効に抑制し、それにより炎症応答の本質的な部分であるプロスタグランジン合成を減少させるので、手術後の苦痛を処置及び予防するのに特に有用である。古典的なNSAIDであるアスピリンは、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、及びフェノプロフェンのような多数のその他のNSAID薬剤が加えられてきた。しかし、少なくとも相当数の患者は、NSAIDに過剰に感応性であり、軽い耳鳴から中等度〜ひどい腸障害、例えば消化性潰瘍形成まで、極過敏症までの範囲の反応を有する。NSAIDの臨床的有用性は、肝臓壊死、肉芽腫性肝炎、胆汁うっ滞性肝炎、血清アミノトランスフェラーゼの一過性増大;液体遺残、及びナトリウム排泄作用低下、それに続く高カリウム血症、脂肪尿症及びアミバ(amiva)を含むその他の潜在的悪作用によって更に制限される。中等度〜ひどい腸障害は、NSAID治療の患者回避に対して責任を負うべきずば抜けて最も通常の副作用であるので、非経口投与ルートは、手術から回復する少なくともかなりの小数の者にとり特に魅力的であると思われるであろう。静脈内、筋関内及び皮下注入のような腸管外投与モードは、それらがそれらの投与について軽い(職業看護ケア)から極端(中心線)までの範囲のそのような不都合を要する限り、理想より劣ることが分かった。
【0013】
上述した通りに、NSAIDの抗炎症性は、それらを苦痛を処置及び予防するための治療剤として特に魅力的なものにする。その他の抗炎症薬剤は、コルチコステロイドを含み、局部ルートの投与において大きな見込みを示した。しかし、コルチコステロイドの全身性作用は、手術後及び深い組織損傷関係の苦痛を処置するためのそれらの適性を大きく低減させる。
【0014】
鎮痛剤に付随するその他の負の副作用は、耐性及びこれらの鎮痛剤、特にオピオイドへの終局的な身体的依存性を含み、それにより苦痛処置の有効性を低減させ、慢性的苦痛の苦しみを続ける。
【0015】
オピオイド薬剤の例は、コデイン、フェンタニール、ヒドロモルホン、レボファルノール、メペリジン、モルヒネ、モルフィン、オキシコドン、オキシモルホン、プロポキシフェン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、デゾシン、ナルブフィン、及びペンタゾシンを含む。これらの薬剤は、半減期、全身系対末梢活性、代謝されて望ましくない代謝産物を形成する傾向、黒色症を引き起こす傾向、オピオイド耐性及び身体的又は心理学嗜癖を誘発する傾向に関して変わる。
【0016】
例えば、オピオイドに依存する個人からのモルヒネ、ヘロイン、又は同様の作用期間を有するその他のオピオイドアゴニストの退薬症状は、オピオイドを最後に投与して8〜12時間した後に、涙液分泌、鼻漏、あくび、及び発汗を生じる。退薬症状が進行するにつれて、個人は、瞳孔散大、食欲不振、鳥肌、落ち着かない、過敏、及び震えを受けることになろう。モルヒネ及びヘロインについて48〜72時間である退薬症状のピーク強度は、増大する過敏性、不眠症、顕著な食欲不振、激しいあくび、ひどいくしゃみ、涙液分泌、鼻風邪、虚弱、うつ病、血圧及び心拍数の上昇、悪心、嘔吐、腸痙攣及び下痢に悩む。個人は、通常、異常なこむら返り、筋肉痙攣及びキック運動、及び背中及び四肢の骨及び筋肉の苦痛ばかりでなく、悪寒がのぼせや発汗と交互に来ることを経験し、かつ二酸化炭素への白血球及び誇張された呼吸作用応答を示す。個人は、食べたり又は飲んだりせず、嘔吐、発汗及び下痢と組み合わされる時に、減量、脱水、及びケトーシスを生じるのが典型的である。モルヒネ及びヘロインからの退薬症状は、7〜10日で消失するが、薬剤依存性個人は、退薬症状期間中大いに苦しむ。ナロキソンのようなオピオイドアンタゴニスト薬剤を個人に投与するならば、退薬症状は、腸管外投与の後数分以内で発現し、30分以内でピーク強度に達し、オピオイドを与えずにおくのに比べて一層ひどい退薬症状を有する。モルヒネ様オピオイドの退薬症状は、同じ又は同様の退薬症状を生じることになり、症状の強度はモルヒネ様オピオイドの作用期間に依存する。
【0017】
適したオピオイドを個人に与えるならば、薬剤退薬症状及びそれらに付随する苦痛は、軽減されることになるであろうが、これは、個人が単に一種のオピオイドへの依存を別のオピオイドへの依存に替えることになるだけになり得る。モルヒネ又はヘロインのようなオピオイドに依存する個人の場合に、モルヒネ様活性を有するオピオイドであるメタドンが、薬剤依存性個人に毎日のベースで与えられる。メタドンは、オピオイド退薬症状を抑制しかつすべてのオピオイドの陶酔作用を減少させるが、メタドンを突然に止めるならば、モルヒネからのものと同様な退薬症状が、強さが弱いにもかかわらず一層長期に現れるであろう。
【0018】
上述した非ステロイド系鎮痛化合物(例えば、NSAID、オピオイド麻酔等)は、血漿のような生理学的溶液に相対的に溶解性であり、従って放除用途に不適当であり、それにより鎮痛化合物は、苦痛原因外傷の近辺に苦痛を防ぎ、制御し又は低減するために注入される。幾種かのステロイド系抗炎症薬剤は、非ステロイド系鎮痛剤と同じ不利を被るが、他方、幾種かのコルチコステロイドのような他のものは、筋間内に投与される時に、長期に軽減するのに適している。しかし、ステロイドが、免疫抑制性作用のような全身系作用を有する傾向は、それらを手術後の苦痛処置用には所望より劣るものにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
よって、血漿のような生理学的液に相対的に不溶性である、個人における苦痛を防ぎ、処置し、改良し又は低減するのに有用な化合物及び組成物についての要求が存在する。
【0020】
更に、血漿のような生理学的液に相対的に不溶性であり、かつ血漿のような生理学的液中に溶解される時に、一種以上の鎮痛性化合物又は組成物に戻る、血漿のような生理学的液に暴露される前に安定な化合物及び組成物についての要求が存在する。
【0021】
更に、ヒト又は非ヒト動物における創傷、損傷、傷、外傷、手術切開、又はその他の苦痛の源の近辺において鎮痛剤の持続放出性に有用な化合物及び組成物についての要求が存在する。
【0022】
更に、急性又は慢性の苦痛を経験する或は経験すると予想する個人を治療するに、一種以上の鎮痛剤を個人における苦痛位置の近辺に、苦痛を防ぎ、処置し、改良し又は低減するのに有効な濃度で、都合の悪い全身系作用を避けながら放出する方法についての要求が存在する。
【0023】
更に、呼吸作用抑制、睡眠パターンの乱れ、食欲低下、及び身体的依存のような在来の鎮痛剤に伴う有害な副作用、麻酔薬剤への嗜癖、退薬症状に付随する苦痛及び麻酔薬剤に替えて置換薬剤であるメタドンへの依存無しで苦痛の有効な制御をもたらす、急性又は慢性の苦痛を治療するための方法、組成物及び化合物についての要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記の及びその他の要求は、第一鎮痛性成分を少なくとも一つの第二鎮痛性成分に生理学的に不安定なリンカーを通して共有結合させてなる化合物、或はその塩を提供する、本発明に従う実施態様によって満足される。
【0025】
前記の及びその他の要求は、第一鎮痛性成分を少なくとも一つの第二鎮痛性成分に生理学的に不安定なリンカーを通して共有結合させてなる製薬的化合物、或はその製薬的に許容し得る塩を提供する、本発明に従う実施態様によって満足される。
【0026】
前記の及びその他の要求は、苦痛緩和又は苦痛予防を必要としている個人に、第一鎮痛性成分を少なくとも一つの第二鎮痛性成分に生理学的に不安定なリンカーを通して共有結合させてなる製薬化合物、又は製薬上許容し得るその塩を投与することを含む苦痛緩和又は苦痛予防を必要としている個人における苦痛を予防又は緩和する方法を提供する、本発明に従う実施態様によって満足される。
【0027】
発明の一態様は、一般式A−L−B(式中、Aは、患者において鎮痛性応答を生じるための治療的に活性な形態を有する非ステロイド系抗炎症薬剤(NSAID)成分又はオピオイド薬剤成分を表し;Lは、A及びBを結合してプロドラッグを形成するための共有リンカーを表し、該リンカーは、生理的条件下で開裂されてAの該治療的に活性な形態を生じ;並びにBは、Aに結合される時に、A単独の治療的に活性な形態に比べて低い溶解度を有するプロドラッグを生じる成分を表わす)を有するプロドラッグを含む持続放出性鎮痛性システムに関する。
【0028】
本発明の別の態様は、一般式A::B(式中、Aは、患者において鎮痛性応答を生じるための治療的に活性な形態を有するNSAID成分又はオピオイド薬剤成分を表し;「::」は、生理的条件下で解離してAの該治療的に活性な形態を発生するAとBとの間のイオン性結合を表し;及びBは、Aにイオン的に結合される時に、Aの治療的に活性な形態に比べて低い溶解度を有するプロドラッグを生じる成分を表わす)有するプロドラッグを含む持続放出性鎮痛性システムを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
所定の実施態様では、L結合は体液中で加水分解される。その他の実施態様では、L結合は酵素開裂される。使用することができる結合の例は、エステル、アミド、カルバメート、カーボネート、環状ケタール、チオエステル、チオアミド、チオカルバメート、チオカーボネート、キサンテート及びホスフェートエステルからなる群より選ぶ加水分解性基を1つ以上含む。
【0030】
好適な実施態様では、主題の組成物は、無菌でありかつ発熱性物質が存在しない。
【0031】
所定の好適な実施態様では、Aの治療的に活性な形態は、前記プロドラッグに比べて水への溶解度が少なくとも5倍大きい、更に一層好ましくは前記プロドラッグに比べて水への溶解度が少なくとも10、50又は100倍でさえ大きい。
【0032】
所定の好適な実施態様では、Aの治療的に活性な形態は、プロドラッグのlogP値に比べて少なくとも0.5logP単位小さいlogP値、更に一層好ましくはプロドラッグのlogP値に比べて少なくとも1、1.5又は2logP単位でさえ小さいlogP値を有する。
【0033】
所定の好適な実施態様では、プロドラッグは、その結合された形態で、Aの治療的に活性な形態の無痛覚を生じるためのED50に比べて少なくとも10倍大きいED50、更に一層好ましくはAの治療的に活性な形態の無痛覚を生じるためのED50に比べて少なくとも100、1000又は10000倍でさえ大きいED50を有する。すなわち、多くの実施態様において、プロドラッグ自体は、無痛覚を誘発することに関し、不活発である。
【0034】
所定の実施態様では、Bは疎水性脂肪族成分である。例えば、Bは、プロドラッグから開裂された後に、生物学的に不活性な成分になることができる。その他の実施態様では、Bは、該リンカーLの開裂又は該イオン性結合の解離の際に発生される治療的に活性な形態を有する別の鎮痛性薬剤成分であり、同じで薬剤でも又はAと異なる薬剤でもよい。単に例示するために、Bは、NSAID又はオピオイドになることができる。
【0035】
所定の実施態様では、Bはオピオイドである。例えば、オピオイドは、アポモルヒネ、ブプレノルフィン、コデイン、ジヒドロコデイン、ジヒドロエトルフィン、ジプレノルフィン、エトルフィン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レボファルノール、メペリジン、メトポン、oメチルナルトレキソン、モルヒネ、ナロキソン、ノルモルヒネ、オキシコドン、及びオキシモルホンからなる群より選ぶ活性な形態を有するように選ぶことができる。その他の実施態様では、オピオイドは、アルフェンタニール、β−ヒドロキシ−3−メチルフェンタニール、4−メトキシメチルフェンタニール、4−メチルフェンタニール、カーフェンタニール、フェンタニール、ロフェンタニール、メペリジン、レミフェンタニール、及びスフェンタニールからなる群より選ぶ。好適な実施態様では、オピオイドの活性な形態は、沈痛性オピオイドである。
【0036】
所定の実施態様では、Aは、下記の一般式で表されるNSAID成分である:
【化1】

式中、R8は低級アルキル、低級アルコキシ、フルオロ、クロロであり;
R9及びR10は、各々、各々の存在に関係なく、水素、低級アルキル、フルオロ、クロロ、又はトリフルオロメチルであり;
R11は水素、低級アルキル又はベンジルであり;
R12は水素又は低級アルキルであり;
R13は水素、低級アルキル又はR12が水素である時に、ベンジルであり;
R14は水素、低級アルキル、低級アルコキシ、フルオロ、クロロ、又はブロモであり;
R15は水素又はR8が水素又はクロロでありかつR9が水素又はトリフルオロメチルである時に、トリフルオロメチルである。
【0037】
所定の実施態様では、NSAIDは、ピロキシカム、ジクロフェナク、エトドラク、インドメタシン、ケトララク、オキサプロジン、トルメチン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、イブプロフェン、メファンアミド酸、スリンダク、アパゾン、フェニルブタゾン、アスピリン、セレコキシブ、及びロフェコキシブ、並びにそれらの誘導体から選ぶ。 所定の好適な実施態様では、NSAIDの活性な形態は、ベンゼン酢酸誘導体、例えばジクロフェナク又はジクロフェナク誘導体のようなものである。
【0038】
その他の好適な実施態様では、NSAIDは、NSAIDのアリール酢酸基、例えばナプロキセン又はナプロキセン誘導体のようなものである。
【0039】
発明の別の態様は、下記式の化合物(共薬剤)を提供する:
A1−L−A2
式中、Lは、A1及びA2を少なくとも1つの生理学的に不安定な共有結合を通して共有結合する結合基であり;
1は第一鎮痛性化合物の残基であり;及び
2は、A1と同じでも又は異なってもよい第二鎮痛性化合物の残基である。
【0040】
所定の好適な実施態様では、A1及び/又はA2の治療的に活性な形態は、前記共薬剤に比べて水への溶解度が少なくとも5倍大きい、更に一層好ましくは前記共薬剤に比べて水への溶解度が少なくとも10、50又は100倍でさえ大きい。
【0041】
所定の好適な実施態様では、A1及び/又はA2の治療的に活性な形態は、共薬剤のlogP値に比べて少なくとも0.5logP単位小さいlogP値、更に一層好ましくは共薬剤のlogP値に比べて少なくとも1、1.5又は2logP単位でさえ小さいlogP値を有する。
【0042】
前記及びその他の要求は、第一鎮痛性成分を少なくとも一つの第二鎮痛性成分に生理学的に不安定なリンカーを通して共有結合させてなる化合物を含む製造品、及びポリマーマトリックスを提供する、本発明に従う実施態様によって満足される。
【0043】
前記及びその他の要求は、鎮痛治療を必要としている個人を治療する鎮痛方法であって、該個人に、第一鎮痛性成分を第二鎮痛性成分に生理学的に不安定なリンカーを経て共有結合させてなる組成物を鎮痛上有効な量で投与することを含む方法を提供する、本発明に従う実施態様によって満足される。
【0044】
前記の及びその他の要求は、下記式の化合物又はそれらの塩を提供する本発明に従う本発明に従う実施態様によって満足される:
【化2】

式中、A2は第二鎮痛性成分であり;
1は直接結合又はリンカーであり;
各々の
【化3】

は、原子価が許す通りに、単結合又は二重結合であり;
1はH、CH3又はOHであり;
2はH、C1−C6−アルキル、C3−C6−シクロアルキル−C1−C6−アルキル、C1−C6−アルケニル、C1−C6−アルカノイル、C3−C6−シクロアルケニル−C1−C6−アルキル、C3−C6−シクロアルキル−C1−C6−アルカノイル、又はC3−C6−シクロアルケニル−C1−C6−アルカノイルであり;
3はH、オキソ(=O)、ヒドロキシル(−OH)、又はC1−C12−アルカノイル、又は―L2―A3であり;
ここで、L2は直接結合又はリンカーであり、A3は、A1及びA2と同じでも又は異なってもよい鎮痛性化合物の残基であり;
4−R7はH、メチル、エチル、F、Cl、Br、又はIであり;
並びにG1及びG2は各々Hであり或は一緒になってジヒドロフラノ環の酸素を表わす。
【0045】
本発明のこれらやその他の態様、性質、目的及び利点は、当業者にとり、下記の記述、例、及び特許請求の範囲の記載を検討する際に明らかになるものと思う。
【0046】
発明の詳細な説明
本発明は、痛みの処置及び/又は予防のための化合物、これらの化合物を含む製薬組成物、該化合物をポリマーマトリックスと組み合わせて含む製品、並びに鎮痛処置を必要としている個体に該化合物を投与することから成る痛み処置方法を提供する。
【0047】
本発明は、それぞれが第一鎮痛性成分及び第二鎮痛性成分を含み、2つの鎮痛性成分が生理学的に不安定な結合によって互いに結合している類の鎮痛性化合物を提供する。これら2つの鎮痛性成分は同一であっても異なっていてもよく、実際に全く異なる類の鎮痛薬からであってよい。例えば第一鎮痛性成分はオピオイドであって第二鎮痛性成分は非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)であってよい。
【0048】
生理学的に不安定な結合は、血漿のような生理学的液体中に見出されるものに近い条件下で不安定な任意の結合であってよい。この結合は直接結合(例えばアミド、エステル、カーボネート、カルバメート、スルホネート若しくはスルファメート結合)であってもよく、結合基(例えばC1〜C12ジアルコール、C1〜C12ヒドロキシアルカン酸、C1〜C12ヒドロキシアルキルアミン、C1〜C12二酸、C1〜C12アミノ酸若しくはC1〜C12ジアミン)であってもよい。特に好ましい結合は、直接アミド、エステル、カーボネート、カルバメート及びスルファメート結合、並びにコハク酸、サリチル酸、ジグリコール酸、オキサ酸、オキサメチレン及びそれらのハロゲン化物を介した結合である。これらの結合は生理学的条件下(これは一般的に約6〜約8のpHを意味する)で不安定なものである。これらの結合の不安定さは、結合のタイプ、生理学的液体の正確なpH及びイオン強度、並びに生体内で加水分解反応を触媒する傾向がある酵素が存在するかしないかに依存する。一般的に、生体内での結合の不安定さは、その化合物が生理学的液体中に可溶化されていない時の結合の安定性と比較して評価される。かくして、本発明に従ういくつかの化合物は、いくつかの生理学的液体中で比較的安定であってもよいが、それらが生である場合や非生理学的液体(例えばアセトンのような非水性溶剤)中に溶解させた場合と比較して生体内で(又は自然に起こる場合もシミュレーションを行った場合も生理学的液体中に溶解させた時に生体外で)は比較的加水分解を受けやすいものである。かくして、不安定な結合とは、その薬剤を水性溶液、特に血漿のような生理学的液体中に溶解させた時に、反応が加水分解生成物の方に駆動されるような結合である。
【0049】
第一鎮痛性成分及び第二鎮痛性成分は同一であっても異なっていてもよく、一般的に言えば、ある結合と縮合して加水分解的に不安定な結合を形成することができる基を有するか又はかかる基を有するのに適合したものであってもよい任意の鎮痛性成分である。かかる基の例には、ヒドロキシル(−OH又はアルコール)基、アミン(−NH2)基、酸(−COOH)基、スルホンアミド(−SO2NH2)基及びスルホネート(SO3H)基がある。第一鎮痛性成分及び第二鎮痛性成分は、オピオイド、非ステロイド系抗炎症剤、ステロイド系抗炎症剤、及びアセトアミノフェン様のp−アミノフェノール誘導体のようなその他の鎮痛薬から選択することができる。
【0050】
本発明に従うある種の具体例に従えば、第一鎮痛性成分は、アヘン剤、例えばコデイン、フェンタニール、ヒドロモルホン、レボルファノール、メペリジン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、プロポキシフェン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、デゾシン、ナルブフィン、ペンタゾシン、NSAID、例えばジクロフェナク、エトドラク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ナブメトン、ピロキシカム、アセトアミノフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、アスピリン、コリンマグネシウムトリサリチレート、ジフルニサル、メクロフェナム酸、メフェナム酸、フェニルブタゾン、グルココルチコステロイド、例えばフルオシノロンアセトニド、プレドニゾロン、プレドニゾロンt−ブチルアセテート、トリアムシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、又はそれらのプロドラッグ若しくは活性代謝産物より成る群から選択される。本発明に従う好ましい具体例において、第一鎮痛剤はモルヒネである。
【0051】
本発明に従うある種の具体例に従えば、第二鎮痛剤は、アヘン剤、例えばコデイン、フェンタニール、ヒドロモルホン、レボルファノール、メペリジン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、プロポキシフェン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、デゾシン、ナルブフィン、ペンタゾシン、NSAID、例えばジクロフェナク、エトドラク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ナブメトン、ピロキシカム、アセトアミノフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、アスピリン、コリンマグネシウムトリサリチレート、ジフルニサル、メクロフェナム酸、メフェナム酸、フェニルブタゾン、フルオシノロンアセトニド、プレドニゾロン、プレドニゾロンt−ブチルアセテート、デキサメタゾン、又はそれらのプロドラッグ若しくは活性代謝産物より成る群から選択される。本発明に従う好ましい具体例において、第二鎮痛剤は、モルヒネ、ナプロキセン、フルオシノロンアセトニド、アスピリン、フルルビプロフェン、インドメタシン、及びナプロキセン、並びにジクロフェナクから選択される。
【0052】
上述のように、第一鎮痛性成分及び第二鎮痛性成分は直接結合又はリンカーを介した間接結合によって共有結合していることができる。この関係は包括的に次式(I)で表わされる。
1−L−A2 (I)
ここで、A1及びA2はそれぞれ、上で定義した第一鎮痛性成分及び第二鎮痛性成分の残基であり、L基は直接結合又は上で定義したようなリンカーである。Lが直接結合である場合、上記の式(I)はより簡潔に式(II)のように表わすことができる。
1−A2 (II)
ここで、A1及びA2は上で定義した通りである。
【0053】
式(I)の化合物を血漿のような生理学的液体に曝した場合、これは反応式(1)に従って加水分解を受ける。
1−L−A2+2H2O=A1+A2+L (1)
【0054】
Lが直接結合である特別な場合には、上記の反応式の右側のLはなく、反応式(1)は反応式(2)に縮められる。
1−A2=A1+A2 (2)
【0055】
式(I)及び(II)並びに反応式(1)及び(2)の左側において、A1及びA2が第一鎮痛性成分及び第二鎮痛性成分の残基(即ち本発明に従う鎮痛薬の、加水分解の際に放出される時の第一鎮痛性成分及び第二鎮痛性成分自体に相当する部分)を表わし、他方、反応式(1)及び(2)の右側のA1及びA2は上で定義した通りの第一鎮痛性成分及び第二鎮痛性成分を表わす、ということは、当業者ならば認識するであろう。この規則は、添付した特許請求の範囲において採用されており、当業者ならば本発明の範疇でA1及びA2が単独である場合にはそれらがそれぞれ第一鎮痛性成分及び第二鎮痛性成分を表わし、それらが上記の式(I)や式(II)のように式中で結合している場合にはそれらがそれぞれ第一鎮痛性成分及び第二鎮痛性成分の残基を表わすということを理解するはずである。
【0056】
前記の要望及びその他の要望は、次式の化合物を提供する本発明に従う具体例によって満たされる。
【化4】

(ここで、A2は第二鎮痛性成分であり、
1は直接結合又はリンカーであり、
次式:
【化5】

はそれぞれ単結合又は二重結合であり、
1はH、CH3又はOHであり、
2はH、C1〜C6−アルキル、C3〜C6−シクロアルキル−C1〜C6−アルキル、C1〜C6−アルケニル、C1〜C6−アルカノイル、C3〜C6−シクロアルケニル−C1〜C6−アルキル、C3〜C6−シクロアルキル−C1〜C6−アルカノイル又はC3〜C6−シクロアルケニル−C1〜C6−アルカノイルであり、
3はH、オキソ(=O)、ヒドロキシル(−OH)、C1〜C12−アルカノイル又は−L2−A3であり、
ここで、L2は直接結合又はリンカーであり、
3は鎮痛性化合物の残基であり、これはA1及びA2と同一であっても異なっていてもよく、
4〜R7はH、メチル、エチル、F、Cl、Br又はIであり、
1及びG2はそれぞれHであるか又は一緒になってジヒドロフラノ環若しくはその塩の酸素を形成するかである。)
【0057】
本発明に従う好ましい類の化合物は、式(IV)で表わされる。
【化6】

(ここで、A2、L1、R1及びR3は上で定義した通りであり、
次式:
【化7】

はそれぞれ単結合又は二重結合であり、
2はメチル、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル又は3−プロペニルである。)
【0058】
本発明に従う特に好ましい類の化合物は、式(V)で表わされる。
【化8】

(ここで、A2及びL1は上で定義した通りである。)
【0059】
本発明に従ういくつかの好ましい具体例において、式(V)中のA2部分はモルヒネ、ナプロキセン、フルオシノロンアセトニド、アスピリン、フルルビプロフェン、インドメタシン、ジクロフェナク及びナプロキセンの残基である。
【0060】
本発明に従う別の特に好ましい類の化合物は、式(VI)で表わされる。
【化9】

(ここで、A2、A3、L1及びL2は上で定義した通りである。)
【0061】
本発明に従ういくつかの好ましい具体例において、A2及びA3部分は共にナプロキセン残基である。別の好ましい具体例において、A2及びA3は共にジクロフェナク残基である。
【0062】
本発明に従う化合物は、遊離の形で調製することもでき、それらの無機酸、カルボン酸若しくはアミン塩のような塩として調製することもできる。本発明に従う化合物は、非晶質又は結晶質の形として調製することもでき、酸無水物又は水和物の形にあることもできる。本発明に従う化合物は、エステルのようなプロドラッグとして存在していてもよい。これらの場合のそれぞれにおいて、臨界的な特徴は、本発明の従う化合物は生理学的条件以外のいくつかの条件下で安定であり、生理学的条件下では分解して上記のような第一鎮痛性化合物及び第二鎮痛性化合物(これらの鎮痛性化合物は同一であっても異なっていてもよい)を形成することができるということである。
【0063】
本発明に従う化合物は、下記の反応式1〜6に図示した態様で合成される。一般的に、第一鎮痛性成分と第二鎮痛性成分とを直接結合させるべき場合には、第一成分と第二成分とを生理学的条件下において不安定な結合を形成させるのに好適な条件下で縮合させる。場合によっては、鎮痛性成分の一方、他方又は両方の上のいくつかの反応性基をブロックすることが必要である。鎮痛性成分をオキサメチレン、コハク酸又はジグリコール酸のようなリンカーを介して共有結合させるべき場合には、最初に第一鎮痛性成分とリンカーとを縮合させるのが有利である。場合によっては、アセトニトリルのような好適な溶媒中でEDCI及びDCCを含むカルボジイミドのような好適な触媒の存在下で、又は縮合の水若しくは他の反応生成物を追い払うのに好適な条件(例えば還流)下で、又はそれらの2つ若しくはそれ以上を組み合わせて、反応を実施するのが有利である。第一鎮痛性成分をリンカーと縮合させた後に、第一成分とリンカーとが一緒になったものを次いで第二鎮痛性成分と縮合させることができる。再び、場合によっては、アセトニトリルのような好適な溶媒中でEDCI及びDCCを含むカルボジイミドのような好適な触媒の存在下で、又は縮合の水若しくは他の反応生成物を追い払うのに好適な条件(例えば還流)下で、又はそれらの2つ若しくはそれ以上を組み合わせて、反応を実施するのが有利である。1つ以上の活性基がブロックされている場合には、所定の条件下でブロッキング基を除去するのが有利なことがあるが、しかしブロックされた基及びブロッキング基の加水分解生成物が生理学的に見て良性である場合には活性基をブロックされたままにしておくことが有利な場合もある。
【0064】
二酸、ジアルコール、アミノ酸等を好適なリンカーとして上に記載したが、その他のリンカーも本発明の範囲内であると考えられるということは、当業者ならば認識するであろう。例えば、本発明に従う化合物の加水分解生成物は二酸を含むことができるが、結合を作るために用いられる実際の試薬は例えば塩化スクシニルのようなハロゲン化ジアシル、又は無水コハク酸若しくは無水ジグリコール酸のような酸無水物であってもよい。他の可能な酸、アルコール、アミノ、スルファト及びスルファモイル誘導体を対応する酸を作るための試薬として用いることができるということは、当業者ならば認識するであろう。
【0065】
第一鎮痛性成分と第二鎮痛性成分とを共有結合によって直接結合させるべき場合には、本質的に同じ方法が実施されるが、但しこの場合にはリンカーを追加する工程の必要はない。共有結合を形成するのに好適な条件下で第一鎮痛性成分と第二鎮痛性成分とを単純に一緒にする。場合によっては、鎮痛性成分の一方、他方又は両方の上のある種の活性基をブロックすることが望ましいこともある。場合によっては、アセトニトリルのような好適な溶媒や、直接結合を形成させるのに好適なEDCI及びDCCを含むカルボジイミドのような触媒や、縮合の水若しくは他の反応副生成物を追い払うための条件(例えば還流)を用いるのが望ましいこともある。
【0066】
たいていの場合には第一成分と第二成分とをそれらの元々の形で直接結合させることができるが、活性基を誘導体化してそれらの反応性を高めることも可能であるということは、当業者ならば認識するであろう。例えば第一成分が酸であり且つ第二成分がアルコールである(即ち遊離のヒドロキシル基を持つ)場合には、第一成分を誘導体化して対応酸ハライド、例えば酸クロリドや酸ブロミドを形成させることができる。当業者ならば、本発明に従う化合物を作るために慣用の誘導体化された出発物質を用いることによって、本発明に従う化合物の収率を高めたり、生産コストを下げたり、純度を改善したりするための他の可能性が存在することを認識するであろう。
【0067】
本発明に従う例示的な反応式を下記及び実施例中の反応式1〜6に示す。当業者ならば、好適なリンカー及び鎮痛剤を出発物質として用いることによってこれらの反応式を概括することができるということを認識するであろう。
【0068】
本発明の焦点は、急性及び慢性の痛み、特に外科に関連する痛み、深組織外傷、腫瘍、裂傷及び擦傷の処置にある。痛みの予防は後の処置より効果的である傾向があるので、本発明の焦点は痛みの先手を打って予防することにある。しかしながら、本発明の化合物、組成物、物品及び方法はまた、後に痛みを処置するのにも用いることができ、例えば外傷後の状況や手術後の状況における痛みであって慣用の痛みの処置方法が試みられたが効果がなかったり耐えられなかったりということが認められたものの処置にも用いることができる。
【0069】
本発明の化合物が有用である場合の例は、手術後の痛みの管理の範疇にある。典型的な場合においては、個体に局所又は一般麻酔をかけ、個体の軟部組織に1つ以上の切開部を作り、そしてその切開部をクロージャー、例えばステープルや縫合によって閉じた。本発明に従う化合物は、手術の切開部の周辺部位、手術の外傷若しくは予備手術の外傷を負った軟部組織の周辺部又はその両方に直接植え込むことができる。本発明に従うある種の具体例に従えば、本発明に従う化合物を1種以上のポリマービヒクルと組み合わせるのが望ましいことがある。かかるポリマービヒクルは、バイオ腐食性又は非バイオ腐食性ポリマーのような任意の生理学的に耐性があるポリマーであってよい。
【0070】
本発明に従う組成物に有用なポリマーには、任意の生物学的に耐性のあるポリマーであって本発明に従う化合物に対して浸透性があるものや、本発明の化合物及び本発明の化合物が開裂した後の開裂生成物に対して浸透性があるもの、本発明の化合物を徐放的態様で放出するようなバイオ腐食性があるものが包含される。本発明に従うある種の具体例に従えば、ポリマーは、ポリマーからの本発明に従う化合物の放出速度における主要速度決定ファクターとはならないような浸透性を有する。本発明に従うある種の具体例に従えば、このポリマーは非バイオ腐食性のものである。本発明において有用な非バイオ腐食性ポリマーの例には、ポリビニルアルコール及びポリウレタンが包含される。本発明の別の具体例において、ポリマーはバイオ腐食性のものである。本発明において有用なバイオ腐食性ポリマーの例には、ポリ酸無水物、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリアルキルシアノアクリレート又はそれらの誘導体及びコポリマーが包含される。当業者ならば、ポリマーのバイオ腐食性又は非バイオ腐食性の選択は後により一層詳細に説明するようにシステムの最終的な物理的形に依存するということを認識するであろう。他の例示的ポリマーには、ポリシリコーン及びヒアルロン酸から誘導されたポリマーが包含される。当業者ならば、本発明に従うポリマーは、ポリマーからの低溶解性試薬の放出における主要速度決定ファクターとはならないような浸透性を付与するのに適した条件下で調製されるということを理解するであろう。
【0071】
さらに、好適なポリマーには、体液及び哺乳動物の組織と生物学的に適合し、そのポリマーが接触する体液中に本質的に不溶である天然物質(コラーゲン、ヒアルロン酸)又は合成物質が包含される。さらに、好適なポリマーはまた、ポリマー中に分散/懸濁される低溶解性試薬と体液中の蛋白質成分との間の相互作用を本質的に防止することもできるものである。体液中に迅速に溶解するポリマー若しくは高度に可溶なポリマー又は低溶解性試薬と蛋白質成分との相互作用を可能にするポリマーの使用は回避すべきである。何故ならば、ポリマーの溶解又は蛋白質成分との相互作用は薬剤の放出に影響を及ぼしてしまうからである。
【0072】
他の好適なポリマーには、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、酢酸ビニル(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリカルボン酸、ポリアルキルアクリレート、セルロースエーテル、ポリアルキル−アルキルアクリレートコポリマー、ポリエステルポリウレタンブロックコポリマー、ポリエーテル−ポリウレタンブロックコポリマー、ポリジオキサノン、ポリ−(β−ヒドロキシブチレート)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリエチレングリコール(PEG)及びPEO−PLAコポリマーが包含される。
【0073】
さらなる好適なポリマーは、Ashtonらの米国特許第6051576号明細書(2000年4月18日)に記載されているので、必要ならばこれを参照されたい。
【0074】
本発明は、本発明に従う化合物を含む物品であって、痛みの原因の周辺部位への植込み又は注入に適した前記物品を包含する。例えば整形外科手術の場合、本発明に従う物品は、本発明に従う化合物又は好適なポリマーと本発明に従う化合物とを含む本発明に従う組成物をコーティングされ又はクレバス若しくは凹み中に植え込まれたスクリューであってよい。本発明に従う物品の他の例には、外科用ステープル、外科用アンカー、ステント、縫合糸、他のタイプの外科用クロージャー、包帯、吸収パッド及び人工装具がある。さらに、本発明に従う物品は、生理学的環境中への徐々放出のために本発明に従う化合物又は組成物を含有するのに適合する植込み可能なカプセル又はその他の手段であってもよい。
【0075】
本発明はまた、体性痛(体の痛み)を処置するための方法をも提供する。本発明に従う方法は、侵害性(組織損傷性)の痛み及び神経障害性の痛みの両方の処置に有用である。侵害性の痛みの場合、好ましい投与態様は、開業医にとっては、侵害性痛み刺激源である場所又はその付近に化合物又は組成物を注入し又は植え込むものである。例えば、痛みの源が外科切開部である場合、切開部を閉じる前に切開部の下に本発明に従う化合物又は組成物を植え込むのが有利である。本発明の別の具体例においては、外科切開部を閉じた後にその切開部の周辺に本発明に従う化合物又は組成物を皮下注射する。
【0076】
本発明に従う方法は、有利には、本発明に従う化合物又は組成物を用い、静脈内、皮下、筋肉内若しくは他の非経口の注入態様又は外科植込みのような当技術分野において認められた態様で、それを必要としている個体に送出することができる。静脈内注射も可能だが、本発明に従う化合物及び組成物の組み合わされた特性は、それらを、痛み刺激の起点の周辺の軟部組織中への皮下又は筋肉内植込み又は注入に特によく適したものにする。本発明に従う好ましい具体例において、本発明に従う化合物は、痛み位置の周辺に直接注入できるペレットのような固体の形で調製される。本発明に従う別の具体例において、本発明に従う化合物は、無水の溶液又は懸濁液、例えばパーム油のような植物油中で調製して、筋肉内注射される。本発明に従う別の具体例において、本発明に従う化合物は、バイオ腐食性であってよいポリマーゲルと組み合わされて本発明に従う組成物を形成し、この組成物を痛みの起点である部位又はその付近の組織中に筋肉内又は皮下注射される。
【0077】
痛み刺激の起点は、一般的に痛みに関連する任意の種類の障害、例えば外科手術による切開部、外科手術によるものではない損傷、例えば挫傷、損傷若しくは裂傷、又は腫瘍であってよい。
【0078】
痛みの源が擦傷や挫傷、裂傷のような外科手術によるものではない組織の損傷である場合には、本発明に従う化合物又は組成物をその損傷の周辺に皮下又は筋肉内注射するのが有利である。
【0079】
痛みの源が癌性又は非癌性の腫瘍である場合には、本発明に従う化合物又は組成物をその腫瘍の周辺に皮下又は筋肉内注射するのが有利である。
【0080】
痛みの源が神経障害性のものである場合には、本発明に従う化合物又は組成物を機能不全を起こしている神経繊維の周辺に注入するのが有利である。当業者ならば、例えば神経繊維の同定及び位置確認のTENS(経皮電気的神経刺激)法に作用するのに適合した器具を用いて、機能不全を起こしている神経繊維を最初に検出することができるということを認識するであろう。
【0081】
本発明は主としてヒト用に意図されるが、獣医学における使用にも意図されるということが理解される。
【実施例】
【0082】
以下の実施例は、本発明に従う化合物の合成及び本発明の効果を例示する。
【0083】
例1
本発明の化合物(1)(モルヒネと1当量のナプロキセン)(反応式1)
アルゴン雰囲気下でアセトニトリル(3ミリリットル)中にモルヒネ(50mg、0.175ミリモル)を含有させて撹拌した懸濁液に、ナプロキセン(44mg、0.192ミリモル)を添加し、次いでEDCI(37mg、0.192ミリモル)を添加し、触媒量のDMAPを添加した。得られる濁った混合物を室温において一晩撹拌し、真空下で溶媒を除去した。残渣を酢酸エチル中に溶解させ、次いで水、重炭酸ナトリウム溶液、水、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を蒸発させた後の粗生成物をシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーによって精製して、本発明の化合物(1)45mgを得た。
1H−NMR(CDCl3)、1.65(d、3H)、2.40(s、3H)、3.88(s、3H)、4.10(m、2H)、4.85(d、1H)、5.26(m、1H)、5.74(m、1H)、6.55(d、1H)、6.67(d、1H)、7.12(m、2H)、7.48(dd、1H)、7.74(m、3H)。
【0084】
例2
本発明のジエステル化合物(2)(モルヒネとナプロキセン)(反応式1)
アルゴン雰囲気下でアセトニトリル(5ミリリットル)中にモルヒネ(89mg)を含有させて撹拌した懸濁液に、ナプロキセン(180mg、2.5当量)を添加し、次いでEDCI(150mg、2.5当量)を添加し、触媒量のDMAPを添加した。反応を達成させ、生成物を例1に記載したようにして単離して、本発明のジエステル化合物(2)(173mg)を得た。
1H−NMR(CDCl3)、1.58(d、3H)、1.60(d、3H)、2.41(s、3H)、3.86(s、3H)、3.88(s、3H)、5.12(m、2H)、5.36(m、1H)、5.54(m、1H)、6.51(d、1H)、6.60(d、1H)、7.07(m、4H)、7.44(m、2H)、7.66(m、6H)。
【0085】
例3
本発明の化合物(4)(モルヒネのジエステルとコハク酸)(反応式2)
モルヒネ(50mg、0.175ミリモル)を室温において無水ピリジン1.5ミリリットル中に溶解させ、この溶液にDMAP(3mg)を添加した。この反応混合物を室温において一晩放置し、蒸発乾固させた。モノエステル(3)を含有する粗製残渣をトルエンと共に蒸発させてピリジンの痕跡を除去し、次いで無水アセトニトリル3.5ミリリットル中に溶解させた。モルヒネ(50mg)を添加し、次いでEDCI(34mg、0.175ミリモル)及びDMAP(2mg)を添加した。この反応混合物を室温において一晩撹拌し、蒸発乾固させた。残渣を酢酸エチル中に溶解させ、水、重炭酸ナトリウム溶液、水及びブラインで洗浄した。溶媒を蒸発させて粗生成物を得て、これをカラムクロマトグラフィーによって精製して本発明の化合物(4)25mgを無色のフォームとして得た。
1H−NMR(CDCl3)、2.44(s、6H)、3.00(s、4H)、3.35(m、2H)、4.16(m、2H)、4.90(d、2H)、5.26(m、2H)、5.73(m、2H)、6,58(d、2H)、6,76(d、2H)。
【0086】
例4
本発明の化合物(5)(モルヒネとフルオシノロンアセトニド)(反応式3)
アルゴン雰囲気下で無水ピリジン(1.5ミリリットル)中にモルヒネ(40mg、0.14ミリモル)を含有させた溶液に、フルオシノロンアセトニドクロルギ酸塩(86mg、0.17ミリモル)を室温において添加した。得られた溶液を一晩撹拌し、溶媒を真空下で蒸発させた。残渣を酢酸エチル中に溶解させ、上記のように仕上げをした。シリカゲルを用いたクロマトグラフィーによって、本発明の化合物(5)43mgが得られた。
1H−NMR(CDCl3)、0.94(s、3H)、1.22(s、3H)、1.44(s、3H)、1.51(s、3H)、2.45(s、3H)、3.06(d、1H)、3.37(m、1H)、3.94(m、1H)、4.21(m、1H)、4.41(m、2H)、4,78(d、1H)、4,97(m、2H)、5.05(d、1H)、5.26(m、2H)、5.60(d、1H)、6.36(dd、1H)、6.42(s、1H)、6.64(d、1H)、6.90(d、1H)、7.19(d、1H)。
【0087】
例5
本発明の化合物(6)(フルオシノロンアセトニドとジグリコール酸部分を介して結合したモルヒネ)(反応式3)
例1に概説した手順に従い、モルヒネ(59mg、0.207ミリモル)、フルオシノロンアセトニドヘミジグリコレート(83mg、0.207ミリモル)、EDCI(40mg、0.207ミリモル)及びアセトニトリル(3ミリリットル)中のDMAPから本発明の化合物(6)を調製した。クロマトグラフィーによる精製によって、純粋な生成物55mgが得られた。
1H−NMR(CDCl3)、0.94(s、3H)、1.21(s、3H)、1.42(s、3H)、1.52(s、3H)、2.44(s、3H)、3.40(m、2H)、4.18(m、1H)、4.44(m、4H)、5.31(m、1H)、5.69(m、1H)、6.37(dd、1H)、6.43(s、1H)、6.63(d、1H)、6.78(d、1H)、7.15(dd、1H)。
【0088】
例6
本発明の化合物(7)(モルヒネとエタクリン酸)(反応式4)
例1の手順に従い、モルヒネ(80mg、0.280ミリモル)、エタクリン酸(93mg、0.308ミリモル)、EDCI(59mg、0.308ミリモル)、アセトニトリル(4ミリリットル)中の触媒量のDMAPから本発明の化合物(7)を調製した。カラムクロマトグラフィーの後に、生成物71mgが得られた。
1H−NMR(CDCl3)、1.5(t、3H)、2.44(s、3H)、2.45(q、2H)、3.36(m、1H)、4.16(broad s、1H)、4.92(d、1H)、5.01(s、2H)、5.27(m、1H)、5.64(s、1H)、5.71(m、1H)、6.62(d、1H)、6.75(d、1H)、6.89(d、1H)、7.16(dd、1H)。
【0089】
例7
本発明の化合物(8)(モルヒネとアスピリン)(反応式4)
例1の手順に従い、モルヒネ(80mg、0.280ミリモル)、アセチルサリチル酸(8ミリリットル)から本発明の化合物(8)を調製した。無色フォームとしてエステル(8)が得られた(44mg)。
1H−NMR(CDCl3)、2.34(s、3H)、2.44(s、3H)、3.08(d、1H)、3.39(m、1H)、4.18(m、1H)、4.95(d、1H)、5.30(m、1H)、5.79(m、1H)、6.64(d、1H)、6.83(d、1H)、7.16(dd、1H)、7.37(m、1H)、7.63(m、1H)、8.24(dd、1H)。
【0090】
例8
本発明の化合物(9)(フルルビプロフェンとモルヒネ)(反応式4)
例1の手順に従い、モルヒネ(80mg、0.280) フルルビプロフェン(75mg、0.308ミリモル)、EDCI(59mg、0.308ミリモル)及びアセトニトリル(4ミリリットル)中の触媒量のDMAPから、本発明の化合物(9)を調製した。0〜5℃において一晩で反応を達成させて、クロマトグラフィーによる精製の後に、エステル(10)55mgが得られた。
1H−NMR(CDCl3)、2.43(s、3H)、2.68(m、1H)、3.04(d、1H)、3.37(m、1H)、4.05(d、2H)、4.12(m、1H)、4.87(dd、1H)、5.24(m、1H)、5.70(m、1H)、6.57(d、2H)、6.71(s、1H)、6.74(d、1H)、6.97(m、2H)、7.15、1H)、7.32(d、2H)。
【0091】
例10
本発明の化合物(11)(モルヒネとインドメタシン)(反応式5)
例1の手順に従い、モルヒネ(80mg、0.280ミリモル)、インドメタシン(110mg、0.308ミリモル),EDCI(59mg、0.308ミリモル)及びアセトニトリル(4ミリリットル)中の触媒量のDMAPから本発明の化合物(11)を調製した。粗生成物のカラムクロマトグラフィーによって、純粋な本発明の化合物169mgが得られた。
1H−NMR(CDCl3)、2.42(s、3H)、2.43(s、3H)、2.60(m、1H)、2.64(m、1H)、3.02(d、1H)、3.35(m、1H)、3.85(s、3H)、3.90(s、2H)、4.14(d、1H)、7.03(d、1H)、7.47(d、2H)、7.67(d、2H)。
【0092】
例11及び12
本発明の化合物(12)及び(13)(ナプロキセンとモルヒネ}(反応式6)
例1の手順に従い、オキサ酸結合を介してナプロキセンがモルヒネに結合した本発明の化合物(12)及び(13)を、EDCI及びDMAPの存在下で対応するナプロキセンのエステルプロドラッグを用いて、調製した。本発明の化合物(12)は無色のフォームとして収率45%で単離され、本発明の化合物(13)は収率60%で得られた。
(12)1H−NMR(CDCl3)、1.58(d、3H、2.44(s、3H)、3.59(t、2H)、3.64(t、3H)、3.89(2,3H)、4.25(2,2H)、4.94(d、1H)、5.26(d、1H)、5.72(d、1H)、6.59(d、1H)、6.80(d、1H)、7.10(m、2H)、7.42(dd、1H)、7.69(m、3H).
(13)1H−NMR(CDCl3)、1.56(d、3H)、2.43(s、3H)、3.87(s、3H)、4.30(s、2H)、4.89(d、1H)、5.27(m、1H)、5.71(d、1H)、6.58(d、1H)、6.74(d、1H)、7.11(m、2H)、7.40(m、1H)、7.68(m、3H)。
【0093】
例13
本発明の化合物(14)(サリチル酸を介して結合したモルヒネとナプロキセン)(反応式6)
例1に概説した手順に従い、モルヒネ(58mg、0.202ミリモル)、サリチル酸のナプロキセンエステル(78mg、0.222ミリモル)、EDCI(0.222ミリモル)及びアセトニトリル(2ミリリットル)中のDMAP から、エステル(14)を調製した。典型的な仕上げ及び続いての分取薄層クロマトグラフィーによって、本発明の化合物(14)38mgが得られた。
1H−NMR(CDCl3)、1.67(d、3H)、2.45(s、3H)、3.91(s、3H),(s、3H)、4.16(m、2H)、4.93(d、1H)、5.30(m、1H)、5.78(m、1H)、6.58(d、1H)、6.75(d、1H)、6.93(m、1H)、7.10(m、2H)、7.32(m、1H)、7.52(m、2H)、7.70(m、3H)、8.18(dd、1H)。
【0094】
例14
本発明の化合物(16)(ホルムアルデヒド結合によって結合したモルヒネとナプロキセン)(反応式7)
アルゴン雰囲気下でモルヒネ(100mg、0.35ミリモル)を無水アセトニトリル中に室温において懸濁させた。次いでトリエチルアミン(54リットル)を添加し、この混合物を氷浴中で冷却した。次いでクロルギ酸クロルメチル(50mg、0.385ミリモル)をアルゴン雰囲気下で注射器によってゆっくり添加した。この反応混合物を0〜5℃において1時間撹拌し、次いで室温において一晩撹拌した。生成物を過剰量の冷水中に注ぎ、生成物を酢酸エチルで抽出した。有機溶液を水、ブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、蒸発させて、粗製のモルヒネのクロルメチルカーボネート(15)を得た。このエステル(15)を次いでHMPA(1.5ミリリットル)中に溶解させ、アルゴン雰囲気下でナプロキセンのナトリウム塩(57mg、0.224ミリモル)を添加した。濁った混合物を次いで室温において一晩撹拌した。氷水を添加することによって粗生成物を沈殿させ、これを濾過によって分離し、真空デシケーター中で乾燥させた。分取薄層クロマトグラフィーによる精製によって、本発明の化合物(16)19mgが得られた。
1H−NMR(CDCl3)、1.62(d、3H)、2.44(s、3H)、3.04(d、1H)、3.36(m、1H)、3.91(s、3H)、4.16(m、1H)、4.80(d、1H)、4.92(d、1H)、5.26(m、1H)、5.72(m、1H)、5.83(q、2H)、6.60(m、2H)、7.11(m、2H)、7.40(m、1H)、7.69(m、3H)。
【0095】
例15
モルヒネとジクロフェナクとの共薬剤(10)(反応式5)
例1の手順に従い、モルヒネ(80mg、0.280ミリモル)、ジクロフェナク(91mg、0.308ミリモル)、EDCI(59mg、0.308ミリモル)及びアセトニトリル(4ミリリットル)中の触媒量のDMAPから、共薬剤(10)を調製した。0〜5℃において一晩で反応を達成させて、クロマトグラフィーによる精製の後に、エステル(10)55mgが得られた。
1H−NMR(CDCl3)、2.43(s、3H)、2.68(m、1H)、3.04(d、1H)、3.37(m、1H)、4.05(d、2H)、4.12(m、1H)、4.87(dd、1H)、5.24(m、1H)、5.70(m、1H)、6.57(d、2H)、6.71(s、1H)、6.74(d、1H)、6.97(m、2H)、7.15(、1H)、7.32(d、2H)。
【0096】
例16
本発明の化合物(9)(フルルビプロフェンとモルヒネ)の安定性
アセトニトリル中で本発明の化合物(9)の原液(1mg/ml)を調製した。この原液を0.1Mリン酸塩緩衝液(pH7.4)又はヒト血漿中で10倍希釈し、この作業用溶液を37℃の水浴中に入れた。血漿については1時間ごとに、緩衝液については数時間ごとにサンプルを取り出した。適当なサンプルの調製後に、本発明の化合物及び関連薬剤を、日立ソフトウエア、ポンプ、自動サンプル及びUV検出器を含むHPLCシステムで分析した。本発明の化合物(9)については、Supelcosil LC-ABZカラム(5cm×4.6mm)を用い、移動相は0.01Mリン酸塩緩衝液(pH7.4)の63%及び37%の混合物であり、流量は1.5ミリリットル/分とし、検出器は246nmに設定した。
【0097】
本発明の化合物(9)のヒト血漿中における半減期は7.4時間であり、0.1Mリン酸塩緩衝液中での半減期は43時間である。
【0098】
同様の手順を用いて、本発明のその他のモルヒネ化合物の安定性を測定した。個々の本発明の化合物において、多少の変更を行った。本発明のモルヒネ化合物の安定性の結果を下記の表にまとめる。
【0099】
【表1】

【0100】
合成式
【化10】

【0101】
【化11】

【0102】
【化12】

【0103】
【化13】

【0104】
【化14】

【0105】
【化15】

【0106】
【化16】

【0107】
本発明において有用な鎮痛性化合物
オピオイド系鎮痛剤
【化17】

【0108】
さらなるオピオイド系鎮痛剤
【化18】

【0109】
NSAID(非ステロイド系抗炎症剤)
【化19】

【0110】
麻酔剤
【化20】

【0111】
他の鎮痛薬
【化21】

【0112】
ステロイド系抗炎症剤
【化22】

【0113】
以上の説明は本発明を例示するためだけのものであり、本発明を限定するものではない。以上の明細書及び添付した特許請求の範囲の検討すれば当業者ならば方法、組成物及び製造のその他の変法が明らかになるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一鎮痛性成分を少なくとも一つの第二鎮痛性成分に生理学的に不安定なリンカーを通して共有結合させてなり、成分が同じでも又は異なってもよい化合物、或はその塩。
【請求項2】
生理学的pHに暴露された時に、分解して前記第一鎮痛性成分に対応する第一鎮痛性化合物、及び前記第二鎮痛性成分に対応する少なくとも一つの第二鎮痛性化合物を形成する請求項1記載の化合物。
【請求項3】
製薬的に許容し得る塩である請求項1記載の化合物。
【請求項4】
第一鎮痛性成分がオピオイドである請求項1記載の化合物。
【請求項5】
第一鎮痛性成分をコデイン、モルヒネ、ジヒドロキシモルヒネ、ヒドロモルホン、レボファルノール(levopharnol)、及びそれらの誘導体からなる群より選ぶ請求項1記載の化合物。
【請求項6】
第一鎮痛性成分がモルヒネである請求項1記載の化合物。
【請求項7】
第二鎮痛性成分をオピオイド、ステロイド系抗炎症剤、パラ−アミノフェノール誘導体及び非ステロイド系抗炎症剤からなる群より選ぶ請求項1記載の化合物。
【請求項8】
第二鎮痛性成分をオピオイド、グルココルチコステロイド、非ステロイド系抗炎症剤、ナフチルアルカノン、オキシカム、パラ−アミノフェノール誘導体、プロピオン酸、プロピオン酸誘導体、サリチレート、フェナメート、フェナメート誘導体、ピロゾール、及びピラゾール誘導体からなる群より選ぶ請求項1記載の化合物。
【請求項9】
第二鎮痛性成分をコデイン、ヒドロモルホン、レボファルノール、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、ブトルファノール、デゾシン、ナルブフィン、ペンタゾシン、エトドラク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ナブメトン、ピロキシカム、アセトアミノフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、オキサプロジン、アスピリン、ジフルーニサル、メクロフェナム酸、メフェナム酸、プレドニゾロン、及びデクサメタゾーンからなる群より選ぶ請求項1記載の化合物。
【請求項10】
更に、第一及び二鎮痛性成分と同じ又は異なる第三鎮痛性成分を少なくとも一つ含む請求項1記載の製薬化合物。
【請求項11】
第一鎮痛性成分を少なくとも一つの第二鎮痛性化合物に不安定なリンカーを通して共有結合させてなる製薬化合物、或はその製薬上許容し得る塩。
【請求項12】
第一鎮痛性成分がオピオイドである請求項11記載の製薬化合物。
【請求項13】
第一鎮痛性成分をコデイン、モルヒネ、ジヒドロキシモルヒネ、ヒドロモルホン、又はそれらの誘導体からなる群より選ぶ請求項11記載の製薬化合物。
【請求項14】
第一鎮痛性成分がモルヒネである請求項13記載の製薬化合物。
【請求項15】
第二鎮痛性成分をオピオイド、ステロイド系抗炎症剤、パラ−アミノフェノール誘導体及び非ステロイド系抗炎症剤からなる群より選ぶ請求項11記載の製薬化合物。
【請求項16】
第二鎮痛性成分をオピオイド、ステロイド、インドール、ナフチルアルカノン、オキシカム、パラ−アミノフェノール誘導体、プロピオン酸、サリチレート、フェナメート、及びピロゾールからなる群より選ぶ請求項11記載の製薬化合物。
【請求項17】
第二鎮痛性成分をコデイン、ヒドロモルホン、レボファルノール、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、ブトルファノール、デゾシン、ナルブフィン、ペンタゾシン、エトドラク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ナブメトン、ピロキシカム、アセトアミノフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、オキサプロジン、アスピリン、ジフルーニサル、メクロフェナム酸、メフェナム酸、プレドニゾロン、及びデクサメタゾーンからなる群より選ぶ請求項11記載の製薬化合物。
【請求項18】
更に、第三鎮痛性成分を含む請求項11記載の製薬化合物。
【請求項19】
苦痛緩和又は苦痛予防を必要としている個人に、第一鎮痛性成分を少なくとも一つの第二鎮痛性成分に生理学的に不安定なリンカーを通して共有結合させてなる製薬化合物、又は製薬上許容し得るその塩を投与することを含む苦痛緩和又は苦痛予防を必要としている個人における苦痛を予防又は緩和する方法。
【請求項20】
個人がヒト又は非ヒト動物である請求項19記載の方法。
【請求項21】
個人がヒトである請求項19記載の方法。
【請求項22】
第一鎮痛性成分がオピオイドである請求項19記載の方法。
【請求項23】
下記式の化合物:
1−L−A2
式中、Lは、A1及びA2を少なくとも1つの生理学的に不安定な共有結合を通して共有結合する結合基であり;
1は第一鎮痛性化合物の残基であり;及び
2は、A1と同じでも又は異なってもよい第二鎮痛性化合物の残基である。
【請求項24】
各々の生理学的に不安定な結合が、下記:アミド、カーボネート、カルバメート、エス テル、スルホネート、及びスルファメート結合からなる群より選ぶ部材である請求項23記載の化合物。
【請求項25】
1がモルヒネ残基である請求項23記載の化合物。
【請求項26】
2がオピオイド、ステロイド系抗炎症剤、パラ−アミノフェノール誘導体及び非ステロイド系抗炎症剤からなる群より選ぶ第二鎮痛性成分の残基である請求項23記載の化合物。
【請求項27】
2がオピオイド、ステロイド、インドール、ナフチルアルカノン、オキシカム、パラ−アミノフェノール誘導体、プロピオン酸、サリチレート、フェナメート、及びピロゾールからなる群より選ぶ第二鎮痛性成分の残基である請求項23記載の化合物。
【請求項28】
2がコデイン、ヒドロモルホン、レボファルノール、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、ブトルファノール、デゾシン、ナルブフィン、ペンタゾシン、エトドラク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ナブメトン、ピロキシカム、アセトアミノフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、オキサプロジン、アスピリン、ジフルーニサル、メクロフェナム酸、メフェナム酸、プレドニゾロン、及びデクサメタゾーンからなる群より選ぶ第二鎮痛性成分の残基である請求項23記載の化合物。
【請求項29】
第一鎮痛性成分を少なくとも一つの第二鎮痛性成分に生理学的に不安定なリンカーを通して共有結合させてなる製造品、及びポリマー。
【請求項30】
化合物が、生理学的条件下でのポリマーマトリックスからの化合物の拡散速度がポリマーの透過度によって速度制限されないような生理学的流体への溶解度を有する請求項29記載の品。
【請求項31】
化合物の粒子がヒドロゲル内に分散及び保持されかつゆっくり溶解して化合物をヒドロゲルを通して拡散させる請求項29記載の品。
【請求項32】
化合物の粒子がヒドロゲル内に分散及び保持されかつヒドロゲル内でゆっくり溶解及び加水分解して親の化合物になる請求項29記載の品。
【請求項33】
化合物が比較的にヒドロゲル内で安定でありかつ生理学的流体内で不安定である請求項31記載の品。
【請求項34】
ヒドロゲルが生理学的流体の要素とヒドロゲル内の化合物との相互作用を防ぐ請求項33記載の品。
【請求項35】
化合物が、生理学的pHに暴露された時に、分解して前記第一鎮痛性成分に対応する第一鎮痛性化合物、及び前記第二鎮痛性成分に対応する第二鎮痛性化合物を形成する請求項29記載の品。
【請求項36】
化合物がミネラル酸塩、カルボン酸塩、アミノ酸塩である請求項29記載の品。
【請求項37】
化合物が、第一鎮痛性成分がオピオイドであるようなものである請求項29記載の品。
【請求項38】
化合物が、第一鎮痛性成分をコデイン、モルヒネ、ジヒドロキシモルヒネ、ヒドロモルホン、又はそれらの誘導体からなる群より選ぶようなものである請求項29記載の品。
【請求項39】
化合物が、第一鎮痛性成分がモルヒネであるようなものである請求項29記載の品。
【請求項40】
化合物が、第二鎮痛性成分をオピオイド、ステロイド系抗炎症剤、パラ−アミノフェノール誘導体及び非ステロイド系抗炎症剤からなる群より選ぶようなものである請求項29記載の品。
【請求項41】
化合物が、第二鎮痛性成分をオピオイド、ステロイド、インドール、ナフチルアルカノン、オキシカム、パラ−アミノフェノール誘導体、プロピオン酸、サリチレート、フェナメート、ピロゾールからなる群より選ぶようなものである請求項29記載の品。
【請求項42】
化合物が、第二鎮痛性成分をコデイン、ヒドロモルホン、レボファルノール、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、ブトルファノール、デゾシン、ナルブフィン、ペンタゾシン、エトドラク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ナブメトン、ピロキシカム、アセトアミノフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、オキサプロジン、アスピリン、ジフルーニサル、メクロフェナム酸、メフェナム酸、プレドニゾロン、及びデクサメタゾーンからなる群より選ぶようなものである請求項29記載の品。
【請求項43】
鎮痛治療を必要としている個人を治療する鎮痛方法であって、該個人に、第一鎮痛性成分を第二鎮痛性成分に生理学的に不安定なリンカーを経て共有結合させてなる組成物を鎮痛上有効な量で投与することを含む方法。
【請求項44】
化合物を苦痛位置近辺に外科移植する請求項43記載の方法。
【請求項45】
化合物を苦痛位置近辺に注入する請求項43記載の方法。
【請求項46】
苦痛位置が腫瘍、外科切開、切除、裂傷、骨折、挫傷、或は関節炎性又はリウマチ性結合である請求項43記載の方法。
【請求項47】
組成物が更に生理学的に許容されるポリマーを含む請求項43記載の方法。
【請求項48】
化合物が、それの拡散速度がポリマーの透過度によって速度制限されないような生理学的pHにおける溶解度を保持する請求項47記載の方法。
【請求項49】
ポリマーが生物腐食性である請求項48記載の方法。
【請求項50】
ポリマーが非生物腐食性である請求項48記載の方法。
【請求項51】
下記式の化合物又はその塩:
【化1】

式中、A2は第二鎮痛性成分であり;
1は直接結合又はリンカーであり;
各々の
【化2】

は、単結合又は二重結合であり;
1はH、CH3又はOHであり;
2はH、C1−C6−アルキル、C3−C6−シクロアルキル−C1−C6−アルキル、C1−C6−アルケニル、C1−C6−アルカノイル、C3−C6−シクロアルケニル−C1−C6−アルキル、C3−C6−シクロアルキル−C1−C6−アルカノイル、又はC3−C6−シクロアルケニル−C1−C6−アルカノイルであり;
3はH、オキソ(=O)、ヒドロキシル(−OH)、又はC1−C12−アルカノイル、又は―L2―A3であり;
ここで、L2は直接結合又はリンカーであり、A3は、A1及びA2と同じでも又は異なってもよい鎮痛性化合物の残基であり;
4−R7はH、メチル、エチル、F、Cl、Br、又はIであり;
並びにG1及びG2は各々Hであり或は一緒になってジヒドロフラノ環の酸素を表わす。
【請求項52】
2をオピオイド鎮痛薬、非ステロイド系抗炎症薬、非オピオイド麻酔薬、ステロイド系抗炎症薬、及びその他の鎮痛剤からなる群より選ぶ請求項51記載の化合物。
【請求項53】
2をコデイン、フェンタニール、ヒドロモルホン、レボファルノール、メペレジン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、プロポキシフェン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、デゾシン、ナルブフィン、ペンタゾシン、エトドラク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ナブメトン、ピロキシカム、アセトアミノフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、オキサプロジン、アスピリン、コリンマグネシウムトリサリチレート、ジフルーニサル、メクロフェナム酸、メフェナム酸、フェニルブタゾン、フルオシノロン、アセトニド、プレドニゾロン、プレドニゾロンt−ブチルアセテート、トリアムシノロンアセトニド、ジヒドロコルチゾン及びデクサメタゾーンからなる群より選ぶ請求項51記載の化合物。
【請求項54】
化合物が下記式:
【化3】


(式中、A2、L1、R1及びR3は、上に規定したものであり、各々の
【化4】

は、単結合又は二重結合であり、R2はメチル、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、又は3−プロペニルである)
を有する請求項51記載の化合物及びその塩。
【請求項55】
化合物が下記式:
【化5】


を有する請求項51記載の化合物及びその塩。
【請求項56】
化合物が下記式:
【化6】


を有する請求項51記載の化合物及びその塩。
【請求項57】
2及びA3が同じであり、かつNSAIDの残基からなる群より選ぶ請求項56記載の化合物。
【請求項58】
2及びA3がナプロキセン残基である請求項57記載の化合物。
【請求項59】
2及びA3がジクロフェナク残基である請求項57記載の化合物。
【請求項60】
一般式A−L−B(式中、Aは、患者において鎮痛性応答を生じるための治療的に活性な形態を有する非ステロイド系抗炎症薬剤(NSAID)成分又はオピオイド薬剤成分を表し;Lは、A及びBを結合してプロドラッグを形成するための共有リンカーを表し、該リンカーは、生理的条件下で開裂されてAの該治療的に活性な形態を生じ;並びにBは、Aに結合される時に、A単独の治療的に活性な形態に比べて低い溶解度を有するプロドラッグを生じる成分を表わす)有するプロドラッグを含む持続放出性鎮痛性システム。
【請求項61】
L結合が体液中で加水分解される請求項60記載のシステム。
【請求項62】
L結合が酵素開裂される請求項60記載のシステム。
【請求項63】
Lが、エステル、アミド、カルバメート、カーボネート、環状ケタール、チオエステル、チオアミド、チオカルバメート、チオカーボネート、キサンテート及びホスフェートエステルからなる群より選ぶ加水分解性基を1つ以上含む請求項60記載のシステム。
【請求項64】
システムが組成物であり、かつ無菌でありかつ発熱性物質が存在しない請求項60記載のシステム。
【請求項65】
Aの治療的に活性な形態が、前記プロドラッグに比べて水への溶解度が少なくとも5倍大きい請求項60記載のシステム。
【請求項66】
Aの治療的に活性な形態が、プロドラッグのlogP値に比べて少なくとも0.5logP単位小さいlogP値を有する請求項60記載のシステム。
【請求項67】
プロドラッグが、その結合された形態で、Aの治療的に活性な形態の無痛覚を生じるためのED50に比べて少なくとも10倍大きいED50を有する請求項60記載のシステム。
【請求項68】
プロドラッグ自体が、無痛覚を誘発することに関し、不活発である請求項60記載のシステム。
【請求項69】
Bが疎水性脂肪族成分である請求項60記載のシステム。
【請求項70】
Bが、プロドラッグから開裂された後に、生物学的に不活性な成分になることができる請求項60記載のシステム。
【請求項71】
Aが、一般式:
(式中、R8は低級アルキル、低級アルコキシ、フルオロ、クロロであり;
R9及びR10は、各々、各々の存在に関係なく、水素、低級アルキル、フルオロ、クロロ、又はトリフルオロメチルであり;
R11は水素、低級アルキル又はベンジルであり;
R12は水素又は低級アルキルであり;
R13は水素、低級アルキル又はR12が水素である時に、ベンジルであり;
R14は水素、低級アルキル、低級アルコキシ、フルオロ、クロロ、又はブロモであり;
R15は水素又はR8が水素又はクロロでありかつR9が水素又はトリフルオロメチルである時に、トリフルオロメチルである)
によって表されるNSAIDである請求項60記載のシステム。
【請求項72】
一般式A::B(式中、Aは、患者において鎮痛性応答を生じるための治療的に活性な形態を有するNSAID成分又はオピオイド薬剤成分を表し;「::」は、生理学的条件下で解離してAの該治療的に活性な形態を発生するAとBとの間のイオン性結合を表し;及びBは、Aにイオン的に結合される時に、Aの治療的に活性な形態に比べて低い溶解度を有するプロドラッグを生じる成分を表わす)を有するプロドラッグを含む持続放出性鎮痛性システム。

【公開番号】特開2010−155869(P2010−155869A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89721(P2010−89721)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【分割の表示】特願2003−501466(P2003−501466)の分割
【原出願日】平成14年6月5日(2002.6.5)
【出願人】(501224877)シヴィダ・インコーポレイテッド (15)
【Fターム(参考)】