持続的なT細胞応答方法
本発明は、三量体ポリペプチド構築物の各単量体が2つまたは3つのドメインからなり、第一ドメインは4-1BBLの細胞外ドメインまたはその一部であり、第二ドメインは第一ドメインのN末端側に位置する抗原相互作用部位からなり、任意に、第三ドメインはペプチドリンカーを介して第一ドメインと第二ドメインを結合し、ペプチドリンカーは如何なる重合活性も含まない、三量体ポリペプチド構築物を提供する。さらに、本発明は、そのようなポリペプチド構築物をコードする核酸分子、三量体ポリペプチド構築物を発現させるためのベクターおよび宿主系を提供する。さらに、本発明は、薬学的組成物であることが想定される組成物および疾患の治療におけるそれらの使用を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三量体ポリペプチド構築物の各単量体が2つまたは3つのドメインからなり、第一ドメインは4-1BBLの細胞外ドメインまたはその一部であり、第二ドメインは第一ドメインのN末端側に位置する抗原相互作用部位からなり、任意で、第三ドメインはペプチドリンカーを介して第一ドメインと第二ドメインを結合し、ペプチドリンカーは重合活性を含まない、三量体ポリペプチド構築物に関する。さらに、本発明は、そのようなポリペプチド構築物をコードする核酸分子、三量体ポリペプチド構築物を発現させるためのベクターおよび宿主系を提供する。また、本発明は、薬学的組成物であることが想定される組成物および疾患の治療におけるそれらの使用を提供する。本明細書を通して様々な文献が引用される。そのような文献の開示された内容は、参照として本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
T細胞媒介性免疫療法の改善は、重要な医学的目標である。T細胞媒介性免疫療法の1つの重要な局面は、T細胞活性化の効率化である。T細胞活性化は、抗原提示細胞(APC)の膜上に提示された抗原との接触による、抗原と必要な細胞内シグナルを生じる複数の膜分子との動的相互作用の結果起こる。現在、ナイーブT細胞は、活性化および次のエフェクター細胞への増殖のために、いくつかの異なるシグナルを必要とすると広く考えられている。
【0003】
第一に、抗原性ペプチドとTCR-CD3複合体との相互作用によって生じる最初のシグナル(シグナル1)が存在する(Kuby, 2000: Immunology, 第4版、Freeman and Company, ニューヨーク、254ページ)。この最初のシグナルは、T細胞の短期刺激を引き起こす。相補性決定領域(CDR)が応答の抗原特異性を決定し、活性化の開始において中心的な役割を果たす。しかし、この相互作用は、単独ではナイーブT細胞を完全に活性化するには十分ではない。最初のT細胞刺激後に、さらなる抗原依存的な共刺激シグナルが存在しなければならない。
【0004】
第二のシグナルは、B7.1とT細胞上のCD28受容体との相互作用によって媒介される。CD28受容体は静止/ナイーブT細胞上に既に発現されており、T細胞の増殖およびT細胞の実際のプライミングを媒介する。
【0005】
第三のシグナルは、4-1BBLのような補助因子と、最初の刺激後に初めてT細胞上に発現するその対応する受容体との相互作用によって生じる。他の補助因子/受容体対には以下のものがある:CD30リガンド/CD30、Ox40リガンド/Ox40、GITRL/GITR、CD27リガンド/CD27。この補助シグナルによって、T細胞の存続および運命が決まる。上記の分子は、TNFスーパーファミリーの一部である。
【0006】
ほとんどのTNFファミリーメンバーは前駆体分子として合成され、プロセシング過程を受ける(Bodmer et al, 2002, TIBS 27, 19-26)。メタロプロテイナーゼによる腫瘍壊死因子α前駆体のプロセシングが詳細に記載されている(Gearing et al., 1994, Nature 370, 555-557)。TNFαは初め233アミノ酸の膜結合型前駆体として発現され、タンパク質分解によりプロセシングされて成熟した157 aaサイトカインを生じる。TNFαを切断するプロセシング酵素は、腫瘍壊死因子a変換酵素TACEである(Lee, Biochem. J. 2003 Jan 30、Becker et al. 2002, Biol.Chem. 383:1921-6)。TACEは、強力な炎症促進性サイトカイン、TNFαの放出に関与する、膜結合型多重ドメイン亜鉛メタロプロテイナーゼである(Lee, Biochem. J. 2003 Jan 30)。TNFα自体は、三量体タンパク質であることが記載されている(Jones et al., 1990, J. Cell Sci Suppl 13, 11-18、Smith & Baglioni, 1987, J Biol Chem 262, 6951-6954;Wingfield et al., 1987, FEBS 211(2), 179-184)。1つのTNFα三量体は3つのTNFα受容体分子を結合することができ、この受容体のクラスター形成が細胞内シグナル伝達カスケードを開始させることから、TNFαが三量体タンパク質であることは重要な生物学的特徴である(Ameloot et al. J. Biol. Chem (2001) 276:27098-27103)。TNFα自体の三量体化に加えて、TNFα融合タンパク質の三量体化についても記載されている。しかし、先行技術の研究では三量体形成は起こらないかまたは低く、さらなる三量体化ドメインを使用した。例えば、Yang et al., 1995, Mol.Immunol 32, 873-81、Scherf et al., 1996, Clin Cancer Res 9, 1523-31、Wuest et al., 2002, Oncogene 21, 4257-4265、およびXiang et al., 1997, J Biotech 53, 3-12は、TNFαの成熟細胞外ドメイン(アミノ酸1〜157)を含む構築物の三量体化について記載し、Wuest et al., 2002, Oncogene 21, 4257-7265、WO 02/22833、およびWO 02/22680は、さらなる三量体化ドメイン(テネイシンまたはAcrp30)を用いた、TNFαおよびTNFα相同体TRAILまたはFasLを含むポリペプチド構築物の三量体化について記載している。
【0007】
ヒト4-1BBL (4-1BBL)は、細胞外カルボキシル末端ドメインを有するII型膜糖タンパク質である(Goodwin et al., 1993, Eur J Immunol 23, 2631-2641)。4-1BBLとその対応する受容体4.1BBとの相互作用によって、活性化胸腺細胞および脾臓T細胞の増殖が誘発される(Goodwin et al., 1993, Eur J Immunol 23, 2631-2641)。4-1BBLの細胞外ドメインは、腫瘍壊死因子(TNF)aの細胞外領域と明らかな配列相同性を示す。このいわゆるTNF相同ドメイン(THD)は、これまでに知られている全部で18個のTNFファミリーメンバー間で保存されている(Bodmer et al, 2002, TIBS 27, 19-26)。THDは、芳香族残基および疎水性残基の保存された骨格を含む、約150アミノ酸長の配列である(Bodmer et al, 2002, TIBS 27, 19-26;Gruss, 1996, Int J Clin Lab Res 26, 143-159)。THDは実質的に等しい三次折りたたみを共有し、会合して三量体タンパク質を形成する(Jones et al., 1990, J. Cell Sci Suppl 13, 11-18;Smith & Baglioni, 1987, J Biol Chem 262, 6951-6954;Wingfield et al., 1987, FEBS 211(2), 179-184)。THDはβサンドイッチ構造であり、古典的な「ゼリーロール」トポロジーをとる。X線結晶学から、サブユニットが、βサンドイッチの単純なエッジ・トゥー・フェースパッキングを介した相互作用により三回転軸の周りに密に会合して、頑丈な円錐型の三量体を形成することが明らかになる(Jones et al., 1990, J. Cell Sci Suppl 13, 11-18)。受容体結合に関与するアミノ酸残基は、THDドメイン内に埋もれている(Bodmer et al, 2002, TIBS 27, 19-26)。ヒト4-1BBLの細胞外部分(アミノ酸50〜254)は、THDドメインに加えて、約42アミノ酸のストーク(柄)(stalk)ドメイン(アミノ酸50〜約92)をさらに含む。図1は、TNFαおよびTNFα前駆体タンパク質と比較した、4-1BBLの構造全体の略図を示す。4-1 BBリガンドに関しては、切断部位は記載されていない(Bodmer et al., 2002 TIBS 27(1), 19-26)。
【0008】
4.1BBリガンド、CD30リガンド、Ox40リガンド、GITRL、LIGHT、およびCD27リガンドは、T細胞(共)刺激または制御機能を有するとされており(Mackay & Kalled, 2002, Current Opinion in Immunology 14, 783、Granger 2001, J. Immunol., 5122;Akiba, 2000, J. Exp. Med. 191, 375)、したがって、TNFリガンドスーパーファミリー内で、B細胞または樹状細胞に作用するリガンドとは異なるサブグループを形成する。TNFファミリーメンバーの亜集団に関するこれらの報告は、複数配列のアラインメントおよび系統樹解析によってさらに支持される。4-1BBLはOx40リガンドおよびCD27リガンドと系統樹の同じ枝に位置するのに対して、TNFおよびFasLは別の枝に位置する(Granger 2001, J. Immunol., 5122;Akiba, 2000, J. Exp. Med. 191, 375)。図2では、18個のTNFαファミリーメンバーすべての細胞外ドメインを比較している(図2)。Treetopプログラムのトポロジーアルゴリズムは、配列間の対の距離を算出する(Chumakov & Yashmanov, 1988, Mol Genet Microbiol Virusol 3, 3-9;Yushmanov & Chumakov, 1988, Mol Genet Microbiol Virusol 3, 9-15;Brodsky et al., 1992, Dimacs 8, 127-139;Brodsky et al., 1995, Biochemistry, 923-928)。無根系統樹は、3つの主要な枝に分割されると考えられる(図2B)。3つの枝のうちの1つにおいて、4-1BBLは、CD30リガンド、Ox40リガンド、GITRL、およびCD27リガンドと共に群をなす。
【0009】
T細胞が3つのシグナルすべてを受け取って初めて、これらのT細胞の持続的な免疫応答が起こる。
【0010】
T細胞媒介性免疫療法は、これまで、最初のT細胞刺激を提供することに主に焦点を当ててきた。例として、抗CD3部分(Mack et al., 1995, PNAS 92(15), 7021-5;WO99/54440)またはOKT3抗体(US5,929,212、WO91/09968)を介して最初のT細胞刺激を引き起こす、二重特異性一本鎖抗体構築物が挙げられる。抗CD3を介して作用する成分は、投与直後にT細胞刺激能力を放つ。この特徴は、例えば急性治療の設定において用いられる。しかし、例えば転移癌においてまたは微小残存癌の治療においては、T細胞応答の持続が望ましいという兆候も存在する。
【0011】
持続的なT細胞応答を引き起こす免疫療法を開発するための、いくつかのアプローチが周知である。しかし、これらのいずれを用いても、標的組織における特定の病態を治療、改善、または予防することはできない。
【0012】
例えば、WO 99/36093は、ヒト4-1BBリガンドが少なくとも1つのT細胞と接触するように有効量のヒト4-1BBリガンドを投与し、それによりT細胞を活性化する段階を含む、T細胞活性化を増強する方法を開示している。さらに、この方法では、二次刺激分子を4-1BBリガンドと併せて投与し得ることが明示されている。この二次刺激分子は、CD3抗体、CD28抗体、またはCD28タンパク質であってよい。
【0013】
任意で、二次刺激分子がCD3抗体である場合には、WO 99/36093の方法は三次刺激分子を含んでよく、これはCD28抗体であってよい。詳細には、WO 99/36093は、CD28と4-1BBとの共関与が、1型エフェクターT細胞の生成、および度重なるTCR活性化によって誘導されるアポトーシスの影響を受けやすい細胞の長期細胞生存を促進することを記載している。
【0014】
WO94/26290では、4-1BBリガンドのDNA配列およびコードされるアミノ酸配列、4-1BBリガンドおよびFcドメインを含む融合タンパク質について記載している。WO94/26290では、4-1BB-Lを単独でまたはインターロイキン-2等の他のサイトカインと組み合わせて培地に添加することにより、4-1BBリガンドを用いて、治療手段において使用される活性化T細胞の増殖を促進し得ること、およびエクスビボ段階でCTLの増殖を増強し得ることが論じられている。
【0015】
WO98/16249は、インビボでの免疫抑制および癌治療の新規アプローチを提供する、2つの抗4-1BBモノクローナル抗体について記載している。
【発明の開示】
【0016】
したがって、本発明の基礎をなす技術的課題は、いくつかの疾患の治療において使用可能なT細胞の持続的/永続的活性化手段を提供することであった。
【0017】
特許請求の範囲において特徴づけられる態様を提供することによって、そのような技術的課題を解決する。
【0018】
したがって、本発明は、三量体ポリペプチド構築物の各単量体が2つまたは3つのドメインからなり、第一ドメインは4-1BBLの細胞外ドメインまたはその一部であり、第二ドメインは第一ドメインのN末端側に位置する抗原相互作用部位からなり、任意で、第三ドメインはペプチドリンカーを介して第一ドメインと第二ドメインを結合し、ペプチドリンカーは重合活性を含まない、三量体ポリペプチド構築物に関する。
【0019】
「ポリペプチド構築物」という用語は、本発明に基づいて、1つまたは複数の遺伝子操作した核酸分子によってコードされる、組換えによって産生可能なポリペプチドを定義する。
【0020】
本明細書で使用する「三量体ポリペプチド構築物」という用語は、3つの「単量体」ポリペプチド構築物を含む構築物を示す。三量体ポリペプチド構築物の単量体それぞれは、少なくとも1本のポリペプチド鎖からなる。したがって、「単量体ポリペプチド構築物」という用語は、本明細書では「三量体ポリペプチド構築物」を形成するサブユニットを単に指すが、そのような単量体自体が重合体であってもよい。三量体構築物の単量体として定義される重合体の例として、2本のポリペプチド鎖からなるF(ab)断片が挙げられる。本発明の三量体ポリペプチド構築物は、適切な宿主のサイトゾル中に発現され得る可溶性ポリペプチド構築物であることが好ましい。本発明のそのようなポリペプチド構築物は、適切な宿主の分泌経路を介して、特定の細胞内コンパートメント内または上清中に分泌されることも同様に好ましい。特に好ましい宿主は真核生物宿主である。
【0021】
本発明のポリペプチド構築物の三量体構造のみで、永続的および/または持続的なT細胞応答を可能にする活性化シグナルを誘導できるようにすることが意外にも見出されたことから、そのような三量体構造は必須の技術的特徴である。
【0022】
「持続的なT細胞応答」という用語は、T細胞が、TCRシグナルもしくはTCR様シグナルならびに二次および/または三次共刺激シグナルを介してプライミングされ続けることを意味する。本発明に基づく持続的なT細胞応答を起こすそのようなT細胞は、長期生存を示す。理論に束縛されることなく、そのような長期生存は、活性化を誘導された細胞の死滅などに対する防御に起因し得る。結果として、本発明との関連において、持続的なT細胞応答を起こす活性化T細胞を、エフェクター細胞としてそれぞれの標的に長期間作用させるために使用できる。T細胞の生存に及ぼす効果は、例えばBclw、Bcl-2、Bcl-xL、またはBfl-1のようなBcl-2ファミリーによる抗アポトーシス因子の発現レベルの増加を測定することによって解析することができる(Jones (2000) J. Exp. Med. 191: 1721)。
【0023】
したがって、本発明の三量体ポリペプチド構築物を形成する単量体の三量体化は、本発明の構築物の機能に必要である。
【0024】
本明細書で使用する「ドメイン」という用語は、三量体ポリペプチド構築物の単量体のサブユニットを表す。そのようなドメインは、例えば抗原に特異的に結合する能力、三量体構造の形成を促進する能力、または個々のドメインを相互に連結する能力といった特定の技術的特徴によって規定されるポリペプチドの領域を表す。
【0025】
上記のように、4-1BBLはTNFスーパーファミリーのメンバーであるII型膜貫通タンパク質である。完全なまたは全長4-1BBLは細胞表面上でホモ三量体を形成するとされている。ホモ三量体の形成は、4-1BBLの細胞外ドメインの特異的動因によって可能になる。そのような動因を、本明細書では「三量体化領域」と称する。
【0026】
「4-1BBLの細胞外ドメイン」という用語は、上記の驚くべき4-1BBLのホモ三量体の形成を可能にする、4-1BBLの細胞外ドメインの特異的動因と関連がある。したがって、そのような用語は、4-1BBLの細胞外ドメインの三量体化領域と関連があり、すなわちまたそのような細胞外ドメインの部分または断片にも関連する。当業者は、4-1BBLの細胞外ドメインの機能的な部分または断片を決定するために、添付の実施例の開示を参考にする状況に容易にある。機能的な部分または断片は、三量体化し得ると定義される。
【0027】
上記のように、4-1BBLは、TNFがその命名の由来であり主要なメンバーであるタンパク質ファミリーの一メンバーである。Xiang et al.(J. Biotech. (1997) 53, 3-9)は、トランスフェクションした哺乳動物細胞によって、二量体の形式でのみ分泌されるTNF融合タンパク質の構築物について記載している;Xiang et al.の図2を参照されたい。したがって、4-1BBLの細胞外ドメインの三量体化領域が本発明の構築物を三量体化するのに十分な能力は、真核細胞で発現する構築物にとって非常に驚きである。
【0028】
添付の実施例に記載するように、意外にも、4-1BBLの細胞外ドメインの三量体化領域の能力のみで、複合融合タンパク質の量的な三量体化に十分である(単量体も二量体も検出されない)ことが認められた。このような十分な能力は、先行技術によって開示も予想もされていなかった。対照的に、先行技術は、さらなる三量体化ドメインが必要であると推測していた。複合TNFα融合構築物におけるそのようなさらなる三量体化ドメインは、三量体化能力を有するテネイシンまたは他のペプチドリンカーであると記載されている(WO02/22833)。しかし、本明細書に記載の本発明の構築物では、複合4-1BBL融合タンパク質の量的な三量体形成を誘導するために、そのようなさらなるペプチドリンカーを必要としない。したがって、本発明の構築物は3つの単量体からなり、各単量体は2つまたは3つのドメインからなり、そのようなドメインの1つは4-1BBLの細胞外ドメインである。第二ドメインまたは第三ドメインは、三量体化ドメインでも重合活性を有するポリペプチドリンカーでもなく、これらを含んでもいない。
【0029】
「抗原相互作用部位」という用語は、本発明に基づいて、特定の抗原または特定の抗原群と特異的に相互作用する能力を示すポリペプチドの動因を定義する。そのような「抗原相互作用部位」と抗原との「相互作用」は特異的であり、≦10-9Mという高い結合定数を特徴とする。対照的に、抗原の非特異的相互作用は、≧10-5Mという極めて低い結合定数を特徴とする。抗原相互作用部位とその特定抗原との特異的相互作用は、例えば抗原の高次構造の変化、抗原のオリゴマー形成の誘導に起因するなどして、シグナルを開始し得る。そのような結合は、「鍵と鍵穴原理」の特異性によって例証される。このように、一次、二次、または三次構造の結果として、また同様にそのような構造の二次修飾の結果として、抗原相互作用部位のアミノ酸配列内の特定の動因と抗原が相互に結合する。抗原相互作用部位とその特定抗原との特異的相互作用はまた、そのような部位の抗原への単純な結合を起こし得る。
【0030】
抗原相互作用部位と特定抗原との特異的相互作用の例には、リガンドのその受容体に対する特異性が含まれる。そのような定義には、特に、その特異的受容体への結合に際してシグナルを誘導するリガンドの相互作用が含まれる。これに相当するリガンドの例には、その特異的サイトカイン受容体と/に相互作用/結合するサイトカインが含まれる。そのような定義に特に含まれるものにはまた、セレクチンファミリー、インテグリン、およびEGFのような増殖因子のファミリーの抗原と同様の抗原への、抗原相互作用部位の結合がある。そのような定義に特に含まれるそのような相互作用の他の例は、抗原決定基(エピトープ)と抗体の抗原結合部位との相互作用である。
【0031】
第二ドメインは、第一ドメインのN末端側に位置する。したがって、本発明の三量体ポリペプチドの単量体をコードする核酸分子において、第二ドメインのコード領域は、第一ドメインのコード配列の5'側にある。
【0032】
「ペプチドリンカー」という用語は、本発明に基づいて、本発明の三量体ポリペプチド構築物の単量体の第一ドメインと第二ドメインのアミノ酸配列を相互に連結するアミノ酸配列を定義する。そのようなペプチドリンカーの必須の技術的特徴は、ペプチドリンカーが重合活性を含まないことである。特に好ましいペプチドリンカーは、アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser、すなわち(Gly)4Ser、またはその重合体、すなわち((Gly)4Ser)xによって特徴づけられる。二次構造の促進の欠如を含むそのようなペプチドリンカーの特徴は、当技術分野において周知であり、例えばDall'Acqua et al.(Biochem. (1998) 37, 9266-9273)、Cheadle et al.(Mol Immunol (1992) 29, 21-30)、およびRaagおよびWhitlow(FASEB (1995) 9(1), 73-80)に記載されている。より少ないアミノ酸残基を含むペプチドリンカーもまた特に好ましい。5アミノ酸未満を有する想定されるペプチドリンカーは、好ましくは4アミノ酸、より好ましくは3アミノ酸、より好ましくは2アミノ酸、最も好ましくは1アミノ酸を含む。そのような「ペプチドリンカー」との関連で特に好ましい「単一」アミノ酸はGlyである。したがって、そのようなペプチドリンカーは、単一アミノ酸Glyからなってよい。しかし、他のアミノ酸も想定される。さらに、二次構造を促進しないペプチドリンカーもまた好ましい。上記のように、本発明の三量体ポリペプチド構築物に含まれる個々の単量体の第一ドメインと第二ドメイン間のリンカーはなくてもよい。
【0033】
そのようなドメインの相互の結合は、例えば実施例に記載するような遺伝子操作によって提供され得る。融合し、機能的に連結したポリペプチド鎖を調製し、哺乳動物細胞または細菌においてそれらを発現させる方法は、当技術分野において周知である(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州、コールドスプリングハーバー、1989)。
【0034】
好ましい態様では、本発明のポリペプチド構築物の個々の単量体において、4-1BBLの完全な細胞外ドメインを「三量体化領域」として使用する。
【0035】
4-1BBLの完全な細胞外ドメインは、TNF相同ドメイン(THD)に加えてストーク領域と称される領域も含む:図1を参照されたい。ヒト4-1BBLのアミノ酸配列はGoodwin et al.(Eur. J. Immunol. (1993) 23, 2631)に記載されている。そのようなアミノ酸配列では、ストーク領域はアミノ酸残基50〜91に相当し、THDは92〜254に相当する。または、三量体化領域は、分子の三量体化を促進する、4-1BBLの細胞外ドメインの断片からのみなることも好ましい。そのような断片を、適切なさらなるペプチドリンカーによって機能的に連結することができる。
【0036】
4.1BBLに関しては、切断部位は記載されていないが(Bodmer et al., TIBS (2002) 27(1), 19-26)、例えば4℃での保存期間中のタンパク質分解といったタンパク質分解の観点で安定性を増すために、ストークドメインに変異を導入することが有利な場合がある。
【0037】
さらなる好ましい態様では、本発明の三量体ポリペプチド構築物の抗原相互作用部位は、別の抗原と特異的に相互作用する少なくとも2つのドメインを含む。
【0038】
本発明のそのような好ましい態様は、異なる特異性を有する1つより多くの抗原相互作用部位を含む三量体ポリペプチド構築物に関連する。そのような態様はまた、個々の抗原決定基を表す1つの分子の別の領域と特異的に相互作用する少なくとも2つのドメインを含む三量体ポリペプチド構築物も含む。
【0039】
別の抗原と特異的に相互作用する、より好ましいそのような少なくとも2つのドメインはペプチドリンカーを介して結合し、そのようなペプチドリンカーは重合活性を含まない。
【0040】
ペプチドリンカーについては上記で説明し、また添付の実施例において例証する。しかし、当技術分野において周知のさらなるペプチドリンカーも、本発明との関連で用いることができる。上記のペプチドリンカーの反復配列動因を含むペプチドリンカーも、そのような反復構造が重合活性を含まない限り好ましい。
【0041】
本発明を踏まえてさらに好ましいのは、1つまたは複数の細胞表面マーカーに特異的な、三量体ポリペプチド構築物の抗原相互作用部位である。本明細書において使用する「細胞表面マーカー」という用語は、細胞の表面に提示される分子を表す。そのような細胞表面マーカーの例には、膜タンパク質および膜貫通タンパク質、そのようなタンパク質または細胞表面に適合した分子等が挙げられる。
【0042】
本発明のさらに好ましい態様では、そのような細胞表面マーカーは腫瘍マーカーである。
【0043】
そのような腫瘍マーカーの例は、TAG72、PSMA、CD44v6、CEA、Her2-neu、Her-3、Her-4、Lewis Yである。
【0044】
好ましい態様において、本発明の三量体ポリペプチド構築物の単量体の第二ドメインの抗原相互作用部位は、抗体由来領域である少なくとも1つのドメインを含む。
【0045】
「抗体由来領域」という用語は、本発明に基づいて、エピトープと特異的に結合および相互作用する能力によって特徴づけられる、抗体の少なくとも1つの断片または誘導体を定義する。好ましくは、そのような抗体由来領域は、抗体の少なくとも1つの可変領域または少なくとも1つの超可変領域(CDR)に相当するポリペプチド配列を含む。
【0046】
「由来する」という用語は、この関連において、その領域が抗体のドメインに由来し、置換、欠失、付加、反転、重複、組換え等を含み得ることを意味する。
【0047】
さらに、以下に記載するように、「由来する」とは、一本鎖抗体、好ましくは二重特異性scFvのようなscFv分子または二重特異性分子と同様の、抗体の誘導体も想定する。
【0048】
抗体由来領域である1つのドメインは、抗体の少なくとも2つの可変領域に相当するポリペプチド配列を含むことが好ましい。本発明の特に好ましい分子形式は、抗体由来領域が1つのVH領域および1つのVL領域を含むポリペプチド構築物を提供する。
【0049】
抗体由来領域は、任意の哺乳動物種の抗体に由来してよい。そのような抗体由来領域は、ラット、マウス、またはヒト抗体に由来することが好ましい。
【0050】
本発明の三量体ポリペプチド構築物の単量体に抗原相互作用領域を提供する抗体は、例えばモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、合成抗体、Fab、FvもしくはscFv断片等の抗体断片もしくは誘導体、またはこれらのうちのいずれかの化学修飾誘導体に由来してよい。さらに、上記の抗原に対する抗体またはその断片は、例えば、HarlowおよびLane「Antibodies, A Laboratory Manual」、CSH Press, コールドスプリングハーバー、1988に記載されている方法を用いて取得することができる。抗体を、ヒトを含むいくつかの種から得てもよい。そのような抗体の誘導体をファージディプレイ法によって取得する場合には、BIAcoreシステムで使用される表面プラズモン共鳴を用いて、所望のエピトープに結合するファージ抗体の効率を上昇させることができる(Schier, Human Antibodies Hybridomas 7 (1996), 97-105;Malmborg, J. Immunol. Methods 183 (1995), 7-13)。キメラ抗体の産生は、例えばWO 89/09622に記載されている。ヒト化抗体の産生法は、例えばEP-A1 0 239 400およびWO 90/07861に記載されている。本発明に従って利用される抗体のさらなる供給源は、いわゆる異種抗体である。マウスにおけるヒト抗体のような異種抗体を産生する一般的原理は、例えば、WO 91/10741、WO 94/02602、WO 96/34096、およびWO 96/33735に記載されている。
【0051】
本発明に従って使用される抗体またはそれらに相当する免疫グロブリン鎖を、例えばアミノ酸欠失、挿入、置換、付加、および/もしくは組換え、ならびに/または当技術分野において周知の任意の他の修飾を単独でまたは組み合わせて用いることによって、当技術分野において周知の従来法によりさらに修飾することができる。免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列の基礎をなすDNA配列にそのような修飾を導入する方法は、当業者には周知である;例えば、Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N.Y.を参照されたい。言及した修飾は、核酸レベルで行うことが好ましい。
【0052】
本発明のさらに好ましい態様では、三量体ポリペプチド構築物の単量体の第二ドメインの抗原相互作用部位は、少なくとも2つの抗体由来領域を含む。
【0053】
この態様は、例えば、2つの異なるエピトープに対する2つの異なる抗体の特異性を有するポリペプチド構築物を含む。これに相当するポリペプチド構築物を添付の実施例に記載する。
【0054】
特に好ましいのは、抗原相互作用部位として二重特異性scFv構築物を含む構築物である。
【0055】
本発明の三量体ポリペプチド構築物は、抗原相互作用部位がB7ファミリーのメンバーの細胞外ドメイン、またはその特異的受容体に結合することができるその断片もしくは誘導体を含む構築物であってよい。
【0056】
B7ファミリーは、共刺激分子の1つの群である。そのようなファミリーおよび対応する特異的受容体のメンバーの例は、例えばCoyleおよびGutierrez-Ramos(Nature immunology (2001) 2(3); 203-209)に記載されている。
【0057】
本明細書で用いる、B7ファミリーのメンバーの「断片または誘導体」という用語は、それらが由来する元となったB7ファミリーのメンバーが特異的に結合する受容体に特異的に結合する能力を有する、B7ファミリーのメンバーの細胞外部分に由来するポリペプチドまたは二次的に修飾されたポリペプチドを表す。
【0058】
本発明によれば、三量体ポリペプチド構築物は、抗原相互作用部位がscFv、Fab、および単一のIg可変領域からなる群より選択される構築物である。
【0059】
好ましくは、抗原相互作用部位となり得る抗体由来領域が、キメラ抗体、完全ヒト抗体、または任意でヒト化抗体、CDR移植抗体もしくは非免疫化(deimmunized)抗体であってよい非ヒト起源の抗体であることが想定される。
【0060】
抗原相互作用部位内のscFv構築物を、EpCAM、NKG2D、CD19、PSMA、MCSP、stn (TAG72)、CD44v6、炭酸脱水酵素IX (CAIX)、CEA、EGFR、CD33、Wue-1、CD3、Muc-1、CD20、Her2-neu、Her 3、Her 4、およびLewis-Yに特異的なscFvからなる群より選択することができる。
【0061】
上記のように、本発明の三量体ポリペプチド構築物は、二重特異性scFvである抗原相互作用部位によって特徴づけられる単量体を含むこともまた好ましい。したがって、抗原相互作用部位は、2つの異なる抗原に結合/と相互作用し得る、または2つの異なる抗原を検出し得ることも想定される。
【0062】
同様に、そのような抗原相互作用部位は、とりわけ、1つのscFv、および例えばB7ファミリーのメンバーまたはその断片もしくは誘導体のようなさらなる抗原相互作用部位を含み得る。これに相当する態様を、以下および添付の実施例に記載する。
【0063】
上記のB7ファミリーのメンバーまたはその断片もしくは誘導体を、B7.1、B7.2、B7-H3、B7-RP1、B7-DC、PDL1、およびPDL2からなる群より選択することができる。
【0064】
B7.1、B7.2、B7-RP1、B7-DC、PDL1、およびPDL2の特異的受容体は、CoyleおよびGutierrez-Ramos(Nature immunology (2001) 2(3); 203-209)に記載されており、CD28(B7.1/B7.2)、CTLA-4(B7.1/B7.2)、ICOS(B7RP-1)、およびPD-1(PD-L1/PD-L2)である。
【0065】
本発明の特に好ましい態様では、各単量体の二次ドメインは、EpCAMに特異的なscFv、または上記のように、そのような部位の1つがEpCAMに対するscFvであるいくつかの、例えば2つの抗原相互作用部位を含む。エピトープEpCAMについては、以前に例えばRaum et al., 2001, Cancer Immunol Immunother. 50(3), 141-150に記載されている。
【0066】
本発明のさらに好ましい態様においては、三量体ポリペプチド構築物を形成する各単量体は、配列番号:20に示されるアミノ酸配列を有する。
【0067】
配列番号:20に示されるアミノ酸配列を有する単量体は、配列番号:19に示される核酸分子によってコードされる。以下に詳述するように、本発明の好ましい態様は、そのような単量体をコードする核酸分子、およびその単量体の機能的変種をコードする核酸分子に関する。
【0068】
本発明において、「ホモ三量体構築物」のみならず、以下に記載する「ヘテロ三量体構築物」もまた想定されることに留意すべきである。したがって、「各単量体の二次ドメイン」という用語は、3つの同一の単量体からなる三量体ポリペプチド構築物に限定されない。よって、本明細書に記載する単量体を組み合わせて「ヘテロ三量体ポリペプチド構築物」にすることも可能であり、これも本発明において想定される。
【0069】
三量体ポリペプチド構築物の単量体の「機能的変種」という用語は、本発明において、上記で詳細に開示したように三量体化することが可能であり、かつその抗原相互作用部位を介して特に所定の抗原に結合/と相互作用することが可能な単量体を示す。
【0070】
驚くべきことに、本明細書に記載する三量体化構築物のみで、持続的/永続的なT細胞応答を活性化可能であることが見出された。「持続的なT細胞応答」という用語は、T細胞が、TCRシグナルもしくはTCR様シグナルおよび適切な共刺激を介してプライミングされ続けることを意味する。そのようなT細胞の長期生存は、例えば、活性化を誘導された細胞の死滅に対する防御のためである。結果として、活性化T細胞を、エフェクター細胞としてそれぞれの標的に長期間作用させるために使用できる。T細胞の生存に及ぼす効果は、例えばBclw、Bcl-2、Bcl-xL、またはBfl-1のようなBcl-2ファミリーによる抗アポトーシス因子の発現レベルの増加を測定することによって解析することができる(Jones (2000) J. Exp. Med. 191: 1721)。
【0071】
機能的変種は特定のアミノ酸配列が異なるものの、同じ抗原エピトープに対して、抗原相互作用部位の同じ特異性を示す。したがって、単量体のそのような機能的変種は、それが帰する核酸分子の配列と異なる配列を有する核酸配列によってコードされる。
【0072】
本発明の別の特に好ましい態様は、モノクローナル抗体237のscFvを含む。
【0073】
当技術分野において周知のように、モノクローナル抗体はマウス肉腫細胞株の表面マーカーを検出/と相互作用する。このマーカーは腫瘍特異的細胞表面抗原である(Ward et al., 1989, J. Exp. Med. 第170巻、217-232で公表されたPW237抗体)。相当する三量体ポリペプチド構築物は、配列番号:8に示されるアミノ酸配列を有してよい。
【0074】
配列番号:8に示されるアミノ酸配列を有する単量体は、配列番号:7に示される核酸分子によってコードされてもよい。本発明はまた、そのような単量体をコードする核酸分子、およびそのような単量体の機能的変種をコードする核酸分子もまた含む。
【0075】
scFv抗237 - マウス4-1BBLを含むこの好ましい三量体ポリペプチド構築物をマウスモデル系で使用し、誘発される持続的なT細胞応答を定量化することができる。インビトロで培養し、237抗原をその表面上に発現する腫瘍形成細胞を、マウスに投与する。マウスを腫瘍攻撃するため対応する細胞を用いて、次にscFv抗237 - マウス4-1BBLを注射し、当技術分野において周知の方法により腫瘍増殖に及ぼす効果を測定することができる。
【0076】
実施例に例証するように、モノクローナル抗体237に由来するscFvはまた、別のscFvのような他の/別の抗原相互作用部位と組み合わせてもよい。さらなる組み合わせもまた想定される。したがって、本発明はまた、とりわけ、各単量体または少なくとも1つの単量体がいくつかの、好ましくはEpCAMに特異的なscFvおよびNKG2Dに特異的なscFvのような2つのscFvを含む、本明細書に規定する三量体構築物を提供する。
【0077】
NKG2D分子は、Baue et al.(Science (1999) 285, 727-729)に詳述されている。
【0078】
本発明の三量体ポリペプチド構築物のこれに相当する単量体は、配列番号:18に示されるアミノ酸配列を有してもよい。
【0079】
配列番号:18に示されるアミノ酸配列を有する単量体は、配列番号:17に示される核酸分子によってコードされてもよい。本発明はまた、そのような単量体をコードする核酸分子、およびそのような単量体の機能的変種をコードする核酸分子もまた含む。
【0080】
本明細書に述べたように、特に好ましい態様において本発明は、「第二ドメイン」として、すなわち抗原相互作用部位として、二重特異性構築物を有する少なくとも1つ、好ましくは2つ、最も好ましくは3つの単量体を含む三量体ポリペプチド構築物を提供する。最も好ましくは、2つのscFvまたは1つのscFvおよびB7ファミリーのメンバー(またはその一部もしくは断片)を含む。そのような構築物のこれに相当する実施例を添付する。
【0081】
本発明の別の特に好ましい態様において、各単量体は、二重特異性scFv構築物の少なくとも1つの特異性がCD3に特異的である、二重特異性scFv構築物を含む。
【0082】
そのような単量体において、CD3に特異的なscFvは、配列番号:22に示されるアミノ酸配列を有してもよい。
【0083】
配列番号:22に示されるアミノ酸配列を有する単量体は、配列番号:21に示される核酸分子によってコードされ得る。本発明はまた、そのような単量体をコードする核酸分子、およびそのような単量体の機能的変種をコードする核酸分子もまた含む。
【0084】
本発明の三量体構築物の単量体の第二ドメインは、EpCAMに特異的なscFv、およびB7.1の細胞外ドメイン、またはその特異的受容体、すなわちCD28またはCTLA-4に結合することができるその断片もしくは誘導体である抗原相互作用部位を含んでもよい。
【0085】
そのような構築物単量体は、配列番号:16に示されるアミノ酸配列を有してもよく、配列番号:15に示される核酸分子によってコードされてもよい。本発明はまた、そのような単量体をコードする核酸分子、およびそのような単量体の機能的変種をコードする核酸分子もまた含む。
【0086】
本発明に基づき、三量体ポリペプチド構築物が少なくとも2つの異なる単量体からなり、そのような異なる単量体は異なる抗原相互作用部位によって特徴づけられることが想定される。上記で指摘したように、「各単量体の二次ドメイン」という用語は、同一の単量体を含む三量体ポリペプチド構築物、すなわち「ホモ三量体構築物」に限定されない。同様に、少なくとも1つの単量体が、三量体ポリペプチド構築物に含まれる他の単量体と異なる「ヘテロ三量体構築物」も想定される。例えば、3つの単量体が異なる抗原相互作用部位を含むこと、および/または1つの単量体のみがHISタグのようなさらなるタグもしくは標識を含むことも可能である。
【0087】
したがって、本発明はまた、2つまたは3つの異なる単量体によって形成される三量体ポリペプチド構築物を提供する。そのような構築物は、ヘテロ三量体またはヘテロ三量体構築物と見なされる。ヘテロ三量体は、単量体の三量体化を促進する第一ドメインを有するかまたは含む単量体を含み、そのような3つの単量体のそのような第一ドメインはできれば同一であることが最も好ましい。しかしながら、本発明のヘテロ三量体構築物の好ましい態様において、異なる第二ドメイン、すなわち抗原相互作用部位が、三量体ポリペプチド構築物の個々の単量体内に想定される。
【0088】
さらに、そのような態様によれば、2つまたは3つの異なる単量体はそれらの異なる第二ドメインによって識別され得る。そのような第二ドメインは、異なる抗原、または1つもしくは複数の分子の異なる抗原決定基に対する特異性を有する、1つまたは複数の抗原相互作用部位からなってもよい。
【0089】
好ましくは、本発明のヘテロ三量体ポリペプチド構築物は、標的細胞抗原に対する特異性を有する抗原相互作用部位を有する少なくとも1つの単量体、およびエフェクター細胞上の活性化分子に対する特異性を有する抗原相互作用部位を有する少なくとも1つの単量体からなってもよい。
【0090】
三量体ポリペプチド構築物の少なくとも1つの単量体が、タグをさらに含むことが想定される。
【0091】
「タグ」という用語は当業者には周知であって、標識を指し、これによりタグを含むポリペプチドが同定され得る。
【0092】
そのようなタグは、以下かならる群より選択されてもよい:Hisタグ、Flagタグ、Mycタグ、HAタグ、GSTタグ、T100(商標)、VSV-G、V5、Sタグ(商標)、HSV、CFP、RFP、YFP、GFP、BFP、セルロース結合ドメイン(CBD)、マルトース結合タンパク質(MBP)、NusAタグ、チオレドキシン(Trx)、DsbA、DsbC、およびビオチン化配列。
【0093】
最も好ましくは、そのようなタグは少なくとも1つの単量体のC末端におけるHisタグである。
【0094】
上記したように、本発明の三量体ポリペプチド構築物は、真核生物発現系で発現されることが好ましい。
【0095】
真核生物発現系については、以下に詳述する。
【0096】
本発明はまた、本発明の三量体ポリペプチド構築物の単量体をコードする核酸分子を提供する。
【0097】
したがって、本発明は、以下からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する:
(a) 好ましくは配列番号:20、8、18、22、および16に示されるような、本発明の三量体ポリペプチド構築物の単量体のアミノ酸配列を含むタンパク質の成熟型をコードするヌクレオチド配列;
(b) 配列番号:19、7、17、21、および15に示されるようなDNA配列を含むか、またはそのようなDNA配列からなるヌクレオチド配列;
(c) ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において、(b)に規定されるヌクレオチド配列の相補鎖とハイブリダイズするヌクレオチド配列;
(d) (a)または(b)のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列の1つまたはいくつかのアミノ酸の置換、欠失、および/または付加により、(a)または(b)のヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質に由来するタンパク質をコードするヌクレオチド配列;
(e) (a)または(b)のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列;
(f) (a)から(e)のいずれか1つのヌクレオチド配列の、遺伝暗号の結果として縮重したヌクレオチド配列。
【0098】
タンパク質の「成熟型」という用語は、本発明において、その対応するmRNAから転写され、任意にその後修飾されたタンパク質を定義する。
【0099】
本明細書で用いる「ハイブリダイズする」という用語は、本発明のポリヌクレオチドまたはその一部とハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを指す。したがって、そのようなポリヌクレオチドは、それぞれの大きさに応じて、RNAまたはDNA調製物のそれぞれノーザンまたはサザンブロット解析のプローブとして有用である可能性があるか、またはPCR解析のオリゴヌクレオチドプライマーとして使用することができる。そのようなハイブリダイズするポリヌクレオチドは、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも15ヌクレオチド長を含むが、本発明のハイブリダイズするポリヌクレオチドがプローブとして用いられる場合には、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、最も好ましくは少なくとも500ヌクレオチド長を含む。
【0100】
核酸分子を用いてハイブリダイゼーション実験を行う方法は当技術分野において周知であり、すなわち、当業者は本発明に従ってどのようなハイブリダイゼーション条件を用いるべきかを熟知している。そのようなハイブリダイゼーション条件は、Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N.Y.等の標準的な教科書に照会される。
【0101】
本発明において好ましいのは、本発明のポリヌクレオチドまたはその一部に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドである。
【0102】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、すなわち、50%ホルムアミド、5x SSC(750 mM NaCl、75 mMクエン酸ナトリウム)、50 mMリン酸ナトリウム(pH 7.6)、5xデンハルト溶液、10%硫酸デキストラン、および20μg/ml変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中、42℃で一晩インキュベートし、その後フィルターを0.1 x SSC中、約65℃で洗浄することを指す。低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件において本発明のポリヌクレオチドにハイブリダイズする核酸分子もまた意図される。ハイブリダイゼーションおよびシグナル検出のストリンジェンシーの変更は、主にホルムアミド濃度(ホルムアミドの割合を下げることによりストリンジェンシーは低くなる);塩条件、または温度を操作することによって達成される。例えば、低いストリンジェンシー条件には、6X SSPE(20X SSPE = 3M NaCl;0.2 M NaH2PO4;0.02 M EDTA、pH 7.4)、0.5% SDS、30%ホルムアミド、100μg/mlサケ精子ブロッキングDNAを含む溶液中、37℃で一晩インキュベートし;その後1 X SSPE、0.1% SDSで50℃で洗浄することが含まれる。また、さらに低いストリンジェンシーを達成するためには、ストリンジェントなハイブリダイゼーションの後に行う洗浄を、高い塩濃度(例えば5X SSC)で行うこともできる。上記条件の変更は、ハイブリダイゼーション実験においてバックグラウンドを抑えるために使用される別のブロッキング試薬を含めるおよび/またはそれに置換することによって達成され得ることは注目すべきである。典型的なブロッキング試薬には、デンハルト試薬、BLOTTO、ヘパリン、変性サケ精子DNA、および市販の独自の処方品が含まれる。特定のブロッキング試薬を含めるには、適合性の問題から、上記のハイブリダイゼーション条件の修正を必要とする場合がある。
【0103】
本発明の核酸分子は、例えばDNA、cDNA、RNA、または合成により作製したDNAもしくはRNA、またはそれらのポリヌクレオチドのいずれかを単独でまたは組み合わせて含む、組換えにより作製したキメラ核酸分子であってよい。
【0104】
本発明はまた、本発明の上記核酸分子を含むベクターを提供する。
【0105】
多くの適切なベクターが分子生物学における当業者には周知であり、その選択は所望の機能に依存し、これにはプラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージ、および遺伝子操作で通常用いられる他のベクターが含まれる。当業者に周知の方法を用いて、種々のプラスミドおよびベクターを構築することができる;例えば、Sambrook, 「Molecular Cloning A Laboratory Manual」, Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N.Y.、およびAusubel, 「Current Protocols in Molecular Biology」, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1989), (1994)に記載されている技法を参照されたい。または、本発明のポリヌクレオチドおよびベクターを送達用リポソーム内に再構成して、細胞を標的することも可能である。以下でさらに詳述するように、DNAの個々の配列を単離するために、クローニングベクターを用いた。関連配列を、特定ポリペプチドの発現が求められる発現ベクターに移行することができる。典型的なクローニングベクターには、pBluescript SK、pGEM、pUC9、pBR322、およびpGBT9が含まれる。適切な発現ベクターには、pTRE、pCAL-n-EK、pESP-1、pOP13CATが含まれる。
【0106】
そのようなベクターに含まれる核酸分子はDNAである。
【0107】
本発明のベクターは、本発明の三量体ポリペプチド構築物の単量体をコードする核酸分子が、原核生物宿主および/または真核生物宿主において転写および任意に発現を可能にする1つまたは複数の制御配列に機能的に連結された発現ベクターであることが想定される。
【0108】
「制御配列」という用語は、それらが連結しているコード配列の発現をもたらすために必要な制御DNA配列を指す。
【0109】
そのような制御配列の性質は、宿主生物によって異なる。原核生物では、制御配列には一般に、プロモーター、リボソーム結合部位、およびターミネーターが含まれる。真核生物では一般に、制御配列にはプロモーター、ターミネーター、および場合によってはエンハンサー、トランス活性化因子、または転写因子が含まれる。「制御配列」という用語は、その存在が発現に必要であるすべての成分を最低限含むことが意図され、さらなる有利な成分を含んでもよい。
【0110】
「機能的に連結された」という用語は、そのように記載された成分が目的の様式で機能することを可能にする関係に並んでいることを指す。コード配列に「機能的に連結される」制御配列は、制御配列と適合した条件下でコード配列の発現が達成されるように連結される。制御配列がプロモーターである場合、二本鎖核酸が好ましく用いられることが当業者には明らかである。
【0111】
したがって、本発明のベクターは発現ベクターであることが好ましい。「発現ベクター」は、選択された宿主を形質転換するために用いられ得る構築物であり、選択された宿主においてコード配列の発現を提供する。発現ベクターは、例えばクローニングベクター、バイナリーベクター、または組み込み型ベクターであってよい。発現は、核酸分子の、好ましくは翻訳可能なmRNAへの転写を含む。原核細胞および/または真核細胞において発現を確実にする制御エレメントは、当業者には周知である。真核細胞の場合は、それらには通常、転写の開始を確実にするプロモーター、ならびに任意に転写の終結および転写産物の安定化を確実にするポリAシグナルが含まれる。原核宿主細胞において発現を可能にする制御エレメント候補には、例えば、大腸菌のPL、lac、trp、またはtacプロモーターが含まれ、真核宿主細胞において発現を可能にする制御エレメントの例としては、酵母のAOX1もしくはGAL1プロモーター、または哺乳動物細胞および他の動物細胞のCMV、SV40、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、CMVエンハンサー、SV40エンハンサー、もしくはグロビンイントロンが挙げられる。
【0112】
そのような制御エレメントには、転写の開始に関与するエレメントに加えて、ポリヌクレオチドの下流の、SV40-ポリA部位またはtk-ポリA部位等の転写終結シグナルもまた含まれ得る。さらに、使用する発現系に応じて、ポリペプチドを細胞内コンパートメントに導き得るまたは培地中に分泌し得るリーダー配列を、本発明のポリヌクレオチドのコード配列に加えてもよく、これについては当技術分野において周知である;例えば添付の実施例も参照されたい。リーダー配列は翻訳開始および翻訳終結配列と適切な状態で組み立てられ、リーダー配列は翻訳されたタンパク質またはその一部の分泌を細胞膜周辺腔または細胞外培地に導き得ることが好ましい。任意で、異種配列は、例えば発現された組換え産物の安定化または単純化した精製など、所望の特徴を付与するN末端同定ペプチドを含む融合タンパク質をコードし得る;前期を参照されたい。この関連において、Okayama-Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(In-vitrogene)、pEF-DHFRおよびpEF-ADA(Raum et al. Cancer Immunol Immunother (2001) 50(3), 141-150)、またはpSPORT1(GIBCO BRL)等の適切な発現ベクターが、当技術分野において周知である。
【0113】
発現制御配列は、真核宿主細胞を形質転換またはトランスフェクションし得るベクターにおいて真核生物プロモーター系であることが好ましいが、原核生物宿主の制御配列を用いてもよい。ベクターが適切な宿主に取り込まれたならば、ヌクレオチド配列の高レベル発現に適した条件下で宿主を維持し、所望に応じて、本発明のポリペプチドの回収および精製を行い得る;例えば、添付の実施例を参照されたい。
【0114】
細胞周期相互作用タンパク質を発現させるために使用し得る別の発現系は、昆虫系である。1つのそのような系では、Autographa californica多核体病ウイルス(AcNPV)をベクターとして使用し、Spodoptera frugiperda細胞またはTrichoplusia幼虫内で外来遺伝子を発現させる。ポリヘドリン遺伝子等のウイルスの非必須領域に本発明の核酸分子のコード配列をクローニングし、ポリヘドリンプロモーターの制御下に置くことができる。そのようなコード配列をうまく挿入することにより、ポリヘドリン遺伝子が不活化し、コートタンパク質コートを欠く組換えウイルスが産生されることになる。次いで、組換えウイルスを用いて、本発明のタンパク質を発現させるS. frugiperda細胞またはTrichoplusia幼虫に感染させる(Smith, J. Virol. 46 (1983), 584;Engelhard, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 91 (1994), 3224-3227)。
【0115】
さらなる制御エレメントには、転写エンハンサーおよび翻訳エンハンサーが含まれ得る。本発明の上記ベクターは、選択マーカーおよび/またはスコアマーカーを含むことが有利である。
【0116】
形質転換細胞および例えば植物組織および植物の選択に有用な選択マーカー遺伝子は、当技術分野において周知であり、これには例えば、メトトレキサート耐性を付与するdhfr(Reiss, Plant Physiol. (Life Sci. Adv.) 13 (1994), 143-149);アミノグリコシド系ネオマイシン、カナマイシン、およびパロマイシン耐性を付与するnpt(Herrera-Estrella, EMBO J. 2 (1983), 987-995)、およびハイグロマイシン耐性を付与するhygro(Marsh, Gene 32 (1984), 481-485)の選択を基礎とした代謝拮抗剤耐性が含まれる。さらなる選択遺伝子も記載されており、すなわち、細胞にトリプトファンに代えてインドールの利用を可能にするTrpB;細胞にヒスチジンに代えてヒスチノール(histinol)の利用を可能にするhisD(Hartman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85 (1988), 8407);細胞にマンノースの利用を可能にするマンノース-6-リン酸イソメラーゼ(WO 94/20627)、およびオルニチン脱炭酸酵素阻害剤、2-(ジフルオロメチル)-DL-オルニチン、DMSOに対する耐性を付与するODC(オルニチン脱炭酸酵素)(McConlogue, 1987: Current Communications in Molecular Biology, Cold Spring Harbor Laboratory ed.に含まれる)、またはブラストサイジンS耐性を付与するAspergillus terreus由来デアミナーゼ(Tamura, Biosci. Biotechnol. Biochem. 59 (1995), 2336-2338)である。
【0117】
有用なスコアマーカーもまた当業者には周知であり、市販されている。そのようなマーカーは、ルシフェラーゼ(Giacomin, Pl. Sci. 116 (1996), 59-72;Scikantha, J. Bact. 178 (1996), 121)、緑色蛍光タンパク質(Gerdes, FEBS Lett. 389 (1996), 44-47)、またはβ-グルクロニダーゼ(Jefferson, EMBO J. 6 (1987), 3901-3907)をコードする遺伝子であることが有利である。この態様は、本発明のベクターを含む細胞、組織、および生物の単純かつ迅速なスクリーニングに特に有用である。
【0118】
上記のように、本発明の核酸分子を単独でまたはベクターの一部として使用し、例えば遺伝子治療のために、本発明のポリペプチドを細胞内で発現させることができる。上記の三量体ポリペプチド構築物のいずれか1つをコードするDNA配列を含む核酸分子またはベクターを細胞に導入し、次にその細胞が関心対象のポリペプチドを産生する。遺伝子治療は、エクスビボまたはインビボ技法による細胞への治療遺伝子の導入に基づくものであり、遺伝子移入の最も重要な用途である。インビトロまたはインビボ遺伝子治療の適切なベクター、方法、または遺伝子送達系は文献に記載されており、当業者には周知である;例えば、Giordano, Nature Medicine 2 (1996), 534-539; Schaper, Circ. Res. 79 (1996), 911-919; Anderson, Science 256 (1992), 808-813; Verma, Nature 389 (1994), 239; Isner, Lancet 348 (1996), 370-374; Muhlhauser, Circ. Res. 77 (1995), 1077-1086; Onodera, Blood 91 (1998), 30-36; Verma, Gene Ther. 5 (1998), 692-699; Nabel, Ann. N. Y. Acad. Sci. 811 (1997), 289-292; Verzeletti, Hum. Gene Ther. 9 (1998), 2243-51; Wang, Nature Medicine 2 (1996), 714-716; WO 94/29469; WO 97/00957, US 5,580, 859; US 5,589, 466; またはSchaper, Current Opinion in Biotechnology 7 (1996), 635-640を参照されたい。本発明の核酸分子およびベクターは、細胞への直接導入、またはリポソームもしくはウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、レトロウイルス)を介した導入用に設計することができる。好ましくは、そのような細胞は、生殖系列細胞、胚細胞、もしくは卵子、またはそれに由来する細胞であり、最も好ましくはそのような細胞は幹細胞である。胚性幹細胞の例は、とりわけ、Nagy, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 (1993), 8424-8428に記載されている幹細胞であってよい。
【0119】
上記に従って、本発明は、本発明の三量体ポリペプチド構築物の単量体をコードする核酸分子を含むベクター、特に遺伝子操作において通常用いられるプラスミド、コスミド、ウイルス、およびバクテリオファージに関する。好ましくは、そのようなベクターは、発現ベクターおよび/または遺伝子伝達もしくは遺伝子ターゲティングベクターである。レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、またはウシパピローマウイルス等のウイルスに由来する発現ベクターを、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを標的細胞集団に送達するために用いることができる。当業者に周知の方法を用いて、組換えベクターを構築することできる;例えば、Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N.Y.、およびAusubel. Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1989)に記載されている技法を参照されたい。または、本発明の核酸分子およびベクターを送達用リポソーム内に再構成して、細胞を標的することも可能である。本発明の核酸を含むベクターは周知の方法によって宿主細胞に移入することができ、その方法は細胞宿主の種類によって変わる。例えば、原核細胞に対しては塩化カルシウムトランスフェクションが一般に用いられ、一方、他の細胞宿主に対してはリン酸カルシウム処理またはエレクトロポレーションが用いられ得る;例えば、Sambrook、前記を参照されたい。本発明のベクターは、pEF-DHFRまたはPEF-ADAであってよい。
【0120】
ベクターpEF-DHFRおよびPEF-ADAは、当技術分野において、例えばMack et al.(PNAS (1995) 92, 7021-7025)およびRaum et al.(Cancer Immunol Immunother (2001) 50(3), 141-150)に記載されている。
【0121】
本発明はさらに、本発明の少なくとも1つのベクターまたは少なくとも1つの核酸分子を含む宿主に関する。
【0122】
そのような宿主は、少なくとも1つのベクターまたは少なくとも1つの核酸分子を宿主に導入することによって作製され得る。宿主におけるそのような少なくとも1つのベクターまたは少なくとも1つの核酸分子の存在によって、本発明の三量体ポリペプチド構築物の単量体をコードする遺伝子の発現が媒介される。
【0123】
宿主内に存在する本発明の核酸分子またはベクターは、宿主のゲノム内に組み込まれても、染色体外で維持されてもよい。
【0124】
宿主は任意の原核細胞であっても真核細胞であってもよい。
【0125】
「原核生物」という用語は、本発明のタンパク質を発現させるためにDNAまたはRNA分子で形質転換またはトランスフェクションされ得るすべての細菌を含むことが意図される。原核生物宿主には、例えば、大腸菌、ネズミチフス菌、霊菌、および枯草菌等のグラム陰性菌およびグラム陽性菌が含まれる。「真核生物」という用語は、酵母、高等植物、昆虫、および好ましくは哺乳動物細胞を含むことが意図される。本発明のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質は、組換え体を産生する手順で用いる宿主に応じて、グリコシル化されてもグリコシル化されなくてもよい。特に好ましいのは、本発明のポリペプチドのコード配列を含み、これにN末端FLAGタグおよび/またはC末端Hisタグが遺伝子的に融合したプラスミドまたはウイルスの使用である。好ましくは、FLAGタグの長さは約4〜8アミノ酸であり、最も好ましくは8アミノ酸である。当業者に周知の技法のいずれかにより、本発明のポリヌクレオチドを用いて、宿主を形質転換またはトランスフェクションすることができる。さらに、融合され機能的に連結された遺伝子を調製し、それらを例えば哺乳動物細胞および細菌内で発現させる方法は、当技術分野において周知である(Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, ニューヨーク州、コールドスプリングハーバー、1989)。
【0126】
好ましい態様において、宿主は細菌、昆虫、真菌、植物、または動物細胞である。
【0127】
好ましくは、本発明の宿主は哺乳動物細胞、より好ましくはヒト細胞またはヒト細胞株であることが想定される。
【0128】
特に好ましい宿主細胞には、CHO細胞、COS細胞、SP2/0またはNS/0のような骨髄腫細胞株が含まれる。
【0129】
本発明の別の態様は、本発明の三量体ポリペプチド構築物の発現を可能にする条件下で本発明の宿主を培養する段階、および培養液から産生されたポリペプチド構築物を回収する段階を含む、本発明の三量体ポリペプチド構築物を産生する方法に関する。
【0130】
形質転換した宿主は、当技術分野において周知の技法に従って発酵槽で増殖させおよび培養して、最適な細胞増殖を実現することができる。次いで、本発明のポリペプチドを培地、細胞溶解液、または細胞膜画分から単離することができる。例えば、微生物で発現させた本発明のポリペプチドの単離および精製は、例えば分取クロマトグラフィー分離、および本発明のポリペプチドのタグに対して作製されたモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体の使用を含むような、または添付の実施例に記載するような免疫学的分離等の任意の従来手段によってよい。
【0131】
発現を可能にする宿主の培養条件は、そのような方法で使用する宿主系および発現系/ベクターに依存して当技術分野において周知である。組換えポリペプチドの発現を可能にする条件を達成するために修正されるパラメータは、当技術分野において周知である。したがって、さらに本発明の提供がない場合には、適切な条件は当業者によって決定され得る。
【0132】
本発明のポリペプチド構築物が発現されたならば、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動等の、当技術分野の標準的な手順に従ってこれを精製することができる;Scopes,「Protein Purification」, Springer-Verlag, N.Y. (1982)を参照されたい。薬学的用途には、少なくとも均一性約90〜95%の実質的に純粋なポリペプチドが好ましく、98〜99%またはそれ以上の均一性が最も好ましい。ポリペプチドが部分的にまたは所望の均一性まで精製されたならば、次にこれを治療に(体外を含め)、またはアッセイ手順の開発および実行に用いることができる。さらに、培養液から本発明の三量体ポリペプチド構築物を回収する方法の例を、添付の実施例に記載する。
【0133】
好ましくは、本発明の方法における発現により、少なくとも90%の三量体化率、および産生されたポリペプチド構築物の培養液からの回収がもたらされる。より好ましくは三量体化率は少なくとも95%であり、最も好ましくは少なくとも99%である。
【0134】
ポリペプチドの三量体化率を決定する方法は、当技術分野において周知である。適切な方法の一例を添付の実施例1に詳細に記載し、そのような決定の結果をず6に示す。
【0135】
本発明はまた、本発明の三量体ポリペプチド構築物、本発明の方法によって産生される三量体ポリペプチド構築物、本発明の核酸分子、本発明のベクター、または本発明の宿主、および任意で免疫エフェクター細胞の活性化シグナルを提供し得るタンパク質様化合物を含む組成物を提供する。
【0136】
本発明の観点から、免疫エフェクター細胞の活性化シグナルを提供するそのような「タンパク質様化合物(proteinaceous compound)」は、例えばT細胞の初期活性化シグナルであってよい。タンパク化合物の好ましい形式には、例えば二重特異性scFvのような二重特異性抗体およびその断片または誘導体が含まれる。T細胞のそのような初期活性化シグナルは、好ましくはT細胞受容体(TCR)を介して、より好ましくはTCRのCD3分子を介して提供され得る。タンパク化合物には、これらに限定されないが、CD3に特異的なscFv断片、T細胞受容体または超抗原に特異的なscFv断片が含まれる。超抗原は、MHC非依存的様式で特定のサブファミリーのT細胞受容体可変領域に直接結合し、それにより初期T細胞活性化シグナルを媒介する。タンパク化合物はまた、非T細胞である免疫エフェクター細胞の活性化シグナルを提供してもよい。非T細胞である免疫エフェクター細胞の例には、とりわけB細胞およびNK細胞が含まれる。
【0137】
本発明はまた、本発明のこれら上記の三量体ポリペプチド構築物、核酸分子、ベクター、または宿主、および任意に免疫エフェクター細胞の活性化シグナル能を有する上記タンパク化合物を含む薬学的組成物である組成物に関する。
【0138】
薬学的組成物である本発明の組成物は、免疫エフェクター細胞の活性化シグナル能を有する上記タンパク化合物と同時にまたは別に投与することができる。
【0139】
本発明のさらに好ましい態様において、薬学的組成物である組成物は、適切な担体製剤、安定剤、および/または賦形剤をさらに含む。
【0140】
適切な薬学的担体の例は当技術分野において周知であり、リン酸緩衝食塩水、水、油/水エマルジョン等の乳濁液、種々の種類の湿潤剤、無菌溶液等がこれに含まれる。そのような担体を含む組成物は、周知の従来法によって製剤化し得る。これらの薬学的組成物は、適切な用量で被験体に投与することができる。適切な組成物の投与は、例えば静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所、または皮内投与等の異なる方法によって実施し得る。投与計画は、主治医および臨床的要因により決定されることになる。医療分野で周知のように、任意の一患者への投与量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与する特定の化合物、性別、投与時間および投与経路、一般的な健康状態、ならびに同時に投与する他の薬剤を含む、多くの要因に依存する。一般に、薬学的組成物の定期的投与としての計画は、1μg〜10 mg単位/日の範囲であるべきである。投与計画が持続注入の場合は、それぞれ1μg〜10 mg単位/キログラム体重/分の範囲であるべきである。しかし、持続注入のより好ましい投与量は、0.01μg〜10 mg単位/キログラム体重/時間の範囲であると考えられる。特に好ましい投与量を以下に列挙する。定期的に評価することにより、進行状況をモニターすることができる。投与量は変動するが、DNAの静脈内投与の好ましい投与量は、DNA分子約106〜1012コピーである。本発明の組成物は、局所的に投与しても全身投与してもよい。投与は一般に、非経口投与、例えば静脈内投与である;DNAは、例えば標的部位内部または外部への遺伝子銃送達による、または動脈内の部位へのカテーテルによるなど、標的部位に直接投与してもよい。非経口投与用製剤には、滅菌水溶液または非水溶液、懸濁物、および乳濁液が含まれる。非水溶性溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、オレイン酸エチル等の注射可能な有機エステルが挙げられる。水溶性担体には、水、アルコール/水溶液、乳濁液、または食塩水および緩衝培地を含む懸濁液が含まれる。非経口賦形剤には、塩化ナトリウム溶液、ブドウ糖リンゲル液、ブドウ糖および塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、リンガー液、または固定油が含まれる。静脈注射賦形剤には、液体および栄養補充剤、電解質補充剤(ブドウ糖リンゲル液に基づくような)等が含まれる。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガス等の保存剤および他の添加剤もまた存在してよい。さらに、本発明の薬学的組成物は、例えば好ましくはヒト由来の血清アルブミンまたは免疫グロブリンのようなタンパク質性担体を含み得る。さらに、本発明の薬学的組成物は、薬学的組成物の目的の用途に応じて、生物活性物質をさらに含むことが想定される。このような物質は、胃腸系に作用する薬剤、細胞増殖抑制剤(cytostatica)として作用する薬剤、高尿酸血症を予防する薬剤、および/または当技術分野において周知のT細胞共刺激分子もしくはサイトカイン等の薬剤であってよい。
【0141】
本発明の三量体構築物を投与することが考えられる適応症は、腫瘍性の疾患、特に乳癌、結腸癌、前立腺癌、卵巣癌、もしくは肺癌等の上皮癌、または血液腫瘍、グリア細胞腫、肉腫、もしくは骨肉腫のような他の腫瘍性疾患である。本発明の構築物の投与は、特に、単一細胞の残存によって生じる腫瘍の局所的および非局所的再発を特徴とする微小残存病変に適応される。アジュバント化学療法等の微小残存病変に対する従来の治療方法に関連する問題は、分裂細胞のみが排除される点である。したがって、単一の腫瘍細胞が休止/活力欠如状態で化学療法をしのぎ、その後新たな増殖腫瘍を形成する可能性がある。本発明の構築物を投与することが考えられるさらなる適応症には、自己免疫疾患、特にT細胞介在性自己免疫疾患、炎症性疾患(抗原特異的T細胞活性化)、感染症、特に細菌および真菌感染、ウイルス性疾患(長期ワクチン治療)、アレルギー反応、寄生虫反応、移植片対宿主病、移植片拒絶反応が含まれ得る。
【0142】
本発明はさらに、他の化合物、例えば二重特異性抗体構築物、標的トキシン、またはT細胞を介して作用する他の化合物との併用投与手順も想定する。本発明の化合物を併用投与するための臨床的投与計画には、他の成分の投与と同時、他の成分の投与前、または投与後の併用投与が包含され得る。
【0143】
本発明の三量体構築物を修飾または誘導体化することも可能である。これに相当する修飾には、本発明の構築物またはそれらの単量体の結合特異性、結合活性、半減期等を改善するための組換えDNA技術の使用が含まれ得る。構築物の残存抗原性の可能性を減じることもまた想定される。
【0144】
本発明の構築物の有効性/活性を実証するための考えられ得るアプローチは、マウスのようなインビボモデルである。適切なモデルは、Ag104A(骨肉腫)マウスモデルであってよい(その細胞株は、Wick et al. J. Exp. Med. 186 (2), 1997年7月21日、229-238に記載されている)。Ag104Aは、腫瘍特異的細胞表面抗原を提示するマウス線維肉腫細胞株である(PW237抗体がWard et al., 1989, J. Exp. Med. 第170巻、217-232に公表されている)。このマウスモデルを用いて、トランスフェクションしたAG104A細胞のインビボ腫瘍退縮を試験することができる。そのような実験は、C3H/HeN MMTV-マウスの背中に皮下注射するように設計される。
【0145】
本明細書に詳述するように、本発明の薬学的組成物は、医学的介入を必要とする患者(好ましくはヒト患者)に投与し得る。薬学的組成物は、単独でまたは他の薬物/薬学的組成物と組み合わせて投与することができる。これらのさらなる薬物/薬学的組成物は、本発明の薬学的組成物と同時にまたは別に投与することができる。
【0146】
または本発明は、好ましい態様において、任意に検出手段および検出法をさらに含む診断組成物である組成物に関する。
【0147】
本発明のさらに別の態様は、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫障害、自己免疫疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫反応、移植片対宿主病、または宿主対移植片病を予防、治療、または改善する薬学的組成物を調製するための、本発明の三量体ポリペプチド構築物もしくは本発明の方法によって産生される三量体ポリペプチド構築物、本発明の核酸分子、本発明のベクター、または本発明の宿主の使用に関する。
【0148】
さらに好ましいそのような腫瘍性疾患は、上皮癌または微小残存癌である。
【0149】
本発明の種々の三量体ポリペプチド構築物、核酸分子、およびベクターを、標準的なベクターおよび/または遺伝子送達系を用いて、任意に薬学的に許容される担体または賦形剤と共に、単独でまたは任意の組み合わせで投与することが、本発明によって想定される。投与後、そのような核酸分子またはベクターは、被験体のゲノム内に安定に組み込まれ得る。
【0150】
一方、特定の細胞または組織に特異的であり、そのような細胞内にとどまるウイルスベクターを使用してもよい。適切な薬学的担体および賦形剤は、当技術分野において周知である。本発明に従って調製される薬学的組成物は、上記の疾患を予防するまたは治療するまたは遅延させるために用いることができる。
【0151】
さらに、本発明の核酸分子またはベクターを含む本発明の薬学的組成物を遺伝子治療において用いることが可能である。適切な遺伝子送達系には、リポソーム、受容体介在性送達系、裸のDNA、および特にヘルペスウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス等のウイルスベクターが含まれ得る。遺伝子治療のための、体内の特定部位への核酸の送達は、Williams(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88 (1991), 2726-2729)に記載されているような遺伝子銃送達系を用いても達成され得る。核酸を送達するためのさらなる方法には、例えばVerma, Gene Ther. 15 (1998), 692-699に記載されているような粒子介在性遺伝子移入が含まれる。
【0152】
さらに本発明は、そのような予防、治療、または改善を必要とする被験体に、本発明の三量体ポリペプチド構築物もしくは本発明の方法によって産生される三量体ポリペプチド構築物、本発明の核酸分子、本発明のベクター、または本発明の宿主を投与する段階を含む、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫障害、自己免疫疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫反応、移植片対宿主病、または宿主対移植片病を予防、治療、または改善する方法に関する。
【0153】
好ましくは、そのような腫瘍性疾患は上皮癌または微小残存癌である。そのような上皮癌は、例えば、以下の細胞表面分子の過剰発現を特徴とし得る乳癌および他の腺癌である:
Her-2 (Arteaga, Semin Oncol 2002 Jun; 29 (3 Suppl 11): 4-10; Wester, Acta Oncol 2002 ; 41 (3): 282-8); EpCAM (Naundorf, Int J Cancer 2002 Jul 1; 100 (1) : 101-10), EGFR (Liu, Br J Cancer 2000 Jun; 82 (12): 1991-9), CEA (Stewart, Cancer Immunol Immunother 1999 Feb; 47 (6): 299-306; Durbin, Proc Natl Acad Sci U S A 1994 May 10; 91 (10): 4313-7), TAG-72 (腫瘍関連糖タンパク質 = > sTn 抗原) (Kashmiri, Crit Rev Oncol Hematol 2001 Apr; 38 (1) : 3-16), MUC-1 (ムチン) (Couto, Adv Exp Med Biol 1994; 353: 55-9), Sonic Hedgehog (Shh) (Lacour, Br J Dermatol 2002 Apr; 146 Suppl 61: 17-9; Tojo, Br J Dermatol 2002 Jan; 146 (1) : 69- 73)。さらなる上皮癌は、以下の分子;EGFR(Bonner, Semin Radiat Oncol 2002 July; 12: 11-20;Kiyota, Oncology 2002; 63 (1): 92-8)、CD44v6(Rodrigo, Am J Clin Pathol 2002 Jul;118(1):67-72;Fonseca, J Surg Oncol 2001 Feb;76(2):115-20)の過剰発現を特徴とする頭頚部癌、PSMA(Fracasso, Prostate 2002 Sep 15;53(1):9-23)、STEAP(Hubert, Proc Natl Acad Sci U S A 1999 De 7;96(25):14523-8)、PSCA(前立腺幹細胞抗原)(Jalkut, Curr Opin Urol 2002 Sep;12(5):401-6)の過剰発現を特徴とし得る前立腺癌、ガングリオシドGD3(Brezicka, Lung Cancer 2000 Apr;28(1):29-36;Sheperd, Semin Oncol 2001 Apr;28(2 Suppl 4):30-7)の過剰発現を特徴とし得るSCLC(小細胞肺癌)、メソテリン(mesothelin)発現(Scholler, Proc Natl Acad Sci U S A 1999 Sep 28;96(20):11531-6;Brinkmann, Int J Cancer 1997 May 16;71(4):638-44)、CA-125(Hogdall, Anticancer Res 2002 May-Jun;22(3):1765-8)、ミュラー管抑制物質(MIS)受容体II型(Stephen, Clin Cancer Res 2002 Aug;8(8):2640-6)を特徴とし得る卵巣癌、Eカドヘリンネオエピトープ(Becker, Surg Oncol 2000 Jul;9(1):5-11)の発現を特徴とし得る胃癌、Lewis-Y(Flieger, Clin Exp Immunol 2001 Jan;123(1):9-14;Power, Cancer Immunol Immunother 2001 Jul;50(5):241-50)、A33抗原(Heath, Proc Natl Acad Sci U S A 1997 Jan 21;94(2):469-74)の発現を特徴とし得る結腸癌、炭酸脱水酵素IX (MN/CA IX)(Uemura, Br J Cancer 1999 Oct;81(4);741-6)の発現を特徴とし得る腎細胞癌、CA19-9マーカー(Brockmann, Anticancer Res 2000 Nov-Dec;20(6D):4941-7)の発現を特徴とし得る膵癌のような扁平上皮細胞癌である。さらに、Lewis-Yの発現を特徴とする多くの上皮癌が存在する(Power, Cancer Immunol Immunother 2001 Jul;50(5):241-50)。
【0154】
本発明により予防、治療、または改善される微小残存疾患は、CD44v6(Rodrigo, Am J Clin Pathol 2002 Jul;118(1):67-72;Fonseca, J Surg Oncol 2001 Feb;76(2):115-20)の発現を特徴とし得る転移性疾患である。
【0155】
適用する被験体がヒトであることも好ましい。
【0156】
本発明の予防、治療、または改善する方法は、免疫エフェクター細胞の活性化シグナル能を有する上記のタンパク化合物を被験体に併用投与する段階を含み得る。併用投与は、同時に併用投与しても別に併用投与してもよい。
【0157】
最終的に、本発明は、本発明の三量体ポリペプチド構築物もしくは本発明の方法によって産生される三量体ポリペプチド構築物、本発明の核酸分子、本発明のベクター、または本発明の宿主を含むキットに関する。本発明のキットは、上記の薬学的組成物を単独で、または医学的治療もしくは介入を必要とする患者に投与すべきさらなる薬物と組み合わせて含むことも想定される。
【0158】
以下の生物学的実施例を参照することにより本発明を説明するが、この実施例は単なる説明に過ぎず、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0159】
実施例1
scFv抗237 - マウス4-1BBリガンド構築物の作製
マウス4-1BBリガンドのcDNAをマウス脾細胞から単離した。標準的な手順に従って、全RNAの単離およびランダムプライミング逆転写によるcDNA合成を行った(Sambrock, Molecular Cloning; A Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbour laboratory Press, ニューヨーク州、コールドスプリングハーバー、(1989))。PCR(1サイクル目は93℃で5分間変性、58℃で1分間アニーリング、72℃で1分間伸長;93℃で1分間変性、58℃で1分間アニーリング、72℃で1分間伸長を30サイクル;最終的に72℃で5分間伸長)を用いて、マウス4-1BBリガンドの細胞外ドメインのコード配列を増幅した。PCRに使用したプライマー:
は、マウス4-1BBリガンドの細胞外部分をコードするcDNAの初めおよび終わりに制限部位が導入されるように設計した(配列番号:3および4)。導入した制限部位、BamHIおよびBspEIは、以下のクローニング手順で利用した。次いで、マウス4-1BBリガンドの細胞外部分をコードする増幅されたcDNAを、BamHIおよびBspEIを介して、6つの連続したヒスチジン残基であるポリヒスチジンタグおよびその後の終止コドンをコードするC末端に配列を付加するBSCTIと称するプラスミドにクローニングした(BSCTIは、Kufer et al. Cancer immunity 第1巻、p.10 (2001年11月12日)に記載されている)。この段階で、cDNAのBspEI部位はプラスミドのXmaI部位と融合し、これによってどちらの部位も損なわれた。また、BSCTIにクローニングすることにより、グリシン-セリンリンカー[(Ser-Gly4-Ser)1]をコードする配列も4-1BBリガンド配列のN末端に付加された。標準的な手順に従って配列決定することにより、様々なクローンの配列を決定した(Sambrock, Molecular Cloning; A Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbour laboratory Press, ニューヨーク州、コールドスプリングハーバー、(1989))。次に、pEFDHFRと称するプラスミドに、修飾し確認したcDNA配列をクローニングした(pEFDHFRは、Mack et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995) 7021-7025)に記載されている)。このプラスミドは元のpEFDHFRとは異なり、AG104Aと称するマウス肉腫細胞株(この細胞株については、Wick et al. J. Exp. Med. 第186巻、第2号、1997年7月21日、229-238)に記載されている)上の腫瘍特異的細胞表面抗原に結合する237一本鎖抗体(親の抗237抗体はPW237として、Ward et al., 1989, J. Exp. Med. 第170巻、217-232に公表されている;配列番号:5および6)をコードするcDNA配列を既に含んでいた。237 cDNA配列は、真核細胞において分泌発現が可能となるようプラスミド内に位置していた。マウス4-1BBリガンドのcDNAをpEFDHFRにクローニングするためには、制限酵素BspEIおよびSalIを用いた。修飾した4-1BBリガンド配列では、BspEIの認識配列は上記グリシン-セリンリンカーの初めに位置し、SalIの認識部位は、ポリヒスチジンタグの後に続く終止コドンの後に位置する。記載したクローニング段階により、マウス4-1BBリガンドの細胞外部分のcDNAが、237一本鎖抗体のcDNAの3'末端に融合された。このプラスミドは、抗237一本鎖抗体をコードするcDNA配列およびその後に続くマウス4-1BBリガンドの細胞外部分をコードする配列からなる二機能性構築物を含んだ(図3)。配列番号:7および8は、Hisタグを含まない構築物の配列を示す。クローニング段階はすべて、二機能性構築物のリーディングフレームが損なわれず作製されるように設計した。
【0160】
scFv抗237 - マウス4-1BBリガンド構築物の発現
構築物を真核生物で発現させるため、二機能性構築物をコードする配列を有するプラスミドを、DHFR欠損CHO細胞にトランスフェクションした(pEFDHFRはMack et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995) 7021-7025に記載されており、DHFR欠損CHO細胞における真核生物タンパク質発現は、Kaufmann R.J. (1990) Methods Enzymol. 185, 537-566に記載されている通りに行った)。MTX濃度を最終濃度500 nM MTXまで上げて、構築物の遺伝子増幅を誘導した。次いで、トランスフェクションした細胞を拡大し、精製のための上清を取得した。
【0161】
scFv抗237 - マウス4-1BBリガンド構築物の精製
陽イオン交換クロマトグラフィー(図4)、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)(図5)、およびゲルろ過(図6)を含む3段階の精製過程で、抗237 scFv - マウス4-1BBリガンド構築物タンパク質を細胞培養上清から単離した。クロマトグラフィーには、Akta FPLCシステムおよびGradiFrac(Pharmacia、ドイツ、Tennenlohe)およびUnicornソフトウェアを使用した。化学薬品はすべて研究グレードのものであり、Sigma(ドイツ、ダイゼンホッフェン)またはMerck(ドイツ、ダルムシュタット)から購入した。
【0162】
陽イオン交換は、緩衝液A1(20 mM MES pH 5.5)で平衡化したSPセファロースカラム(Pharmacia、ドイツ、Tennenlohe)で行った。細胞培養上清を緩衝液A1で1:3希釈し、4℃で流速20 ml/minでカラム(ベッドサイズ300 ml、製造業者の手順に従ってXKカラム、Pharmaciaに充填)に供した。緩衝液A1で非結合の試料を洗浄し、2 CV量の25%、50%、および100%緩衝液B1(200 mM MES pH 5.5、1 M NaCl)の3段階勾配で、結合したタンパク質を溶出した。50% B1段階から溶出されたタンパク質画分をさらなる精製のためにプールした(図4)。
【0163】
製造業者の手順に従って、NiSO4を予め供したHisTrap 5 mlカラム(Pharmacia、ドイツ、Tennenlohe)を用いてIMACを行った。緩衝液A2(20 mM NaPP pH 7.2、0.4 M NaCl)でカラムを平衡化した。試料を1 ml/minの流速でカラムに供し、カラムを緩衝液A2で洗浄して非結合試料を除去した。各段階4カラム体積の緩衝液B2(20 mM NaPP pH 7.0、0.4 M NaCl、0.5 Mイミダゾール)の3段階勾配、段階1:10%緩衝液B2、段階2:30%緩衝液B2、段階3:100%緩衝液B2を用いて、結合タンパク質を溶出した。3段階目で溶出されたタンパク質画分をさらなる精製のためにプールした(図5)。
【0164】
ゲルろ過クロマトグラフィーは、PBS(Gibco Invitrogen Corp.、米国、カールズバッド)で平衡化したセファデックスS200 HiPrepカラム(Pharmacia、ドイツ、Tennenlohe)で行った(図6)。分子量決定のため、カラムを予めキャリブレーションした(分子量マーカーキットMW GF-200、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、ドイツ、ミュンヘン)。検出のため、溶出されたタンパク質試料(流速1 ml/min)をSDS-Pageおよびウェスタンブロットに供した。タンパク質濃度は、280 nmの吸収値をモル吸収係数と共に用いて決定した。最終産物は、SDS-PAGE(図7)およびウェスタンブロット(図8)において、みかけの分子量約50 kDaを有する。
【0165】
既製の4〜12% Bis Trisゲル(Invitrogen GmbH、ドイツ、カルルスルーエ)を用いて、還元条件下でSDS PAGEを行った。試料調製および共試は、製造業者の手順に従った。MultiMarkタンパク質標準物質(Invitrogen GmbH、ドイツ、カルルスルーエ)を用いて、分子量を決定した。Invitrogenの手順に従い、ゲルをコロイドクーマシーで染色した。
【0166】
BioTrace膜(Pall Life Sciences)およびInvitrogenブロットモジュールを用いて、製造業者の手順に従ってウェスタンブロットを行った。使用した抗体は、Penta His(Quiagen)およびヤギ抗マウスAP(Sigma)であり、染色剤はBCIP/NBT液(Sigma)であった。
【0167】
結論として、ゲルろ過クロマトグラフィーで認められたピークの分子量は150 kDaである。これは、SDS PAGE(図7)およびウェスタンブロット(図8)で認められる50 kDaという単量体の分子量の3倍に相当する。これは、抗237 scFv - 4-1BBリガンド構築物の三量体型に相当する。これらの結果から、本発明のポリペプチド構築物が三量体であることが明らかに示される。
【0168】
単離されたタンパク質の純度は、SDS-PAGE(図7)から決定して>95%であった。精製タンパク質の最終収量は、約5.5 mg/l細胞培養上清であった。
【0169】
Ag104A細胞におけるscFv抗237結合のFACSアッセイ
精製された二機能性構築物の、AG104A細胞株上の腫瘍特異的細胞表面抗原に対する結合を、FACSアッセイにより試験した。そのために、2% FCSを添加したPBS 50μl中、2.5*105個の細胞を10μg/ml構築物と共にインキュベートした。2% FCSを添加したPBS 50μl中、2μg/mlの抗His抗体(Quiagen GmbH、ドイツ、ヒルデンから入手したPenta-His抗体、BSAフリー)により、構築物の結合を検出した。第二段階の試薬として、2% FCSを添加したPBS 50μlで1:100希釈したR-フィコエリトリン結合アフィニティー精製F(ab')2断片、ヤギ抗マウスIgG、Fcγ断片特異的抗体(Dianova、ドイツ、ハンブルクから入手)を用いた。FACSscan(BD biosciences、ドイツ、ハイデルベルク)で試料を測定した。抗原結合が明らかに検出された(図9)。
【0170】
構築物の4-1BBリガンド部分の検出
構築物の4-1BBリガンド部分の存在を、FACSに基づくアッセイにより実証した。そのために、マウス4-1BBリガンドの表面発現を示さないAG104A細胞を用いた。2% FCSを添加したPBS 50μl中、2.5*105個の細胞を10μg/ml構築物と共にインキュベートした。2% FCSを添加したPBS 50μl中、5μg/mlの抗マウス4-1BBリガンド抗体(BD biosciences、ドイツ、ハイデルベルクから入手した精製ラット抗マウス4-1BBリガンドモノクローナル抗体)により、4-1BBリガンド部分の存在を検出した。第二段階の試薬として、2% FCSを添加したPBS 50μlで1:100希釈したR-フィコエリトリン結合アフィニティー精製F(ab')2断片、ヤギ抗ラットIgG、Fcγ断片特異的抗体(Dianova、ドイツ、ハンブルク)を用いた。FACSscan(BD biosciences、ドイツ、ハイデルベルク)で試料を測定した。構築物の結合に起因する、AG104A細胞上の4-1BBリガンド抗原の存在が明らかに検出された(図10)。
【0171】
実施例2
ヒト4-1BBリガンドのクローニング
(de Baey et al. Eur J Immunol 2001 Jun; 31(6):1646-55に記載されている通りに)GM-CSFおよびIL-4を用いた刺激により樹状細胞に分化させたヒト単球から、ヒト4-1BBリガンドのcDNAを単離した。標準的な手順に従って、全RNAの単離およびランダムプライミング逆転写によるcDNA合成を行った(Sambrock, Molecular Cloning; A Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbour laboratory Press, ニューヨーク州、コールドスプリングハーバー、(1989))。PCR(1サイクル目は96℃で5分間変性、58℃で1分間アニーリング、72℃で1分間伸長;96℃で1分間変性、58℃で1分間アニーリング、72℃で1分間伸長を30サイクル;最終的に72℃で5分間伸長)を用いて、ヒト4-1BBリガンドの細胞外ドメインのコード配列を増幅した。PCRに使用したプライマー:
は、ヒト4-1BBリガンドの細胞外部分をコードするcDNAの初めおよび終わりに制限部位が導入されるように設計した(配列番号:11および12)。導入した制限部位、BamHIおよびBspEIは、以下のクローニング手順で利用した。次いで、ヒト4-1BBリガンドの細胞外部分をコードする増幅されたcDNAを、BamHIおよびBspEIを介して、6つの連続したヒスチジン残基であるポリヒスチジンタグおよびその後の終止コドンをコードするC末端に配列を付加するBSCTIと称するプラスミドにクローニングした(BSCTIは、Kufer et al. Cancer immunity 第1巻、p.10 (2001年11月12日)に記載されている)。この段階で、cDNAのBspEI部位はプラスミドのXmaI部位と融合し、これによってどちらの部位も損なわれた。また、BSCTIにクローニングすることにより、グリシン-セリンリンカー[(Ser-Gly4-Ser)1]をコードする配列も4-1BBリガンド配列のn末端に付加された(リンカー配列)。標準的な手順に従って配列決定することにより、様々なクローンの配列を決定した(Sambrock, Molecular Cloning; A Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbour laboratory Press, ニューヨーク州、コールドスプリングハーバー、(1989))。
【0172】
B7.1 - 抗EpCAM scFv (4-7) - ヒト4-1BBリガンド構築物の作製
次に、B7.1/4-7 pEFDHFRと称するプラスミドに(Kufer et al. Cancer immunity 第1巻、p.10 (2001年11月12日)に記載されている)、ヒト4-1BBリガンドをコードする修飾し確認したcDNA配列を4-7断片に置き換えてクローニングした。このために、制限酵素BspEIおよびSalIを用いた。修飾した4-1BBリガンド配列では、BspEIの認識配列は上記グリシン-セリンリンカーの初めに位置し、SalIの認識部位は、ポリヒスチジンタグの後に続く終止コドンの後に位置する。プラスミドB7.1/4-7 pEFDHFRは、ヒトB7.1分子の細胞外ドメインをコードするcDNA配列を含む。この配列は、真核細胞において発現が可能となるようプラスミド内に位置していた。記載したクローニング段階により、ヒト4-1BBリガンドの細胞外部分のcDNAが、B7.1のcDNAに融合された。B7.1と4-1BBリガンド配列との間に位置するBspEI部位に、EpCAM抗原の細胞外部分に結合する4-7一本鎖抗体をコードする別の配列を挿入した。このために、PCR(1サイクル目は93℃で5分間変性、58℃で1分間アニーリング、72℃で1分間伸長;93℃で1分間変性、58℃で1分間アニーリング、72℃で1分間伸長を30サイクル;最終的に72℃で5分間伸長)を用いて、4-7一本鎖抗体をコードする配列を修飾した。このPCRのために作製したプライマーセット:
は、2つの隣接BsPEI部位が作製されるように設計した。PCRでは、鋳型中に存在する4-7一本鎖抗体に結合されたN末端グリシン-セリンリンカー[(Ser-Gly4-Ser)1]をコードする配列が保持された。次いで、増幅した配列を上記のBspEI部位にクローニングした。標準的な手順に従って配列決定することにより、挿入物の向きおよび配列を確認した(Sambrock, 「Molecular Cloning; A Laboratory Manual」, 第2版、Cold Spring Harbour laboratory Press, ニューヨーク州、コールドスプリングハーバー、(1989))。このプラスミドは、4-7一本鎖抗体をコードする配列およびその後に続くヒト4-1BBリガンドの細胞外部分をコードする配列に融合された、ヒトB7.1の細胞外部分を含む三機能性構築物を含んだ。クローニング段階はすべて、三機能性構築物のリーディングフレームが損なわれず作製されるように設計した(図11)。配列番号:15および16は、Hisタグを含まない構築物の配列を示す。
【0173】
CHO細胞におけるB7.1 - 抗EpCAM scFv (4-7) -ヒト4-1BBリガンド構築物の発現
構築物を真核生物で発現させるため、三機能性構築物をコードする配列を有するプラスミドを、DHFR欠損CHO細胞にトランスフェクションした(pEFDHFRはMack et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995) 7021-7025に記載されており、DHFR欠損CHO細胞における真核生物タンパク質発現は、Kaufmann R.J. (1990) Methods Enzymol. 185, 537-566に記載されている通りに行った)。MTX濃度を最終濃度100 nM MTXまで上げて、構築物の遺伝子増幅を誘導した。次に、トランスフェクションした細胞を拡大し、上清10リットルを取得した。最終的に、培養上清から構築物を精製した(精製は、Kufer et al. Cancer immunity 第1巻、p.10 (2001年11月12日)に記載されている通りに行った)。
【0174】
EpCAM結合のアッセイ
精製された三機能性構築物の、EpCAM抗原の細胞外部分に対する結合を、FACSアッセイにより試験した。そのために、EpCAM陽性ヒト胃癌細胞株Kato III(American Type Culture Collection (ATCC)、米国20108バージニア州、マナッサスから入手、ATCC番号:HTB-103)を用いた。供給者の推奨に従って細胞を培養し、2% FCSを添加したPBS 50μl中、2.5*105個の細胞を10μg/ml構築物と共にインキュベートした。2% FCSを添加したPBS 50μl中、2μg/mlの抗His抗体(Quiagen GmbH、ドイツ、ヒルデンから入手したPenta-His抗体、BSAフリー)により、構築物の結合を検出した。第二段階の試薬として、2% FCSを添加したPBS 50μlで1:100希釈したR-フィコエリトリン結合アフィニティー精製F(ab')2断片、ヤギ抗マウスIgG、Fcγ断片特異的抗体(Dianova、ドイツ、ハンブルクから入手)を用いた。FACSscan(BD biosciences、ドイツ、ハイデルベルク)で試料を測定した。EpCAM結合が明らかに検出された(図12)。
【0175】
構築物の4-1BBリガンド部分およびB7.1部分の検出
構築物の4-1BBリガンド部分およびB7.1部分の存在を、FACSに基づくアッセイにより実証した。そのために、ヒトB7.1およびヒト4-1BBリガンドの表面発現を示さないEpCAM陽性ヒト胃癌細胞株Kato III(ATCCから入手、上記参照)を用いた。2% FCSを添加したPBS 50μl中、2.5*105個の細胞を10μg/ml構築物と共にインキュベートした。2% FCSを添加したPBS 50μlで1:10希釈したR-フィコエリトリン結合マウス抗ヒト4-1BBリガンド抗体(BD biosciences、ドイツ、ハイデルベルク)で、4-1BBリガンド部分の存在を検出した。FACSscan(BD biosciences、ドイツ、ハイデルベルク)で試料を測定した。構築物の結合に起因する、Kato III細胞上の4-1BBリガンド抗原の存在が明らかに検出された(図13)。B7.1部分を検出するため、2% FCSを添加したPBS 50μlで1:10希釈したフィコエリトリン結合マウス抗ヒトB7.1抗体(BD biosciences、ドイツ、ハイデルベルク)を使用する以外は同じ条件で、アッセイを行った。構築物の結合に起因する、Kato III細胞上のB7.1抗原の存在が明らかに検出された(図14)
【0176】
実施例3
二重特異性scFv - 4-1BBリガンド構築物:抗NKG2D - 抗EpCAM - ヒト4-1BBリガンドの作製
図15Cに図解した第二の三重特異性構築物:抗NKG2D - 抗EpCAM - 4-1BBリガンドを作製するために、実施例2に記載した既存の構築物を基にした。この構築物は異なる作用機序を有する:この構築物は、NKG2D陽性CTLおよびNK細胞をEPCAM陽性癌細胞に向けさせる。
【0177】
NKG2D受容体複合体の細胞外エピトープを特異的に認識する結合部位の単離は、特許出願WO0171005(Multifunctional Polypeptides Comprising A Binding Site To An Epitope Of The NKG2D Receptor Complex)に記載されている。WO0171005の実施例3に詳述されているように、NKG2D結合部位には制限酵素BsrGI/BspEIが隣接しており、これを用いて、抗EpCAM特異的4-7および4.1BBリガンドのコード配列を既に含む哺乳動物発現ベクターpEF-DHFRにNKG2D scFv断片をクローニングした。ドメイン配列VL抗NKG2D (11B2D10) - VH抗NKG2D (11B2D10) - VH抗EpCAM (4-7) - VL抗EpCAM (4-7) - 細胞外ドメイン4.1BBリガンドを有する得られた抗体構築物(配列番号:17および18)を、実施例2に従ってCHO細胞にトランスフェクションし発現させた。精製は、記載されている通りに行った(Kufer et al., 2001, Cancer Immunity, 10)。この構築物の配列および略図を図15に示す。配列番号:17および18は、Hisタグを含まない構築物の配列を示す。
【0178】
抗NKG2D - 抗EpCAM - ヒト4-1BBリガンド構築物のフローサイトメトリーによる結合解析
結合能に関して構築物の機能性を試験するため、FACS解析を行った。このために、NKG2DおよびEpCAM抗原の細胞外ドメインそれぞれを発現するCHOトランスフェクタントを作製した。200,000個のNKG2D + CHO細胞および200,000個のEpCAM + CHO細胞それぞれを、抗NKG2D - 抗EpCAM - 4.1BBリガンド構築物をトランスフェクションしたCHO細胞の純粋な細胞培養上清50μlと共に、氷上で30分間インキュベートした。続いて、細胞をPBSで2回洗浄した。その後、構築物の結合を2つの異なる方法で検出した:構築物全体を、2% FCSを添加したPBS 50μlで1:20希釈したマウスFITC結合抗Hisタグ抗体(Dianova、ドイツ、ハンブルク、DIA920)を用いて、C末端のヒスチジンを介して検出した。4.1BBリガンドドメインの妥当な発現を、2% FCSを添加したPBS 50μlで1:10希釈したR-フィコエリトリン結合マウス抗ヒト4-1BBリガンド抗体(BD biosciences、ドイツ、ハイデルベルク)を用いて調べた(太線)。陰性対照として、トランスフェクションしていないCHO細胞を用いた(細線)。FACS-scan(Becton Dickinson、ハイデルベルク)でフローサイトメトリーにより細胞を解析した。FACS染色および蛍光強度の測定は、Current Protocols in Immunology(Coligan, Kruisbeek, Margulies, Shevach and Strober, Wiley-Interscience, 2002)に記載されている通りに行った。
【0179】
抗NKG2D結合ドメインおよび抗EpCAM結合ドメインの結合能はそれぞれ、図16に示すように明らかに検出された。
【0180】
二重特異性scFv - 4-1BBリガンド構築物:scFv抗NKG2D - scFv抗EpCAM - ヒト4-1BBリガンド融合タンパク質に例証される4-1BBリガンド三量体の精製および解析
固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)およびゲルろ過を含む2段階の精製過程で、融合タンパク質を細胞培養上清から単離した。最終産物は、SDS PAGEおよびウェスタンブロットにおいて、みかけの分子量約47 kDa(一本鎖融合タンパク質)または約70 kDa(二重特異性一本鎖融合タンパク質)を有した。しかし、未変性条件下では、検出された融合タンパク質の分子量は、PBSでのゲルろ過から決定して約150 kDa(一本鎖融合タンパク質)または約220 kDa(二重特異性一本鎖融合タンパク質)であった。これは、融合構築物の三量体型に相当する。単離されたタンパク質の純度は、ほとんどの場合、SDS-PAGEから決定して>95%であった。精製タンパク質の最終収量は、約400μg/l細胞培養上清であった。クロマトグラフィーには、Akta FPLCシステムおよびGradiFrac(Pharmacia、ドイツ、Tennenlohe)およびUnicornソフトウェアを使用した。化学薬品はすべて研究グレードのものであり、Sigma(ドイツ、ダイゼンホッフェン)またはMerck(ドイツ、ダルムシュタット)から購入した。
【0181】
製造業者の手順に従って、NiSO4を予め供したHisTrap 5 mlカラム(Amersham Biosciences Europe GmbH、ドイツ、フライブルク)を用いてIMACを行った。緩衝液A2(20 mM NaPP pH 7.2、0.4 M NaCl)でカラムを平衡化した。試料を1 ml/minの流速でカラムに供し、カラムを緩衝液A2で洗浄して非結合試料を除去した。各段階5カラム体積の緩衝液B2(20 mM NaPP pH 7.0、0.4 M NaCl、0.5 Mイミダゾール)の2段階勾配、段階1:10%緩衝液B2、段階2:100%緩衝液B2を用いて、結合タンパク質を溶出した。2段階目で溶出されたタンパク質画分をさらなる精製のためにプールした。
【0182】
ゲルろ過クロマトグラフィーは、PBS(Gibco Invitrogen Corp.、米国、カールズバッド)で平衡化したセファデックスS200 HiPrepカラム(Amersham Biosciences Europe GmbH、ドイツ、フライブルク)で行った。融合タンパク質の検出のため、溶出されたタンパク質試料(流速1 ml/min)を、SDS-Pageおよびウェスタンブロットに供した。分子量決定のため、カラムは前もってキャリブレーションしておいた(分子量マーカーMW GF-200、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、ドイツ、ミュンヘン)。タンパク質濃度は、280 nmで値を測定しモル吸収係数と併用して、またはPierce microBCAキット(Pierce Biotechnology Inc、米国、イリノイ州、ロックフォード)を用いて決定した。
【0183】
既製の4〜12% Bis Trisゲル(Invitrogen Corp.、米国、カールズバッド)を用いて、還元条件下でSDS PAGEを行った。試料調製および共試は、製造業者の手順に従った。MultiMarkタンパク質標準物質(Invitrogen Corp.、米国、カールズバッド)を用いて、分子量を決定した。コロイドクーマシーでゲルを染色した(Invitrogenの手順)。
【0184】
BioTrace膜(Pall Lice Sciences、ドイツ、ドライアイヒ)およびInvitrogenブロットモジュールを用いて、製造業者の手順に従ってウェスタンブロットを行った。使用した抗体は、Penta His(Qiagen、ドイツ、ヒルデン)およびヤギ抗マウスAP(Sigma-Aldrich Chemie GmbH、ドイツ、ミュンヘン)であった。染色液はBCIP/NBT液(Sigma-Aldrich Chemie GmbH、ドイツ、ミュンヘン)であった。
【0185】
scFv抗NKG2D - scFv抗EpCAM - ヒトCD30リガンド融合タンパク質の精製を図25、26、および27に示す。ゲルろ過およびウェスタンブロットのデータから、構築物が三量体型で存在することが明らかになる。ウェスタンブロットデータから、精製タンパク質の半分が三量体として現れ、もう半分が凝集していることが示唆される。しかし、単量体は検出されない。三量体の純度は約50%である。
【0186】
EpCAM結合のアッセイ
精製された三機能性構築物の、EpCAM抗原の細胞外部分に対する結合を、FACSアッセイにより試験した。そのために、EpCAM陽性ヒト胃癌細胞株Kato III(American Type Culture Collection (ATCC)、米国20108バージニア州、マナッサスから入手、ATCC番号:HTB-103)を用いた。供給者の推奨に従って細胞を培養し、2% FCSを添加したPBS 50μl中、2.5*105個の細胞を10μg/ml構築物と共にインキュベートした。2% FCSを添加したPBS 50μl中、2μg/mlの抗His抗体(Qiagen GmbH、ドイツ、ヒルデンから入手したPenta-His抗体、BSAフリー)により、構築物の結合を検出した。第二段階の試薬として、2% FCSを添加したPBS 50μlで1:100希釈したR-フィコエリトリン結合アフィニティー精製F(ab')2断片、ヤギ抗マウスIgG、Fcγ断片特異的抗体(Dianova、ドイツ、ハンブルクから入手)を用いた。FACS scan(BD Biosciences、ドイツ、ハイデルベルク)で試料を測定した。EpCAM結合が明らかに検出された(図28)。
【0187】
新たに単離されたNK細胞におけるNKG2Dの結合試験
健常人から採取した末梢血250 mlから、フィコール密度遠心分離により単核細胞(PBMC)を調製した。NK細胞単離キットII(MACS、ドイツ、ベルギッシュグラートバッハ)を用いて、健常人の末梢血から典型的な表現型CD16+CD56+を有するNK細胞を精製し、陰性選別された非接触の新鮮NK細胞を得た。単離手順は、製造業者の取扱説明書に従って行った。NK細胞の分離の成否は、抗CD16抗体による単一染色後のフローサイトメトリーによって管理した(図29F)。CD16+ NK細胞の純度は74%であることが判明した。市販の抗NKG2D抗体(1D11)(BD Biosciences Pharmingen、ドイツ、ハイデルベルク)、記載の構築物内の抗NKG2D一本鎖抗体部分の供給源である抗NKG2D mabクローン11B2D10(WO0171005に記載のMicromet AG、ドイツ、ミュンヘン)、およびscFv抗NKG2D (11B2D10) - scFv抗EpCAM(4-7) - ヒト4-1BBLの細胞培養上清で単一染色することにより、NKG2D染色のフローサイトメトリーによるモニタリングを同様に行った。FACS結合解析は前述の通り行った。
【0188】
単離されたNK細胞の大部分に、抗NKG2D抗体(1D11)(96%、図29C)、抗NKG2D mabクローン11B2D10(82%、図29D)、およびscFv抗NKG2D (11B2D10) - scFv抗EpCAM (4-7) - ヒト4-1BBL三重特異性一本鎖構築物の細胞培養上清(86%、図29E)が結合し、scFv抗NKG2D (11B2D10) - scFv抗EpCAM (4-7) - ヒト4-1BBL三重特異性構築物の抗NKG2D部分がNK細胞上のNKG2Dに特異的に結合することが実証される。非染色NK細胞(図29A)および二次抗体でのみで染色したNK細胞(図29B)によって示されるFACS解析の対照は、ほぼ無いに等しいまたは10%の染色を示した。
【0189】
実施例4
scFv抗EpCAM - ヒト4-1BBリガンドの作製
M79と称する抗EpCAM scFvおよびヒト4-1BBリガンドからなるさらなる構築物を作製するため、以下のクローニング段階を行った。Mack, M. et al. (1995) Proc Natl Acad Sci USA 92, 7021-7025に記載の抗EpCAM scFv M79を腫瘍標的部分として使用し、この出版物に記載されている構築物を抗EpCAM - 4-1BBL構築物を作製する基にした。この構築物のFlag配列を含まない変種(Kufer et al., 1997, Cancer Immunol Immunother45, 193-197)を、制限酵素BspEIおよびSalIで酵素的に切断した。得られたベクター(この段階でCD3部分を含まない)を、実施例3に記載のようなヒト4.1BBリガンドを含む適切に切断したDNA断片と融合した。ドメイン配列VL抗EpCAM (M79) - VH抗EpCAM (M79) - 細胞外ドメイン4.1BBリガンドを有する得られた抗体構築物(配列番号:19および20)を、実施例2に従ってCHO細胞にトランスフェクションし発現させた。精製は、Kufer et al., 2001, Cancer Immunity 第1巻、p.10に記載されている通りに行った。この構築物の配列および略図を図17に示す。配列番号:19および20は、Hisタグを含まない構築物の配列を示す。
【0190】
scFv抗EpCAM - ヒト4-1BBリガンド構築物のフローサイトメトリーによる結合解析
結合能に関して構築物の機能性を試験するため、FACS解析を行った。このために、EpCAM抗原の細胞外ドメインを発現するCHOトランスフェクタントを用いた。200,000個のEpCAM + CHO細胞を、抗EpCAM - 4-1BBL構築物をトランスフェクションしたCHO細胞の純粋な細胞培養上清50μlと共に、氷上で30分間インキュベートした。続いて、細胞をPBSで2回洗浄した。最後に、構築物の結合を2つの異なる方法で検出した:構築物全体を、2% FCSを添加したPBS 50μlで1:20希釈したマウスFITC結合抗Hisタグ抗体(Dianova、ドイツ、ハンブルク、DIA920)を用いて、C末端のヒスチジンを介して検出した。4-1BBLドメインの妥当な発現を、2% FCSを添加したPBS 50μlで1:10希釈したR-フィコエリトリン結合マウス抗ヒト4-1BBリガンド抗体(BD biosciences、ドイツ、ハイデルベルク)を用いて調べた(太線)。陰性対照としては、分泌された抗EpCAM - 4-1BBL構築物を含む細胞培養上清を添加しなかった(細線)。
【0191】
FACS-scan(Becton Dickinson、ハイデルベルク)でフローサイトメトリーにより細胞を解析した。FACS染色および蛍光強度の測定は、Current Protocols in Immunology(Coligan, Kruisbeek, Margulies, Shevach and Strober, Wiley-Interscience, 2002)に記載されている通りに行った。
【0192】
抗EpCAM結合ドメインの結合能および4-1BBLの存在はそれぞれ、図18に示すように明らかに検出された。
【0193】
scFv抗EpCAM (M79) - ヒト4-1BBリガンド融合タンパク質に例証される4-1BBリガンド三量体の精製および解析
陽イオン交換クロマトグラフィー(図20)、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)(図21)、およびゲルろ過(図22)を含む3段階の精製過程で、scFv抗EpCAM (M79) - ヒト4-1BBリガンドタンパク質を細胞培養上清から単離した。最終産物は、SDS PAGE(図23)およびウェスタンブロット(図24)において、みかけの分子量約50 kDaを有した。SDS PAGEでの50 kDaという大きさと対照的に、未変性条件下では、このタンパク質は、PBSでのゲルろ過から決定して分子量約150 kDaを有した。この150 kDaという大きさは、scFv抗EpCAM (M79) - ヒト4-1BBリガンドの三量体型に相当する。単離されたタンパク質の純度は、SDS-PAGEから決定して>95%であった(図23)。精製タンパク質の最終収量は、約5.5 mg/l細胞培養上清であった。クロマトグラフィーには、Akta FPLCシステムおよびGradiFrac(Pharmacia、ドイツ、Tennenlohe)およびUnicornソフトウェアを使用した。化学薬品はすべて研究グレードのものであり、Sigma(ドイツ、ダイゼンホッフェン)またはMerck(ドイツ、ダルムシュタット)から購入した。
【0194】
第一精製段階では、緩衝液A1(20 mM MES pH 5.5)で平衡化したSPセファロースカラム(Pharmacia、ドイツ、Tennenlohe)で陽イオン交換クロマトグラフィーを行った。細胞培養上清を緩衝液A1で1:3希釈し、4℃で流速20 ml/minでカラム(ベッドサイズ300 ml、製造業者の手順に従ってXKカラム、Pharmacia、ドイツ、Tennenloheに充填)に供した。緩衝液A1で非結合の試料を洗浄し、2カラム体積(CV)量の30%、50%、および100%緩衝液B1(20 mM MES pH 5.5、1 M NaCl)の3段階勾配で、結合したタンパク質を溶出した。50% B1段階から溶出されたタンパク質画分をさらなる精製のためにプールした(図20)。
【0195】
第二精製段階では、製造業者の手順に従って、NiSO4を予め供したHisTrap 5 mlカラム(Pharmacia、ドイツ、Tennenlohe)を用いてIMACを行った。緩衝液A2(20 mM NaPP pH 7.2、0.4 M NaCl)でカラムを平衡化した。試料を1 ml/minの流速でカラムに供し、カラムを緩衝液A2で洗浄して非結合試料を除去した。各段階4カラム体積を含む、緩衝液B2(20 mM NaPP pH 7.0、0.4 M NaCl、0.5 Mイミダゾール)の3段階勾配、段階1:10%緩衝液B2、段階2:30%緩衝液B2、段階3:100%緩衝液B2により、結合タンパク質を溶出した。2段階目で溶出されたタンパク質画分をさらなる精製のためにプールした。
【0196】
第三精製段階では、PBS(Gibco Invitrogen Corp.、米国、カールズバッド)で平衡化したセファデックスS200 HiPrepカラムでゲルろ過クロマトグラフィーを行った。二重特異性scFv抗体(scFv抗EpCAM - scFv抗CD3)を検出するため、溶出されたタンパク質試料(流速1 ml/min)を、SDS-Pageおよびウェスタンブロットに供した。分子量決定のため、カラムは前もってキャリブレーションしておいた(分子量マーカーキットMW GF-200、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、ドイツ、ミュンヘン)。タンパク質濃度は、280 nmの吸収値をモル吸収係数と共に用いて決定した。
【0197】
既製の4〜12% Bis Trisゲル(Invitrogen GmbH、ドイツ、カルルスルーエ)を用いて、還元条件下でSDS PAGEを行った。試料調製および共試は、製造業者の手順に従った。MultiMarkタンパク質標準物質(Invitrogen GmbH、ドイツ、カルルスルーエ)を用いて、分子量を決定した。Invitrogenの手順に従って、コロイドクーマシーでゲルを染色した。
【0198】
BioTrace膜(Pall Gelman GmbH、ドイツ、ドライアイヒ)およびInvitrogenブロットモジュールを用いて、製造業者の手順に従ってウェスタンブロットを行った。使用した抗体は、Penta His(Qiagen、ドイツ、ヒルデン)およびヤギ抗マウスAP(Sigma-Aldrich Chemie GmbH、ドイツ、ミュンヘン)であり、染色液はBCIP/NBT液(Sigma-Aldrich Chemie GmbH、ドイツ、ミュンヘン)であった。
【0199】
実施例5
B7.1 - scFv抗EpCAM - ヒト4-1BBリガンド構築物を用いたプライミングアッセイ
4-1BBL - 抗EpCAM scFv - B7.1構築物を用いて、ナイーブヒトCD4+ T細胞の直接プライミングについて検討した。
【0200】
実施例2Aに記載の構築物を用いて、共刺激分子4-1BBLを、微小残存結腸直腸癌の抗体療法の標的としての使用に成功している上皮細胞接着分子(EpCAM)に対して特異的に標的した。T細胞プライミングは、CD45アイソフォーム発現のフローサイトメトリー解析によってモニターした。
【0201】
ナイーブT細胞の精製
典型的な表現型CD45RA+RO-を有するナイーブCD4+およびCD8+ Tリンパ球を、健常人の末梢血から精製した。健常人から採取した末梢血500 mlから、フィコール密度遠心分離により単核細胞(PBMC)を調製した。市販の細胞分離キット(R&D Systems、それぞれHCD4C-1000およびHCD8C-1000、ドイツ、ウィースバーデン)を用いて、陰性選択によりCD4+およびCD8+ T細胞を単離した。CD8+ T細胞カクテルにカラム当たり1μgのモノクローナル抗CD11b抗体(Coulter、ドイツ、クレーフェルト)を補充して、製造業者の抗体カクテルとプレインキュベートした2 x 108個のPBMCを、CD4+またはCD8+ T細胞カラムそれぞれに供した。CD4+およびCD8+ T細胞の分離の成否は、それぞれ抗CD4抗体または抗CD8抗体による単一染色後のフローサイトメトリーによって管理した。CD11b+ CD8+ T細胞はCD28-であり、逆も同様であることが周知であるため、CD8+ T細胞調製物にCD11b+が存在しないことを、抗CD28抗体による単一染色によって確認した。
【0202】
マウスモノクローナル抗CD45RO抗体UCHL-1、31301(PharMingen、ドイツ、ハイデルベルク)と共にインキュベートし、その後ポリクローナルヒツジ抗マウスIg抗体結合磁気ビーズ(Dynal、ドイツ、ハンブルク)を用いて分離することにより、精製したCD4+またはCD8+ T細胞からCD45RO+細胞を除去した。残存する抗原提示細胞(例えば樹状細胞)を枯渇させるため、精製したCD4+またはCD8+ T細胞を、CD45ROおよびHLA-DR、DP、DQに対するマウスモノクローナル抗体(PharMingen、ドイツ、ハイデルベルク)と共にインキュベートし、その後磁気抗マウスIgビーズと共にインキュベートした。残存したナイーブCD4+またはCD8+ T細胞の純度は、抗CD45RAおよび抗CD45ROでの二重染色後のフローサイトメトリーにより決定して、95〜97%であることが判明した。ナイーブT細胞の収量は、末梢血500 ml当たり、2〜3x107 (CD4)および5x106 (CD8)であった。
【0203】
フローサイトメトリー
1 x 105細胞をPE結合モノクローナル抗CD45RA抗体(Coulter、ドイツ、クレーフェルト)およびFITC結合モノクローナル抗CD45RO抗体UCHL-1、F 0800(DAKO、ドイツ、ハンブルク)により氷上で30分間二重染色することにより、CD45アイソフォーム発現のフローサイトメトリー解析を行った。T細胞精製のフローサイトメトリーによるモニタリングは、トリカラー結合モノクローナル抗CD4抗体(MHCD0406)、トリカラー結合モノクローナル抗CD8抗体(MHCD0806)、およびFITC結合モノクローナル抗CD28抗体(MHCD2801)(すべてMedac、ドイツ、ハンブルクによる)での単一染色によって、同様に行った。
【0204】
プライミングアッセイ
典型的な表現型CD45RA+RO-を有するナイーブCD4+Tリンパ球を健常人の末梢血から精製し、(Kufer et al., 2001, Cancer Immunity 1, 10に従って)刺激細胞としての照射EpCAMトランスフェクションCHO細胞と共にインキュベートした。
【0205】
初期シグナルは、TCRを介した特定抗原認識を模倣する二重特異性一本鎖抗体(bscAb) EpCAM (M79) x CD3(Kufer et al., 1997, Cancer Immunol Immunother45, 193-197)によって媒介した;二次または共刺激シグナルは、EpCAM特異的B7.1構築物(B7.1 - scFv抗EpCAM、Kufer et al., 2001, Cancer Immunity 1, 10)によって媒介した。T細胞プライミングは、CD45RAおよびCD45ROの発現を同時に測定することにより、6日目にフローサイトメトリーによってモニターした。
【0206】
二重特異性一本鎖抗体(bscAb) EpCAM (M79) x CD3が250 ng/ml濃度(図19A)および50 ng/ml濃度(図19D)で単独で存在する場合、細胞は表現型CD45RA+RO-を示してプライミングされないままであった。EpCAM特異的B7.1構築物(500 ng/ml)およびbscAb EpCAM x CD3(250 ng/ml)が両方とも存在する場合、ナイーブT細胞のほぼ全集団のCD45表現型が、6日以内に、プライミングされたT細胞の表現型、すなわちCD45RA-RO+に変化した(図15B)。至適以下の濃度の二重特異性一本鎖抗体(bscAb) EpCAM (M79) x CD3(50 ng/ml)および500 ng/ml濃度のEpCAM特異的B7.1構築物(B7.1 - scFv抗EpCAM、Kufer et al., 2001, Cancer Immunity 1, 10)では、ナイーブT細胞集団のわずかな部分(5.7%)のCD45表現型が、6日以内に、プライミングされたT細胞の表現型、すなわちCD45RA-RO+に変化した(図19E)。
【0207】
しかし、500 ng/ml濃度の実施例2のB7.1 - scFv抗EpCAM - hu4-1BBリガンド構築物を、50 ng/mlという至適濃度以下の二重特異性一本鎖抗体(bscAb) EpCAM (M79) x CD3と共に添加することにより、ナイーブT細胞集団の実質的に増加した部分(24%)のCD45表現型が、6日以内に、プライミングされたT細胞の表現型、すなわちCD45RA-RO+に変化した(図19F)。この結果から、B7.1 - scFv抗EpCAM - 4-1BBリガンド構築物がB7.1 - scFv抗EpCAM構築物(Kufer et al., 2001, Cancer Immunity 1, 10)よりも有効に機能することが実証される。
【0208】
重要なことには、scFv抗EpCAM - 4-1BBリガンド(実施例4を参照)構築物とbscAb EpCAM x CD3との組み合わせでは、B7.1共刺激の非存在下においてCD45アイソフォーム発現の実質的な変化を誘導し得なかった(図19C)。
【0209】
T細胞プライミングについてすべての構築物を単独で試験したが、いずれも6日以内に、ナイーブT細胞のCD45表現型からプライミングされたT細胞の表現型、すなわちCD45RA-RO+への変化を示さなかった(図19G、H、I):B7.1 - scFv抗EpCAM構築物(図19G)もscFv抗EpCAM - 4-1BBリガンド構築物(図19H)もB7.1 - scFv抗EpCAM - hu4-1BBリガンド構築物(図19I)もである。
【0210】
すべてのプライミング実験について、細胞培養は37℃および6% CO2で行った。
【図面の簡単な説明】
【0211】
【図1】TNFα前駆体タンパク質の構造と比較した4-1BBL構造の略図。ECD = 細胞外ドメイン;THD = TNF相同ドメイン;ストーク = ストーク領域;aa = アミノ酸。矢印は、腫瘍壊死因子α(TNFα)変換酵素(TACE)のタンパク質切断部位を示す。点線は個々のアミノ酸の位置を指し、ジグザグ線は膜貫通ドメインを表す。
【図2】系統樹解析。(A) Treetopプログラムは配列間の対の距離を算出し、系統樹の再現性を示唆する「ブートストラップ(bootstrap)」値を提供する。100が最大値である。それよりも低い任意の値は、再現性の割合を示す。トポロジーアルゴリズムは、トポロジー類似原理(Chumakov & Yashmanov, 1988, Mol Genet Microbiol Virusol 3, 3-9;Yushmanov & Chumakov, 1988, Mol Genet Microbiol Virusol 3, 9-15;Brodsky et al., 1992, Dimacs 8, 127-139;Brodsky et al., 1995, Biochemistry, 923-928)を用いる。(B) 無根系統樹。
【図3】scFv抗237 x マウス4-1BBリガンド構築物の配列。A) ヌクレオチド配列、B) タンパク質配列、C) 構築物の略図。
【図4】SPセファロース陽イオン交換カラムからのscFv抗237 x マウス4.1.BBLの溶出パターン。50%緩衝液B1での溶出によるタンパク質ピークを、さらなる精製に使用した。
【図5】NiキレートHisトラップカラムからの、scFv抗237 x マウス4-1BBL含有タンパク質画分の溶出パターン。緑色の線は、0.5 Mイミダゾールを含む溶出緩衝液の理論的な勾配を示す。100%緩衝液B2溶出段階によるタンパク質画分を、さらなる精製に使用した。
【図6】セファデックスS200ゲルろ過カラムからの、scFv抗237 x マウス4-1BBL構築物の溶出パターン(青線)。タンパク質は約67 mlの位置の単一ピークに溶出し、これはMW約150 kDに相当する。より大きな分子量を有するピークのわずかな肩を、約58 mlの位置に認めることができる。単量体は83.2 mlの位置のタンパク質ピークに溶出し、これはMW約54 kDに相当する。
【図7】精製されたscFv抗237 x マウス4-1BBL含有タンパク質画分のSDS-PAGE解析。SDS-PAGEはコロイドクーマシーで染色した。レーン1:MultiMark分子量マーカー;レーン2および3:主要なピークおよび肩の部分のゲルろ過画分。
【図8】精製されたscFv抗237 x マウス4-1BBLタンパク質画分のウェスタンブロット解析。ウェスタンブロットは、Penta His抗体およびアルカリフォスファターゼ標識ヤギ抗マウス抗体と共にインキュベートした。染色剤はBCIP/NBT液であった。レーン1:分子量マーカー;レーン2および3:主要なピークおよび肩の部分のゲルろ過画分。約50 kDaの主要なバンドは、精製タンパク質の>90%を含む。約100 kDの微量バンドは、237scFv x 4.1.BBLの二量体型に相当するが、これはゲルに過剰量供したことに起因する。33 kDの微量バンドは、タンパク質分解された断片である。
【図9】scFv抗237 x マウス4-1BBL構築物のAG104A細胞株に対するFACS結合解析。FACS染色は実施例1第4項に記載した通りに行った。黒いヒストグラムは、抗his抗体および第二段階の試薬とのみインキュベートした細胞を示す。白いヒストグラムは、構築物、抗his抗体、および第二段階の抗体と共にインキュベートした細胞を示す。
【図10】AG104A細胞に結合したscFv抗237 x マウス4-1BBL構築物のmu4-1BBリガンド部分のFACS解析。FACS染色は実施例1第5項に記載した通りに行った。黒いヒストグラムは、抗4-1BBリガンド抗体および第二段階の試薬とのみインキュベートした細胞を示す。白いヒストグラムは、構築物、抗4-1BBリガンド抗体、および第二段階の試薬と共にインキュベートした細胞を示す。
【図11】B7.1 - scFv抗EpCAM (4-7) x ヒト4-1BBリガンド構築物の配列。A) ヌクレオチド配列、B) タンパク質配列、C) 構築物の略図。
【図12】Kato III細胞上のEpCAM抗原に対するB7.1 - scFv抗EpCAM (4-7) x ヒト4.1.BBL構築物のFACS結合解析。FACS染色は実施例1A第4項に記載した通りに行った。黒いヒストグラムは、抗his抗体および第二段階の試薬とのみインキュベートした細胞を示す。白いヒストグラムは、構築物、抗his抗体、および第二段階の抗体と共にインキュベートした細胞を示す。
【図13】Kato III細胞に結合したB7.1 - scFv抗EpCAM (4-7) x ヒト4.1.BBL構築物の4-1BBリガンド部分のFACS解析。FACS染色は実施例1A第5項に記載した通りに行った。黒いヒストグラムは、抗4-1BBリガンド抗体とのみインキュベートした細胞を示す。白いヒストグラムは、構築物および抗4-1BBリガンド抗体と共にインキュベートした細胞を示す。
【図14】Kato III細胞に結合したB7.1 - scFv抗EpCAM (4-7) x ヒト4.1.BBL構築物のB7.1部分のFACS解析。FACS染色は実施例1A第5項に記載した通りに行った。黒いヒストグラムは、抗B7.1抗体とのみインキュベートした細胞を示す。白いヒストグラムは、構築物および抗B7.1抗体と共にインキュベートした細胞を示す。
【図15】二重特異性scFv(抗NKG2D x 抗EpCAM)x ヒト4-1BBリガンド構築物の配列。A) ヌクレオチド配列、B) タンパク質配列、C) 構築物の略図。
【図16】NKG2D+ CHO細胞およびEpCAM+ CHO細胞それぞれに対する、三機能性構築物、抗NKG2D - 抗EpCAM - ヒト4-1BBリガンドの結合能(太線)。結合した構築物の検出は、ヒストグラムの下に記載の二次抗体を用いて行った。陰性対照として、トランスフェクションしていないCHO細胞を用いた(細線)。NKG2D+ CHO細胞に対する構築物の結合。A) 4-1BBL抗体を介した検出、B) Hisタグ抗体を介した検出。EpCAM+ CHOに対する構築物の結合。C) 4-1BBリガンド抗体を介した検出。
【図17】scFv抗EpCAM - ヒト4-1BBリガンド構築物の配列。A) ヌクレオチド配列、B) タンパク質配列、C) 構築物の略図。
【図18】EpCAM+ CHO細胞に対する、構築物、scFv抗EpCAM - ヒト4-1BBリガンドの結合能(太線)。結合した構築物の検出は、ヒストグラムの下に記載の二次抗体を用いて行った。陰性対照としては、分泌されたscFv抗EpCAM - ヒト4-1BBリガンド構築物を含む細胞培養上清を添加しなかった(細線)。A) 抗Hisタグ抗体による検出、B) 抗4-1BBリガンド抗体による検出。
【図19】FACS解析/T細胞プライミングA〜I。実験データはすべて、培養6日目に取得した。A) 1.シグナル:scFv抗EpCAM (M79) x scFv抗CD3、250 ng/ml。B) 1.+ 2.シグナル:scFv抗EpCAM (M79) x scFv抗CD3、250 ng/mlおよびB.7 - scFv抗EpCAM (4-7)、500 ng/ml。C) 1.+ 3.シグナル:scFv抗EpCAM (M79) x scFv抗CD3、250 ng/mlおよびscFv抗EpCAM (4-7) x hu4-1BBL、500 ng/ml。D) 1.シグナル:scFv抗EpCAM (M79) x scFv抗CD3、50 ng/ml。E) 1.+ 2.シグナル:scFv抗EpCAM (M79) x scFv抗CD3、50 ng/mlおよびB.7 - scFv抗EpCAM (4-7)、500 ng/ml。F) 1.+ 2.+ 3.シグナル:scFv抗EpCAM (M79) x scFv抗CD3、50 ng/mlおよびB.7 - scFv抗EpCAM (4-7) - hu4-1BBL、500 ng/ml。G) 2.シグナル: B.7 - scFv抗EpCAM (4-7)、500 ng/ml。H) 3.シグナル:B.7.1 - scFv抗EpCAM (4-7)、500 ng/ml。I) 2.+ 3.シグナル:B.7 - scFv抗EpCAM (4-7) - hu4-1BBL、500 ng/ml。
【図20】SPセファロース陽イオン交換カラムからのscFv抗EpCAM (M79) - ヒト4.1.BBリガンド融合タンパク質の溶出パターン。1:30%溶出緩衝液B1で溶出されたタンパク質;2:30%溶出緩衝液B1で溶出されたタンパク質;3:30%溶出緩衝液B1で溶出されたタンパク質。50%緩衝液B1での溶出によるタンパク質ピークを、さらなる精製に使用した。
【図21】NiキレートHisトラップカラムからのタンパク質溶出パターン(太線)。前のSPセファロース陽イオン交換カラムの50%緩衝液B1での溶出によるタンパク質ピークのタンパク質画分に含まれるscFv抗EpCAM (M79) - ヒト4-1.BBリガンド融合タンパク質を供した。破線は、0.5 Mイミダゾールを含む溶出緩衝液の理論的な勾配を示す。30%緩衝液B2溶出段階によるタンパク質画分を、さらなる精製に使用した。
【図22】セファデックスS200ゲルろ過カラムからのタンパク質溶出パターン(太線)。scFv抗EpCAM (M79) - ヒト4-1.BBリガンド融合タンパク質は約68 mlの位置の単一ピークに溶出し、これは分子量約150 kDに相当する。
【図23】図22に示した精製scFv抗EpCAM (M79) - ヒト4-1.BBリガンド含有タンパク質画分のSDS-PAGE解析。SDS-PAGEはコロイドクーマシーで染色した。レーン1:MultiMark分子量マーカー;レーン2および3:主要なピークおよび肩の部分のゲルろ過画分。
【図24】精製されたscFv抗EpCAM (M79) - ヒト4-1.BBリガンド融合タンパク質画分のウェスタンブロット解析。ウェスタンブロットは、Penta His抗体およびアルカリフォスファターゼ標識ヤギ抗マウス抗体と共にインキュベートした。染色剤はBCIP/NBT液であった。レーン1:MultiMark分子量マーカー;レーン2および3:異なる濃度での、68 mlの位置の主要なピークのゲルろ過画分。約50 kDaの主要なバンドは、精製タンパク質の>90%を含む。21 kDの微量バンドは、タンパク質分解された断片である。
【図25】NiキレートHisトラップカラムからの、scFv抗NKG2D - scFv抗EpCAM (4.7) - ヒト41BBL融合タンパク質含有タンパク質画分の溶出パターン(太線)。灰色の線は、溶出緩衝液の理論的な勾配を示す。100%緩衝液B2溶出段階によるタンパク質画分(555 mlのピーク)を、さらなる精製に使用した。
【図26】セファデックスS200ゲルろ過カラムからのタンパク質溶出パターン(太線)。scFv抗NKG2D - scFv抗EpCAM (4.7) - ヒト41BBL融合タンパク質は約60 mlの位置の単一ピークに溶出し、これは分子量約220 kDに相当する。点線は、ベースラインを示す。
【図27】精製されたscFv抗NKG2D - scFv抗EpCAM (4.7) - ヒト41BBL融合タンパク質含有タンパク質画分のSDS-PAGE解析(A)および(B)ウェスタンブロット。SDS-PAGEはコロイドクーマシーで染色した。ウェスタンブロットは、Penta His抗体およびアルカリフォスファターゼ標識ヤギ抗マウス抗体と共にインキュベートした。染色剤はBCIP/NBT液であった。レーン1:MultiMark分子量マーカー、レーン2:細胞培養上清、レーン3:IMACフロースルー、レーン4:IMAC洗浄ピーク、レーン5:IMCA溶出ピーク、レーン7:60 mlにおけるピークのゲルろ過画分。約72 kDaの主要なバンドは、>50%の純度でこのタンパク質を含む。
【図28】Kato III細胞上のEpCAM抗原に対する、scFv抗NKG2D - scFv抗EpCAM (4.7) - ヒト41BBL融合タンパク質のFACS結合解析。FACS染色は実施例1A第4項に記載した通りに行った。点線は、細胞を抗his抗体および第二段階の試薬とのみインキュベートした対照を示す。太線は、細胞培養上清に由来するscFv抗NKG2D - scFv抗EpCAM (4.7) - ヒト41BBL融合タンパク質と共にインキュベートした細胞を示す。細線は、細胞を抗EpCAM抗体mab 3B10と共にインキュベートした陽性対照を示す。
【図29】NKG2D結合アッセイ:(A) 非染色NK対照;(B) 抗体検出NK対照;(C) NK NKG2D (1D11) mab;(D) NK NKG2D (11B2D10) mab;(E) NK細胞培養上清;(F) NK CD16 mab。X軸は、いずれの場合も蛍光2 (FL2-H)を示す。Y軸は、いずれの場合も側方散乱光(SSC-H)を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、三量体ポリペプチド構築物の各単量体が2つまたは3つのドメインからなり、第一ドメインは4-1BBLの細胞外ドメインまたはその一部であり、第二ドメインは第一ドメインのN末端側に位置する抗原相互作用部位からなり、任意で、第三ドメインはペプチドリンカーを介して第一ドメインと第二ドメインを結合し、ペプチドリンカーは重合活性を含まない、三量体ポリペプチド構築物に関する。さらに、本発明は、そのようなポリペプチド構築物をコードする核酸分子、三量体ポリペプチド構築物を発現させるためのベクターおよび宿主系を提供する。また、本発明は、薬学的組成物であることが想定される組成物および疾患の治療におけるそれらの使用を提供する。本明細書を通して様々な文献が引用される。そのような文献の開示された内容は、参照として本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
T細胞媒介性免疫療法の改善は、重要な医学的目標である。T細胞媒介性免疫療法の1つの重要な局面は、T細胞活性化の効率化である。T細胞活性化は、抗原提示細胞(APC)の膜上に提示された抗原との接触による、抗原と必要な細胞内シグナルを生じる複数の膜分子との動的相互作用の結果起こる。現在、ナイーブT細胞は、活性化および次のエフェクター細胞への増殖のために、いくつかの異なるシグナルを必要とすると広く考えられている。
【0003】
第一に、抗原性ペプチドとTCR-CD3複合体との相互作用によって生じる最初のシグナル(シグナル1)が存在する(Kuby, 2000: Immunology, 第4版、Freeman and Company, ニューヨーク、254ページ)。この最初のシグナルは、T細胞の短期刺激を引き起こす。相補性決定領域(CDR)が応答の抗原特異性を決定し、活性化の開始において中心的な役割を果たす。しかし、この相互作用は、単独ではナイーブT細胞を完全に活性化するには十分ではない。最初のT細胞刺激後に、さらなる抗原依存的な共刺激シグナルが存在しなければならない。
【0004】
第二のシグナルは、B7.1とT細胞上のCD28受容体との相互作用によって媒介される。CD28受容体は静止/ナイーブT細胞上に既に発現されており、T細胞の増殖およびT細胞の実際のプライミングを媒介する。
【0005】
第三のシグナルは、4-1BBLのような補助因子と、最初の刺激後に初めてT細胞上に発現するその対応する受容体との相互作用によって生じる。他の補助因子/受容体対には以下のものがある:CD30リガンド/CD30、Ox40リガンド/Ox40、GITRL/GITR、CD27リガンド/CD27。この補助シグナルによって、T細胞の存続および運命が決まる。上記の分子は、TNFスーパーファミリーの一部である。
【0006】
ほとんどのTNFファミリーメンバーは前駆体分子として合成され、プロセシング過程を受ける(Bodmer et al, 2002, TIBS 27, 19-26)。メタロプロテイナーゼによる腫瘍壊死因子α前駆体のプロセシングが詳細に記載されている(Gearing et al., 1994, Nature 370, 555-557)。TNFαは初め233アミノ酸の膜結合型前駆体として発現され、タンパク質分解によりプロセシングされて成熟した157 aaサイトカインを生じる。TNFαを切断するプロセシング酵素は、腫瘍壊死因子a変換酵素TACEである(Lee, Biochem. J. 2003 Jan 30、Becker et al. 2002, Biol.Chem. 383:1921-6)。TACEは、強力な炎症促進性サイトカイン、TNFαの放出に関与する、膜結合型多重ドメイン亜鉛メタロプロテイナーゼである(Lee, Biochem. J. 2003 Jan 30)。TNFα自体は、三量体タンパク質であることが記載されている(Jones et al., 1990, J. Cell Sci Suppl 13, 11-18、Smith & Baglioni, 1987, J Biol Chem 262, 6951-6954;Wingfield et al., 1987, FEBS 211(2), 179-184)。1つのTNFα三量体は3つのTNFα受容体分子を結合することができ、この受容体のクラスター形成が細胞内シグナル伝達カスケードを開始させることから、TNFαが三量体タンパク質であることは重要な生物学的特徴である(Ameloot et al. J. Biol. Chem (2001) 276:27098-27103)。TNFα自体の三量体化に加えて、TNFα融合タンパク質の三量体化についても記載されている。しかし、先行技術の研究では三量体形成は起こらないかまたは低く、さらなる三量体化ドメインを使用した。例えば、Yang et al., 1995, Mol.Immunol 32, 873-81、Scherf et al., 1996, Clin Cancer Res 9, 1523-31、Wuest et al., 2002, Oncogene 21, 4257-4265、およびXiang et al., 1997, J Biotech 53, 3-12は、TNFαの成熟細胞外ドメイン(アミノ酸1〜157)を含む構築物の三量体化について記載し、Wuest et al., 2002, Oncogene 21, 4257-7265、WO 02/22833、およびWO 02/22680は、さらなる三量体化ドメイン(テネイシンまたはAcrp30)を用いた、TNFαおよびTNFα相同体TRAILまたはFasLを含むポリペプチド構築物の三量体化について記載している。
【0007】
ヒト4-1BBL (4-1BBL)は、細胞外カルボキシル末端ドメインを有するII型膜糖タンパク質である(Goodwin et al., 1993, Eur J Immunol 23, 2631-2641)。4-1BBLとその対応する受容体4.1BBとの相互作用によって、活性化胸腺細胞および脾臓T細胞の増殖が誘発される(Goodwin et al., 1993, Eur J Immunol 23, 2631-2641)。4-1BBLの細胞外ドメインは、腫瘍壊死因子(TNF)aの細胞外領域と明らかな配列相同性を示す。このいわゆるTNF相同ドメイン(THD)は、これまでに知られている全部で18個のTNFファミリーメンバー間で保存されている(Bodmer et al, 2002, TIBS 27, 19-26)。THDは、芳香族残基および疎水性残基の保存された骨格を含む、約150アミノ酸長の配列である(Bodmer et al, 2002, TIBS 27, 19-26;Gruss, 1996, Int J Clin Lab Res 26, 143-159)。THDは実質的に等しい三次折りたたみを共有し、会合して三量体タンパク質を形成する(Jones et al., 1990, J. Cell Sci Suppl 13, 11-18;Smith & Baglioni, 1987, J Biol Chem 262, 6951-6954;Wingfield et al., 1987, FEBS 211(2), 179-184)。THDはβサンドイッチ構造であり、古典的な「ゼリーロール」トポロジーをとる。X線結晶学から、サブユニットが、βサンドイッチの単純なエッジ・トゥー・フェースパッキングを介した相互作用により三回転軸の周りに密に会合して、頑丈な円錐型の三量体を形成することが明らかになる(Jones et al., 1990, J. Cell Sci Suppl 13, 11-18)。受容体結合に関与するアミノ酸残基は、THDドメイン内に埋もれている(Bodmer et al, 2002, TIBS 27, 19-26)。ヒト4-1BBLの細胞外部分(アミノ酸50〜254)は、THDドメインに加えて、約42アミノ酸のストーク(柄)(stalk)ドメイン(アミノ酸50〜約92)をさらに含む。図1は、TNFαおよびTNFα前駆体タンパク質と比較した、4-1BBLの構造全体の略図を示す。4-1 BBリガンドに関しては、切断部位は記載されていない(Bodmer et al., 2002 TIBS 27(1), 19-26)。
【0008】
4.1BBリガンド、CD30リガンド、Ox40リガンド、GITRL、LIGHT、およびCD27リガンドは、T細胞(共)刺激または制御機能を有するとされており(Mackay & Kalled, 2002, Current Opinion in Immunology 14, 783、Granger 2001, J. Immunol., 5122;Akiba, 2000, J. Exp. Med. 191, 375)、したがって、TNFリガンドスーパーファミリー内で、B細胞または樹状細胞に作用するリガンドとは異なるサブグループを形成する。TNFファミリーメンバーの亜集団に関するこれらの報告は、複数配列のアラインメントおよび系統樹解析によってさらに支持される。4-1BBLはOx40リガンドおよびCD27リガンドと系統樹の同じ枝に位置するのに対して、TNFおよびFasLは別の枝に位置する(Granger 2001, J. Immunol., 5122;Akiba, 2000, J. Exp. Med. 191, 375)。図2では、18個のTNFαファミリーメンバーすべての細胞外ドメインを比較している(図2)。Treetopプログラムのトポロジーアルゴリズムは、配列間の対の距離を算出する(Chumakov & Yashmanov, 1988, Mol Genet Microbiol Virusol 3, 3-9;Yushmanov & Chumakov, 1988, Mol Genet Microbiol Virusol 3, 9-15;Brodsky et al., 1992, Dimacs 8, 127-139;Brodsky et al., 1995, Biochemistry, 923-928)。無根系統樹は、3つの主要な枝に分割されると考えられる(図2B)。3つの枝のうちの1つにおいて、4-1BBLは、CD30リガンド、Ox40リガンド、GITRL、およびCD27リガンドと共に群をなす。
【0009】
T細胞が3つのシグナルすべてを受け取って初めて、これらのT細胞の持続的な免疫応答が起こる。
【0010】
T細胞媒介性免疫療法は、これまで、最初のT細胞刺激を提供することに主に焦点を当ててきた。例として、抗CD3部分(Mack et al., 1995, PNAS 92(15), 7021-5;WO99/54440)またはOKT3抗体(US5,929,212、WO91/09968)を介して最初のT細胞刺激を引き起こす、二重特異性一本鎖抗体構築物が挙げられる。抗CD3を介して作用する成分は、投与直後にT細胞刺激能力を放つ。この特徴は、例えば急性治療の設定において用いられる。しかし、例えば転移癌においてまたは微小残存癌の治療においては、T細胞応答の持続が望ましいという兆候も存在する。
【0011】
持続的なT細胞応答を引き起こす免疫療法を開発するための、いくつかのアプローチが周知である。しかし、これらのいずれを用いても、標的組織における特定の病態を治療、改善、または予防することはできない。
【0012】
例えば、WO 99/36093は、ヒト4-1BBリガンドが少なくとも1つのT細胞と接触するように有効量のヒト4-1BBリガンドを投与し、それによりT細胞を活性化する段階を含む、T細胞活性化を増強する方法を開示している。さらに、この方法では、二次刺激分子を4-1BBリガンドと併せて投与し得ることが明示されている。この二次刺激分子は、CD3抗体、CD28抗体、またはCD28タンパク質であってよい。
【0013】
任意で、二次刺激分子がCD3抗体である場合には、WO 99/36093の方法は三次刺激分子を含んでよく、これはCD28抗体であってよい。詳細には、WO 99/36093は、CD28と4-1BBとの共関与が、1型エフェクターT細胞の生成、および度重なるTCR活性化によって誘導されるアポトーシスの影響を受けやすい細胞の長期細胞生存を促進することを記載している。
【0014】
WO94/26290では、4-1BBリガンドのDNA配列およびコードされるアミノ酸配列、4-1BBリガンドおよびFcドメインを含む融合タンパク質について記載している。WO94/26290では、4-1BB-Lを単独でまたはインターロイキン-2等の他のサイトカインと組み合わせて培地に添加することにより、4-1BBリガンドを用いて、治療手段において使用される活性化T細胞の増殖を促進し得ること、およびエクスビボ段階でCTLの増殖を増強し得ることが論じられている。
【0015】
WO98/16249は、インビボでの免疫抑制および癌治療の新規アプローチを提供する、2つの抗4-1BBモノクローナル抗体について記載している。
【発明の開示】
【0016】
したがって、本発明の基礎をなす技術的課題は、いくつかの疾患の治療において使用可能なT細胞の持続的/永続的活性化手段を提供することであった。
【0017】
特許請求の範囲において特徴づけられる態様を提供することによって、そのような技術的課題を解決する。
【0018】
したがって、本発明は、三量体ポリペプチド構築物の各単量体が2つまたは3つのドメインからなり、第一ドメインは4-1BBLの細胞外ドメインまたはその一部であり、第二ドメインは第一ドメインのN末端側に位置する抗原相互作用部位からなり、任意で、第三ドメインはペプチドリンカーを介して第一ドメインと第二ドメインを結合し、ペプチドリンカーは重合活性を含まない、三量体ポリペプチド構築物に関する。
【0019】
「ポリペプチド構築物」という用語は、本発明に基づいて、1つまたは複数の遺伝子操作した核酸分子によってコードされる、組換えによって産生可能なポリペプチドを定義する。
【0020】
本明細書で使用する「三量体ポリペプチド構築物」という用語は、3つの「単量体」ポリペプチド構築物を含む構築物を示す。三量体ポリペプチド構築物の単量体それぞれは、少なくとも1本のポリペプチド鎖からなる。したがって、「単量体ポリペプチド構築物」という用語は、本明細書では「三量体ポリペプチド構築物」を形成するサブユニットを単に指すが、そのような単量体自体が重合体であってもよい。三量体構築物の単量体として定義される重合体の例として、2本のポリペプチド鎖からなるF(ab)断片が挙げられる。本発明の三量体ポリペプチド構築物は、適切な宿主のサイトゾル中に発現され得る可溶性ポリペプチド構築物であることが好ましい。本発明のそのようなポリペプチド構築物は、適切な宿主の分泌経路を介して、特定の細胞内コンパートメント内または上清中に分泌されることも同様に好ましい。特に好ましい宿主は真核生物宿主である。
【0021】
本発明のポリペプチド構築物の三量体構造のみで、永続的および/または持続的なT細胞応答を可能にする活性化シグナルを誘導できるようにすることが意外にも見出されたことから、そのような三量体構造は必須の技術的特徴である。
【0022】
「持続的なT細胞応答」という用語は、T細胞が、TCRシグナルもしくはTCR様シグナルならびに二次および/または三次共刺激シグナルを介してプライミングされ続けることを意味する。本発明に基づく持続的なT細胞応答を起こすそのようなT細胞は、長期生存を示す。理論に束縛されることなく、そのような長期生存は、活性化を誘導された細胞の死滅などに対する防御に起因し得る。結果として、本発明との関連において、持続的なT細胞応答を起こす活性化T細胞を、エフェクター細胞としてそれぞれの標的に長期間作用させるために使用できる。T細胞の生存に及ぼす効果は、例えばBclw、Bcl-2、Bcl-xL、またはBfl-1のようなBcl-2ファミリーによる抗アポトーシス因子の発現レベルの増加を測定することによって解析することができる(Jones (2000) J. Exp. Med. 191: 1721)。
【0023】
したがって、本発明の三量体ポリペプチド構築物を形成する単量体の三量体化は、本発明の構築物の機能に必要である。
【0024】
本明細書で使用する「ドメイン」という用語は、三量体ポリペプチド構築物の単量体のサブユニットを表す。そのようなドメインは、例えば抗原に特異的に結合する能力、三量体構造の形成を促進する能力、または個々のドメインを相互に連結する能力といった特定の技術的特徴によって規定されるポリペプチドの領域を表す。
【0025】
上記のように、4-1BBLはTNFスーパーファミリーのメンバーであるII型膜貫通タンパク質である。完全なまたは全長4-1BBLは細胞表面上でホモ三量体を形成するとされている。ホモ三量体の形成は、4-1BBLの細胞外ドメインの特異的動因によって可能になる。そのような動因を、本明細書では「三量体化領域」と称する。
【0026】
「4-1BBLの細胞外ドメイン」という用語は、上記の驚くべき4-1BBLのホモ三量体の形成を可能にする、4-1BBLの細胞外ドメインの特異的動因と関連がある。したがって、そのような用語は、4-1BBLの細胞外ドメインの三量体化領域と関連があり、すなわちまたそのような細胞外ドメインの部分または断片にも関連する。当業者は、4-1BBLの細胞外ドメインの機能的な部分または断片を決定するために、添付の実施例の開示を参考にする状況に容易にある。機能的な部分または断片は、三量体化し得ると定義される。
【0027】
上記のように、4-1BBLは、TNFがその命名の由来であり主要なメンバーであるタンパク質ファミリーの一メンバーである。Xiang et al.(J. Biotech. (1997) 53, 3-9)は、トランスフェクションした哺乳動物細胞によって、二量体の形式でのみ分泌されるTNF融合タンパク質の構築物について記載している;Xiang et al.の図2を参照されたい。したがって、4-1BBLの細胞外ドメインの三量体化領域が本発明の構築物を三量体化するのに十分な能力は、真核細胞で発現する構築物にとって非常に驚きである。
【0028】
添付の実施例に記載するように、意外にも、4-1BBLの細胞外ドメインの三量体化領域の能力のみで、複合融合タンパク質の量的な三量体化に十分である(単量体も二量体も検出されない)ことが認められた。このような十分な能力は、先行技術によって開示も予想もされていなかった。対照的に、先行技術は、さらなる三量体化ドメインが必要であると推測していた。複合TNFα融合構築物におけるそのようなさらなる三量体化ドメインは、三量体化能力を有するテネイシンまたは他のペプチドリンカーであると記載されている(WO02/22833)。しかし、本明細書に記載の本発明の構築物では、複合4-1BBL融合タンパク質の量的な三量体形成を誘導するために、そのようなさらなるペプチドリンカーを必要としない。したがって、本発明の構築物は3つの単量体からなり、各単量体は2つまたは3つのドメインからなり、そのようなドメインの1つは4-1BBLの細胞外ドメインである。第二ドメインまたは第三ドメインは、三量体化ドメインでも重合活性を有するポリペプチドリンカーでもなく、これらを含んでもいない。
【0029】
「抗原相互作用部位」という用語は、本発明に基づいて、特定の抗原または特定の抗原群と特異的に相互作用する能力を示すポリペプチドの動因を定義する。そのような「抗原相互作用部位」と抗原との「相互作用」は特異的であり、≦10-9Mという高い結合定数を特徴とする。対照的に、抗原の非特異的相互作用は、≧10-5Mという極めて低い結合定数を特徴とする。抗原相互作用部位とその特定抗原との特異的相互作用は、例えば抗原の高次構造の変化、抗原のオリゴマー形成の誘導に起因するなどして、シグナルを開始し得る。そのような結合は、「鍵と鍵穴原理」の特異性によって例証される。このように、一次、二次、または三次構造の結果として、また同様にそのような構造の二次修飾の結果として、抗原相互作用部位のアミノ酸配列内の特定の動因と抗原が相互に結合する。抗原相互作用部位とその特定抗原との特異的相互作用はまた、そのような部位の抗原への単純な結合を起こし得る。
【0030】
抗原相互作用部位と特定抗原との特異的相互作用の例には、リガンドのその受容体に対する特異性が含まれる。そのような定義には、特に、その特異的受容体への結合に際してシグナルを誘導するリガンドの相互作用が含まれる。これに相当するリガンドの例には、その特異的サイトカイン受容体と/に相互作用/結合するサイトカインが含まれる。そのような定義に特に含まれるものにはまた、セレクチンファミリー、インテグリン、およびEGFのような増殖因子のファミリーの抗原と同様の抗原への、抗原相互作用部位の結合がある。そのような定義に特に含まれるそのような相互作用の他の例は、抗原決定基(エピトープ)と抗体の抗原結合部位との相互作用である。
【0031】
第二ドメインは、第一ドメインのN末端側に位置する。したがって、本発明の三量体ポリペプチドの単量体をコードする核酸分子において、第二ドメインのコード領域は、第一ドメインのコード配列の5'側にある。
【0032】
「ペプチドリンカー」という用語は、本発明に基づいて、本発明の三量体ポリペプチド構築物の単量体の第一ドメインと第二ドメインのアミノ酸配列を相互に連結するアミノ酸配列を定義する。そのようなペプチドリンカーの必須の技術的特徴は、ペプチドリンカーが重合活性を含まないことである。特に好ましいペプチドリンカーは、アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser、すなわち(Gly)4Ser、またはその重合体、すなわち((Gly)4Ser)xによって特徴づけられる。二次構造の促進の欠如を含むそのようなペプチドリンカーの特徴は、当技術分野において周知であり、例えばDall'Acqua et al.(Biochem. (1998) 37, 9266-9273)、Cheadle et al.(Mol Immunol (1992) 29, 21-30)、およびRaagおよびWhitlow(FASEB (1995) 9(1), 73-80)に記載されている。より少ないアミノ酸残基を含むペプチドリンカーもまた特に好ましい。5アミノ酸未満を有する想定されるペプチドリンカーは、好ましくは4アミノ酸、より好ましくは3アミノ酸、より好ましくは2アミノ酸、最も好ましくは1アミノ酸を含む。そのような「ペプチドリンカー」との関連で特に好ましい「単一」アミノ酸はGlyである。したがって、そのようなペプチドリンカーは、単一アミノ酸Glyからなってよい。しかし、他のアミノ酸も想定される。さらに、二次構造を促進しないペプチドリンカーもまた好ましい。上記のように、本発明の三量体ポリペプチド構築物に含まれる個々の単量体の第一ドメインと第二ドメイン間のリンカーはなくてもよい。
【0033】
そのようなドメインの相互の結合は、例えば実施例に記載するような遺伝子操作によって提供され得る。融合し、機能的に連結したポリペプチド鎖を調製し、哺乳動物細胞または細菌においてそれらを発現させる方法は、当技術分野において周知である(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州、コールドスプリングハーバー、1989)。
【0034】
好ましい態様では、本発明のポリペプチド構築物の個々の単量体において、4-1BBLの完全な細胞外ドメインを「三量体化領域」として使用する。
【0035】
4-1BBLの完全な細胞外ドメインは、TNF相同ドメイン(THD)に加えてストーク領域と称される領域も含む:図1を参照されたい。ヒト4-1BBLのアミノ酸配列はGoodwin et al.(Eur. J. Immunol. (1993) 23, 2631)に記載されている。そのようなアミノ酸配列では、ストーク領域はアミノ酸残基50〜91に相当し、THDは92〜254に相当する。または、三量体化領域は、分子の三量体化を促進する、4-1BBLの細胞外ドメインの断片からのみなることも好ましい。そのような断片を、適切なさらなるペプチドリンカーによって機能的に連結することができる。
【0036】
4.1BBLに関しては、切断部位は記載されていないが(Bodmer et al., TIBS (2002) 27(1), 19-26)、例えば4℃での保存期間中のタンパク質分解といったタンパク質分解の観点で安定性を増すために、ストークドメインに変異を導入することが有利な場合がある。
【0037】
さらなる好ましい態様では、本発明の三量体ポリペプチド構築物の抗原相互作用部位は、別の抗原と特異的に相互作用する少なくとも2つのドメインを含む。
【0038】
本発明のそのような好ましい態様は、異なる特異性を有する1つより多くの抗原相互作用部位を含む三量体ポリペプチド構築物に関連する。そのような態様はまた、個々の抗原決定基を表す1つの分子の別の領域と特異的に相互作用する少なくとも2つのドメインを含む三量体ポリペプチド構築物も含む。
【0039】
別の抗原と特異的に相互作用する、より好ましいそのような少なくとも2つのドメインはペプチドリンカーを介して結合し、そのようなペプチドリンカーは重合活性を含まない。
【0040】
ペプチドリンカーについては上記で説明し、また添付の実施例において例証する。しかし、当技術分野において周知のさらなるペプチドリンカーも、本発明との関連で用いることができる。上記のペプチドリンカーの反復配列動因を含むペプチドリンカーも、そのような反復構造が重合活性を含まない限り好ましい。
【0041】
本発明を踏まえてさらに好ましいのは、1つまたは複数の細胞表面マーカーに特異的な、三量体ポリペプチド構築物の抗原相互作用部位である。本明細書において使用する「細胞表面マーカー」という用語は、細胞の表面に提示される分子を表す。そのような細胞表面マーカーの例には、膜タンパク質および膜貫通タンパク質、そのようなタンパク質または細胞表面に適合した分子等が挙げられる。
【0042】
本発明のさらに好ましい態様では、そのような細胞表面マーカーは腫瘍マーカーである。
【0043】
そのような腫瘍マーカーの例は、TAG72、PSMA、CD44v6、CEA、Her2-neu、Her-3、Her-4、Lewis Yである。
【0044】
好ましい態様において、本発明の三量体ポリペプチド構築物の単量体の第二ドメインの抗原相互作用部位は、抗体由来領域である少なくとも1つのドメインを含む。
【0045】
「抗体由来領域」という用語は、本発明に基づいて、エピトープと特異的に結合および相互作用する能力によって特徴づけられる、抗体の少なくとも1つの断片または誘導体を定義する。好ましくは、そのような抗体由来領域は、抗体の少なくとも1つの可変領域または少なくとも1つの超可変領域(CDR)に相当するポリペプチド配列を含む。
【0046】
「由来する」という用語は、この関連において、その領域が抗体のドメインに由来し、置換、欠失、付加、反転、重複、組換え等を含み得ることを意味する。
【0047】
さらに、以下に記載するように、「由来する」とは、一本鎖抗体、好ましくは二重特異性scFvのようなscFv分子または二重特異性分子と同様の、抗体の誘導体も想定する。
【0048】
抗体由来領域である1つのドメインは、抗体の少なくとも2つの可変領域に相当するポリペプチド配列を含むことが好ましい。本発明の特に好ましい分子形式は、抗体由来領域が1つのVH領域および1つのVL領域を含むポリペプチド構築物を提供する。
【0049】
抗体由来領域は、任意の哺乳動物種の抗体に由来してよい。そのような抗体由来領域は、ラット、マウス、またはヒト抗体に由来することが好ましい。
【0050】
本発明の三量体ポリペプチド構築物の単量体に抗原相互作用領域を提供する抗体は、例えばモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、合成抗体、Fab、FvもしくはscFv断片等の抗体断片もしくは誘導体、またはこれらのうちのいずれかの化学修飾誘導体に由来してよい。さらに、上記の抗原に対する抗体またはその断片は、例えば、HarlowおよびLane「Antibodies, A Laboratory Manual」、CSH Press, コールドスプリングハーバー、1988に記載されている方法を用いて取得することができる。抗体を、ヒトを含むいくつかの種から得てもよい。そのような抗体の誘導体をファージディプレイ法によって取得する場合には、BIAcoreシステムで使用される表面プラズモン共鳴を用いて、所望のエピトープに結合するファージ抗体の効率を上昇させることができる(Schier, Human Antibodies Hybridomas 7 (1996), 97-105;Malmborg, J. Immunol. Methods 183 (1995), 7-13)。キメラ抗体の産生は、例えばWO 89/09622に記載されている。ヒト化抗体の産生法は、例えばEP-A1 0 239 400およびWO 90/07861に記載されている。本発明に従って利用される抗体のさらなる供給源は、いわゆる異種抗体である。マウスにおけるヒト抗体のような異種抗体を産生する一般的原理は、例えば、WO 91/10741、WO 94/02602、WO 96/34096、およびWO 96/33735に記載されている。
【0051】
本発明に従って使用される抗体またはそれらに相当する免疫グロブリン鎖を、例えばアミノ酸欠失、挿入、置換、付加、および/もしくは組換え、ならびに/または当技術分野において周知の任意の他の修飾を単独でまたは組み合わせて用いることによって、当技術分野において周知の従来法によりさらに修飾することができる。免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列の基礎をなすDNA配列にそのような修飾を導入する方法は、当業者には周知である;例えば、Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N.Y.を参照されたい。言及した修飾は、核酸レベルで行うことが好ましい。
【0052】
本発明のさらに好ましい態様では、三量体ポリペプチド構築物の単量体の第二ドメインの抗原相互作用部位は、少なくとも2つの抗体由来領域を含む。
【0053】
この態様は、例えば、2つの異なるエピトープに対する2つの異なる抗体の特異性を有するポリペプチド構築物を含む。これに相当するポリペプチド構築物を添付の実施例に記載する。
【0054】
特に好ましいのは、抗原相互作用部位として二重特異性scFv構築物を含む構築物である。
【0055】
本発明の三量体ポリペプチド構築物は、抗原相互作用部位がB7ファミリーのメンバーの細胞外ドメイン、またはその特異的受容体に結合することができるその断片もしくは誘導体を含む構築物であってよい。
【0056】
B7ファミリーは、共刺激分子の1つの群である。そのようなファミリーおよび対応する特異的受容体のメンバーの例は、例えばCoyleおよびGutierrez-Ramos(Nature immunology (2001) 2(3); 203-209)に記載されている。
【0057】
本明細書で用いる、B7ファミリーのメンバーの「断片または誘導体」という用語は、それらが由来する元となったB7ファミリーのメンバーが特異的に結合する受容体に特異的に結合する能力を有する、B7ファミリーのメンバーの細胞外部分に由来するポリペプチドまたは二次的に修飾されたポリペプチドを表す。
【0058】
本発明によれば、三量体ポリペプチド構築物は、抗原相互作用部位がscFv、Fab、および単一のIg可変領域からなる群より選択される構築物である。
【0059】
好ましくは、抗原相互作用部位となり得る抗体由来領域が、キメラ抗体、完全ヒト抗体、または任意でヒト化抗体、CDR移植抗体もしくは非免疫化(deimmunized)抗体であってよい非ヒト起源の抗体であることが想定される。
【0060】
抗原相互作用部位内のscFv構築物を、EpCAM、NKG2D、CD19、PSMA、MCSP、stn (TAG72)、CD44v6、炭酸脱水酵素IX (CAIX)、CEA、EGFR、CD33、Wue-1、CD3、Muc-1、CD20、Her2-neu、Her 3、Her 4、およびLewis-Yに特異的なscFvからなる群より選択することができる。
【0061】
上記のように、本発明の三量体ポリペプチド構築物は、二重特異性scFvである抗原相互作用部位によって特徴づけられる単量体を含むこともまた好ましい。したがって、抗原相互作用部位は、2つの異なる抗原に結合/と相互作用し得る、または2つの異なる抗原を検出し得ることも想定される。
【0062】
同様に、そのような抗原相互作用部位は、とりわけ、1つのscFv、および例えばB7ファミリーのメンバーまたはその断片もしくは誘導体のようなさらなる抗原相互作用部位を含み得る。これに相当する態様を、以下および添付の実施例に記載する。
【0063】
上記のB7ファミリーのメンバーまたはその断片もしくは誘導体を、B7.1、B7.2、B7-H3、B7-RP1、B7-DC、PDL1、およびPDL2からなる群より選択することができる。
【0064】
B7.1、B7.2、B7-RP1、B7-DC、PDL1、およびPDL2の特異的受容体は、CoyleおよびGutierrez-Ramos(Nature immunology (2001) 2(3); 203-209)に記載されており、CD28(B7.1/B7.2)、CTLA-4(B7.1/B7.2)、ICOS(B7RP-1)、およびPD-1(PD-L1/PD-L2)である。
【0065】
本発明の特に好ましい態様では、各単量体の二次ドメインは、EpCAMに特異的なscFv、または上記のように、そのような部位の1つがEpCAMに対するscFvであるいくつかの、例えば2つの抗原相互作用部位を含む。エピトープEpCAMについては、以前に例えばRaum et al., 2001, Cancer Immunol Immunother. 50(3), 141-150に記載されている。
【0066】
本発明のさらに好ましい態様においては、三量体ポリペプチド構築物を形成する各単量体は、配列番号:20に示されるアミノ酸配列を有する。
【0067】
配列番号:20に示されるアミノ酸配列を有する単量体は、配列番号:19に示される核酸分子によってコードされる。以下に詳述するように、本発明の好ましい態様は、そのような単量体をコードする核酸分子、およびその単量体の機能的変種をコードする核酸分子に関する。
【0068】
本発明において、「ホモ三量体構築物」のみならず、以下に記載する「ヘテロ三量体構築物」もまた想定されることに留意すべきである。したがって、「各単量体の二次ドメイン」という用語は、3つの同一の単量体からなる三量体ポリペプチド構築物に限定されない。よって、本明細書に記載する単量体を組み合わせて「ヘテロ三量体ポリペプチド構築物」にすることも可能であり、これも本発明において想定される。
【0069】
三量体ポリペプチド構築物の単量体の「機能的変種」という用語は、本発明において、上記で詳細に開示したように三量体化することが可能であり、かつその抗原相互作用部位を介して特に所定の抗原に結合/と相互作用することが可能な単量体を示す。
【0070】
驚くべきことに、本明細書に記載する三量体化構築物のみで、持続的/永続的なT細胞応答を活性化可能であることが見出された。「持続的なT細胞応答」という用語は、T細胞が、TCRシグナルもしくはTCR様シグナルおよび適切な共刺激を介してプライミングされ続けることを意味する。そのようなT細胞の長期生存は、例えば、活性化を誘導された細胞の死滅に対する防御のためである。結果として、活性化T細胞を、エフェクター細胞としてそれぞれの標的に長期間作用させるために使用できる。T細胞の生存に及ぼす効果は、例えばBclw、Bcl-2、Bcl-xL、またはBfl-1のようなBcl-2ファミリーによる抗アポトーシス因子の発現レベルの増加を測定することによって解析することができる(Jones (2000) J. Exp. Med. 191: 1721)。
【0071】
機能的変種は特定のアミノ酸配列が異なるものの、同じ抗原エピトープに対して、抗原相互作用部位の同じ特異性を示す。したがって、単量体のそのような機能的変種は、それが帰する核酸分子の配列と異なる配列を有する核酸配列によってコードされる。
【0072】
本発明の別の特に好ましい態様は、モノクローナル抗体237のscFvを含む。
【0073】
当技術分野において周知のように、モノクローナル抗体はマウス肉腫細胞株の表面マーカーを検出/と相互作用する。このマーカーは腫瘍特異的細胞表面抗原である(Ward et al., 1989, J. Exp. Med. 第170巻、217-232で公表されたPW237抗体)。相当する三量体ポリペプチド構築物は、配列番号:8に示されるアミノ酸配列を有してよい。
【0074】
配列番号:8に示されるアミノ酸配列を有する単量体は、配列番号:7に示される核酸分子によってコードされてもよい。本発明はまた、そのような単量体をコードする核酸分子、およびそのような単量体の機能的変種をコードする核酸分子もまた含む。
【0075】
scFv抗237 - マウス4-1BBLを含むこの好ましい三量体ポリペプチド構築物をマウスモデル系で使用し、誘発される持続的なT細胞応答を定量化することができる。インビトロで培養し、237抗原をその表面上に発現する腫瘍形成細胞を、マウスに投与する。マウスを腫瘍攻撃するため対応する細胞を用いて、次にscFv抗237 - マウス4-1BBLを注射し、当技術分野において周知の方法により腫瘍増殖に及ぼす効果を測定することができる。
【0076】
実施例に例証するように、モノクローナル抗体237に由来するscFvはまた、別のscFvのような他の/別の抗原相互作用部位と組み合わせてもよい。さらなる組み合わせもまた想定される。したがって、本発明はまた、とりわけ、各単量体または少なくとも1つの単量体がいくつかの、好ましくはEpCAMに特異的なscFvおよびNKG2Dに特異的なscFvのような2つのscFvを含む、本明細書に規定する三量体構築物を提供する。
【0077】
NKG2D分子は、Baue et al.(Science (1999) 285, 727-729)に詳述されている。
【0078】
本発明の三量体ポリペプチド構築物のこれに相当する単量体は、配列番号:18に示されるアミノ酸配列を有してもよい。
【0079】
配列番号:18に示されるアミノ酸配列を有する単量体は、配列番号:17に示される核酸分子によってコードされてもよい。本発明はまた、そのような単量体をコードする核酸分子、およびそのような単量体の機能的変種をコードする核酸分子もまた含む。
【0080】
本明細書に述べたように、特に好ましい態様において本発明は、「第二ドメイン」として、すなわち抗原相互作用部位として、二重特異性構築物を有する少なくとも1つ、好ましくは2つ、最も好ましくは3つの単量体を含む三量体ポリペプチド構築物を提供する。最も好ましくは、2つのscFvまたは1つのscFvおよびB7ファミリーのメンバー(またはその一部もしくは断片)を含む。そのような構築物のこれに相当する実施例を添付する。
【0081】
本発明の別の特に好ましい態様において、各単量体は、二重特異性scFv構築物の少なくとも1つの特異性がCD3に特異的である、二重特異性scFv構築物を含む。
【0082】
そのような単量体において、CD3に特異的なscFvは、配列番号:22に示されるアミノ酸配列を有してもよい。
【0083】
配列番号:22に示されるアミノ酸配列を有する単量体は、配列番号:21に示される核酸分子によってコードされ得る。本発明はまた、そのような単量体をコードする核酸分子、およびそのような単量体の機能的変種をコードする核酸分子もまた含む。
【0084】
本発明の三量体構築物の単量体の第二ドメインは、EpCAMに特異的なscFv、およびB7.1の細胞外ドメイン、またはその特異的受容体、すなわちCD28またはCTLA-4に結合することができるその断片もしくは誘導体である抗原相互作用部位を含んでもよい。
【0085】
そのような構築物単量体は、配列番号:16に示されるアミノ酸配列を有してもよく、配列番号:15に示される核酸分子によってコードされてもよい。本発明はまた、そのような単量体をコードする核酸分子、およびそのような単量体の機能的変種をコードする核酸分子もまた含む。
【0086】
本発明に基づき、三量体ポリペプチド構築物が少なくとも2つの異なる単量体からなり、そのような異なる単量体は異なる抗原相互作用部位によって特徴づけられることが想定される。上記で指摘したように、「各単量体の二次ドメイン」という用語は、同一の単量体を含む三量体ポリペプチド構築物、すなわち「ホモ三量体構築物」に限定されない。同様に、少なくとも1つの単量体が、三量体ポリペプチド構築物に含まれる他の単量体と異なる「ヘテロ三量体構築物」も想定される。例えば、3つの単量体が異なる抗原相互作用部位を含むこと、および/または1つの単量体のみがHISタグのようなさらなるタグもしくは標識を含むことも可能である。
【0087】
したがって、本発明はまた、2つまたは3つの異なる単量体によって形成される三量体ポリペプチド構築物を提供する。そのような構築物は、ヘテロ三量体またはヘテロ三量体構築物と見なされる。ヘテロ三量体は、単量体の三量体化を促進する第一ドメインを有するかまたは含む単量体を含み、そのような3つの単量体のそのような第一ドメインはできれば同一であることが最も好ましい。しかしながら、本発明のヘテロ三量体構築物の好ましい態様において、異なる第二ドメイン、すなわち抗原相互作用部位が、三量体ポリペプチド構築物の個々の単量体内に想定される。
【0088】
さらに、そのような態様によれば、2つまたは3つの異なる単量体はそれらの異なる第二ドメインによって識別され得る。そのような第二ドメインは、異なる抗原、または1つもしくは複数の分子の異なる抗原決定基に対する特異性を有する、1つまたは複数の抗原相互作用部位からなってもよい。
【0089】
好ましくは、本発明のヘテロ三量体ポリペプチド構築物は、標的細胞抗原に対する特異性を有する抗原相互作用部位を有する少なくとも1つの単量体、およびエフェクター細胞上の活性化分子に対する特異性を有する抗原相互作用部位を有する少なくとも1つの単量体からなってもよい。
【0090】
三量体ポリペプチド構築物の少なくとも1つの単量体が、タグをさらに含むことが想定される。
【0091】
「タグ」という用語は当業者には周知であって、標識を指し、これによりタグを含むポリペプチドが同定され得る。
【0092】
そのようなタグは、以下かならる群より選択されてもよい:Hisタグ、Flagタグ、Mycタグ、HAタグ、GSTタグ、T100(商標)、VSV-G、V5、Sタグ(商標)、HSV、CFP、RFP、YFP、GFP、BFP、セルロース結合ドメイン(CBD)、マルトース結合タンパク質(MBP)、NusAタグ、チオレドキシン(Trx)、DsbA、DsbC、およびビオチン化配列。
【0093】
最も好ましくは、そのようなタグは少なくとも1つの単量体のC末端におけるHisタグである。
【0094】
上記したように、本発明の三量体ポリペプチド構築物は、真核生物発現系で発現されることが好ましい。
【0095】
真核生物発現系については、以下に詳述する。
【0096】
本発明はまた、本発明の三量体ポリペプチド構築物の単量体をコードする核酸分子を提供する。
【0097】
したがって、本発明は、以下からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する:
(a) 好ましくは配列番号:20、8、18、22、および16に示されるような、本発明の三量体ポリペプチド構築物の単量体のアミノ酸配列を含むタンパク質の成熟型をコードするヌクレオチド配列;
(b) 配列番号:19、7、17、21、および15に示されるようなDNA配列を含むか、またはそのようなDNA配列からなるヌクレオチド配列;
(c) ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において、(b)に規定されるヌクレオチド配列の相補鎖とハイブリダイズするヌクレオチド配列;
(d) (a)または(b)のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列の1つまたはいくつかのアミノ酸の置換、欠失、および/または付加により、(a)または(b)のヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質に由来するタンパク質をコードするヌクレオチド配列;
(e) (a)または(b)のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列;
(f) (a)から(e)のいずれか1つのヌクレオチド配列の、遺伝暗号の結果として縮重したヌクレオチド配列。
【0098】
タンパク質の「成熟型」という用語は、本発明において、その対応するmRNAから転写され、任意にその後修飾されたタンパク質を定義する。
【0099】
本明細書で用いる「ハイブリダイズする」という用語は、本発明のポリヌクレオチドまたはその一部とハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを指す。したがって、そのようなポリヌクレオチドは、それぞれの大きさに応じて、RNAまたはDNA調製物のそれぞれノーザンまたはサザンブロット解析のプローブとして有用である可能性があるか、またはPCR解析のオリゴヌクレオチドプライマーとして使用することができる。そのようなハイブリダイズするポリヌクレオチドは、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも15ヌクレオチド長を含むが、本発明のハイブリダイズするポリヌクレオチドがプローブとして用いられる場合には、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、最も好ましくは少なくとも500ヌクレオチド長を含む。
【0100】
核酸分子を用いてハイブリダイゼーション実験を行う方法は当技術分野において周知であり、すなわち、当業者は本発明に従ってどのようなハイブリダイゼーション条件を用いるべきかを熟知している。そのようなハイブリダイゼーション条件は、Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N.Y.等の標準的な教科書に照会される。
【0101】
本発明において好ましいのは、本発明のポリヌクレオチドまたはその一部に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドである。
【0102】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、すなわち、50%ホルムアミド、5x SSC(750 mM NaCl、75 mMクエン酸ナトリウム)、50 mMリン酸ナトリウム(pH 7.6)、5xデンハルト溶液、10%硫酸デキストラン、および20μg/ml変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中、42℃で一晩インキュベートし、その後フィルターを0.1 x SSC中、約65℃で洗浄することを指す。低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件において本発明のポリヌクレオチドにハイブリダイズする核酸分子もまた意図される。ハイブリダイゼーションおよびシグナル検出のストリンジェンシーの変更は、主にホルムアミド濃度(ホルムアミドの割合を下げることによりストリンジェンシーは低くなる);塩条件、または温度を操作することによって達成される。例えば、低いストリンジェンシー条件には、6X SSPE(20X SSPE = 3M NaCl;0.2 M NaH2PO4;0.02 M EDTA、pH 7.4)、0.5% SDS、30%ホルムアミド、100μg/mlサケ精子ブロッキングDNAを含む溶液中、37℃で一晩インキュベートし;その後1 X SSPE、0.1% SDSで50℃で洗浄することが含まれる。また、さらに低いストリンジェンシーを達成するためには、ストリンジェントなハイブリダイゼーションの後に行う洗浄を、高い塩濃度(例えば5X SSC)で行うこともできる。上記条件の変更は、ハイブリダイゼーション実験においてバックグラウンドを抑えるために使用される別のブロッキング試薬を含めるおよび/またはそれに置換することによって達成され得ることは注目すべきである。典型的なブロッキング試薬には、デンハルト試薬、BLOTTO、ヘパリン、変性サケ精子DNA、および市販の独自の処方品が含まれる。特定のブロッキング試薬を含めるには、適合性の問題から、上記のハイブリダイゼーション条件の修正を必要とする場合がある。
【0103】
本発明の核酸分子は、例えばDNA、cDNA、RNA、または合成により作製したDNAもしくはRNA、またはそれらのポリヌクレオチドのいずれかを単独でまたは組み合わせて含む、組換えにより作製したキメラ核酸分子であってよい。
【0104】
本発明はまた、本発明の上記核酸分子を含むベクターを提供する。
【0105】
多くの適切なベクターが分子生物学における当業者には周知であり、その選択は所望の機能に依存し、これにはプラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージ、および遺伝子操作で通常用いられる他のベクターが含まれる。当業者に周知の方法を用いて、種々のプラスミドおよびベクターを構築することができる;例えば、Sambrook, 「Molecular Cloning A Laboratory Manual」, Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N.Y.、およびAusubel, 「Current Protocols in Molecular Biology」, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1989), (1994)に記載されている技法を参照されたい。または、本発明のポリヌクレオチドおよびベクターを送達用リポソーム内に再構成して、細胞を標的することも可能である。以下でさらに詳述するように、DNAの個々の配列を単離するために、クローニングベクターを用いた。関連配列を、特定ポリペプチドの発現が求められる発現ベクターに移行することができる。典型的なクローニングベクターには、pBluescript SK、pGEM、pUC9、pBR322、およびpGBT9が含まれる。適切な発現ベクターには、pTRE、pCAL-n-EK、pESP-1、pOP13CATが含まれる。
【0106】
そのようなベクターに含まれる核酸分子はDNAである。
【0107】
本発明のベクターは、本発明の三量体ポリペプチド構築物の単量体をコードする核酸分子が、原核生物宿主および/または真核生物宿主において転写および任意に発現を可能にする1つまたは複数の制御配列に機能的に連結された発現ベクターであることが想定される。
【0108】
「制御配列」という用語は、それらが連結しているコード配列の発現をもたらすために必要な制御DNA配列を指す。
【0109】
そのような制御配列の性質は、宿主生物によって異なる。原核生物では、制御配列には一般に、プロモーター、リボソーム結合部位、およびターミネーターが含まれる。真核生物では一般に、制御配列にはプロモーター、ターミネーター、および場合によってはエンハンサー、トランス活性化因子、または転写因子が含まれる。「制御配列」という用語は、その存在が発現に必要であるすべての成分を最低限含むことが意図され、さらなる有利な成分を含んでもよい。
【0110】
「機能的に連結された」という用語は、そのように記載された成分が目的の様式で機能することを可能にする関係に並んでいることを指す。コード配列に「機能的に連結される」制御配列は、制御配列と適合した条件下でコード配列の発現が達成されるように連結される。制御配列がプロモーターである場合、二本鎖核酸が好ましく用いられることが当業者には明らかである。
【0111】
したがって、本発明のベクターは発現ベクターであることが好ましい。「発現ベクター」は、選択された宿主を形質転換するために用いられ得る構築物であり、選択された宿主においてコード配列の発現を提供する。発現ベクターは、例えばクローニングベクター、バイナリーベクター、または組み込み型ベクターであってよい。発現は、核酸分子の、好ましくは翻訳可能なmRNAへの転写を含む。原核細胞および/または真核細胞において発現を確実にする制御エレメントは、当業者には周知である。真核細胞の場合は、それらには通常、転写の開始を確実にするプロモーター、ならびに任意に転写の終結および転写産物の安定化を確実にするポリAシグナルが含まれる。原核宿主細胞において発現を可能にする制御エレメント候補には、例えば、大腸菌のPL、lac、trp、またはtacプロモーターが含まれ、真核宿主細胞において発現を可能にする制御エレメントの例としては、酵母のAOX1もしくはGAL1プロモーター、または哺乳動物細胞および他の動物細胞のCMV、SV40、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、CMVエンハンサー、SV40エンハンサー、もしくはグロビンイントロンが挙げられる。
【0112】
そのような制御エレメントには、転写の開始に関与するエレメントに加えて、ポリヌクレオチドの下流の、SV40-ポリA部位またはtk-ポリA部位等の転写終結シグナルもまた含まれ得る。さらに、使用する発現系に応じて、ポリペプチドを細胞内コンパートメントに導き得るまたは培地中に分泌し得るリーダー配列を、本発明のポリヌクレオチドのコード配列に加えてもよく、これについては当技術分野において周知である;例えば添付の実施例も参照されたい。リーダー配列は翻訳開始および翻訳終結配列と適切な状態で組み立てられ、リーダー配列は翻訳されたタンパク質またはその一部の分泌を細胞膜周辺腔または細胞外培地に導き得ることが好ましい。任意で、異種配列は、例えば発現された組換え産物の安定化または単純化した精製など、所望の特徴を付与するN末端同定ペプチドを含む融合タンパク質をコードし得る;前期を参照されたい。この関連において、Okayama-Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(In-vitrogene)、pEF-DHFRおよびpEF-ADA(Raum et al. Cancer Immunol Immunother (2001) 50(3), 141-150)、またはpSPORT1(GIBCO BRL)等の適切な発現ベクターが、当技術分野において周知である。
【0113】
発現制御配列は、真核宿主細胞を形質転換またはトランスフェクションし得るベクターにおいて真核生物プロモーター系であることが好ましいが、原核生物宿主の制御配列を用いてもよい。ベクターが適切な宿主に取り込まれたならば、ヌクレオチド配列の高レベル発現に適した条件下で宿主を維持し、所望に応じて、本発明のポリペプチドの回収および精製を行い得る;例えば、添付の実施例を参照されたい。
【0114】
細胞周期相互作用タンパク質を発現させるために使用し得る別の発現系は、昆虫系である。1つのそのような系では、Autographa californica多核体病ウイルス(AcNPV)をベクターとして使用し、Spodoptera frugiperda細胞またはTrichoplusia幼虫内で外来遺伝子を発現させる。ポリヘドリン遺伝子等のウイルスの非必須領域に本発明の核酸分子のコード配列をクローニングし、ポリヘドリンプロモーターの制御下に置くことができる。そのようなコード配列をうまく挿入することにより、ポリヘドリン遺伝子が不活化し、コートタンパク質コートを欠く組換えウイルスが産生されることになる。次いで、組換えウイルスを用いて、本発明のタンパク質を発現させるS. frugiperda細胞またはTrichoplusia幼虫に感染させる(Smith, J. Virol. 46 (1983), 584;Engelhard, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 91 (1994), 3224-3227)。
【0115】
さらなる制御エレメントには、転写エンハンサーおよび翻訳エンハンサーが含まれ得る。本発明の上記ベクターは、選択マーカーおよび/またはスコアマーカーを含むことが有利である。
【0116】
形質転換細胞および例えば植物組織および植物の選択に有用な選択マーカー遺伝子は、当技術分野において周知であり、これには例えば、メトトレキサート耐性を付与するdhfr(Reiss, Plant Physiol. (Life Sci. Adv.) 13 (1994), 143-149);アミノグリコシド系ネオマイシン、カナマイシン、およびパロマイシン耐性を付与するnpt(Herrera-Estrella, EMBO J. 2 (1983), 987-995)、およびハイグロマイシン耐性を付与するhygro(Marsh, Gene 32 (1984), 481-485)の選択を基礎とした代謝拮抗剤耐性が含まれる。さらなる選択遺伝子も記載されており、すなわち、細胞にトリプトファンに代えてインドールの利用を可能にするTrpB;細胞にヒスチジンに代えてヒスチノール(histinol)の利用を可能にするhisD(Hartman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85 (1988), 8407);細胞にマンノースの利用を可能にするマンノース-6-リン酸イソメラーゼ(WO 94/20627)、およびオルニチン脱炭酸酵素阻害剤、2-(ジフルオロメチル)-DL-オルニチン、DMSOに対する耐性を付与するODC(オルニチン脱炭酸酵素)(McConlogue, 1987: Current Communications in Molecular Biology, Cold Spring Harbor Laboratory ed.に含まれる)、またはブラストサイジンS耐性を付与するAspergillus terreus由来デアミナーゼ(Tamura, Biosci. Biotechnol. Biochem. 59 (1995), 2336-2338)である。
【0117】
有用なスコアマーカーもまた当業者には周知であり、市販されている。そのようなマーカーは、ルシフェラーゼ(Giacomin, Pl. Sci. 116 (1996), 59-72;Scikantha, J. Bact. 178 (1996), 121)、緑色蛍光タンパク質(Gerdes, FEBS Lett. 389 (1996), 44-47)、またはβ-グルクロニダーゼ(Jefferson, EMBO J. 6 (1987), 3901-3907)をコードする遺伝子であることが有利である。この態様は、本発明のベクターを含む細胞、組織、および生物の単純かつ迅速なスクリーニングに特に有用である。
【0118】
上記のように、本発明の核酸分子を単独でまたはベクターの一部として使用し、例えば遺伝子治療のために、本発明のポリペプチドを細胞内で発現させることができる。上記の三量体ポリペプチド構築物のいずれか1つをコードするDNA配列を含む核酸分子またはベクターを細胞に導入し、次にその細胞が関心対象のポリペプチドを産生する。遺伝子治療は、エクスビボまたはインビボ技法による細胞への治療遺伝子の導入に基づくものであり、遺伝子移入の最も重要な用途である。インビトロまたはインビボ遺伝子治療の適切なベクター、方法、または遺伝子送達系は文献に記載されており、当業者には周知である;例えば、Giordano, Nature Medicine 2 (1996), 534-539; Schaper, Circ. Res. 79 (1996), 911-919; Anderson, Science 256 (1992), 808-813; Verma, Nature 389 (1994), 239; Isner, Lancet 348 (1996), 370-374; Muhlhauser, Circ. Res. 77 (1995), 1077-1086; Onodera, Blood 91 (1998), 30-36; Verma, Gene Ther. 5 (1998), 692-699; Nabel, Ann. N. Y. Acad. Sci. 811 (1997), 289-292; Verzeletti, Hum. Gene Ther. 9 (1998), 2243-51; Wang, Nature Medicine 2 (1996), 714-716; WO 94/29469; WO 97/00957, US 5,580, 859; US 5,589, 466; またはSchaper, Current Opinion in Biotechnology 7 (1996), 635-640を参照されたい。本発明の核酸分子およびベクターは、細胞への直接導入、またはリポソームもしくはウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、レトロウイルス)を介した導入用に設計することができる。好ましくは、そのような細胞は、生殖系列細胞、胚細胞、もしくは卵子、またはそれに由来する細胞であり、最も好ましくはそのような細胞は幹細胞である。胚性幹細胞の例は、とりわけ、Nagy, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 (1993), 8424-8428に記載されている幹細胞であってよい。
【0119】
上記に従って、本発明は、本発明の三量体ポリペプチド構築物の単量体をコードする核酸分子を含むベクター、特に遺伝子操作において通常用いられるプラスミド、コスミド、ウイルス、およびバクテリオファージに関する。好ましくは、そのようなベクターは、発現ベクターおよび/または遺伝子伝達もしくは遺伝子ターゲティングベクターである。レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、またはウシパピローマウイルス等のウイルスに由来する発現ベクターを、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを標的細胞集団に送達するために用いることができる。当業者に周知の方法を用いて、組換えベクターを構築することできる;例えば、Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N.Y.、およびAusubel. Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1989)に記載されている技法を参照されたい。または、本発明の核酸分子およびベクターを送達用リポソーム内に再構成して、細胞を標的することも可能である。本発明の核酸を含むベクターは周知の方法によって宿主細胞に移入することができ、その方法は細胞宿主の種類によって変わる。例えば、原核細胞に対しては塩化カルシウムトランスフェクションが一般に用いられ、一方、他の細胞宿主に対してはリン酸カルシウム処理またはエレクトロポレーションが用いられ得る;例えば、Sambrook、前記を参照されたい。本発明のベクターは、pEF-DHFRまたはPEF-ADAであってよい。
【0120】
ベクターpEF-DHFRおよびPEF-ADAは、当技術分野において、例えばMack et al.(PNAS (1995) 92, 7021-7025)およびRaum et al.(Cancer Immunol Immunother (2001) 50(3), 141-150)に記載されている。
【0121】
本発明はさらに、本発明の少なくとも1つのベクターまたは少なくとも1つの核酸分子を含む宿主に関する。
【0122】
そのような宿主は、少なくとも1つのベクターまたは少なくとも1つの核酸分子を宿主に導入することによって作製され得る。宿主におけるそのような少なくとも1つのベクターまたは少なくとも1つの核酸分子の存在によって、本発明の三量体ポリペプチド構築物の単量体をコードする遺伝子の発現が媒介される。
【0123】
宿主内に存在する本発明の核酸分子またはベクターは、宿主のゲノム内に組み込まれても、染色体外で維持されてもよい。
【0124】
宿主は任意の原核細胞であっても真核細胞であってもよい。
【0125】
「原核生物」という用語は、本発明のタンパク質を発現させるためにDNAまたはRNA分子で形質転換またはトランスフェクションされ得るすべての細菌を含むことが意図される。原核生物宿主には、例えば、大腸菌、ネズミチフス菌、霊菌、および枯草菌等のグラム陰性菌およびグラム陽性菌が含まれる。「真核生物」という用語は、酵母、高等植物、昆虫、および好ましくは哺乳動物細胞を含むことが意図される。本発明のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質は、組換え体を産生する手順で用いる宿主に応じて、グリコシル化されてもグリコシル化されなくてもよい。特に好ましいのは、本発明のポリペプチドのコード配列を含み、これにN末端FLAGタグおよび/またはC末端Hisタグが遺伝子的に融合したプラスミドまたはウイルスの使用である。好ましくは、FLAGタグの長さは約4〜8アミノ酸であり、最も好ましくは8アミノ酸である。当業者に周知の技法のいずれかにより、本発明のポリヌクレオチドを用いて、宿主を形質転換またはトランスフェクションすることができる。さらに、融合され機能的に連結された遺伝子を調製し、それらを例えば哺乳動物細胞および細菌内で発現させる方法は、当技術分野において周知である(Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, ニューヨーク州、コールドスプリングハーバー、1989)。
【0126】
好ましい態様において、宿主は細菌、昆虫、真菌、植物、または動物細胞である。
【0127】
好ましくは、本発明の宿主は哺乳動物細胞、より好ましくはヒト細胞またはヒト細胞株であることが想定される。
【0128】
特に好ましい宿主細胞には、CHO細胞、COS細胞、SP2/0またはNS/0のような骨髄腫細胞株が含まれる。
【0129】
本発明の別の態様は、本発明の三量体ポリペプチド構築物の発現を可能にする条件下で本発明の宿主を培養する段階、および培養液から産生されたポリペプチド構築物を回収する段階を含む、本発明の三量体ポリペプチド構築物を産生する方法に関する。
【0130】
形質転換した宿主は、当技術分野において周知の技法に従って発酵槽で増殖させおよび培養して、最適な細胞増殖を実現することができる。次いで、本発明のポリペプチドを培地、細胞溶解液、または細胞膜画分から単離することができる。例えば、微生物で発現させた本発明のポリペプチドの単離および精製は、例えば分取クロマトグラフィー分離、および本発明のポリペプチドのタグに対して作製されたモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体の使用を含むような、または添付の実施例に記載するような免疫学的分離等の任意の従来手段によってよい。
【0131】
発現を可能にする宿主の培養条件は、そのような方法で使用する宿主系および発現系/ベクターに依存して当技術分野において周知である。組換えポリペプチドの発現を可能にする条件を達成するために修正されるパラメータは、当技術分野において周知である。したがって、さらに本発明の提供がない場合には、適切な条件は当業者によって決定され得る。
【0132】
本発明のポリペプチド構築物が発現されたならば、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動等の、当技術分野の標準的な手順に従ってこれを精製することができる;Scopes,「Protein Purification」, Springer-Verlag, N.Y. (1982)を参照されたい。薬学的用途には、少なくとも均一性約90〜95%の実質的に純粋なポリペプチドが好ましく、98〜99%またはそれ以上の均一性が最も好ましい。ポリペプチドが部分的にまたは所望の均一性まで精製されたならば、次にこれを治療に(体外を含め)、またはアッセイ手順の開発および実行に用いることができる。さらに、培養液から本発明の三量体ポリペプチド構築物を回収する方法の例を、添付の実施例に記載する。
【0133】
好ましくは、本発明の方法における発現により、少なくとも90%の三量体化率、および産生されたポリペプチド構築物の培養液からの回収がもたらされる。より好ましくは三量体化率は少なくとも95%であり、最も好ましくは少なくとも99%である。
【0134】
ポリペプチドの三量体化率を決定する方法は、当技術分野において周知である。適切な方法の一例を添付の実施例1に詳細に記載し、そのような決定の結果をず6に示す。
【0135】
本発明はまた、本発明の三量体ポリペプチド構築物、本発明の方法によって産生される三量体ポリペプチド構築物、本発明の核酸分子、本発明のベクター、または本発明の宿主、および任意で免疫エフェクター細胞の活性化シグナルを提供し得るタンパク質様化合物を含む組成物を提供する。
【0136】
本発明の観点から、免疫エフェクター細胞の活性化シグナルを提供するそのような「タンパク質様化合物(proteinaceous compound)」は、例えばT細胞の初期活性化シグナルであってよい。タンパク化合物の好ましい形式には、例えば二重特異性scFvのような二重特異性抗体およびその断片または誘導体が含まれる。T細胞のそのような初期活性化シグナルは、好ましくはT細胞受容体(TCR)を介して、より好ましくはTCRのCD3分子を介して提供され得る。タンパク化合物には、これらに限定されないが、CD3に特異的なscFv断片、T細胞受容体または超抗原に特異的なscFv断片が含まれる。超抗原は、MHC非依存的様式で特定のサブファミリーのT細胞受容体可変領域に直接結合し、それにより初期T細胞活性化シグナルを媒介する。タンパク化合物はまた、非T細胞である免疫エフェクター細胞の活性化シグナルを提供してもよい。非T細胞である免疫エフェクター細胞の例には、とりわけB細胞およびNK細胞が含まれる。
【0137】
本発明はまた、本発明のこれら上記の三量体ポリペプチド構築物、核酸分子、ベクター、または宿主、および任意に免疫エフェクター細胞の活性化シグナル能を有する上記タンパク化合物を含む薬学的組成物である組成物に関する。
【0138】
薬学的組成物である本発明の組成物は、免疫エフェクター細胞の活性化シグナル能を有する上記タンパク化合物と同時にまたは別に投与することができる。
【0139】
本発明のさらに好ましい態様において、薬学的組成物である組成物は、適切な担体製剤、安定剤、および/または賦形剤をさらに含む。
【0140】
適切な薬学的担体の例は当技術分野において周知であり、リン酸緩衝食塩水、水、油/水エマルジョン等の乳濁液、種々の種類の湿潤剤、無菌溶液等がこれに含まれる。そのような担体を含む組成物は、周知の従来法によって製剤化し得る。これらの薬学的組成物は、適切な用量で被験体に投与することができる。適切な組成物の投与は、例えば静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所、または皮内投与等の異なる方法によって実施し得る。投与計画は、主治医および臨床的要因により決定されることになる。医療分野で周知のように、任意の一患者への投与量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与する特定の化合物、性別、投与時間および投与経路、一般的な健康状態、ならびに同時に投与する他の薬剤を含む、多くの要因に依存する。一般に、薬学的組成物の定期的投与としての計画は、1μg〜10 mg単位/日の範囲であるべきである。投与計画が持続注入の場合は、それぞれ1μg〜10 mg単位/キログラム体重/分の範囲であるべきである。しかし、持続注入のより好ましい投与量は、0.01μg〜10 mg単位/キログラム体重/時間の範囲であると考えられる。特に好ましい投与量を以下に列挙する。定期的に評価することにより、進行状況をモニターすることができる。投与量は変動するが、DNAの静脈内投与の好ましい投与量は、DNA分子約106〜1012コピーである。本発明の組成物は、局所的に投与しても全身投与してもよい。投与は一般に、非経口投与、例えば静脈内投与である;DNAは、例えば標的部位内部または外部への遺伝子銃送達による、または動脈内の部位へのカテーテルによるなど、標的部位に直接投与してもよい。非経口投与用製剤には、滅菌水溶液または非水溶液、懸濁物、および乳濁液が含まれる。非水溶性溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、オレイン酸エチル等の注射可能な有機エステルが挙げられる。水溶性担体には、水、アルコール/水溶液、乳濁液、または食塩水および緩衝培地を含む懸濁液が含まれる。非経口賦形剤には、塩化ナトリウム溶液、ブドウ糖リンゲル液、ブドウ糖および塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、リンガー液、または固定油が含まれる。静脈注射賦形剤には、液体および栄養補充剤、電解質補充剤(ブドウ糖リンゲル液に基づくような)等が含まれる。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガス等の保存剤および他の添加剤もまた存在してよい。さらに、本発明の薬学的組成物は、例えば好ましくはヒト由来の血清アルブミンまたは免疫グロブリンのようなタンパク質性担体を含み得る。さらに、本発明の薬学的組成物は、薬学的組成物の目的の用途に応じて、生物活性物質をさらに含むことが想定される。このような物質は、胃腸系に作用する薬剤、細胞増殖抑制剤(cytostatica)として作用する薬剤、高尿酸血症を予防する薬剤、および/または当技術分野において周知のT細胞共刺激分子もしくはサイトカイン等の薬剤であってよい。
【0141】
本発明の三量体構築物を投与することが考えられる適応症は、腫瘍性の疾患、特に乳癌、結腸癌、前立腺癌、卵巣癌、もしくは肺癌等の上皮癌、または血液腫瘍、グリア細胞腫、肉腫、もしくは骨肉腫のような他の腫瘍性疾患である。本発明の構築物の投与は、特に、単一細胞の残存によって生じる腫瘍の局所的および非局所的再発を特徴とする微小残存病変に適応される。アジュバント化学療法等の微小残存病変に対する従来の治療方法に関連する問題は、分裂細胞のみが排除される点である。したがって、単一の腫瘍細胞が休止/活力欠如状態で化学療法をしのぎ、その後新たな増殖腫瘍を形成する可能性がある。本発明の構築物を投与することが考えられるさらなる適応症には、自己免疫疾患、特にT細胞介在性自己免疫疾患、炎症性疾患(抗原特異的T細胞活性化)、感染症、特に細菌および真菌感染、ウイルス性疾患(長期ワクチン治療)、アレルギー反応、寄生虫反応、移植片対宿主病、移植片拒絶反応が含まれ得る。
【0142】
本発明はさらに、他の化合物、例えば二重特異性抗体構築物、標的トキシン、またはT細胞を介して作用する他の化合物との併用投与手順も想定する。本発明の化合物を併用投与するための臨床的投与計画には、他の成分の投与と同時、他の成分の投与前、または投与後の併用投与が包含され得る。
【0143】
本発明の三量体構築物を修飾または誘導体化することも可能である。これに相当する修飾には、本発明の構築物またはそれらの単量体の結合特異性、結合活性、半減期等を改善するための組換えDNA技術の使用が含まれ得る。構築物の残存抗原性の可能性を減じることもまた想定される。
【0144】
本発明の構築物の有効性/活性を実証するための考えられ得るアプローチは、マウスのようなインビボモデルである。適切なモデルは、Ag104A(骨肉腫)マウスモデルであってよい(その細胞株は、Wick et al. J. Exp. Med. 186 (2), 1997年7月21日、229-238に記載されている)。Ag104Aは、腫瘍特異的細胞表面抗原を提示するマウス線維肉腫細胞株である(PW237抗体がWard et al., 1989, J. Exp. Med. 第170巻、217-232に公表されている)。このマウスモデルを用いて、トランスフェクションしたAG104A細胞のインビボ腫瘍退縮を試験することができる。そのような実験は、C3H/HeN MMTV-マウスの背中に皮下注射するように設計される。
【0145】
本明細書に詳述するように、本発明の薬学的組成物は、医学的介入を必要とする患者(好ましくはヒト患者)に投与し得る。薬学的組成物は、単独でまたは他の薬物/薬学的組成物と組み合わせて投与することができる。これらのさらなる薬物/薬学的組成物は、本発明の薬学的組成物と同時にまたは別に投与することができる。
【0146】
または本発明は、好ましい態様において、任意に検出手段および検出法をさらに含む診断組成物である組成物に関する。
【0147】
本発明のさらに別の態様は、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫障害、自己免疫疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫反応、移植片対宿主病、または宿主対移植片病を予防、治療、または改善する薬学的組成物を調製するための、本発明の三量体ポリペプチド構築物もしくは本発明の方法によって産生される三量体ポリペプチド構築物、本発明の核酸分子、本発明のベクター、または本発明の宿主の使用に関する。
【0148】
さらに好ましいそのような腫瘍性疾患は、上皮癌または微小残存癌である。
【0149】
本発明の種々の三量体ポリペプチド構築物、核酸分子、およびベクターを、標準的なベクターおよび/または遺伝子送達系を用いて、任意に薬学的に許容される担体または賦形剤と共に、単独でまたは任意の組み合わせで投与することが、本発明によって想定される。投与後、そのような核酸分子またはベクターは、被験体のゲノム内に安定に組み込まれ得る。
【0150】
一方、特定の細胞または組織に特異的であり、そのような細胞内にとどまるウイルスベクターを使用してもよい。適切な薬学的担体および賦形剤は、当技術分野において周知である。本発明に従って調製される薬学的組成物は、上記の疾患を予防するまたは治療するまたは遅延させるために用いることができる。
【0151】
さらに、本発明の核酸分子またはベクターを含む本発明の薬学的組成物を遺伝子治療において用いることが可能である。適切な遺伝子送達系には、リポソーム、受容体介在性送達系、裸のDNA、および特にヘルペスウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス等のウイルスベクターが含まれ得る。遺伝子治療のための、体内の特定部位への核酸の送達は、Williams(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88 (1991), 2726-2729)に記載されているような遺伝子銃送達系を用いても達成され得る。核酸を送達するためのさらなる方法には、例えばVerma, Gene Ther. 15 (1998), 692-699に記載されているような粒子介在性遺伝子移入が含まれる。
【0152】
さらに本発明は、そのような予防、治療、または改善を必要とする被験体に、本発明の三量体ポリペプチド構築物もしくは本発明の方法によって産生される三量体ポリペプチド構築物、本発明の核酸分子、本発明のベクター、または本発明の宿主を投与する段階を含む、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫障害、自己免疫疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫反応、移植片対宿主病、または宿主対移植片病を予防、治療、または改善する方法に関する。
【0153】
好ましくは、そのような腫瘍性疾患は上皮癌または微小残存癌である。そのような上皮癌は、例えば、以下の細胞表面分子の過剰発現を特徴とし得る乳癌および他の腺癌である:
Her-2 (Arteaga, Semin Oncol 2002 Jun; 29 (3 Suppl 11): 4-10; Wester, Acta Oncol 2002 ; 41 (3): 282-8); EpCAM (Naundorf, Int J Cancer 2002 Jul 1; 100 (1) : 101-10), EGFR (Liu, Br J Cancer 2000 Jun; 82 (12): 1991-9), CEA (Stewart, Cancer Immunol Immunother 1999 Feb; 47 (6): 299-306; Durbin, Proc Natl Acad Sci U S A 1994 May 10; 91 (10): 4313-7), TAG-72 (腫瘍関連糖タンパク質 = > sTn 抗原) (Kashmiri, Crit Rev Oncol Hematol 2001 Apr; 38 (1) : 3-16), MUC-1 (ムチン) (Couto, Adv Exp Med Biol 1994; 353: 55-9), Sonic Hedgehog (Shh) (Lacour, Br J Dermatol 2002 Apr; 146 Suppl 61: 17-9; Tojo, Br J Dermatol 2002 Jan; 146 (1) : 69- 73)。さらなる上皮癌は、以下の分子;EGFR(Bonner, Semin Radiat Oncol 2002 July; 12: 11-20;Kiyota, Oncology 2002; 63 (1): 92-8)、CD44v6(Rodrigo, Am J Clin Pathol 2002 Jul;118(1):67-72;Fonseca, J Surg Oncol 2001 Feb;76(2):115-20)の過剰発現を特徴とする頭頚部癌、PSMA(Fracasso, Prostate 2002 Sep 15;53(1):9-23)、STEAP(Hubert, Proc Natl Acad Sci U S A 1999 De 7;96(25):14523-8)、PSCA(前立腺幹細胞抗原)(Jalkut, Curr Opin Urol 2002 Sep;12(5):401-6)の過剰発現を特徴とし得る前立腺癌、ガングリオシドGD3(Brezicka, Lung Cancer 2000 Apr;28(1):29-36;Sheperd, Semin Oncol 2001 Apr;28(2 Suppl 4):30-7)の過剰発現を特徴とし得るSCLC(小細胞肺癌)、メソテリン(mesothelin)発現(Scholler, Proc Natl Acad Sci U S A 1999 Sep 28;96(20):11531-6;Brinkmann, Int J Cancer 1997 May 16;71(4):638-44)、CA-125(Hogdall, Anticancer Res 2002 May-Jun;22(3):1765-8)、ミュラー管抑制物質(MIS)受容体II型(Stephen, Clin Cancer Res 2002 Aug;8(8):2640-6)を特徴とし得る卵巣癌、Eカドヘリンネオエピトープ(Becker, Surg Oncol 2000 Jul;9(1):5-11)の発現を特徴とし得る胃癌、Lewis-Y(Flieger, Clin Exp Immunol 2001 Jan;123(1):9-14;Power, Cancer Immunol Immunother 2001 Jul;50(5):241-50)、A33抗原(Heath, Proc Natl Acad Sci U S A 1997 Jan 21;94(2):469-74)の発現を特徴とし得る結腸癌、炭酸脱水酵素IX (MN/CA IX)(Uemura, Br J Cancer 1999 Oct;81(4);741-6)の発現を特徴とし得る腎細胞癌、CA19-9マーカー(Brockmann, Anticancer Res 2000 Nov-Dec;20(6D):4941-7)の発現を特徴とし得る膵癌のような扁平上皮細胞癌である。さらに、Lewis-Yの発現を特徴とする多くの上皮癌が存在する(Power, Cancer Immunol Immunother 2001 Jul;50(5):241-50)。
【0154】
本発明により予防、治療、または改善される微小残存疾患は、CD44v6(Rodrigo, Am J Clin Pathol 2002 Jul;118(1):67-72;Fonseca, J Surg Oncol 2001 Feb;76(2):115-20)の発現を特徴とし得る転移性疾患である。
【0155】
適用する被験体がヒトであることも好ましい。
【0156】
本発明の予防、治療、または改善する方法は、免疫エフェクター細胞の活性化シグナル能を有する上記のタンパク化合物を被験体に併用投与する段階を含み得る。併用投与は、同時に併用投与しても別に併用投与してもよい。
【0157】
最終的に、本発明は、本発明の三量体ポリペプチド構築物もしくは本発明の方法によって産生される三量体ポリペプチド構築物、本発明の核酸分子、本発明のベクター、または本発明の宿主を含むキットに関する。本発明のキットは、上記の薬学的組成物を単独で、または医学的治療もしくは介入を必要とする患者に投与すべきさらなる薬物と組み合わせて含むことも想定される。
【0158】
以下の生物学的実施例を参照することにより本発明を説明するが、この実施例は単なる説明に過ぎず、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0159】
実施例1
scFv抗237 - マウス4-1BBリガンド構築物の作製
マウス4-1BBリガンドのcDNAをマウス脾細胞から単離した。標準的な手順に従って、全RNAの単離およびランダムプライミング逆転写によるcDNA合成を行った(Sambrock, Molecular Cloning; A Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbour laboratory Press, ニューヨーク州、コールドスプリングハーバー、(1989))。PCR(1サイクル目は93℃で5分間変性、58℃で1分間アニーリング、72℃で1分間伸長;93℃で1分間変性、58℃で1分間アニーリング、72℃で1分間伸長を30サイクル;最終的に72℃で5分間伸長)を用いて、マウス4-1BBリガンドの細胞外ドメインのコード配列を増幅した。PCRに使用したプライマー:
は、マウス4-1BBリガンドの細胞外部分をコードするcDNAの初めおよび終わりに制限部位が導入されるように設計した(配列番号:3および4)。導入した制限部位、BamHIおよびBspEIは、以下のクローニング手順で利用した。次いで、マウス4-1BBリガンドの細胞外部分をコードする増幅されたcDNAを、BamHIおよびBspEIを介して、6つの連続したヒスチジン残基であるポリヒスチジンタグおよびその後の終止コドンをコードするC末端に配列を付加するBSCTIと称するプラスミドにクローニングした(BSCTIは、Kufer et al. Cancer immunity 第1巻、p.10 (2001年11月12日)に記載されている)。この段階で、cDNAのBspEI部位はプラスミドのXmaI部位と融合し、これによってどちらの部位も損なわれた。また、BSCTIにクローニングすることにより、グリシン-セリンリンカー[(Ser-Gly4-Ser)1]をコードする配列も4-1BBリガンド配列のN末端に付加された。標準的な手順に従って配列決定することにより、様々なクローンの配列を決定した(Sambrock, Molecular Cloning; A Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbour laboratory Press, ニューヨーク州、コールドスプリングハーバー、(1989))。次に、pEFDHFRと称するプラスミドに、修飾し確認したcDNA配列をクローニングした(pEFDHFRは、Mack et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995) 7021-7025)に記載されている)。このプラスミドは元のpEFDHFRとは異なり、AG104Aと称するマウス肉腫細胞株(この細胞株については、Wick et al. J. Exp. Med. 第186巻、第2号、1997年7月21日、229-238)に記載されている)上の腫瘍特異的細胞表面抗原に結合する237一本鎖抗体(親の抗237抗体はPW237として、Ward et al., 1989, J. Exp. Med. 第170巻、217-232に公表されている;配列番号:5および6)をコードするcDNA配列を既に含んでいた。237 cDNA配列は、真核細胞において分泌発現が可能となるようプラスミド内に位置していた。マウス4-1BBリガンドのcDNAをpEFDHFRにクローニングするためには、制限酵素BspEIおよびSalIを用いた。修飾した4-1BBリガンド配列では、BspEIの認識配列は上記グリシン-セリンリンカーの初めに位置し、SalIの認識部位は、ポリヒスチジンタグの後に続く終止コドンの後に位置する。記載したクローニング段階により、マウス4-1BBリガンドの細胞外部分のcDNAが、237一本鎖抗体のcDNAの3'末端に融合された。このプラスミドは、抗237一本鎖抗体をコードするcDNA配列およびその後に続くマウス4-1BBリガンドの細胞外部分をコードする配列からなる二機能性構築物を含んだ(図3)。配列番号:7および8は、Hisタグを含まない構築物の配列を示す。クローニング段階はすべて、二機能性構築物のリーディングフレームが損なわれず作製されるように設計した。
【0160】
scFv抗237 - マウス4-1BBリガンド構築物の発現
構築物を真核生物で発現させるため、二機能性構築物をコードする配列を有するプラスミドを、DHFR欠損CHO細胞にトランスフェクションした(pEFDHFRはMack et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995) 7021-7025に記載されており、DHFR欠損CHO細胞における真核生物タンパク質発現は、Kaufmann R.J. (1990) Methods Enzymol. 185, 537-566に記載されている通りに行った)。MTX濃度を最終濃度500 nM MTXまで上げて、構築物の遺伝子増幅を誘導した。次いで、トランスフェクションした細胞を拡大し、精製のための上清を取得した。
【0161】
scFv抗237 - マウス4-1BBリガンド構築物の精製
陽イオン交換クロマトグラフィー(図4)、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)(図5)、およびゲルろ過(図6)を含む3段階の精製過程で、抗237 scFv - マウス4-1BBリガンド構築物タンパク質を細胞培養上清から単離した。クロマトグラフィーには、Akta FPLCシステムおよびGradiFrac(Pharmacia、ドイツ、Tennenlohe)およびUnicornソフトウェアを使用した。化学薬品はすべて研究グレードのものであり、Sigma(ドイツ、ダイゼンホッフェン)またはMerck(ドイツ、ダルムシュタット)から購入した。
【0162】
陽イオン交換は、緩衝液A1(20 mM MES pH 5.5)で平衡化したSPセファロースカラム(Pharmacia、ドイツ、Tennenlohe)で行った。細胞培養上清を緩衝液A1で1:3希釈し、4℃で流速20 ml/minでカラム(ベッドサイズ300 ml、製造業者の手順に従ってXKカラム、Pharmaciaに充填)に供した。緩衝液A1で非結合の試料を洗浄し、2 CV量の25%、50%、および100%緩衝液B1(200 mM MES pH 5.5、1 M NaCl)の3段階勾配で、結合したタンパク質を溶出した。50% B1段階から溶出されたタンパク質画分をさらなる精製のためにプールした(図4)。
【0163】
製造業者の手順に従って、NiSO4を予め供したHisTrap 5 mlカラム(Pharmacia、ドイツ、Tennenlohe)を用いてIMACを行った。緩衝液A2(20 mM NaPP pH 7.2、0.4 M NaCl)でカラムを平衡化した。試料を1 ml/minの流速でカラムに供し、カラムを緩衝液A2で洗浄して非結合試料を除去した。各段階4カラム体積の緩衝液B2(20 mM NaPP pH 7.0、0.4 M NaCl、0.5 Mイミダゾール)の3段階勾配、段階1:10%緩衝液B2、段階2:30%緩衝液B2、段階3:100%緩衝液B2を用いて、結合タンパク質を溶出した。3段階目で溶出されたタンパク質画分をさらなる精製のためにプールした(図5)。
【0164】
ゲルろ過クロマトグラフィーは、PBS(Gibco Invitrogen Corp.、米国、カールズバッド)で平衡化したセファデックスS200 HiPrepカラム(Pharmacia、ドイツ、Tennenlohe)で行った(図6)。分子量決定のため、カラムを予めキャリブレーションした(分子量マーカーキットMW GF-200、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、ドイツ、ミュンヘン)。検出のため、溶出されたタンパク質試料(流速1 ml/min)をSDS-Pageおよびウェスタンブロットに供した。タンパク質濃度は、280 nmの吸収値をモル吸収係数と共に用いて決定した。最終産物は、SDS-PAGE(図7)およびウェスタンブロット(図8)において、みかけの分子量約50 kDaを有する。
【0165】
既製の4〜12% Bis Trisゲル(Invitrogen GmbH、ドイツ、カルルスルーエ)を用いて、還元条件下でSDS PAGEを行った。試料調製および共試は、製造業者の手順に従った。MultiMarkタンパク質標準物質(Invitrogen GmbH、ドイツ、カルルスルーエ)を用いて、分子量を決定した。Invitrogenの手順に従い、ゲルをコロイドクーマシーで染色した。
【0166】
BioTrace膜(Pall Life Sciences)およびInvitrogenブロットモジュールを用いて、製造業者の手順に従ってウェスタンブロットを行った。使用した抗体は、Penta His(Quiagen)およびヤギ抗マウスAP(Sigma)であり、染色剤はBCIP/NBT液(Sigma)であった。
【0167】
結論として、ゲルろ過クロマトグラフィーで認められたピークの分子量は150 kDaである。これは、SDS PAGE(図7)およびウェスタンブロット(図8)で認められる50 kDaという単量体の分子量の3倍に相当する。これは、抗237 scFv - 4-1BBリガンド構築物の三量体型に相当する。これらの結果から、本発明のポリペプチド構築物が三量体であることが明らかに示される。
【0168】
単離されたタンパク質の純度は、SDS-PAGE(図7)から決定して>95%であった。精製タンパク質の最終収量は、約5.5 mg/l細胞培養上清であった。
【0169】
Ag104A細胞におけるscFv抗237結合のFACSアッセイ
精製された二機能性構築物の、AG104A細胞株上の腫瘍特異的細胞表面抗原に対する結合を、FACSアッセイにより試験した。そのために、2% FCSを添加したPBS 50μl中、2.5*105個の細胞を10μg/ml構築物と共にインキュベートした。2% FCSを添加したPBS 50μl中、2μg/mlの抗His抗体(Quiagen GmbH、ドイツ、ヒルデンから入手したPenta-His抗体、BSAフリー)により、構築物の結合を検出した。第二段階の試薬として、2% FCSを添加したPBS 50μlで1:100希釈したR-フィコエリトリン結合アフィニティー精製F(ab')2断片、ヤギ抗マウスIgG、Fcγ断片特異的抗体(Dianova、ドイツ、ハンブルクから入手)を用いた。FACSscan(BD biosciences、ドイツ、ハイデルベルク)で試料を測定した。抗原結合が明らかに検出された(図9)。
【0170】
構築物の4-1BBリガンド部分の検出
構築物の4-1BBリガンド部分の存在を、FACSに基づくアッセイにより実証した。そのために、マウス4-1BBリガンドの表面発現を示さないAG104A細胞を用いた。2% FCSを添加したPBS 50μl中、2.5*105個の細胞を10μg/ml構築物と共にインキュベートした。2% FCSを添加したPBS 50μl中、5μg/mlの抗マウス4-1BBリガンド抗体(BD biosciences、ドイツ、ハイデルベルクから入手した精製ラット抗マウス4-1BBリガンドモノクローナル抗体)により、4-1BBリガンド部分の存在を検出した。第二段階の試薬として、2% FCSを添加したPBS 50μlで1:100希釈したR-フィコエリトリン結合アフィニティー精製F(ab')2断片、ヤギ抗ラットIgG、Fcγ断片特異的抗体(Dianova、ドイツ、ハンブルク)を用いた。FACSscan(BD biosciences、ドイツ、ハイデルベルク)で試料を測定した。構築物の結合に起因する、AG104A細胞上の4-1BBリガンド抗原の存在が明らかに検出された(図10)。
【0171】
実施例2
ヒト4-1BBリガンドのクローニング
(de Baey et al. Eur J Immunol 2001 Jun; 31(6):1646-55に記載されている通りに)GM-CSFおよびIL-4を用いた刺激により樹状細胞に分化させたヒト単球から、ヒト4-1BBリガンドのcDNAを単離した。標準的な手順に従って、全RNAの単離およびランダムプライミング逆転写によるcDNA合成を行った(Sambrock, Molecular Cloning; A Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbour laboratory Press, ニューヨーク州、コールドスプリングハーバー、(1989))。PCR(1サイクル目は96℃で5分間変性、58℃で1分間アニーリング、72℃で1分間伸長;96℃で1分間変性、58℃で1分間アニーリング、72℃で1分間伸長を30サイクル;最終的に72℃で5分間伸長)を用いて、ヒト4-1BBリガンドの細胞外ドメインのコード配列を増幅した。PCRに使用したプライマー:
は、ヒト4-1BBリガンドの細胞外部分をコードするcDNAの初めおよび終わりに制限部位が導入されるように設計した(配列番号:11および12)。導入した制限部位、BamHIおよびBspEIは、以下のクローニング手順で利用した。次いで、ヒト4-1BBリガンドの細胞外部分をコードする増幅されたcDNAを、BamHIおよびBspEIを介して、6つの連続したヒスチジン残基であるポリヒスチジンタグおよびその後の終止コドンをコードするC末端に配列を付加するBSCTIと称するプラスミドにクローニングした(BSCTIは、Kufer et al. Cancer immunity 第1巻、p.10 (2001年11月12日)に記載されている)。この段階で、cDNAのBspEI部位はプラスミドのXmaI部位と融合し、これによってどちらの部位も損なわれた。また、BSCTIにクローニングすることにより、グリシン-セリンリンカー[(Ser-Gly4-Ser)1]をコードする配列も4-1BBリガンド配列のn末端に付加された(リンカー配列)。標準的な手順に従って配列決定することにより、様々なクローンの配列を決定した(Sambrock, Molecular Cloning; A Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbour laboratory Press, ニューヨーク州、コールドスプリングハーバー、(1989))。
【0172】
B7.1 - 抗EpCAM scFv (4-7) - ヒト4-1BBリガンド構築物の作製
次に、B7.1/4-7 pEFDHFRと称するプラスミドに(Kufer et al. Cancer immunity 第1巻、p.10 (2001年11月12日)に記載されている)、ヒト4-1BBリガンドをコードする修飾し確認したcDNA配列を4-7断片に置き換えてクローニングした。このために、制限酵素BspEIおよびSalIを用いた。修飾した4-1BBリガンド配列では、BspEIの認識配列は上記グリシン-セリンリンカーの初めに位置し、SalIの認識部位は、ポリヒスチジンタグの後に続く終止コドンの後に位置する。プラスミドB7.1/4-7 pEFDHFRは、ヒトB7.1分子の細胞外ドメインをコードするcDNA配列を含む。この配列は、真核細胞において発現が可能となるようプラスミド内に位置していた。記載したクローニング段階により、ヒト4-1BBリガンドの細胞外部分のcDNAが、B7.1のcDNAに融合された。B7.1と4-1BBリガンド配列との間に位置するBspEI部位に、EpCAM抗原の細胞外部分に結合する4-7一本鎖抗体をコードする別の配列を挿入した。このために、PCR(1サイクル目は93℃で5分間変性、58℃で1分間アニーリング、72℃で1分間伸長;93℃で1分間変性、58℃で1分間アニーリング、72℃で1分間伸長を30サイクル;最終的に72℃で5分間伸長)を用いて、4-7一本鎖抗体をコードする配列を修飾した。このPCRのために作製したプライマーセット:
は、2つの隣接BsPEI部位が作製されるように設計した。PCRでは、鋳型中に存在する4-7一本鎖抗体に結合されたN末端グリシン-セリンリンカー[(Ser-Gly4-Ser)1]をコードする配列が保持された。次いで、増幅した配列を上記のBspEI部位にクローニングした。標準的な手順に従って配列決定することにより、挿入物の向きおよび配列を確認した(Sambrock, 「Molecular Cloning; A Laboratory Manual」, 第2版、Cold Spring Harbour laboratory Press, ニューヨーク州、コールドスプリングハーバー、(1989))。このプラスミドは、4-7一本鎖抗体をコードする配列およびその後に続くヒト4-1BBリガンドの細胞外部分をコードする配列に融合された、ヒトB7.1の細胞外部分を含む三機能性構築物を含んだ。クローニング段階はすべて、三機能性構築物のリーディングフレームが損なわれず作製されるように設計した(図11)。配列番号:15および16は、Hisタグを含まない構築物の配列を示す。
【0173】
CHO細胞におけるB7.1 - 抗EpCAM scFv (4-7) -ヒト4-1BBリガンド構築物の発現
構築物を真核生物で発現させるため、三機能性構築物をコードする配列を有するプラスミドを、DHFR欠損CHO細胞にトランスフェクションした(pEFDHFRはMack et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995) 7021-7025に記載されており、DHFR欠損CHO細胞における真核生物タンパク質発現は、Kaufmann R.J. (1990) Methods Enzymol. 185, 537-566に記載されている通りに行った)。MTX濃度を最終濃度100 nM MTXまで上げて、構築物の遺伝子増幅を誘導した。次に、トランスフェクションした細胞を拡大し、上清10リットルを取得した。最終的に、培養上清から構築物を精製した(精製は、Kufer et al. Cancer immunity 第1巻、p.10 (2001年11月12日)に記載されている通りに行った)。
【0174】
EpCAM結合のアッセイ
精製された三機能性構築物の、EpCAM抗原の細胞外部分に対する結合を、FACSアッセイにより試験した。そのために、EpCAM陽性ヒト胃癌細胞株Kato III(American Type Culture Collection (ATCC)、米国20108バージニア州、マナッサスから入手、ATCC番号:HTB-103)を用いた。供給者の推奨に従って細胞を培養し、2% FCSを添加したPBS 50μl中、2.5*105個の細胞を10μg/ml構築物と共にインキュベートした。2% FCSを添加したPBS 50μl中、2μg/mlの抗His抗体(Quiagen GmbH、ドイツ、ヒルデンから入手したPenta-His抗体、BSAフリー)により、構築物の結合を検出した。第二段階の試薬として、2% FCSを添加したPBS 50μlで1:100希釈したR-フィコエリトリン結合アフィニティー精製F(ab')2断片、ヤギ抗マウスIgG、Fcγ断片特異的抗体(Dianova、ドイツ、ハンブルクから入手)を用いた。FACSscan(BD biosciences、ドイツ、ハイデルベルク)で試料を測定した。EpCAM結合が明らかに検出された(図12)。
【0175】
構築物の4-1BBリガンド部分およびB7.1部分の検出
構築物の4-1BBリガンド部分およびB7.1部分の存在を、FACSに基づくアッセイにより実証した。そのために、ヒトB7.1およびヒト4-1BBリガンドの表面発現を示さないEpCAM陽性ヒト胃癌細胞株Kato III(ATCCから入手、上記参照)を用いた。2% FCSを添加したPBS 50μl中、2.5*105個の細胞を10μg/ml構築物と共にインキュベートした。2% FCSを添加したPBS 50μlで1:10希釈したR-フィコエリトリン結合マウス抗ヒト4-1BBリガンド抗体(BD biosciences、ドイツ、ハイデルベルク)で、4-1BBリガンド部分の存在を検出した。FACSscan(BD biosciences、ドイツ、ハイデルベルク)で試料を測定した。構築物の結合に起因する、Kato III細胞上の4-1BBリガンド抗原の存在が明らかに検出された(図13)。B7.1部分を検出するため、2% FCSを添加したPBS 50μlで1:10希釈したフィコエリトリン結合マウス抗ヒトB7.1抗体(BD biosciences、ドイツ、ハイデルベルク)を使用する以外は同じ条件で、アッセイを行った。構築物の結合に起因する、Kato III細胞上のB7.1抗原の存在が明らかに検出された(図14)
【0176】
実施例3
二重特異性scFv - 4-1BBリガンド構築物:抗NKG2D - 抗EpCAM - ヒト4-1BBリガンドの作製
図15Cに図解した第二の三重特異性構築物:抗NKG2D - 抗EpCAM - 4-1BBリガンドを作製するために、実施例2に記載した既存の構築物を基にした。この構築物は異なる作用機序を有する:この構築物は、NKG2D陽性CTLおよびNK細胞をEPCAM陽性癌細胞に向けさせる。
【0177】
NKG2D受容体複合体の細胞外エピトープを特異的に認識する結合部位の単離は、特許出願WO0171005(Multifunctional Polypeptides Comprising A Binding Site To An Epitope Of The NKG2D Receptor Complex)に記載されている。WO0171005の実施例3に詳述されているように、NKG2D結合部位には制限酵素BsrGI/BspEIが隣接しており、これを用いて、抗EpCAM特異的4-7および4.1BBリガンドのコード配列を既に含む哺乳動物発現ベクターpEF-DHFRにNKG2D scFv断片をクローニングした。ドメイン配列VL抗NKG2D (11B2D10) - VH抗NKG2D (11B2D10) - VH抗EpCAM (4-7) - VL抗EpCAM (4-7) - 細胞外ドメイン4.1BBリガンドを有する得られた抗体構築物(配列番号:17および18)を、実施例2に従ってCHO細胞にトランスフェクションし発現させた。精製は、記載されている通りに行った(Kufer et al., 2001, Cancer Immunity, 10)。この構築物の配列および略図を図15に示す。配列番号:17および18は、Hisタグを含まない構築物の配列を示す。
【0178】
抗NKG2D - 抗EpCAM - ヒト4-1BBリガンド構築物のフローサイトメトリーによる結合解析
結合能に関して構築物の機能性を試験するため、FACS解析を行った。このために、NKG2DおよびEpCAM抗原の細胞外ドメインそれぞれを発現するCHOトランスフェクタントを作製した。200,000個のNKG2D + CHO細胞および200,000個のEpCAM + CHO細胞それぞれを、抗NKG2D - 抗EpCAM - 4.1BBリガンド構築物をトランスフェクションしたCHO細胞の純粋な細胞培養上清50μlと共に、氷上で30分間インキュベートした。続いて、細胞をPBSで2回洗浄した。その後、構築物の結合を2つの異なる方法で検出した:構築物全体を、2% FCSを添加したPBS 50μlで1:20希釈したマウスFITC結合抗Hisタグ抗体(Dianova、ドイツ、ハンブルク、DIA920)を用いて、C末端のヒスチジンを介して検出した。4.1BBリガンドドメインの妥当な発現を、2% FCSを添加したPBS 50μlで1:10希釈したR-フィコエリトリン結合マウス抗ヒト4-1BBリガンド抗体(BD biosciences、ドイツ、ハイデルベルク)を用いて調べた(太線)。陰性対照として、トランスフェクションしていないCHO細胞を用いた(細線)。FACS-scan(Becton Dickinson、ハイデルベルク)でフローサイトメトリーにより細胞を解析した。FACS染色および蛍光強度の測定は、Current Protocols in Immunology(Coligan, Kruisbeek, Margulies, Shevach and Strober, Wiley-Interscience, 2002)に記載されている通りに行った。
【0179】
抗NKG2D結合ドメインおよび抗EpCAM結合ドメインの結合能はそれぞれ、図16に示すように明らかに検出された。
【0180】
二重特異性scFv - 4-1BBリガンド構築物:scFv抗NKG2D - scFv抗EpCAM - ヒト4-1BBリガンド融合タンパク質に例証される4-1BBリガンド三量体の精製および解析
固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)およびゲルろ過を含む2段階の精製過程で、融合タンパク質を細胞培養上清から単離した。最終産物は、SDS PAGEおよびウェスタンブロットにおいて、みかけの分子量約47 kDa(一本鎖融合タンパク質)または約70 kDa(二重特異性一本鎖融合タンパク質)を有した。しかし、未変性条件下では、検出された融合タンパク質の分子量は、PBSでのゲルろ過から決定して約150 kDa(一本鎖融合タンパク質)または約220 kDa(二重特異性一本鎖融合タンパク質)であった。これは、融合構築物の三量体型に相当する。単離されたタンパク質の純度は、ほとんどの場合、SDS-PAGEから決定して>95%であった。精製タンパク質の最終収量は、約400μg/l細胞培養上清であった。クロマトグラフィーには、Akta FPLCシステムおよびGradiFrac(Pharmacia、ドイツ、Tennenlohe)およびUnicornソフトウェアを使用した。化学薬品はすべて研究グレードのものであり、Sigma(ドイツ、ダイゼンホッフェン)またはMerck(ドイツ、ダルムシュタット)から購入した。
【0181】
製造業者の手順に従って、NiSO4を予め供したHisTrap 5 mlカラム(Amersham Biosciences Europe GmbH、ドイツ、フライブルク)を用いてIMACを行った。緩衝液A2(20 mM NaPP pH 7.2、0.4 M NaCl)でカラムを平衡化した。試料を1 ml/minの流速でカラムに供し、カラムを緩衝液A2で洗浄して非結合試料を除去した。各段階5カラム体積の緩衝液B2(20 mM NaPP pH 7.0、0.4 M NaCl、0.5 Mイミダゾール)の2段階勾配、段階1:10%緩衝液B2、段階2:100%緩衝液B2を用いて、結合タンパク質を溶出した。2段階目で溶出されたタンパク質画分をさらなる精製のためにプールした。
【0182】
ゲルろ過クロマトグラフィーは、PBS(Gibco Invitrogen Corp.、米国、カールズバッド)で平衡化したセファデックスS200 HiPrepカラム(Amersham Biosciences Europe GmbH、ドイツ、フライブルク)で行った。融合タンパク質の検出のため、溶出されたタンパク質試料(流速1 ml/min)を、SDS-Pageおよびウェスタンブロットに供した。分子量決定のため、カラムは前もってキャリブレーションしておいた(分子量マーカーMW GF-200、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、ドイツ、ミュンヘン)。タンパク質濃度は、280 nmで値を測定しモル吸収係数と併用して、またはPierce microBCAキット(Pierce Biotechnology Inc、米国、イリノイ州、ロックフォード)を用いて決定した。
【0183】
既製の4〜12% Bis Trisゲル(Invitrogen Corp.、米国、カールズバッド)を用いて、還元条件下でSDS PAGEを行った。試料調製および共試は、製造業者の手順に従った。MultiMarkタンパク質標準物質(Invitrogen Corp.、米国、カールズバッド)を用いて、分子量を決定した。コロイドクーマシーでゲルを染色した(Invitrogenの手順)。
【0184】
BioTrace膜(Pall Lice Sciences、ドイツ、ドライアイヒ)およびInvitrogenブロットモジュールを用いて、製造業者の手順に従ってウェスタンブロットを行った。使用した抗体は、Penta His(Qiagen、ドイツ、ヒルデン)およびヤギ抗マウスAP(Sigma-Aldrich Chemie GmbH、ドイツ、ミュンヘン)であった。染色液はBCIP/NBT液(Sigma-Aldrich Chemie GmbH、ドイツ、ミュンヘン)であった。
【0185】
scFv抗NKG2D - scFv抗EpCAM - ヒトCD30リガンド融合タンパク質の精製を図25、26、および27に示す。ゲルろ過およびウェスタンブロットのデータから、構築物が三量体型で存在することが明らかになる。ウェスタンブロットデータから、精製タンパク質の半分が三量体として現れ、もう半分が凝集していることが示唆される。しかし、単量体は検出されない。三量体の純度は約50%である。
【0186】
EpCAM結合のアッセイ
精製された三機能性構築物の、EpCAM抗原の細胞外部分に対する結合を、FACSアッセイにより試験した。そのために、EpCAM陽性ヒト胃癌細胞株Kato III(American Type Culture Collection (ATCC)、米国20108バージニア州、マナッサスから入手、ATCC番号:HTB-103)を用いた。供給者の推奨に従って細胞を培養し、2% FCSを添加したPBS 50μl中、2.5*105個の細胞を10μg/ml構築物と共にインキュベートした。2% FCSを添加したPBS 50μl中、2μg/mlの抗His抗体(Qiagen GmbH、ドイツ、ヒルデンから入手したPenta-His抗体、BSAフリー)により、構築物の結合を検出した。第二段階の試薬として、2% FCSを添加したPBS 50μlで1:100希釈したR-フィコエリトリン結合アフィニティー精製F(ab')2断片、ヤギ抗マウスIgG、Fcγ断片特異的抗体(Dianova、ドイツ、ハンブルクから入手)を用いた。FACS scan(BD Biosciences、ドイツ、ハイデルベルク)で試料を測定した。EpCAM結合が明らかに検出された(図28)。
【0187】
新たに単離されたNK細胞におけるNKG2Dの結合試験
健常人から採取した末梢血250 mlから、フィコール密度遠心分離により単核細胞(PBMC)を調製した。NK細胞単離キットII(MACS、ドイツ、ベルギッシュグラートバッハ)を用いて、健常人の末梢血から典型的な表現型CD16+CD56+を有するNK細胞を精製し、陰性選別された非接触の新鮮NK細胞を得た。単離手順は、製造業者の取扱説明書に従って行った。NK細胞の分離の成否は、抗CD16抗体による単一染色後のフローサイトメトリーによって管理した(図29F)。CD16+ NK細胞の純度は74%であることが判明した。市販の抗NKG2D抗体(1D11)(BD Biosciences Pharmingen、ドイツ、ハイデルベルク)、記載の構築物内の抗NKG2D一本鎖抗体部分の供給源である抗NKG2D mabクローン11B2D10(WO0171005に記載のMicromet AG、ドイツ、ミュンヘン)、およびscFv抗NKG2D (11B2D10) - scFv抗EpCAM(4-7) - ヒト4-1BBLの細胞培養上清で単一染色することにより、NKG2D染色のフローサイトメトリーによるモニタリングを同様に行った。FACS結合解析は前述の通り行った。
【0188】
単離されたNK細胞の大部分に、抗NKG2D抗体(1D11)(96%、図29C)、抗NKG2D mabクローン11B2D10(82%、図29D)、およびscFv抗NKG2D (11B2D10) - scFv抗EpCAM (4-7) - ヒト4-1BBL三重特異性一本鎖構築物の細胞培養上清(86%、図29E)が結合し、scFv抗NKG2D (11B2D10) - scFv抗EpCAM (4-7) - ヒト4-1BBL三重特異性構築物の抗NKG2D部分がNK細胞上のNKG2Dに特異的に結合することが実証される。非染色NK細胞(図29A)および二次抗体でのみで染色したNK細胞(図29B)によって示されるFACS解析の対照は、ほぼ無いに等しいまたは10%の染色を示した。
【0189】
実施例4
scFv抗EpCAM - ヒト4-1BBリガンドの作製
M79と称する抗EpCAM scFvおよびヒト4-1BBリガンドからなるさらなる構築物を作製するため、以下のクローニング段階を行った。Mack, M. et al. (1995) Proc Natl Acad Sci USA 92, 7021-7025に記載の抗EpCAM scFv M79を腫瘍標的部分として使用し、この出版物に記載されている構築物を抗EpCAM - 4-1BBL構築物を作製する基にした。この構築物のFlag配列を含まない変種(Kufer et al., 1997, Cancer Immunol Immunother45, 193-197)を、制限酵素BspEIおよびSalIで酵素的に切断した。得られたベクター(この段階でCD3部分を含まない)を、実施例3に記載のようなヒト4.1BBリガンドを含む適切に切断したDNA断片と融合した。ドメイン配列VL抗EpCAM (M79) - VH抗EpCAM (M79) - 細胞外ドメイン4.1BBリガンドを有する得られた抗体構築物(配列番号:19および20)を、実施例2に従ってCHO細胞にトランスフェクションし発現させた。精製は、Kufer et al., 2001, Cancer Immunity 第1巻、p.10に記載されている通りに行った。この構築物の配列および略図を図17に示す。配列番号:19および20は、Hisタグを含まない構築物の配列を示す。
【0190】
scFv抗EpCAM - ヒト4-1BBリガンド構築物のフローサイトメトリーによる結合解析
結合能に関して構築物の機能性を試験するため、FACS解析を行った。このために、EpCAM抗原の細胞外ドメインを発現するCHOトランスフェクタントを用いた。200,000個のEpCAM + CHO細胞を、抗EpCAM - 4-1BBL構築物をトランスフェクションしたCHO細胞の純粋な細胞培養上清50μlと共に、氷上で30分間インキュベートした。続いて、細胞をPBSで2回洗浄した。最後に、構築物の結合を2つの異なる方法で検出した:構築物全体を、2% FCSを添加したPBS 50μlで1:20希釈したマウスFITC結合抗Hisタグ抗体(Dianova、ドイツ、ハンブルク、DIA920)を用いて、C末端のヒスチジンを介して検出した。4-1BBLドメインの妥当な発現を、2% FCSを添加したPBS 50μlで1:10希釈したR-フィコエリトリン結合マウス抗ヒト4-1BBリガンド抗体(BD biosciences、ドイツ、ハイデルベルク)を用いて調べた(太線)。陰性対照としては、分泌された抗EpCAM - 4-1BBL構築物を含む細胞培養上清を添加しなかった(細線)。
【0191】
FACS-scan(Becton Dickinson、ハイデルベルク)でフローサイトメトリーにより細胞を解析した。FACS染色および蛍光強度の測定は、Current Protocols in Immunology(Coligan, Kruisbeek, Margulies, Shevach and Strober, Wiley-Interscience, 2002)に記載されている通りに行った。
【0192】
抗EpCAM結合ドメインの結合能および4-1BBLの存在はそれぞれ、図18に示すように明らかに検出された。
【0193】
scFv抗EpCAM (M79) - ヒト4-1BBリガンド融合タンパク質に例証される4-1BBリガンド三量体の精製および解析
陽イオン交換クロマトグラフィー(図20)、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)(図21)、およびゲルろ過(図22)を含む3段階の精製過程で、scFv抗EpCAM (M79) - ヒト4-1BBリガンドタンパク質を細胞培養上清から単離した。最終産物は、SDS PAGE(図23)およびウェスタンブロット(図24)において、みかけの分子量約50 kDaを有した。SDS PAGEでの50 kDaという大きさと対照的に、未変性条件下では、このタンパク質は、PBSでのゲルろ過から決定して分子量約150 kDaを有した。この150 kDaという大きさは、scFv抗EpCAM (M79) - ヒト4-1BBリガンドの三量体型に相当する。単離されたタンパク質の純度は、SDS-PAGEから決定して>95%であった(図23)。精製タンパク質の最終収量は、約5.5 mg/l細胞培養上清であった。クロマトグラフィーには、Akta FPLCシステムおよびGradiFrac(Pharmacia、ドイツ、Tennenlohe)およびUnicornソフトウェアを使用した。化学薬品はすべて研究グレードのものであり、Sigma(ドイツ、ダイゼンホッフェン)またはMerck(ドイツ、ダルムシュタット)から購入した。
【0194】
第一精製段階では、緩衝液A1(20 mM MES pH 5.5)で平衡化したSPセファロースカラム(Pharmacia、ドイツ、Tennenlohe)で陽イオン交換クロマトグラフィーを行った。細胞培養上清を緩衝液A1で1:3希釈し、4℃で流速20 ml/minでカラム(ベッドサイズ300 ml、製造業者の手順に従ってXKカラム、Pharmacia、ドイツ、Tennenloheに充填)に供した。緩衝液A1で非結合の試料を洗浄し、2カラム体積(CV)量の30%、50%、および100%緩衝液B1(20 mM MES pH 5.5、1 M NaCl)の3段階勾配で、結合したタンパク質を溶出した。50% B1段階から溶出されたタンパク質画分をさらなる精製のためにプールした(図20)。
【0195】
第二精製段階では、製造業者の手順に従って、NiSO4を予め供したHisTrap 5 mlカラム(Pharmacia、ドイツ、Tennenlohe)を用いてIMACを行った。緩衝液A2(20 mM NaPP pH 7.2、0.4 M NaCl)でカラムを平衡化した。試料を1 ml/minの流速でカラムに供し、カラムを緩衝液A2で洗浄して非結合試料を除去した。各段階4カラム体積を含む、緩衝液B2(20 mM NaPP pH 7.0、0.4 M NaCl、0.5 Mイミダゾール)の3段階勾配、段階1:10%緩衝液B2、段階2:30%緩衝液B2、段階3:100%緩衝液B2により、結合タンパク質を溶出した。2段階目で溶出されたタンパク質画分をさらなる精製のためにプールした。
【0196】
第三精製段階では、PBS(Gibco Invitrogen Corp.、米国、カールズバッド)で平衡化したセファデックスS200 HiPrepカラムでゲルろ過クロマトグラフィーを行った。二重特異性scFv抗体(scFv抗EpCAM - scFv抗CD3)を検出するため、溶出されたタンパク質試料(流速1 ml/min)を、SDS-Pageおよびウェスタンブロットに供した。分子量決定のため、カラムは前もってキャリブレーションしておいた(分子量マーカーキットMW GF-200、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、ドイツ、ミュンヘン)。タンパク質濃度は、280 nmの吸収値をモル吸収係数と共に用いて決定した。
【0197】
既製の4〜12% Bis Trisゲル(Invitrogen GmbH、ドイツ、カルルスルーエ)を用いて、還元条件下でSDS PAGEを行った。試料調製および共試は、製造業者の手順に従った。MultiMarkタンパク質標準物質(Invitrogen GmbH、ドイツ、カルルスルーエ)を用いて、分子量を決定した。Invitrogenの手順に従って、コロイドクーマシーでゲルを染色した。
【0198】
BioTrace膜(Pall Gelman GmbH、ドイツ、ドライアイヒ)およびInvitrogenブロットモジュールを用いて、製造業者の手順に従ってウェスタンブロットを行った。使用した抗体は、Penta His(Qiagen、ドイツ、ヒルデン)およびヤギ抗マウスAP(Sigma-Aldrich Chemie GmbH、ドイツ、ミュンヘン)であり、染色液はBCIP/NBT液(Sigma-Aldrich Chemie GmbH、ドイツ、ミュンヘン)であった。
【0199】
実施例5
B7.1 - scFv抗EpCAM - ヒト4-1BBリガンド構築物を用いたプライミングアッセイ
4-1BBL - 抗EpCAM scFv - B7.1構築物を用いて、ナイーブヒトCD4+ T細胞の直接プライミングについて検討した。
【0200】
実施例2Aに記載の構築物を用いて、共刺激分子4-1BBLを、微小残存結腸直腸癌の抗体療法の標的としての使用に成功している上皮細胞接着分子(EpCAM)に対して特異的に標的した。T細胞プライミングは、CD45アイソフォーム発現のフローサイトメトリー解析によってモニターした。
【0201】
ナイーブT細胞の精製
典型的な表現型CD45RA+RO-を有するナイーブCD4+およびCD8+ Tリンパ球を、健常人の末梢血から精製した。健常人から採取した末梢血500 mlから、フィコール密度遠心分離により単核細胞(PBMC)を調製した。市販の細胞分離キット(R&D Systems、それぞれHCD4C-1000およびHCD8C-1000、ドイツ、ウィースバーデン)を用いて、陰性選択によりCD4+およびCD8+ T細胞を単離した。CD8+ T細胞カクテルにカラム当たり1μgのモノクローナル抗CD11b抗体(Coulter、ドイツ、クレーフェルト)を補充して、製造業者の抗体カクテルとプレインキュベートした2 x 108個のPBMCを、CD4+またはCD8+ T細胞カラムそれぞれに供した。CD4+およびCD8+ T細胞の分離の成否は、それぞれ抗CD4抗体または抗CD8抗体による単一染色後のフローサイトメトリーによって管理した。CD11b+ CD8+ T細胞はCD28-であり、逆も同様であることが周知であるため、CD8+ T細胞調製物にCD11b+が存在しないことを、抗CD28抗体による単一染色によって確認した。
【0202】
マウスモノクローナル抗CD45RO抗体UCHL-1、31301(PharMingen、ドイツ、ハイデルベルク)と共にインキュベートし、その後ポリクローナルヒツジ抗マウスIg抗体結合磁気ビーズ(Dynal、ドイツ、ハンブルク)を用いて分離することにより、精製したCD4+またはCD8+ T細胞からCD45RO+細胞を除去した。残存する抗原提示細胞(例えば樹状細胞)を枯渇させるため、精製したCD4+またはCD8+ T細胞を、CD45ROおよびHLA-DR、DP、DQに対するマウスモノクローナル抗体(PharMingen、ドイツ、ハイデルベルク)と共にインキュベートし、その後磁気抗マウスIgビーズと共にインキュベートした。残存したナイーブCD4+またはCD8+ T細胞の純度は、抗CD45RAおよび抗CD45ROでの二重染色後のフローサイトメトリーにより決定して、95〜97%であることが判明した。ナイーブT細胞の収量は、末梢血500 ml当たり、2〜3x107 (CD4)および5x106 (CD8)であった。
【0203】
フローサイトメトリー
1 x 105細胞をPE結合モノクローナル抗CD45RA抗体(Coulter、ドイツ、クレーフェルト)およびFITC結合モノクローナル抗CD45RO抗体UCHL-1、F 0800(DAKO、ドイツ、ハンブルク)により氷上で30分間二重染色することにより、CD45アイソフォーム発現のフローサイトメトリー解析を行った。T細胞精製のフローサイトメトリーによるモニタリングは、トリカラー結合モノクローナル抗CD4抗体(MHCD0406)、トリカラー結合モノクローナル抗CD8抗体(MHCD0806)、およびFITC結合モノクローナル抗CD28抗体(MHCD2801)(すべてMedac、ドイツ、ハンブルクによる)での単一染色によって、同様に行った。
【0204】
プライミングアッセイ
典型的な表現型CD45RA+RO-を有するナイーブCD4+Tリンパ球を健常人の末梢血から精製し、(Kufer et al., 2001, Cancer Immunity 1, 10に従って)刺激細胞としての照射EpCAMトランスフェクションCHO細胞と共にインキュベートした。
【0205】
初期シグナルは、TCRを介した特定抗原認識を模倣する二重特異性一本鎖抗体(bscAb) EpCAM (M79) x CD3(Kufer et al., 1997, Cancer Immunol Immunother45, 193-197)によって媒介した;二次または共刺激シグナルは、EpCAM特異的B7.1構築物(B7.1 - scFv抗EpCAM、Kufer et al., 2001, Cancer Immunity 1, 10)によって媒介した。T細胞プライミングは、CD45RAおよびCD45ROの発現を同時に測定することにより、6日目にフローサイトメトリーによってモニターした。
【0206】
二重特異性一本鎖抗体(bscAb) EpCAM (M79) x CD3が250 ng/ml濃度(図19A)および50 ng/ml濃度(図19D)で単独で存在する場合、細胞は表現型CD45RA+RO-を示してプライミングされないままであった。EpCAM特異的B7.1構築物(500 ng/ml)およびbscAb EpCAM x CD3(250 ng/ml)が両方とも存在する場合、ナイーブT細胞のほぼ全集団のCD45表現型が、6日以内に、プライミングされたT細胞の表現型、すなわちCD45RA-RO+に変化した(図15B)。至適以下の濃度の二重特異性一本鎖抗体(bscAb) EpCAM (M79) x CD3(50 ng/ml)および500 ng/ml濃度のEpCAM特異的B7.1構築物(B7.1 - scFv抗EpCAM、Kufer et al., 2001, Cancer Immunity 1, 10)では、ナイーブT細胞集団のわずかな部分(5.7%)のCD45表現型が、6日以内に、プライミングされたT細胞の表現型、すなわちCD45RA-RO+に変化した(図19E)。
【0207】
しかし、500 ng/ml濃度の実施例2のB7.1 - scFv抗EpCAM - hu4-1BBリガンド構築物を、50 ng/mlという至適濃度以下の二重特異性一本鎖抗体(bscAb) EpCAM (M79) x CD3と共に添加することにより、ナイーブT細胞集団の実質的に増加した部分(24%)のCD45表現型が、6日以内に、プライミングされたT細胞の表現型、すなわちCD45RA-RO+に変化した(図19F)。この結果から、B7.1 - scFv抗EpCAM - 4-1BBリガンド構築物がB7.1 - scFv抗EpCAM構築物(Kufer et al., 2001, Cancer Immunity 1, 10)よりも有効に機能することが実証される。
【0208】
重要なことには、scFv抗EpCAM - 4-1BBリガンド(実施例4を参照)構築物とbscAb EpCAM x CD3との組み合わせでは、B7.1共刺激の非存在下においてCD45アイソフォーム発現の実質的な変化を誘導し得なかった(図19C)。
【0209】
T細胞プライミングについてすべての構築物を単独で試験したが、いずれも6日以内に、ナイーブT細胞のCD45表現型からプライミングされたT細胞の表現型、すなわちCD45RA-RO+への変化を示さなかった(図19G、H、I):B7.1 - scFv抗EpCAM構築物(図19G)もscFv抗EpCAM - 4-1BBリガンド構築物(図19H)もB7.1 - scFv抗EpCAM - hu4-1BBリガンド構築物(図19I)もである。
【0210】
すべてのプライミング実験について、細胞培養は37℃および6% CO2で行った。
【図面の簡単な説明】
【0211】
【図1】TNFα前駆体タンパク質の構造と比較した4-1BBL構造の略図。ECD = 細胞外ドメイン;THD = TNF相同ドメイン;ストーク = ストーク領域;aa = アミノ酸。矢印は、腫瘍壊死因子α(TNFα)変換酵素(TACE)のタンパク質切断部位を示す。点線は個々のアミノ酸の位置を指し、ジグザグ線は膜貫通ドメインを表す。
【図2】系統樹解析。(A) Treetopプログラムは配列間の対の距離を算出し、系統樹の再現性を示唆する「ブートストラップ(bootstrap)」値を提供する。100が最大値である。それよりも低い任意の値は、再現性の割合を示す。トポロジーアルゴリズムは、トポロジー類似原理(Chumakov & Yashmanov, 1988, Mol Genet Microbiol Virusol 3, 3-9;Yushmanov & Chumakov, 1988, Mol Genet Microbiol Virusol 3, 9-15;Brodsky et al., 1992, Dimacs 8, 127-139;Brodsky et al., 1995, Biochemistry, 923-928)を用いる。(B) 無根系統樹。
【図3】scFv抗237 x マウス4-1BBリガンド構築物の配列。A) ヌクレオチド配列、B) タンパク質配列、C) 構築物の略図。
【図4】SPセファロース陽イオン交換カラムからのscFv抗237 x マウス4.1.BBLの溶出パターン。50%緩衝液B1での溶出によるタンパク質ピークを、さらなる精製に使用した。
【図5】NiキレートHisトラップカラムからの、scFv抗237 x マウス4-1BBL含有タンパク質画分の溶出パターン。緑色の線は、0.5 Mイミダゾールを含む溶出緩衝液の理論的な勾配を示す。100%緩衝液B2溶出段階によるタンパク質画分を、さらなる精製に使用した。
【図6】セファデックスS200ゲルろ過カラムからの、scFv抗237 x マウス4-1BBL構築物の溶出パターン(青線)。タンパク質は約67 mlの位置の単一ピークに溶出し、これはMW約150 kDに相当する。より大きな分子量を有するピークのわずかな肩を、約58 mlの位置に認めることができる。単量体は83.2 mlの位置のタンパク質ピークに溶出し、これはMW約54 kDに相当する。
【図7】精製されたscFv抗237 x マウス4-1BBL含有タンパク質画分のSDS-PAGE解析。SDS-PAGEはコロイドクーマシーで染色した。レーン1:MultiMark分子量マーカー;レーン2および3:主要なピークおよび肩の部分のゲルろ過画分。
【図8】精製されたscFv抗237 x マウス4-1BBLタンパク質画分のウェスタンブロット解析。ウェスタンブロットは、Penta His抗体およびアルカリフォスファターゼ標識ヤギ抗マウス抗体と共にインキュベートした。染色剤はBCIP/NBT液であった。レーン1:分子量マーカー;レーン2および3:主要なピークおよび肩の部分のゲルろ過画分。約50 kDaの主要なバンドは、精製タンパク質の>90%を含む。約100 kDの微量バンドは、237scFv x 4.1.BBLの二量体型に相当するが、これはゲルに過剰量供したことに起因する。33 kDの微量バンドは、タンパク質分解された断片である。
【図9】scFv抗237 x マウス4-1BBL構築物のAG104A細胞株に対するFACS結合解析。FACS染色は実施例1第4項に記載した通りに行った。黒いヒストグラムは、抗his抗体および第二段階の試薬とのみインキュベートした細胞を示す。白いヒストグラムは、構築物、抗his抗体、および第二段階の抗体と共にインキュベートした細胞を示す。
【図10】AG104A細胞に結合したscFv抗237 x マウス4-1BBL構築物のmu4-1BBリガンド部分のFACS解析。FACS染色は実施例1第5項に記載した通りに行った。黒いヒストグラムは、抗4-1BBリガンド抗体および第二段階の試薬とのみインキュベートした細胞を示す。白いヒストグラムは、構築物、抗4-1BBリガンド抗体、および第二段階の試薬と共にインキュベートした細胞を示す。
【図11】B7.1 - scFv抗EpCAM (4-7) x ヒト4-1BBリガンド構築物の配列。A) ヌクレオチド配列、B) タンパク質配列、C) 構築物の略図。
【図12】Kato III細胞上のEpCAM抗原に対するB7.1 - scFv抗EpCAM (4-7) x ヒト4.1.BBL構築物のFACS結合解析。FACS染色は実施例1A第4項に記載した通りに行った。黒いヒストグラムは、抗his抗体および第二段階の試薬とのみインキュベートした細胞を示す。白いヒストグラムは、構築物、抗his抗体、および第二段階の抗体と共にインキュベートした細胞を示す。
【図13】Kato III細胞に結合したB7.1 - scFv抗EpCAM (4-7) x ヒト4.1.BBL構築物の4-1BBリガンド部分のFACS解析。FACS染色は実施例1A第5項に記載した通りに行った。黒いヒストグラムは、抗4-1BBリガンド抗体とのみインキュベートした細胞を示す。白いヒストグラムは、構築物および抗4-1BBリガンド抗体と共にインキュベートした細胞を示す。
【図14】Kato III細胞に結合したB7.1 - scFv抗EpCAM (4-7) x ヒト4.1.BBL構築物のB7.1部分のFACS解析。FACS染色は実施例1A第5項に記載した通りに行った。黒いヒストグラムは、抗B7.1抗体とのみインキュベートした細胞を示す。白いヒストグラムは、構築物および抗B7.1抗体と共にインキュベートした細胞を示す。
【図15】二重特異性scFv(抗NKG2D x 抗EpCAM)x ヒト4-1BBリガンド構築物の配列。A) ヌクレオチド配列、B) タンパク質配列、C) 構築物の略図。
【図16】NKG2D+ CHO細胞およびEpCAM+ CHO細胞それぞれに対する、三機能性構築物、抗NKG2D - 抗EpCAM - ヒト4-1BBリガンドの結合能(太線)。結合した構築物の検出は、ヒストグラムの下に記載の二次抗体を用いて行った。陰性対照として、トランスフェクションしていないCHO細胞を用いた(細線)。NKG2D+ CHO細胞に対する構築物の結合。A) 4-1BBL抗体を介した検出、B) Hisタグ抗体を介した検出。EpCAM+ CHOに対する構築物の結合。C) 4-1BBリガンド抗体を介した検出。
【図17】scFv抗EpCAM - ヒト4-1BBリガンド構築物の配列。A) ヌクレオチド配列、B) タンパク質配列、C) 構築物の略図。
【図18】EpCAM+ CHO細胞に対する、構築物、scFv抗EpCAM - ヒト4-1BBリガンドの結合能(太線)。結合した構築物の検出は、ヒストグラムの下に記載の二次抗体を用いて行った。陰性対照としては、分泌されたscFv抗EpCAM - ヒト4-1BBリガンド構築物を含む細胞培養上清を添加しなかった(細線)。A) 抗Hisタグ抗体による検出、B) 抗4-1BBリガンド抗体による検出。
【図19】FACS解析/T細胞プライミングA〜I。実験データはすべて、培養6日目に取得した。A) 1.シグナル:scFv抗EpCAM (M79) x scFv抗CD3、250 ng/ml。B) 1.+ 2.シグナル:scFv抗EpCAM (M79) x scFv抗CD3、250 ng/mlおよびB.7 - scFv抗EpCAM (4-7)、500 ng/ml。C) 1.+ 3.シグナル:scFv抗EpCAM (M79) x scFv抗CD3、250 ng/mlおよびscFv抗EpCAM (4-7) x hu4-1BBL、500 ng/ml。D) 1.シグナル:scFv抗EpCAM (M79) x scFv抗CD3、50 ng/ml。E) 1.+ 2.シグナル:scFv抗EpCAM (M79) x scFv抗CD3、50 ng/mlおよびB.7 - scFv抗EpCAM (4-7)、500 ng/ml。F) 1.+ 2.+ 3.シグナル:scFv抗EpCAM (M79) x scFv抗CD3、50 ng/mlおよびB.7 - scFv抗EpCAM (4-7) - hu4-1BBL、500 ng/ml。G) 2.シグナル: B.7 - scFv抗EpCAM (4-7)、500 ng/ml。H) 3.シグナル:B.7.1 - scFv抗EpCAM (4-7)、500 ng/ml。I) 2.+ 3.シグナル:B.7 - scFv抗EpCAM (4-7) - hu4-1BBL、500 ng/ml。
【図20】SPセファロース陽イオン交換カラムからのscFv抗EpCAM (M79) - ヒト4.1.BBリガンド融合タンパク質の溶出パターン。1:30%溶出緩衝液B1で溶出されたタンパク質;2:30%溶出緩衝液B1で溶出されたタンパク質;3:30%溶出緩衝液B1で溶出されたタンパク質。50%緩衝液B1での溶出によるタンパク質ピークを、さらなる精製に使用した。
【図21】NiキレートHisトラップカラムからのタンパク質溶出パターン(太線)。前のSPセファロース陽イオン交換カラムの50%緩衝液B1での溶出によるタンパク質ピークのタンパク質画分に含まれるscFv抗EpCAM (M79) - ヒト4-1.BBリガンド融合タンパク質を供した。破線は、0.5 Mイミダゾールを含む溶出緩衝液の理論的な勾配を示す。30%緩衝液B2溶出段階によるタンパク質画分を、さらなる精製に使用した。
【図22】セファデックスS200ゲルろ過カラムからのタンパク質溶出パターン(太線)。scFv抗EpCAM (M79) - ヒト4-1.BBリガンド融合タンパク質は約68 mlの位置の単一ピークに溶出し、これは分子量約150 kDに相当する。
【図23】図22に示した精製scFv抗EpCAM (M79) - ヒト4-1.BBリガンド含有タンパク質画分のSDS-PAGE解析。SDS-PAGEはコロイドクーマシーで染色した。レーン1:MultiMark分子量マーカー;レーン2および3:主要なピークおよび肩の部分のゲルろ過画分。
【図24】精製されたscFv抗EpCAM (M79) - ヒト4-1.BBリガンド融合タンパク質画分のウェスタンブロット解析。ウェスタンブロットは、Penta His抗体およびアルカリフォスファターゼ標識ヤギ抗マウス抗体と共にインキュベートした。染色剤はBCIP/NBT液であった。レーン1:MultiMark分子量マーカー;レーン2および3:異なる濃度での、68 mlの位置の主要なピークのゲルろ過画分。約50 kDaの主要なバンドは、精製タンパク質の>90%を含む。21 kDの微量バンドは、タンパク質分解された断片である。
【図25】NiキレートHisトラップカラムからの、scFv抗NKG2D - scFv抗EpCAM (4.7) - ヒト41BBL融合タンパク質含有タンパク質画分の溶出パターン(太線)。灰色の線は、溶出緩衝液の理論的な勾配を示す。100%緩衝液B2溶出段階によるタンパク質画分(555 mlのピーク)を、さらなる精製に使用した。
【図26】セファデックスS200ゲルろ過カラムからのタンパク質溶出パターン(太線)。scFv抗NKG2D - scFv抗EpCAM (4.7) - ヒト41BBL融合タンパク質は約60 mlの位置の単一ピークに溶出し、これは分子量約220 kDに相当する。点線は、ベースラインを示す。
【図27】精製されたscFv抗NKG2D - scFv抗EpCAM (4.7) - ヒト41BBL融合タンパク質含有タンパク質画分のSDS-PAGE解析(A)および(B)ウェスタンブロット。SDS-PAGEはコロイドクーマシーで染色した。ウェスタンブロットは、Penta His抗体およびアルカリフォスファターゼ標識ヤギ抗マウス抗体と共にインキュベートした。染色剤はBCIP/NBT液であった。レーン1:MultiMark分子量マーカー、レーン2:細胞培養上清、レーン3:IMACフロースルー、レーン4:IMAC洗浄ピーク、レーン5:IMCA溶出ピーク、レーン7:60 mlにおけるピークのゲルろ過画分。約72 kDaの主要なバンドは、>50%の純度でこのタンパク質を含む。
【図28】Kato III細胞上のEpCAM抗原に対する、scFv抗NKG2D - scFv抗EpCAM (4.7) - ヒト41BBL融合タンパク質のFACS結合解析。FACS染色は実施例1A第4項に記載した通りに行った。点線は、細胞を抗his抗体および第二段階の試薬とのみインキュベートした対照を示す。太線は、細胞培養上清に由来するscFv抗NKG2D - scFv抗EpCAM (4.7) - ヒト41BBL融合タンパク質と共にインキュベートした細胞を示す。細線は、細胞を抗EpCAM抗体mab 3B10と共にインキュベートした陽性対照を示す。
【図29】NKG2D結合アッセイ:(A) 非染色NK対照;(B) 抗体検出NK対照;(C) NK NKG2D (1D11) mab;(D) NK NKG2D (11B2D10) mab;(E) NK細胞培養上清;(F) NK CD16 mab。X軸は、いずれの場合も蛍光2 (FL2-H)を示す。Y軸は、いずれの場合も側方散乱光(SSC-H)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三量体ポリペプチド構築物の各単量体が2つまたは3つのドメインからなり、第一ドメインが4-1BBLの細胞外ドメインまたはその一部であり、第二ドメインが第一ドメインのN末端側に位置する抗原相互作用部位からなり、任意で、第三ドメインがペプチドリンカーを介して該第一ドメインと第二ドメインを結合し、該ペプチドリンカーが重合活性を含まない、三量体ポリペプチド構築物。
【請求項2】
細胞外ドメインが4-1BBLの完全な細胞外ドメインである、請求項1記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項3】
抗原相互作用部位が別の抗原と特異的に相互作用する少なくとも2つのドメインを含む、請求項1または2のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項4】
少なくとも2つのドメインがペプチドリンカーを介して結合されている、請求項3記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項5】
抗原相互作用部位が1つまたは複数の細胞表面マーカーに特異的である、請求項1〜4のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項6】
細胞表面メーカーが腫瘍マーカーである、請求項5記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項7】
抗原相互作用部位が、抗体由来領域である少なくとも1つのドメインを含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項8】
抗原相互作用部位が少なくとも2つの抗体由来領域を含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項9】
抗原相互作用部位が、B7ファミリーのメンバーの細胞外ドメイン、またはその特異的受容体に結合することができるその断片もしくは誘導体を含む、請求項1〜8のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項10】
抗原相互作用部位がscFv、Fab、および単一のIg可変領域からなる群より選択される、請求項1〜9のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項11】
scFvが、EpCAM、NKG2D、CD19、PSMA、MCSP、stn (TAG72)、CD44v6、炭酸脱水酵素IX (CAIX)、CEA、EGFR、CD33、Wue-1、CD3、Muc-1、CD20、Her2-neu、Her 3、Her 4、およびLewis-Yに特異的なscFvからなる群より選択される、請求項10記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項12】
B7ファミリーのメンバーまたはその断片もしくは誘導体が、B7.1、B7.2、B7-H3、B7-RP1、B7-DC、PDL1、およびPDL2からなる群より選択される、請求項9〜11のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項13】
各単量体の第二ドメインがEpCAMに特異的なscFvを含む、請求項1〜12のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項14】
各単量体が配列番号:20に示されるアミノ酸配列を有する、請求項13記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項15】
各単量体の第二ドメインがモノクローナル抗体237による/または由来するscFvを含む、請求項1〜12のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項16】
各単量体が配列番号:8に示されるアミノ酸配列を有する、請求項15記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項17】
各単量体の第二ドメインが、EpCAMに特異的なscFvおよびNKG2Dに特異的なscFvを含む、請求項1〜12のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項18】
各単量体が配列番号:18に示されるアミノ酸配列を有する、請求項17記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項19】
各単量体の第二ドメインが二重特異性scFv構築物を含み、少なくとも1つのscFvがCD3に特異的である、請求項1〜12のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項20】
CD3に特異的である各単量体内のscFvが、配列番号:22に示されるアミノ酸配列を有する、請求項19記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項21】
各単量体の第二ドメインが、EpCAMに特異的なscFv、およびB7.1の細胞外ドメインまたはその特異的受容体に結合することができるその断片もしくは誘導体である抗原相互作用部位を含む、請求項7〜12のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項22】
各単量体が配列番号:16に示されるアミノ酸配列を有する、請求項21記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項23】
少なくとも2つの異なる単量体からなり、該異なる単量体が異なる抗原相互作用部位によって特徴づけられる、請求項1〜12のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項24】
少なくとも1つの単量体がタグをさらに含む。請求項1〜23のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項25】
タグが少なくとも1つの単量体のC末端におけるHISタグである、請求項24記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項26】
真核生物発現系において発現される、請求項1〜25のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物の単量体をコードする核酸分子。
【請求項28】
請求項27記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項29】
核酸分子がDNAである、請求項28記載のベクター。
【請求項30】
請求項1〜26のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物の単量体をコードする核酸分子が原核生物宿主および/または真核生物宿主において転写および任意で発現を可能にする1つまたは複数の制御配列に機能的に連結された発現ベクターである、請求項28または29のいずれか一項記載のベクター。
【請求項31】
pEF-DHFRまたはpEF-ADAである、請求項30記載のベクター。
【請求項32】
請求項28〜31のいずれか一項記載の少なくとも1つのベクターまたは請求項27記載の少なくとも1つの核酸分子を含む宿主。
【請求項33】
細菌、昆虫、真菌、植物、または動物細胞である、請求項32記載の宿主。
【請求項34】
哺乳動物細胞である、請求項32記載の宿主。
【請求項35】
ヒト細胞またはヒト細胞株である、請求項34記載の宿主。
【請求項36】
三量体ポリペプチド構築物の発現を可能にする条件下で、請求項32〜35のいずれか一項記載の宿主を培養する段階、および培養液から産生されたポリペプチド構築物を回収する段階を含む、三量体ポリペプチド構築物を産生する方法。
【請求項37】
発現により、少なくとも90%の三量体化率、および産生されたポリペプチド構築物の培養液からの回収がもたらされる、請求項36記載の方法。
【請求項38】
請求項1〜26のいずれか一項記載の、または請求項36もしくは37記載の方法によって産生される三量体構築物、請求項27記載の核酸分子、請求項28〜31のいずれか一項記載のベクター、または請求項32〜35のいずれか一項記載の宿主、および任意で免疫エフェクター細胞の活性化シグナルを提供し得るタンパク質様化合物を含む組成物。
【請求項39】
適切な担体製剤、安定剤、および/または賦形剤を任意でさらに含む薬学的組成物である、請求項38記載の組成物。
【請求項40】
検出手段および検出法を任意でさらに含む診断組成物である、請求項39記載の組成物。
【請求項41】
増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫障害、自己免疫疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫反応、移植片対宿主病、または宿主対移植片病を予防、治療、または改善する薬学的組成物を調製するための、請求項1〜26のいずれか一項記載の、または請求項36もしくは37記載の方法によって産生される三量体構築物、請求項27記載の核酸分子、請求項28〜31のいずれか一項記載のベクター、または請求項32〜35のいずれか一項記載の宿主の使用。
【請求項42】
腫瘍性疾患が上皮癌または微小残存癌である、請求項41記載の使用。
【請求項43】
請求項1〜26のいずれか一項記載の、または請求項36もしくは37記載の方法によって産生される三量体構築物、請求項27記載の核酸分子、請求項28〜31のいずれか一項記載のベクター、または請求項32〜35のいずれか一項記載の宿主を、そのような予防、治療、または改善を必要とする被験体に投与する段階を含む、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫障害、自己免疫疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫反応、移植片対宿主病、または宿主対移植片病を予防、治療、または改善する方法。
【請求項44】
腫瘍性疾患が上皮癌または微小残存癌である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
被験体がヒトである、請求項43または44のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
免疫エフェクター細胞の活性化シグナルを提供し得るタンパク質様化合物を投与する段階をさらに含む、請求項43〜45のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
タンパク質様化合物が、請求項1〜26のいずれか一項記載の、または請求項36もしくは37記載の方法によって産生される三量体構築物、請求項27記載の核酸分子、請求項28〜31のいずれか一項記載のベクター、または請求項32〜35のいずれか一項記載の宿主と同時にまたは別々に投与される、請求項46記載の方法。
【請求項48】
請求項1〜26のいずれか一項記載の、または請求項36もしくは37記載の方法によって産生される三量体構築物、請求項27記載の核酸分子、請求項28〜31のいずれか一項記載のベクター、または請求項32〜35のいずれか一項記載の宿主を含む、キット。
【請求項1】
三量体ポリペプチド構築物の各単量体が2つまたは3つのドメインからなり、第一ドメインが4-1BBLの細胞外ドメインまたはその一部であり、第二ドメインが第一ドメインのN末端側に位置する抗原相互作用部位からなり、任意で、第三ドメインがペプチドリンカーを介して該第一ドメインと第二ドメインを結合し、該ペプチドリンカーが重合活性を含まない、三量体ポリペプチド構築物。
【請求項2】
細胞外ドメインが4-1BBLの完全な細胞外ドメインである、請求項1記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項3】
抗原相互作用部位が別の抗原と特異的に相互作用する少なくとも2つのドメインを含む、請求項1または2のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項4】
少なくとも2つのドメインがペプチドリンカーを介して結合されている、請求項3記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項5】
抗原相互作用部位が1つまたは複数の細胞表面マーカーに特異的である、請求項1〜4のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項6】
細胞表面メーカーが腫瘍マーカーである、請求項5記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項7】
抗原相互作用部位が、抗体由来領域である少なくとも1つのドメインを含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項8】
抗原相互作用部位が少なくとも2つの抗体由来領域を含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項9】
抗原相互作用部位が、B7ファミリーのメンバーの細胞外ドメイン、またはその特異的受容体に結合することができるその断片もしくは誘導体を含む、請求項1〜8のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項10】
抗原相互作用部位がscFv、Fab、および単一のIg可変領域からなる群より選択される、請求項1〜9のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項11】
scFvが、EpCAM、NKG2D、CD19、PSMA、MCSP、stn (TAG72)、CD44v6、炭酸脱水酵素IX (CAIX)、CEA、EGFR、CD33、Wue-1、CD3、Muc-1、CD20、Her2-neu、Her 3、Her 4、およびLewis-Yに特異的なscFvからなる群より選択される、請求項10記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項12】
B7ファミリーのメンバーまたはその断片もしくは誘導体が、B7.1、B7.2、B7-H3、B7-RP1、B7-DC、PDL1、およびPDL2からなる群より選択される、請求項9〜11のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項13】
各単量体の第二ドメインがEpCAMに特異的なscFvを含む、請求項1〜12のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項14】
各単量体が配列番号:20に示されるアミノ酸配列を有する、請求項13記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項15】
各単量体の第二ドメインがモノクローナル抗体237による/または由来するscFvを含む、請求項1〜12のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項16】
各単量体が配列番号:8に示されるアミノ酸配列を有する、請求項15記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項17】
各単量体の第二ドメインが、EpCAMに特異的なscFvおよびNKG2Dに特異的なscFvを含む、請求項1〜12のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項18】
各単量体が配列番号:18に示されるアミノ酸配列を有する、請求項17記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項19】
各単量体の第二ドメインが二重特異性scFv構築物を含み、少なくとも1つのscFvがCD3に特異的である、請求項1〜12のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項20】
CD3に特異的である各単量体内のscFvが、配列番号:22に示されるアミノ酸配列を有する、請求項19記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項21】
各単量体の第二ドメインが、EpCAMに特異的なscFv、およびB7.1の細胞外ドメインまたはその特異的受容体に結合することができるその断片もしくは誘導体である抗原相互作用部位を含む、請求項7〜12のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項22】
各単量体が配列番号:16に示されるアミノ酸配列を有する、請求項21記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項23】
少なくとも2つの異なる単量体からなり、該異なる単量体が異なる抗原相互作用部位によって特徴づけられる、請求項1〜12のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項24】
少なくとも1つの単量体がタグをさらに含む。請求項1〜23のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項25】
タグが少なくとも1つの単量体のC末端におけるHISタグである、請求項24記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項26】
真核生物発現系において発現される、請求項1〜25のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物の単量体をコードする核酸分子。
【請求項28】
請求項27記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項29】
核酸分子がDNAである、請求項28記載のベクター。
【請求項30】
請求項1〜26のいずれか一項記載の三量体ポリペプチド構築物の単量体をコードする核酸分子が原核生物宿主および/または真核生物宿主において転写および任意で発現を可能にする1つまたは複数の制御配列に機能的に連結された発現ベクターである、請求項28または29のいずれか一項記載のベクター。
【請求項31】
pEF-DHFRまたはpEF-ADAである、請求項30記載のベクター。
【請求項32】
請求項28〜31のいずれか一項記載の少なくとも1つのベクターまたは請求項27記載の少なくとも1つの核酸分子を含む宿主。
【請求項33】
細菌、昆虫、真菌、植物、または動物細胞である、請求項32記載の宿主。
【請求項34】
哺乳動物細胞である、請求項32記載の宿主。
【請求項35】
ヒト細胞またはヒト細胞株である、請求項34記載の宿主。
【請求項36】
三量体ポリペプチド構築物の発現を可能にする条件下で、請求項32〜35のいずれか一項記載の宿主を培養する段階、および培養液から産生されたポリペプチド構築物を回収する段階を含む、三量体ポリペプチド構築物を産生する方法。
【請求項37】
発現により、少なくとも90%の三量体化率、および産生されたポリペプチド構築物の培養液からの回収がもたらされる、請求項36記載の方法。
【請求項38】
請求項1〜26のいずれか一項記載の、または請求項36もしくは37記載の方法によって産生される三量体構築物、請求項27記載の核酸分子、請求項28〜31のいずれか一項記載のベクター、または請求項32〜35のいずれか一項記載の宿主、および任意で免疫エフェクター細胞の活性化シグナルを提供し得るタンパク質様化合物を含む組成物。
【請求項39】
適切な担体製剤、安定剤、および/または賦形剤を任意でさらに含む薬学的組成物である、請求項38記載の組成物。
【請求項40】
検出手段および検出法を任意でさらに含む診断組成物である、請求項39記載の組成物。
【請求項41】
増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫障害、自己免疫疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫反応、移植片対宿主病、または宿主対移植片病を予防、治療、または改善する薬学的組成物を調製するための、請求項1〜26のいずれか一項記載の、または請求項36もしくは37記載の方法によって産生される三量体構築物、請求項27記載の核酸分子、請求項28〜31のいずれか一項記載のベクター、または請求項32〜35のいずれか一項記載の宿主の使用。
【請求項42】
腫瘍性疾患が上皮癌または微小残存癌である、請求項41記載の使用。
【請求項43】
請求項1〜26のいずれか一項記載の、または請求項36もしくは37記載の方法によって産生される三量体構築物、請求項27記載の核酸分子、請求項28〜31のいずれか一項記載のベクター、または請求項32〜35のいずれか一項記載の宿主を、そのような予防、治療、または改善を必要とする被験体に投与する段階を含む、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫障害、自己免疫疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫反応、移植片対宿主病、または宿主対移植片病を予防、治療、または改善する方法。
【請求項44】
腫瘍性疾患が上皮癌または微小残存癌である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
被験体がヒトである、請求項43または44のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
免疫エフェクター細胞の活性化シグナルを提供し得るタンパク質様化合物を投与する段階をさらに含む、請求項43〜45のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
タンパク質様化合物が、請求項1〜26のいずれか一項記載の、または請求項36もしくは37記載の方法によって産生される三量体構築物、請求項27記載の核酸分子、請求項28〜31のいずれか一項記載のベクター、または請求項32〜35のいずれか一項記載の宿主と同時にまたは別々に投与される、請求項46記載の方法。
【請求項48】
請求項1〜26のいずれか一項記載の、または請求項36もしくは37記載の方法によって産生される三量体構築物、請求項27記載の核酸分子、請求項28〜31のいずれか一項記載のベクター、または請求項32〜35のいずれか一項記載の宿主を含む、キット。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公表番号】特表2007−523602(P2007−523602A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501745(P2006−501745)
【出願日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001068
【国際公開番号】WO2004/069876
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(505298825)マイクロメット アクツィエン ゲゼルシャフト (14)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001068
【国際公開番号】WO2004/069876
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(505298825)マイクロメット アクツィエン ゲゼルシャフト (14)
【Fターム(参考)】
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