説明

持続的電導性の利点を有する中間留出燃料油

【課題】中間留出燃料油組成物、特に超低硫黄ジーゼル燃料油における電導性を改善し、且つ静電荷に関連した危険を軽減するための、電導性を改良する添加剤濃厚物、およびその方法を提供する。
【解決手段】超低硫黄ジーゼル燃料油または超低硫黄ケロシン等の燃料油に、持続的導電性の利点を付与する、実質的に硫黄を含有しない帯電防止剤を予め混合した、無灰分清浄剤、金属含有清浄剤等の塩基性窒素成分を含んでなる、添加剤濃厚物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間留出燃料油組成物、特にジーゼル燃料油及び最も特に低硫黄及び超低硫黄ジーゼル燃料油の電導性を改良するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある中間留出燃料油(middle distillate fuel)組成物、特にジーゼル燃料油は、特に激しい動きのとき、例えば燃料をタンカーへ或いは他の大量の容器へ入れようとするとき、静電気を発生しうる。ジーゼル燃料油はさほど揮発性ではないが、これを輸送するために使用するタンカーはガソリン、ケロシン及び他のより揮発性で可燃性の液体を輸送するためにも使用される。このより揮発性の燃料油をタンカーから配送した後でさえ、その蒸気は依然存在し、燃料組成物からの静電気の放電で発生するスパークにより火災または爆発の危険を引き起こす可能性がある。
【0003】
これらの危険は、近年人口増加や低硫黄燃料油の使用と共により深刻となり、ごく最近では超低硫黄ジーゼル燃料油の導入と共に更に深刻になってきた。硫黄をジーゼル油から除去するために使用される方法は、燃料油中の他の極性化合物の濃度を低下させ、これが順次燃料油の帯電荷を分散させる能力も減少させている。
【0004】
低及び超低硫黄燃料油の火災または爆発の危険を低減するために、燃料油を大規模な容器に入れる時点またはそれに先立って電導性改良剤を燃料に添加することが普通になってきた。この電導性改良剤は名の示すとおり燃料油の電導性を改善し、かくして大量の燃料油の輸送中に形成されるいずれかの静電荷を、スパークの発生なしに安全に分散させることができる。電導性改良剤は帯電防止剤としても知られている。
【0005】
燃料油、特にジーゼル燃料油に使用される電導性改良剤または帯電防止剤の最も普通の種類は、イノスペック・ヒュエル・スペシャルティーズ(Innospec Fuel Specialties, LLC, New Wark, Delaware)から販売されているスタディス(Stadis(R))ブランドの帯電防止剤である。しかしながら、スタディスブランドの帯電防止剤は硫黄を含んでいる。従ってスタディス帯電防止剤のジーゼル燃料油への添加は超低硫黄燃料油を使用することの利点を低下させる。更にこれらの帯電防止剤は非常に高価である。
【0006】
更に、硫黄含有帯電防止剤は、塩基性窒素を含む添加剤濃厚物または燃料油と一緒に使用したときに他の問題を引き起こす。特に、硫黄含有帯電防止剤によって提供される電導性の改善は、塩基性窒素を含む添加剤濃厚物または燃料油に使用したとき、非常に急速に消失する。8ppmの濃度で使用したときでさえ、電導性の測定値は、数日のうちに50pS/m以下まで急激に低下する。これは、これらの帯電防止剤を、塩基性窒素を含む添加剤濃厚物中へ予混合することの妨げとなるから不利である。典型的な燃料添加剤濃厚物の多くの成分は、窒素含有化合物、例えば分散剤、清浄剤、セタン価向上剤などを含む。結果として、硫黄含有帯電防止剤を、他の添加剤濃厚物成分と別に添加することがしばしば必要である。かくして、これらの種類の帯電防止剤は、現場で別のタンクに保持するか、または燃料に別に添加しなければならない。従ってこれらの種類の帯電防止剤は、固有の付加的費用のほかに、貯蔵、取り扱い、及び適用に関して、更なる経費が必要である。
【0007】
それ故に中間留出燃料油組成物、特に塩基性窒素化合物を含むものにおける静電気の形成と放電を手際よく処置できる組成物と方法が必要とされている。
【発明の概略】
【0008】
ある具体例において、本発明は帯電防止剤と予め混合された塩基性窒素成分を含んでなる添加剤濃厚物を提供する。
【0009】
ある具体例において、本発明は燃料油組成物の電導性が50℃で貯蔵したとき3日間にわたって50%以下しか低下しない、塩基性窒素成分及び帯電防止剤を含んでなる、中間留出燃料油組成物を提供する。
【0010】
ある具体例において、本発明は、該燃料油組成物の電導性が50℃で貯蔵したとき3日間にわたって50%以下しか低下しない、帯電防止剤を中間留出燃料油組成物に添加する工程を含んでなる、方法を提供する。
【0011】
本発明の更なる目的及び利点は、以下の記述で一部説明されるであろうし、及び/または本開示の実施によって学習することができよう。本発明の目的及び利点は、特に特許請求の範囲に示した要素及びその組合せを用いて具現化でき、達成される。
【0012】
前述の一般的な記述及び以下の詳細な記述の両方は、単なる例示及び説明であり、特許請求の範囲のように本発明を限定するものでないことを理解すべきである。
【発明の詳細な記述】
【0013】
燃料油の電導性を改善することにより、燃料油は、例えば燃料油をタンカーのトラックまたは鉄道貨車から配送する場合、高容量の燃料油輸送で発生するかもしれない静電荷をより良く分散させることができる。かくして燃料油は、静電荷をより良く分散できるから、燃料油それ自体からの或はタンカーで以前に輸送された前の燃料からのその場に存在するかもしれない揮発性の蒸気を発火させるかもしれないスパーク発生の可能性をより低減せしめうる。
【0014】
本具体例は、ある帯電防止剤、特にスルホン残基、スルホン酸残基、及びその塩を本質的に含まないものが、例えジーゼル燃料油組成物が塩基性窒素を含んでいても該組成物に持続的電導性の利点を提供するという本申請者による驚くべきに発見に基づいている。
【0015】
ここに「持続的電導性の利点」とは、燃料油の電導性が、50℃で貯蔵したとき、帯電防止剤及び塩基性窒素成分をジーゼル燃料油に添加してから3日以内においてその初期測定値から50%以下しか低下しないということを示すために使用される。より好ましくは、その電導性はその3日の期間内に30%以下しか低下しない。さらに好ましくは、電導性の測定値は、帯電防止剤及び塩基性窒素成分を燃料に導入した後少なくとも7日間で30%以下しか低下しない。いくつかの具体例において、電導性測定値は、帯電防止剤及び塩基性窒素成分の混合から21日後において、依然としてその初期測定値の少なくとも50%である。
【0016】
「電導性の利点」とは、燃料油の電導性が燃料油の配送時点及び温度において少なくとも25Ps/Mの電導性を付与するのに十分であることを示すために使用される。
【0017】
本具体例は、中間留出燃料油組成物に特に適当である。中間留出燃料油組成物はジェット燃料油、ジーゼル燃料油、及びケロシンを含むが、これに限定されない。ある具体例において、燃料油は硫黄約500ppm以下、好ましくは硫黄約350ppm以下の低硫黄燃料油である。ある具体例において、燃料油は超低硫黄ジーゼル燃料油または超低硫黄ケロシンである。超低硫黄燃料油は一般に硫黄が約15ppm以下にすぎない、より好ましくは10ppm以下にすぎないものと考えられる。ここに「ジーゼル燃料油」とは、一般にジーゼル、バイオジーゼル、バイオジーゼル由来の燃料油、合成ジーゼル及びこれらの
混合物を包含する一般名称と考えられる。本明細書において、ppmは断らない限り重量によるものである。
【0018】
本発明は、ジェット燃料油はその硫黄の量が比較的高いから通常「低硫黄」または「超低硫黄」燃料油とみなされないけれども、この燃料油も包含するものとする。それにもかかわらず、ジェット燃料油はその硫黄含量と無関係に本具体例の電導性の改善を享受しうる。
【0019】
本明細書に使用する「内燃機関系」及び「装置」とは、全体でまたは一部で動力を発生させるために可燃性燃料油を利用するいずれかの装置、機械、またはモーターを包含する。この術語は例えばジーゼルー電気ハイブリッド車、ガソリンー電気ハイブリッド車、2ストロークエンジン、いずれかの及びすべてのバーナーまたは燃焼装置、例えば静置バーナー、廃棄物燃焼機、ジーゼル燃料油バーナー、ジーゼル燃料油エンジン、自動車ジーゼルエンジン、ガソリン燃料油バーナー、ガソリン燃料油エンジン、火力発電機、などを含む。本発明から利点を享受しうる炭化水素質燃料油燃焼装置は、燃料を燃焼するすべての燃焼装置、システム、器具、及び/またはエンジンを含む。「燃焼系」は、炭化水素質燃料油を燃焼するまたはそれが燃焼される内燃及び外燃機関、機械、エンジン、タービンエンジン、ジェットエンジン、ボイラー、燃焼機、蒸発式バーナー、プラズマバーナー系、プラズマアーク、静置バーナー、なども包含する。
【0020】
本発明で意図される中間留出燃料油組成物は他の添加剤を含むことができる。これらの添加剤のいくつかはより普通には精製時に直接添加されるが、他のものは典型的には添加剤濃厚物としてタンカーへ注入する時点で添加される。使用しうる通常の燃料油添加剤の例は、酸化防止剤(例えばフェノール類、例えば2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、またはフェニレンジアミン、例えばN,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン)、燃料油安定剤、分散剤、ヘイズ防止剤(antihaze agent)、消泡剤、セタン価向上剤、燃焼改良剤、防食剤、殺生物剤、染料、冷時流動性改良剤(例えばポリエステル)、媒煙低減剤、触媒寿命向上剤及び抗乳化剤(demulsifier)、潤滑剤及び他の標準的または有用な燃料油添加剤を含む。
【0021】
中間留出燃料油組成物に対する通常の添加剤の例は、無極性有機溶媒、例えばトルエン、キシレン、及びホワイトスピリットを含む芳香族及び脂肪族炭化水素例えばロイヤルダッチ/シェル(Royal Dutch Shell)グループから登録商標「シェルゾル(SHELLSOL)」として販売されているものまたはエクソンモービル(ExxonMobil)から入手できるアロマティック(AROMATIC)100及びアロマティック150;極性有機溶媒、特にアルコール、一般には脂肪族アルコール例えば2−エチルヘキサノール、デカノール、及びイソトリデカノールを含む。消泡剤は、例えばテゴプレン(TEGOPRENTM)5851(例えばTh.ゴールドシュミット(Goldschmidt))、Q25907(例えばダウコーニング(Dow Corning))、またはロドーシル(RHODORSILTM)(例えばローンプーラン(Rhone Poulenc))として市販されているポリエーテル改変ポリシロキサンを含む。セタン価向上剤(いわゆる着火改良剤)は、硝酸アルキル(例えば硝酸2−エチルヘキシル及び硝酸シクロヘキシル)を含む。防錆剤は、コハク酸誘導体の多価アルコールエステル(例えばラインへミー(Rhein Chemie,Mannheim,独国)からRC4801TMとしてまたはアフトンケミカル社(Afton Chemical Corp.)からハイテク(HiTEC(R))536)として市販されているもの)を含む。適当な金属不活性剤は、サリチル酸誘導体、例えばN,N’−ジサリチリデン−1,2−プロパンジアミンを含む。
【0022】
特に好適な潤滑添加剤は、ヒドロカルビル置換無水コハク酸及びヒドロキシアミンに由
来する。これらの添加剤は、燃料油の他の性能特性、例えば清浄性、着火性、安定性などを悪くすることなしに燃料油の潤滑性を向上させる。更に非酸性潤滑添加剤は、中間留出燃料油組成物と接触する部分の腐食の及び燃料油添加剤処方物の塩基性成分との反応の危険性をより少なくする。
【0023】
ある観点において、「ヒドロカルビル」基はアルケニルまたはアルキル基である。「ヒドロキシアミン」はモノヒドロキシアミンまたはポリヒドロキシアミン、例えばジヒドロキシアミン、またはこれらの混合物を含む一般的な意味を持つ。有用なヒドロカルビル無水コハク酸化合物の例は、トリデシル無水コハク酸、ペンタデシル無水コハク酸、テトラデセニル無水コハク酸、ヘキサデセニル無水コハク酸、ドデシル無水コハク酸、テトラデシル無水コハク酸、ヘキサデシル無水コハク酸、オクタデセニル無水コハク酸、テトラプロピレン置換無水コハク酸、ドコセニル無水コハク酸、及びこれらの混合物を含む。
【0024】
ヒドロキシアミンの例は、エタノールアミン,ジエタノールアミン、N−アルケニルエタノールアミン、N−アルキルイソプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、及びこれらの混合物を含む。但しこの場合、存在するならばアルキル及びアルケニル基は炭素数が1−12である。他の有用なヒドロキシアミンは、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、5−アミノ−1−ペンタノール、6−アミノ−1−ヘキサノール、4−アミノフェノール、これらの異性体、及びこれらの混合物を含む。更に他の群のヒドロキシアミンは、ヒドロキシル基が窒素に直接結合しているもの、例えばヒドロキシルアミン、及びN−アルキルヒドロキシアミンまたはN−アルケニルヒドロキシアミンである。但しこれらのアルキルまたはアルケニル基は12までの炭素原子を含んでいてよい。
【0025】
遊離のヒドロキシル基をエポキシド、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、グリシドールなどと反応させたHSAヒドロキシアミン化合物も有用である。ヒドロカルビル置換無水コハク酸アシル化剤とヒドロキシアミンとのモル比は、約1:4−約4:1、より好ましくは約1:2−約2:1であってよい。
【0026】
典型的には、中間留出燃料油組成物に使用される潤滑向上添加剤の濃度は、10−1000ppm、好ましくは10−500ppm、より好ましくは25−250ppmの範囲に入る。添加剤の混合物を使用する場合、全添加剤濃度は記述した典型的な範囲内に入る。
【0027】
簡便のために、添加剤は燃料油で希釈する濃厚物として付与してもよい。そのような濃厚物は、典型的には添加剤99−1重量%及び濃厚物の使用される燃料油と混和する及び/またはそれに溶解する添加剤に対する溶媒または希釈剤1−99重量%を含んでなる。この溶媒または希釈剤は勿論低硫黄燃料油自体であってよい。しかしながら、他の溶媒または希釈剤の例は、ホワイトスピリット、ケロシン、アルコール(例えば2−エチルヘキサノール、イソプロパノール、及びイソデカノール)、及び高沸点芳香族溶媒(例えばトルエン、キシレン)を含む。セタン価向上剤(例えば硝酸2−エチルヘキシル)も溶媒または希釈剤として使用しうる。勿論これらは単独でも、混合物としても使用できる。
【0028】
本具体例によって付与される持続的電導性の利点は塩基性窒素の存在下に得られるから、本発明で使用できる特別な清浄剤(detergent)(分散剤としても公知)は塩基性窒素含有清浄剤を含む。適当な無灰分清浄剤/分散剤は、アミド、アミン、ポリエーテルアミン、マンニッヒ塩基、(好適である)コハク酸イミドを含む。金属含有清浄剤も効果的である。清浄剤の混合物及び組合せ物も所望により使用できる。
【0029】
これらの清浄剤/分散剤は主に潤滑剤組成物に使用するための添加剤としてよく知られているが、その炭化水素燃料油への使用も記述されている。無灰分分散剤は燃焼時に殆どまたは全然金属含有残渣を残さない。それらは一般に炭素、水素、酸素だけ、多くの場合に窒素を含むが、時にリン、硫黄、またはホウ素のような他の非金属元素を更に含有する。ここに特に有用な無灰分分散剤/清浄剤は、窒素約4.5%量を達成して向上した分散性を得るためにポリアミンと反応せしめられた無水マレイン酸において置換された「高反応性」ポリイソブチレン(HR−PIB)に由来する。そのような物質は、アフトンケミカル社からハイテク9651、ハイテク4247、またはハイテク4249として入手できる。清浄剤/分散剤は約5−約50重量%、より好ましくは10−30%の量で添加剤濃厚物に使用できる。
【0030】
ある好適な具体例において、清浄剤は分子当りの窒素が平均少なくとも3であるコハク酸イミドである。コハク酸イミドは、好ましくは脂肪族であり、飽和または不飽和、特にエチレン性不飽和、例えばアルキルまたはアルケニルコハク酸イミドであってよい。典型的には清浄剤は、一般にアルキルまたはアルケニル基の炭素数が少なくとも35のアルキルまたはアルケニルコハク酸アシル化剤、及び分子あたりの窒素数が平均少なくとも3のアルキレンポリアミン混合物から製造される。他の具体例において、ポリアミンは分子当りの窒素数が4−6である。好ましくは、それは数平均分子量500−10000のポリイソブテン及びトリエチレンテトラミンからペンタエチレンヘキサミンまでの平均組成を有する環式及び非環式部分を含むことができるエチレンポリアミンに由来するポリイソブテニルコハク酸アシル化剤から製造することができる。かくして分子鎖は典型的には500−2500、特に750−1500の分子量を有し、分子量約2100の脂肪族鎖を有するコハク酸イミドも有用であるけれども特に900−1300の分子量を有するものが特に有用であろう。更なる詳細は米国特許第5,932,525号及び第6,048,373号、及びヨーロッパ特許第432,941号、第460,309号、及び第1,237,373号に見出すことができる。
【0031】
本明細書で有用である適当な金属含有清浄剤の例は、リチウムフェネート、ナトリウムフェネート、カリウムフェネート、カルシウムフェネート、マグネシウムフェネート、硫化リチウムフェネート、硫化ナトリウムフェネート、硫化カリウムフェネート、硫化カルシウムフェネート、及び硫化マグネシウムフェネート、但し各芳香族基は1つまたはそれ以上の脂肪族基を有して炭化水素溶解性を付与する;上述のフェノールまたは硫化フェノールのいずれかの塩基性塩(しばしば「過塩基化」フェネートまたは「過塩基化硫化フェネート」として言及される);リチウムスルホネート、ナトリウムスルホネート、カリウムスルホネート、カルシウムスルホネート、及びマグネシウムスルホネート、但し各スルホン酸残基は芳香族核に結合し、該核は普通順次1つまたはそれ以上の脂肪族置換基を有して炭化水素溶解性を付与する;上記スルホネートのいずれかの塩基性塩(しばしば「過塩基化スルホネート」として言及される);リチウムサリシレート、ナトリウムサリシレート、カリウムサリシレート、カルシウムサリシレート、及びマグネシウムサリシレート、但し各芳香族基は1つまたはそれ以上の脂肪族基を有して炭化水素溶解性を付与する;上記サリシレートのいずれかの塩基性塩(しばしば「過塩基化サリシレート」として言及される);炭素数10−2000を有する加水分解されたホスホ硫化オレフィンのまたは炭素数10−2000を有する加水分解されたホスホ硫化アルコール及び/または脂肪族置換フェノール性化合物のリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウム塩;脂肪族カルボン酸及び脂肪族置換脂環族カルボン酸のリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウム塩;上記カルボン酸の塩基性塩(しばしば「過塩基化カルボキシレート」として言及される)並びに油溶性有機酸の他の多くの同様のアルカリ及びアルカリ土類金属塩を含むが、これに限定されるものではない。2つまたはそれ以上の異なるアルカリ及び/またはアルカリ土類金属の塩の混合物も使用できる。同様に、2つまたはそれ以上の異なる酸或いは2つまたはそれ以上の異なる種類の酸の混合物の塩(
例えば1つまたはそれ以上のカルシウムフェネートと1つまたはそれ以上のカルシウムスルホネートの混合物)も使用できる。ルビジウム、セシウム、及びストロンチウムの塩も適当であるが、高価なために多くの用途には使用しにくい。
【0032】
乳化液は清浄剤/分散剤を有する燃料油において形成されがちであり、かくして抗乳化剤が必要である。抗乳化剤を不活性化しまたはこれと反応するいずれかの反応はその乳化防止効果を低下させ、より乳化をもたらす。ここに抗乳化剤(またはヘイズ防止剤)は、市販の物質のいずれか、例えばこれに限定されるものではないが、アルコキシル化フェノールホルムアルデヒドポリマー、例えばナルコ(NALCOTM)7007(例えばナルコ(Nalco))、及びトラド(TOLADTM)9310及び9372R(例えばベーカーペトロライト(Baker Petrolite))、アルキル化フェノール及びそれに由来する樹脂、オキシル化アルキルフェノール樹脂、及び4−(1,1−ジメチルエチル)フェノール、メチルオキシラン及びオキシランとのホルムアルデヒドポリマー、エトキシル化EO/PO樹脂、ポリグリコールエステル、エチレンオキシド樹脂であってよい。この抗乳化剤は、抗乳化剤kg当り30mg以上のリン量を有することができる。しかしながら、添加剤濃厚物中の抗乳化剤のリン含量を減じることにより、燃料油添加剤濃厚物の及び得られる燃料油の安定性が非常に高められ且つヘイズがかなり低減されることが観察された。かくして抗乳化剤のリン量は、高々約30mg/kgであることが好適である。
【0033】
本具体例及び方法は、配送の時間及び温度において少なくとも25pS/mの電導性を燃料油に付与することができる。この電導性は、これに限定されるものではないがASTM
D2622及びASTM D4951を含む適当な試験法で測定したジーゼル燃料油 (ASTM D975及びこれに対する修正案及び追加案) における電導性の新しく提案されたASTM標準法に合格するのに十分である。この電導性値は本具体例によれば延長された期間に対して得られ且つ持続される。
【0034】
本明細書で使用される「硫黄含有化合物」は、スルホン、ポリスルホン、直鎖及び分岐鎖脂肪族または芳香族スルホネート、サルフェート、スルフィド、硫化アルケン、ポリアルケン、硫化ポリフェノール、スルホン酸、及びこれらの塩を含む有機硫黄化合物を含む。
【0035】
「硫黄」との関連で使用する場合、「実質的に含まない」とは、例えば関連する化合物がASTM D2622TM D4951に従って測定したとき燃料油組成物に対して高々硫黄量2ppmでしか寄与しないことを示す。特に好適な具体例において、燃料油組成物は好ましくは高々10ppm、最も好ましくは高々約5ppmの硫黄を含んでいてよい。
【0036】
本具体例の持続的電導性の利点を付与する帯電防止剤はあるアクリロニトリルコポリマーを含む。最も好ましくは、帯電防止剤はアルキルアクリレートニトリロスチレンポリマーの、ココ(coco)アルキルアミンとのブレンドを含んでなる。特に好適な帯電防止剤はベーカーペトロライトから入手できるトラド3512である。
【0037】
実施例
以下の実施例は限定するものではないが、本具体例を例示する。
【0038】
実施例には次の成分を使用した:
A スタディス(Stadis(R))425、インノスペック・ヒュエルスペシャルティーズ(Innospec Fuel Specialties, LLC)から入手できる電導性改良剤、
B トラッド3514、ベーカーペトロライトから入手できる電導性改良剤、
C トラッド3512、ベーカーペトロライトから入手できる電導性改良剤、
D ハイテク4130SM、アフトンケミカルから入手できる多官能性燃料添加剤濃厚物であるハイテク4130Sの改変物。これはコハク酸イミド清浄剤、エステルにもとづく潤滑添加剤、腐食防止剤、抗乳化剤、芳香族溶媒及びアルコール共溶媒を含んでなる。ハイテク4130SMは未改変物(ハイテク4130S)と対比して低量の清浄剤を有する。
【0039】
各実施例において、ハイテク4130SM添加剤濃厚物を、290ppmの量でエクソンモービルから入手できる超低ジーゼル燃料油に添加した。この添加剤濃厚物はコハク酸イミド清浄剤の形で塩基性窒素成分を含んだ。ついで帯電防止剤を3,5または8ppmの濃度で添加した。電導性を、帯電防止剤を最初に燃料油に添加した後ASTM D2624を用いて電導性を決定した。次いで試料を50℃で貯蔵して、電導性の消失を促進させ、電導性を数週間にわたって周期的に測定した。結果を表1に報告する。実施例(対照例を除く)からのデータを図1にグラフで例示する。図1において、曲線は表1に報告したように用いた帯電防止剤及びその濃度に相当する標識したA3,A5,A8,B3などである。
【0040】
上述したように、本具体例によって付与される電導性の利点は利点の持続性である。この持続される利点は驚くべきことであり、予期を越えたものである。表1及び図1を参照すると、スタディス425またはトラド3514を含む試料では、3日間以内の少なくとも50%電導性消失に関して、非常に急速に電導性が消失した。これに対して、トラド3512を含む試料は長期間にわたって比較的一定の電導性を維持した。
【0041】
この驚くべき且つ予期を越えた発見は、塩基性窒素成分を含むものでさえ添加剤濃厚物を燃料油に添加するに先立って長期間にわたり帯電防止剤を添加剤濃厚物と予混合することを可能にし、更に燃料油組成物に電導性の改良を付与する。
【0042】
以上特別な具体例を記述してきたけれど、代替物、変形物、改変物、及び現在予見できない実質的同等物は、本申請者または同業者の想起しうるところである。従って以下に提起されるような及び修正するような付加的態様は、すべてのそのような代替物、改変物、改変、及び実質的な同等物を包含することが意図されるものである。
【0043】
【表1】

【0044】
本発明の態様を要約すれは、以下の通りである。
1.帯電防止剤を予め混合した塩基性窒素成分を含んでなる、添加剤濃厚物。
2.塩基性窒素成分がコハク酸イミド清浄剤を含んでなる、上記1の添加剤濃厚物。
3.該添加剤濃厚物がスルホン化合物、スルホン酸化合物及びその塩を実質的に含まない、上記1の添加剤濃厚物。
4.該濃厚物が中間留出燃料油組成物に持続的電導性の利点を付与しうる、上記1の添加剤濃厚物。
5.中間留出燃料油組成物に持続的電導性の利点を付与するために、上記1の濃厚物を中間留出燃料油組成物に使用すること。
6.該燃料油組成物の電導性が50℃で貯蔵したとき3日間にわたって50%以下しか低下しない、塩基性窒素成分及び帯電防止剤を含んでなる、中間留出燃料油組成物。
7.該電導性が50℃で貯蔵したとき5日間にわたって50%以下しか低下しない、上記6の組成物。
8.該電導性が50℃で貯蔵したとき12日間にわたって50%以下しか低下しない、上記6の組成物。
9.該電導性が50℃で貯蔵したとき40日間にわたって50%以下しか低下しない、上記6の組成物。
10.該燃料油がジーゼル燃料油を含んでなる、上記6の組成物。
11.該ジーゼル燃料油がイオウを15ppm以下しか含まない、上記10の組成物。
12.該燃料油がバイオジーゼルを含んでなる、上記6の組成物。
13.該塩基性窒素がコハク酸イミド清浄剤を含んでなる、上記6の中間留出燃料油組成物。
14.内燃機関装置で上記6の燃料油組成物を使用すること。
15.該燃料油組成物の電導性が50℃で貯蔵したとき3日間にわたって50%以下しか低下しない、帯電防止剤を中間留出燃料油組成物に添加する工程を含んでなる方法。
16.該燃料油組成物の電導性が50℃で貯蔵したとき5日間にわたって50%以下しか低下しない、上記15の方法。
17.該電導性が50℃で貯蔵したとき17日間にわたって50%以下しか低下しない、上記15の方法。
18.該電導性が50℃で貯蔵したとき40日間にわたって50%以下しか低下しない、上記15の方法。
19.該燃料油がジーゼル燃料油を含んでなる、上記15の方法。
20.該ジーゼル燃料油がイオウを15ppm以下しか含まない、上記19の方法。
21.該燃料油がバイオジーゼルを含んでなる、上記15の方法。
22.該塩基性窒素がコハク酸イミド清浄剤を含んでなる、上記15の方法。
23.燃料油組成物を適用する工程を更に含んでなる、上記15の方法。
24.該適用工程が該燃料油組成物を大規模な容器中へ適用することを含んでなる、上記23の方法。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】超低硫黄ジーゼル燃料油における電導性と時間の関係を例示するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電防止剤を予め混合した塩基性窒素成分を含んでなる、添加剤濃厚物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−266580(P2008−266580A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37917(P2008−37917)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation