指針装置
【課題】励磁コイルを無励磁状態から励磁状態に切り替えるとき、または、励磁状態から無励磁状態に切り替えるときの不要なマグネットロータの回転及び指針の挙動を低減できる指針装置を提供する。
【解決手段】マイコンが、A相、B相励磁コイルに対する駆動電圧の供給を停止した無励磁状態からA相、B相励磁コイルに対して位相π/4、デューティ70%の駆動電圧を供給してマグネットロータを停止させる状態に切り替える際に、位相π/4の駆動電圧のデューティを0から徐々に増加してデューティ70%とする。また、マイコンが、A相、B相励磁コイルに位相π/4、デューティ70%の駆動電圧を供給してマグネットロータを停止させた状態からA相、B相励磁コイルに対する駆動電圧の供給を停止した無励磁状態に切り替える際に、位相π/4の駆動電圧をデューティを徐々に小さくして駆動電圧の供給を停止する。
【解決手段】マイコンが、A相、B相励磁コイルに対する駆動電圧の供給を停止した無励磁状態からA相、B相励磁コイルに対して位相π/4、デューティ70%の駆動電圧を供給してマグネットロータを停止させる状態に切り替える際に、位相π/4の駆動電圧のデューティを0から徐々に増加してデューティ70%とする。また、マイコンが、A相、B相励磁コイルに位相π/4、デューティ70%の駆動電圧を供給してマグネットロータを停止させた状態からA相、B相励磁コイルに対する駆動電圧の供給を停止した無励磁状態に切り替える際に、位相π/4の駆動電圧をデューティを徐々に小さくして駆動電圧の供給を停止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指針装置に係り、特に、複数の励磁コイル及び前記複数の励磁コイルの励磁状態の変化に追従して回転するマグネットロータから構成されたステッピングモータと、前記マグネットロータの回転に連動して移動する指針と、前記励磁コイルに供給する駆動電圧を制御して、前記マグネットロータの回転を制御する回転制御手段と、を備えた指針装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上述した指針装置として、例えば車両に搭載され、車速などを指示するものが知られている(特許文献1〜3)。指針装置は、ステッピングモータと、ステッピングモータの回転に連動して回転する指針と、ステッピングモータの回転を制御する回転制御手段としてのマイコンなど、を備えている。上述したステッピングモータ3は、図7に示すように、2つのA相、B相励磁コイル31a、31bと、これらA相、B相励磁コイル31a、31bを支持するステータ32と、NS極が交互に3極ずつ着磁され、A相、B相励磁コイル31a、31bの励磁状態の変化に追従して回転するマグネットロータ33と、マグネットロータ33の回転を指針に伝えるギア34aなどを備えている。
【0003】
次に、上述した指針装置の動作について図10を参照して説明する。上述した指針装置全体の動作を司るマイコンは、イグニッションスイッチがオンされ、ウエイクアップされると(ステップS10でY)、A相、B相励磁コイル31a、31bに対する駆動電圧の供給が遮断した状態からA相、B相励磁コイル31a、31bに所定位相、所定デューティの駆動電圧を供給してマグネットロータ33の回転を停止させる(ステップS11)。
【0004】
上記ステップS11では、図12の黒丸で示すように、例えば位相π/4、デューティ70%の駆動電圧を出力している。即ち、イグニッションスイッチのオンに応じてA相、B相励磁コイル31a、31bは、図11に示すように、無励磁から急にデューティ70%の大きな駆動電圧が供給された状態となる。その後、マイコンは、指針を強制的に計測値0に向かって逆回転させる初期化動作を行った後(ステップS12)、指針がセンサの計測値を指示するように駆動する通常動作を行う(ステップS13)。
【0005】
A相、B相励磁コイル31a、31bが無励磁の場合、図7(B)又は(C)に示すように、鉄(ステータ32)とマグネットロータ33との関係からその時々で釣り合いの取れる位置で停止する。この状態で、A相、B相励磁コイル31a、31bに駆動電圧をかけてマグネットロータ33を停止させると、図7(A)に示すように、A相、B相励磁コイル31a、31bに発生する磁界に応じた位置にマグネットロータ33が回転してしまう場合がある。
【0006】
このとき、上述したように無励磁(図12の0点)から急にA相、B相励磁コイル31a、31bにデューティ70%の大きな駆動電圧をかけた状態(図12の黒丸)になると、図7(A)に示す位置付近でマグネットロータ33が振動し、マグネットロータ33に不要な動き(回転)が発生してしまう。結果、図13に示すように指針2が一瞬動いてしまい、見た目が悪いという問題があった。また、無励磁から急にA相、B相励磁コイル31a、31bにデューティ70%の大きな駆動電圧をかけた状態になるため、マグネットロータ33が大きく動いてしまい、初期化動作での逆回転角度が大きくなる。しかも、マグネットロータ33の振動が停止してから初期化動作を行う必要があり、初期化動作が終了するまでの時間がかかる、という問題があった。
【0007】
動作に話を戻すと、その後、イグニッションスイッチがオフされ、スリープ条件が成立すると(ステップS14でY)、マイコンは、再び初期化動作を行った後(ステップS15)、A相、B相励磁コイル31a、31bに所定位相(π/4)、所定デューティ(70%)の駆動電圧を供給してマグネットロータ33の回転を停止させる(ステップS16)。次に、マイコンは、A相、B相励磁コイル31a、31bに対する駆動電圧の供給を遮断して(ステップS17)、ステップS1に戻る。即ち、イグニッションスイッチのオフに応じてA相、B相励磁コイル31a、31bは、図11に示すように、デューティ70%の大きな駆動電圧が供給された状態から無励磁となる。
【0008】
A相、B相励磁コイル31a、31bに駆動電圧をかけてマグネットロータ33を停止させた場合、図7(A)に示すように、マグネットロータ33は、A相、B相励磁コイル31a、31b(ステータ32を含む)に発生する磁界に応じた位置に停止するが、A相、B相励磁コイル31a、31bに対する駆動電圧の供給を遮断すると、鉄(ステータ32)とマグネットロータ33との関係になるため、図7(B)及び(C)に示すように、その時々で釣り合いの取れる位置に回転してしまう場合がある。
【0009】
このとき、上述したようにA相、B相励磁コイル31a、31bにデューティ70%の大きな駆動電圧をかけた状態(図12の黒丸)から急に無励磁(図12の0点)になると、図7(B)及び(C)に示す位置付近でマグネットロータ33が振動し、マグネットロータ33に不要な動き(回転)が発生してしまう。このため、同様に、図13に示すように指針が一瞬振動してしまい、見た目が悪いという問題があった。また、A相、B相励磁コイル31a、31bにデューティ70%の大きな駆動電圧をかけた状態から急に無励磁にするため、マグネットロータ33が大きく動いてしまい、計測値0から僅かではあるが外れた状態を指示してしまう恐れもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−347456号公報
【特許文献2】特許第3828792号公報
【特許文献3】特開2007−232436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、励磁コイルを無励磁状態から励磁状態に切り替えるとき、または、励磁状態から無励磁状態に切り替えるときの不要なマグネットロータの回転及び指針の挙動を低減できる指針装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するための請求項1記載の発明は、複数の励磁コイル及び前記複数の励磁コイルの励磁状態の変化に追従して回転するマグネットロータから構成されたステッピングモータと、前記マグネットロータの回転に連動して移動する指針と、前記励磁コイルに供給する駆動電圧を制御して、前記マグネットロータの回転を制御する回転制御手段と、を備えた指針装置において、前記回転制御手段が、前記励磁コイルに対する駆動電圧の供給を停止した無励磁状態から前記励磁コイルに対して所定位相、所定電圧の駆動電圧を供給して前記マグネットロータを停止させる状態に切り替える際に、前記所定位相の駆動電圧の電圧値を0から徐々に増加して前記所定電圧とすることを特徴とする指針装置に存する。
【0013】
請求項2記載の発明は、複数の励磁コイル及び前記複数の励磁コイルの励磁状態の変化に追従して回転するマグネットロータから構成されたステッピングモータと、前記マグネットロータの回転に連動して移動する指針と、前記励磁コイルに供給する駆動電圧を制御して、前記マグネットロータの回転を制御する回転制御手段と、を備えた指針装置において、前記回転制御手段が、前記励磁コイルに所定位相、所定電圧の駆動電圧を供給して前記マグネットロータを停止させた状態から前記励磁コイルに対する駆動電圧の供給を停止した無励磁状態に切り替える際に、前記所定位相の駆動電圧の電圧値を徐々に小さくして前記駆動電圧の供給を停止することを特徴とする指針装置に存する。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、回転制御手段が、励磁コイルに対する駆動電圧の供給を停止した無励磁状態から励磁コイルに対して所定位相、所定電圧の駆動電圧を供給してマグネットロータを停止させる状態に切り替える際に、所定位相の駆動電圧の電圧値を0から徐々に増加して所定電圧とするので、無励磁状態から励磁状態に切り替えるときの不要なマグネットロータの回転及び指針の挙動を低減できる。これにより、その後行われる初期化動作の開始時間も短くなり、逆戻し角度も小さくできる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、回転制御手段が、励磁コイルに所定位相、所定電圧の駆動電圧を供給してマグネットロータを停止させた状態から励磁コイルに対する駆動電圧の供給を停止した無励磁状態に切り替える際に、所定位相の駆動電圧の電圧値を徐々に小さくして駆動電圧の供給を停止するので、励磁状態から無励磁状態に切り替えるときの不要なマグネットロータの回転及び指針の挙動を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の指針装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1に示す指針装置の部分分解斜視図である。
【図3】図1に示すステッピングモータを構成する励磁コイル及びマグネットローラなどを示す図である。
【図4】図1に示す指針装置を構成するマイコンの処理手順を示すフローチャートである。
【図5】電源のオンオフ、イグニッションスイッチのオンオフ、図1に示す指針装置を構成するA相、B相励磁コイルに供給される駆動電圧のタイムチャートである。
【図6】図1に示す指針装置を構成するA相励磁コイル及びB相励磁コイルに供給する駆動電圧と位相との関係を示す図である。
【図7】図1に示す指針装置を構成するマグネットロータの挙動を説明するための説明図である。
【図8】図1に示す指針装置を構成するマグネットロータの回転角度と、従来の指針装置を構成するマグネットロータの回転角度を示すグラフである。
【図9】他の実施形態における駆動電圧のタイムチャートである。
【図10】従来の指針装置の制御を司るマイコンの動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】電源のオンオフ、イグニッションスイッチのオンオフ、従来の指針装置を構成するA相、B相励磁コイルに供給される駆動電圧のタイムチャートである。
【図12】従来の指針装置を構成するA相、B相励磁コイルに供給する駆動電圧と位相との関係を示す図である。
【図13】従来の指針装置の指針の挙動を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の指針装置について図1〜図3を参照して説明する。図1は、本発明の指針装置の一実施形態を示すブロック図である。図2は、図1に示す指針装置の部分分解斜視図である。図3は、図1に示すステッピングモータを構成する励磁コイルおよびマグネットローラなどを示す図である。
【0018】
図1に示すように、指針装置1は、複数の指針2(図2参照)と、これら指針2をそれぞれ駆動する複数のステッピングモータ3と、これらステッピングモータ3の回転を制御する回転制御手段としてのマイクロコンピュータ(以下マイコン4)と、各種データを格納する不揮発性のメモリであるEEPROM5と、を備えている。
【0019】
上記指針2は、図2に示すように、速度センサなどのセンサの計測値を示す目盛りが設けられた文字板上に設けられている。上記ステッピングモータ3は各々、図3に示すように、A相、B相励磁コイル31a、31bと、これらA相、B相励磁コイル31a、31bを支持するステータ32と、これらA相、B相励磁コイル31a、31bの励磁状態の変化に追従して回転するマグネットロータ33と、マグネットロータ33の駆動力を指針2に伝えるギア34a〜34c(ギア34b、34cについては図2参照)と、これらを収容するケース(図2参照)と、を備えている。
【0020】
図3に示すように、A相、B相励磁コイル31a、31bは、軸方向が90度で交差するようにステータ32に取り付けられている。ステータ32は、上記A相、B相励磁コイル31a、31bや後述するマグネットロータ33を囲むヨーク32aと、ヨーク32aから内側に突出し、A相、B相励磁コイル31a、31bが巻き付けられたコイルボビンを支持するポール32bと、を備えている。
【0021】
マグネットロータ33は、円盤状に設けられ、その外周に沿ってN極S極が交互に3極づつ着磁されている。ギア34aは、マグネットロータ33の回転軸に固定されている。ギア34bは、図2に示すように、指針2の回転軸に固定されている。ギア34cは、図2に示すように、マグネットロータ33に固定されたギア34aと、指針2に固定されたギア34bと、の双方に噛み合うように設けられている。これにより、マグネットロータ33が回転するとギア34a〜34cを介して指針2も回転する。
【0022】
また、上記ステッピングモータ3は、図2に示すように、マグネットロータ33の回転に連動する片35と、片35と当接してステッピングモータ3の回転を機械的に停止させるストッパ36と、を有している。片35は、上述したギア34bに固定された円盤部37に突設されている。ストッパ36は、ケースに突設されている。上述した片35とストッパ36とが当接したときに指針2が文字板に設けた目盛り上の計測値0を指示するように、指針2がステッピングモータ3の回転軸に打ち込まれている。
【0023】
上記マイコン4は、図1に示すように、電源IC6からの電源供給を受けて動作する。電源IC6は、車載バッテリBからマイコン4に対する供給電圧を生成する。また、上記マイコン4には、イグニッションスイッチIGがインタフェース(以下I/F)7を介して接続されている。上記マイコン4は、駆動回路41として機能し、ステッピングモータ3のA相励磁コイル31a、B相励磁コイル31bに対して駆動電圧を出力している。なお、本実施形態では、マイコン4を駆動回路41として機能させていたが、マイコン4とは別に駆動回路41を設けても良い。
【0024】
次に、上述した構成の指針装置1の動作について図4を参照して説明する。図4は、図1に示す指針装置1を構成するマイコン4の処理手順を示すフローチャートである。
【0025】
上述したマイコン4は、イグニッションスイッチIGがオンされ、スリープモードから通常モードに移行してウエイクアップされると(ステップS1でY)、A相、B相励磁コイル31a、31bに対して所定位相の駆動電圧を供給すると共に、図5中の点線で囲んだ部分に示すように、この駆動電圧のデューティを0から徐々に大きくする(ステップS2)。本実施形態では、図6に示すように位相π/4の駆動電圧を出力している。即ち、A相、B相励磁コイル31a、31bの−側をグランドに接続し、A相、B相励磁コイル31a、31bの+側に互いに同じ大きさ(即ち同じデューティ)の駆動電圧を供給している。マイコン4は、所定デューティ(例えば70%)に達するまで駆動電圧のデューティを大きくする。
【0026】
駆動電圧のデューティが所定デューティに達すると(ステップS3でY)、マイコン4は、指針2を強制的に計測値0に向かって逆回転させる初期化動作を行う(ステップS4)。指針2を逆回転させるようにステッピングモータ3の回転を制御すると、指針2が計測値0に達したところで片35とストッパ36とが当接して、指針2が0位置で強制的に停止する。その後、マイコン4は、指針2がセンサの計測値を指示するように駆動する通常動作を行う(ステップS5)。
【0027】
その後、イグニッションスイッチIGがオフされ、スリープ条件が成立すると(ステップS6でY)、再び初期化動作を行った後(ステップS7)、A相、B相励磁コイル31a、31bに対して所定位相(π/4)、所定デューティ(70%)の駆動電圧を供給してステッピングモータ3の回転を停止させると共に、図5忠の一点鎖線で囲んだ部分に示すように、この駆動電圧のデューティーを徐々に小さくする(ステップS8)。マイコン4は、0%に達するまで駆動電圧のデューティを小さくする。
【0028】
駆動電圧のデューティが0%に達すると(ステップS9でY)、マイコン4は、A相励磁コイル31a及びB相励磁コイル31bが無励磁に制御されたとして、再びステップS1に戻る。
【0029】
上述した動作の詳細を図6〜図8を参照して説明する。ウエイクアップすると、マイコン4は、A相、B相励磁コイル31a、31bの両者が無励磁となる図6中の0点からA相、B相励磁コイル31a、31bの+側にデューティ70%の駆動電圧が印加される図6中の黒丸に向かうように、0点と黒丸とを結ぶ線に従って駆動電圧のデューティを徐々に増加させる。その後、図6に示す円に沿った駆動電圧を出力することでマグネットロータ33を正回転、逆回転させて初期化動作や通常動作を行う。
【0030】
A相、B相励磁コイル31a、31bが無励磁の場合、図7(B)又は(C)に示すように、鉄(ステータ32)とマグネットロータ33との関係からその時々で釣り合いの取れる位置で停止するが、A相、B相励磁コイル31a、31bに位相π/4の駆動電圧を出力してマグネットロータ33を停止させると、図7(A)に示すように、A相、B相励磁コイル31a、31bに発生する磁界に応じた位置にマグネットロータ33が回転してしまう場合がある。
【0031】
このとき、従来ではA相、B相励磁コイル31a、31bに対して無励磁から急にデューティ70%の大きな駆動電圧をかけた状態になるため、図8の点線で示すように、図7(A)に示す位置付近でマグネットロータ33が振動し、マグネットロータ33に不要な動き(回転)が発生してしまう。これに対して本実施形態では、A相、B相励磁コイル31a、31bに対する駆動電圧の供給を停止した無励磁状態からA相、B相励磁コイル31a、31bに対して位相π/4、デューティ70%(=所定電圧)の駆動電圧を供給してマグネットロータ33を停止させる状態に切り替える際に、位相π/4の駆動電圧のデューティを徐々に増加してデューティ70%にするので、図8の実線で示すように、図7(A)に示す位置付近でマグネットロータ33の振動が低減し、無励磁状態から励磁状態に切り替えるときの不要なマグネットロータ33の回転及び指針2の挙動を低減できる。これにより、その後行われる初期化動作の開始時間も短くなり、逆戻し角度も小さくできる。
【0032】
その後、スリープ条件が成立すると、マイコン4は、A相、B相励磁コイル31a、31bの+側にデューティ70%の駆動電圧が印加される図6中の黒丸からA相、B相励磁コイル31a、31bの両者が無励磁となる図6中の0点に向かうように、黒丸と0点とを結ぶ線に沿って駆動電圧のデューティを徐々に減少させる。
【0033】
A相、B相励磁コイル31a、31bに位相π/4の駆動電圧をかけてマグネットロータ33を停止させた場合、図7(A)に示すように、マグネットロータ33は、A相、B相励磁コイル31a、31b(ステータ32を含む)に発生する磁界に応じた位置に停止するが、A相、B相励磁コイル31a、31bに対する駆動電圧の供給を遮断すると、鉄(ステータ32)とマグネットロータ33との関係になるため、図7(B)又は図7(C)に示すように、その時々で釣り合いの取れる位置に回転してしまう場合がある。
【0034】
このとき、従来ではA相、B相励磁コイル31a、31bに対してデューティ70%の駆動電圧をかけた状態から急に無励磁にするため、図8の点線で示すように、図7(B)又は(C)に示す位置付近でマグネットロータ33が振動し、マグネットロータ33に不要な動き(回転)が発生してしまう。これに対して本実施形態では、A相、B相励磁コイル31a、31bに位相π/4、デューティ70%の駆動電圧を供給してマグネットロータ33を停止させた状態からA相、B相励磁コイル31a、31bに対する駆動電圧の供給を停止した無励磁状態に切り替える際に、所定位相の駆動電圧のデューティを徐々に小さくして駆動電圧の供給を停止するので、図8の実線で示すように、図7(B)又は図7(C)に示す位置付近でのマグネットロータ33の振動が低減し、励磁状態から無励磁状態に切り替えるときの不要なマグネットロータ33の回転及び指針2の挙動を低減できる。
【0035】
なお、上述した実施形態では、マイコンを駆動回路として機能させ、駆動電圧のデューティを変化させることにより、駆動電圧の電圧値を変化させていたが、本発明はこれに限ったものではない。マイコンとは別の駆動回路を設けて、駆動電圧の電圧値そのものを増加させたり、減少させるものであってもよい。
【0036】
また、上述した実施形態では、駆動電圧のデューティを0からデューティ70%に達するまでの間やデューティ70%から0に達するまでの期間、均等にデューティを増減させていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、図9(A)に示すように、駆動電圧のデューティを増加させ始める期間と、増加させた結果、デューティ70%に達する直前の期間と、をその間の期間よりもゆるやかに増加させるようにしてもよい。また、図9(B)に示すように、駆動電圧のデューティを減少し始める期間と、減少させた結果、0に達する直前の期間と、をその間の期間よりも緩やかに減少させるようにしてもよい。
【0037】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 指針装置
2 指針
3 ステッピングモータ
4 マイコン(回転制御手段)
31a A相励磁コイル(励磁コイル)
31b B相励磁コイル(励磁コイル)
33 マグネットロータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、指針装置に係り、特に、複数の励磁コイル及び前記複数の励磁コイルの励磁状態の変化に追従して回転するマグネットロータから構成されたステッピングモータと、前記マグネットロータの回転に連動して移動する指針と、前記励磁コイルに供給する駆動電圧を制御して、前記マグネットロータの回転を制御する回転制御手段と、を備えた指針装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上述した指針装置として、例えば車両に搭載され、車速などを指示するものが知られている(特許文献1〜3)。指針装置は、ステッピングモータと、ステッピングモータの回転に連動して回転する指針と、ステッピングモータの回転を制御する回転制御手段としてのマイコンなど、を備えている。上述したステッピングモータ3は、図7に示すように、2つのA相、B相励磁コイル31a、31bと、これらA相、B相励磁コイル31a、31bを支持するステータ32と、NS極が交互に3極ずつ着磁され、A相、B相励磁コイル31a、31bの励磁状態の変化に追従して回転するマグネットロータ33と、マグネットロータ33の回転を指針に伝えるギア34aなどを備えている。
【0003】
次に、上述した指針装置の動作について図10を参照して説明する。上述した指針装置全体の動作を司るマイコンは、イグニッションスイッチがオンされ、ウエイクアップされると(ステップS10でY)、A相、B相励磁コイル31a、31bに対する駆動電圧の供給が遮断した状態からA相、B相励磁コイル31a、31bに所定位相、所定デューティの駆動電圧を供給してマグネットロータ33の回転を停止させる(ステップS11)。
【0004】
上記ステップS11では、図12の黒丸で示すように、例えば位相π/4、デューティ70%の駆動電圧を出力している。即ち、イグニッションスイッチのオンに応じてA相、B相励磁コイル31a、31bは、図11に示すように、無励磁から急にデューティ70%の大きな駆動電圧が供給された状態となる。その後、マイコンは、指針を強制的に計測値0に向かって逆回転させる初期化動作を行った後(ステップS12)、指針がセンサの計測値を指示するように駆動する通常動作を行う(ステップS13)。
【0005】
A相、B相励磁コイル31a、31bが無励磁の場合、図7(B)又は(C)に示すように、鉄(ステータ32)とマグネットロータ33との関係からその時々で釣り合いの取れる位置で停止する。この状態で、A相、B相励磁コイル31a、31bに駆動電圧をかけてマグネットロータ33を停止させると、図7(A)に示すように、A相、B相励磁コイル31a、31bに発生する磁界に応じた位置にマグネットロータ33が回転してしまう場合がある。
【0006】
このとき、上述したように無励磁(図12の0点)から急にA相、B相励磁コイル31a、31bにデューティ70%の大きな駆動電圧をかけた状態(図12の黒丸)になると、図7(A)に示す位置付近でマグネットロータ33が振動し、マグネットロータ33に不要な動き(回転)が発生してしまう。結果、図13に示すように指針2が一瞬動いてしまい、見た目が悪いという問題があった。また、無励磁から急にA相、B相励磁コイル31a、31bにデューティ70%の大きな駆動電圧をかけた状態になるため、マグネットロータ33が大きく動いてしまい、初期化動作での逆回転角度が大きくなる。しかも、マグネットロータ33の振動が停止してから初期化動作を行う必要があり、初期化動作が終了するまでの時間がかかる、という問題があった。
【0007】
動作に話を戻すと、その後、イグニッションスイッチがオフされ、スリープ条件が成立すると(ステップS14でY)、マイコンは、再び初期化動作を行った後(ステップS15)、A相、B相励磁コイル31a、31bに所定位相(π/4)、所定デューティ(70%)の駆動電圧を供給してマグネットロータ33の回転を停止させる(ステップS16)。次に、マイコンは、A相、B相励磁コイル31a、31bに対する駆動電圧の供給を遮断して(ステップS17)、ステップS1に戻る。即ち、イグニッションスイッチのオフに応じてA相、B相励磁コイル31a、31bは、図11に示すように、デューティ70%の大きな駆動電圧が供給された状態から無励磁となる。
【0008】
A相、B相励磁コイル31a、31bに駆動電圧をかけてマグネットロータ33を停止させた場合、図7(A)に示すように、マグネットロータ33は、A相、B相励磁コイル31a、31b(ステータ32を含む)に発生する磁界に応じた位置に停止するが、A相、B相励磁コイル31a、31bに対する駆動電圧の供給を遮断すると、鉄(ステータ32)とマグネットロータ33との関係になるため、図7(B)及び(C)に示すように、その時々で釣り合いの取れる位置に回転してしまう場合がある。
【0009】
このとき、上述したようにA相、B相励磁コイル31a、31bにデューティ70%の大きな駆動電圧をかけた状態(図12の黒丸)から急に無励磁(図12の0点)になると、図7(B)及び(C)に示す位置付近でマグネットロータ33が振動し、マグネットロータ33に不要な動き(回転)が発生してしまう。このため、同様に、図13に示すように指針が一瞬振動してしまい、見た目が悪いという問題があった。また、A相、B相励磁コイル31a、31bにデューティ70%の大きな駆動電圧をかけた状態から急に無励磁にするため、マグネットロータ33が大きく動いてしまい、計測値0から僅かではあるが外れた状態を指示してしまう恐れもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−347456号公報
【特許文献2】特許第3828792号公報
【特許文献3】特開2007−232436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、励磁コイルを無励磁状態から励磁状態に切り替えるとき、または、励磁状態から無励磁状態に切り替えるときの不要なマグネットロータの回転及び指針の挙動を低減できる指針装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するための請求項1記載の発明は、複数の励磁コイル及び前記複数の励磁コイルの励磁状態の変化に追従して回転するマグネットロータから構成されたステッピングモータと、前記マグネットロータの回転に連動して移動する指針と、前記励磁コイルに供給する駆動電圧を制御して、前記マグネットロータの回転を制御する回転制御手段と、を備えた指針装置において、前記回転制御手段が、前記励磁コイルに対する駆動電圧の供給を停止した無励磁状態から前記励磁コイルに対して所定位相、所定電圧の駆動電圧を供給して前記マグネットロータを停止させる状態に切り替える際に、前記所定位相の駆動電圧の電圧値を0から徐々に増加して前記所定電圧とすることを特徴とする指針装置に存する。
【0013】
請求項2記載の発明は、複数の励磁コイル及び前記複数の励磁コイルの励磁状態の変化に追従して回転するマグネットロータから構成されたステッピングモータと、前記マグネットロータの回転に連動して移動する指針と、前記励磁コイルに供給する駆動電圧を制御して、前記マグネットロータの回転を制御する回転制御手段と、を備えた指針装置において、前記回転制御手段が、前記励磁コイルに所定位相、所定電圧の駆動電圧を供給して前記マグネットロータを停止させた状態から前記励磁コイルに対する駆動電圧の供給を停止した無励磁状態に切り替える際に、前記所定位相の駆動電圧の電圧値を徐々に小さくして前記駆動電圧の供給を停止することを特徴とする指針装置に存する。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、回転制御手段が、励磁コイルに対する駆動電圧の供給を停止した無励磁状態から励磁コイルに対して所定位相、所定電圧の駆動電圧を供給してマグネットロータを停止させる状態に切り替える際に、所定位相の駆動電圧の電圧値を0から徐々に増加して所定電圧とするので、無励磁状態から励磁状態に切り替えるときの不要なマグネットロータの回転及び指針の挙動を低減できる。これにより、その後行われる初期化動作の開始時間も短くなり、逆戻し角度も小さくできる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、回転制御手段が、励磁コイルに所定位相、所定電圧の駆動電圧を供給してマグネットロータを停止させた状態から励磁コイルに対する駆動電圧の供給を停止した無励磁状態に切り替える際に、所定位相の駆動電圧の電圧値を徐々に小さくして駆動電圧の供給を停止するので、励磁状態から無励磁状態に切り替えるときの不要なマグネットロータの回転及び指針の挙動を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の指針装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1に示す指針装置の部分分解斜視図である。
【図3】図1に示すステッピングモータを構成する励磁コイル及びマグネットローラなどを示す図である。
【図4】図1に示す指針装置を構成するマイコンの処理手順を示すフローチャートである。
【図5】電源のオンオフ、イグニッションスイッチのオンオフ、図1に示す指針装置を構成するA相、B相励磁コイルに供給される駆動電圧のタイムチャートである。
【図6】図1に示す指針装置を構成するA相励磁コイル及びB相励磁コイルに供給する駆動電圧と位相との関係を示す図である。
【図7】図1に示す指針装置を構成するマグネットロータの挙動を説明するための説明図である。
【図8】図1に示す指針装置を構成するマグネットロータの回転角度と、従来の指針装置を構成するマグネットロータの回転角度を示すグラフである。
【図9】他の実施形態における駆動電圧のタイムチャートである。
【図10】従来の指針装置の制御を司るマイコンの動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】電源のオンオフ、イグニッションスイッチのオンオフ、従来の指針装置を構成するA相、B相励磁コイルに供給される駆動電圧のタイムチャートである。
【図12】従来の指針装置を構成するA相、B相励磁コイルに供給する駆動電圧と位相との関係を示す図である。
【図13】従来の指針装置の指針の挙動を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の指針装置について図1〜図3を参照して説明する。図1は、本発明の指針装置の一実施形態を示すブロック図である。図2は、図1に示す指針装置の部分分解斜視図である。図3は、図1に示すステッピングモータを構成する励磁コイルおよびマグネットローラなどを示す図である。
【0018】
図1に示すように、指針装置1は、複数の指針2(図2参照)と、これら指針2をそれぞれ駆動する複数のステッピングモータ3と、これらステッピングモータ3の回転を制御する回転制御手段としてのマイクロコンピュータ(以下マイコン4)と、各種データを格納する不揮発性のメモリであるEEPROM5と、を備えている。
【0019】
上記指針2は、図2に示すように、速度センサなどのセンサの計測値を示す目盛りが設けられた文字板上に設けられている。上記ステッピングモータ3は各々、図3に示すように、A相、B相励磁コイル31a、31bと、これらA相、B相励磁コイル31a、31bを支持するステータ32と、これらA相、B相励磁コイル31a、31bの励磁状態の変化に追従して回転するマグネットロータ33と、マグネットロータ33の駆動力を指針2に伝えるギア34a〜34c(ギア34b、34cについては図2参照)と、これらを収容するケース(図2参照)と、を備えている。
【0020】
図3に示すように、A相、B相励磁コイル31a、31bは、軸方向が90度で交差するようにステータ32に取り付けられている。ステータ32は、上記A相、B相励磁コイル31a、31bや後述するマグネットロータ33を囲むヨーク32aと、ヨーク32aから内側に突出し、A相、B相励磁コイル31a、31bが巻き付けられたコイルボビンを支持するポール32bと、を備えている。
【0021】
マグネットロータ33は、円盤状に設けられ、その外周に沿ってN極S極が交互に3極づつ着磁されている。ギア34aは、マグネットロータ33の回転軸に固定されている。ギア34bは、図2に示すように、指針2の回転軸に固定されている。ギア34cは、図2に示すように、マグネットロータ33に固定されたギア34aと、指針2に固定されたギア34bと、の双方に噛み合うように設けられている。これにより、マグネットロータ33が回転するとギア34a〜34cを介して指針2も回転する。
【0022】
また、上記ステッピングモータ3は、図2に示すように、マグネットロータ33の回転に連動する片35と、片35と当接してステッピングモータ3の回転を機械的に停止させるストッパ36と、を有している。片35は、上述したギア34bに固定された円盤部37に突設されている。ストッパ36は、ケースに突設されている。上述した片35とストッパ36とが当接したときに指針2が文字板に設けた目盛り上の計測値0を指示するように、指針2がステッピングモータ3の回転軸に打ち込まれている。
【0023】
上記マイコン4は、図1に示すように、電源IC6からの電源供給を受けて動作する。電源IC6は、車載バッテリBからマイコン4に対する供給電圧を生成する。また、上記マイコン4には、イグニッションスイッチIGがインタフェース(以下I/F)7を介して接続されている。上記マイコン4は、駆動回路41として機能し、ステッピングモータ3のA相励磁コイル31a、B相励磁コイル31bに対して駆動電圧を出力している。なお、本実施形態では、マイコン4を駆動回路41として機能させていたが、マイコン4とは別に駆動回路41を設けても良い。
【0024】
次に、上述した構成の指針装置1の動作について図4を参照して説明する。図4は、図1に示す指針装置1を構成するマイコン4の処理手順を示すフローチャートである。
【0025】
上述したマイコン4は、イグニッションスイッチIGがオンされ、スリープモードから通常モードに移行してウエイクアップされると(ステップS1でY)、A相、B相励磁コイル31a、31bに対して所定位相の駆動電圧を供給すると共に、図5中の点線で囲んだ部分に示すように、この駆動電圧のデューティを0から徐々に大きくする(ステップS2)。本実施形態では、図6に示すように位相π/4の駆動電圧を出力している。即ち、A相、B相励磁コイル31a、31bの−側をグランドに接続し、A相、B相励磁コイル31a、31bの+側に互いに同じ大きさ(即ち同じデューティ)の駆動電圧を供給している。マイコン4は、所定デューティ(例えば70%)に達するまで駆動電圧のデューティを大きくする。
【0026】
駆動電圧のデューティが所定デューティに達すると(ステップS3でY)、マイコン4は、指針2を強制的に計測値0に向かって逆回転させる初期化動作を行う(ステップS4)。指針2を逆回転させるようにステッピングモータ3の回転を制御すると、指針2が計測値0に達したところで片35とストッパ36とが当接して、指針2が0位置で強制的に停止する。その後、マイコン4は、指針2がセンサの計測値を指示するように駆動する通常動作を行う(ステップS5)。
【0027】
その後、イグニッションスイッチIGがオフされ、スリープ条件が成立すると(ステップS6でY)、再び初期化動作を行った後(ステップS7)、A相、B相励磁コイル31a、31bに対して所定位相(π/4)、所定デューティ(70%)の駆動電圧を供給してステッピングモータ3の回転を停止させると共に、図5忠の一点鎖線で囲んだ部分に示すように、この駆動電圧のデューティーを徐々に小さくする(ステップS8)。マイコン4は、0%に達するまで駆動電圧のデューティを小さくする。
【0028】
駆動電圧のデューティが0%に達すると(ステップS9でY)、マイコン4は、A相励磁コイル31a及びB相励磁コイル31bが無励磁に制御されたとして、再びステップS1に戻る。
【0029】
上述した動作の詳細を図6〜図8を参照して説明する。ウエイクアップすると、マイコン4は、A相、B相励磁コイル31a、31bの両者が無励磁となる図6中の0点からA相、B相励磁コイル31a、31bの+側にデューティ70%の駆動電圧が印加される図6中の黒丸に向かうように、0点と黒丸とを結ぶ線に従って駆動電圧のデューティを徐々に増加させる。その後、図6に示す円に沿った駆動電圧を出力することでマグネットロータ33を正回転、逆回転させて初期化動作や通常動作を行う。
【0030】
A相、B相励磁コイル31a、31bが無励磁の場合、図7(B)又は(C)に示すように、鉄(ステータ32)とマグネットロータ33との関係からその時々で釣り合いの取れる位置で停止するが、A相、B相励磁コイル31a、31bに位相π/4の駆動電圧を出力してマグネットロータ33を停止させると、図7(A)に示すように、A相、B相励磁コイル31a、31bに発生する磁界に応じた位置にマグネットロータ33が回転してしまう場合がある。
【0031】
このとき、従来ではA相、B相励磁コイル31a、31bに対して無励磁から急にデューティ70%の大きな駆動電圧をかけた状態になるため、図8の点線で示すように、図7(A)に示す位置付近でマグネットロータ33が振動し、マグネットロータ33に不要な動き(回転)が発生してしまう。これに対して本実施形態では、A相、B相励磁コイル31a、31bに対する駆動電圧の供給を停止した無励磁状態からA相、B相励磁コイル31a、31bに対して位相π/4、デューティ70%(=所定電圧)の駆動電圧を供給してマグネットロータ33を停止させる状態に切り替える際に、位相π/4の駆動電圧のデューティを徐々に増加してデューティ70%にするので、図8の実線で示すように、図7(A)に示す位置付近でマグネットロータ33の振動が低減し、無励磁状態から励磁状態に切り替えるときの不要なマグネットロータ33の回転及び指針2の挙動を低減できる。これにより、その後行われる初期化動作の開始時間も短くなり、逆戻し角度も小さくできる。
【0032】
その後、スリープ条件が成立すると、マイコン4は、A相、B相励磁コイル31a、31bの+側にデューティ70%の駆動電圧が印加される図6中の黒丸からA相、B相励磁コイル31a、31bの両者が無励磁となる図6中の0点に向かうように、黒丸と0点とを結ぶ線に沿って駆動電圧のデューティを徐々に減少させる。
【0033】
A相、B相励磁コイル31a、31bに位相π/4の駆動電圧をかけてマグネットロータ33を停止させた場合、図7(A)に示すように、マグネットロータ33は、A相、B相励磁コイル31a、31b(ステータ32を含む)に発生する磁界に応じた位置に停止するが、A相、B相励磁コイル31a、31bに対する駆動電圧の供給を遮断すると、鉄(ステータ32)とマグネットロータ33との関係になるため、図7(B)又は図7(C)に示すように、その時々で釣り合いの取れる位置に回転してしまう場合がある。
【0034】
このとき、従来ではA相、B相励磁コイル31a、31bに対してデューティ70%の駆動電圧をかけた状態から急に無励磁にするため、図8の点線で示すように、図7(B)又は(C)に示す位置付近でマグネットロータ33が振動し、マグネットロータ33に不要な動き(回転)が発生してしまう。これに対して本実施形態では、A相、B相励磁コイル31a、31bに位相π/4、デューティ70%の駆動電圧を供給してマグネットロータ33を停止させた状態からA相、B相励磁コイル31a、31bに対する駆動電圧の供給を停止した無励磁状態に切り替える際に、所定位相の駆動電圧のデューティを徐々に小さくして駆動電圧の供給を停止するので、図8の実線で示すように、図7(B)又は図7(C)に示す位置付近でのマグネットロータ33の振動が低減し、励磁状態から無励磁状態に切り替えるときの不要なマグネットロータ33の回転及び指針2の挙動を低減できる。
【0035】
なお、上述した実施形態では、マイコンを駆動回路として機能させ、駆動電圧のデューティを変化させることにより、駆動電圧の電圧値を変化させていたが、本発明はこれに限ったものではない。マイコンとは別の駆動回路を設けて、駆動電圧の電圧値そのものを増加させたり、減少させるものであってもよい。
【0036】
また、上述した実施形態では、駆動電圧のデューティを0からデューティ70%に達するまでの間やデューティ70%から0に達するまでの期間、均等にデューティを増減させていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、図9(A)に示すように、駆動電圧のデューティを増加させ始める期間と、増加させた結果、デューティ70%に達する直前の期間と、をその間の期間よりもゆるやかに増加させるようにしてもよい。また、図9(B)に示すように、駆動電圧のデューティを減少し始める期間と、減少させた結果、0に達する直前の期間と、をその間の期間よりも緩やかに減少させるようにしてもよい。
【0037】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 指針装置
2 指針
3 ステッピングモータ
4 マイコン(回転制御手段)
31a A相励磁コイル(励磁コイル)
31b B相励磁コイル(励磁コイル)
33 マグネットロータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の励磁コイル及び前記複数の励磁コイルの励磁状態の変化に追従して回転するマグネットロータから構成されたステッピングモータと、前記マグネットロータの回転に連動して移動する指針と、前記励磁コイルに供給する駆動電圧を制御して、前記マグネットロータの回転を制御する回転制御手段と、を備えた指針装置において、
前記回転制御手段が、前記励磁コイルに対する駆動電圧の供給を停止した無励磁状態から前記励磁コイルに対して所定位相、所定電圧の駆動電圧を供給して前記マグネットロータを停止させる状態に切り替える際に、前記所定位相の駆動電圧の電圧値を0から徐々に増加して前記所定電圧とする
ことを特徴とする指針装置。
【請求項2】
複数の励磁コイル及び前記複数の励磁コイルの励磁状態の変化に追従して回転するマグネットロータから構成されたステッピングモータと、前記マグネットロータの回転に連動して移動する指針と、前記励磁コイルに供給する駆動電圧を制御して、前記マグネットロータの回転を制御する回転制御手段と、を備えた指針装置において、
前記回転制御手段が、前記励磁コイルに所定位相、所定電圧の駆動電圧を供給して前記マグネットロータを停止させた状態から前記励磁コイルに対する駆動電圧の供給を停止した無励磁状態に切り替える際に、前記所定位相の駆動電圧の電圧値を徐々に小さくして前記駆動電圧の供給を停止する
ことを特徴とする指針装置。
【請求項1】
複数の励磁コイル及び前記複数の励磁コイルの励磁状態の変化に追従して回転するマグネットロータから構成されたステッピングモータと、前記マグネットロータの回転に連動して移動する指針と、前記励磁コイルに供給する駆動電圧を制御して、前記マグネットロータの回転を制御する回転制御手段と、を備えた指針装置において、
前記回転制御手段が、前記励磁コイルに対する駆動電圧の供給を停止した無励磁状態から前記励磁コイルに対して所定位相、所定電圧の駆動電圧を供給して前記マグネットロータを停止させる状態に切り替える際に、前記所定位相の駆動電圧の電圧値を0から徐々に増加して前記所定電圧とする
ことを特徴とする指針装置。
【請求項2】
複数の励磁コイル及び前記複数の励磁コイルの励磁状態の変化に追従して回転するマグネットロータから構成されたステッピングモータと、前記マグネットロータの回転に連動して移動する指針と、前記励磁コイルに供給する駆動電圧を制御して、前記マグネットロータの回転を制御する回転制御手段と、を備えた指針装置において、
前記回転制御手段が、前記励磁コイルに所定位相、所定電圧の駆動電圧を供給して前記マグネットロータを停止させた状態から前記励磁コイルに対する駆動電圧の供給を停止した無励磁状態に切り替える際に、前記所定位相の駆動電圧の電圧値を徐々に小さくして前記駆動電圧の供給を停止する
ことを特徴とする指針装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−24628(P2013−24628A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157625(P2011−157625)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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