説明

振動ジャイロ

【課題】漏れ信号を無くし、検出部の振動を妨げない、高感度且つ量産性に優れた、小型の振動ジャイロを提供する。
【解決手段】互いに直交するX、Y、Zの3つの軸で表される空間において、駆動アーム20、21はX軸方向の屈曲振動を励振する駆動手段、検出アーム30、31はX軸方向の屈曲振動を検出する検出手段、検出アーム32、33はZ軸方向の屈曲振動を検出する検出手段を備えている。駆動アーム20、21と検出アーム32、33のX軸方向の長さは異なっており、連結部10のY軸方向の長さは駆動アーム20、21のX軸方向の長さに対して2〜5倍、連結部12のY軸方向の長さは検出アーム32、33のX軸方向の長さに対して2〜5倍の長さを有している。また、駆動アーム20、21と、連結部10、11、12と、検出アーム32、33と、付加質量50、51、52、53とは、検出アーム30、31に平行な中心線で線対称である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転により発生するコリオリ力を利用し、角速度を検出する振動ジャイロに関する。
【背景技術】
【0002】
電気−機械変換効率が高い圧電体材料を用いた圧電素子は、小型で高感度なセンサを実現できることから、これを利用した様々なセンサが製造されている。近年では、厚さが数μmの膜状の圧電体、すなわち圧電薄膜を大面積の基板上に再現性良く成膜する技術や、基板などを微細に加工する技術が確立され、これを利用した振動ジャイロが量産性良く製造できるようになってきた。
【0003】
ジャイロ振動子においては、駆動振動により回転角速度検出部の検出電極に駆動振動成分の漏れ信号が発生する。この漏れ信号により静止時出力であるヌル電圧がドリフトしてジャイロ出力に誤差を生じるといった課題がある。
【0004】
そこで、ジャイロ振動子の静止時の漏れ信号を低減する方法としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。図6は従来の振動ジャイロの検出素子を示す斜視図である。特許文献1に開示されている従来の振動ジャイロは、駆動部である音叉1と音叉2とが連結部3を挟むように配置され、連結部3の端部に音叉1の基部と音叉2の基部が接続され、直線に接続された検出部4と検出部5の接続部が連結部3の他の端部に接続され、リング状の支持部6に検出部4の端部と検出部5の端部が接続され、検出素子を形成している。駆動部と検出部とを連結部3を介して分離することで、回転運動により発生するコリオリ力による回転トルクのみを検出し、漏れ信号を低減させようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−117862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている検出素子の検出軸は1軸であり、駆動部と検出部が一体に形成された検出素子において、複数の検出軸を有する具体的な構成や技術についての記載はされていない。その為、特許文献1の構成で複数軸の角速度の検出を行う場合、検出素子が複数必要となり、小型化が難しいとともに量産性に劣るという課題がある。また、検出部の端部が支持部に結合されていることで、コリオリ力によって発生した検出部の変形量が抑えられており、その分検出感度が悪くなるという課題もある。
【0007】
そこで本発明は、複数の検出軸を有し、静止時に発生する漏れ信号を無くし、さらに、高感度且つ量産性に優れた小型の振動ジャイロを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明によれば、第1の駆動アームと、第2の駆動アームと、第1の連結部と、第2の連結部と、第3の連結部と、第1の検出アームと、第2の検出アームと、第3の検出アームと、第4の検出アームを備え、互いに直交するX、Y、Zの3つの軸で表される空間において、前記駆動アームと、前記連結部と、前記検出アームは同一のXY平面内に含まれるように配置され、前記第1の駆動アームの一端は前記第1の連結部の短辺の一辺と接続され、前記第2の駆動アームの一端は前記第1の連結部の他の短辺と接続され、前記第1の検出アームの一端は前記第1の連結部の長辺の中心に接続され、前記第2の連結部の長辺の中心は前記第1の連結部とは反対側の前記第1の検出アームの一端と接続され、前記第2の検出アームは前記第1の検出アームの延長線上で、前記第2の連結部を挟んで前記第1の検出アームと反対の位置に接続され、前記第3の連結部の長辺の中心は前記第2の連結部と反対側の前記第2の検出アームの一端と接続され、前記第3の検出アームの一端は前記第3の連結部の短辺の一辺と接続され、前記第4の検出アームの一端は前記第3の連結部の他の短辺と接続され、前記駆動アームと、前記連結部と、前記検出アームとは、前記第1および第2の検出アームに平行な中心線で線対称であり、前記駆動アームの短辺方向の長さと前記第3および第4の検出アームの短辺方向の長さは異なっており、前記第1および第2の駆動アームは前記第1の連結部の長辺方向へ屈曲振動を励振する駆動手段を備え、前記第1および第2の検出アームは前記第1の連結部の長辺方向の屈曲振動を検出する検出手段を備え、前記第3および第4の検出アームはZ軸方向の屈曲振動を検出する検出手段を備えていることを特徴とする振動ジャイロが得られる。
【0009】
また、前記第1および第2の駆動アームの振動をより大きくする為、前記第1の駆動アームの端部と前記第1の連結部の端部とは直角に接続され、前記第2の駆動アームの端部と前記第1の連結部の他の端部とは直角に接続されていることが望ましい。
【0010】
また、前記第3および第4の検出アームへの力の伝播をより良くする為、前記第3の検出アームの端部と前記第3の連結部の端部とは直角に接続され、前記第4の検出アームの端部と前記第3の連結部の他の端部とは直角に接続されていることが望ましい。
【0011】
本発明によれば、付加質量を備え、前記駆動アームの少なくとも一方の端部に付加質量が接続され、前記検出アームの少なくとも一方の端部に付加質量が接続され、前記駆動アームと、前記連結部と、前記検出アームと、前記付加質量とは、前記第1および第2の検出アームに平行な中心線で線対称であることを特徴とする上記の振動ジャイロが得られる。
【0012】
本発明の振動ジャイロにより、付加質量を接続することにより駆動振動の共振周波数を低く設計することができる。
【0013】
また、本発明によれば、前記第3および第4の検出アームの短辺方向の長さが、前記第1および第2の駆動アームの短辺方向の長さの50%〜90%または110%〜200%であることを特徴とする上記の振動ジャイロが得られる。
【0014】
本発明の振動ジャイロにより、前記第3および第4の検出アームの短辺方向長さが前記第1および第2の駆動アームの短辺方向長さの50%〜90%または110%〜200%であることにより、前記駆動アームの駆動振動の共振周波数と前記第3および第4の検出アームの駆動振動と同様のX軸方向振動の共振周波数が離れるため、前記駆動アームの駆動振動が前記第3および第4の検出アームに伝播せず、前記第1の検出アームの長辺方向回りの角速度印加時に前記駆動アームで発生するコリオリ力による検出振動を伝播させることができる。
【0015】
また、本発明によれば、前記第1の連結部の短辺方向の辺の長さは前記第1および第2の駆動アームの短辺方向の辺の長さに対して2倍〜5倍の長さを有しており、前記第3の連結部の短辺方向の辺の長さは前記第3および第4の検出アームの短辺方向の辺の長さに対して2倍〜5倍の長さを有していることを特徴とする振動ジャイロが得られる。
【0016】
本発明の振動ジャイロにより、前記第1および第3の連結部は、前記駆動アームならびに前記第3および第4の検出アームに対して十分な剛性を有しているため、前記駆動アームがX軸方向へ励振した状態によって、前記第1および第3の連結部に生じる変位は非常に小さく抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第3および第4の検出アームに駆動振動が伝播せず、検出振動が検出アームに伝播することにより、ジャイロ機能を維持しつつ検出アームにおける駆動振動成分の漏れ信号を無くし、高感度で量産性に優れた、小型の振動ジャイロを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態による振動ジャイロの検出素子を示す平面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態による振動ジャイロの検出素子を示す平面図である。
【図3】本発明による振動ジャイロのX軸方向の駆動アームの断面構造を示す断面図である。
【図4】本発明による振動ジャイロのX軸方向の検出アームの断面構造を示す断面図である。
【図5】本発明による振動ジャイロのZ軸方向の検出アームの断面構造を示す断面図である。
【図6】従来の振動ジャイロの検出素子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態による振動ジャイロの検出素子を示す平面図である。図1に示されるように、本発明の実施の形態による検出素子105は、互いに直交するX、Y、Zの3つの軸で表される空間において、連結部10、11、12と、駆動アーム20、21と、検出アーム30、31、32、33とが同一のXY平面内に含まれるように配置されている。
【0021】
Y軸方向に長手方向を有する駆動アーム20の端部はX軸方向に長手方向を有する連結部10の端部と直角に接続され、Y軸方向に長手方向を有する駆動アーム21の端部は連結部10の他の端部と直角に接続され、連結部10の長辺の中心は検出アーム30の端部が接続され、連結部11の長辺の中心は検出アーム30の他の端部に接続されている。また、検出アーム31は検出アーム30の延長線上で連結部11を挟んで検出アーム30と反対の位置に接続され、連結部12の長辺の中心は検出アーム31の他の端部に接続され、検出アーム32の端部は連結部12の端部と接続され、検出アーム33の端部は連結部12の他の端部と接続されている。
【0022】
上述した駆動アーム、連結部、検出アームで構成される検出素子105は、検出アーム30、31に平行な中心線で線対称となっている。
【0023】
また、駆動アーム20、21はX軸方向へ屈曲振動を励振する第1の駆動手段(図示せず)を備え、検出アーム30、31に平行な中心線で線対称に駆動する。検出アーム30、31はX軸方向の屈曲振動を検出する第1の検出手段(図示せず)を備え、駆動アーム20、21が屈曲振動を励振した状態でZ軸回りの角速度を印加した時、検出アーム30、31により屈曲振動を検出することでZ軸回りの角速度を検出する。検出アーム32、33はZ軸方向の屈曲振動を検出する第2の検出手段(図示せず)を備え、駆動アーム20、21が屈曲振動を励振した状態でY軸回りの角速度を印加した時、検出アーム32、33により屈曲振動を検出することでY軸方向回りの角速度を検出する。
【0024】
また、連結部10のY軸方向の辺の長さは、駆動アーム20、21のX軸方向の辺の長さに対して2倍〜5倍の長さを有している。さらに、連結部12のY軸方向の辺の長さは、検出アーム32、33のX軸方向の辺の長さに対して2倍〜5倍の長さを有している。また、検出アーム32、33のX軸方向の辺の長さは、駆動アーム20、21のX軸方向の辺の長さに対して50%〜90%または110%〜200%の長さを有している。
【0025】
連結部10、11、12は電気的な接続や振動の伝播を意図して形成されたものであって、振動の励振や検出を目的としていない。連結部10、12は、駆動アーム20、21、ならびに検出アーム32、33に対して十分な剛性を有しているため、駆動アーム20、21がX軸方向へ励振した状態によって、連結部10、12に生じる変位は非常に小さい。したがって、駆動振動状態での駆動アーム20、21、ならびに検出アーム32、33の変位はX軸方向に限定される。
【0026】
連結部11の中心を通るXZ平面に平行な平面およびYZ平面に平行な平面に関して対称に駆動アーム20、21、ならびに検出アーム32、33がX軸方向に変位する振動は、非常に安定な特性が得られる。駆動アーム20、21、ならびに検出アーム32、33の変位によって発生する力は、連結部10と駆動アーム20の接続部付近と、連結部12と検出アーム33の接続部付近で相殺されノード点となる。
【0027】
また、本実施の形態の振動は対称性の良い振動となり、角速度の検出に際しては、差動検出構成となる。したがって、X軸、Y軸およびZ軸方向への加速度を印加した場合において、本発明の検出振動が励振されることはなく、加速度による検出信号への影響は小さい。また、上下や左右で力が相殺されるため、連結部11付近においては駆動振動や検出振動による変位がほぼ存在しない。そのため、振動の特性を損なうことなく連結部11の両端を容易に支持固定が可能となる。
【0028】
このように、Y軸およびZ軸の2軸の角速度について検出可能な振動ジャイロが得られる。これらの検出素子は、高精度なフォトリソグラフィー技術による同時加工によって製造される。したがって、2つの検出軸の直交性が非常に良く、複数の素子を個別に加工して組み立てる等の製法に比べ、他軸感度を低減できる。
【0029】
図3は本発明による振動ジャイロのX軸方向の駆動アームの断面構造を示す断面図である。すなわち図1に示す駆動アーム20、21の断面構造を示している。駆動アーム20、21は、検出素子を構成する平板である基板と、その基板の上面に形成された下部電極71と、下部電極71の上面に形成された圧電薄膜81と、圧電薄膜81の上面に形成された駆動電極90、91とで構成されている。駆動電極90、91に逆位相の電気信号を与えると、駆動電極90、91が形成された部分の圧電薄膜81には互いに逆向きの歪みが発生する。この歪みによって駆動アーム20、21のX軸方向の振動を励振できる。
【0030】
また、駆動電極90、91は、駆動アーム20、21のX軸方向の変位を検出することもできるため、駆動電極90、91またはその一部を自励発振回路を構成する際のモニタ電極として利用することも可能である。
【0031】
図4は本発明による振動ジャイロのX軸方向の検出アームの断面構造を示す断面図である。すなわち図1に示す検出アーム30、31の断面構造を示している。検出アーム30、31は、検出素子を構成する平板である基板と、その基板の上面に形成された下部電極71と、下部電極71の上面に形成された圧電薄膜81と、圧電薄膜81の上面に形成された検出電極92、93とで構成されている。検出アーム30、31がX軸方向に変位すると、検出電極92、93が形成された部分の圧電薄膜81には逆位相の電気信号が発生する。この電気信号を所定の検出回路で検出することで検出アーム30、31のX軸方向の変位が検出できる。
【0032】
図5は本発明による振動ジャイロのZ軸方向の検出アームの断面構造を示す断面図である。すなわち図1に示す検出アーム32、33の断面構造を示している。検出アーム32、33は、検出素子を構成する平板である基板と、その基板の上面に形成された下部電極71と、下部電極71の上面に形成された圧電薄膜81と、圧電薄膜81の上面に形成された検出電極94とで構成されている。検出アーム32、33がZ軸方向に変位すると、検出電極94が形成された部分の圧電薄膜81には歪みが発生する。この歪みによって検出電極94には電気信号が発生し、この電気信号を所定の検出回路で検出することで検出アーム32、33のZ軸方向の変位が検出できる。
【0033】
駆動アーム20、21を互いに逆向きにX軸方向へ励振させた状態でY軸回りの角速度を印加すると、駆動アーム20、21は発生したコリオリ力によって互いに逆向きにZ軸方向への力を受け、検出アーム32には駆動アーム20と同位相の力が伝播し、検出アーム33には駆動アーム21と同位相の力が伝播する。したがって、駆動アーム20および検出アーム32と、駆動アーム21および検出アーム33とは、互いに逆向きにZ軸方向へ変位する。このZ軸方向の変位は検出アーム32、33に形成された検出電極94によって検出することができ、これによりY軸回りの角速度を検出する振動ジャイロとしての機能を得る。
【0034】
また、駆動アーム20、21を互いに逆向きにX軸方向へ励振させた状態でZ軸回りの角速度を印加すると、駆動アーム20および検出アーム32と、駆動アーム21および検出アーム33とは、発生したコリオリ力によって互いに逆向きにY軸方向へ力を受け変位する。この変位は連結部10、12にZ軸回りのモーメントを与える。したがって、連結部10に接続された検出アーム30と、連結部12に接続された検出アーム31とは、互いに逆向きにX軸方向へ変位する。このX軸方向への変位により検出アーム30、31に形成された圧電薄膜81に歪みが発生し、検出電極92、93に逆位相の電気信号が発生する。この電気信号を所定の検出回路で検出することで、Z軸回りの角速度を検出する振動ジャイロとしての機能を得る。
【0035】
(第2の実施の形態)
図2は本発明の第2の実施の形態による振動ジャイロの検出素子を示す平面図である。図2に示されるように、本発明の実施の形態による検出素子106は、駆動アーム20の端部に付加質量50が接続され、駆動アーム21の端部に付加質量51が接続され、検出アーム32の端部に付加質量52が接続され、検出アーム33の端部に付加質量53が接続されている。付加質量50、51、52、53は検出アーム30、31に平行な中心線で線対称に配置されている。また、駆動アーム、検出アームの構成は第1の実施の形態の図3、図4、図5と同様である。
【0036】
連結部11の中心を通るXZ平面に平行な平面およびYZ平面に平行な平面に関して対称に付加質量50、51、52、53がX軸方向に変位する振動は、非常に安定な特性が得られる。4つの付加質量の変位によって発生する力は、連結部10と駆動アーム20の接続部付近と、連結部12と検出アーム33の接続部付近で相殺されノード点となる。
【0037】
また、X軸方向に変位する振動が非常に安定な特性を得られることにより高いQ値の振動が期待でき、さらに、付加質量を接続することにより共振周波数を低く設計できる。高いQ値と低い周波数設計により変位を大きくすることが可能であり、高感度な振動ジャイロが得られる。さらに、駆動振動による変位をX軸方向に限定することで他軸感度のない振動ジャイロが得られ、Z軸回りの角速度の検出においても効率が良い。また、並進運動での加速度に対する誤差出力も低減できる。
【実施例】
【0038】
本発明の第2の実施の形態記載の振動ジャイロにおいて、具体的に説明する。検出素子106は基板として厚さ50μmのシリコン基板を用い、その一面上に下部電極71を形成し、下部電極71の上面に圧電薄膜81として厚さ2μmのPZT薄膜を形成し、さらに圧電薄膜81の上面に駆動電極90、91、ならびに検出電極92、93、94等の上部電極を形成して、ドライエッチング加工による貫通穴加工を施したものである。下部電極71は、シリコン基板の表面を酸化処理して形成した厚さ1μmの二酸化シリコン膜と、その上面にスパッタ法で形成した厚さ35nmのチタン膜と、さらにチタン膜の上面にスパッタ法で形成した厚さ200nmの白金膜とで構成される。上部電極は、PZT薄膜の上面にスパッタ法で形成した厚さ35nmのクロム膜と、クロム膜の上面にスパッタ法で形成した厚さ300nmの金の膜とで構成される。ここで、PZT薄膜上へ配線電極を形成する場合、静電容量を小さくするため、PZT薄膜上へ低誘電率の絶縁層を形成して、その上に配線電極を形成してもよい。
【0039】
また、連結部10、11、12のY軸方向の辺の長さは約100μmであり、駆動アーム20、21のX軸方向の辺の長さは約50μmであり、検出アーム32、33のX軸方向の辺の長さは約55μmである。また、駆動アーム20、21ならびに検出アーム32、33のY軸方向の長さは約500μm、連結部10、11、12のX軸方向の長さは約500μmであり、付加質量50、51、52、53の形状は一辺が約400μmの矩形形状である。本構成において有限要素法解析で検出素子の変位分布を解析したところ、連結部10、12の最大変位量は駆動アーム20、21、ならびに検出アーム32、33の最大変位量に対して約1%となり、変位は非常に少なかった。
【0040】
本発明の振動ジャイロは、上述のように駆動部と検出部が一体に形成されており、複数軸回りの角速度の検出を可能としながらも、連結部が変形しにくいため振動方向をX軸またはZ軸方向へ限定することが可能であり、多軸感度が小さく、Z軸回りの角速度の検出効率も良い。さらに、静止時に発生する漏れ信号がない。また、共振周波数がY軸方向の駆動アームおよび検出アームの長さに大きく依存するため、Y軸方向へのみ検出素子を長くして共振周波数を低くすれば、さらに高感度な振動ジャイロを得ることが可能である。また、連結部11により支持固定が容易であることから量産性が高い。これにより、高感度で量産性に優れた、小型の振動ジャイロを提供することができる。
【0041】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の変更や修正、および部材などの変更が可能である。例えば、実施の形態に係る振動ジャイロにおいて、PZT薄膜などの圧電薄膜を有したシリコン基板を用いたものを例示したが、これに限らず、圧電単結晶基板、圧電多結晶体基板および単純なシリコン基板等であってもよい。また、駆動手段および検出手段における駆動電極や検出電極の形状、数および配置、さらに各アームや各連結部の形状なども目的、用途に応じて設計可能であり、例示したものに制限されない。
【0042】
また、連結部を駆動振動によって変形しにくい構造とする方法についても、その平面形状を屈曲アームの形状と大きく異ならしめることや矩形以外の形状とすることなどによって剛性を強めること、又はその共振周波数を駆動振動の周波数から遠ざけること、さらには、その上に剛性を強くする膜を形成することなどが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1、2 音叉
3 連結部
4、5 検出部
6 支持部
10、11、12 連結部
20、21 駆動アーム
30、31 検出アーム
32、33 検出アーム
50、51、52、53 付加質量
71 下部電極
81 圧電薄膜
90、91 駆動電極
92、93 検出電極
94 検出電極
105、106 検出素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の駆動アームと、第2の駆動アームと、第1の連結部と、第2の連結部と、第3の連結部と、第1の検出アームと、第2の検出アームと、第3の検出アームと、第4の検出アームを備え、互いに直交するX、Y、Zの3つの軸で表される空間において、前記駆動アームと、前記連結部と、前記検出アームは同一のXY平面内に含まれるように配置され、前記第1の駆動アームの一端は前記第1の連結部の短辺の一辺と接続され、前記第2の駆動アームの一端は前記第1の連結部の他の短辺と接続され、前記第1の検出アームの一端は前記第1の連結部の長辺の中心に接続され、前記第2の連結部の長辺の中心は前記第1の連結部とは反対側の前記第1の検出アームの一端と接続され、前記第2の検出アームは前記第1の検出アームの延長線上で、前記第2の連結部を挟んで前記第1の検出アームと反対の位置に接続され、前記第3の連結部の長辺の中心は前記第2の連結部と反対側の前記第2の検出アームの一端と接続され、前記第3の検出アームの一端は前記第3の連結部の短辺の一辺と接続され、前記第4の検出アームの一端は前記第3の連結部の他の短辺と接続され、前記駆動アームと、前記連結部と、前記検出アームとは、前記第1および第2の検出アームに平行な中心線で線対称であり、前記駆動アームの短辺方向の長さと前記第3および第4の検出アームの短辺方向の長さは異なっており、前記第1および第2の駆動アームは前記第1の連結部の長辺方向へ屈曲振動を励振する駆動手段を備え、前記第1および第2の検出アームは前記第1の連結部の長辺方向の屈曲振動を検出する検出手段を備え、前記第3および第4の検出アームはZ軸方向の屈曲振動を検出する検出手段を備えていることを特徴とする振動ジャイロ。
【請求項2】
請求項1記載の振動ジャイロにおいて、付加質量を備え、前記駆動アームの少なくとも一方の端部に付加質量が接続され、前記検出アームの少なくとも一方の端部に付加質量が接続され、前記駆動アームと、前記連結部と、前記検出アームと、前記付加質量とは、前記第1および第2の検出アームに平行な中心線で線対称であることを特徴とする振動ジャイロ。
【請求項3】
請求項1または2記載の振動ジャイロにおいて、前記第3および第4の検出アームの短辺方向の長さが、前記第1および第2の駆動アームの短辺方向の長さの50%〜90%または110%〜200%であることを特徴とする振動ジャイロ。
【請求項4】
請求項1または2記載の振動ジャイロにおいて、前記第1の連結部の短辺方向の辺の長さは前記第1および第2の駆動アームの短辺方向の辺の長さに対して2倍〜5倍の長さを有しており、前記第3の連結部の短辺方向の辺の長さは前記第3および第4の検出アームの短辺方向の辺の長さに対して2倍〜5倍の長さを有していることを特徴とする振動ジャイロ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate