振動デバイス
【課題】コイルに供給される交流電流(交流電圧)の導出過程が複雑化するのを抑制することが可能な振動デバイスを提供する。
【解決手段】このリニアモータ(振動デバイス)は、コイルと、コイルが発生する磁界により往復移動する可動部と、可動部が収納されるとともに可動部の往復移動によって振動する筐体と、可動部と筐体との間に設けられるバネ部とを備える。また、コイルには、正側に突出する形状を有する波形の電圧が印加されるように構成されている。
【解決手段】このリニアモータ(振動デバイス)は、コイルと、コイルが発生する磁界により往復移動する可動部と、可動部が収納されるとともに可動部の往復移動によって振動する筐体と、可動部と筐体との間に設けられるバネ部とを備える。また、コイルには、正側に突出する形状を有する波形の電圧が印加されるように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動デバイスに関し、特に、可動部とコイルとを備え、コイルに電圧が印加される振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可動部とコイルとを備え、コイルに電圧が印加される振動デバイスが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、コイルが巻回される円筒状のボビン(可動部)と、円筒状のボビンの一方端部側に取り付けられる第1永久磁石(可動部)と、ボビンの他方側にボビンと別個に設けられる第2永久磁石と、コイル、ボビン、第1永久磁石および第2永久磁石を収納する円筒状のフレームと、第1永久磁石とフレームとの間に設けられるバネとを備える加速度発生装置(振動デバイス)が開示されている。
【0004】
この加速度発生装置では、コイルに正弦波状の交流電流(交流電圧)が供給されることにより磁界が発生する。そして、第1永久磁石の一方側にはバネの弾性力が働くとともに、他方側にはコイルの磁界と第2永久磁石の磁界とが働くように構成されている。そして、第1永久磁石の一方側および他方側に働く力の大きさが第1永久磁石およびボビンの位置によって異なっており、第1永久磁石(ボビン)の加速度の波形が第1永久磁石(ボビン)の移動方向の一方側と他方側とで異なるように構成されている。これにより、ユーザは、加速度発生装置を把持した場合に、所定の方向に引っ張られるような力覚(擬似力覚)を知覚することが可能となる。なお、上記加速度発生装置では、コイルに発生する誘導起電力を検出し、検出された誘導起電力からボビンおよび永久磁石の移動速度を計算し、所定の移動速度になるように正弦波状の交流電流(交流電圧)が導出(算出)された後に、コイルにその正弦波状の交流電流(交流電圧)が供給されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2007/086426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された加速度発生装置では、コイルに上記のように導出(算出)した正弦波状の交流電流(交流電圧)が供給されるため、コイルに供給される交流電流(交流電圧)の導出過程が複雑化するという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、コイルに供給される交流電流(交流電圧)の導出過程が複雑化するのを抑制することが可能な振動デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における振動デバイスは、コイルと、コイルが発生する磁界により往復移動する可動部と、可動部が収納されるとともに可動部の往復移動によって振動する筐体と、可動部と筐体との間に設けられるバネ部とを備え、コイルには、正または負の一方極性側に突出する形状を有する波形の電圧が印加されるように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成により、コイルに供給される交流電流(交流電圧)の導出過程が複雑化するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態による携帯電話の平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるリニアモータの断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるリニアモータに印加されるステップ形状の電圧の波形および加速度の波形を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態によるリニアモータに印加されるステップ形状の電圧の波形および加加速度の波形を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態によるリニアモータに印加されるスロープ形状の電圧の波形および加速度の波形を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態によるリニアモータに印加されるスロープ形状の電圧の波形および加加速度の波形を示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態によるリニアモータに印加される実効電圧的な電圧のスロープ形状の波形および加速度の波形を示す図である。
【図8】本発明の第3実施形態によるリニアモータに印加される実効電圧的な電圧のスロープ形状の波形および加加速度の波形を示す図である。
【図9】本発明の第4実施形態によるリニアモータに印加される250Hzの正弦波と50Hzの正弦波との合成波形および加速度の波形を示す図である。
【図10】本発明の第4実施形態によるリニアモータに印加される250Hzの正弦波と50Hzの正弦波との合成波形および加加速度の波形を示す図である。
【図11】本発明の第5実施形態によるリニアモータに印加される矩形状の電圧の波形および加速度の波形を示す図である。
【図12】本発明の第5実施形態によるリニアモータに印加される矩形状の電圧の波形および加加速度の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1〜図4を参照して、第1実施形態によるリニアモータ1を備えた携帯電話100の構成について説明する。なお、リニアモータ1は、本発明の「振動デバイス」の一例である。
【0013】
携帯電話100は、図1に示すように、液晶ディスプレイなどからなる表示部101と、押しボタンスイッチからなる複数の入力キー102とを備えている。
【0014】
携帯電話100の内部には、リニアモータ1と、リニアモータ1に供給する交流電流(交流電圧)を制御する制御回路部2とが設けられている。また、リニアモータ1は、携帯電話100の矢印Y1方向側の先端部(携帯電話100を把持する側とは反対側の端部)に配置されている。
【0015】
図2に示すように、リニアモータ1は、円筒状の筐体11と、筐体11内に収納される円筒状の永久磁石からなる可動部12と、可動部12と筐体11の内側面との間に設けられるバネ部13aおよび13bと、筐体11に巻回されるコイル14とを含んでいる。可動部12を構成する永久磁石は、矢印X1方向側にN極の磁極面を有するとともに、矢印X2方向側にS極の磁極面を有するように配置されている。
【0016】
バネ部13aおよび13bは、コイルバネなどからなる。バネ部13aおよび13bは、可動部12の振動(往復移動)の中心線に対して、略対称になるように配置されている。また、バネ部13aおよび13bは、同じ材料からなり、同じバネ特性を有する。そして、筐体11も、可動部12の往復移動の中心線に対して、略対称な形状を有する。つまり、リニアモータ1は、全体として可動部12の往復移動の中心線に対して、構造的に略対称な形状を有する。
【0017】
コイル14は、リニアモータ1を矢印X2方向側から見た場合に、筐体11に右巻きに巻回されているコイル14aと、筐体11に左巻きに巻回されているコイル14bとを含んでいる。つまり、筐体11に対する巻回の方向は、コイル14aとコイル14bとで反対である。また、コイル14aとコイル14bとは、電気的に接続されている。また、コイル14aは、筐体11の矢印X1方向側に配置されるとともに、コイル14bは、筐体11の矢印X2方向側に配置される。
【0018】
コイル14は、制御回路部2(図1参照)に接続されている。そして、制御回路部2からコイル14に、正側に突出する形状を有する波形の電圧が印加されるように構成されている。具体的には、図3および図4に示すように、コイル14に印加される電圧の波形(破線)は、電圧の0の基準線から正側に突出する形状を有している。このコイル14に印加される電圧の波形は、立ち上がり波形(立ち上がり時間t1における電圧波形)および立ち下がり波形(立ち下がり時間t2における電圧波形)を有する単一の波形からなる。また、立ち下がり波形の立ち下がり時間t2は、立ち上がり波形の立ち上がり時間t1よりも長くなるように構成されている。
【0019】
また、コイル14に印加される電圧の立ち上がり波形は、通常のパルス状(矩形状)の波形と同様、急激に立ち上がる形状(急峻な形状)を有しており、立ち上がり時間t1は、非常に短い。一方、コイル14に印加される電圧の立ち下がり波形は、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が段階的に小さくなるステップ形状を有している。すなわち、電圧波形の立ち下がり時の電圧値は、1.5ms(0.0015秒)毎に、電圧値が4分の1ずつ段階的に小さくなるように構成されている。また、コイル14に印加される電圧(単一の波形からなる電圧)は、コイル14に対して所定の時間間隔で複数回印加されるように構成されている。
【0020】
次に、図1および図2を参照して、第1実施形態によるリニアモータ1の振動(往復移動)の動作を説明する。
【0021】
まず、制御回路部2(図1参照)からコイル14に電圧を印加して、コイル14に電流を供給する。これにより、コイル14aおよびコイル14bには、それぞれ、磁界が発生する。なお、コイル14の巻回の方向は、コイル14aとコイル14bとでは、反対であるので、コイル14aに発生する磁界の方向と、コイル14bに発生する磁界の方向とは逆方向になる。これにより、可動部12は、コイル14aおよびコイル14bのうちの一方からX方向に沿って引力を受けるとともに、他方から斥力を受ける。その結果、可動部12は、X方向に沿って移動する。また、コイル14に印加する電圧を反転させて逆方向に電流を供給することにより、可動部12の移動が反転する。このように、電圧を反転させてコイル14に電圧を印加することにより、可動部12が振動する。また、可動部12の振動に伴って筐体11(携帯電話100)も振動する。
【0022】
そして、たとえば、図3および図4に示すようなコイル14に正側に突出するとともに、立ち上がりがステップ形状を有する波形の電圧を印加することにより、リニアモータ1が設けられる携帯電話100を把持した場合に、可動部12の振動によって、所定の方向に引っ張られるような擬似力覚(牽引感覚)が得られる。さらに、コイル14に印加する電圧を反転させることにより、容易に、携帯電話100を把持した場合に得られる擬似力覚の方向を反対方向に変化させることが可能である。
【0023】
次に、図3および図4を参照して、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が段階的に小さくなるステップ形状の電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合のリニアモータ1の加速度について行った実験結果、および、加速度を時間で微分することにより得られた加加速度の計算結果について説明する。なお、図3では、縦軸は、電圧(V)および加速度(G)を示しており、横軸は、時間(秒)を示している。図4では、縦軸は、電圧(V)および加加速度(G/s)を示しており、横軸は、時間(秒)を示している。
【0024】
図3に示すように、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が段階的に小さくなるステップ形状の電圧(V)(破線)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合には、加速度が0の基準線に対して、非対称な形状の加速度(実線)の波形が得られた。なお、電圧(V)の周波数は、50Hzである。
【0025】
また、加速度は、電圧波形の立ち上がり時(立ち上がり時間t1)において、正側に急激に大きくなることが確認された。そして、加速度は、電圧波形の電圧値が一定になる時間(立ち上がり時間t1と立ち下がり時間t2との間の時間t3)において、最も大きくなることが確認された。その後、加速度は、電圧波形の立ち下がり時(立ち下がり時間t2)において、電圧波形の電圧値が段階的に小さくなるのに伴って、加速度が緩やかに小さくなることが確認された。また、加速度の正側の最大値の絶対値は、1.3(G)であるとともに、加速度の負側の最大値の絶対値は、0.5(G)であり、正側と負側とでは0.8(G)の加速度差があることが確認された。
【0026】
次に、図3に示す加速度を時間で微分することにより、図4に示すように、加加速度の0の基準線に対して、非対称な形状の加加速度(実線)の波形が得られた。また、加加速度は、電圧波形の立ち上がり時(立ち上がり時間t1)において、電圧波形の立ち上がりと略同時に正側に急激に大きくなることが確認された。そして、電圧波形の電圧値が一定になる時間(立ち上がり時間t1と立ち下がり時間t2との間の時間t3)において、加加速度が急激に小さくなることが確認された。その後、加加速度は、電圧波形の電圧値の立ち下がり時(立ち下がり時間t2)において、0または負の状態を繰り返すことが確認された。また、加加速度の正側の最大値の絶対値は、2000(G/s)であるとともに、加加速度の負側の最大値の絶対値は、700G(G/s)であり、正側と負側とでは1300(G/s)の加加速度差があることが確認された。なお、図4に示す加加速度(図3に示す加速度)の波形を有するリニアモータ1が設けられた携帯電話100を把持した場合、加加速度の正側に擬似力覚(牽引感覚)を得られることが確認された。
【0027】
第1実施形態によるリニアモータ1では、以下の効果を得ることができる。
【0028】
(1)コイル14と、コイル14が発生する磁界により往復移動する可動部12と、可動部12が収納されるとともに可動部12の往復移動によって振動する筐体11と、可動部12と筐体11との間に設けられるバネ部13aおよび13bとを設けた。そして、コイル14には、正側に突出するステップ形状を有する波形の電圧が印加されるように構成した。これにより、たとえば、コイルに発生する誘導起電力の検出や可動部の移動速度の計算を行い、所定の移動速度になるように正弦波状の交流電流(交流電圧)が導出(算出)された後に、コイルに正弦波状の交流電流(交流電圧)が供給される場合と異なり、正側に突出するステップ形状を有する波形の電圧をコイルに印加するだけで容易にリニアモータ1に所望の擬似力覚(牽引感覚)を発生させることができる。その結果、コイルに供給される交流電流(交流電圧)の導出過程が複雑化するのを抑制することができる。
【0029】
(2)単一の波形の電圧を、コイル14に対して所定の時間間隔で複数回印加されるように構成した。これにより、単一の波形の電圧をコイル14に対して1回のみ印加する場合と異なり、リニアモータ1を所望の方向に複数回擬似力覚(牽引感覚)を発生させることができるので、リニアモータ1が複数回擬似力覚(牽引感覚)を発生させる分、確実に擬似力覚(牽引感覚)を得ることができる。
【0030】
(3)コイル14に印加される電圧波形を、コイル14に印加される電圧の0の基準線から正側に突出する形状を有するように構成した。これにより、たとえば、コイル14に印加される電圧が0の基準線から負側にずれた位置から正側に突出する形状を有している場合と比べて、電圧波形の正側の最大値を大きくすることができるので、その分、加速度の正側の最大値を大きくすることができる。
【0031】
(4)コイル14に印加される電圧波形の立ち下がり時間を、電圧波形の立ち上がり時間よりも長くなるように構成した。これにより、電圧波形の立ち下がり時の加速度を緩やかに小さくすることができるとともに、電圧波形の立ち上がり時の加速度を急激に大きくすることができる。その結果、加速度を時間で微分した加加速度の正側の最大値と負側の最大値との加加速度差が生じるので、その分、擬似力覚(牽引感覚)をより向上させることができる。
【0032】
(5)電圧波形の立ち下がり時の電圧値を、段階的に小さくなるステップ形状を有するように構成した。これにより、電圧波形の立ち下がり時に発生する加速度が段階的に小さくなるので、加速度を緩やかに小さくすることができる。
【0033】
(第2実施形態)
次に、図5および図6を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が段階的に小さくなるステップ形状の電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した上記第1実施形態とは異なり、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的に小さくなるスロープ形状の電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合について説明する。
【0034】
第2実施形態によるリニアモータ1のコイル14に印加される電圧波形は、立ち下がり時の電圧値が連続的(直線的)に小さくなるスロープ形状を有している。また、立ち下がり波形の立ち下がり時間t12は、立ち上がり波形の立ち上がり時間t11よりも長くなるように構成されている。
【0035】
次に、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的(直線的)に小さくなるスロープ形状の電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合のリニアモータ1の加速度について行った実験結果、および、加速度を時間で微分することにより得られた加加速度の計算結果について説明する。なお、図5では、縦軸は、電圧(V)および加速度(G)を示しており、横軸は、時間(秒)を示している。図6では、縦軸は、電圧(V)および加加速度(G/s)を示しており、横軸は、時間(秒)を示している。
【0036】
図5に示すように、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的に小さくなるスロープ形状の電圧(V)(破線)を、リニアモータ1のコイル14に印加した場合には、加速度の0の基準線に対して、非対称な形状の加速度(実線)の波形が得られた。
【0037】
また、加速度は、電圧波形の立ち上がり時(立ち上がり時間t11)において、正側に急激に大きくなることが確認された。そして、加速度は、電圧波形の電圧値が一定になる時間(立ち上がり時間t11と立ち下がり時間t12との間の時間t13)において、最も大きくなることが確認された。その後、加速度は、電圧波形の立ち下がり時(立ち下がり時間t12)において、電圧波形の電圧値が段階的に小さくなるのに伴って、加速度が緩やかに小さくなることが確認された。また、加速度の正側の最大値の絶対値は、1.3(G)であるとともに、加速度の負側の最大値の絶対値は、0.6(G)であり、正側と負側とでは0.7(G)の加速度差があることが確認された。
【0038】
次に、図5に示す加速度を時間で微分することにより、図6に示すように、加加速度の0の基準線に対して、非対称な形状の加加速度(実線)の波形が得られた。また、加加速度は、電圧波形の立ち上がり時(立ち上がり時間t11)において、電圧波形の立ち上がりと略同時に正側に急激に大きくなることが確認された。そして、電圧波形の電圧値が一定になる時間(立ち上がり時間t11と立ち下がり時間t12との間の時間t13)において、加加速度が負側に急激に小さくなることが確認された。その後、加加速度は、電圧波形の電圧値の立ち下がり時(立ち下がり時間t12)において、負の状態になることが確認された。また、加加速度の正側の最大値の絶対値は、1900(G/s)であるとともに、加加速度の負側の最大値の絶対値は、500G(G/s)であり、正側と負側とでは1400(G/s)の加加速度差があることが確認された。なお、図6に示す加加速度(図5に示す加速度)の波形を有するリニアモータ1が設けられた携帯電話100を把持した場合、加加速度の正側に擬似力覚(牽引感覚)を得られることが確認された。
【0039】
なお、その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0040】
また、第2実施形態によるリニアモータ1では、以下の効果を得ることができる。
【0041】
(6)電圧波形の立ち下がり時の電圧値を、連続的に小さくなるスロープ形状を有するように構成した。これにより、電圧波形の立ち下がり時に発生する加速度を段階的に小さくする場合と比べて加速度が連続的に小さくなるので、加速度をより滑らかに小さくすることができる。
【0042】
(第3実施形態)
次に、図7および図8を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的に小さくなるスロープ形状の電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した上記第2実施形態とは異なり、実効電圧的な電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的に小さくなるスロープ形状の電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合について説明する。
【0043】
第3実施形態によるリニアモータ1のコイル14に印加される電圧波形は、実効電圧的な電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的に小さくなるスロープ形状を有している。具体的には、コイル14に印加される電圧波形は、立ち下がり時の電圧波形(立ち下がり波形)がパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)されることにより、立ち下がり時の電圧値が実効値としては連続的(直線的)に小さくなるスロープ形状を有している。また、立ち下がり波形の立ち下がり時間t22は、立ち上がり波形の立ち上がり時間t21よりも長くなるように構成されている。
【0044】
次に、実効電圧的な電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的に小さくなるスロープ形状の電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合のリニアモータ1の加速度について行った実験結果、および、加速度を時間で微分することにより得られた加加速度の計算結果について説明する。なお、図7では、縦軸は、電圧(V)および加速度(G)を示しており、横軸は、時間(秒)を示している。図8では、縦軸は、電圧(V)および加加速度(G/s)を示しており、横軸は、時間(秒)を示している。
【0045】
図7に示すように、実効電圧的な電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的に小さくなるスロープ形状の電圧(V)(破線)を、リニアモータ1のコイル14に印加した場合には、加速度の0の基準線に対して、非対称な形状の加速度(実線)の波形が得られた。
【0046】
また、加速度は、電圧波形の立ち上がり時(立ち上がり時間t21)において、正側に急激に大きくなることが確認された。そして、加速度は、電圧波形の電圧値が一定になる時間(立ち上がり時間t21と立ち下がり時間t22との間の時間t23)において、最も大きくなることが確認された。その後、加速度は、電圧波形の立ち下がり時(立ち下がり時間t22)において、電圧波形の電圧値が連続的に小さくなるのに伴って、加速度が緩やかに小さくなることが確認された。また、加速度の正側の最大値の絶対値は、1.3(G)であるとともに、加速度の負側の最大値の絶対値は、0.7(G)であり、正側と負側とでは0.6(G)の加速度差があることが確認された。
【0047】
次に、図7に示す加速度を時間で微分することにより、図8に示すように、加加速度の0の基準線に対して、非対称な形状の加加速度(実線)の波形が得られた。また、加加速度は、電圧波形の立ち上がり時(立ち上がり時間t21)において、電圧波形の立ち上がりと略同時に正側に急激に大きくなることが確認された。そして、電圧波形の電圧値が一定になる時間(立ち上がり時間t21と立ち下がり時間t22との間の時間t23)において、加加速度は、負側に急激に小さくなることが確認された。その後、加加速度は、電圧波形の電圧値の立ち下がり時(立ち下がり時間t22)において、負の状態になることが確認された。また、加加速度の正側の最大値の絶対値は、1900(G/s)であるとともに、加加速度の負側の最大値の絶対値は、500G(G/s)であり、正側と負側とでは1400(G/s)の加加速度差があることが確認された。なお、図8に示す加加速度(図7に示す加速度)の波形を有するリニアモータ1が設けられた携帯電話100を把持した場合、加加速度の正側に擬似力覚(牽引感覚)を得られることが確認された。
【0048】
なお、第3実施形態のその他の構成および効果は、上記第2実施形態と同様である。
【0049】
(第4実施形態)
次に、図9および図10を参照して、第4実施形態について説明する。この第4実施形態では、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的に小さくなるスロープ形状の電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した上記第2実施形態とは異なり、周波数が250Hzの正弦波と、周波数が50Hzの正弦波とを合成し、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的に小さくなるスロープ形状の電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合について説明する。
【0050】
第4実施形態によるリニアモータ1のコイル14に印加される電圧波形は、周波数が250Hzの正弦波と、周波数が50Hzの正弦波とを合成した電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的に小さくなるスロープ形状を有している。この電圧波形(合成波形)は、立ち上がり時に250Hzの正弦波の正側の電圧波形が入力されるとともに、立ち下がり時に50Hzの正弦波の正側の電圧波形がコイル14に入力されるように構成されている。つまり、250Hzの正弦波および50Hzの正弦波の負側の電圧波形は、コイル14に入力されないように構成されている。これにより、立ち上がり時には比較的急峻な波形の電圧が入力され、立ち下がり時には比較的緩やかな波形の電圧がコイル14に印加されるように構成されている。これにより、電圧波形の立ち下がり時に要する時間t32は、電圧波形の立ち上がり時に要する時間t31よりも長くなるように構成されている。
【0051】
次に、250Hzの正弦波と50Hzの正弦波とを合成した電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合のリニアモータ1の加速度について行った実験結果、および、加速度を時間で微分することにより得られた加加速度の計算結果について説明する。なお、図9では、縦軸は、電圧(V)および加速度(G)を示しており、横軸は、時間(秒)を示している。図10では、縦軸は、電圧(V)および加加速度(G/s)を示しており、横軸は、時間(秒)を示している。
【0052】
図9に示すように、250Hzの正弦波と50Hzの正弦波とを合成した電圧(V)(破線)を、リニアモータ1のコイル14に印加した場合には、加速度の0の基準線に対して、非対称な形状の加速度(実線)の波形が得られた。
【0053】
また、加速度は、電圧波形の立ち上がり時(立ち上がり時間t31)において、正側に急激に大きくなることが確認された。そして、加速度は、電圧波形の電圧値が最も大きくなる時点(立ち上がり時間t31と立ち下がり時間t32との間の時点)において、最も大きくなることが確認された。その後、加速度は、電圧波形の立ち下がり時(立ち下がり時間t32)において、電圧波形の電圧値が緩やかに小さくなるのに伴って、緩やかに小さくなることが確認された。また、加速度の正側の最大値の絶対値は、0.8(G)であるとともに、加速度の負側の最大値の絶対値は、0.4(G)であり、正側と負側とでは0.4(G)の加速度差があることが確認された。
【0054】
次に、図9に示す加速度を時間で微分することにより、図10に示すように、加加速度の0の基準線に対して、非対称な形状の加加速度(実線)の波形が得られた。また、加加速度は、電圧波形の立ち上がり時(立ち上がり時間t31)において、電圧波形の立ち上がりと略同時に正側に急激に大きくなることが確認された。そして、電圧波形の電圧値が最も大きくなる時点(立ち上がり時間t31と立ち下がり時間t32との間の時点)近傍において、加加速度が負側に急激に小さくなることが確認された。その後、加加速度は、電圧波形の電圧値の立ち下がり時(立ち下がり時間t32)において、負の状態になることが確認された。また、加加速度の正側の最大値の絶対値は、900(G/s)であるとともに、加加速度の負側の最大値の絶対値は、400G(G/s)であり、正側と負側とでは500(G/s)の加加速度差があることが確認された。なお、図10に示す加加速度(図9に示す加速度)の波形を有するリニアモータ1が設けられた携帯電話100を把持した場合、加加速度の正側に擬似力覚(牽引感覚)を得られることが確認された。
【0055】
なお、第4実施形態のその他の構成および効果は、上記第2実施形態と同様である。
【0056】
(第5実施形態)
次に、図11および図12を参照して、第5実施形態について説明する。この第5実施形態では、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が段階的に小さくなるステップ形状の電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した上記第1実施形態とは異なり、矩形状(パルス状)の電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合について説明する。
【0057】
次に、矩形状の電圧波形を有する電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合のリニアモータ1の加速度について行った実験結果、および、加速度を時間で微分することにより得られた加加速度の計算結果について説明する。なお、図11では、縦軸は、電圧(V)および加速度(G)を示しており、横軸は、時間(秒)を示している。図12では、縦軸は、電圧(V)および加加速度(G/s)を示しており、横軸は、時間(秒)を示している。
【0058】
図11に示すように、矩形状の電圧(V)(破線)を、リニアモータ1のコイル14に印加した場合には、加速度の0の基準線に対して、非対称な形状の加速度(実線)の波形が得られた。
【0059】
また、加速度は、電圧波形の立ち上がり時(立ち上がり時間t41)において、正側に急激に大きくなることが確認された。そして、加速度は、電圧波形の電圧値が一定になる時間(立ち上がり時間t41と立ち下がり時間t42との間の時間t43)において、最も大きくなることが確認された。その後、加速度は、電圧波形の立ち下がり時(立ち下がり時間t42)において、電圧波形の電圧値が小さくなるのに伴って、加速度が負側に急激に小さくなることが確認された。また、加速度の正側の最大値の絶対値は、1.1(G)であるとともに、加速度の負側の最大値の絶対値は、0.4(G)であり、正側と負側とでは0.7(G)の加速度差があることが確認された。
【0060】
次に、図11に示す加速度を時間で微分することにより、図12に示すように、加加速度の0の基準線に対して、非対称な形状の加加速度(実線)の波形が得られた。また、加加速度は、電圧波形の立ち上がり時(立ち上がり時間t41)において、電圧波形の立ち上がりと略同時に正側に急激に大きくなることが確認された。そして、電圧波形の電圧値が一定になる時間(立ち上がり時間t41と立ち下がり時間t42との間の時間t43)において、負側に加加速度が急激に小さくなることが確認された。その後、加加速度は、電圧波形の電圧値の立ち下がり時(立ち下がり時間t42)において、さらに負側に急激に小さくなることが確認された。また、加加速度の正側の最大値の絶対値は、2000(G/s)であるとともに、加加速度の負側の最大値の絶対値は、2000(G/s)であり、加加速度の正側の最大値と負側の最大値との差は0であることが確認された。
【0061】
なお、図12に示す加加速度(図11に示す加速度)の波形を有するリニアモータ1が設けられた携帯電話100を把持した場合、加速度の正側に擬似力覚(牽引感覚)を得られることが確認された。ただし、この第5実施形態で得られる擬似感覚(牽引感覚)は、上記した第1実施形態〜第4実施形態で得られる擬似感覚(牽引感覚)よりも小さいことが判明した。また、第5実施形態の場合、加加速度の正側の最大値と負側の最大値との差は0であったが、加速度差が0.7Gであったため、加速度の大きい正側に擬似力覚(牽引感覚)が発生したと考えられる。このことから、本願発明者は、加加速度に差はなくても加速度に差があれば、ある程度の擬似力覚(牽引感覚)を得ることが可能であることを見出した。さらに、上記した第1実施形態〜第4実施形態と、第5実施形態との擬似感覚(牽引感覚)の差から加加速度が擬似感覚に大きく影響していることを見出した。
【0062】
なお、第5実施形態のその他の構成および効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0063】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0064】
たとえば、上記第1〜第5実施形態では、正側に突出する形状を有する波形の電圧をコイルに印加する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、負側に突出する形状を有する波形の電圧をコイルに印加してもよい。
【0065】
また、上記第1〜第5実施形態では、コイルに印加される電圧波形がコイルに印加される電圧の0の基準線から正側に突出する形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、コイルに印加される電圧波形がコイルに印加される電圧の0の基準線から正側または負側にずれた位置から正側に突出する形状を有していてもよい。
【0066】
また、上記第1〜第5実施形態では、本発明の正または負の一方極性側に突出する形状を有する波形の電圧の一例として、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が段階的に小さくなるステップ形状、電圧波形または実効電圧的な電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的に小さくなるスロープ形状、2つの正弦波を合成した形状、および、矩形状の電圧を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、正または負の一方極性側に突出する形状であれば、ステップ形状、スロープ形状、2つの正弦波を合成した形状および矩形状以外の形状の電圧波形でもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 リニアモータ(振動デバイス)
2 制御回路部
11 筐体
12 可動部
13a、13b バネ部
14 コイル
100 携帯電話
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動デバイスに関し、特に、可動部とコイルとを備え、コイルに電圧が印加される振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可動部とコイルとを備え、コイルに電圧が印加される振動デバイスが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、コイルが巻回される円筒状のボビン(可動部)と、円筒状のボビンの一方端部側に取り付けられる第1永久磁石(可動部)と、ボビンの他方側にボビンと別個に設けられる第2永久磁石と、コイル、ボビン、第1永久磁石および第2永久磁石を収納する円筒状のフレームと、第1永久磁石とフレームとの間に設けられるバネとを備える加速度発生装置(振動デバイス)が開示されている。
【0004】
この加速度発生装置では、コイルに正弦波状の交流電流(交流電圧)が供給されることにより磁界が発生する。そして、第1永久磁石の一方側にはバネの弾性力が働くとともに、他方側にはコイルの磁界と第2永久磁石の磁界とが働くように構成されている。そして、第1永久磁石の一方側および他方側に働く力の大きさが第1永久磁石およびボビンの位置によって異なっており、第1永久磁石(ボビン)の加速度の波形が第1永久磁石(ボビン)の移動方向の一方側と他方側とで異なるように構成されている。これにより、ユーザは、加速度発生装置を把持した場合に、所定の方向に引っ張られるような力覚(擬似力覚)を知覚することが可能となる。なお、上記加速度発生装置では、コイルに発生する誘導起電力を検出し、検出された誘導起電力からボビンおよび永久磁石の移動速度を計算し、所定の移動速度になるように正弦波状の交流電流(交流電圧)が導出(算出)された後に、コイルにその正弦波状の交流電流(交流電圧)が供給されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2007/086426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された加速度発生装置では、コイルに上記のように導出(算出)した正弦波状の交流電流(交流電圧)が供給されるため、コイルに供給される交流電流(交流電圧)の導出過程が複雑化するという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、コイルに供給される交流電流(交流電圧)の導出過程が複雑化するのを抑制することが可能な振動デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における振動デバイスは、コイルと、コイルが発生する磁界により往復移動する可動部と、可動部が収納されるとともに可動部の往復移動によって振動する筐体と、可動部と筐体との間に設けられるバネ部とを備え、コイルには、正または負の一方極性側に突出する形状を有する波形の電圧が印加されるように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成により、コイルに供給される交流電流(交流電圧)の導出過程が複雑化するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態による携帯電話の平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるリニアモータの断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるリニアモータに印加されるステップ形状の電圧の波形および加速度の波形を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態によるリニアモータに印加されるステップ形状の電圧の波形および加加速度の波形を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態によるリニアモータに印加されるスロープ形状の電圧の波形および加速度の波形を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態によるリニアモータに印加されるスロープ形状の電圧の波形および加加速度の波形を示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態によるリニアモータに印加される実効電圧的な電圧のスロープ形状の波形および加速度の波形を示す図である。
【図8】本発明の第3実施形態によるリニアモータに印加される実効電圧的な電圧のスロープ形状の波形および加加速度の波形を示す図である。
【図9】本発明の第4実施形態によるリニアモータに印加される250Hzの正弦波と50Hzの正弦波との合成波形および加速度の波形を示す図である。
【図10】本発明の第4実施形態によるリニアモータに印加される250Hzの正弦波と50Hzの正弦波との合成波形および加加速度の波形を示す図である。
【図11】本発明の第5実施形態によるリニアモータに印加される矩形状の電圧の波形および加速度の波形を示す図である。
【図12】本発明の第5実施形態によるリニアモータに印加される矩形状の電圧の波形および加加速度の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1〜図4を参照して、第1実施形態によるリニアモータ1を備えた携帯電話100の構成について説明する。なお、リニアモータ1は、本発明の「振動デバイス」の一例である。
【0013】
携帯電話100は、図1に示すように、液晶ディスプレイなどからなる表示部101と、押しボタンスイッチからなる複数の入力キー102とを備えている。
【0014】
携帯電話100の内部には、リニアモータ1と、リニアモータ1に供給する交流電流(交流電圧)を制御する制御回路部2とが設けられている。また、リニアモータ1は、携帯電話100の矢印Y1方向側の先端部(携帯電話100を把持する側とは反対側の端部)に配置されている。
【0015】
図2に示すように、リニアモータ1は、円筒状の筐体11と、筐体11内に収納される円筒状の永久磁石からなる可動部12と、可動部12と筐体11の内側面との間に設けられるバネ部13aおよび13bと、筐体11に巻回されるコイル14とを含んでいる。可動部12を構成する永久磁石は、矢印X1方向側にN極の磁極面を有するとともに、矢印X2方向側にS極の磁極面を有するように配置されている。
【0016】
バネ部13aおよび13bは、コイルバネなどからなる。バネ部13aおよび13bは、可動部12の振動(往復移動)の中心線に対して、略対称になるように配置されている。また、バネ部13aおよび13bは、同じ材料からなり、同じバネ特性を有する。そして、筐体11も、可動部12の往復移動の中心線に対して、略対称な形状を有する。つまり、リニアモータ1は、全体として可動部12の往復移動の中心線に対して、構造的に略対称な形状を有する。
【0017】
コイル14は、リニアモータ1を矢印X2方向側から見た場合に、筐体11に右巻きに巻回されているコイル14aと、筐体11に左巻きに巻回されているコイル14bとを含んでいる。つまり、筐体11に対する巻回の方向は、コイル14aとコイル14bとで反対である。また、コイル14aとコイル14bとは、電気的に接続されている。また、コイル14aは、筐体11の矢印X1方向側に配置されるとともに、コイル14bは、筐体11の矢印X2方向側に配置される。
【0018】
コイル14は、制御回路部2(図1参照)に接続されている。そして、制御回路部2からコイル14に、正側に突出する形状を有する波形の電圧が印加されるように構成されている。具体的には、図3および図4に示すように、コイル14に印加される電圧の波形(破線)は、電圧の0の基準線から正側に突出する形状を有している。このコイル14に印加される電圧の波形は、立ち上がり波形(立ち上がり時間t1における電圧波形)および立ち下がり波形(立ち下がり時間t2における電圧波形)を有する単一の波形からなる。また、立ち下がり波形の立ち下がり時間t2は、立ち上がり波形の立ち上がり時間t1よりも長くなるように構成されている。
【0019】
また、コイル14に印加される電圧の立ち上がり波形は、通常のパルス状(矩形状)の波形と同様、急激に立ち上がる形状(急峻な形状)を有しており、立ち上がり時間t1は、非常に短い。一方、コイル14に印加される電圧の立ち下がり波形は、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が段階的に小さくなるステップ形状を有している。すなわち、電圧波形の立ち下がり時の電圧値は、1.5ms(0.0015秒)毎に、電圧値が4分の1ずつ段階的に小さくなるように構成されている。また、コイル14に印加される電圧(単一の波形からなる電圧)は、コイル14に対して所定の時間間隔で複数回印加されるように構成されている。
【0020】
次に、図1および図2を参照して、第1実施形態によるリニアモータ1の振動(往復移動)の動作を説明する。
【0021】
まず、制御回路部2(図1参照)からコイル14に電圧を印加して、コイル14に電流を供給する。これにより、コイル14aおよびコイル14bには、それぞれ、磁界が発生する。なお、コイル14の巻回の方向は、コイル14aとコイル14bとでは、反対であるので、コイル14aに発生する磁界の方向と、コイル14bに発生する磁界の方向とは逆方向になる。これにより、可動部12は、コイル14aおよびコイル14bのうちの一方からX方向に沿って引力を受けるとともに、他方から斥力を受ける。その結果、可動部12は、X方向に沿って移動する。また、コイル14に印加する電圧を反転させて逆方向に電流を供給することにより、可動部12の移動が反転する。このように、電圧を反転させてコイル14に電圧を印加することにより、可動部12が振動する。また、可動部12の振動に伴って筐体11(携帯電話100)も振動する。
【0022】
そして、たとえば、図3および図4に示すようなコイル14に正側に突出するとともに、立ち上がりがステップ形状を有する波形の電圧を印加することにより、リニアモータ1が設けられる携帯電話100を把持した場合に、可動部12の振動によって、所定の方向に引っ張られるような擬似力覚(牽引感覚)が得られる。さらに、コイル14に印加する電圧を反転させることにより、容易に、携帯電話100を把持した場合に得られる擬似力覚の方向を反対方向に変化させることが可能である。
【0023】
次に、図3および図4を参照して、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が段階的に小さくなるステップ形状の電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合のリニアモータ1の加速度について行った実験結果、および、加速度を時間で微分することにより得られた加加速度の計算結果について説明する。なお、図3では、縦軸は、電圧(V)および加速度(G)を示しており、横軸は、時間(秒)を示している。図4では、縦軸は、電圧(V)および加加速度(G/s)を示しており、横軸は、時間(秒)を示している。
【0024】
図3に示すように、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が段階的に小さくなるステップ形状の電圧(V)(破線)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合には、加速度が0の基準線に対して、非対称な形状の加速度(実線)の波形が得られた。なお、電圧(V)の周波数は、50Hzである。
【0025】
また、加速度は、電圧波形の立ち上がり時(立ち上がり時間t1)において、正側に急激に大きくなることが確認された。そして、加速度は、電圧波形の電圧値が一定になる時間(立ち上がり時間t1と立ち下がり時間t2との間の時間t3)において、最も大きくなることが確認された。その後、加速度は、電圧波形の立ち下がり時(立ち下がり時間t2)において、電圧波形の電圧値が段階的に小さくなるのに伴って、加速度が緩やかに小さくなることが確認された。また、加速度の正側の最大値の絶対値は、1.3(G)であるとともに、加速度の負側の最大値の絶対値は、0.5(G)であり、正側と負側とでは0.8(G)の加速度差があることが確認された。
【0026】
次に、図3に示す加速度を時間で微分することにより、図4に示すように、加加速度の0の基準線に対して、非対称な形状の加加速度(実線)の波形が得られた。また、加加速度は、電圧波形の立ち上がり時(立ち上がり時間t1)において、電圧波形の立ち上がりと略同時に正側に急激に大きくなることが確認された。そして、電圧波形の電圧値が一定になる時間(立ち上がり時間t1と立ち下がり時間t2との間の時間t3)において、加加速度が急激に小さくなることが確認された。その後、加加速度は、電圧波形の電圧値の立ち下がり時(立ち下がり時間t2)において、0または負の状態を繰り返すことが確認された。また、加加速度の正側の最大値の絶対値は、2000(G/s)であるとともに、加加速度の負側の最大値の絶対値は、700G(G/s)であり、正側と負側とでは1300(G/s)の加加速度差があることが確認された。なお、図4に示す加加速度(図3に示す加速度)の波形を有するリニアモータ1が設けられた携帯電話100を把持した場合、加加速度の正側に擬似力覚(牽引感覚)を得られることが確認された。
【0027】
第1実施形態によるリニアモータ1では、以下の効果を得ることができる。
【0028】
(1)コイル14と、コイル14が発生する磁界により往復移動する可動部12と、可動部12が収納されるとともに可動部12の往復移動によって振動する筐体11と、可動部12と筐体11との間に設けられるバネ部13aおよび13bとを設けた。そして、コイル14には、正側に突出するステップ形状を有する波形の電圧が印加されるように構成した。これにより、たとえば、コイルに発生する誘導起電力の検出や可動部の移動速度の計算を行い、所定の移動速度になるように正弦波状の交流電流(交流電圧)が導出(算出)された後に、コイルに正弦波状の交流電流(交流電圧)が供給される場合と異なり、正側に突出するステップ形状を有する波形の電圧をコイルに印加するだけで容易にリニアモータ1に所望の擬似力覚(牽引感覚)を発生させることができる。その結果、コイルに供給される交流電流(交流電圧)の導出過程が複雑化するのを抑制することができる。
【0029】
(2)単一の波形の電圧を、コイル14に対して所定の時間間隔で複数回印加されるように構成した。これにより、単一の波形の電圧をコイル14に対して1回のみ印加する場合と異なり、リニアモータ1を所望の方向に複数回擬似力覚(牽引感覚)を発生させることができるので、リニアモータ1が複数回擬似力覚(牽引感覚)を発生させる分、確実に擬似力覚(牽引感覚)を得ることができる。
【0030】
(3)コイル14に印加される電圧波形を、コイル14に印加される電圧の0の基準線から正側に突出する形状を有するように構成した。これにより、たとえば、コイル14に印加される電圧が0の基準線から負側にずれた位置から正側に突出する形状を有している場合と比べて、電圧波形の正側の最大値を大きくすることができるので、その分、加速度の正側の最大値を大きくすることができる。
【0031】
(4)コイル14に印加される電圧波形の立ち下がり時間を、電圧波形の立ち上がり時間よりも長くなるように構成した。これにより、電圧波形の立ち下がり時の加速度を緩やかに小さくすることができるとともに、電圧波形の立ち上がり時の加速度を急激に大きくすることができる。その結果、加速度を時間で微分した加加速度の正側の最大値と負側の最大値との加加速度差が生じるので、その分、擬似力覚(牽引感覚)をより向上させることができる。
【0032】
(5)電圧波形の立ち下がり時の電圧値を、段階的に小さくなるステップ形状を有するように構成した。これにより、電圧波形の立ち下がり時に発生する加速度が段階的に小さくなるので、加速度を緩やかに小さくすることができる。
【0033】
(第2実施形態)
次に、図5および図6を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が段階的に小さくなるステップ形状の電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した上記第1実施形態とは異なり、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的に小さくなるスロープ形状の電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合について説明する。
【0034】
第2実施形態によるリニアモータ1のコイル14に印加される電圧波形は、立ち下がり時の電圧値が連続的(直線的)に小さくなるスロープ形状を有している。また、立ち下がり波形の立ち下がり時間t12は、立ち上がり波形の立ち上がり時間t11よりも長くなるように構成されている。
【0035】
次に、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的(直線的)に小さくなるスロープ形状の電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合のリニアモータ1の加速度について行った実験結果、および、加速度を時間で微分することにより得られた加加速度の計算結果について説明する。なお、図5では、縦軸は、電圧(V)および加速度(G)を示しており、横軸は、時間(秒)を示している。図6では、縦軸は、電圧(V)および加加速度(G/s)を示しており、横軸は、時間(秒)を示している。
【0036】
図5に示すように、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的に小さくなるスロープ形状の電圧(V)(破線)を、リニアモータ1のコイル14に印加した場合には、加速度の0の基準線に対して、非対称な形状の加速度(実線)の波形が得られた。
【0037】
また、加速度は、電圧波形の立ち上がり時(立ち上がり時間t11)において、正側に急激に大きくなることが確認された。そして、加速度は、電圧波形の電圧値が一定になる時間(立ち上がり時間t11と立ち下がり時間t12との間の時間t13)において、最も大きくなることが確認された。その後、加速度は、電圧波形の立ち下がり時(立ち下がり時間t12)において、電圧波形の電圧値が段階的に小さくなるのに伴って、加速度が緩やかに小さくなることが確認された。また、加速度の正側の最大値の絶対値は、1.3(G)であるとともに、加速度の負側の最大値の絶対値は、0.6(G)であり、正側と負側とでは0.7(G)の加速度差があることが確認された。
【0038】
次に、図5に示す加速度を時間で微分することにより、図6に示すように、加加速度の0の基準線に対して、非対称な形状の加加速度(実線)の波形が得られた。また、加加速度は、電圧波形の立ち上がり時(立ち上がり時間t11)において、電圧波形の立ち上がりと略同時に正側に急激に大きくなることが確認された。そして、電圧波形の電圧値が一定になる時間(立ち上がり時間t11と立ち下がり時間t12との間の時間t13)において、加加速度が負側に急激に小さくなることが確認された。その後、加加速度は、電圧波形の電圧値の立ち下がり時(立ち下がり時間t12)において、負の状態になることが確認された。また、加加速度の正側の最大値の絶対値は、1900(G/s)であるとともに、加加速度の負側の最大値の絶対値は、500G(G/s)であり、正側と負側とでは1400(G/s)の加加速度差があることが確認された。なお、図6に示す加加速度(図5に示す加速度)の波形を有するリニアモータ1が設けられた携帯電話100を把持した場合、加加速度の正側に擬似力覚(牽引感覚)を得られることが確認された。
【0039】
なお、その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0040】
また、第2実施形態によるリニアモータ1では、以下の効果を得ることができる。
【0041】
(6)電圧波形の立ち下がり時の電圧値を、連続的に小さくなるスロープ形状を有するように構成した。これにより、電圧波形の立ち下がり時に発生する加速度を段階的に小さくする場合と比べて加速度が連続的に小さくなるので、加速度をより滑らかに小さくすることができる。
【0042】
(第3実施形態)
次に、図7および図8を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的に小さくなるスロープ形状の電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した上記第2実施形態とは異なり、実効電圧的な電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的に小さくなるスロープ形状の電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合について説明する。
【0043】
第3実施形態によるリニアモータ1のコイル14に印加される電圧波形は、実効電圧的な電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的に小さくなるスロープ形状を有している。具体的には、コイル14に印加される電圧波形は、立ち下がり時の電圧波形(立ち下がり波形)がパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)されることにより、立ち下がり時の電圧値が実効値としては連続的(直線的)に小さくなるスロープ形状を有している。また、立ち下がり波形の立ち下がり時間t22は、立ち上がり波形の立ち上がり時間t21よりも長くなるように構成されている。
【0044】
次に、実効電圧的な電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的に小さくなるスロープ形状の電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合のリニアモータ1の加速度について行った実験結果、および、加速度を時間で微分することにより得られた加加速度の計算結果について説明する。なお、図7では、縦軸は、電圧(V)および加速度(G)を示しており、横軸は、時間(秒)を示している。図8では、縦軸は、電圧(V)および加加速度(G/s)を示しており、横軸は、時間(秒)を示している。
【0045】
図7に示すように、実効電圧的な電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的に小さくなるスロープ形状の電圧(V)(破線)を、リニアモータ1のコイル14に印加した場合には、加速度の0の基準線に対して、非対称な形状の加速度(実線)の波形が得られた。
【0046】
また、加速度は、電圧波形の立ち上がり時(立ち上がり時間t21)において、正側に急激に大きくなることが確認された。そして、加速度は、電圧波形の電圧値が一定になる時間(立ち上がり時間t21と立ち下がり時間t22との間の時間t23)において、最も大きくなることが確認された。その後、加速度は、電圧波形の立ち下がり時(立ち下がり時間t22)において、電圧波形の電圧値が連続的に小さくなるのに伴って、加速度が緩やかに小さくなることが確認された。また、加速度の正側の最大値の絶対値は、1.3(G)であるとともに、加速度の負側の最大値の絶対値は、0.7(G)であり、正側と負側とでは0.6(G)の加速度差があることが確認された。
【0047】
次に、図7に示す加速度を時間で微分することにより、図8に示すように、加加速度の0の基準線に対して、非対称な形状の加加速度(実線)の波形が得られた。また、加加速度は、電圧波形の立ち上がり時(立ち上がり時間t21)において、電圧波形の立ち上がりと略同時に正側に急激に大きくなることが確認された。そして、電圧波形の電圧値が一定になる時間(立ち上がり時間t21と立ち下がり時間t22との間の時間t23)において、加加速度は、負側に急激に小さくなることが確認された。その後、加加速度は、電圧波形の電圧値の立ち下がり時(立ち下がり時間t22)において、負の状態になることが確認された。また、加加速度の正側の最大値の絶対値は、1900(G/s)であるとともに、加加速度の負側の最大値の絶対値は、500G(G/s)であり、正側と負側とでは1400(G/s)の加加速度差があることが確認された。なお、図8に示す加加速度(図7に示す加速度)の波形を有するリニアモータ1が設けられた携帯電話100を把持した場合、加加速度の正側に擬似力覚(牽引感覚)を得られることが確認された。
【0048】
なお、第3実施形態のその他の構成および効果は、上記第2実施形態と同様である。
【0049】
(第4実施形態)
次に、図9および図10を参照して、第4実施形態について説明する。この第4実施形態では、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的に小さくなるスロープ形状の電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した上記第2実施形態とは異なり、周波数が250Hzの正弦波と、周波数が50Hzの正弦波とを合成し、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的に小さくなるスロープ形状の電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合について説明する。
【0050】
第4実施形態によるリニアモータ1のコイル14に印加される電圧波形は、周波数が250Hzの正弦波と、周波数が50Hzの正弦波とを合成した電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的に小さくなるスロープ形状を有している。この電圧波形(合成波形)は、立ち上がり時に250Hzの正弦波の正側の電圧波形が入力されるとともに、立ち下がり時に50Hzの正弦波の正側の電圧波形がコイル14に入力されるように構成されている。つまり、250Hzの正弦波および50Hzの正弦波の負側の電圧波形は、コイル14に入力されないように構成されている。これにより、立ち上がり時には比較的急峻な波形の電圧が入力され、立ち下がり時には比較的緩やかな波形の電圧がコイル14に印加されるように構成されている。これにより、電圧波形の立ち下がり時に要する時間t32は、電圧波形の立ち上がり時に要する時間t31よりも長くなるように構成されている。
【0051】
次に、250Hzの正弦波と50Hzの正弦波とを合成した電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合のリニアモータ1の加速度について行った実験結果、および、加速度を時間で微分することにより得られた加加速度の計算結果について説明する。なお、図9では、縦軸は、電圧(V)および加速度(G)を示しており、横軸は、時間(秒)を示している。図10では、縦軸は、電圧(V)および加加速度(G/s)を示しており、横軸は、時間(秒)を示している。
【0052】
図9に示すように、250Hzの正弦波と50Hzの正弦波とを合成した電圧(V)(破線)を、リニアモータ1のコイル14に印加した場合には、加速度の0の基準線に対して、非対称な形状の加速度(実線)の波形が得られた。
【0053】
また、加速度は、電圧波形の立ち上がり時(立ち上がり時間t31)において、正側に急激に大きくなることが確認された。そして、加速度は、電圧波形の電圧値が最も大きくなる時点(立ち上がり時間t31と立ち下がり時間t32との間の時点)において、最も大きくなることが確認された。その後、加速度は、電圧波形の立ち下がり時(立ち下がり時間t32)において、電圧波形の電圧値が緩やかに小さくなるのに伴って、緩やかに小さくなることが確認された。また、加速度の正側の最大値の絶対値は、0.8(G)であるとともに、加速度の負側の最大値の絶対値は、0.4(G)であり、正側と負側とでは0.4(G)の加速度差があることが確認された。
【0054】
次に、図9に示す加速度を時間で微分することにより、図10に示すように、加加速度の0の基準線に対して、非対称な形状の加加速度(実線)の波形が得られた。また、加加速度は、電圧波形の立ち上がり時(立ち上がり時間t31)において、電圧波形の立ち上がりと略同時に正側に急激に大きくなることが確認された。そして、電圧波形の電圧値が最も大きくなる時点(立ち上がり時間t31と立ち下がり時間t32との間の時点)近傍において、加加速度が負側に急激に小さくなることが確認された。その後、加加速度は、電圧波形の電圧値の立ち下がり時(立ち下がり時間t32)において、負の状態になることが確認された。また、加加速度の正側の最大値の絶対値は、900(G/s)であるとともに、加加速度の負側の最大値の絶対値は、400G(G/s)であり、正側と負側とでは500(G/s)の加加速度差があることが確認された。なお、図10に示す加加速度(図9に示す加速度)の波形を有するリニアモータ1が設けられた携帯電話100を把持した場合、加加速度の正側に擬似力覚(牽引感覚)を得られることが確認された。
【0055】
なお、第4実施形態のその他の構成および効果は、上記第2実施形態と同様である。
【0056】
(第5実施形態)
次に、図11および図12を参照して、第5実施形態について説明する。この第5実施形態では、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が段階的に小さくなるステップ形状の電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した上記第1実施形態とは異なり、矩形状(パルス状)の電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合について説明する。
【0057】
次に、矩形状の電圧波形を有する電圧(V)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合のリニアモータ1の加速度について行った実験結果、および、加速度を時間で微分することにより得られた加加速度の計算結果について説明する。なお、図11では、縦軸は、電圧(V)および加速度(G)を示しており、横軸は、時間(秒)を示している。図12では、縦軸は、電圧(V)および加加速度(G/s)を示しており、横軸は、時間(秒)を示している。
【0058】
図11に示すように、矩形状の電圧(V)(破線)を、リニアモータ1のコイル14に印加した場合には、加速度の0の基準線に対して、非対称な形状の加速度(実線)の波形が得られた。
【0059】
また、加速度は、電圧波形の立ち上がり時(立ち上がり時間t41)において、正側に急激に大きくなることが確認された。そして、加速度は、電圧波形の電圧値が一定になる時間(立ち上がり時間t41と立ち下がり時間t42との間の時間t43)において、最も大きくなることが確認された。その後、加速度は、電圧波形の立ち下がり時(立ち下がり時間t42)において、電圧波形の電圧値が小さくなるのに伴って、加速度が負側に急激に小さくなることが確認された。また、加速度の正側の最大値の絶対値は、1.1(G)であるとともに、加速度の負側の最大値の絶対値は、0.4(G)であり、正側と負側とでは0.7(G)の加速度差があることが確認された。
【0060】
次に、図11に示す加速度を時間で微分することにより、図12に示すように、加加速度の0の基準線に対して、非対称な形状の加加速度(実線)の波形が得られた。また、加加速度は、電圧波形の立ち上がり時(立ち上がり時間t41)において、電圧波形の立ち上がりと略同時に正側に急激に大きくなることが確認された。そして、電圧波形の電圧値が一定になる時間(立ち上がり時間t41と立ち下がり時間t42との間の時間t43)において、負側に加加速度が急激に小さくなることが確認された。その後、加加速度は、電圧波形の電圧値の立ち下がり時(立ち下がり時間t42)において、さらに負側に急激に小さくなることが確認された。また、加加速度の正側の最大値の絶対値は、2000(G/s)であるとともに、加加速度の負側の最大値の絶対値は、2000(G/s)であり、加加速度の正側の最大値と負側の最大値との差は0であることが確認された。
【0061】
なお、図12に示す加加速度(図11に示す加速度)の波形を有するリニアモータ1が設けられた携帯電話100を把持した場合、加速度の正側に擬似力覚(牽引感覚)を得られることが確認された。ただし、この第5実施形態で得られる擬似感覚(牽引感覚)は、上記した第1実施形態〜第4実施形態で得られる擬似感覚(牽引感覚)よりも小さいことが判明した。また、第5実施形態の場合、加加速度の正側の最大値と負側の最大値との差は0であったが、加速度差が0.7Gであったため、加速度の大きい正側に擬似力覚(牽引感覚)が発生したと考えられる。このことから、本願発明者は、加加速度に差はなくても加速度に差があれば、ある程度の擬似力覚(牽引感覚)を得ることが可能であることを見出した。さらに、上記した第1実施形態〜第4実施形態と、第5実施形態との擬似感覚(牽引感覚)の差から加加速度が擬似感覚に大きく影響していることを見出した。
【0062】
なお、第5実施形態のその他の構成および効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0063】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0064】
たとえば、上記第1〜第5実施形態では、正側に突出する形状を有する波形の電圧をコイルに印加する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、負側に突出する形状を有する波形の電圧をコイルに印加してもよい。
【0065】
また、上記第1〜第5実施形態では、コイルに印加される電圧波形がコイルに印加される電圧の0の基準線から正側に突出する形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、コイルに印加される電圧波形がコイルに印加される電圧の0の基準線から正側または負側にずれた位置から正側に突出する形状を有していてもよい。
【0066】
また、上記第1〜第5実施形態では、本発明の正または負の一方極性側に突出する形状を有する波形の電圧の一例として、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が段階的に小さくなるステップ形状、電圧波形または実効電圧的な電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的に小さくなるスロープ形状、2つの正弦波を合成した形状、および、矩形状の電圧を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、正または負の一方極性側に突出する形状であれば、ステップ形状、スロープ形状、2つの正弦波を合成した形状および矩形状以外の形状の電圧波形でもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 リニアモータ(振動デバイス)
2 制御回路部
11 筐体
12 可動部
13a、13b バネ部
14 コイル
100 携帯電話
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、
前記コイルが発生する磁界により往復移動する可動部と、
前記可動部が収納されるとともに前記可動部の往復移動によって振動する筐体と、
前記可動部と前記筐体との間に設けられるバネ部とを備え、
前記コイルには、正または負の一方極性側に突出する形状を有する波形の電圧が印加されるように構成されている、振動デバイス。
【請求項2】
前記コイルに印加される電圧波形は、立ち上がり波形および立ち下がり波形を有する単一の波形からなり、
前記単一の波形の電圧は、前記コイルに対して所定の時間間隔で複数回印加されるように構成されている、請求項1に記載の振動デバイス。
【請求項3】
前記コイルに印加される電圧波形は、前記コイルに印加される電圧の0の基準線から正または負の一方極性側に突出する形状を有するように構成されている、請求項1または2に記載の振動デバイス。
【請求項4】
前記コイルに印加される電圧波形の立ち下がり時間は、電圧波形の立ち上がり時間よりも長くなるように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の振動デバイス。
【請求項5】
前記コイルに印加される電圧波形は、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が段階的に小さくなるステップ形状、または、電圧波形または実効電圧的な電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的に小さくなるスロープ形状を有するように構成されている、請求項4に記載の振動デバイス。
【請求項1】
コイルと、
前記コイルが発生する磁界により往復移動する可動部と、
前記可動部が収納されるとともに前記可動部の往復移動によって振動する筐体と、
前記可動部と前記筐体との間に設けられるバネ部とを備え、
前記コイルには、正または負の一方極性側に突出する形状を有する波形の電圧が印加されるように構成されている、振動デバイス。
【請求項2】
前記コイルに印加される電圧波形は、立ち上がり波形および立ち下がり波形を有する単一の波形からなり、
前記単一の波形の電圧は、前記コイルに対して所定の時間間隔で複数回印加されるように構成されている、請求項1に記載の振動デバイス。
【請求項3】
前記コイルに印加される電圧波形は、前記コイルに印加される電圧の0の基準線から正または負の一方極性側に突出する形状を有するように構成されている、請求項1または2に記載の振動デバイス。
【請求項4】
前記コイルに印加される電圧波形の立ち下がり時間は、電圧波形の立ち上がり時間よりも長くなるように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の振動デバイス。
【請求項5】
前記コイルに印加される電圧波形は、電圧波形の立ち下がり時の電圧値が段階的に小さくなるステップ形状、または、電圧波形または実効電圧的な電圧波形の立ち下がり時の電圧値が連続的に小さくなるスロープ形状を有するように構成されている、請求項4に記載の振動デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−40516(P2012−40516A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184389(P2010−184389)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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