説明

振動モニタリング装置、振動モニタリングシステム、サーバおよび振動センサモジュール

【課題】周辺環境における振動を簡単かつ正確に測定すること。
【解決手段】振動モニタリング装置1は、振動センサ22を備えた振動測定用USBモジュール20によって、自装置周辺における振動を測定する。そして、振動モニタリング装置1は、測定した振動の周波数および揺れ量を振動状態データベースに格納し、格納されているデータを基に、自装置周辺における振動の状態を表示する。そのため、簡単に設置可能な振動測定用USBモジュール20を用いて、各種振動源において発生し、振動モニタリング装置1に伝達した種々の振動を継続的に測定することができる。したがって、周辺環境における振動を簡単かつ正確に測定することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動を測定するための振動モニタリング装置、振動モニタリングシステム、サーバおよび振動センサモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅やオフィスにおける環境を快適なものとすることに対し、高い関心が集まっている。
例えば、幹線道路や線路沿いの居住者にとっては、日常における住居の振動が関心事となっている。
また、地震の発生時においては、市区町村単位で震度が報知されるものの、自宅付近のより詳しい震度を把握することは困難であり、このような情報を把握することは各人にとって有用である。
【0003】
ここで、振動を測定する技術として、特許文献1に記載されたものが知られている。
特許文献1に記載された技術は、振動を検出する測定対象物に加速度センサを固定して設置し、その計測情報を近距離無線伝送により携帯情報端末に送信して、携帯情報端末が計測情報をグラフ等で表示するものである。
【特許文献1】特開2006−309373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、特定の対象物における振動を検出するためのものであり、周辺環境における振動を簡単かつ正確に測定することが困難である。
即ち、特許文献1に記載された技術においては、測定対象物に加速度センサを設置する必要があり、周辺環境における振動を簡単に測定することが困難である。
また、特許文献1に記載された技術においては、特定の対象物を想定して振動を測定する必要があるため、周辺環境における不知の振動を測定することができず、周辺環境において発生する振動を正確に測定することが困難である。
このように、従来の技術においては、周辺環境における振動を簡単かつ正確に測定することが困難であった。
本発明の課題は、周辺環境における振動を簡単かつ正確に測定することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、第1の発明は、
振動を測定するセンサ(例えば、図1の振動センサ22)を備えた振動環境センサモジュール(例えば、図1の振動測定用USBモジュール20)と、前記振動環境センサモジュールによって測定された振動に関する測定データを処理する情報処理装置(例えば、図1のPC本体10)とを含み、前記振動環境センサモジュールと前記情報処理装置とは、接続インターフェース(例えば、USBに基づくインターフェース)によって接続可能であり、前記情報処理装置は、前記接続インターフェースによって接続された前記振動環境センサモジュールにおける前記センサの測定データを取得する測定データ取得手段(例えば、図3のステップS1を実行するCPU12)と、前記測定データ取得手段によって取得された測定データを格納する振動状態データベース(例えば、図2の記憶装置13)と、前記振動状態データベースに格納された測定データを基に、自装置周辺における振動の状態を表示する振動環境データ表示手段(例えば、図3のステップS7,S8を実行するCPU12)とを備えることを特徴としている。
このような構成により、簡単に設置可能な振動環境センサモジュールを用いて、各種振動源において発生し、振動モニタリング装置に伝達した種々の振動を継続的に測定することができる。
したがって、周辺環境における振動を簡単かつ正確に測定することが可能となる。
【0006】
また、第2の発明は、
前記振動状態データベースは、前記測定データ取得手段によって取得された測定データを測定時間と対応付けて格納し、前記振動環境データ表示手段は、前記振動状態データベースに格納された測定データおよび前記測定時間を基に、自装置周辺における振動の状態を時間と対応付けて表示することを特徴としている。
このような構成により、自装置周辺における振動の状態の時間変化を表示できるため、振動の状態の変化をより効果的に示すことができる。
【0007】
また、第3の発明は、
前記振動環境センサモジュールは、自装置の位置を測定する位置測定手段(例えば、図1のGPS受信部21)を備え、前記測定データ取得手段は、前記位置測定手段によって測定された位置と前記測定データとを前記振動環境センサモジュールから取得し、前記振動状態データベースは、前記測定データ取得手段によって取得された測定データを前記位置測定手段によって測定された位置と対応付けて格納し、前記振動環境データ表示手段は、前記振動状態データベースに格納された測定データおよび位置を基に、自装置周辺における振動の状態を測定位置と対応付けて表示することを特徴としている。
このような構成により、振動の状態の測定を行った位置と測定データとの対応を示すことができるため、自装置周辺の振動の状態をより正確に示すことができる。
【0008】
また、第4の発明は、
前記振動環境センサモジュールによって測定された測定データのうち、誤振動に基づくデータを除外するキャンセル手段(例えば、応用例1におけるCPU12)を備えることを特徴としている。
このような構成により、測定対象でない振動(誤振動)に基づく測定データを除外することができ、目的とする振動の状態をより適確に表示することが可能となる。
【0009】
また、第5の発明は、
前記キャンセル手段は、前記振動環境センサモジュールによって測定された測定データが前記情報処理装置に誤振動として記憶されていた誤振動のデータと合致するか否かを判定し、該測定データが誤振動のデータと合致する場合に、該測定データを除外することを特徴としている。
このような構成により、誤振動のデータをより正確に除外することができ、目的とする振動の状態をより適確に表示することが可能となる。
【0010】
また、第6の発明は、
前記接続インターフェースは、USBインターフェースであることを特徴としている。
このような構成により、振動波環境センサモジュールをUSBインターフェースに接続可能なモジュール(小型のスティック状モジュール等)とすることができるため、より簡単に振動の状態を測定することが可能となる。
【0011】
また、第7の発明は、
振動を測定するセンサを備えた振動環境センサモジュール(例えば、図1の振動測定用USBモジュール20)と、前記振動環境センサモジュールによって測定された振動に関する測定データを処理する情報処理装置(例えば、図1のPC本体10)と、前記情報処理装置とネットワークを介して通信可能に構成されたサーバ(例えば、図5の振動モニタリングサーバ100)とを含み、前記振動環境センサモジュールと前記情報処理装置とは、接続インターフェース(例えば、USBに基づくインターフェース)によって接続可能であり、前記情報処理装置は、前記接続インターフェースによって接続された前記振動環境センサモジュールにおける前記センサの測定データを取得する測定データ取得手段(例えば、図3のステップS1を実行するCPU12)と、前記測定データ取得手段によって取得された測定データを格納する振動状態データベース(例えば、図2の記憶装置13)とを備え、前記サーバは、前記ネットワークを介して接続された前記情報処理装置から前記測定データを取得する測定データ収集手段(例えば、図7のステップS102を実行するCPU120)と、前記測定データ収集手段によって収集された測定データを基に、前記ネットワークに接続された前記情報処理装置の設置位置における振動の状態を地図上に表示するための表示データを生成する表示データ生成手段(例えば、図7のステップS108およびステップS109を実行するCPU120)とを備えることを特徴としている。
【0012】
このような構成により、各振動モニタリング装置において測定されたデータを、サーバおいて集計し、集計したデータを基に、振動の状態について、地理的分布を示すマップが作成される。
したがって、各場所における振動の状態を、他の場所における状態と関連付けて表示すること等ができるため、その場所における振動の状態の傾向をより適確に把握することができ、住宅やオフィスにおける振動を簡単かつより正確に測定することが可能となる。
なお、表示データ生成手段によって生成された表示データは、サーバおよび各振動モニタリング装置のいずれにおいて表示することとしても良い。
【0013】
また、第8の発明は、
前記情報処理装置は、振動測定のデータの適否を判定する適用領域を設定する適用領域設定手段を備え、前記サーバは、前記適用領域設定手段によって設定された前記適用領域内における測定データ間の傾向に基づいて、誤振動に基づくデータを除外するキャンセル手段を備えることを特徴としている。
このような構成により、適用領域内における測定データ間の傾向を基に、誤振動と判定されるデータを除去することができるため、その場所における振動の状態の傾向をより適確に把握することができ、住宅やオフィスにおける振動を簡単かつより正確に測定することが可能となる。
【0014】
また、第9の発明は、
前記接続インターフェースは、USBインターフェースであることを特徴としている。
このような構成により、振動環境センサモジュールをUSBインターフェースに接続可能なモジュール(小型のスティック状モジュール等)とすることができるため、より簡単に振動の状態を測定することが可能となる。
【0015】
また、第10の発明は、
周辺環境における振動を測定する振動モニタリングシステムにおけるサーバであって、前記振動モニタリングシステムには、ネットワークを介して通信可能に構成された情報処理装置(例えば、図1のPC本体10)が含まれ、該情報処理装置は、振動を測定するセンサを備えた振動環境センサモジュールと接続インターフェース(例えば、USBに基づくインターフェース)によって接続可能であると共に、前記接続インターフェースによって接続された前記振動環境センサモジュールにおける前記センサの測定データを取得する測定データ取得手段(例えば、図3のステップS1を実行するCPU12)と、前記測定データ取得手段によって取得された測定データを格納する振動状態データベース(例えば、図2の記憶装置13)とを備え、前記サーバは、前記ネットワークを介して接続された前記情報処理装置から前記測定データを取得する測定データ収集手段(例えば、図7のステップS102を実行するCPU120)と、前記測定データ収集手段によって収集された測定データを基に、前記ネットワークに接続された前記情報処理装置の設置位置における振動の状態を地図上に表示するための表示データを生成する表示データ生成手段(例えば、図7のステップS108およびステップS109を実行するCPU120)とを備えることを特徴としている。
【0016】
このような構成により、各振動モニタリング装置において測定されたデータを、サーバおいて集計し、集計したデータを基に、振動の状態について、地理的分布を示すマップが作成される。
したがって、各場所における振動の状態を、他の場所における状態と関連付けて表示すること等ができるため、その場所における振動環境の傾向をより適確に把握することができ、住宅やオフィスにおける振動を簡単かつより正確に測定することが可能となる。
【0017】
また、第11の発明は、
振動を測定するセンサ(例えば、図1の振動センサ22)と、情報処理装置と接続するための所定の接続インターフェース(例えば、USBに基づくインターフェース)とを備え、前記センサによって測定されたデータを該接続インターフェースを介して前記情報処理装置に提供することを特徴としている。
このような構成により、所定の接続インターフェースによって情報処理装置と接続することで、振動の測定データを提供可能なセンサを構成することができ、簡単に振動の状態の測定を行うことが可能になると共に、利用者にごく近い位置における振動の状態を測定することができるため、利用者個人の作業環境における振動の状態を正確に測定することができる。
【0018】
また、第12の発明は、
前記接続インターフェースは、USBインターフェースであることを特徴としている。
このような構成により、振動環境センサモジュールをUSBインターフェースに接続可能なモジュール(小型のスティック状モジュール等)とすることができるため、より簡単に振動の状態を測定することが可能となる。
即ち、本発明によれば、住宅やオフィスにおける振動を簡単かつ正確に測定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(第1実施形態)
(構成)
まず、構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る振動モニタリング装置1の構成を示す図である。
図1において、振動モニタリング装置1は、PC(Personal Computer)本体10と、振動測定用USB(Universal Serial Bus)モジュール20とを備えている。
PC本体10は、振動測定用USBモジュール20によって測定されたデータ(以下、「振動環境データ」という。)を取得し、その振動環境データを処理して、PC本体10の周辺環境における振動の状態を利用者に提示する機能を有している。
【0020】
図2は、PC本体10の機能構成を示すブロック図である。
図2において、PC本体10は、入力装置11と、CPU(Central Processing Unit)12と、記憶装置13と、メモリ14と、表示装置15と、通信装置16と、USBインターフェース17とを備えている。
入力装置11は、カーソルキーや数字入力キー等を備えたキーボード及びマウス等のポインティングデバイスによって構成され、キーボードにおいて押下されたキーの押下信号やマウスの位置信号をCPU12に出力する。
【0021】
CPU12は、振動モニタリング装置1全体を制御するもので、入力装置11から入力される各種の指示信号に従って、記憶装置13に記憶された各種処理に関するプログラムを読み出して実行する。例えば、CPU12は、記憶装置13に記憶された振動モニタリング処理プログラムを読み出し、振動モニタリング処理(後述)を実行する。
そして、CPU12は、各種プログラム等を実行した処理結果を記憶装置13やメモリ14の所定の領域に格納したり、表示装置15に表示させたりする。
【0022】
記憶装置13は、ハードディスク等の不揮発性の記憶装置で構成される。この記憶装置13は、振動モニタリング処理プログラムや、振動モニタリング装置1の制御のための各種処理に関するプログラムおよびデータを記憶する。また、記憶装置13は、振動モニタリング処理において測定された振動の周波数および揺れ量のデータを格納する振動状態データベースを記憶している。
メモリ14は、CPU12により実行される各種処理において生成されたデータを一時的に記憶する。
【0023】
表示装置15は、例えばドットマトリクスタイプのカラー液晶表示セル等から構成され、CPU12の指示に従って各種情報を表示する。
通信装置16は、無線あるいは有線のLAN(Local Area Network)等、他の装置と通信を行うための通信インターフェースである。
USBインターフェース17は、USB端子を有する機器との接続インターフェースであり、本実施形態においては、このUSBインターフェース17に振動測定用USBモジュール20が接続される。
【0024】
図1に戻り、振動測定用USBモジュール20は、GPS(Global Positioning System)受信部21と、振動センサ22と、USBコネクタ23とを備えている。
GPS受信部21は、GPS衛星から送信されるGPS信号を受信し、現在位置を算出する。
振動センサ22は、水晶をジャイロ素子として備える振動ジャイロセンサ等によって構成され、振動測定用USBモジュール20に生じている振動(揺れ量)を測定する。また、振動センサ22は、測定した振動を示すデータをUSBコネクタ25を介してPC本体10に出力する。
【0025】
USBコネクタ23は、USB規格に基づくデータ伝送を行うコネクタである。このUSBコネクタ23がPC本体10のUSBインターフェース17に接続されると、振動測定用USBモジュール20はPC本体10からの電力供給を受けることが可能となり、また、振動測定用USBモジュール20において測定した振動を示すデータ、あるいは、GPSに基づく現在位置データ等の振動環境データをPC本体10に送信することが可能となる。
【0026】
なお、本実施形態においては、USBインターフェースによってPC本体10と接続される振動測定用USBモジュール20を例に挙げて説明するが、接続インターフェースの形態としては、USBの他、赤外線通信あるいはブルートゥース等を採用することも可能である。赤外線通信あるいはブルートゥース等の無線通信によるインターフェースを採用する場合、振動測定用のモジュールをPC本体10に固定するための嵌合形状あるいは粘着部材を備えることとしても良い。
【0027】
(動作)
次に、動作を説明する。
図3は、振動モニタリング装置1のCPU12が実行する振動モニタリング処理を示すフローチャートである。
振動モニタリング処理は、振動測定用USBモジュール20がPC本体10に接続された状態で、振動モニタリング処理の実行が指示入力されることに対応して開始される。
図3において、振動モニタリング処理が開始されると、CPU12は、振動測定用USBユニット20から、測定した振動を示すデータを受信する(ステップS1)。
【0028】
また、CPU12は、振動測定用USBユニット20からGPS受信部21によって測定された現在位置データを受信する(ステップS2)。
さらに、CPU12は、PC本体10内の現在時刻tを取得する(ステップS3)。
そして、CPU12は、ステップS1において受信した振動(揺れ量)を示すデータと、ステップS3において取得した現在時刻tとを用いて、測定された振動の周波数を算出する(ステップS4)。
【0029】
このとき、CPU12は、時間軸と対応させた揺れ量の波形をフーリエ解析することにより、周波数成分に分解し、最大の要素となっている周波数および全体の振動における周波数の範囲等を算出する。
次に、CPU12は、ステップS1において受信した振動(揺れ量)を示すデータと、ステップS2において受信した現在位置データと、ステップS4において算出した周波数とを、現在時刻tと対応付けて、振動状態データベースに格納する(ステップS5)。
【0030】
また、CPU12は、振動状態データベースにおける設定された時間範囲内のデータ(例えば、当日、1時間あるいは30分以内のデータ)を読み出し(ステップS6)、現在位置および時間と対応付けた振動(揺れ量)のグラフを作成する(ステップS7)。
続いて、CPU12は、作成したグラフを表示装置15に表示する(ステップS8)。
なお、このとき、振動が発生した際の揺れ量に加え、その際の周波数(最大要素の周波数あるいは周波数範囲等)もグラフあるいは数値として示すことが可能である。
【0031】
そして、CPU12は、振動モニタリング処理の終了が指示入力されたか否かの判定を行う(ステップS9)。
ステップS9において、振動モニタリング処理の終了が指示入力されていないと判定した場合、CPU12は、ステップS1の処理に移行し、振動モニタリング処理の終了が指示入力されたと判定した場合、振動モニタリング処理を終了する。
振動モニタリング処理が実行されることにより、PC本体10において、周辺の環境における振動の状態が表示される。
【0032】
図4は、振動モニタリング処理において表示される振動のグラフの一例を示す図である。
図4においては、特定の位置(位置P)における振動の時間変化が表されている。
図4に示すグラフでは、付近を電車が通過した際に振動(揺れ量)が大きくなっていることがわかる。
以上のように、本実施形態に係る振動モニタリング装置1は、振動センサ22を備えた振動測定用USBモジュール20によって、自装置周辺における振動を測定する。そして、振動モニタリング装置1は、測定した振動の周波数および揺れ量を振動状態データベースに格納し、格納されているデータを基に、自装置周辺における振動の状態を表示する。
そのため、簡単に設置可能な振動測定用USBモジュール20を用いて、各種振動源において発生し、振動モニタリング装置1に伝達した種々の振動を継続的に測定することができる。
したがって、周辺環境における振動を簡単かつ正確に測定することが可能となる。
【0033】
(応用例1)
上記実施形態においては、振動測定用USBモジュール20において測定された振動を全て表示するものとして説明したが、CPU12が、測定された振動のうち、周波数や揺れ量の特性に基づいて、表示対象として適切でないものをキャンセルすることとしても良い。
例えば、PC本体10の落下や利用者の操作(キー入力等)による振動は表示対象としないように設定すること等が可能である。
この場合、PC本体10が落下した場合や利用者の操作による揺れ量および周波数のモデル(実測値あるいは理論値)をPC本体10に記憶しておき、測定された揺れ量および周波数が、記憶されているモデルと合致するか否かを判定して、合致する場合には表示対象から除外するといったことが可能である。
【0034】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態においては、異なる場所に設置された第1実施形態の振動モニタリング装置1を、ネットワークを介してサーバに接続し、各場所における振動の状態を関連付けて表示する振動モニタリングシステムについて説明する。
このような形態とすることで、各場所における振動の状態を、他の場所における状態と関連付けて表示すること等ができるため、その場所における振動の状態をより適確に把握することができ、住宅やオフィスにおける環境を簡単かつより正確に測定することが可能となる。
【0035】
(構成)
まず、構成を説明する。
図5は、本実施形態に係る振動モニタリングシステム2の構成を示す図である。
図5において、振動モニタリングシステム2は、複数の振動モニタリング装置1と、振動モニタリングサーバ100とを備えており、複数の振動モニタリング装置1と振動モニタリングサーバ100とは、ネットワーク200を介して通信可能に構成されている。
振動モニタリング装置1は、第1実施形態において説明した振動モニタリング装置1と同様の構成であり、常時、振動モニタリング処理を実行している。
【0036】
そして、振動モニタリングサーバ100が、各振動モニタリング装置1の振動測定用USBモジュール20において測定された振動環境データ(揺れ量、現在位置のデータ)の送信を要求すると、振動モニタリング装置1は、自装置の振動状態データベースに格納されているデータを測定時間のデータと共に読み出し、読み出したデータを通信装置16を介して振動モニタリングサーバ100に送信する。
振動モニタリングサーバ100は、ネットワーク200に接続された複数の振動モニタリング装置1において測定されたデータを収集して解析し、各振動モニタリング装置1の設置場所と対応付けて、それらのデータを表示したり、解析結果を各振動モニタリング装置1に送信したりする機能を有している。
【0037】
図6は、振動モニタリングサーバ100の機能構成を示すブロック図である。
図6において、振動モニタリングサーバ100は、入力装置110と、CPU120と、記憶装置130と、メモリ140と、表示装置150と、通信装置160とを備えている。
ここで、図6における入力装置110、メモリ140、表示装置150および通信装置160の構成は、図2における振動モニタリング装置1の入力装置11、メモリ14、表示装置15および通信装置16と同様である。
【0038】
CPU120は、振動モニタリングサーバ100全体を制御するもので、入力装置110から入力される各種の指示信号に従って、記憶装置130に記憶された各種処理に関するプログラムを読み出して実行する。例えば、CPU120は、記憶装置130に記憶された振動環境データ解析処理プログラムを読み出し、振動環境データ解析処理(後述)を実行する。
【0039】
そして、CPU120は、各種プログラム等を実行した処理結果を記憶装置130やメモリ140の所定の領域に格納したり、表示装置150に表示させたりする。
記憶装置130は、ハードディスク等の不揮発性の記憶装置で構成される。この記憶装置130は、振動環境データ解析処理プログラムや、振動モニタリングサーバ100の制御のための各種処理に関するプログラムおよびデータを記憶する。
【0040】
また、記憶装置130は、各振動モニタリング装置1から取得した振動環境データを集計したデータを格納する統合データベースを記憶している。
ネットワーク200は、無線あるいは有線のLANやインターネット等、振動モニタリング装置1と振動モニタリングサーバ100との間において授受されるデータを送受信可能な各種ネットワークによって構成される。
【0041】
(動作)
次に、動作を説明する。
図7は、振動モニタリングサーバ100のCPU120が実行する振動環境データ解析処理を示すフローチャートである。
振動環境データ解析処理は、振動モニタリングサーバ100において、振動環境データ解析処理の実行が指示入力されることに対応して開始される。
図7において、振動環境データ解析処理が開始されると、CPU120は、ネットワーク200を介して振動モニタリングサーバ100に接続されている振動モニタリング装置1を検出する(ステップS101)。
【0042】
このとき、例えば、振動モニタリングサーバ100がネットワーク200を介して、振動モニタリング装置1を検出するための同報送信を行い、それに応答した振動モニタリング装置1の現在位置およびMACアドレス等の端末IDを認識することにより、振動モニタリング装置1の接続状況を検出することができる。
次に、CPU120は、各振動モニタリング装置1から振動測定用USBモジュール20において測定されたデータ(振動を示すデータ、現在位置のデータおよびそれらの測定時間のデータ)を取得する(ステップS102)。
そして、CPU120は、各振動モニタリング装置1から取得したデータを集計する(ステップS103)。
このとき、CPU120は、測定時間毎の各場所における振動が一覧となった表形式の集計データを作成する。
【0043】
図8は、ステップS103において作成された集計データを示す図である。
図8においては、各振動モニタリング装置1から取得したデータが、測定時間順に、各場所(A〜C地点)の位置(緯度および経度)、振動の強度(揺れ量)と対応付けた状態とされている。
ステップS103の後、CPU120は、ステップS103において作成した集計データを統合データベースに格納する(ステップS104)。
【0044】
次に、CPU120は、各振動モニタリング装置1において設定されている振動測定のデータの適否を判定するための適用領域(以下、「振動測定の適用領域」と言う。)を取得する(ステップS105)。
ステップS104において取得される振動測定の適用領域は、振動環境データ解析処理の実行に先立ち、各振動モニタリング装置1において、利用者によって設定されている。
【0045】
そして、CPU120は、各振動モニタリング装置1において設定されている振動測定の適用領域に含まれる振動環境データのうち、特定時間のデータ(例えば、直近30分のデータあるいは最新のデータ)を統合データベースから抽出し(ステップS106)、それらのデータについて、誤振動のデータ(広域的に発生している振動でなく、その振動モニタリング装置1固有に発生した振動のデータ)が含まれているか否かの判定を行う(ステップS107)。
ここで、測定されたデータが誤振動のデータであるか否かは、振動測定の適用領域内に存在する振動モニタリング装置1が測定した振動を示すデータ間において、例えば、過半数が同傾向のデータとなっているか否かによって判定することができる。
【0046】
図9は、測定されたデータが誤振動のデータであるか否かを判定する方法を示す概念図である。
図9において、振動センサAを有する振動モニタリング装置1における振動測定の適用領域内には、自装置を含め複数n+1個の振動モニタリング装置1が存在しており、それぞれが測定したデータが波形として示されている。
本実施形態においては、振動測定の適用領域内において測定された振動を示すデータ間で、過半数のものがほぼ同一の時間に振動を示す値となっている場合には、そのデータは誤振動のデータではないと判定する。
【0047】
なお、このときの判定基準は、振動を示すデータ数が過半数となるか否かの他、いずれか1つの振動モニタリング装置1が振動を測定した場合には誤振動であると判定し、複数の振動モニタリング装置1が振動を測定した場合には誤振動でないと判定するといったことも可能である。
ステップS107において、統合データベースから抽出されたデータに誤振動のデータが含まれていると判定した場合、CPU120は、そのデータをキャンセル(除外)して、他のデータを基に、振動の地理的分布を示すマップデータ(以下、「振動環境GISデータ」という。)を作成する(ステップS108)。
【0048】
一方、統合データベースから抽出されたデータに誤振動のデータが含まれていないと判定した場合、CPU120は、統合データベースから抽出されたデータを基に、振動の地理的分布を示す振動環境GISデータを作成する(ステップS109)。
ステップS108およびステップS109の後、CPU120は、作成した振動環境GISデータを表示し(ステップS110)、振動環境データ解析処理を繰り返す。
ここで、振動環境データ解析処理のステップS110において表示される振動環境GISデータの表示画面について説明する。
【0049】
図10は、振動環境GISデータの表示画面例を示す図である。
また、図11は、図10に示す表示画面例において、振動モニタリング装置1が設置された場所を示す図である。
図10および図11において、振動モニタリング装置1は、A〜C地点に設置されており、これらの振動モニタリング装置1によって測定されたデータが、振動モニタリングサーバ100に集計される。
そして、振動モニタリングサーバ100が、振動環境データ解析処理のステップS110において、図10に示すように特定時間の振動の強さ(揺れ量)を地図上に表したマップを表示する。
【0050】
図10においては、A〜C地点それぞれの近傍が同一の振動の強さ(揺れ量)の領域として識別表示されており、地図外側部分において、各領域を識別する網掛けそれぞれの振動の強さ(揺れ量)が表示されている。
また、図10に示す例においては、C地点近傍に鉄道の線路が通っている。そのため、図8の集計データおよび図10の表示画面例では、C地点付近における振動の強さ(揺れ量)が高い値を示している。
【0051】
以上のように、本実施形態に係る振動モニタリングシステム2は、異なる場所に設置された複数の振動モニタリング装置1において測定されたデータを、振動モニタリングサーバ100において集計し、集計したデータを基に、振動の強さの地理的分布を示すマップが作成される。
したがって、各場所における振動の状態を、他の場所における状態と関連付けて表示すること等ができるため、その場所における振動環境の傾向をより適確に把握することができ、住宅やオフィスにおける振動を簡単かつより正確に測定することが可能となる。
なお、本実施形態においては、GPSを利用して測定した位置を、各振動モニタリング装置1の位置を示すデータとして用いたが、各振動モニタリング装置1の位置を振動モニタリングサーバ100が予め把握しておき、把握している位置を各振動モニタリング装置1の位置を示すデータとして用いることもできる。
【0052】
(応用例1)
上記実施形態において、振動測定の適用領域を設定するものとしたが、この振動測定の適用領域については、測定の対象とする振動の種類に応じて異ならせることができる。
即ち、地震等の広範な地域における振動を測定する場合には、半径数キロ〜数十キロメートル、工事現場付近の振動を測定する場合には、半径数十メートルといった領域を設定することができる。
また、振動モニタリング装置1において、振動測定の適用領域は、利用者が距離を入力することによって設定したり、地図上で領域を指定することによって設定したり、あるいは、測定対象とする振動の種別(地震、工事現場の振動、あるいは、工場周辺の振動等)を指定することにより、それに対応する領域を振動測定の適用領域として設定したりすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第1実施形態に係る振動モニタリング装置1の構成を示す図である。
【図2】PC本体10の機能構成を示すブロック図である。
【図3】振動モニタリング装置1のCPU12が実行する振動モニタリング処理を示すフローチャートである。
【図4】振動モニタリング処理において表示される振動のグラフの一例を示す図である。
【図5】第2実施形態に係る振動モニタリングシステム2の構成を示す図である。
【図6】振動モニタリングサーバ100の機能構成を示すブロック図である。
【図7】振動モニタリングサーバ100のCPU120が実行する振動環境データ解析処理を示すフローチャートである。
【図8】ステップS103において作成された集計データを示す図である。
【図9】測定されたデータが誤振動のデータであるか否かを判定する方法を示す概念図である。
【図10】振動環境GISデータの表示画面例を示す図である。
【図11】振動環境GISデータの表示画面例において、振動モニタリング装置1が設置された場所を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1 振動モニタリング装置、2 振動モニタリングシステム、10 PC本体、11,110 入力装置、12,120 CPU、13,130 記憶装置、14,140 メモリ、15,150 表示装置、16,160 通信装置、17 USBインターフェース、20 振動測定用USBモジュール、21 GPS受信部、22 振動センサ、23 USBコネクタ、100 振動モニタリングサーバ、200 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動を測定するセンサを備えた振動環境センサモジュールと、
前記振動環境センサモジュールによって測定された振動に関する測定データを処理する情報処理装置とを含み、
前記振動環境センサモジュールと前記情報処理装置とは、接続インターフェースによって接続可能であり、
前記情報処理装置は、
前記接続インターフェースによって接続された前記振動環境センサモジュールにおける前記センサの測定データを取得する測定データ取得手段と、
前記測定データ取得手段によって取得された測定データを格納する振動状態データベースと、
前記振動状態データベースに格納された測定データを基に、自装置周辺における振動の状態を表示する振動環境データ表示手段とを備えることを特徴とする振動モニタリング装置。
【請求項2】
前記振動状態データベースは、前記測定データ取得手段によって取得された測定データを測定時間と対応付けて格納し、
前記振動環境データ表示手段は、前記振動状態データベースに格納された測定データおよび前記測定時間を基に、自装置周辺における振動の状態を時間と対応付けて表示することを特徴とする請求項1記載の振動モニタリング装置。
【請求項3】
前記振動環境センサモジュールは、自装置の位置を測定する位置測定手段を備え、
前記測定データ取得手段は、前記位置測定手段によって測定された位置と前記測定データとを前記振動環境センサモジュールから取得し、
前記振動状態データベースは、前記測定データ取得手段によって取得された測定データを前記位置測定手段によって測定された位置と対応付けて格納し、
前記振動環境データ表示手段は、前記振動状態データベースに格納された測定データおよび位置を基に、自装置周辺における振動の状態を測定位置と対応付けて表示することを特徴とする請求項1または2記載の振動モニタリング装置。
【請求項4】
前記振動環境センサモジュールによって測定された測定データのうち、誤振動に基づくデータを除外するキャンセル手段を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の振動モニタリング装置。
【請求項5】
前記キャンセル手段は、前記振動環境センサモジュールによって測定された測定データが前記情報処理装置に誤振動として記憶されていた誤振動のデータと合致するか否かを判定し、該測定データが誤振動のデータと合致する場合に、該測定データを除外することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の振動モニタリング装置。
【請求項6】
前記接続インターフェースは、USBインターフェースであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の振動モニタリング装置。
【請求項7】
振動を測定するセンサを備えた振動環境センサモジュールと、
前記振動環境センサモジュールによって測定された振動に関する測定データを処理する情報処理装置と、
前記情報処理装置とネットワークを介して通信可能に構成されたサーバとを含み、
前記振動環境センサモジュールと前記情報処理装置とは、接続インターフェースによって接続可能であり、
前記情報処理装置は、
前記接続インターフェースによって接続された前記振動環境センサモジュールにおける前記センサの測定データを取得する測定データ取得手段と、
前記測定データ取得手段によって取得された測定データを格納する振動状態データベースとを備え、
前記サーバは、
前記ネットワークを介して接続された前記情報処理装置から前記測定データを取得する測定データ収集手段と、
前記測定データ収集手段によって収集された測定データを基に、前記ネットワークに接続された前記情報処理装置の設置位置における振動の状態を地図上に表示するための表示データを生成する表示データ生成手段とを備えることを特徴とする振動モニタリングシステム。
【請求項8】
前記情報処理装置は、振動測定のデータの適否を判定する適用領域を設定する適用領域設定手段を備え、
前記サーバは、前記適用領域設定手段によって設定された前記適用領域内における測定データ間の傾向に基づいて、誤振動に基づくデータを除外するキャンセル手段を備えることを特徴とする請求項7記載の振動モニタリングシステム。
【請求項9】
前記接続インターフェースは、USBインターフェースであることを特徴とする請求項7または8記載の振動モニタリングシステム。
【請求項10】
周辺環境における振動を測定する振動モニタリングシステムにおけるサーバであって、
前記振動モニタリングシステムには、ネットワークを介して通信可能に構成された情報処理装置が含まれ、該情報処理装置は、振動を測定するセンサを備えた振動環境センサモジュールと接続インターフェースによって接続可能であると共に、前記接続インターフェースによって接続された前記振動環境センサモジュールにおける前記センサの測定データを取得する測定データ取得手段と、前記測定データ取得手段によって取得された測定データを格納する振動状態データベースとを備え、
前記サーバは、
前記ネットワークを介して接続された前記情報処理装置から前記測定データを取得する測定データ収集手段と、
前記測定データ収集手段によって収集された測定データを基に、前記ネットワークに接続された前記情報処理装置の設置位置における振動の状態を地図上に表示するための表示データを生成する表示データ生成手段とを備えることを特徴とするサーバ。
【請求項11】
振動を測定するセンサと、
情報処理装置と接続するための接続インターフェースとを備え、
前記センサによって測定されたデータを該接続インターフェースを介して前記情報処理装置に提供することを特徴とする振動環境センサモジュール。
【請求項12】
前記接続インターフェースは、USBインターフェースであることを特徴とする請求項11記載の環境センサモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−180687(P2009−180687A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22121(P2008−22121)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】