説明

振動型駆動装置の制御装置

【課題】 振動子と被駆動体の相対位置を検出する際に、光学式のリニア型エンコーダ等の別の装置を用いる必要があった。
【解決手段】 本発明の制御装置は、振動子の振動状態を示す信号と、被駆動体に設けられ前記被駆動体の振動を検出する被駆動体側振動検出部から出力される信号と、を用いて前記振動子と前記被駆動体側振動検出部との相対位置を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型駆動装置の制御装置に関するものである。特に振動型駆動装置の振動子と被駆動体との相対位置を検出する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、所定の質点に楕円運動を生じさせ被駆動体を駆動するタイプの振動型駆動装置に関する様々な提案がなされている。振動型駆動装置の基本的な構成としては、特許文献1に示すような構成が知られている。図12は、特許文献1に記載の振動型駆動装置の構成を示す外観斜視図である。図12(a)に示すように、この振動型駆動装置の振動子は、矩形の板状に形成された金属材料から成る弾性体4を備え、弾性体4の裏面には電気−機械エネルギー変換素子である圧電素子5が接合されている。弾性体4の上面の所定位置には、複数の突起部6が設けられている。
【0003】
この構成によれば、圧電素子5に交流電圧を印加することにより、弾性体4の長辺方向における2次の屈曲振動と、弾性体4の短辺方向における1次の屈曲振動とが同時に発生し、突起部6に楕円運動が励起される。そして、突起部6に被駆動体7を加圧接触させることにより、被駆動体7を突起部6の楕円運動によって直線的に駆動することができるようになっている。つまり、突起部6がこの振動子の駆動部として作用する。
【0004】
図12(b)に示すように、圧電素子5は分極処理されており、2つの電極A1、A2を備えている。上記2つの電極A1、A2に同相の交流電圧V1,V2を印加することにより、上記矩形の弾性体4において長辺方向と平行な方向に延びた2本の節を有する1次の屈曲振動を励振する。これが第1の振動モードとなる。また、2つの電極A1、A2に逆相の交流電圧V1,V2を印加することにより、矩形の弾性体4の短辺方向と平行な方向に延びた3本の節を有する2次の屈曲振動を励振する。これが第2の振動モードとなる。そして、上記第1の振動モードと第2の振動モードの組み合わせにより突起部6に楕円運動を励振し、このとき、突起部6に被駆動体を加圧接触させると、被駆動体を直線的に駆動することができるようになっている。
【0005】
この特許文献1に記載された振動型駆動装置は、圧電素子に印加する2つの交流電圧の周波数又は位相を変化させることによって速度制御を行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−320846号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の振動型駆動装置において、振動子と被駆動体の相対位置を検出する際に、光学式のリニア型エンコーダを用いて位置を検出していた。光学式のリニア型エンコーダにより位置を検出する際には、スリットや反射により位置検出を行うことが出来るリニアスケールや受光素子等の構成部品が必要である。そのため、振動型駆動装置を組み込む装置側に上記構成部品を組み込むためのスペースも必要となり、小型化が困難であった。本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、光学式のリニア型エンコーダを用いずに振動子と被駆動体の相対位置検出を行うことができる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の制御装置は上記目的を達成するため、
電気−機械エネルギー変換素子と前記電気−機械エネルギー変換素子に接合され突起部が設けられた弾性体とを備え、前記振動子に駆動信号が印加されることで2つの振動モードの振動を励振し、前記2つの振動モードの振動が組み合わさることにより前記突起部に楕円運動を生成する振動子と、端部を有し、前記突起部に接触して前記振動子と相対移動する被駆動体と、を有する振動型駆動装置の制御装置であって、前記振動子の振動状態を示す信号と、前記被駆動体に設けられ前記被駆動体の振動を検出する被駆動体側振動検出部から出力される信号と、を用いて前記振動子と前記被駆動体側振動検出部との相対位置を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被駆動体側に振動検出部を設けることで、光学式のリニア型エンコーダ等を用いずに振動子と被駆動体の相対位置を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)第1の実施形態に係る振動型駆動装置と制御装置の構成図及び(b)圧電素子の分極領域を示す模式図である
【図2】第1の実施形態の振動型駆動装置における電圧波形の一例を示す模式図である。
【図3】第2の実施形態に係る振動型駆動装置と制御装置の構成図である。
【図4】第2の実施形態の振動型駆動装置における電圧波形の一例を示す模式図である。
【図5】第3の実施形態に係る振動型駆動装置と制御装置の構成図である。
【図6】第3の実施形態の信号重畳手段23における電圧波形の一例を示す模式図である。
【図7】第3の実施形態の振動型駆動装置における電圧波形の一例を示す模式図である。
【図8】第4の実施形態に係る振動型駆動装置と制御装置の構成図である。
【図9】第4の実施形態の振動型駆動装置における電圧波形の一例を示す模式図である。
【図10】第5の実施形態に係る振動型駆動装置と制御装置の構成図である。
【図11】第5の実施形態の振動型駆動装置における電圧波形の一例を示す模式図である。
【図12】従来の振動型駆動装置の基本的な構成を示す一例を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る振動型駆動装置と制御装置の構成を示す図である。本発明の第1の実施形態では、図1に示す、振動子の振動状態を示す信号として圧電素子5から出力される信号と、被駆動体側振動検出部8から出力される信号と、を用いて振動子と被駆動体側振動検出部の相対位置を検出する装置について説明する。
【0012】
<制御装置の構成>
図1(a)に示す振動型駆動装置の制御装置は、振動型駆動装置に駆動信号を印加する駆動信号生成手段21を有し、その出力側には昇圧回路31が接続され昇圧回路により昇圧された信号が圧電素子5に印加されている。昇圧回路は駆動に寄与する周波数帯域において振動型駆動装置が動作可能な電圧まで昇圧する。電気−機械エネルギー変換素子である圧電素子5は、矩形の板状に形成された金属材料から成る弾性体4の裏面に接合されている。圧電素子5が接合された面と反対側の弾性体4の表面には、駆動部としての突起部6が複数設けられており、突起部6に被駆動体7が加圧接触している。
【0013】
圧電素子5は、図1(b)に示すように、3つの電極A1、A2、S1を備えている。従来例でも述べたように、本発明のような板状の振動子は、2つの振動モードの振動を励起し、2つの振動モードの振動を組み合わせることにより突起部(被駆動体との接触部)に楕円運動を生成する。以下、具体的に2つの振動モードの振動について説明する。上記の電極A1、A2に同相の交流電圧V1,V2を印加すると、上記矩形の弾性体4において長辺方向と平行な方向に延びた2本の節を有する1次の屈曲振動(第1の振動モード)を励振する。つまり、第1の振動モードの振動は、圧電素子5が弾性体4に接合された面と垂直な方向に突起部6を変位させる突き上げモードの振動である。また、電極A1、A2に逆相の交流電圧V1,V2を印加すると、矩形の弾性体4の短辺方向と平行な方向に延びた3本の節を有する2次の屈曲振動(第2の振動モード)を励振する。つまり、第2の振動モードの振動は、圧電素子5が弾性体4に接合された面と平行な方向に前記突起部を変位させる振動を主とする送りモードの振動である。このように、駆動信号生成手段21により生成された所定の周波数の駆動信号を圧電素子5に印加することにより、前記第1の振動モードの振動と前記第2の振動モードの振動とを励振する。この第1の振動モードの振動と第2の振動モードの振動とが組み合わさることにより、突起部6に楕円運動が起きる。そしてこの楕円運動により、被駆動体を振動子に対して直線的に相対移動させることができるようになっている。
【0014】
本実施形態の被駆動体7の一方の端部には、被駆動体7の振動を検出する被駆動体側振動検出部8が設けられている。突起部6に励起する楕円運動により被駆動体7と突起部6の加圧接触部に振動が印加され、突起部6の振動が被駆動体7を伝播し被駆動体側振動検出部8に到達する。被駆動体側振動検出部8は電気−機械エネルギー変換素子である圧電素子により構成されており、出力側には被駆動体側振動検出回路18が接続されている。被駆動体側振動検出回路18は被駆動体側振動検出部8から出力された信号の中心値(振幅の上限値と下限値の中心)を閾値とする2値の信号に変換し出力側に出力する。被駆動体側振動検出回路18の出力側には位置検出手段17が接続されている。
【0015】
図1(a)に示す圧電素子5には振動振幅を検出する振動子側振動検出部としての電極である振動振幅検出電極S1が備えられている。振動振幅検出電極S1は第1の振動モードの振動を検出し電圧V3を出力する。振動振幅検出電極S1は圧電素子5に印加する振動を検出する機能を持っている。振動振幅検出電極S1の出力側には図1(a)に示す振動子側振動検出回路19が接続されている。振動子側振動検出回路19は振動振幅検出電極S1から出力された信号の中心値を閾値とする2値の信号に変換し出力側に出力する。振動子側振動検出回路19の出力側には位置検出手段17が接続されている。位置検出手段17は被駆動体側振動検出回路18と振動子側振動検出回路19の信号に基づいて振動子と被駆動体側検出部の相対位置を演算する。位置検出手段17の機能については後述する。
【0016】
<位置検出手段17の機能>
位置検出手段17の機能について図2を用いて説明する。位置検出手段17は、振動振幅検出電極S1の検出する振動の信号と被駆動体側振動検出部の検出する振動の信号との位相差を検出する機能を持っている。
【0017】
位相差を検出することにより、振動子と被駆動体側検出部の相対位置(以下、距離Lと呼ぶ)は、材料(被駆動体を形成する材料)を伝播する振動の周期に伝播速度と位相差を乗じ、360度で除した下記計算式(1)で導出できる。
距離L=材料を伝播する振動の周期×材料の伝播速度×位相差/360度 (1)
図2(a)に示す振動振幅検出電極S1の時間―振幅における信号がサイン波形である時、図2(b)に示す被駆動体側振動検出回路19の出力側の時間―振幅における信号は中心値を閾値とする2値の信号に変換し出力された矩形の信号となる。同様に、図2(c)に示す被駆動体側振動検出部8の時間―振幅における信号がサイン波形である時、図2(d)に示す被駆動体側振動検出回路18の出力側の時間―振幅における信号は中心値を閾値とする2値の信号に変換し出力されるため矩形の信号となる。図2(c)に示す検出振動周期Tは図2に示す振動の周期であり、マイコン又はロジック回路で検出できる。
【0018】
図2(d)に示す遅れ時間P(振動子側振動検出回路から矩形信号が出力される時間と被駆動体側振動検出回路から該矩形信号が出力される時間との時間差)は、振動子側振動検出回路の波形の立ち上がりエッジと被駆動体側振動検出回路の立ち上がりエッジの時間間隔であり、カウンタを用いることにより求めることができる。また、カウンタを用いることにより検出振動周期Tを求めることが出来る。前記遅れ時間Pと前記検出振動周期Tとから位相差を導出する計算式を下記式(2)に示す。
位相差=遅れ時間P/検出振動周期T (2)
つまり、位相差は、カウンタやロジック回路を用いて検出することができる。また、D/Aコンバータを用いて振動振幅検出電極S1と被駆動体側振動検出部8から出力される信号を比較して位相差を求めてもよい。
【0019】
さらに、被駆動体側振動検出回路からの信号および振動子側振動検出回路からの信号について複数周期の信号同士を比較して位相差を算出し、位相差情報から距離Lを検出することで、より精度が向上する。また、予め測定された、振動子と被駆動体側振動検出部の相対位置と、振動振幅検出電極S1と被駆動体側信号検出部の検出する振動の位相差と、の関係を不図示のメモリから読み出すことで相対位置を検出することもできる。この場合、振動子と被駆動体側検出部の相対位置とは、複数の突起部のうちいずれか1つの端部と被駆動体側振動検出部との距離でもよいし、複数の突起部の中間位置と被駆動体側振動検出部との距離でもよく、任意に定めることができる。
【0020】
このように、本実施形態では、振動子の振動を検出する振動子側振動検出部から出力される信号と、被駆動体の振動を検出する被駆動体側振動検出部から出力される信号と、を用いて位相差を検出することにより振動子と被駆動体側振動検出部の相対位置を検出することができる。
【0021】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では振動子と被駆動体側振動検出部が相対移動している時に距離Lを検出する形態に関して述べたが、本実施形態では振動子と被駆動体側振動検出部が相対移動せず停止している時に位置を検出する形態について述べる。
【0022】
本実施形態の振動型駆動装置と制御装置の構成は、図3に示す伝播振動生成手段22と位置検出手段17の機能を除き第1の実施形態と同様であり図3で表わすことができる。図3は、被駆動体を駆動する時間とは別の時間に位置を検出する際のブロック図であり、駆動する時間においては別途駆動するための回路が存在する。
【0023】
<制御装置の構成>
図3に示す振動型駆動装置の制御装置は、振動型駆動装置に伝播信号を印加する伝播信号生成手段22を有し、その出力側には圧電素子5が接続されている。伝播信号生成手段22から出力する信号は振動子と被駆動体の相対移動に寄与しない周波数の信号である。伝播信号生成手段22により圧電素子5に信号が印加され、突起部6に振動が励振される。突起部6の振動が被駆動体7を伝播し被駆動体側振動検出部8に到達する。被駆動体7の端部には、被駆動体7の振動を検出する被駆動体側振動検出部8が設けられている。被駆動体側振動検出部は電気−機械エネルギー変換素子である圧電素子により構成されており、出力側には被駆動体側振動検出回路18が接続されている。被駆動体側振動検出回路18は、被駆動体側振動検出部8から出力された信号の中心値を閾値とする2値の信号に変換し出力側に出力する。被駆動体側振動検出回路の出力側には位置検出手段17が接続されている。
【0024】
<位置検出手段17の機能>
位置検出手段17の機能について図4を用いて説明する。位置検出手段17は、振動振幅検出電極S1が振動を検出する時間と、被駆動体側信号検出部が振動を検出する時間と、の時間差(振動の伝播時間TD)を検出する機能を持っている。
【0025】
図4(a)に示す振動振幅検出電極S1の時間―振幅における信号を出力した際、図4(b)に示す振動子側振動検出回路19の出力側の時間―振幅における信号は中心値を閾値とする2値の信号に変換し出力された矩形の信号となる。同様に、図4(c)に示す被駆動体側振動検出部8の時間―振幅における信号を出力した際、図4(d)に示す被駆動体側振動検出回路18の出力側の時間―振幅における信号は中心値を閾値とする2値の信号に変換し出力されるため矩形の信号となる。
【0026】
振動振幅検出電極S1が振動を検出する時間と被駆動体側信号検出部が振動を検出する時間の時間差は、図4(c)に示す伝播時間TD(振動子側振動検出回路から矩形信号が出力される時間と被駆動体側振動検出回路から該矩形信号が出力される時間との時間差)に等しい。この伝播時間TDは、振動子側振動検出回路の波形の立ち上がりエッジと被駆動体側振動検出回路の立ち上がりエッジとの時間間隔であり、カウンタを用いることにより求めることができる。振動子側振動検出回路及び被駆動体側振動検出回路は、カウンタやロジック回路で構成されている。距離Lは伝播時間TDに材料の伝播時間を乗じた下記計算式(3)により導出できる。
距離L=伝播時間TD×材料の伝播速度 (3)
このように、本実施形態では、振動子と被駆動体の相対移動に寄与しない周波数の信号を圧電素子に印加し、振動振幅検出電極S1の出力する信号と被駆動体側信号検出部8の出力する信号を用いて、振動振幅検出電極S1が振動を検出した時間と被駆動体側信号検出部8の振動を検出した時間との時間差(伝播時間TD)を検出する。このような時間差を検出することにより、振動型駆動装置が停止状態であっても、振動子と被駆動体側振動検出部の相対位置を検出することができる。
【0027】
[第3の実施形態]
本実施形態では、振動子と被駆動体の相対移動に寄与する振動とは異なる振動(相対移動に寄与しない振動)を重畳して、距離Lを検出する形態について述べる。
【0028】
本実施形態の振動型駆動装置の制御装置の構成を図5を用いて説明する。図5に示す信号生成手段20において、駆動信号生成手段21及び伝播信号生成手段22の出力側に信号重畳手段23が接続されている。信号重畳手段23により、駆動信号生成手段21の信号と伝播信号生成手段22の信号とを重畳する。信号重畳手段23の出力側には昇圧回路31が接続され、昇圧回路31により昇圧された信号が圧電素子5に接続されている。ここで伝播信号生成手段22から出力する信号は振動子と被駆動体の相対移動に寄与しない周波数の信号である。
【0029】
信号重畳手段23の重畳方法について図6を用いて説明する。図6において、駆動信号生成手段21からの信号波形を駆動信号24として示し、伝播信号生成手段22からの信号波形を伝播信号25として示す。重畳信号26とは、駆動信号24と伝播信号25とを重ね合わせた信号であり信号重畳手段23から出力される。
【0030】
図5に示す被駆動体7の端部には、実施形態1と同様に被駆動体7の振動を検出する被駆動体側振動検出部8が設けられている。被駆動体側振動検出部8は圧電素子により構成されており、出力側には伝播信号帯域通過手段28が接続されている。
【0031】
伝播信号帯域通過手段28は伝播信号生成手段22の出力する周波数帯域の信号のみを通過させる機能をもっており、ハイパスフィルタやバンドパスフィルタにより構成されている。伝播信号帯域通過手段28の出力側には伝播時間検出手段30が接続されており、伝播時間を検出する。伝播時間検出手段30の出力側には位置検出手段17が接続されている。
【0032】
位置検出方法について図7を用いて説明する。図7(a)は図5に示す振動振幅検出電極S1の出力信号である。図7(b)は伝播信号帯域通過手段28の内部信号であり、図7(a)に示す振動振幅検出電極S1の出力信号より伝播信号生成手段22の出力する周波数帯域の信号のみを通過させている。図7(c)は伝播信号帯域通過手段28の出力信号であり、図7(b)の信号をコンパレータにより中心値を閾値とする2値の信号に変換している。
【0033】
図7(d)は図5に示す被駆動体側振動検出部の出力信号である。図7(e)は伝播信号帯域通過手段28の内部信号であり、図7(d)に示す被駆動体側振動検出部の出力信号より伝播信号生成手段22の出力する周波数帯域の信号のみを通過させている。図7(f)は伝播信号帯域通過手段28の出力信号であり、図7(e)の信号を中心値を閾値とする2値の信号に変換している。図5に示す伝播時間検出手段30は図7(c)と図7(f)の信号に基づいて伝播時間TD(相対移動に寄与しない振動の伝播時間)を出力する。
【0034】
位置検出手段17は伝播時間検出手段30の信号に基づいて位置を演算する。位置検出手段17は、伝播時間TDを検出することにより、第2の実施例と同様に距離Lを導出できる。
【0035】
このように本実施形態では、振動子と被駆動体の相対移動に寄与しない周波数の信号を、相対移動に寄与する周波数の信号に重畳して被駆動体を相対移動させる。これにより、相対移動に寄与する周波数で駆動している時間と同じ時間に、伝播時間TDを検出することができる。つまり、本実施形態では、振動振幅検出電極S1の出力した信号のうち相対移動に寄与しない振動成分の信号と、被駆動体側振動検出部の出力した信号のうち相対移動に寄与しない振動成分の信号と、を用いて伝播時間TDを検出する。そして、実施形態2と同様に、伝播時間TDから振動子と被駆動体側振動検出部の相対位置を検出することができる。
【0036】
[第4の実施形態]
実施形態1〜3では振動振幅検出電極S1を用いて振動子の振動を検出し、振動振幅検出電極S1から出力された信号を振動子の振動状態を示す信号として用いていた。本実施形態では、振動振幅検出電極S1を用いず、振動子に印加する信号を直接利用し、振動子の振動状態を示す信号として用いる。そして、振動子に印加する信号と被駆動体側信号検出部から出力される信号とから、距離Lを検出する。本実施形態に係る振動型駆動装置の構成を図8に示す。図1に示す振動子側振動検出回路19を除き第1の実施形態の構成と同様である。
【0037】
<制御装置の構成>
図8に示す振動型駆動装置の制御装置は、振動型駆動装置に信号を印加する駆動信号生成手段21を有し、その出力側には昇圧回路31が接続され昇圧回路により昇圧された信号が圧電素子5に接続されている。駆動信号生成手段21から出力される信号は振動子と被駆動体の相対移動に寄与する周波数の信号である。駆動信号生成手段21により出力される信号が圧電素子5に印加されて突起部6に振動が印加され被駆動体7を伝播し被駆動体側振動検出部に到達する。また、駆動信号生成手段21の出力側には位置検出手段17が接続されている。位置検出手段17は被駆動体側振動検出回路18が出力する信号と駆動信号生成手段21の印加する信号との位相差を検出する機能を持っている。
【0038】
図9(a)に示す駆動信号生成手段19の波形は矩形波であり、図8に示す昇圧回路31により昇圧され圧電素子5に接続されている。図9(b)に示す被駆動体側振動検出部8の時間―振幅における信号がサイン波形である時、図9(c)に示す被駆動体側振動検出回路18の出力側の時間―振幅における信号は中心値を閾値とする2値の信号に変換し出力されるため矩形の信号となる。図9(c)に示す検出振動周期Tは図2に示す振動の周期であり、マイコン又はロジック回路で検出できる。
【0039】
図9(c)に示す遅れ時間P(駆動信号生成手段の印加信号と被駆動体側振動検出回路の出力する矩形信号の時間差)は、駆動信号生成手段の波形の立ち上がりエッジと被駆動体側振動検出回路の立ち上がりエッジの時間間隔であり、カウンタにより求めることができる。距離Lは、第1の実施形態と同様に導出できる。また駆動に寄与する周波数である複数周期の信号同士を比較して位相差を算出し、位相差情報から距離を検出することで、より精度が向上する。
【0040】
ただし、本実施形態における駆動信号生成手段の信号と比較して、第1の実施形態における、振動振幅検出電極S1から出力される信号は、昇圧回路と圧電素子の介在により位相が遅れる。この位相遅れ分を考慮する場合は、遅れ時間Pから位相遅れ分を減算することでより正確な距離を求めることが可能となる。メリットとして振動子側振動検出回路が不用となり回路を簡素化できる。
【0041】
以上より、第4の実施形態では振動子の振動状態を示す信号として、第1の実施形態における振動振幅検出電極S1の出力する信号の代わりに駆動信号生成手段の信号を用いて位置の検出を行った。ただし、第2の実施形態および第3の実施形態においても同様に駆動信号生成手段21の信号を用いて振動子と被駆動体側振動検出部の相対位置の検出が可能となる。
【0042】
[第5の実施形態]
本実施形態の振動型駆動装置の制御装置の構成は、図10を用いて説明する。本実施形態は複数の被駆動体側振動検出部を設けた形態であり、図10に示す被駆動体側振動検出部8bを除き第3の実施形態の構成と同様である。
【0043】
図10に示す、被駆動体7の両端部には、被駆動体側振動検出部8aと被駆動体側振動検出部8bが設けられている。突起部6の振動により突起部6と加圧接触する被駆動体7に振動が印加され、被駆動体7を伝播し被駆動体側振動検出部8aと被駆動体側振動検出部8bに到達する。図10に示す被駆動体長さLsは被駆動体の長さである。被駆動体側振動検出部は圧電素子により構成されており、出力側には伝播信号帯域通過手段28が接続されている。伝播信号帯域通過手段28は伝播信号生成手段22の出力する周波数帯域の信号のみを通過させる機能をもっており、ハイパスフィルタやバンドパスフィルタにより構成されている。伝播信号帯域通過手段の出力側には伝播時間検出手段30が接続されており、伝播時間を検出する。伝播時間検出手段30の出力側には位置演算手段17が接続されている。
【0044】
位置検出方法については図11を用いて説明する。図11(a)は図10に示す振動振幅検出電極の出力信号である。図11(b)は伝播信号帯域通過手段28の内部信号であり、図11(a)に示す振動振幅検出電極の出力信号より伝播信号生成手段22の出力する周波数帯域の信号のみを通過させている。図11(c)は伝播信号帯域通過手段28の出力信号であり、図11(b)の信号をコンパレータにより中心値を閾値とする2値の信号に変換している。
【0045】
図11(d)は図10に示す被駆動体側振動検出部8aの出力信号である。図11(e)は伝播信号帯域通過手段28の内部信号であり、図11(d)に示す被駆動体側振動検出部8aの出力信号より伝播信号生成手段22の出力する周波数帯域の信号のみを通過させている。図11(f)は伝播信号帯域通過手段28の出力信号であり、図11(e)の信号を中心値を閾値とする2値の信号に変換している。図10に示す伝播時間検出手段30は図11(c)と図11(f)の信号に基づいて伝播時間TDaを出力する。
【0046】
図11(g)は図10に示す被駆動体側振動検出部8bの出力信号である。図11(h)は伝播信号帯域通過手段28の内部信号であり、図11(g)に示す被駆動体側振動検出部8bの出力信号より伝播信号生成手段22の出力する周波数帯域の信号のみを通過させている。図11(i)は伝播信号帯域通過手段28の出力信号であり、図11(h)の信号を中心値を閾値とする2値の信号に変換している。
【0047】
図10に示す伝播時間検出手段30は図11(c)と図11(i)の信号に基づいて伝播時間TDbを出力する。位置検出手段17は伝播時間検出手段30の信号に基づいて位置を演算する。
【0048】
<位置検出手段17の機能>
位置検出手段17は、距離Lを伝播時間TDaと伝播時間TDbの比率から導出する。距離Lは伝播時間TDaと伝播時間TDbの比率と被駆動体長さLsの関係式(4)から導出できる。
距離L=(伝播時間TDa/(伝播時間TDa+伝播時間TDb))×被駆動体長さLs(4)
このように、本実施形態では、被駆動体に複数の振動検出部を設けることにより、複数の伝播時間を検出することができ、複数の伝播時間を比較することにより相対位置を検出することができる。また、前述の実施形態においては、材料の伝播速度が距離Lを求める関係式に表れていたが、本実施形態においては伝播時間同士の比率を用いるため材料の伝播速度は距離Lを求める関係式に表れない。よって温度環境下の変動やバラツキ等の影響を受けず精度を向上させることができる。また、本実施形態は、第1、第2、第4の実施形態においても同様に適用でき、複数の被駆動体側振動検出部の出力する複数の信号を用いて振動子と被駆動体側振動検出部の相対位置の検出が可能となる。
【符号の説明】
【0049】
S1 振動振幅検出電極
4 弾性体
5 圧電素子
6 突起部
7 被駆動体
8 被駆動体側振動検出部
17 位置演算手段
18 被駆動体側振動検出回路
19 振動子側振動検出回路
20 信号生成手段
21 駆動信号生成手段
22 伝播信号生成手段
23 信号重畳手段
24 駆動信号
25 伝播信号
26 重畳信号
28 伝播信号帯域通過手段
30 伝播時間検出手段
31 昇圧回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気−機械エネルギー変換素子と前記電気−機械エネルギー変換素子に接合され突起部が設けられた弾性体とを備え、前記振動子に駆動信号が印加されることで2つの振動モードの振動を励振し、前記2つの振動モードの振動が組み合わさることにより前記突起部に楕円運動を生成する振動子と、
端部を有し、前記突起部に接触して前記振動子と相対移動する被駆動体と、
を有する振動型駆動装置の制御装置であって、
前記振動子の振動状態を示す信号と、前記被駆動体に設けられ前記被駆動体の振動を検出する被駆動体側振動検出部から出力される信号と、を用いて前記振動子と前記被駆動体側振動検出部との相対位置を検出することを特徴とする振動型駆動装置の制御装置。
【請求項2】
前記被駆動体側振動検出部で検出する振動は、前記相対移動に寄与する振動であり、
前記振動子の振動状態を示す信号と、前記被駆動体側振動検出部から出力される前記相対移動に寄与する振動の信号と、を用いて前記相対位置を検出することを特徴とする請求項1に記載の振動型駆動装置の制御装置。
【請求項3】
前記被駆動体側振動検出部で検出する振動は、前記相対移動に寄与しない振動であり、
前記振動子の振動状態を示す信号と、前記被駆動体側振動検出部から出力される前記相対移動に寄与しない振動の信号と、を用いて前記相対位置を検出することを特徴とする請求項1に記載の振動型駆動装置の制御装置。
【請求項4】
前記振動子には、前記相対移動に寄与する振動に前記相対移動には寄与しない振動が重畳されており、
前記振動子の振動状態を示す信号と、前記被駆動体側振動検出部から出力される信号のうち前記相対移動に寄与しない振動の信号と、を用いて前記相対位置を検出することを特徴とする請求項1に記載の振動型駆動装置の制御装置。
【請求項5】
前記振動子の振動状態を示す信号は、前記振動子に印加する信号であり、
前記振動子に印加する信号と、前記被駆動体側振動検出部から出力される信号と、を用いて前記相対位置を検出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の振動型駆動装置の制御装置。
【請求項6】
前記振動子の振動状態を示す信号は、前記振動子に設けられ前記振動子の振動を検出する振動子側振動検出部から出力される信号であり、
前記振動子側振動検出部から出力される信号と、前記被駆動体側振動検出部から出力される信号と、を用いて前記相対位置を検出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の振動型駆動装置の制御装置。
【請求項7】
前記振動子に印加する信号もしくは前記振動子側振動検出部から出力される信号と、前記被駆動体側振動検出部から出力される信号と、の位相差から前記相対位置を検出することを特徴とする請求項5又は6に記載の振動型駆動装置の制御装置。
【請求項8】
前記振動子に信号を印加する時間もしくは前記振動子側振動検出部が振動を検出する時間と、前記被駆動体側振動検出部の振動を検出する時間と、の時間差から前記相対位置を検出することを特徴とする請求項5又は6に記載の振動型駆動装置の制御装置。
【請求項9】
前記振動子の振動状態を示す信号と、前記被駆動体に設けられた複数の前記被駆動体側振動検出部から出力される複数の信号と、を用いて前記相対位置を検出することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の振動型駆動装置の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−263770(P2010−263770A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26728(P2010−26728)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】