説明

振動抑制板の設置装置

【課題】蒸気発生器の組立て時において、振動抑制板の設置の際における作業者の負担を低減し、簡便かつ確実に振動抑制板を予め設定された位置に配置する。
【解決手段】高さ方向に隙間を開けて配列された伝熱管同士の隙間に差し込まれて伝熱管の振動を抑える振動抑制板の中央部及び両端部に接続して各々の位置調節を行う複数の棒部材1と、振動抑制板が配置される平面内において棒部材1をスライド可能に支持するスライド機構2とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動抑制板の設置装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントでは、原子炉において発生したエネルギによって一次冷却材を加熱及び加圧し、蒸気発生器において加熱された一次冷却材と二次冷却材との熱交換を行い、これによってタービンに供給するための蒸気を生成している。
特許文献1に示すように、蒸気発生器は、複数の伝熱管からなる伝熱管群を備えている。この伝熱管群は、一次冷却材の流路となるU型の伝熱管を群集したものである。より詳細には、伝熱管群は、大きさの異なるU型の伝熱管が同心かつ同一平面に配置されてなる配管ユニットを、さらに上記平面と直交する方向に複数配列することによって構成されている。
【0003】
ただし、伝熱管には高温かつ高圧の一次冷却材が流れることから、一次冷却材の移動によって伝熱管が振動する。伝熱管の振動は、伝熱管の寿命低下に繋がる。このため、特許文献2に示すように、上述の配管ユニット間にV型の振動抑制板を差し込み、伝熱管を振動抑制板で挟み込み、これによって伝熱管の振動を抑制する対策が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−168405号公報
【特許文献2】特開平8−75387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような蒸気発生器を組み立てる場合には、伝熱管群が収容される容器を倒し、この容器の中に伝熱管及び振動抑制板を設置して行く。より詳細には、先に容器内に配置された上記配管ユニット同士(すなわち伝熱管同士)の間に、作業者が手作業により振動抑制板を差し込んで設置している。
【0006】
伝熱管の振動を確実に防止するためには、予め設定された位置に対して正確に振動抑制板を設置する必要がある。より詳細には、V型の振動抑制板の中央部と両端部との設置位置が予め設定されており、この設定位置に対して正確にV型の振動抑制板の中央部と両端部とを正確に配置する必要がある。
【0007】
ところが、配管ユニット同士の間は、非常に狭い。このため、作業者が振動抑制板の中央部と両端部を予め設定された位置に直接配置する作業は作業者にとって大きな負担となる。特に、最下段近傍や最上段近傍は容器の壁面に近接していることから、作業スペースの確保が難しく、作業者に大きな負担がかかることとなる。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、蒸気発生器の組立て時において、振動抑制板の設置の際における作業者の負担を低減し、簡便かつ確実に振動抑制板を予め設定された位置に配置可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0010】
第1の発明は、隙間を開けて配列された伝熱管同士の隙間に差し込まれて上記伝熱管の振動を抑える振動抑制板の中央部及び両端部に接続して各々の位置調節を行う複数の棒部材と、上記振動抑制板が配置される平面内において上記棒部材をスライド可能に支持するスライド機構とを備えるという構成を採用する。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記棒部材のスライド量から上記振動抑制板の中央部及び両端部の位置を出力する位置出力手段を備えるという構成を採用する。
【0012】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記棒部材が、上記スライド機構に嵌合するガイドと、該ガイドの下方に配置されると共に上記ガイドと一緒にスライドする受板部を備えるという構成を採用する。
【0013】
第4の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記棒部材の端部に対して上記振動抑制板の端部を上記平面内において回動可能に連結する連結機構を備えるという構成を採用する。
【0014】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記連結機構が、上記振動抑制板を把持する把持アームを有する把持ブロックと、該把持ブロックに対して移動可能に連結されると共に上記把持ブロックに対して移動することによって上記把持アームを駆動する駆動ブロックと、上記把持ブロックを上記棒部材に対して回動可能に連結する球面軸受とを備えるという構成を採用する。
【0015】
第6の発明は、上記第5の発明において、上記連結機構が、上記駆動ブロックに当接する当接部と、当該当接部を移動させることにより上記把持アームが上記振動抑制板を解放する方向に上記駆動ブロックを移動するワイヤー部材とを有する振動抑制板解放手段を備えるという構成を採用する。
【0016】
第7の発明は、上記第5または第6の発明において、上記連結機構が、上記振動抑制板を把持可能な位置及び上記振動抑制板を解放可能な位置において上記駆動ブロックを上記把持ブロックに対して固定する固定手段を備えるという構成を採用する。
【0017】
第8の発明は、上記第5〜第7いずれかの発明において、上記把持ブロックが、上記球面軸受によって軸支される軸部の延長線上に上記振動抑制板の隅を位置させて上記振動抑制板を把持するという構成を採用する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、振動抑制板の中央部及び両端部に接続して各々の位置調節が可能な棒部材を備え、さらに当該棒部材を振動抑制板が配置される平面内においてスライド可能に支持するスライド機構を備えている。このため、作業者が棒部材を持って当該棒部材をスライドさせることによって、振動抑制板の中央部及び両端部の位置調節を行うことができる。したがって、本発明によれば、作業者が振動抑制板の中央部及び両端部を予め設定された位置に直接配置する必要がなくなり、棒部材を操作するのみで振動抑制板の中央部及び両端部を予め設定された位置に配置することが可能となる。
したがって、本発明によれば、蒸気発生器の組立て時において、振動抑制板の設置の際における作業者の負担を低減し、簡便かつ確実に振動抑制板を予め設定された位置に配置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態における振動抑制板設置装置によって設置される振動抑制板の概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態における振動抑制板設置装置の概略構成を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施形態における振動抑制板設置装置が備える端部位置調節棒と端部位置調節棒用スライド部との概略構成を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態における振動抑制板設置装置が備える端部位置調節棒と端部位置調節棒用スライド部との概略構成を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態における振動抑制板設置装置が備える連結機構の概略構成を示す平面図である。
【図6】本発明の一実施形態における振動抑制板設置装置が備える連結機構の概略構成を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施形態における振動抑制板設置装置が備える中央部位置調節棒と中央部位置調節スライド部との概略構成を示す平面図である。
【図8】本発明の一実施形態における振動抑制板設置装置が備える中央部位置調節棒と中央部位置調節スライド部との概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係る振動抑制板の設置装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0021】
図1は、本実施形態の振動抑制板の設置装置(以下、振動抑制板設置装置と称する)によって設置される振動抑制板Xの概略構成を示す模式図である。この図に示すように、振動抑制板Xは、大きさの異なるU型の伝熱管Y1が同心かつ同一平面に配置されてなる配管ユニットYに対して複数設置される。
【0022】
より詳細には、配管ユニットYは、原子力プラントに設置される蒸気発生器の一部を構成するものであり、組立て時において蒸気発生器の容器内部に紙面垂直方向(高さ方向)に隙間を開けて水平に複数配列される。そして、このように配列された配管ユニットY同士の間(すなわち伝熱管Y1)の隙間1つ1つに対して、伝熱管Y1の振動を抑制するための振動抑制板Xが図1に示すように複数差し込まれている。
なお、図1に示すように、1つの隙間に対して、長さ及び屈曲角度の異なる振動抑制板Xが差し込まれる。ただし、1つの隙間に対して差し込まれる複数の振動抑制板Xは、屈曲された中央部X1が一直線上に配置され、端部X2が円弧を描いて配置されるように長さ及び屈曲角度が設定されている。
【0023】
そして、本実施形態の振動抑制板設置装置は、蒸気発生器を組み立てる際に、配管ユニットY同士の間(すなわち伝熱管Y1)の隙間に対して、図1に示す位置(予め設定された位置)に各振動抑制板Xを設置するためのものである。
【0024】
図2は、本実施形態の振動抑制板設置装置S1の概略構成を示す平面図である。
この図に示すように、本実施形態の振動抑制板設置装置S1は、位置調節棒1(棒部材)と、スライド機構2と、連結機構3とを備えている。
【0025】
位置調節棒1は、振動抑制板Xの中央部X1及び両端部X2に接続して各々の位置調節を行うものである。そして、本実施形態の振動抑制板設置装置S1においては、位置調節棒1として、振動抑制板Xの端部X2に接続される端部位置調節棒11と、振動抑制板Xの中央部X1に当接(接続)する中央部位置調節棒12とを備えている。なお、図1に示すように、端部位置調節棒11は、振動抑制板Xの両方の端部X2に各々接続可能なように2本備えられている。
【0026】
スライド機構2は、位置調節棒1を振動抑制板Xが配置される平面(すなわち図2で示される平面)において位置調節棒1をスライド可能に支持するものである。そして、本実施形態の振動抑制板設置装置S1においてスライド機構2は、端部位置調節棒11をスライド可能に支持する端部位置調節棒用スライド部21と、中央部位置調節棒12をスライド可能に支持する中央部位置調節棒用スライド部22とを備えている。
なお、スライド機構2は、図1に示すように、振動抑制板Xの中央部X1の配列方向と直交する方向に延在する支持部材23を備えている。この支持部材23は、例えばレーザ計測装置等によって、予め設定された基準位置に対して正確に配置可能とされている。
【0027】
連結機構3は、端部位置調節棒11の端部に対して振動抑制板Xの端部X2を水平面内において回動可能に連結するものである。そして、本実施形態の振動抑制板設置装置S1において連結機構3は、端部位置調節棒11の各々に対して設けられている。
【0028】
以下に、上記位置調節棒1と、スライド機構2と、連結機構3とのより詳細な構成について説明する。
【0029】
図3及び図4は、端部位置調節棒11と端部位置調節棒用スライド部21との概略構成図であり、図3が平面図であり、図4が断面図である。また、図4(a)が図3のA−A線断面図であり、図4(b)が図4のB−B線断面図である。なお、端部位置調節棒11と端部位置調節棒用スライド部21とは、振動抑制板Xの両方の端部X2側の各々に対して配置されているが、対称配置されたものであるため、ここではその一方を図示して説明する。
【0030】
これらの図に示すように、端部位置調節棒11は、図3に示すように振動抑制板Xの差込方向Lに長く設定されており、ガイド11aと、受板部11bと先端部11cとを備えている。
【0031】
ガイド11aは、後述する端部位置調節棒用スライド部21が備える抜差し移動用ブロック21eと摺動自在に嵌合し、端部位置調節棒11のほぼ全長に亘って形成されている。
【0032】
受板部11bは、上端が開口された箱形状を有しており、図4(b)に示すようにガイド11aの下方に配置されると共に、図3に示すようにガイド11aの全長に亘って設けられている。この受板部11bは、端部位置調節棒用スライド部21とガイド11aが摺動して万一潤滑油等の異物が落下した場合であっても、これを受け止めて伝熱管Y1に異物が付着することを防止する。
【0033】
先端部11cは、図3に示すように、受板部11bから差込方向Lに突設して設けられており、連結機構3を介して振動抑制板Xの端部X2と接続される部位である。
【0034】
端部位置調節棒用スライド部21は、ベース部材21aと、平行移動用ブロック21bと、平行移動用レール21cと、ゲート部21dと、抜差し移動用ブロック21eとを備えている。
【0035】
ベース部材21aは、平行移動用ブロック21b及びゲート部21dが取り付けられる板部材である。
【0036】
平行移動用ブロック21bは、平行移動用レール21cに対して摺動可能に嵌合するものであり、ベース部材21aの下側面に対して、差込方向Lに離間して2つ設けられている。
平行移動用レール21cは、支持部材23上に差込方向Lと直交する水平方向に延在して設けられている。そして、本実施形態においては、平行移動用レール21cが差込方向Lに離間して2本設けられている。
【0037】
ゲート部21dは、抜差し移動用ブロック21eを端部位置調節棒11の上方に支持するための部材であり、図4(b)に示すように差込方向Lの両端が開口端とされ、端部位置調節棒11が挿通可能に形状設定されている。
このゲート部21dは、ベース部材21aの上面に対して設けられており、差込方向Lに離間して2つ設けられている。
【0038】
抜差し移動用ブロック21eは、端部位置調節棒11を差込方向Lに沿って抜差し可能に支持するものである。この抜差し移動用ブロック21eは、図4(a)及び(b)に示すようにベース部材21aに囲われた内側に各々配置されており、ベース部材21aの天井部に固定されることによって、端部位置調節棒11の上方に支持されている。
【0039】
そして、平行移動用レール21cに沿って平行移動用ブロック21bが移動可能であるために、ベース部材21aが差込方向Lと直交する水平方向にスライド可能とされ、これによって端部位置調節棒11を平行移動させることができる。
また、抜差し移動用ブロック21eが端部位置調節棒11を差込方向Lに沿って抜差し可能に支持しているため、端部位置調節棒11を抜差し方向に移動させることができる。
なお、本実施形態においては、平行移動用ブロック21bと、平行移動用レール21cと、ゲート部21dと、抜差し移動用ブロック21eとが差込方向Lに離間して2つずつ設けられているため、端部位置調節棒11の長さ方向における傾きを抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態においては、図3に示すように、支持部材23の中央部に当該支持部材23の延在方向にリニアスケール4が貼付されている。また、図4(b)に示すように、受板部11bの側面に対しても、端部位置調節棒11の延在方向にリニアスケール5が貼付されている。
そして、図3に示すように、リニアスケール4を読み取るための読取部6と、リニアスケール5を読み取るための読取部7とがベース部材21aに対して固定されている。
【0041】
また、リニアスケール4と読取部6とによって、端部位置調節棒11の差込方向Lと直交する水平方向へのスライド量が検出されると共に振動抑制板Xの端部X2の差込方向Lと直交する水平方向での位置が出力される。
また、リニアスケール5と読取部7とによって、端部位置調節棒11の差込方向Lへのスライド量が検出されると共に振動抑制板Xの端部X2の差込方向Lでの位置が出力される。
なお、読取部6,7が別の出力装置と接続している場合には、読取部6,7から位置を示す信号のみを出力すれば足りるが、読取部6,7が別の出力装置と接続していない場合には、読取部6,7に可視化して出力する機能を持たせ、端部X2の位置を例えば数字にて出力する。
また、本実施形態においては、リニアスケール4と読取部6との組で本発明の1つの位置出力手段として機能する。さらに、リニアスケール5と読取部7との組で本発明の1つの位置出力手段として機能する。
【0042】
図5及び図6は、連結機構3の概略構成図であり、図5が平面図であり、図6が断面図である。なお、図6(a)が図5のC−C線断面図であり、図6(b)が図5のD−D線断面図である。
【0043】
これらの図に示すように、連結機構3は、把持ブロック31と、駆動ブロック32と、球面軸受33と、振動抑制板解放機構34(振動抑制板解放手段)と、固定機構35(固定手段)とを備える。
【0044】
把持ブロック31は、振動抑制板Xの端部X2を上下から把持する把持アーム31a,31bを備えている。そして、下方の把持アーム31aは、下側に向けて付勢する板バネによって構成されている。そして、把持ブロック31は、把持アーム31aが上方に向けて駆動(変形)されることによって振動抑制板Xの端部X2を把持する。
【0045】
駆動ブロック32は、把持ブロック31を上下から挟んで嵌合するコの字部材であり、把持ブロック31に対して差込方向L側から嵌合されている。
駆動ブロック32は、図5及び図6(a)に示すように、差込方向Lに長い長孔32aが上下に設けられており、把持ブロック31に固定されたピン37が当該長孔32aに挿通されている。これによって、駆動ブロック31は、把持ブロック31に連結されつつ差込方向Lに移動可能とされている。なお、本実施形態においては、図5に示すように、長孔32a及びピン37が2対設けられている。
【0046】
そして、駆動ブロック32が把持ブロック31に対して近づく方向に移動された場合には、駆動ブロック32が把持ブロック31の把持アーム31aを上方に押し上げることによって把持アーム31aが駆動され、これによって把持ブロック31が振動抑制板Xを把持することができる。
【0047】
球面軸受33は、把持ブロック31を端部位置調節棒11に対して回動可能に連結するものであり、内筒が把持ブロック31に対して上方に突出して設けられた軸部36に固定され、外筒が端部位置調節棒11の先端部11cに固定されている。このような球面軸受33によれば軸部36を回動及び傾斜可能に支持するため、振動抑制板Xを端部位置調節棒11に対して水平面内において回動可能とすると共に、端部位置調節棒11の水平面に対する傾斜を許容することも可能となる。
【0048】
振動抑制板解放機構34は、振動抑制板Xから把持ブロック31を解離するための機構であり、図5及び図6に示すように駆動ブロック32の内側に配置される球体部材34a(当接部)と、当該球体部材34aに接続されて駆動ブロック32の外側に引き出されるワイヤー部材34bとを備えている。
球体部材34aは、駆動ブロック32に対して内側から当接している。ワイヤー部材34bは、駆動ブロック32に形成された貫通孔を介して球体部材34aと接続されており、容器34cに収容されて作業者の作業位置まで引き廻されて配置されている。
このような振動抑制板解放機構34においては、作業者がワイヤー部材34bを引くことによって球体部材34aが引っ張られ、球体部材34aに当接する駆動ブロック32が振動抑制板Xを解放する方向に移動する。この結果、把持ブロック31の把持アーム31aが下方に下がり、振動抑制板Xを解離することが可能となる。
【0049】
固定機構35は、駆動ブロック32が振動抑制板Xを把持可能な位置及び振動抑制板Xを解放可能な位置に存在する場合に、駆動ブロック32を把持ブロック31に対して固定するものである。
そして、固定機構35は、図6(b)に示すように、バネ部材によって弱い力で上方に付勢されると共に把持ブロック31の上面から突出するピン35aと、駆動ブロック32の天井部に下側に向けて開口される位置決め穴35b,35cとを備えている。
【0050】
ピン35aは、位置決め穴35b,35cに対して嵌合可能なサイズに設定されている。また、ピン35aは、作業者あるいは振動抑制板解放機構34によって駆動ブロック32が把持ブロック31に対して移動される際には、駆動ブロック32によって下方に押し込まれるように、上部が面取り加工されていると共に弱い力で上方に付勢されている。
【0051】
位置決め穴35bは、駆動ブロック32の位置が、把持ブロック31に振動抑制板Xを把持させる位置である場合に、ピン35aが嵌合する位置に設けられている。
また、位置決め穴35cは、駆動ブロック32の位置が、把持ブロック31に対して振動抑制板Xを脱着可能な位置(把持ブロック31が振動抑制板Xを解放可能な位置)である場合に、ピン35aが嵌合する位置に設けられている。
なお、駆動ブロック32は、作業者あるいは振動抑制板解放機構34によってのみ把持ブロック31に対して移動する。このため、端部位置調節棒11を抜差しする際には、把持ブロック31と駆動ブロック32とを離間させる大きな力が作用しないため、固定機構35によって把持ブロック31と駆動ブロック32とがずれることを抑止することができる。
【0052】
なお、把持ブロック31の振動抑制板Xの取付領域31cは、振動抑制板Xの端部X2を嵌め込み可能な溝形状とされている。そして、当該取付領域31cは、振動抑制板Xの端部X2が嵌め込まれた際に、振動抑制板Xの隅X3が軸部36の下方に位置するように形状設定されている。
つまり、本実施形態において把持ブロック31は、球面軸受33によって軸支される軸部36の延長線上に振動抑制板Xの隅X3を位置させて振動抑制板Xを把持する。
【0053】
図7及び図8は、中央部位置調節棒12と中央部位置調節スライド部22との概略構成図であり、図7が平面図であり、図8が断面図である。また、図8(a)が図7のE−E線断面図であり、図8(b)が図7のF−F線断面図である。
【0054】
これらの図に示すように、中央部位置調節棒12は、図7に示すように、振動抑制板Xの差込方向Lに長く設定された扁平な棒部材である。
そして、中央部位置調節棒12は、先端が振動抑制板Xの中央部X1に当接して振動抑制板Xを押し込むことにより中央部X1の位置調節を行う。
【0055】
中央部位置調節スライド部22は、ベース部材22aと、押さえ板22bと、クランプ22cとを備えている。
ベース部材22aは、押さえ板22bとクランプ22cとが取り付けられる板部材であり、中央部位置調節棒12をスライド可能に下方から支持する。
押さえ板22bは、ベース部材22aの上面に対して、中央部位置調節棒12の厚さ分だけ離間して配置され、中央部位置調節棒12をスライド可能に上方から支持する。なお、本実施形態においては、押さえ板22bは、差込方向Lに離間して2つ配置されている。
クランプ22cは、押さえ板22bをベース部材22aに対して着脱可能に固定するものである。
なお、ベース部材22aの上面と押さえ板22bの下面とは、例えばフッ素樹脂による表面加工によって摩擦抵抗が低減されている。
【0056】
そして、中央部位置調節棒12は、ベース部材22aと押さえ板22bとの間の隙間を挿通して、差込方向Lに抜差し可能とされている。
【0057】
また、本実施形態においては、図7に示すように、中央部位置調節棒12の中央部にリニアスケール8が貼付され、ベース部材22aにリニアスケール8を読み取る読取部9が設置されている。
そして、リニアスケール8と読取部9とによって、中央部位置調節棒12のスライド量が検出されると共に振動抑制板Xの中央部X1の位置が出力される。なお、読取部9が別の出力装置と接続している場合には、読取部9から位置を示す信号のみを出力すれば足りるが、読取部9が別の出力装置と接続していない場合には、読取部9に可視化して出力する機能を持たせ、中央部X1の位置を例えば数字にて出力する。
なお、本実施形態においては、リニアスケール8と読取部9との組で本発明の1つの位置出力手段として機能する。
【0058】
続いて、本実施形態の振動抑制板設置装置S1を用いて振動抑制板Xを配管ユニットY同士の間の隙間に設置する方法について説明する。
なお、以下の説明においては、予め設定された振動抑制板Xの設置すべき位置を設定位置と称し、この設定位置の差込方向L成分を差込方向設定位置、設定位置の差込方向Lと直交する水平方向成分を平行移動方向設定位置と称する。
【0059】
本実施形態の振動抑制板設置装置S1が基準位置に基づいて設置されると、まず作業者が端部位置調節棒用スライド部21のベース部材21aを差込方向Lと直交する水平方向にスライドし、端部位置調節棒11の位置を振動抑制板Xの端部X2の平行移動方向設定位置に合わせる。
この際、作業者は、読取部6の出力を確認しながら、端部位置調節棒11の位置を振動抑制板Xの端部X2の平行移動方向設定位置に合わせる。
【0060】
続いて、作業者が連結機構3によって端部位置調節棒11と振動抑制板Xの端部X2とを連結する。そして、作業者が端部位置調節棒11を差込方向Lにスライドして抜差しすることによって振動抑制板Xの端部X2の位置を当該端部X2の差込方向設定位置に合わせる。
この際、作業者は、読取部7の出力を確認しながら、振動抑制板Xの端部X2の位置を当該端部X2の差込方向設定位置に合わせる。
【0061】
また、作業者が中央部位置調節棒12を差込方向Lにスライドして押し込むことにより、振動抑制板Xの中央部X1の位置を当該中央部X1の差込方向設定位置に合わせる。
この際、作業者は、読取部9の出力を確認しながら、振動抑制板Xの中央部X1の位置を当該中央部X1の差込方向設定位置に合わせる。
【0062】
最後に、作業者が振動抑制板解放機構34を操作して端部位置調節棒11を振動抑制板Xから解離することによって振動抑制板Xが位置決めされる。
そして、図1に示す全ての振動抑制板Xを差込方向Lの奥側から手前側に向けて順に設置することで、配管ユニットY同士の1つの隙間に対して全ての振動抑制板Xが設置される。
なお、その後は、本実施形態の振動抑制板設置装置S1の高さを変えて、配管ユニットY同士の隙間の全てに対して振動抑制板Xを設置し、これによって振動抑制板Xの設置が完了する。
【0063】
以上のような本実施形態の振動抑制板設置装置S1によれば、振動抑制板Xの中央部X1及び両端部X2に接続して各々の位置調節が可能な位置調節棒1を備え、さらに当該位置調節棒1を振動抑制板Xが配置される平面内においてスライド可能に支持するスライド機構2を備えている。このため、作業者が位置調節棒1を持って当該位置調節棒1をスライドさせることによって、振動抑制板Xの中央部X1及び両端部X2の位置調節を行うことができる。したがって、本実施形態の振動抑制板設置装置S1によれば、作業者が振動抑制板Xの中央部X1及び両端部X2を予め設定された位置(設定位置)に直接配置する必要がなくなり、位置調節棒1を操作するのみで振動抑制板Xの中央部X1及び両端部X2を予め設定された位置に配置することが可能となる。
したがって、本実施形態の振動抑制板設置装置S1によれば、蒸気発生器の組立て時において、振動抑制板の設置の際における作業者の負担を低減し、簡便かつ確実に振動抑制板を予め設定された位置に配置することが可能となる。
【0064】
また、本実施形態の振動抑制板設置装置S1においては、位置調節棒1のスライド量から振動抑制板Xの中央部X1及び両端部X2の位置を出力するためのリニアスケール4,5,8と、読取部6,7,9を備えている。
このため、中央部X1及び両端部X2の位置を確認しながら確実に振動抑制板Xの設置を行うことが可能となる。また、読取部6,7,9をデジタルデータとして保存することにより、容易に記録が可能となると共に他のシステムとの情報伝達を速やかに行うことが可能となる。
また、例えば、スライド機構2をPC等からリモート操作できる構成を加え、読取部6,7,9からの出力値をPCに入力し、作業者がPCの操作のみで振動抑制板Xの設置を行えるようにすることも可能である。この場合、作業状態の確認のために、PC上に作業状態を示す撮像画像あるいは3Dバーチャル画像を表示することが好ましい。
また、作業者の作業現場に大型ディスプレイがある場合や、作業者がヘッドマウンドディスプレイを装着している場合には、これらの大型ディスプレイやヘッドマウンドディスプレイに対して読取部6,7,9の出力値を表示しても良い。
【0065】
また、本実施形態の振動抑制板設置装置S1においては、スライド機構2に嵌合するガイド11aと、このガイド11aの下方に配置されると共にガイド11aと共にスライドする受板部11bとを備えている。
このため、スライド機構2とガイド11aが摺動して万一潤滑油等の異物が落下した場合であっても、受板部11bによってこれを受け止めて伝熱管Y1に異物が付着することを防止することができ、伝熱管Y1の汚染を防止することが可能となる。
【0066】
また、本実施形態の振動抑制板設置装置S1においては、端部位置調節棒11の端部に対して振動抑制板Xの端部X2を水平面内において回動可能に連結する連結機構3を備えている。
端部位置調節棒11を差込方向Lにスライドさせた場合には、端部位置調節棒11に対して振動抑制板Xが回動しようとする。そして、連結機構3を介して端部位置調節棒11の端部と振動抑制板Xの端部X2とが連結されることによって、確実に連結状態を保ちつつ振動抑制板Xを回動させることができる。
【0067】
また、本実施形態の振動抑制板設置装置S1においては、連結機構3が、振動抑制板Xを把持する把持アーム31a,31bを有する把持ブロック31と、把持ブロック31に対して移動可能に連結されると共に把持ブロック31に対して移動することによって把持アーム31a,31bを駆動する駆動ブロック32と、把持ブロック31を端部位置調節棒11に対して回動可能に連結する球面軸受33とを備えるという構成を採用している。
このため、端部位置調節棒11を容易に連結機構3に連結することができると共に、連結中における端部位置調節棒11及び振動抑制板Xの姿勢変化に柔軟に対応することが可能となる。
【0068】
また、本実施形態の振動抑制板設置装置S1においては、連結機構3が、駆動ブロック32に当接する球体部材34aと、当該球体部材34aを移動させることにより把持アーム31a,31bが振動抑制板Xを解放する方向に駆動ブロック32を移動するワイヤー部材34bとを有する振動抑制板解放機構34を備えるという構成を採用する。
このため、作業者は、振動抑制板解放機構34を操作するのみで、端部位置調節棒11を振動抑制板Xから解離することが可能となる。
【0069】
また、本実施形態の振動抑制板設置装置S1においては、連結機構3が、振動抑制板Xを把持可能な位置及び振動抑制板Xを解放可能な位置において駆動ブロック32を把持ブロック31に対して固定する固定機構35を備える。
このため、把持ブロック31において、振動抑制板Xの把持及び解放を確実に行うことが可能となる。
【0070】
また、本実施形態の振動抑制板設置装置S1においては、把持ブロック31は、球面軸受33によって軸支される軸部36の延長線上に振動抑制板Xの隅X3を位置させて振動抑制板Xを把持する。
通常、振動抑制板Xの端部X2の中でも隅X3の位置を用いて位置決めを行うことが求められる。これに対して、本実施形態の振動抑制板設置装置S1によれば、上記構成を採用することによって、振動抑制板Xの姿勢に関わらず、隅X3と端部位置調節棒11との位置関係が変化しないため、隅X3を確実に予め設定された位置に配置することが可能となる。
【0071】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0072】
例えば、上記実施形態における位置調節棒1の形状や長さ等は、一例であり、適宜変化させても良い。
例えば、長さの異なる位置調節棒1を用意し、振動抑制板Xの設置位置に応じて最適な長さの位置調節棒1を選択して用いることができるようにしても良い。
【0073】
また、上記リニアスケール4,5,8及び読取部6,7,9に換えて、レーザ測定器等を用いてスライド量を計測して出力するようにしても良い。
【符号の説明】
【0074】
S1……振動抑制板設置装置、1……位置調節棒、11……端部位置調節棒、11a……ガイド、11b……受板部、11c……先端部、12……中央部位置調節棒、2……スライド機構、21……端部位置調節棒用スライド部、21a……ベース部材、21b……平行移動用ブロック、21c……平行移動用レール、21d……ゲート部、21e……抜差し移動用ブロック、22……中央部位置調節棒用スライド部、22a……ベース部材、22b……押さえ板、22c……クランプ、23……支持部材、3……連結機構(連結手段)、31……把持ブロック、31a……把持アーム、31b……把持アーム、32……駆動ブロック、32a……長孔、33……球面軸受、34……振動抑制板解放機構(振動抑制板解放手段)、34a……球体部材(当接部)、34b……ワイヤー部材、34c……容器、35……固定機構(固定手段)、35a……ピン、35b……位置決め穴、35c……位置決め穴、36……軸部、37……ピン、4……リニアスケール、5……リニアスケール、6……読取部、7……読取部、8……リニアスケール、9……読取部、X……振動抑制板、X1……中央部、X2……端部、X3……隅、Y……配管ユニット、Y1……伝熱管、L……差込方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隙間を開けて配列された伝熱管同士の隙間に差し込まれて前記伝熱管の振動を抑える振動抑制板の中央部及び両端部に接続して各々の位置調節を行う複数の棒部材と、
前記振動抑制板が配置される平面内において前記棒部材をスライド可能に支持するスライド機構と
を備えることを特徴とする振動抑制板の設置装置。
【請求項2】
前記棒部材のスライド量から前記振動抑制板の中央部及び両端部の位置を出力する位置出力手段を備えることを特徴とする請求項1記載の振動抑制板の設置装置。
【請求項3】
前記棒部材は、前記スライド機構に嵌合するガイドと、該ガイドの下方に配置されると共に前記ガイドと一緒にスライドする受板部を備えることを特徴とする請求項1または2記載の振動抑制板の設置装置。
【請求項4】
前記棒部材の端部に対して前記振動抑制板の端部を前記平面内において回動可能に連結する連結機構を備えることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の振動抑制板の設置装置。
【請求項5】
前記連結機構は、
前記振動抑制板を把持する把持アームを有する把持ブロックと、
該把持ブロックに対して移動可能に連結されると共に前記把持ブロックに対して移動することによって前記把持アームを駆動する駆動ブロックと、
前記把持ブロックを前記棒部材に対して回動可能に連結する球面軸受と
を備えることを特徴とする請求項4記載の振動抑制板の設置装置。
【請求項6】
前記連結機構は、前記駆動ブロックに当接する当接部と、当該当接部を移動させることにより前記把持アームが前記振動抑制板を解放する方向に前記駆動ブロックを移動するワイヤー部材とを有する振動抑制板解放手段を備えることを特徴とする請求項5記載の振動抑制板の設置装置。
【請求項7】
前記連結機構は、前記振動抑制板を把持可能な位置及び前記振動抑制板を解放可能な位置において前記駆動ブロックを前記把持ブロックに対して固定する固定手段を備えることを特徴とする請求項5または6記載の振動抑制板の設置装置。
【請求項8】
前記把持ブロックは、前記球面軸受によって軸支される軸部の延長線上に前記振動抑制板の隅を位置させて前記振動抑制板を把持することを特徴とする請求項5〜7いずれかに記載の振動抑制板の設置装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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