説明

振動検出回路および地震計

【課題】 振動センサの出力を増幅して処理回路に入力するための振動検出回路において、汎用的な素子を用いた比較的小規模な回路構成によって、低周波域の特性を低コストで改善する。
【解決手段】 物体の振動が電位差として表れる、振動センサからの第1および第2の出力信号を差動増幅する第1の増幅回路と、前記第1の増幅回路の出力信号に含まれる所定の周波数未満の成分を通過させる低域通過フィルタと、前記第1の出力信号に含まれる前記所定の周波数以上の成分を少なくとも増幅する第2の増幅回路と、前記低域通過フィルタの出力信号を基準電圧として、前記第2の増幅回路の出力信号を増幅する第3の増幅回路と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動検出回路および地震計に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、図5を参照して、一般的な地震計の構成について説明する。
例えばGMR(Giant Magneto-Resistive:巨大磁気抵抗)素子などを用いた振動センサ2は、抵抗21と抵抗22の接続点および抵抗23と抵抗24の接続点の電圧を出力信号とするブリッジ回路を含んでいる。振動センサ2に対して外力が加わっていない状態では、抵抗21ないし24の各抵抗値は、振動センサ2の出力間の電位差が0となるようにバランスがとられており、振動センサ2が設置された物体が振動し、振動センサ2に対して外力が加わると、応力によって抵抗21ないし24の各抵抗値が変化するため、振動センサ2の出力間には電位差が生じる。当該電位差は、振動センサ2に印加されている電源VCCの電圧に比して微小であるため、増幅回路10において増幅された後、処理回路3に入力され、処理される。
【0003】
このようにして、振動センサ2が検出した振動を示す微小な電位差を、増幅回路10において増幅することにより、処理に適したレベルの信号を処理回路3に入力することができる。
【特許文献1】特開2003−302474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば20Hzないし20kHz程度の可聴周波数域の振動が検出および処理の対象である場合、増幅回路10は、例えば汎用的なトランジスタや演算増幅器を用いた小規模な回路構成とすることができ、低コストで実現することができる。しかしながら、可聴周波数域の振動と同時に、例えば、1Hzないし20Hz程度の超低周波音の発生源による振動や、10mHzないし数Hz程度の低周波および超低周波地震による振動などを検出および処理しようとする場合、増幅回路10には、直流に近い低周波成分から少なくとも数十kHzの高周波成分にわたる広帯域特性が要求される。広帯域特性を有する増幅回路は、例えば、高精度の素子を用いて比較的大規模な回路構成とすることで、従来から実現することは可能であったが、高コストになりがちであった。
【0005】
そのため、振動検出の用途に要求される10mHzないし数十kHz程度の広帯域特性を有する増幅回路を、汎用的な素子を用いて比較的小規模な回路構成で実現することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決する主たる本発明は、物体の振動が電位差として表れる、振動センサからの第1および第2の出力信号を差動増幅する第1の増幅回路と、前記第1の増幅回路の出力信号に含まれる所定の周波数未満の成分を通過させる低域通過フィルタと、前記第1の出力信号に含まれる前記所定の周波数以上の成分を少なくとも増幅する第2の増幅回路と、前記低域通過フィルタの出力信号を基準電圧として、前記第2の増幅回路の出力信号を増幅する第3の増幅回路と、を有することを特徴とする振動検出回路である。
【0007】
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、振動センサの出力を増幅して処理回路に入力するための振動検出回路において、汎用的な素子を用いた比較的小規模な回路構成によって、低周波域の特性を低コストで改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
<第1実施形態>
以下、図1を参照して、本発明の第1の実施形態における振動検出回路を用いた地震計の構成について説明する。
【0011】
図1に示されている地震計は、振動センサ2、振動検出回路1a、および処理回路3を含んで構成されており、図5の増幅回路10が振動検出回路1aとなっている以外は、図5に示した一般的な地震計と同様の構成となっている。また、振動センサ2の出力を増幅して処理回路3に入力するための振動検出回路1aは、増幅回路4、6a、7、およびLPF(Low-Pass Filter:低域通過フィルタ)5を含んで構成されている。
【0012】
増幅回路4は、本実施形態では、例えば演算増幅器31および抵抗32ないし34で構成される、差動増幅回路となっている。演算増幅器31の反転入力は、抵抗32を介して振動センサ2の抵抗21と抵抗22の接続点に接続され、非反転入力は、抵抗33を介して振動センサ2の抵抗23と抵抗24の接続点に接続されている。また、演算増幅器31の出力は、帰還抵抗である抵抗34を介して反転入力に接続されるとともに、増幅回路4の出力としてLPF5に接続されている。
【0013】
LPF5は、本実施形態では、例えば抵抗36およびコンデンサ37で構成されている。抵抗36とコンデンサ37は直列に接続され、抵抗36のコンデンサ37と接続されていない側は、増幅回路4の出力に接続され、コンデンサ37の抵抗36と接続されていない側は、例えば接地されている。また、抵抗36とコンデンサ37の接続点は、LPF5の出力として増幅回路7に接続されている。
【0014】
増幅回路6aは、本実施形態では、例えばバイポーラトランジスタ41、コンデンサ42、43、および抵抗44、47を含んで構成される、エミッタ接地増幅回路となっている。バイポーラトランジスタ41のベース入力は、容量結合のためのコンデンサ42を介して、振動センサ2の抵抗21と抵抗22の接続点に接続されるとともに、抵抗47を介して例えば接地され、コレクタ出力は、抵抗44を介して電源VDDに接続されるとともに、容量結合のためのコンデンサ43を介して、増幅回路6aの出力として増幅回路7に接続されている。なお、増幅回路6aにおいて、コンデンサ42および抵抗47は、バイポーラトランジスタ41のバイアスを設定するためのバイアス回路の一部であるが、バイアス回路の構成についての詳細な説明は省略するものとする。
【0015】
増幅回路7は、本実施形態では、例えば演算増幅器51、抵抗52、および抵抗53で構成される、反転増幅回路となっている。演算増幅器51の反転入力は、抵抗52を介して増幅回路6aの出力に接続され、非反転入力は、LPF5の出力に接続されている。また、演算増幅器51の出力は、帰還抵抗である抵抗53を介して反転入力に接続されるとともに、増幅回路7の出力として処理回路3に接続されている。
【0016】
次に、本実施形態の地震計の動作について、振動検出回路1aの動作を中心に説明する。
前述したように、振動センサ2は、抵抗21と抵抗22の接続点および抵抗23と抵抗24の接続点の電圧を出力信号とし、振動を検出すると、抵抗21ないし24の各抵抗値の変化によって各出力信号が変動し、出力間に電位差が生じる。以下、振動センサ2の抵抗21と抵抗22および抵抗23と抵抗24の接続点からの出力信号を、それぞれ第1および第2振動信号と称することとすると、振動センサ2が検出した振動は、第1または第2振動信号の変動として計測することができると同時に、第1および第2振動信号間の差としても計測することができる。
【0017】
第1および第2振動信号は、それぞれ抵抗32および33を介して演算増幅器31の反転入力および非反転入力に入力される。本実施形態において、演算増幅器31に接続される抵抗32ないし34は、例えば、抵抗32および33の抵抗値が等しく、抵抗34の抵抗値が振動センサ2の抵抗24の抵抗値に等しい条件で用いられ、この場合、増幅回路4は、第1および第2振動信号間の差を、抵抗32の抵抗値に対する抵抗34の抵抗値の比によって設定される電圧増幅率で増幅して出力する。
【0018】
LPF5は、増幅回路4の出力信号に含まれる所定の周波数以上の成分を減衰させ、当該所定の周波数未満の成分を通過させる。本実施形態において、一例として、抵抗36の抵抗値を16kΩとし、コンデンサ37の容量値を1μFとすると、LPF5は、増幅回路4の出力信号に含まれる約10Hz以上の成分を3dB以上減衰させ、主として約10Hz未満の成分を通過させる。以下、このようにLPF5が増幅回路4の出力信号に含まれる所定の周波数以上の成分を3dB以上減衰させる場合の、当該所定の周波数を遮断周波数と称する。
【0019】
このようにして、増幅回路4およびLPF5は、全体として、第1および第2振動信号に含まれる遮断周波数未満の成分間の差を増幅して出力する。以下、第1および第2振動信号に含まれる遮断周波数未満の成分を、それぞれ第1および第2低周波振動成分と称し、また、第1および第2振動信号に含まれる遮断周波数以上の成分を、それぞれ第1および第2高周波振動成分と称することとすると、振動センサ2が検出した遮断周波数未満の振動は、増幅された第1および第2低周波振動成分間の差として、LPF5の出力信号に表れる。
【0020】
第1振動信号は、容量結合のためのコンデンサ42を介してバイポーラトランジスタ41のベースに入力されるが、コンデンサ42によって直流成分が遮断されるため、バイポーラトランジスタ41を含むエミッタ接地増幅回路によって増幅される第1振動信号には、第1振動信号の変動分のみが含まれる。また、容量結合のためのコンデンサ42は、抵抗47とともに、HPF(High-Pass Filter:高域通過フィルタ)として機能するが、当該HPFが遮断周波数以上の成分を通過させ、増幅回路6aが第1振動信号に含まれる遮断周波数以上の成分を少なくとも増幅して出力するように、コンデンサ42の容量値および抵抗47の抵抗値を設定する必要がある。この場合、振動センサ2が検出した遮断周波数以上の振動は、増幅された第1高周波振動成分として、増幅回路6aの出力信号に表れる。
【0021】
増幅回路6aの出力信号は、抵抗52を介して演算増幅器51の反転入力に入力され、LPF5の出力信号は、演算増幅器51の非反転入力に入力される。この場合、増幅回路7は、LPF5の出力信号を基準電圧として、増幅回路6aの出力信号を、抵抗52の抵抗値に対する抵抗53の抵抗値の比によって設定される電圧増幅率で増幅し、さらに基準電圧分のオフセットをかけて出力する。本実施形態において、当該オフセットを無視することができる程度に増幅回路7の電圧増幅率を大きくすると、増幅回路7は、近似的に、第1および第2低周波振動成分間の差と、第1高周波振動成分との合成信号を増幅して出力する。
【0022】
このようにして、振動検出回路1aは、振動センサ2が検出した遮断周波数未満の振動を示す第1および第2低周波振動成分間の差と、遮断周波数以上の振動を示す第1高周波振動成分をいずれも含み、増幅した信号を、処理回路3に出力する。
【0023】
<第2実施形態>
以下、図2を参照して、本発明の第2の実施形態における振動検出回路を用いた地震計の構成について説明する。
【0024】
図2に示されている地震計は、第1実施形態の振動検出回路1aが振動検出回路1bとなっている以外は、第1実施形態の地震計と同様の構成となっている。また、振動検出回路1bは、第1実施形態の増幅回路6aが増幅回路6bとなっている以外は、第1実施形態の振動検出回路1aと同様の構成となっている。
【0025】
増幅回路6bは、本実施形態では、例えばFET(Field-Effect Transistor:電界効果トランジスタ)45、コンデンサ42、43、および抵抗44、47を含んで構成される、ソース接地増幅回路となっている。FET45のゲート入力は、容量結合のためのコンデンサ42を介して、振動センサ2の抵抗21と抵抗22の接続点に接続されるとともに、抵抗47を介して例えば接地され、ドレイン出力は、抵抗44を介して電源VDDに接続されるとともに、容量結合のためのコンデンサ43を介して、増幅回路6bの出力として増幅回路7に接続されている。なお、増幅回路6bにおいて、コンデンサ42および抵抗47は、FET45のバイアスを設定するためのバイアス回路の一部であるが、バイアス回路の構成についての詳細な説明は省略するものとする。
【0026】
次に、本実施形態の地震計の動作について、増幅回路6bの動作を中心に説明する。
第1実施形態の増幅回路6aの場合と同様に、振動センサ2が検出した遮断周波数以上の振動は、増幅された第1高周波振動成分として、増幅回路6bの出力信号に表れる。本実施形態においては、バイポーラトランジスタ41の代わりにFET45を用いることにより、増幅回路6bの入力インピーダンスを増幅回路6aよりも高くすることができ、増幅回路6bが接続されていることによる振動センサ2および増幅回路4に対する影響を小さくすることができる。なお、FET45としては、MOSFET(Metal-Oxide Semiconductor FET:金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)よりも、さらに入力インピーダンスを高くすることができるJFET(Junction FET:接合型電界効果トランジスタ)を用いるのが望ましい。
【0027】
<第3実施形態>
以下、図3を参照して、本発明の第3の実施形態における振動検出回路を用いた地震計の構成について説明する。
【0028】
図3に示されている地震計は、第2実施形態の振動検出回路1bが振動検出回路1cとなっている以外は、第2実施形態の地震計と同様の構成となっている。また、振動検出回路1cは、第2実施形態の増幅回路6bが増幅回路6cとなっている以外は、第2実施形態の振動検出回路1bと同様の構成となっている。さらに、第2実施形態の増幅回路6bは、振動センサ2の抵抗21と抵抗22の接続点に直接接続されているのに対して、増幅回路6cは、コイル46を介して接続されている。
【0029】
次に、本実施形態の地震計の動作について、増幅回路6cの動作を中心に説明する。
第2実施形態の増幅回路6bの場合と同様に、振動センサ2が検出した遮断周波数以上の振動は、増幅された第1高周波振動成分として、増幅回路6cの出力信号に表れる。本実施形態において、コンデンサ42とコイル46が直列に接続された直列共振回路は、抵抗47とともに、BPF(Band-Pass Filter:帯域通過フィルタ)として機能し、振動センサ2の機械的共振によって第1振動信号に生じるピークを減衰させることができる。本実施形態において、一例として、コイル46のインダクタンスを160mHとし、コンデンサ42の容量値を0.16μFとし、抵抗47の抵抗値を100kΩとし、そして振動センサ2の機械的共振のピークが200kHzにあるものとすると、当該BPFは、第1振動信号に含まれる約10Hz未満の成分および約100kHz以上の成分を3dB以上減衰させ、200kHzをピークとする振動センサ2の機械的共振による増幅回路6cの出力信号への影響を抑制することができる。
【0030】
なお、本実施形態において、コンデンサ42とコイル46の接続順を入れ替えてもよい。この場合でも、増幅回路6cの動作は変わらない。
【0031】
<第4実施形態>
以下、図4を参照して、本発明の第4の実施形態における振動検出回路を用いた地震計の構成について説明する。
【0032】
図4に示されている地震計は、第1実施形態の振動検出回路1aが振動検出回路1dとなっている以外は、第1実施形態の地震計と同様の構成となっている。また、第1実施形態の振動検出回路1aに対して、振動検出回路1dには、増幅回路8および9が追加されている。さらに、第1実施形態の振動検出回路1aにおいて、増幅回路6aの出力が増幅回路7に直接接続されているのに対して、振動検出回路1dにおいては、増幅回路6aの出力が増幅回路9を介して増幅回路7に接続されている。
【0033】
増幅回路8は、増幅回路6aと同様の構成となっており、バイポーラトランジスタ61のベース入力は、容量結合のためのコンデンサ62を介して、振動センサ2の抵抗23と抵抗24の接続点に接続されるとともに、抵抗67を介して例えば接地され、コレクタ出力は、抵抗64を介して電源VDDに接続されるとともに、容量結合のためのコンデンサ63を介して、増幅回路8の出力として増幅回路9に接続されている。
【0034】
増幅回路9は、本実施形態では、例えば演算増幅器71、抵抗72ないし75、およびコンデンサ76で構成される、差動増幅回路となっている。演算増幅器71の反転入力は、抵抗72を介して増幅回路6aの出力に接続され、非反転入力は、抵抗73を介して増幅回路8の出力に接続されるとともに、抵抗75を介して例えば接地されている。また、演算増幅器71の出力は、帰還抵抗である抵抗74を介して反転入力に接続されるとともに、容量結合のためのコンデンサ76を介して、増幅回路9の出力として増幅回路7に接続されている。
【0035】
次に、本実施形態の地震計の動作について、増幅回路6a、7、8、および9の動作を中心に説明する。
本実施形態においては、振動センサ2が検出した遮断周波数以上の振動は、増幅された第1および第2高周波振動成分として、それぞれ増幅回路6aおよび8の出力信号に表れる。
【0036】
増幅回路6aおよび8の出力信号は、それぞれ抵抗72および73を介して演算増幅器71の反転入力および非反転入力に入力される。本実施形態において、演算増幅器71に接続される抵抗72ないし75は、例えば、抵抗72および73の抵抗値が等しく、抵抗74および75の抵抗値が等しい条件で用いられ、この場合、増幅回路9は、増幅回路6aおよび8の出力信号間の差を、抵抗72の抵抗値に対する抵抗74の抵抗値の比によって設定される電圧増幅率で増幅して出力する。
【0037】
本実施形態において、増幅回路6aおよび8は同様の構成となっているため、増幅回路6aおよび8の電圧増幅率が等しいものとすると、増幅回路6a、8、および9は、全体として、第1および第2高周波振動成分間の差を増幅して出力する。
【0038】
増幅回路9の出力信号は、抵抗52を介して演算増幅器51の反転入力に入力され、LPF5の出力信号は、演算増幅器51の非反転入力に入力される。この場合、増幅回路7は、LPF5の出力信号を基準電圧として、増幅回路9の出力信号を、抵抗52の抵抗値に対する抵抗53の抵抗値の比によって設定される電圧増幅率で増幅し、さらに基準電圧分のオフセットをかけて出力する。本実施形態において、当該オフセットを無視することができる程度に増幅回路7の電圧増幅率を大きくすると、増幅回路7は、近似的に、第1および第2低周波振動成分間の差と、第1および第2高周波振動成分間の差との合成信号を増幅して出力する。
【0039】
このようにして、振動検出回路1dは、振動センサ2が検出した遮断周波数未満の振動を示す第1および第2低周波振動成分間の差と、遮断周波数以上の振動を示す第1および第2高周波振動成分間の差をいずれも含み、増幅した信号を、処理回路3に出力する。本実施形態においては、振動センサ2が検出した遮断周波数以上の振動は、増幅された第1および第2高周波振動成分間の差として、振動検出回路1dの出力信号に表れるため、振動センサ2の出力間の不均衡による影響を緩和することができる。
【0040】
前述したように、振動検出回路1aにおいて、振動センサ2が検出した遮断周波数未満の振動を示す増幅された第1および第2低周波振動成分間の差を基準電圧として、遮断周波数以上の振動を示す増幅された第1高周波振動成分を増幅することにより、振動検出の用途に要求される広帯域特性を有する増幅回路を、汎用的な素子を用いて比較的小規模な回路構成で実現することができる。
【0041】
また、振動検出回路1dに示したように、振動センサ2が検出した遮断周波数未満の振動を示す増幅された第1および第2低周波振動成分間の差を基準電圧として、遮断周波数以上の振動を示す増幅された第1および第2高周波振動成分間の差を増幅することにより、振動センサ2の出力間の不均衡による影響を緩和することができる。
【0042】
また、振動検出回路1bにおいて、増幅回路6bに示したように、第1高周波振動成分を増幅するための増幅回路を、ゲート入力がコンデンサ42によって容量結合されたFET45を含むソース接地増幅回路とすることにより、増幅回路6bが接続されていることによる振動センサ2および増幅回路4に対する影響を小さくすることができる。
【0043】
また、振動検出回路1dにおいて、第1および第2高周波振動成分を増幅するための増幅回路6aおよび8を、増幅回路6bと同様の構成とすることによって、振動検出回路1bと同様に、振動センサ2および増幅回路4に対する影響を小さくすることができる。
【0044】
また、振動検出回路1cにおいて、増幅回路6cに示したように、第1高周波振動成分を増幅するための増幅回路を、ゲート入力がコンデンサ42とコイル46による直列共振回路に接続されたFET45を含むソース接地増幅回路とすることにより、振動センサ2の機械的共振による増幅回路6cの出力信号への影響を抑制することができる。
【0045】
また、振動検出回路1dにおいて、第1および第2高周波振動成分を増幅するための増幅回路6aおよび8を、増幅回路6cと同様の構成とすることによって、振動検出回路1cと同様に、振動センサ2の機械的共振による影響を抑制することができる。
【0046】
また、図1に示したように、振動センサ2から出力される第1および第2振動信号を、振動検出回路1aにおいて増幅し、処理回路3に入力することにより、広帯域特性を有する増幅回路を用いた、地震計を実現することができる。
【0047】
また、図4に示したように、振動センサ2から出力される第1および第2振動信号を、振動検出回路1dにおいて増幅し、処理回路3に入力することにより、広帯域特性を有する増幅回路を用いた、地震計を実現することができる。
【0048】
なお、上記第1ないし第4実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0049】
上記第1実施形態では、バイポーラトランジスタ41のベース入力側にHPFを配置し、当該HPFを通過した第1振動信号をバイポーラトランジスタ41のベースに入力し、増幅することによって、増幅回路6aは、増幅された第1高周波振動成分を出力しているが、これに限定されるものではない。バイポーラトランジスタ41のコレクタ出力側にHPFを配置し、バイポーラトランジスタ41のコレクタから出力される増幅された第1振動信号を当該HPFに入力する構成としてもよい。同様に、上記第2実施形態の増幅回路6bにおいて、FET45のドレイン出力側にHPFを配置する構成としてもよく、上記第3実施形態の増幅回路6cにおいて、FET45のドレイン出力側にBPFを配置する構成としてもよい。
【0050】
上記第4実施形態では、増幅回路6aおよび8において、それぞれ第1および第2高周波振動成分が増幅されているが、これに限定されるものではない。第1および第2高周波振動成分を増幅する増幅回路は、増幅回路6bまたは6cと同様の構成としてもよい。
【0051】
上記実施形態では、演算増幅器31、51、および71の帰還抵抗である抵抗34、53、および74として固定抵抗器を用いたが、これに限定されるものではない。例えば、半固定抵抗器を用いることによって、増幅回路4、7、および9における電圧増幅率を調整することもできる。
【0052】
上記実施形態では、LPF5、増幅回路6aのHPF、増幅回路6bのHPF、増幅回路8のHPF、および増幅回路6cのBPFは、いずれも例えば抵抗、コンデンサ、およびコイルで構成される、アナログフィルタとなっているが、これに限定されるものではない。各アナログフィルタの代わりに、一例として図6に示すような構成のデジタルフィルタ11を用いてもよい。デジタルフィルタ11は、入力信号をアナログ・デジタル変換器12によりデジタル信号とし、デジタル・シグナル・プロセッサ13においてデジタル信号処理をすることによって必要な周波数成分を選別し、そしてデジタル・アナログ変換器14により再びアナログ信号として出力する。デジタルフィルタ11を用いることによって、信号対雑音比に優れた信号を処理回路3に入力することができる。また、地震計の周囲の温度変化や、振動センサ2のばらつき、および、上記実施形態における振動検出回路に用いられる部品のばらつきなどによって生じる信号のばらつきを、デジタルフィルタ11において調整することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1実施形態における振動検出回路を用いた地震計の構成を示す回路ブロック図である。
【図2】本発明の第2実施形態における振動検出回路を用いた地震計の構成を示す回路ブロック図である。
【図3】本発明の第3実施形態における振動検出回路を用いた地震計の構成を示す回路ブロック図である。
【図4】本発明の第4実施形態における振動検出回路を用いた地震計の構成を示す回路ブロック図である。
【図5】一般的な地震計の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第1ないし第4実施形態において、アナログフィルタの代わりに用いることのできるデジタルフィルタの構成の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0054】
1a、1b、1c、1d 振動検出回路
2 振動センサ
3 処理回路
4 増幅回路
5 LPF(低域通過フィルタ)
6a、6b、6c 増幅回路
7、8、9、10 増幅回路
11 デジタルフィルタ
12 アナログ・デジタル変換器
13 デジタル・シグナル・プロセッサ
14 デジタル・アナログ変換器
21、22、23、24 抵抗
32、33、34、36 抵抗
31、51、71 演算増幅器
37、42、43、62、63、76 コンデンサ
41、61 バイポーラトランジスタ
44、47、52、53 抵抗
45 FET(電界効果トランジスタ)
46 コイル
64、67 抵抗
72、73、74、75 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の振動が電位差として表れる、振動センサからの第1および第2の出力信号を差動増幅する第1の増幅回路と、
前記第1の増幅回路の出力信号に含まれる所定の周波数未満の成分を通過させる低域通過フィルタと、
前記第1の出力信号に含まれる前記所定の周波数以上の成分を少なくとも増幅する第2の増幅回路と、
前記低域通過フィルタの出力信号を基準電圧として、前記第2の増幅回路の出力信号を増幅する第3の増幅回路と、
を有することを特徴とする振動検出回路。
【請求項2】
物体の振動が電位差として表れる、振動センサからの第1および第2の出力信号を差動増幅する第1の増幅回路と、
前記第1の増幅回路の出力信号に含まれる所定の周波数未満の成分を通過させる低域通過フィルタと、
前記第1の出力信号に含まれる前記所定の周波数以上の成分を少なくとも増幅する第2の増幅回路と、
前記第2の出力信号に含まれる前記所定の周波数以上の成分を少なくとも増幅する第4の増幅回路と、
前記第2および第4の増幅回路の出力信号を差動増幅する第5の増幅回路と、
前記低域通過フィルタの出力信号を基準電圧として、前記第5の増幅回路の出力信号を増幅する第3の増幅回路と、
を有することを特徴とする振動検出回路。
【請求項3】
前記第2の増幅回路は、ゲート入力が容量結合された電界効果トランジスタを含むことを特徴とする請求項1に記載の振動検出回路。
【請求項4】
前記第2の増幅回路は、ゲート入力が容量結合された第1の電界効果トランジスタを含み、
前記第4の増幅回路は、ゲート入力が容量結合された第2の電界効果トランジスタを含むことを特徴とする請求項2に記載の振動検出回路。
【請求項5】
前記電界効果トランジスタのゲート入力またはドレイン出力に接続され、前記振動センサの機械的共振によって前記第1の出力信号に生じるピークを減衰させるための帯域通過フィルタをさらに有することを特徴とする請求項3に記載の振動検出回路。
【請求項6】
前記第1の電界効果トランジスタのゲート入力またはドレイン出力に接続され、前記振動センサの機械的共振によって前記第1の出力信号に生じるピークを減衰させるための第1の帯域通過フィルタと、
前記第2の電界効果トランジスタのゲート入力またはドレイン出力に接続され、前記振動センサの機械的共振によって前記第2の出力信号に生じるピークを減衰させるための第2の帯域通過フィルタと、
をさらに有することを特徴とする請求項4に記載の振動検出回路。
【請求項7】
物体の振動を検出し、第1および第2の出力信号の間の電位差として示す振動センサと、
前記第1および第2の出力信号を差動増幅する第1の増幅回路と、
前記第1の増幅回路の出力信号に含まれる所定の周波数未満の成分を通過させる低域通過フィルタと、
前記第1の出力信号に含まれる前記所定の周波数以上の成分を少なくとも増幅する第2の増幅回路と、
前記低域通過フィルタの出力信号を基準電圧として、前記第2の増幅回路の出力信号を増幅する第3の増幅回路と、
前記第3の増幅回路の出力信号を処理する処理回路と、
を有することを特徴とする地震計。
【請求項8】
物体の振動を検出し、第1および第2の出力信号の間の電位差として示す振動センサと、
前記第1および第2の出力信号を差動増幅する第1の増幅回路と、
前記第1の増幅回路の出力信号に含まれる所定の周波数未満の成分を通過させる低域通過フィルタと、
前記第1の出力信号に含まれる前記所定の周波数以上の成分を少なくとも増幅する第2の増幅回路と、
前記第2の出力信号に含まれる前記所定の周波数以上の成分を少なくとも増幅する第4の増幅回路と、
前記第2および第4の増幅回路の出力信号を加算増幅または差動増幅する第5の増幅回路と、
前記低域通過フィルタの出力信号を基準電圧として、前記第5の増幅回路の出力信号を増幅する第3の増幅回路と、
前記第3の増幅回路の出力信号を処理する処理回路と、
を有することを特徴とする地震計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−216449(P2009−216449A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58127(P2008−58127)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】