説明

振動検出装置

【課題】光学的にディジタル振動検出を行う振動検出装置において装置の小型化を図ることが可能な振動検出装置を提供する。
【解決手段】光源10からのレーザ光Loutを、偏光ビームスプリッタ130によって2つの光路(第1および第2の光路)に分離して進行させる。この際、第1の光路(反射光路)においてλ/4板161を介して振動膜151により反射されたS波成分s1(反射光)と、第2の光路(参照光路)においてλ/4板162を介して反射板152により反射されたP波成分p1(参照光)とを、互いに干渉させて干渉縞を形成する。そしてこの干渉縞に基づき、振動膜151の振動を量子化して検出する。従来と比べてよりコンパクトな構成によって、振動膜151の振動が光学的にディジタル検出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動体の変位を光学的に検出する振動検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、SACD(Super Audio Compact Disc)や24bit−96kHzのサンプリングを利用した録音方式等が用いられ、高音質化が主流になりつつある。このような流れの中、従来のアナログ方式のマイクロホン装置は、特に20kHz以上の高域の音声の収録に限界があるため、上記録音方式の特徴である高域の再生を生かしてコンテンツを収録しようとする場合に、ボトルネックになっていた。
【0003】
また、ダイナミックレンジに関しても、上記録音方式の特徴である24bitビット録音により可能な144dBまで及ばず、広範なダイナミックレンジを十分に生かしきれていなかった。
【0004】
さらに、録音現場においては、従来のアナログ方式のマイクロホン装置では、アナログケーブルでの長距離の引き回しに起因してノイズが増加してしまったり、コンデンサマイクに対してミキシングコンソールからファンタム電源を供給しなければならず、録音・制作システムにおける全ディジタル化の障害となっていた。
【0005】
そこで、近年、ディジタル方式のマイクロホン装置がいくつか提案されている(例えば、特許文献1,2)。また、これらに関連する技術として、例えば特許文献3に開示されたような変位検出装置が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−308998号公報
【特許文献2】特開平11−178099号公報
【特許文献3】特開2003−322552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1では、レーザ光源とマッハ・ツェンダ干渉計とを用いて振動板の振動を検出することにより、ディジタルの音声信号を出力するようになっている。
【0008】
一方、上記特許文献2では、レーザ光源および振動板を含むΔΣ(デルタ・シグマ)変調器を構成するようにしている。よって、ΔΣ変調器の作用により、簡易な構成で1bitのディジタル音声信号を得ることができると共に、ノイズシェービング効果を利用して可聴帯域内の音声信号の低ノイズ化を図ることができると考えられる。
【0009】
ところが、これら特許文献1,2に記載されたものを含め、従来のレーザ光を利用したディジタル方式のマイクロホン装置(より一般的には、振動検出装置)は、いずれも構成が複雑なものであることから、装置の小型化を図るのが困難であり改善の余地があった。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、光学的にディジタル振動検出を行う振動検出装置において装置の小型化を図ることが可能な振動検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の振動検出装置は、レーザ光を発する光源と、干渉計と、検出手段とを備えたものである。ここで、上記干渉計は、レーザ光を反射可能な振動体および反射体と、偏光ビームスプリッタと、この偏光ビームスプリッタと振動板との間に配設された第1の1/4波長板と、偏光ビームスプリッタと反射体との間に配設された第2の1/4波長板とを含んで構成され、光源から発せられたレーザ光を偏光ビームスプリッタによって第1および第2の光路に分離して進行させると共に、第1の光路において振動体により反射された反射光と第2の光路において反射体により反射された参照光とを互いに干渉させて干渉縞を形成するものである。また、上記検出手段は、形成された干渉縞に基づき振動体の振動を量子化して検出するものである。
【0012】
本発明の振動検出装置では、光源から発せられたレーザ光が、干渉計に含まれる偏光ビームスプリッタによって2つの光路(第1および第2の光路)に分離されて進行する。この際、第1の光路(反射光路)では、反射光が第1の1/4波長板を介して振動体により反射され、第2の光路(参照光路)では、参照光が第2の1/4板を介して反射体により反射され、これら反射光と参照光とが互いに干渉して干渉縞が形成される。そしてこの干渉縞に基づき、振動体の振動が量子化されて検出される。また、このような干渉計の構成により、従来と比べて装置構成がよりコンパクトとなる。
【0013】
本発明の振動検出装置では、上記反射光の偏光方向と参照光の偏光方向とが互いに直交するものである場合には、上記干渉計が偏光ビームスプリッタと検出手段との間に第1の偏光板を有するようにするのが好ましい。ここで、上記第1の偏光板は、反射光の偏光方向および参照光の偏光方向からそれぞれ45度傾いた方向に偏光軸が設定されたものである。このように構成した場合、第1の偏光板の作用によって互いに直交する偏光方向の光同士の干渉が可能となり、これにより干渉縞が形成される。
【0014】
本発明の振動検出装置では、上記検出手段が、4つの光電変換素子と、演算手段と、図形生成手段と、カウンタとを有するようにするのが好ましい。ここで、上記4つの光電変換素子は、干渉縞を互いに位相が90度ずれた状態で検出するものである。また、上記演算手段は、4つの光電変換素子からの出力信号のうちの互いに位相が180度異なる出力信号同士の差分をとって2つの差分信号を生成するものである。また、上記図形生成手段は、2つの差分信号をそれぞれ信号点とみなして平面上に円状または円弧状のリサージュ図形を生成するものである。また、上記カウンタは、生成されたリサージュ図形上において、信号点が所定の基準点を通過する回数をカウントするものである。このように構成した場合、カウンタによってリサージュ図形上での信号点の通過回数がカウントされることで、振動体の振動の変位が量子化されて検出される。また、互いに位相が90度異なる4つの光電変換素子からの4つの出力信号のうちの互いに位相が180度異なる出力信号同士の差分から2つの差分信号が生成されると共にこれら2つの差分信号に基づいてリサージュ図形が生成されるため、光電変換素子からの出力信号にDC(直流)オフセット成分が生じていた場合でもこのDCオフセット成分取り除かれ、これにより振動体の振動の変位を安定して検出することが可能となる。
【0015】
この場合において、上記4つの光電変換素子がそれぞれ単一の基板面上に形成されると共に、上記干渉計が、光分岐部と、第3の1/4波長板と、第2の偏光板とを有するようにするのがより好ましい。ここで、上記光分岐部は、基板面の上方において第1および第2の光路のうちの同一光軸上の光路部分に沿って延在すると共に、この光路部分を進行する反射光および参照光をそれぞれ4つに等分して4つの分岐光を生成しつつ光電変換素子の方向へと導くものである。また、上記第3の1/4波長板は、光分岐部の延在面と基板面との間において、各々に対し対向配置されたものである。また、上記第2の偏光板は、第3の1/4波長板の形成面と基板面との間において各々に対して対向配置されると共に、第3の1/4波長板を介して入射した4つの分岐光の偏光方向が互いに45度ずつ異なることとなるように偏光軸が設定されたものである。このように構成した場合、4つの光電変換素子が形成された基板面の上方において、第1および第2の光路のうちの同一光軸上の光路部分を進行する反射光および参照光が、光分岐部によってそれぞれ4つに等分されて4つの分岐光となり、光電変換素子の方向(基板面の方向)へと導かれる。そしてこれら4つの分岐光は、第3の1/4波長板を通過してそれぞれ円偏光となったのち、第2の偏光板を通過することで各々の偏光方向が互いに45度ずつ異なるようになり、これにより4つの光電変換素子において、干渉縞の位相が互いに90度ずれた状態で検出される。また、光電変換素子が形成された基板面の上方に第2の偏光板、第3の1/4波長板および光分岐部がこの順に積層された積層構造であるため、干渉計の構成がコンパクトとなり、装置構成がより小型化する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の振動検出装置によれば、光源からのレーザ光を偏光ビームスプリッタによって2つの光路(第1および第2の光路)に分離して進行させると共に、第1の光路(反射光路)において第1の1/4波長板を介して振動体により反射された反射光と、第2の光路(参照光路)において第2の1/4板を介して反射体により反射された参照光とを互いに干渉させて干渉縞を形成し、この干渉縞に基づき振動体の振動を量子化して検出するようにしたので、従来と比べてよりコンパクトな構成によって、振動体の振動を光学的にディジタル検出することができる。よって、光学的にディジタル振動検出を行う振動検出装置において装置の小型化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る振動検出装置(光学式のマイクロホン装置1)の構成を表すものである。このマイクロホン装置1は、音波Swに応じて振動する振動膜(後述する振動膜151)を利用して2値化された音声信号Soutを出力するものであり、レーザ光源10と、偏光板110と、振動膜151、反射板(後述する反射板152)、偏光ビームスプリッタ(後述する偏光ビームスプリッタ130)および2つのλ/4板(後述するλ/4板161,162)を含むマイケルソン干渉計に準ずる構成の干渉計と、ディジタル信号である出力信号(音声信号Sout)を出力する検出部とを備えている。
【0019】
レーザ光源10はレーザ光Loutを射出するものであり、例えばマルチモード(ファブリペロー型)のレーザ光源(例えば、端面発光型の半導体レーザ光源)や、シングルモードのレーザ光源(例えば、面発光型の半導体レーザ光源やDFB(Distributed FeedBack)レーザなど)などにより構成される。
【0020】
偏光板110は、レーザ光源10から射出されたレーザ光Loutの直線偏光の方向を変えるためのものである。具体的には、この偏光板110を通過したレーザ光Loutの直線偏光の方向が後述する偏光ビームスプリッタ130の有する2つの偏光軸に対してそれぞれ45度ずつ異なる方向となるように、偏光軸が設定されている。なお、レーザ光源10自体を回転させることで射出されるレーザ光Loutの直線偏光の方向をそのような方向に設定可能なのであれば、偏光板110を必ずしも設けなくともよい。ただし、本実施の形態のように偏光板110を設けた場合には、レーザ光源10自体の回転位置の精度によらず、偏光ビームスプリッタ130への入射光の直線偏光の方向を上記のように設定することができる。
【0021】
<干渉計の構成>
干渉計は、偏光ビームスプリッタ130と、振動膜151と、反射板152と、3つのλ/4板161〜163と、ビームスプリッタ120と、2つの偏光板111,112とから構成されている。
【0022】
偏光ビームスプリッタ130は、レーザ光源10から発せられ偏光板110を通過したレーザ光Loutを、2つの光路、すなわち振動膜151側の反射光路(第1の光路)と、反射板152側の参照光路(第2の光路)とに分離して進行させるためのものである。具体的には、詳細は後述するが、この偏光ビームスプリッタ130では、反射光路側にレーザ光のP偏光成分p0が、参照光路側にレーザ光のS偏光成分s0がそれぞれ進行するように設定されている。なお、前述のように、この偏光ビームスプリッタ130へ入射するレーザ光Loutの直線偏光の方向は、偏光ビームスプリッタ130の有する2つの偏光軸(S偏光軸およびP偏光軸)に対してそれぞれ45度ずつ異なる方向となるように設定されているため、入射するレーザ光Loutは、P偏光成分p0とS偏光成分s0とでほぼ50%ずつに分離されるようになっている。
【0023】
振動膜151は音波Swに応じて変位するものであり、例えばコンデンサマイクに使用されるものと同様に、表面が金蒸着された振動膜などにより構成される。この振動膜151は、レーザ光Loutをほぼ100%の反射率で反射可能となっている。反射板152は、参照光であるレーザ光Loutをほぼ100%の反射率で反射可能なように構成されたものである。
【0024】
λ/4板161は、偏光ビームスプリッタ130と振動板151との間の光路上に配設され、λ/4板162は、偏光ビームスプリッタ130と反射板152との間の光路上に配設されている。
【0025】
ビームスプリッタ120は、ビームスプリッタ130を介して入射するレーザ光LoutのS偏光成分s1(反射光)およびP偏光成分p1(参照光)をそれぞれ、偏光板111側の光路と偏光板112側の光路とに約50%ずつに分離して進行させるものである。
【0026】
偏光板111,112はそれぞれ、入射するS偏光成分s1(反射光)の偏光方向およびP偏光成分p1(参照光)の偏光方向からそれぞれ45度傾いた方向に偏光軸を有する偏光板である。このような構成により詳細は後述するが、これら偏光板111,112において、S偏光成分s1とP偏光成分p1とが互いに干渉して干渉縞が形成されるようになっている。なお、λ/4板163は、ビームスプリッタ120と偏光板111との間の光路上に配設されている。
【0027】
このような構成により本実施の形態の干渉計では、レーザ光源10から発せられたレーザ光Loutが2つの光路(第1および第2の光路)に分離されて進行する。具体的には、偏光ビームスプリッタ130、λ/4板161、振動膜151、λ/4板161、偏光ビームスプリッタ130、ビームスプリッタ120、偏光板111,112およびλ/4板163を通る第1の光路(反射光路)と、偏光ビームスプリッタ130、λ/4板162、反射板152、λ/4板162、偏光ビームスプリッタ130、ビームスプリッタ120、偏光板111,112およびλ/4板163を通る第2の光路(参照光路)とに分離されて進行する。この際、反射光路においてλ/4板161を介して振動膜151により反射された光(S偏光成分s1、反射光)と、参照光路においてλ/4板162を介して反射板152により反射された光(P偏光成分p1、参照光)とが偏光板111,112において互いに干渉し、干渉縞が形成されるようになっている。
【0028】
<検出部の構成>
検出部は、2つの光電変換素子171,172と、ディジタルカウント部181とから構成されている。
【0029】
光電変換素子171,172は、偏光板111,112上に形成された干渉縞を検出して光電変換し、それぞれ出力信号Sx,Syを出力するものである。これら光電変換素子171,172は、例えばPD(Photo Diode)などにより構成される。
【0030】
ディジタルカウント部181は、光電変換素子171,172からそれぞれ出力される出力信号Sx,Syを、例えば図2に示したようなリサージュ図形を用いて後述する所定のカウントタイミングでカウントすることで量子化し、ディジタル信号である出力信号(音声信号Sout)を出力するものである。なお、このようなリサージュ図形を用いたディジタルカウント方法については、後ほど詳述する。
【0031】
次に、図3を参照して、本実施の形態のマイクロホン装置1を単一の基体上で形成した場合の構成例について説明する。ここで図3は、図1に示したマイクロホン装置1を単一の基体100上で形成した場合の平面構成を表したものである。
【0032】
図3に示したマイクロホン装置1では、アルミダイキャスト等のベース(基体100A)上に、レーザ光源10、このレーザ光Loutを集光するためのコリメータレンズ10A、偏光ビームスプリッタ130、振動膜151、この振動膜151を両端から支持する支持部151A、反射板152、偏光板111,112、ビームスプリッタ120、反射ミラーM1、λ/4板161〜163および光電変換素子171,172がそれぞれ配設されている。このうち、偏光ビームスプリッタ130、反射板152、λ/4板161,162および反射ミラーM1が互いに張り合わせられ一体化して配置されると共に、ビームスプリッタ120およびλ/4板163も互いに張り合わせられ一体化して配置されている。なお、図3のマイクロホン装置1には偏光板110が設けられていないが、この偏光板110を設けるようにしてもよい。このようにディスクリート光学部材を用いて構成されることで、図3に示したマイクロホン装置1では、小型(コンパクト)かつ堅固な構成となっている。なお、この場合の装置の幅L1,W1(図3参照)としては、例えば、L1=20mm程度以下、W1=12mm程度以下にすることが可能である。
【0033】
次に、図4を参照して、本実施の形態のマイクロホン装置1を半導体基板上に集積化した場合の構成例について説明する。ここで図4は、図1に示したマイクロホン装置1をSi(シリコン)基体100B上に集積化した場合の断面構成を表したものである。
【0034】
図4に示したマイクロホン装置1では、シリコン(Si)基板100B内に、光電変換素子171,172および上記ディジタルカウント部181として機能する演算用IC(Integrated Circuit)180が形成されると共に、Si基板100B上にこの順に形成されたSi基板100Cおよび支持部10Dの上に、レーザ光源である端面発光型レーザ光源10Cが形成されている。また、この端面発光型レーザ光源10Cの前方には、射出されたレーザ光Loutを集光するためのコリメータレンズ10AがSi基板100C上で支持部10Eによって支持されると共に、これらコリメータレンズ10Aおよび支持部10Eと偏光板110とが互いに張り合わせられ一体化して配置されている。また、光電変換素子171,172上には、偏光板110A、ビームスプリッタ120、反射ミラーM2およびλ/4板163、偏光ビームスプリッタ130、λ/4板162および反射板152、ならびにλ/4板161がこの順に互いに張り合わせられ一体化して配置されている。さらに、端面発光型レーザ光源10C、コリメータレンズ10Aおよびλ/4板161の上方には、支持部(図示せず)によって支持された振動膜151が配置されている。なお、図4のマイクロホン装置1にも偏光板110が設けられていないが、この偏光板110を設けるようにしてもよい。このように半導体基板上に集積化することで、図4に示したマイクロホン装置1では、図3に示したものと比べてもより小型(コンパクト)な構成となっている。なお、この場合の装置の幅L2(図4参照)としては、例えば、L2=5mm程度以下(断面の奥行き方向の幅(図示せず)も、5mm程度以下)にすることが可能である。
【0035】
ここで、振動膜151が本発明における「振動板」の一具体例に対応し、反射板152が本発明における「反射体」の一具体例に対応する。また、偏光ビームスプリッタ130が本発明における「偏光ビームスプリッタ」の一具体例に対応し、λ/4板161が本発明における「第1の1/4波長板」の一具体例に対応し、λ/4板162が本発明における「第2の1/4波長板」の一具体例に対応する。また、光電変換素子171,172が本発明における「2つの光電変換素子」の一具体例に対応し、これら光電変換素子171,172およびディジタルカウント部181が本発明における「検出手段」の一具体例に対応し、ディジタルカウント部181が本発明における「図形生成手段」および「カウンタ」の一具体例に対応する。また、偏光板111,112が本発明における「第1の偏光板」の一具体例に対応する。
【0036】
次に、図1および図2を参照して、本実施の形態のマイクロホン装置1の動作について詳細に説明する。
【0037】
このマイクロホン装置1では、図1に示したように、レーザ光源10からレーザ光Loutが射出されて偏光板110を通過すると、このレーザ光Loutの直線偏光の方向が変更され、偏光ビームスプリッタ130の有する2つの偏光軸(S偏光軸およびP偏光軸)に対してそれぞれ45度ずつ異なる方向となる。
【0038】
次に、偏光板110を通過したレーザ光Loutは、偏光ビームスプリッタ130により、振動膜151側の反射光路(第1の光路)と、反射板152側の参照光路(第2の光路)とに約50%ずつ分離され進行する。これにより、レーザ光Loutは、反射光路を進行するP偏光成分p0と、参照光路を進行するS偏光成分s0(参照光)とに分離される。すなわち、偏光ビームスプリッタ130では、S偏光成分の光が反射されると共に、P偏光成分の光が透過するようになっている。
【0039】
ここで、P偏光成分p0は、λ/4板161を通過すると直線偏光から円偏光となり、その後振動膜151で反射されると逆向きの円偏光となり、再びλ/4板161を通過することで、S偏光成分s1(反射光)に変換される。そしてこのS偏光成分s1は上記のように偏光ビームスプリッタ130において反射されるため、反射光路上をビームスプリッタ120の方向へ進行する。一方、参照光であるS偏光成分s0は、λ/4板162を通過すると直線偏光から円偏光となり、その後反射板152で反射されると逆向きの円偏光となり、再びλ/4板162を通過することで、P偏光成分p1に変換される。そしてこのP偏光成分p1は上記のように偏光ビームスプリッタ130を透過するため、参照光路上をビームスプリッタ120の方向へ進行する。なお、この際、同じ光路(反射光路および参照光路)を進行するS偏光成分s1およびP偏光成分p1は、互いに偏光方向が90度異なるため、干渉し合うことはない。
【0040】
次に、反射光路および参照光路を進行するS偏光成分s1およびP偏光成分p1はそれぞれ、ビームスプリッタ120により、偏光板111側の光路と偏光板112側の光路とに約50%ずつに分離されて進行し、偏光板111,112へそれぞれ到達する。その際、偏光板111側の光路では途中にλ/4板163が挿入配置されているため、振動板111へ到達したS偏光成分s1およびP偏光成分p1と、振動板112へ到達したS偏光成分s1およびP偏光成分p1とでは、位相が互いに90度異なることになる。そして偏光板111,112はそれぞれ、S偏光成分s1の偏光方向およびP偏光成分p1の偏光方向からそれぞれ45度傾いた方向に偏光軸を有するため、これらS偏光成分s1およびP偏光成分p1の位相が互いに90度異なっている本実施の形態の場合でも、偏光板111,112においてS偏光成分s1と参照光のP偏光成分p1とが互いに干渉し合い、干渉縞が形成される。
【0041】
次に、偏光板111,112上に形成された干渉縞は、それぞれ光電変換素子171,172により検出される。ここで、上記のように振動板111へ到達したS偏光成分s1およびP偏光成分p1と振動板112へ到達したS偏光成分s1およびP偏光成分p1とでは位相が互いに90度異なるため、光電変換素子171,172では互いに位相が90度ずれた状態で干渉縞が検出されることになる。そして光電変換素子171で検出された干渉縞は電気信号に変換され、出力信号Sxとして出力される一方、光電変換素子172で検出された干渉縞も電気信号に変換され、出力信号Syとして出力される。
【0042】
次に、ディジタルカウント部181では、光電変換素子171,172からの出力信号Sx,Syがそれぞれ、X信号およびY信号とみなされ、例えば図2に示したような円状または円弧状のリサージュ図形が生成される。具体的には、まず、(X,Y)信号による干渉縞の強度の中央値を中心点C(CX,CY)として、以下の(1),(2)式の演算を行うことにより、(X,Y)信号が(x,y)信号に変換される。
x=X−CX …(1)
y=Y−CY …(2)
【0043】
すると、上記(1),(2)式の演算により、信号点(x,y)の動きから、図2に示したように中心点Cを中心とする円周上を運動するリサージュ図形が得られる。このとき、光電変換素子171,172で検出された検知ポイント(例えば、図中の信号点P0)はこの円周上の1点であり、振動膜151の変位に従って円周上を変位することになる。したがって、このような信号点P0が所定の基準点(例えば、x軸およびy軸上の4つの基準点Pa〜Pd)を通過する回数をカウントすれば、干渉縞の強度が一義的に決まるため、振動膜151の変位をディジタルで検知したこととなり、そのカウントされた回数が角度αの情報であるディジタル信号の音声信号Soutとして出力される。なお、このように4つの基準点Pa〜Pdを基準点としてカウントした場合、干渉縞が90度(1/4波長)変動する度にカウントすることを意味することになる。
【0044】
以上のように本実施の形態では、光源10からのレーザ光Loutを偏光ビームスプリッタ130によって2つの光路(第1および第2の光路)に分離して進行させると共に、第1の光路(反射光路)においてλ/4板161を介して振動膜151により反射されたS波成分s1(反射光)と、第2の光路(参照光路)においてλ/4板162を介して反射板152により反射されたP波成分p1(参照光)とを互いに干渉させて干渉縞を形成し、この干渉縞に基づき振動膜151の振動を量子化して検出するようにしたので、従来と比べてよりコンパクトな構成によって、振動膜151の振動を光学的にディジタル検出することができる。具体的には、干渉計としてマイケルソン干渉計に準ずる構成の干渉計を用いるようにしたので、小型かつ簡易な構成で実現することができる。よって、光学的にディジタル振動検出を行う振動検出装置(マイクロホン装置)において装置の小型化を図ることが可能となる。
【0045】
また、偏光ビームスプリッタ130およびλ/4板161,162を用いて干渉計を構成するようにしたので、純粋なマイケルソン干渉計の場合に生ずる、レーザ光源10に対するレーザ光Loutの戻り光を回避することができ、レーザ光源10でのノイズ発生を回避することが可能となる。よって、純粋なマイケルソン干渉計を用いて構成した場合と比べて良好なS/N比を得ることができ、振動膜151の振動の検出精度を向上させることが可能となる。
【0046】
また、干渉縞の検出を2つの光電変換素子171,172を用いて行うと共にこれら光電変換素子171,172で検出する干渉縞の位相差がそれぞれ互いにほぼ90度になるように設定したので、円形状のリサージュ図形を以下のように形成させることができ、検出を容易に行うことができる。
【0047】
さらに、2つの光電変換素子171,172からの出力信号Sx,SyをそれぞれX信号およびY信号とし、これらX,Y信号に基づく円状または円弧状のリサージュ図形を生成するようにしたので、干渉縞の検知ポイントがそれぞれ振動膜151の変位に従って円周上を変位するようになり、所定の基準点を通過する回数をカウントすることにより、振動膜151の変位をディジタルで検知することが可能となる。
【0048】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0049】
図5は、本実施の形態に係る振動検出装置(マイクロホン装置1A)の構成を表したものである。このマイクロホン装置1Dは、図1に示した第1の実施の形態のマイクロホン装置1において、偏光板111,112の代わりに偏光ビームスプリッタ131,132をそれぞれ設けると共に、光電変換素子171,172の代わりにそれぞれ2つずつの光電変換素子(光電変換素子171A,171B,172A,172B)を設け、さらにディジタルカウント部181の代わりにディジタルカウント部182を設けるようにしたものである。
【0050】
偏光ビームスプリッタ131は、到達したS偏光成分s1およびP偏光成分p1を分離して光電変換素子171A,171Bへそれぞれ供給するものである。また、偏光ビームスプリッタ132は、到達したS偏光成分s1およびP偏光成分p1を分離して光電変換素子172A,172Bへそれぞれ供給するものである。このような構成により光電変換素子171A,171B,172A,172Bでは、干渉縞が互いに位相が90度ずつずれた状態で検出され、互いに位相が90ずつ異なる4つの出力信号S1〜S4が得られる。ここで、4つの出力信号S1〜S4の信号値I(S1)〜I(S4)はそれぞれ、例えば以下の(3)式〜(6)式のように表される。なお、A,Bはそれぞれ、干渉する光線同士の振幅を、λはレーザ光Loutの波長を、ΔLは参照光路と反射光路との光路差を、それぞれ表している。
I(S1)=(A+B)+2AB×sin(2πΔL/λ) …(3)
I(S2)=(A+B)−2AB×sin(2πΔL/λ) …(4)
I(S3)=(A+B)+2AB×cos(2πΔL/λ) …(5)
I(S4)=(A+B)−2AB×cos(2πΔL/λ) …(6)
【0051】
ディジタルカウント部182は、第1の実施の形態で説明したディジタルカウント部181における機能に加え、光電変換素子171A,171B,172A,172Bから得られる4つの出力信号S1〜S4のうちの互いに位相が180度異なる出力信号同士(S1,S2同士およびS3,S4同士)の差分をとって2つの差分信号SA,SB(I(SA)=I(S1)−I(S2)、I(SB)=I(S3)−I(S4))を生成するものである。また、このディジタルカウント部182は、2つの差分信号SA,SBをそれぞれ信号点とみなしてリサージュ図形を生成するようになっている。
【0052】
なお、本実施の形態のマイクロホン装置1Aをディスクリート光学部材を用いて単一の基体100A上に形成した場合、第1の実施の形態と同様に、例えば図6に示したように構成することができる。
【0053】
ここで、光電変換素子171A,171B,172A,172Bが本発明における「4つの光電変換素子」の一具体例に対応する。また、これら光電変換素子171A,171B,172A,172Bおよびディジタルカウント部182が、本発明における「検出手段」の一具体例に対応し、ディジタルカウント部182が、本発明における「演算手段」、「図形生成手段」および「カウンタ」の一具体例に対応する。
【0054】
このような構成により本実施の形態のマイクロホン装置1Aでは、互いに位相が90度異なる4つの光電変換素子171A,171B,172A,172Bからの4つの出力信号S1〜S4のうちの互いに位相が180度異なる出力信号同士の差分から2つの差分信号SA,SBが生成されると共に、これら2つの差分信号SA,SBに基づいてリサージュ図形が生成されるため、光電変換素子からの出力信号にレーザ光Loutの強度揺らぎ等に起因するDC(直流)オフセット成分(例えば、上記(3)〜(6)式における(A+B)の部分))が生じていた場合でも、このDCオフセット成分をキャンセルし、取り除くことができる。よって、第1の実施の形態における効果に加え、振動膜151の振動をより安定して検出することができ、検出精度をより向上させることが可能となる。
【0055】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1,第2の実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0056】
図7は、本実施の形態に係る振動検出装置(マイクロホン装置1B)の断面構成を表したものである。このマイクロホン装置1Bは、図5に示した第2の実施の形態のマイクロホン装置1Aを変形したものに対応し、レーザ光源(後述する面発光型レーザ光源10F)および4つの光電変換素子(光電変換素子171A,171B,172A,172B)をそれぞれ半導体基板(後述するSi基板10G,10H)上に形成すると共に、干渉計を収容部材(後述する収容部材100D)上、より具体的にはレーザ光源および光電変換素子の上方に形成するようにしたものである。
【0057】
収容部材100Dは、Si基板10G,10H、面発光型レーザ光源10Fおよび光電変換素子171A,171B,172A,172Bをそれぞれ収容すると共に、後述するレンズ部19を含む干渉計を支持するものである。この収容部材100Dは、例えばセラミックなどの材料により構成される。
【0058】
面発光型レーザ光源10Fは、いわゆる垂直共振器型(VCSEL;Vertical Cavity Surface Emitting Laser)のレーザ光源であり、シングルモードのものである。この面発光型レーザ光源10Fの上方には、コリメータレンズ191を含むレンズ部19が配置されている。
【0059】
上記干渉計は、偏光ビームスプリッタ130、振動膜151、反射板152、4つのビームスプリッタ121〜124、3つのλ/4板160〜162、偏光板14およびレンズ部19により構成されている。
【0060】
偏光ビームスプリッタ130は、レーザ光源10から発せられ偏光板14(具体的には、後述する偏光板140)およびλ/4板160を通過したレーザ光Loutを、2つの光路、すなわち振動膜151側の反射光路(第1の光路)と、反射板152側の参照光路(第2の光路)とに分離して進行させるためのものである。具体的には、この偏光ビームスプリッタ130では、反射光路側にレーザ光のP偏光成分が、参照光路側にレーザ光のS偏光成分がそれぞれ進行するように設定されている。ここで、偏光板140を通過したレーザ光Loutの直線偏光の方向は、偏光ビームスプリッタ130の有する2つの偏光軸に対してそれぞれ45度ずつ異なる方向となるように偏光軸が設定され、これにより入射するレーザ光Loutは、P偏光成分とS偏光成分とでほぼ50%ずつに分離されるようになっている。
【0061】
λ/4板161は偏光ビームスプリッタ130の上方に配置され、λ/4板162は偏光ビームスプリッタ130の側方(図7では、左方)に配置されている。振動膜151は、λ/4板161の上方において支持部151Aにより支持されており、反射板152は、λ/4板162の側方(図7では、左方)において支持部152Aにより支持されている。
【0062】
ビームスプリッタ121〜124はそれぞれ、光電変換素子171A,171B,172A,172B(言い換えると、Si基板10Hの基板面)の上方において、偏光ビームスプリッタ130の側方(図7では、右方)に配置されている。具体的には、これらビームスプリッタ121〜124は、振動膜151および偏光ビームスプリッタ130により反射されて進行する反射光の光路(反射光路、第1の光路)、ならびに反射板152により反射されたのちに偏光ビームスプリッタ130を透過して進行する参照光の光路(参照光路、第2の光路)のうち、同一光軸上の光路部分(偏光ビームスプリッタ130からビームスプリッタ121〜124へと至る光路部分)に沿ってこの順に延在している。これらビームスプリッタ121〜124は、入射光の透過率がこの順に、約3/4、約2/3、約1/2、約0に設定(言い換えると、入射光の反射率がこの順に、約1/4、約1/3、約1/2、約1に設定)されており、これにより上記光路部分を進行する反射光および参照光をそれぞれ4つに等分して4つの分岐光L1〜L4を生成しつつ、それぞれ光電変換素子171A,171B,172A,172Bの方向へと導くようになっている。
【0063】
λ/4板160は、ビームスプリッタ121〜124の延在面と偏光板14の形成面との間において各々に対向配置されており、入射する4つの分岐光L1〜L4をそれぞれ直線偏光から円偏光へと変換するものである。
【0064】
偏光板14は、λ/4板160の形成面とレンズ部19との間において各々に対向配置されており、面発光型レーザ光源10Fから射出されたレーザ光Loutが入射する偏光板140と、分岐光L1〜L4がそれぞれ入射する4つの偏光板141〜144とから構成されている。また、これら偏光板140〜144はそれぞれ、この順に水平方向に沿って延在している。このうち、偏光板141〜144はそれぞれ、入射した分岐光L1〜L4の偏光方向が互いに45度ずつ異なることとなるように偏光軸が設定されている。具体的には、偏光板141〜144の偏光軸がそれぞれ、例えば45度、90度、135度、180度となるように設定されている。
【0065】
レンズ部190は、コリメータレンズ191を含んで構成されている。このコリメータレンズ191は、分岐光L1〜L4をそれぞれ集光して光電変換素子171A,171B,172A,172Bへと入射させるようになっている。
【0066】
ここで、ビームスプリッタ121〜124が本発明における「光分岐部」の一具体例に対応し、λ/4板160が本発明における「第3の1/4波長板」の一具体例に対応し、偏光板14が本発明における「第2の偏光板」の一具体例に対応する。
【0067】
このような構成により本実施の形態のマイクロホン装置1Bでは、4つの光電変換素子171A,171B,172A,172Bが形成された基板面(Si基板10Hの基板面)の上方において、反射光路および参照光路のうちの同一光軸上の光路部分を進行する反射光および参照光が、ビームスプリッタ121〜124によってそれぞれ4つに等分されて4つの分岐光L1〜L4となり、光電変換素子171A,171B,172A,172Bの方向(基板面の方向)へと導かれる。そしてこれら4つの分岐光L1〜L4は、λ/4板160を通過してそれぞれ円偏光となったのち、偏光板141〜144を通過することで各々の偏光方向が互いに45度ずつ異なるようになり、これにより4つの光電変換素子171A,171B,172A,172Bにおいて、干渉縞の位相が互いに90度ずれた状態で検出される。よって、上記第1および第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、光学的にディジタル振動検出を行う振動検出装置(マイクロホン装置)において装置の小型化を図ることが可能となる。
【0068】
また、光電変換素子171A,171B,172A,172Bが形成されたSi基板10Hの基板面の上方に偏光板14、λ/4板160およびビームスプリッタ121〜124がこの順に積層された積層構造であるため、干渉計の構成がコンパクトとなる。よって、第2の実施の形態で説明したマイクロホン装置1Aと比べ、装置構成をさらに小型化することが可能となる。
【0069】
なお、図7に示したマイクロホン装置1Bでは、面発光型レーザ光源10Fの上方にも偏光板14(具体的には、偏光板140)およびλ/4板160を設けることにより、偏光ビームスプリッタ130へ入射するレーザ光Loutの直線偏光の方向を調整する場合について説明したが、面発光型レーザ光源10F自体を回転させることによって射出されるレーザ光Loutの直線偏光の方向をそのような方向に設定可能なのであれば、偏光板14およびλ/4板160のうちの図7中の符号P1で示した部分(偏光板140、およびλ/4板160の一部)を設けないようにしてもよい。設けないようにした場合、符号P1の部分によるレーザ光Loutの光損失(ロス)が回避されるため、光出力を高めることができ、振動膜151の振動の検出精度をより向上させることが可能となる。逆に、図7に示したように構成した場合には、レーザ光源10自体の回転位置の精度によらずに、偏光ビームスプリッタ130への入射光の直線偏光の方向を上記のように設定することができる。
【0070】
また、光電変換素子171A,171B,172A,172B上にそれぞれピンホールを設けるようにし、検出する干渉縞の位相を微調整できるようにしてもよい。そのように構成した場合、光電変換素子からの出力信号S1〜S4におけるS/N比を高めることができ、振動膜151の振動の検出精度をより向上させることが可能となる。
【0071】
以上、第1〜第3の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0072】
例えば、上記実施の形態では、リサージュ図形上に4つの基準点Pa〜Pdを設けてディジタルカウントを行う場合について説明したが、基準点の数はこれに限らず、例えば図8に示したように、4つの基準点Pa〜Pdに加えて例えば基準線E〜Hを用い、さらに基準点を細かく設定して増やすようにしてもよい。このように構成した場合、カウント数を増やすことができるので、出力信号Soutの値を大きくし、検出感度をより向上させることが可能となる。
【0073】
また、上記実施の形態では、レーザ光Loutを発する光源として半導体レーザを挙げて説明したが、これ以外にも例えば、ガスレーザや固定レーザなどを用いるようにしてもよい。
【0074】
また、上記実施の形態では、本発明の振動検出装置の一例として、振動体が音波に応じて振動する振動膜(振動膜151)であり、この振動膜151の振動を音声信号Soutとして検出する光学式マイクロホン装置について説明したが、本発明の振動検出装置はこれには限られず、他の振動を検出するように構成してもよい。
【0075】
さらに、本発明の振動検出装置(マイクロホン装置)は、例えば図9に示したように、図1に示したマイクロホン装置1(あるいは、図5に示したマイクロホン装置1A、または図7に示したマイクロホン装置1Bなど)に加え、このマイクロホン装置1から出力される音声信号Soutをエンコードする伝送フォーマットエンコーダ2と、この伝送フォーマットエンコーダ2とディジタル伝送経路(例えば、光ファイバなど)で接続された編集機器3、1ビットストリーム方式レコーダ4およびPCM(Pulse Code Modulation)方式レコーダ6と、1ビット方式記録メディア51と、PCM方式記録メディア71と、再生機器アンプスピーカ52,72とから構成される音声信号記録再生システムに適用することが可能である。このような構成の音声信号記録再生システムでは、2値化された音声信号Soutを伝送することができるため、アナログの音声信号を伝送する場合と比べ、容易に長距離伝送をすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る振動検出装置の全体構成を表す図である。
【図2】図1に示したディジタルカウント部において作成されるリサージュ図形の一例を表す図である。
【図3】図1に示した振動検出装置を単一の基体上に配置した場合の構成例を表す平面図である。
【図4】図1に示した振動検出装置を半導体基板上に集積化した場合の構成例を表す断面図である。
【図5】第2の実施の形態に係る振動検出装置の全体構成を表す図である。
【図6】図5に示した振動検出装置を単一の基体上に配置した場合の構成例を表す平面図である。
【図7】第3の実施の形態に係る振動検出装置の構成を表す断面図である。
【図8】本発明の変形例に係るリサージュ図形の一例を表す図である。
【図9】本発明の振動検出装置を備えた音声記録再生システムの構成例を表すブロック図である。
【符号の説明】
【0077】
1,1A,1B…マイクロホン装置、10…レーザ光源、10A,10B…コリメータレンズ、10C…端面発光型レーザ光源、10D,10E…支持部、10F…面発光型レーザ光源、10G,10H…Si基板、100A…基体、100B,100C…Si基板、100D…収容部材、110,110A,111,112,14,140〜144…偏光板、120〜124…ビームスプリッタ、130,131…偏光ビームスプリッタ、151…振動膜、152…反射板、151A,152A…支持部、160〜163…λ/4板、171,171A,171B,172,172A,172B…光電変換素子、180…演算用IC、181,182…ディジタルカウント部、19…レンズ部、190…コリメータレンズ、2…伝送フォーマットエンコーダ、3…編集機器、4…1ビットストリーム方式レコーダ、51…1ビット方式記録メディア、52,72…再生機器アンプスピーカ、6…PCM方式レコーダ、71…PCM方式記録メディア、Sw…音波、s0,s1…S偏光成分、p0,p1…P偏光成分、Sx,Sy,S1〜S4…光電変換素子からの出力信号、Sout…音声信号、Lout…レーザ光、M1,M2…反射ミラー、C…中心点、P0…信号点、Pa〜Pd…基準点、E〜H…基準線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発する光源と、
前記レーザ光を反射可能な振動体および反射体と、偏光ビームスプリッタと、この偏光ビームスプリッタと前記振動板との間に配設された第1の1/4波長板と、前記偏光ビームスプリッタと前記反射体との間に配設された第2の1/4波長板とを含んで構成され、前記光源から発せられたレーザ光を前記偏光ビームスプリッタによって第1および第2の光路に分離して進行させると共に、前記第1の光路において前記振動体により反射された反射光と前記第2の光路において前記反射体により反射された参照光とを互いに干渉させて干渉縞を形成する干渉計と、
形成された干渉縞に基づき、前記振動体の振動を量子化して検出する検出手段と
を備えたことを特徴とする振動検出装置。
【請求項2】
前記反射光の偏光方向と前記参照光の偏光方向とが互いに直交しており、
前記干渉計は、前記偏光ビームスプリッタと前記検出手段との間に、前記反射光の偏光方向および前記参照光の偏光方向からそれぞれ45度傾いた方向に偏光軸が設定された第1の偏光板を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の振動検出装置。
【請求項3】
前記検出手段は、
前記干渉縞を互いに位相が90度ずれた状態で検出する2つの光電変換素子と、
前記2つの光電変換素子からの出力信号を信号点とみなして、平面上に円状または円弧状のリサージュ図形を生成する図形生成手段と、
生成されたリサージュ図形上において、信号点が所定の基準点を通過する回数をカウントするカウンタとを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の振動検出装置。
【請求項4】
前記検出手段は、
前記干渉縞を互いに位相が90度ずれた状態で検出する4つの光電変換素子と、
前記4つの光電変換素子からの出力信号のうちの互いに位相が180度異なる出力信号同士の差分をとって2つの差分信号を生成する演算手段と、
前記2つの差分信号をそれぞれ信号点とみなして平面上に円状または円弧状のリサージュ図形を生成する図形生成手段と、
生成されたリサージュ図形上において、信号点が所定の基準点を通過する回数をカウントするカウンタとを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の振動検出装置。
【請求項5】
前記4つの光電変換素子がそれぞれ単一の基板面上に形成され、
前記干渉計は、
前記基板面の上方において前記第1および第2の光路のうちの同一光軸上の光路部分に沿って延在すると共に、この光路部分を進行する前記反射光および前記参照光をそれぞれ4つに等分して4つの分岐光を生成しつつ前記光電変換素子の方向へと導く光分岐部と、
前記光分岐部の延在面と前記基板面との間において各々に対し対向配置された第3の1/4波長板と、
前記第3の1/4波長板の形成面と前記基板面との間において各々に対して対向配置され、前記第3の1/4波長板を介して入射した前記4つの分岐光の偏光方向が互いに45度ずつ異なることとなるように偏光軸が設定された第2の偏光板とを有する
ことを特徴とする請求項4に記載の振動検出装置。
【請求項6】
前記光源、前記干渉計および前記検出手段が、半導体基板上に集積化されている
ことを特徴とする請求項1に記載の振動検出装置。
【請求項7】
前記光源、前記干渉計および前記検出手段が、単一の基体上に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の振動検出装置。
【請求項8】
前記振動体が音波に応じて振動する振動膜であり、この振動膜の振動を量子化された音声信号として検出する光学式マイクロホン装置として構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の振動検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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