説明

振動機、振動機における駆動制御方法

【課題】振動機において初期調整作業である振動体の共振周波数検出に要する時間短縮化を実現しつつ、確実に共振点を検出することができ、通常駆動時には搬送対象物を搬送路に沿って効率良く搬送することが可能な振動機を提供する。
【解決手段】コントローラ3の可変周波数電源31から電磁石部9に所定範囲内の電流を与えてバネ8を電磁石部9に吸引させた状態で、可変周波数電源31から電磁石部9への電流供給を停止してバネ8の吸引状態を解除し、振動体4を自由振動させた状態で振動センサ7によって振動体4の振動情報を取得し、この振動情報から測定した自由振動の周期に基づいて振動体4の共振周波数を算出するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動パーツフィーダ等の振動機、及びこの振動機における駆動制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、搬送路を有する振動体と、この振動体を支持するベースとをバネ(板バネ)で相互に結合し、振動体を振動させることによって搬送対象物を搬送路に沿って搬送可能な振動機が知られている。振動体を振動させる駆動源(加振源)は、通常、振動体又はベースに取り付けた電磁石部(電磁石にコイルを巻装したもの)とバネとを用いて構成されており、このような駆動源の作用によって振動体を振動させる方法としては、電磁石部のコイルに印加される電圧と振動体の振動変位との位相差を検出して、この位相差を180度となるようにコイルに印加される電圧の周波数を増減させて共振振動させる共振追尾制御を挙げることができる。
【0003】
このような共振追尾制御を行う場合、振動機の駆動開始時における電圧の周波数(駆動周波数)は振動体の共振点から大きく離れているため、強制振動となって振動体の振幅は小さいが、その後上昇する駆動周波数が振動体の共振点近傍になれば、振動体の振幅が大きくなり、共振振動時の電気容量(電力)を強制振動時の電気容量に比べて極端に低減することが可能である。
【0004】
また、下記特許文献には、一旦停止している振動体を再駆動させる度に共振追尾制御をゼロから始める構成は採用せず、前回駆動時の電圧の周波数(駆動周波数)を記憶し、再駆動時には記憶した駆動周波数で駆動開始させることによって、従来のように共振追尾制御を行うという点では同じであるが、再駆動開始時点から振動体を共振振動させることができる点で有利な技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−180530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、共振追尾制御によって振動機の共振周波数を検出する場合、駆動初期の強制振動時にはコイルに大きな電流を流す必要があるため、共振振動時の電流の容量では足りず、相当大きな電気容量を有する電源でなければならない。また、振動体の共振周波数に対して駆動周波数が4乃至5Hz外れていると、共振を想定した電流容量では、バネに対する電磁石部の吸引力が不足して振動体を振動させることができなかったり、振動体の共振周波数に対して駆動周波数が1乃至2Hz外れるだけで電力低減効果が失われる。また、特許文献1の技術は、上述したように駆動開始毎に共振追尾制御をゼロから行う態様と比較して有利な点はあるものの、少なくとも1回は共振追尾制御を行う必要があるため、やはり上記と同様の不具合が生じ得る。また、特許文献1の技術は、前回駆動時の振動体の共振点を記憶しておくことが前提であるため、振動体の共振点が分かっていない振動機にはそもそも適用できない技術である。
【0007】
さらに、共振追尾制御を行った場合、振動機の駆動開始時において強制振動となる振動体が所定時間経過後に共振振動に切り替わる時点で、振動体の振幅が大きく変化し、その時点で既に搬送路上で搬送方向下流側に向かって搬送されている搬送対象物が搬送路から落下してしまい、再度搬送路の最上流側から搬送することになり、搬送処理時間が余分に掛かってしまい、搬送処理効率の低下を招来し得る。
【0008】
そこで、共振追尾制御に代えて、周波数掃引により振動機の共振周波数を検出する態様も考えられる。しかしながら周波数掃引は、例えば45乃至90Hzを1周期毎に0.1Hz刻みで変化させていった場合には5秒程度要するなど、共振周波数の検出に時間が掛かる上に、供給する電流が小さ過ぎると共振点に達しても振幅が共振値の判定値まで振れない場合があり、供給する電流が大き過ぎると共振点に到達する前の時点で振幅上限に達し、正確な共振点を見つけることができない場合がある。
【0009】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであって、主たる目的は、振動機において初期調整作業である振動体の共振周波数検出に要する時間短縮化を実現しつつ、確実に共振点を検出することができ、通常駆動時には搬送対象物を搬送路に沿って効率良く搬送することが可能な振動機、及び振動機の駆動制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明は、搬送路を有する振動体と、振動体の下方に配置したベースと、振動体とベースとを連結するバネと、振動体又はベースの何れかに固定した電磁石部と、少なくとも振動体の位置変位に関する情報を検出可能な振動センサとを備えた振動機本体の作動を、振幅制御可能な可変周波数電源を有するコントローラによって制御する振動機に関するものである。そして、本発明の振動機は、コントローラが、可変周波数電源から電磁石部に所定範囲内の電流を与えてバネを電磁石部に吸引させるバネ吸引手段と、可変周波数電源から電磁石部への電流供給を停止することによってバネ吸引手段によるバネの吸引状態を解除して振動体を自由振動させた状態において、振動センサによって取得した振動体の変位量を含む振動情報に基づいて自由振動の周期を測定する自由振動周期測定手段と、自由振動周期測定手段で測定した自由振動の周期に基づいて振動体の共振周波数を算出する共振周波数算出手段とを備えていることを特徴としている。
【0011】
ここで、振動体は、内面にスパイラル状の搬送路を有するボウル状のものであってもよいし、直線状の搬送路を有するリニア型のものであってもよい。また、電磁石部は、電磁石にコイルを巻装したものであり、このような電磁石部はバネと共に駆動源(加振源)を構成する。また、振動体の位置変位(振幅)に関する情報を検出可能な振動センサ振動センサとしては、加速度計、距離センサ、ひずみ計、或いは変位計等を挙げることができる。
【0012】
このような振動機であれば、コントローラが有するバネ吸引手段、自由振動周期測定手段、及び共振周波数算出手段によって、振動体を自由振動させてその周期から固有の共振周波数を算出するように構成しているため、共振追尾制御や周波数掃引を行わずとも、振動体の共振周波数を求めることができる。したがって、周波数掃引を行う場合の不具合、すなわち、共振周波数の検出に時間が掛かり、供給する電流が小さ過ぎると共振点に達しても振動体の振幅が共振値の判定値まで振れない場合があったり、供給する電流が大き過ぎれば振動体の共振点に到達する前の時点で振動体の振幅上限に達し、正確な共振点を見つけることができないという不具合が生じ得ず、振動体固有の共振周波数を短時間で確実に把握することができる。そして、共振周波数算出手段で算出した共振周波数に応じた駆動周波数の電流を電磁石部に与えることによって、振動体を駆動当初から効率良く共振振動させることが可能になり、電気容量の低減化を実現することができる。
【0013】
また、本発明の振動機であれば、共振追尾制御を行った場合に生じ得る不具合、つまり、振動機の駆動開始時において強制振動となる振動体が所定時間経過後に共振振動に切り替わる時点で、振動体の振幅が大きく変化し、その時点で既に搬送路上において搬送方向下流側に向かって搬送中の搬送対象物が搬送路から落ちてしまい、再度搬送路の最上流側から搬送されることになり、搬送処理時間が余分に掛かってしまうという不具合も生じないため、搬送処理の効率が向上したり、搬送処理時間の短縮化をも実現することが可能になり、実用性に優れたものになる。さらに、本実施形態に係る振動機であれば、前回駆動時の駆動周波数を逐一記憶する必要もなく、予め振動体の共振点が把握できてない場合にも振動機の共振周波数を容易に把握することができる。
【0014】
本発明の振動機において、バネ吸引手段によってバネを電磁石部側に吸引する際に、可変周波数電源から電磁石部に対する供給電流の上限としては、振動体に可動域限界の振幅を与えられる電流値を挙げることができ、供給電流の下限としては、コントローラと振動センサの組み合わせで決まる性能によって振動体の自由振動の周期が検出可能な最低限の振幅を与えられる電流値を挙げることができる。ここで、コントローラと振動センサの組み合わせで決まる性能とは、応答性や分解能を意味する。
【0015】
特に、本発明の振動機は、コントローラが、共振周波数算出手段で算出した共振周波数に基づいて振動機本体を駆動させることによって、駆動開始当初から振動機を共振状態で振幅させることができ、大きな電力低減効果を奏する。
【0016】
また、本発明の振動機の駆動制御方法は、搬送路を有する振動体と、振動体の下方に配置したベースと、振動体とベースとを連結するバネと、振動体又はベースの何れかに固定した電磁石部と、少なくとも振動体の位置変位に関する情報を検出可能な振動センサとを備えた振動機本体の作動を、可変周波数電源を有するコントローラによって制御する駆動制御方法において、可変周波数電源から電磁石部に所定範囲内の電流を与えてバネを電磁石部に吸引させるバネ吸引ステップと、可変周波数電源から電磁石部への電流供給を停止することによってバネ吸引ステップによるバネの吸引状態を解除して振動体を自由振動させた状態において、振動センサによって取得した振動体の変位量を含む振動情報に基づいて自由振動の周期を測定する自由振動周期測定ステップと、自由振動周期測定ステップで測定した自由振動の周期に基づいて振動体の共振周波数を算出する共振周波数算出ステップとを経て振動体の共振周波数を測定するようにしたことを特徴としている。
【0017】
このような振動機の駆動制御方法であれば、上述の振動機が奏する作用効果とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、振動機において初期調整作業である振動体の共振周波数検出処理に要する時間短縮化を実現しつつ、振動体の共振点を確実に検出することができ、検出(算出)した振動体の共振周波数に応じた電流供給を行うことにより、駆動初期から振動体を共振状態にすることができ、搬送対象物を搬送路に沿って効率良く搬送することが可能な振動機、及び振動機の駆動制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る振動機の全体構成概略図。
【図2】同実施形態に係る共振周波数測定モードにおけるコントローラのフローチャート。
【図3】図2の一部詳細図。
【図4】同実施形態に係る共振周波数測定モードにおける振動体の振幅を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
本実施形態に係る振動機1は、図1に示すように、振動体4を有する振動機本体2と、振動機本体2の作動を制御するコントローラ3とを備えたものである。
【0022】
振動機本体2は、例えばボウル状をなし内周壁部にスパイラル状の搬送路(図示省略)を有する振動体4と、振動体4を振動させる駆動源5と、振動体4及び駆動源5を支持するベース6と、少なくとも振動体4の位置変位(振幅)を検出可能な振動センサ7とを備えている。
【0023】
振動体4の搬送路には、部分的に幅を狭く設定した幅狭部や、カメラによって撮像した映像を基づいて正常な搬送状態の搬送対象物のみを下流に通過させる選別部(ワイパ等)などを設け、下流に向かって搬送される搬送対象物の向きを整列させる機能を付与することができる。
【0024】
ベース6は、振動体4の下方に配置したものであり、等角度間隔で配設されたバネ88(例えば傾斜板バネ8)によって振動体4と一体的に結合されている。本実施形態では、電磁石部9をベース6に固定している。なお、ベース6の下向面には防振ゴムGを設け、この防振ゴムGを床面に接触させた状態で振動機1全体を床上に設置している。
【0025】
駆動源5は、上述したバネ8及び電磁石部9を主たる構成部品とするものである。電磁石部9は、電磁石91と、電磁石91に巻装した電磁コイル92とを用いて構成したものである。
【0026】
振動センサ7は、バネ8の近傍に配置したものであり、コントローラ3に電線路W1を介して接続されている。振動センサ7としては、少なくとも振動体4の位置変位を取得できるセンサとして、加速度計、距離センサ、或いはひずみ計や変位計を挙げることができる。
【0027】
コントローラ3は、振幅制御機能を有する可変周波数電源31を備えている。可変周波数電源31からの出力は電線路W2を介して電磁石部9(具体的にはコイル92)に接続されている。つまり、コントローラ3の可変周波数電源31から電磁石部9の電磁コイル92に出力が加えられている。
【0028】
そして、本実施形態に係る振動機1では、コントローラ3が、振動体4の共振周波数を測定する共振周波数算出モードと、共振周波数算出モードで測定した共振周波数に基づいて振動機本体2を駆動する通常駆動モードとを有し、ユーザの適宜の操作に基づいてこれら共振周波数算出モードと通常駆動モードとの間で切替可能に設定している。
【0029】
ここで、コントローラ3は、例えばCPU、メモリ及びインターフェイス等を具備する通常のマイクロコンピュータユニットにより構成することができ、メモリ内に駆動制御ルーチンや共振周波数測定処理ルーチン等の所要のプログラムが書き込まれており、CPUが適宜必要なプログラムを呼び出して実行することにより、周辺ハードリソース(振動機本体2の構成部品を含む)と協働して振動機本体2の所期の駆動動作を実現している。
【0030】
具体的に、このコントローラ3は、バネ吸引手段32と、自由振動周期測定手段33と、共振周波数算出手段34とを備え、ユーザによって共振周波数算出モードが選択された場合に、これら各手段(バネ吸引手段32、自由振動周期測定手段33、共振周波数算出手段34)は、CPUが予め記憶している共振周波数測定処理ルーチンを実行することによりソフトウェア及びハードウェアが協働して実現される。
【0031】
バネ吸引手段32は、可変周波数電源31から電磁石部9に所定範囲内の電力を出力してバネ8を電磁石部9に吸引させるものである。本実施形態のバネ吸引手段32では、振動体4の可動域上限に達する程度にバネ8を電磁石部9に吸引可能な電力を可変周波数電源31から電磁石部9に出力するように設定している。
【0032】
自由振動周期測定手段33は、可変周波数電源31から電磁石91への電力供給を停止することによってバネ吸引手段32によるバネ8の吸引状態を解除して振動体4を自由振動させた状態において、振動機本体2の振動センサ7によって取得した振動体4の変位量(振幅)を含む振動情報に基づいて自由振動の周期を測定するものである。
【0033】
共振周波数算出手段34は、自由振動周期測定手段33で測定した振動体4の自由振動周期に基づいて振動体4の共振周波数を算出するものである。
【0034】
また、本実施形態のコントローラ3は、振幅制御手段35を備え、ユーザによって通常駆動モードが選択された場合に、振幅制御手段35は、CPUが予め記憶している振幅制御処理ルーチンを実行することによりソフトウェア及びハードウェアが協働して実現されるものである。
【0035】
振幅制御手段35は、共振周波数算出手段34で算出した振動体4の共振周波数に応じた電力を電磁石部9に出力することによって振動体4を共振状態で振幅(共振振動)させるものである。
【0036】
次に、図2及び図3を参照して、本実施形態に係る振動機1の使用方法を説明しつつ、本実施形態に係る振動機1の駆動制御方法及び作用について説明する。
【0037】
先ず、振動機1の初期調整作業である振動体4の共振周波数検出処理を行う。これは、ユーザが共振周波数算出モードを選択する操作に基づいて行われる。具体的には、ユーザが共振周波数算出モードを選択する操作を行うと、その操作に基づく信号をコントローラ3が受け付けて、バネ吸引手段32により、可変周波数電源31から電磁石部9に所定範囲内の直流電流を与えてバネ8を電磁石部9に吸引させる(バネ吸引ステップS1、図2参照)。なお、このバネ吸引手段32は、直流電流を供給することから、直流電流供給手段(直流電流供給ステップ)と捉えることもできる。
【0038】
引き続いて、コントローラ3が、自由振動周期測定手段33によって振動体4の自由振動周期を測定する(自由振動周期測定ステップS2、図2参照)。具体的に自由振動周期測定ステップS2は、図3に示すように、可変周波数電源31から電磁石91への電流供給を停止してバネ吸引手段32によるバネ8の吸引状態を解除するバネ吸引状態解除ステップS21(直流電流印加停止ステップと捉えることもできる)と、このバネ吸引状態解除ステップS21によって自由振動状態となる振動体4の変位量(振幅)を含む振動情報を振動センサ7から取得する振動情報取得ステップS22と、振動情報取得ステップS22で取得した振動体4の振動情報に基づいて自由振動の周期を測定する測定ステップS23とを経る。ここで、図4に、バネ吸引ステップS1及び自由振動周期測定ステップS2における振動体4の振幅(y軸)をxy座標系で示す。同図における振動体4の振幅がゼロの時点P1からマックス(振動体4の可動域限界)になる時点P2までがバネ吸引ステップS1であり、振動体4の振幅がマックスからマイナスに向かう時点P2がバネ吸引状態解除ステップS21であり、振動体4の振幅がマックスからマイナスに向かう時点P2以降において自由振動状態にある振動体4の振動の周期T(ある立ち上がりエッジのゼロクロスポイントP3から次の立ち上がりエッジのゼロクロスポイントP4までの周期T)を振動センサ7によって測定し、その測定した振動情報を振動センサ7から取得するのが振動情報取得ステップS22である。本実施形態では、バネ吸引ステップS1において、振動体4が物理的・機械的可動域の限界に到達する程度にまでバネ8を撓ませている。
【0039】
そして、本実施形態に係る振動機1は、測定した振動周期に基づいて共振周波数算出手段34により振動体4の固有の共振周波数を算出する(共振周波数算出ステップS3)。具体的に共振周波数算出手段34は、周期の逆数が周波数であることを利用して、自由振動状態にある振動体4の周期から振動体4固有の共振周波数を算出している。
【0040】
以上の手順によって、本実施形態に係る振動機1は、振動体4固有の共振周波数を算出し、共振周波数算出モードを終了する。その後、ユーザが通常駆動モードを選択する操作を行うと、コントローラ3は、この操作に基づく信号を受け付けて、振幅制御手段35により、可変周波数電源31から電磁石部9に対して、共振周波数算出モードで測定した振動体4の共振周波数に応じた駆動周波数の電流を供給する。その結果、振動体4は駆動当初から共振振動し、搬送対象物を搬送路に沿って好適に搬送することができる。
【0041】
このように、本実施形態に係る振動機1では、電磁石部9に直流電流を供給し、振動体4を可動域の上限に達するまでバネ8を撓ませ、電磁石部9に対する直流電流出力を停止して自由振動させた振動体4の振動周期(自由振動周期)を測定し、共振周波数を見つけるようにしたことにより、振動体4固有の共振周波数を短時間で確実に見つけることができる。
【0042】
したがって、本実施形態に係る振動機1及び振動機1の駆動制御方法であれば、周波数掃引を行う必要がなく、周波数掃引を行う場合の不具合、すなわち、共振周波数の検出に時間が掛かり、供給する電流が小さ過ぎると共振点に達しても振幅が共振値の判定値まで振れない場合があったり、供給する電流が大き過ぎれば共振点に到達する前の時点で振幅上限に達し、正確な共振点を見つけることができないという不具合が生じ得ず、振動体4を自由振動させて、その周期から固有の共振周波数を短時間で確実に把握することができ、その共振周波数に応じた駆動周波数の電流を電磁石部9に与えることによって、振動体4を駆動当初から効率良く共振振動させることができ、電気容量の低減化を実現することができる。
【0043】
また、本実施形態の振動機1は、共振追尾制御を必要としないため、共振追尾制御であれば生じ得る不具合、つまり、振動機の駆動開始時において強制振動となる振動体が所定時間経過後に共振振動に切り替わる時点で、振動体の振幅が大きく変化し、その時点で既に搬送路に沿って搬送中の搬送対象物が搬送路から落下してしまい、再度搬送路の最上流側から搬送されることになり、搬送処理時間が余分に掛かってしまうという不具合も生じないため、搬送処理の効率向上及び搬送処理時間の短縮化をも図ることが可能になる。勿論、本実施形態に係る振動機1や駆動制御方法であれば、前回駆動時の駆動周波数を逐一記憶する必要もなく、予め振動体4の共振点を把握してない場合であっても、コントローラ3が共振周波数算出モードを実行することにより、振動体4の共振周波数を容易に把握することができる。
【0044】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、振動機は、直線状の搬送路を有するリニアフィーダであってもよく、あるいはコンベア型のものスクリーン型(搬送路上の対象物をふるい分けるタイプ)のものであってもよい。
【0045】
また、バネ吸引手段において可変周波数電源から電磁石部に対する供給電流の上限は、上述した電流値、つまり振動体に可動域限界の振幅を与えられる電流値であることが好ましいが、当該電流値未満であってもよい。その場合、供給電流の下限は、コントローラと振動センサの組み合わせで決まる性能(応答性や分解能)によって自由振動の周期が検出可能な最低限の振幅を与えられる電流値であることが好ましい。また、上記説明では電磁石部に電流を供給する態様を例示したが、この態様と電磁石部に電圧を供給(印加)する態様とで特別な差異が存在しないことは言及するまでもない。
【0046】
また、電磁石部を振動体側に固定した振動機であっても構わない。
【0047】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…振動機
2…振動機本体
3…コントローラ
31…可変周波数電源
32…バネ吸引手段
33…自由振動周期測定手段
34…共振周波数算出手段
4…振動体
6…ベース
7…振動センサ
8…バネ
9…電磁石部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路を有する振動体と、前記振動体の下方に配置したベースと、前記振動体と前記ベースとを連結するバネと、前記振動体又は前記ベースの何れかに固定した電磁石部と、少なくとも前記振動体の位置変位に関する情報を検出可能な振動センサとを備えた振動機本体の作動を、振幅制御可能な可変周波数電源を有するコントローラによって制御する振動機であり、
前記コントローラが、
前記可変周波数電源から前記電磁石部に所定範囲内の電流を与えて前記バネを前記電磁石部に吸引させるバネ吸引手段と、
前記可変周波数電源から前記電磁石部への電流供給を停止することによって前記バネ吸引手段による前記バネの吸引状態を解除して前記振動体を自由振動させた状態において、前記振動センサによって取得した前記振動体の変位量を含む振動情報に基づいて自由振動の周期を測定する自由振動周期測定手段と、
前記自由振動周期測定手段で測定した自由振動の周期に基づいて前記振動体の共振周波数を算出する共振周波数算出手段とを備えたものであることを特徴とする振動機。
【請求項2】
前記可変周波数電源から前記電磁石部に対する供給電流の上限は、前記振動体に可動域限界の振幅を与えられる電流値であり、前記供給電流の下限は、前記コントローラと前記振動センサの組み合わせで決まる性能によって前記自由振動の周期が検出可能な最低限の振幅を与えられる電流値である請求項1に記載の振動機。
【請求項3】
前記コントローラが、前記共振周波数算出手段で算出した共振周波数に基づいて前記振動機本体を駆動させるものである請求項1又は2に記載の振動機。
【請求項4】
搬送路を有する振動体と、前記振動体の下方に配置したベースと、前記振動体と前記ベースとを連結するバネと、前記振動体又は前記ベースの何れかに固定した電磁石部と、少なくとも前記振動体の位置変位に関する情報を検出可能な振動センサとを備えた振動機本体の作動を、振幅制御可能な可変周波数電源を有するコントローラによって制御する振動機の駆動制御方法であり、
前記可変周波数電源から前記電磁石部に所定範囲内の電流を与えて前記バネを前記電磁石部に吸引させるバネ吸引ステップと、
前記可変周波数電源から前記電磁石部への電流供給を停止することによって前記バネ吸引ステップによる前記バネの吸引状態を解除して前記振動体を自由振動させた状態において、前記振動センサによって取得した前記振動体の変位量を含む振動情報に基づいて自由振動の周期を測定する自由振動周期測定ステップと、
前記自由振動周期測定ステップで測定した自由振動の周期に基づいて前記振動体の共振周波数を算出する共振周波数算出ステップとを経て前記振動体の共振周波数を測定するようにしたことを特徴とする振動機の駆動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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