説明

挿口突部を有する管およびそれに用いられる溶接ピース

【課題】 管に挿口突部を形成する際に、溶接ピースが倒れた状態で溶接されることを簡単に防止できるようにする。
【解決手段】 管10の挿口11の外周に沿って配置可能な突部ピース13に、管径方向の貫通孔15が形成されている。この貫通孔15は、管径方向の外側から内側に向かうにつれて小径となるテーパ状に形成されている。この貫通孔15に、この貫通孔15に接するように外周面25がテーパ状に形成された溶接ピース17が、管径方向の外側から装着されている。この溶接ピース17が管10の挿口11の外面に溶接されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は挿口突部を有する管およびそれに用いられる溶接ピースに関する。
【0002】
【従来の技術】切管などにおける挿口の外周に突部を形成するために、管径方向の貫通孔が形成された突部ピースを前記挿口の外周に沿って複数配置し、この突部ピースの貫通孔に、管径方向の外側から突部ピースに係り合う溶接ピースを装着し、この溶接ピースを挿口の外面に溶接したものが、たとえば特願平10−300229号において提案されている。
【0003】以下、このような従来の挿口突部の形成方法について、図4および図5を用いて詳細に説明する。図4および図5において、10はダクタイル鋳鉄管であり、挿口11の先端に切り管が施されたうえで、その切断部の外周に新たなテーパ面12が加工されている。この切り管が施された鋳鉄管10の挿口の外周に新たな突部を形成するために、突部ピース13が用いられる。この突部ピース13は、FCD400などのダクタイル鋳鉄にて形成され、管10の外周の周方向に沿って複数が配置される。各突部ピース13には、管10のテーパ面12に連続する傾斜面14が形成されている。また各突部ピース13には、管径方向の貫通孔15が形成されている。この貫通孔15には段部16が形成されている。
【0004】突部ピース13における貫通孔15には、溶接ピース17がはめ込まれている。この溶接ピース17は、Fe−Ni系の合金などによって形成されるとともに、突部ピース13の段部16に管径方向の外側から係り合い可能な段部18を有している。溶接ピース17における管径方向に沿った内側の内端面19は、中心部がわずかに突出するテーパ状に形成されている。そして、このテーパ状の内端面19の中心部には突起20が形成されている。
【0005】このような構成において、挿口11の外周に突部を形成する際には、図4(a)に示すように、突部ピース13をたとえば両面接着テープなどによって管10の外周面の所定位置に仮に固定し、その貫通孔15に溶接ピース17をはめ込む。そして、スタッド溶接を行うことなどにより、この溶接ピース17を管10の挿口11の外面に押し付けながら溶接する。
【0006】すなわち、溶接性の良好なFe−Ni系の合金などによって形成された溶接ピース17の突起20が鋳鉄管10に接触しているために電流が流れてアークが発生し、この突起20からテーパ状の内端面19の全体に広がるようにこの内端面19が溶融して、図4(b)に示すように溶接ピース17が鋳鉄管10の表面に溶接される。21はその溶接部である。すると、段部18、16によって溶接ピース17と突部ピース13とが係り合うため、同時に突部ピース13が鋳鉄管10の外面に固定されることになる。この状態で、溶接ピース17は、その外端面22が突部ピース13の外面と面一になる。
【0007】そして、図5に示すように、同様に複数の突部ピース13を管10の外周に沿って順次溶接により固定していくことで、最終的に管10の外周にわたって突部を形成することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、貫通孔15の内径と溶接ピース17の外径との間には公差が存在し、また溶接ピース17は先端に突起20を有するとともに内端面19がテーパ状に形成されていることから、上記公差が大きい場合には、図6(a)において誇張して示すように、貫通孔15の内部において溶接ピース17が倒れやすいという傾向がある。そして、このように倒れた状態の溶接ピース17を管10に押し付けて溶接すると、図6(b)に示すように、その倒れた状態のままで溶接されてしまう。すると、溶接ピース17におけるテーパ状の内端面19のうち、周方向に沿った一部の範囲にしか溶接部21が形成されず、他の部分は非溶着部23として残る。このため、所要の溶接強度を達成できなくなる。反対に所要の溶接強度を得ようとすると、溶接時に溶接ピース17を倒れないように確実に垂直方向に保持しなければならず、作業に熟練を要する。
【0009】そこで本発明は、このような問題点を解決して、挿口突部を形成する際に溶接ピースが倒れた状態で溶接されることを簡単に防止できるようにすることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため本発明の挿口突部を有する管は、管の挿口の外周に沿って配置可能な突部ピースに管径方向の貫通孔が形成され、この貫通孔は管径方向の外側から内側に向かうにつれて小径となるテーパ状に形成され、この貫通孔に、この貫通孔に接するように外周面がテーパ状に形成された溶接ピースが管径方向の外側から装着され、この溶接ピースが管の挿口の外面に溶接されているようにしたものである。
【0011】また、本発明の溶接ピースは、管径方向の外側から内側に向かうにつれて小径となるテーパ状の貫通孔が形成されるとともに管の挿口の外周に沿って配置可能な突部ピースの前記貫通孔に装着されて、管の挿口の外面に溶接されるように構成され、かつ突部ピースの貫通孔に接するテーパ状の外周面が形成されているようにしたものである。
【0012】したがって本発明によると、溶接ピースを管の挿口の外面に溶接するために押し付けた場合に、倒れた状態であっても、その先端が溶融するにつれてテーパ状の貫通孔およびピース外周面の共働作用により溶接ピースは垂直方向に修正されながら溶着する。このため、何ら熟練を要さずに、溶接ピースを管の外面に確実に溶接することが可能である。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図1R>1〜図3にもとづき、図4〜図6に示したものと同一の部材には同一の参照番号を付して、詳細に説明する。図示のように、突部ピース13の貫通孔15は、段部を有しないテーパ状、すなわち管径方向の外側から内側に向かうにつれて小径となるテーパ状に形成されている。また、これに対応して、溶接ピース17の外周面25も、段部を有しないテーパ状に形成され、そのテーパの傾斜は貫通孔15の傾斜に揃えられている。
【0014】このような構成において、挿口11の外周に突部を形成する際には、図1に示すように、突部ピース13を管10の外周面に仮に固定した状態で貫通孔15に溶接ピース17をはめ込む。このとき、溶接ピース17の突起20が挿口11の外面に接し、また外周面25は、周方向に沿った一部分が貫通孔15に接するか、または図示のように全く接していない状態となる。
【0015】そして、この状態の溶接ピース17の突起20を管10の外面に押し付けながら、スタッド溶接を行う。すると、突起20からテーパ状の内端面19の全体に広がるように内端面19が溶融して、図2に示すように、外周面25が突部ピース13の貫通孔15に当たった状態で溶接ピース17が鋳鉄管10の表面に溶接される。21は溶接部である。すると、テーパ状の外周面25と貫通孔15とによって溶接ピース17と突部ピース13とが係り合うことになるため、同時に突部ピース13が鋳鉄管10の外面に固定されることになる。この状態で、溶接ピース17は、その外端面22が突部ピース13の外面と面一になる。
【0016】この場合に、図3に示すように溶接ピース17が倒れた状態で管10の外面に押し付けられ、その状態で溶接が行われても、この溶接ピース17の先端が溶融するにつれてテーパ状の外周面25がテーパ状の貫通孔15の内周面に揃うように溶接が進行する。すなわち、貫通孔15と外周面25との共働作用によって溶接ピース17は垂直方向に修正されながら溶着し、同様に図2に示すように外周面25が貫通孔15に当たった状態で、溶接ピース17の内端面19が全面で鋳鉄管10の表面に溶接されることになる。このため、何ら熟練を要さずに、溶接ピース17を管10の外面に確実に溶接することができる。
【0017】なお、上記においては、突部ピース13として、管10の外周に沿って複数配置されるものを示したが、これに代えて、突部ピース13を、管10に外ばめされるリング状の一体構成とすることもできる。
【0018】
【実施例】口径が100mmのダクタイル鋳鉄製のいわゆる3種の管厚の小さな管において、管外面の円周方向に図1の構成の突部ピースを溶接ピースとともに25個連続的に溶接して突部を形成した。そうしたところ、すべての溶接ピースを確実に鋳鉄管に溶着させることができた。このように突部が形成された挿口を用いて管継手を構成したところ、35tfの高い離脱阻止力を得ることができた。
【0019】
【発明の効果】以上のように本発明によると、管の挿口の外周に沿って配置可能な突部ピースに管径方向のテーパ状の貫通孔が形成され、この貫通孔に、この貫通孔に接するように外周面がテーパ状に形成された溶接ピースが管径方向の外側から装着され、この溶接ピースが管の挿口の外面に溶接されているようにしたため、溶接ピースを管の挿口の外面に溶接するために押し付けた場合に、倒れた状態であっても、その先端が溶融するにつれてテーパ状の貫通孔およびピース外周面の共働作用により溶接ピースを垂直方向に修正させながら溶着することができ、このため溶接ピースの内端面を全面で管に溶接させることができ、したがって、何ら熟練を要さずに、溶接ピースを管の外面に確実に溶接することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の挿口突部を有する管を製造する方法を説明するための断面図である。
【図2】同管の突部が形成された状態を示す断面図である。
【図3】同管を製造するときに溶接ピースが倒れた場合を示す断面図である。
【図4】従来の挿口突部を有する管の製造方法を説明するための断面図である。
【図5】図4に示された部分の横断面図である。
【図6】図4において溶接ピースが倒れた場合を示す断面図である。
【符号の説明】
10 ダクタイル鋳鉄管
11 挿口
13 突部ピース
15 貫通孔
17 溶接ピース
25 外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】 管の挿口の外周に沿って配置可能な突部ピースに管径方向の貫通孔が形成され、この貫通孔は管径方向の外側から内側に向かうにつれて小径となるテーパ状に形成され、この貫通孔に、この貫通孔に接するように外周面がテーパ状に形成された溶接ピースが管径方向の外側から装着され、この溶接ピースが管の挿口の外面に溶接されていることを特徴とする挿口突部を有する管。
【請求項2】 管径方向の外側から内側に向かうにつれて小径となるテーパ状の貫通孔が形成されるとともに管の挿口の外周に沿って配置可能な突部ピースの前記貫通孔に装着されて、管の挿口の外面に溶接されるように構成され、かつ突部ピースの貫通孔に接するテーパ状の外周面が形成されていることを特徴とする溶接ピース。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate