説明

捕虫器

【課題】優れた捕虫効率と美的外観を有する捕虫器を提供する。
【解決手段】虫類を誘引する光線を放射するLED光源部と、光源部を遮蔽する光源カバーと、捕虫器を設置位置に固定するための設置固定部材と、光源カバーを設置固定部材に係合させるための光源カバー固定部材とを有する捕虫器であって、光源カバーは紙を素材として上方が開口し下方が閉鎖された形状をなし、LED光源部は外部より直接視認できないように光源カバーの内部に収容され、LED光線に誘引された虫類が光源カバーの上方開口部から侵入して光源カバー内に捕獲される捕虫器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は室内に飛来する昆虫などを捕獲する捕虫器に係るものであり、食品製造工場や集客を目的とした店舗などにおいて室内に飛来した害虫を捕獲することを目的とするものである。本発明は、光に誘引される虫の習性を利用した捕虫効率に優れた捕虫器を提供するものであり、さらに、美的外観に優れ、室内に捕虫器が設置してあることを意識させることがない、捕獲した虫が露骨に目に見えることがない、また、捕虫器が照射する光が目に入るなどにより人に不快感を与えることがない捕虫器を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食品店や飲食店、食品加工工場には捕虫装置が設置されていることが多い。これは、各種食品の製造ラインでは昆虫が原因の異物混入事故、レストランや商店では昆虫が飛び交うことによる不快感や不衛生感、温室栽培のハウスでは食害など飛翔性昆虫による様々な問題が起こることによる。そのため、これらの設備において虫を捕獲することは必須であり、薬剤の噴霧、電撃殺虫器、粘着捕虫器などの各種の防虫対策が取られているが、対策自体がクレームにつながるものもあり、安全性、メンテナンス、美的外観など改善すべきことが多く残されている。
【0003】
従来用いられている捕虫器はいくつかの捕虫原理に分類される。例えば、(1)粘着剤で粘着捕獲する方法、(2)高電圧線で電殺捕獲する方法、(3)吸引ファンで吸引捕獲する方法、(4)液剤で捕獲する方法、(5)殺虫性物質の蒸散で致死捕獲する方法、などが知られているが、昆虫類を捕虫器にまで誘引するには光を用いているものが多い。しかしながら、それぞれの方法には長所短所があり、特に衛生面、美的外観、メンテナンス面からの要請を満たすものは少ない。
【0004】
捕虫灯は、虫が誘引される光を出射する光源を備え特に飛翔昆虫を誘引対象としている。虫は、約360〜370nmの波長の光である紫外線に誘引されるものが多い。このため、誘虫ランプは、紫外線を含有した光を照射するように構成されその照射光は紫外線と青色光とを主要成分として含んでいる。このため、例えば、飲食店や食品小売店などの清潔さが求められる店舗において捕虫器を設置した場合に、顧客が捕虫器から天井や壁などに照射される青色光により捕虫器の設置に気付くことがある。捕虫器の設置は、虫の存在を暗示しているので顧客は捕虫器に気付いたときに不潔な悪印象を抱くことがある。しかしながら、捕虫器を設置する以外には飛翔昆虫に対する有効な対策を講じることができないので、捕虫器には捕虫性能に加え捕虫器自体の隠匿性または捕虫器との認識をさせない構造が求められていた。
【0005】
光で誘引される昆虫としては、例えば、クロバエ、ハナバエ、カ、ショウジョウバエ、アブ、ユスリカ、ガガンボ、メイガ、シャクガ、ヤガ、ヒトリガ、スズメガ、シャチホコガ、蝶類、カゲロウ類、カメムシ、ヨコバイ、トンボ、コガネムシ、テントウムシ、ゴミムシ、ゲンゴロウ、コメツキムシ、ゾウムシ、カミキリムシなどがあげられ、夜間に飲食店や食品工場に飛来するこれらの昆虫類のほとんどは光を利用した捕虫器により捕獲することが可能である。また、例えば、ハエ類は光に限らず、臭いにより誘引される習性もあり、昼間に匂いに誘引されて飛来し建物内に侵入することもあるが、これらの習性を有する虫類も光を利用した捕虫器により建物内で捕獲することが可能である。
【0006】
次に、光により昆虫を誘引する捕虫器の従来例をいくつか挙げる。
捕虫器の設置を人に認知され難くする捕虫器としては、誘虫ランプと、この誘虫ランプを覆い、誘虫ランプから照射された光が通る光学フィルタと、この誘虫ランプにより誘引された虫を捕獲する捕虫シートとを備えるものであって、光学フィルタが約360nm以上370nm以下の波長の光の最大透過率が略60%以上で、且つ、略400nm以上450nm以下の波長の光、すなわち青色光の最大透過率が10%以下の特性を有する捕虫器が提案されている。この光学フィルタより、誘虫ランプ特有の青色光の光量を低減できるので、青色光が人に目視され難くすることができる。(特許文献1、特許文献2)
また、誘虫ランプにより衛生害虫を効果的に引き寄せ、しかも、その引き寄せ効果を減殺することなく、誘虫ランプ特有の光色を緩和した捕虫装置として、外面の一部が誘引口として開口したランプカバー内に、誘虫ランプと共に照明ランプを配設する。誘虫ランプによってランプカバーの誘引口からカバー内に誘引され虫を捕獲するべく、ランプカバー内に捕虫手段を設け、照明ランプの併用により、誘虫ランプ特有の光色を緩和する捕虫器が提案されている(特許文献3)。
【0007】
また、捕虫器において、器具周辺の環境を汚すことなく虫を静かに捕獲すること、また、大量の虫を捕獲しても器具の捕虫効率が低下することがないようにすることが必要である。こうした捕虫器としては、捕虫器は、虫を誘引する第1の誘引部としての誘虫光源1と、誘虫光源に誘引された虫を捕獲する捕獲部と、捕獲部の入口に設けられこの入口から捕獲部の内部に向かう方向に傾斜して植毛された植毛部と、誘虫光源に誘引された虫を、植毛部を通して捕獲部の内部へ誘引する第2の誘引部としての誘虫光源とを備える。誘虫光源2近寄ってきた虫は、誘虫光源2から出射された光により誘引され、植毛部に侵入する。植毛部に侵入した虫は、捕獲部の内部に向かって植毛部を移動し、植毛部を通り抜けると捕獲部に捕獲され虫は外部に脱出できなくなり餌や水分の不足によって死滅する。(特許文献4)
【0008】
誘虫効果を高めた誘虫装置および捕虫器としては、誘虫装置と粘着性の捕虫シートを用いた捕虫装置とで構成された捕虫器であって、誘虫装置は、波長が300nm以上且つ400nm以下の紫外光を照射する誘虫用のLEDと、下面が開口し、内部にLEDを収納する誘虫装置本体と、誘虫装置本体の開口部に取着される透光性のカバーと、このカバーの一部に形成され、LEDからの紫外光を受けて活性酸素を発生し、有機物の結合を分解することによって二酸化炭素を発生させる光触媒膜とを備えている捕虫器が提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−154500号公報
【特許文献2】特開2008−154499号公報
【特許文献3】特開2006−149252号公報
【特許文献4】特開2009−296987号公報
【特許文献5】特開2007−74908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の光で昆虫を誘引する捕虫器においては、誘引光線の放射方式や、捕獲器入口の構造などがより雑化してそれらを改善することには技術的限界が見えてきていた。そこで、簡単な構造によりさらに捕虫率を向上させる技術的改善は達成することが困難なものとされてきた。本発明は、こうした従来技術に鑑みて鋭意研究を積み重ねることにより達成されたものであり、捕虫器を、虫を誘引するためのLED光源とその制御部が設置された光源部と、光源を外部より目視できないようにする紙製の光源カバーと、光源カバーを設置固定部材に係止するための光源カバー固定部材とを有し、着脱可能とした光源カバー内に捕獲した虫類を貯留する形式の捕虫器を提供するものである。本発明の捕虫器は、簡便な構造を採用することにより捕虫率を向上することを目的とし、上方に開口し下方に向かって狭くなる閉鎖された底部を有する光源カバーにより十分な捕虫率が得られることを見出したことに基づく。
【0011】
本発明は、虫を誘引する光源をLEDとすることにより光源からの発熱量を低減し、光源カバーの温度上昇を抑えることにより光源カバーの素材を紙製とすることを目的とするものである。光源の周囲を紙製のカバーで囲むこと、LEDランプの指向性を利用して上方に光を照射することにより光源が直接目視されることがない。さらに、紙またはプラスチック製の光源カバーの形状、構造は他の材質と比較して自由に形成することができるため、表面へ絵画、写真、模様などを設けること、形状に変化を持たせることが容易となり美的感覚を満足させるものとすることができる。
【0012】
また、本発明の目的は、清掃や捕獲された虫の回収に光源カバーを定期的に交換するにあたり手間がかからず、消耗品や人件費などの維持管理コストの大幅な削減を可能とする捕虫器であって、壁掛け式や天井吊り下げ式などができる設置場所を選ぶことのない捕虫器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)虫類を誘引する光線を放射するLED光源部と、光源部を遮蔽する光源カバーと、捕虫器を設置位置に固定するための設置固定部材と、光源カバーを設置固定部材に係合させるための光源カバー固定部材とを有する捕虫器であって、光源カバーは上方が開口し下方が閉鎖された形状をなし、LED光源部は外部より直接視認できないように光源カバーの内部に収容され、LED光線に誘引された虫類が光源カバーの上方開口部から侵入して光源カバー内に捕獲されることを特徴とする捕虫器。
(2)LED光源部は複数個のLEDランプを有し、LEDランプは開口部に向け光線を放射する1に記載の捕虫器。
(3)光源カバーが紙またはプラスチックを素材としている1または2に記載の捕虫器。
(4)光源カバーが、一枚の紙またはプラスチック製のシートから組み立てられる、あるいは成形加工されたプラスチック製である1から3のいずれかに記載の捕虫器。
(5)光源カバー固定部材と設置固定部材との間に光源カバーを挟み込むことにより光源カバーを設置固定部材に係合する1から4のいずれかに記載の捕虫器。
(6)光源カバーが、光源カバー固定部材により設置固定部材に着脱自在に設置されている1から5のいずれかに記載の捕虫器。
(7)設置固定部材と光源カバー固定部材が密着した状態になると捕虫器が作動する1から6のいずれかに記載の捕虫器。
(8)光源カバーの内面には虫の動きを制限するための粘着面を有する1から7のいずれかに記載の捕虫器。
(9)光源カバーは、無地または、絵画、写真、模様、色彩のいずれか1種以上による装飾が施されている1から8のいずれかに記載の捕虫器。
(10)LED光源部には制御部を配置して、周囲の明暗に対応してLEDの点灯条件を変更することが可能である1から9のいずれかに記載の捕虫器。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以下の効果を奏するものである。
(1)虫を誘引する光源をLEDとすることにより光源からの発熱量を低減し、光源カバーの温度上昇を抑えることにより光源カバーを紙やプラスチック製とすることを可能とする。
(2)光源が直接目視されることがない。
(3)紙製の光源カバーの形状、構造は他の材質と比較して自由に形成することが可能となり、その表面は、無地あるいは、絵画、写真、模様などを設けることにより多様化することが可能となり捕虫器を装飾品として認識させることができ、捕虫器としての存在を意識させることがない。
(4)LED光源の発光特性を制御することにより捕虫効果を高めることができる。
(5)メンテナンスも従来の粘着捕虫器のような清掃や捕獲された虫の回収の手間がかからず、消耗品や人件費などの維持管理コストの大幅な削減を可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の捕虫器の構成部品であるLED光源、LED光源制御部、設置固定部材、光源カバー固定部材を示す。
【図2】本発明の捕虫器を室内の壁に設置した状態を示す。
【図3】LED光源のLEDランプの配置を示す。
【図4】設置固定部材にLED光源および制御部を設置した状態を示す。
【図5】光源カバーの外観を示す。
【図6】他の形状の光源カバーの外観を示す。
【図7】図6に示した光源カバーの平面図を示す。
【図8】図5に示した光源カバーの平面図を示す。
【図9】表面に模様を配し、対応する裏面には粘着面(図示なし)を設けた光源カバーを示す。
【図10】光源カバー固定部材およびそれに備えられた固定用の係止具(ピン)、位置合せ具(孔)を示す。
【図11】光源カバー固定部材に光源カバーを取り付けた状態を示す。
【図12】斜め上から見た本発明の捕虫器の外観を示す。
【図13】真上から見た本発明の捕虫器の外観を示す。
【図14】角度を変えて見た本発明の捕虫器の外観を示す。
【図15】他の光源カバーを設置した本発明の捕虫器の上方からの外観を示す。
【図16】発熱試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、(1)虫類を誘引する光線を放射するLED光源部と、(2)光源部を遮蔽する光源カバーと、(3)捕虫器を設置位置に固定するための設置固定部材と、(4)光源カバーを固定部材に係合するための光源カバー固定部材とを有する捕虫器であって、光源カバーは上方が開口し下方が閉鎖された形状をなした紙またはプラスチック製であり、LED光源部は外部より直接視認できないように光源カバーの内部に収容され、誘引された虫類が光源カバーの上方開口部から侵入して光源カバー内に捕獲される捕虫器に関する。屋内に設置した本捕虫器が視野に入っても捕虫器であることを感じさせることがなく、人に室内装飾品であるとの感覚を与えることが可能な意匠性に優れた捕虫器を提供するものである。また、本発明の捕虫器は虫類の捕獲効果にも優れている。
【0017】
集客を目的とした店舗などの室内に設置して虫を捕獲する捕虫器は、特に、レストランなどの飲食物を販売ないし提供する店舗においては必需品である。しかしながら、捕虫器が設置してあることが顧客に認識されると、虫の存在が推察され、店舗に対する不潔感、嫌悪感などを呼び起こすことにもなりかねない。また、光で虫を誘引する形式の捕虫器では、誘引する光が捕虫器から漏れて人の目に入ると、通常では感知しない波長の光による刺激を人に与えることとなり不快感を与えるとか、その特殊な光により捕虫器の設置が認識されることとなることが多い。したがって、捕虫器には、捕虫効率が良好であることのみならず、人に不快感を与えないこと、できれば捕虫器の存在を認識されにくいことが不可欠となる。さらには、室内装飾品として意匠性に優れている側面を有することが望まれる。
【0018】
本発明の捕虫器は上記の問題点を解決するものであり、例えば、(1)LED光源部、(2)光源カバー、(3)設置固定部材、(4)光源カバー固定部材、とから構成されているが、必要に応じて、(5)明暗センサー、(6)LEDランプの制御部、(7)光源カバー固定部材が設置固定部材に密着した状態になったことを感知して捕虫器を作動させる感知部材、を設なえることができる。本発明の捕虫器の一例は図1に示すように、設置固定部材2にはLED光源部1とその制御部12が配設され、光源カバー固定部材3ならびに電源コードを有している。光源カバー固定部材3には光源カバー4が取り付けられて設置固定部材2と一体化される。すべての部品が組み立てられた後に室内に設置された本発明の捕虫器の外観の一例を図2に示す。図2では左端部周辺の壁に設置されて四角錐形状の捕虫器と電源コードが示されている。
次にこれらの部材について説明する。
【0019】
[LED光源部]
これまでの捕虫器は光源に紫外線を発する蛍光灯ランプを使用していることが多いが、本発明の捕虫器では光源にLEDランプを使用している。光源として虫を誘引しやすい特定の波長(色)の光だけを発するLEDを使用することができるため効率良く捕虫することができる。LEDランプは発する光線が開口部から上方空間に照射されるように上向きに配置されている。LEDランプの指向特性は約15°であるため、上方に照射された光線が光源カバーを通して目視されることはほとんどない。また、LEDランプはこれまでのランプ類とは異なり、寿命が長いため長期間の使用が可能となるなどの利点が多い。さらに、LEDランプは発熱しにくい特徴を有することから器具の一部に紙やプラスチックなどの熱に弱い素材を使用することが可能となり、これらを構成部品の素材とすることにより、簡便な加工性と多様な装飾性を利用することを可能とした。
【0020】
本発明で使用するLEDランプは、虫を誘引する波長の光を照射することができるものであれば如何なるものでも使用することはできるが、特定の波長を照射するLEDランプを入手することができるという特徴を利用して、特に、虫の種類によりLEDランプの照射する光の波長を選択することによりより一層の捕虫効率を達成することができる。
例えば、375nm、400nm、574nm、365nmの光を照射することができるLEDランプが組み合わされて使用される。375nmの光は紫外線に該当し、多種多様な虫を誘引する作用を有し、400nmの光は紫色に該当し、アザミウマ類を誘引する作用を有し、また574nmの光は黄色に該当しタネバエ、ハモグリバエなどのハエ類やコナジラミ類を誘引する作用を有する。これらの波長の光を組み合わせることにより効率的な捕虫効果を発揮することができる。また、LEDランプ11は、例えば、12個の375nmランプ、18個の400nmランプ、および20個の574nmランプを組み合わせて図3に示すように配列する。それぞれの波長のLEDランプを混合するように配列することにより虫の誘引効率を向上することができる。また、捕虫器から発せられる光を人が捕虫器としてではなく装飾体として認識させるには、柔らかい可視光線を捕虫器から出すようにすることが好ましい。
【0021】
LEDランプによる機器の発熱を検討したところ、LEDランプを使用することにより蛍光灯を使用するよりも機器の温度を約13℃低下させることができることが判明した。例えば、蛍光灯では20mm離れた地点での温度は、気温が40℃の場合には、約60℃の高温になることが予想されるため蛍光灯の光が当たる壁材などでは高温による変質、変形、異臭の発生などの恐れがあり、熱に弱い紙やプラスチック類を素材とした部材の使用は困難である。しかしながら、LEDランプを使用すると温度は約48℃に留まり、ランプの発熱による異常は発生しないものと予想される。
【0022】
[設置固定部材]
設置固定部材2には、捕虫器本体を設置個所、例えば壁面に固定するための固定具23と、光源カバー固定部材3を係止するための係止具21が設けられている。固定具23は捕虫器を室内の壁、柱などに設置するためのものであり、例えば、ネジ止めして固定するための孔、引っかけピン、磁石などを利用した固定具を利用して設置される。また、光源カバー固定部材3を係止するための係止具21は、光源カバー固定部材3の係止具31を通し固定するための孔とすることができるが、その構造は光源カバー固定部材3を係止することができるものであればいずれの構造をしていても差支えない。例えば、設置固定部材2には、木ネジなどでネジ止めして固定するための固定具(孔)23および、光源カバー固定部材3の係止具(ピン)31を通し固定するための係止具(孔)21が設けられている。係止具(ピン)31を係止具(孔)21の孔に通すことにより光源カバー4の取り付け位置を正しく規制できる。
また、設置固定部材2には、光源カバー4を取り付けた光源カバー固定部材3を設置固定部材2に確実に位置決めして固定し、地震などの揺れによる落下を防止するために他の固定具を設置することができる。例えば、光源カバー固定部材3にはギボシ形状の孔からなる位置合せ雌具32を複数個設け、これを設置固定部材2に設けたピン状(ギボシ形状)の位置合せ雄具22に係合させる。
設置固定部材2の形状は特に限定されず、捕虫器全体の形状、構造に応じて様々な形状が利用できる、例えば、三角形、台形形、長方形などの四角形、円形、楕円形など例示される。図1または図4に示すように三角形状の板状とすると様々な形状の光源カバー4に対応できる。
【0023】
[光源カバー]
光源カバー4は、LED光源を目立たないように目隠しすると同時に、捕獲された虫を貯留する容器となる。光源カバー4は上方が外部に開口し下方は閉鎖された形状を有し、LEDにより誘引された虫は上部の開口から侵入して光源カバー4の内部に留まる。また、虫は光源カバーの内面にある粘着面に捕らえられて動けなくなる。
光源カバー4の形状は、上方には開口を有し下方が閉鎖されている空間を形成すればよくその形状、構造は限定されない。例えば、図5および図6に示すような上部開口から下部の閉鎖部分にかけて次第に狭くなるように傾斜した外観とすることが好ましい。傾斜面を虫が落下して底部に集まるか、粘着面に捕らえられることとなる。具体的には、側面部が丸く傾斜しているものや側面部が直線的に傾斜しているもの、底部が横に広がっているもの、底部が尖がっているものなど様々な形状の組合せが採用される。その素材としては熱には弱い紙やプラスチック類を使用することができる。紙などの素材を使用することができることにより、自由な変形や成形性が保持され、さらに、色彩を付与したり、印刷を施すことにより人の目には捕虫器であることを感じさせないで装飾品を設置しているような感覚を醸し出すことができる。
【0024】
光源カバー4は、通常は一枚の紙シートから切り出して折畳むことにより所定の大きさや形状を有する形に組み立てて使用することが好ましく、例えば、図5や図6に記載の形状とするには、図7や図8に記載の展開図に示した紙シートを光源カバー固定部材に係止することにより光源カバーが形成される。光源カバー4には、光源カバー固定部材3に光源カバー係止具(ピン)31に通して固定するための孔44が設けられている。また、光源カバー4はプラスチックの一体成型によっても作製される。
【0025】
光源カバー4の内面には粘着剤を塗布しておき、内部空間に飛来した虫の動きを制限することが好ましい。この粘着剤の粘着力は、虫の動きを完全に封じ込めるほど強力である必要はなく粘着剤に接触した虫が自由に飛び回れない程度にする粘着力で十分である。粘着剤としては、ゴムや樹脂をその成分とする材料が使用できる。光源カバー4は内側には虫を捕らえる粘着面、外側は様々な形状と色、または印刷により様々な絵、模様などを施されていることが好ましい。
粘着剤の内側の粘着剤に虫が大量に付着すると粘着面としての効果が低減されるので定期的に新しいものに交換することが好ましく、捕獲された虫は光源カバー4と共に廃棄される。光源カバー4を交換する際には、カバー4の形状、表面に施された色、絵、模様などを変えることによって店舗の雰囲気を変える装飾品としての役割を担うことができる、また、図9に示すように季節に応じた花模様とするとか、他に色や形、絵などにより季節を表現することも可能となる。
【0026】
[光源カバー固定部材]
光源カバー固定部材3は、光源カバー4を設置固定部材2に取り付けるための部材であって、光源カバー4と設置固定部材2の双方に係合する部材31,32を有している。光源カバー固定部材3の形状は光源カバー4と設置固定部材2の形状に応じて適宜決定されるものであるが、例えば、図10に示すような三角形状であることができる。光源カバー固定部材3は、例えば、端縁に沿って光源カバー固定用の係止具31が複数設けられ、この係止具31をピン状となし光源カバー4に設けられた孔44に差し込み光源カバーと係合させることができる。この係止具31は同時に設置固定部材2に設けられている光源カバー固定部材の係止具21に係合することができるので、光源カバー4の端部が光源カバー固定部材3と設置固定部材2との間に挟まれる形態で強固に固定されることとなる。
【0027】
図11には、光源カバー固定部材3に光源カバー4を取り付けた状態を示した。光源カバーに設けられた複数の係止用孔44には、光源カバー固定部材3の対応する係止具31(ピン)が挿入されて両者は係止される。光源カバー4を取り付けた光源カバー固定部材3を設置固定部材2に取り付ける作業は、剛性のない光源カバー4を手に持って行わなければならないことから、非常に不安定で困難な作業であることであることが判明した。その解決策として、光源カバー固定部材3と設置固定部材2を簡便に設定位置に仮止めすることができるような部材を設けることが好ましい。そのために、光源カバー固定部材3にはギボシ形状の孔を複数設けて位置合せ雌具32とし、設置固定部材2のこれに対応する位置にはギボシ状孔に挿入されるピンを設けて位置合せ雄具22とし、両部材32,22により取り付けを容易となした。この構造は、地震などの揺れによる捕虫器の落下を防止する手段ともなる。
さらに、光源カバー固定部材3にはマグネットを埋め込み、設置固定部材2にマグネットの力で密着して取り付けられるようにして強い振動などにより脱落を防止することができる。また、光源カバー固定部材3には、捕虫器節固定部材2を木ネジなどで固定した場合の木ネジの頭部を逃がす孔33を設けることができる。
【0028】
[光源カバー設置確認センサー]
光源カバー設置センサーが設置固定部材2の光源カバー固定部材係止具21のいずれかのひとつの背面に取り付けられる。このセンサーは、光源カバー固定部材3の光源カバー係止具31が、設置固定部材2にある光源カバー固定部材係止具21に正しく取り付けられていることを感知することを目的とするものであり、例えば、ピン状の光源カバー係止具31が正しく光源カバー固定部材係止具21の孔に挿入されていることを認識する。センサーが正しく挿入されていることを感知しない場合には捕虫器は稼働しない仕組とする。光源カバー4は定期的に交換することで衛生状態を良好に保つことができるが、交換作業は交換する人の個人差が生じ易く、正しく取り付けられずに落下する恐れがあり、地震などによって落下する確率はさらに高まる。このセンサーは個人差を生じず光源カバーが正しく取り付けられるように安全性を高める役割がある。
【0029】
[設置固定部材、LED光源部、光源カバー、光源カバー固定部材の配置など]
図4には、設置固定部材2にLED光源部1を取り付けた状態を示し、例えば、白い矢印で示した孔21は光源カバー固定部材3との係合に使用され、黒い矢印で示したピン22は光源カバー固定部材3との位置決めに使用され、孔23は捕虫器自体の壁などへの設置のための木ネジ用に使用される。
LED光源部1は設置固定部材2に固定され、LED光源部1からの光線が直接人の眼にはいらないように上部に設置される。図12は図5に示した光源カバーを使用した捕虫器を斜め上から観察した図であって上方に広い開口部が見える。視点の位置を変えると図13または図14のごとき外観となる。通常、捕虫器の上方開口部は人の目線よりも高い位置に設置されるから、LEDの光や捕獲された虫の残骸が直接目視されることは避けられる。図13に示した具体例では、光源カバー固定部材3は三角形状をなしているが、同じ形の固定具3を利用して図14の丸みを帯びた形状の光源カバー41や、図15の角形状の光源カバー42などの異なる形状のものを取り付けることができる。このとき光電カバー4の展開図は、図7、図8の形状の一枚のシートからなる。また、図2に示したような四角錐形状の光源カバーを取り付けることができる。
【0030】
[制御部]
本発明の捕虫器のLED光源部には制御部を付属させて、外界の明暗に応じたLED照明の条件となすことにより捕虫効果を向上させることができる。制御部は、通常、LED光源部に一体として組み込まれ、室内などの外界の明暗を検知するには別に明暗センサー(図示なし)が適宜位置に設けられている。例えば、飲食店などで閉店後に消灯した室内では、明暗センサーの検知により制御部がLEDを自動的に制御して捕虫能力を環境に適応した条件に設定することができる。例えば、消灯された暗い室内では、LED光源の発光が点滅する間隔を長くなるように制御するとより高い誘引効果が発揮される。
【0031】
[捕虫器の設置例]
図2には、本発明の捕虫器を喫茶店などの屋内に設置した例を示す。捕虫器は四角錐形状をして人の目線よりもかなり上に、例えば、最上端部が床より約2mmの位置に設置されている。開口部が目線より高く設置されているので、LED光源や捕獲された虫が直接目視されることはない。この捕虫器は、一見、間接照明器具であるかのように判断される。
【0032】
[発熱試験例]
蛍光灯とLEDランプの発熱による周囲の温度上昇を測定したところ、LEDランプを使用することによりランプの周囲の部材として紙などの熱に弱い材質が使用可能であることが判明した。以下に、試験について説明する。
アクリル製の容器(650×300×115mm)内に、紫外線照射するLEDランプを30個、可視光を照射するLEDランプを20個実装するLED光源を収納し密閉した。また、同じ大きさの容器内に蛍光灯(東芝ライテックの捕虫用蛍光ランプFL20S−BL−A)を密閉状態となし、それぞれの中央部に光源より20mm離れた位置に取り付けた熱電対により温度の変化を測定した。
その測定した実測値を表1に示す。図16には周囲温度が25℃とした場合に換算して温度変化を示した。周囲温度(25℃)に換算すると、飽和温度は蛍光灯では45.8℃、LEDランプでは32.9℃となり、LEDランプが約13℃低いことが判明した。したがって、室温が40℃に達したならば、蛍光灯では約60℃の高温に達することが予想される。
【0033】
【表1】

【0034】
以上に説明した本発明の実施形態に係る捕虫器によれば、光源の寿命が例えば4〜5倍に伸びること、消費電力が削減することなどによるコスト低減効果が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の捕虫器は飛来する害虫を捕獲することを目的とするものであり光に誘引される虫の習性を利用して捕獲する仕組みとなし、食品類を提供するレストランなどの店舗、食品の製造工場などの室内に設置する捕虫器として利用するに適している。日本国内においても南方に行くほど昆虫類の活動は活発になり室内に飛来する昆虫類による被害は大きくなっている。例えば、鹿児島の郊外型レストランの周辺は田んぼに囲まれ、夏には大量に発生した昆虫が店内に侵入するため捕虫器の設置は必須の機器である。本発明の捕虫器は、捕虫率に優れると共に一見するとオシャレな間接照明と間違うばかりの外観を有し、郊外型のレストランなどに最適な外観および性能を有している。また、LEDランプを使用しているため長寿命であり、使用電力が少ないため、消費エネルギーの低減にも寄与するものであり、産業上に寄与するところは大きいものがある。
【符号の説明】
【0036】
1:LED光源部
11:LEDランプ
12:LED電源制御部
2:設置固定部材
21:光源カバー固定部材係止具
22:位置合せ雄具(ピン)
23:捕虫器固定具(孔)
3:光源カバー固定部材
31:光源カバー係止具
32:位置合せ雌具(孔)
33:木ネジ頭逃し孔
4:光源カバー
41:丸形光源カバー
42:角形光源カバー
43:平面に展開した光源カバー
44:係止用孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
虫類を誘引する光線を放射するLED光源部と、光源部を遮蔽する光源カバーと、捕虫器を設置位置に固定するための設置固定部材と、光源カバーを設置固定部材に係合させるための光源カバー固定部材とを有する捕虫器であって、光源カバーは上方が開口し下方が閉鎖された形状をなし、LED光源部は外部より直接視認できないように光源カバーの内部に収容され、LED光線に誘引された虫類が光源カバーの上方開口部から侵入して光源カバー内に捕獲されることを特徴とする捕虫器。
【請求項2】
LED光源部は複数個のLEDランプを有し、LEDランプは開口部に向け光線を放射する請求項1に記載の捕虫器。
【請求項3】
光源カバーが紙またはプラスチックを素材としている請求項1または2に記載の捕虫器。
【請求項4】
光源カバーが、一枚の紙またはプラスチック製のシートから組み立てられる、あるいは成形加工されたプラスチック製である請求項1から3のいずれかに記載の捕虫器。
【請求項5】
光源カバー固定部材と設置固定部材との間に光源カバーを挟み込むことにより光源カバーを設置固定部材に係合する請求項1から4のいずれかに記載の捕虫器。
【請求項6】
光源カバーが、光源カバー固定部材により設置固定部材に着脱自在に設置されている請求項1から5のいずれかに記載の捕虫器。
【請求項7】
設置固定部材と光源カバー固定部材が密着した状態になると捕虫器が作動する請求項1から6のいずれかに記載の捕虫器。
【請求項8】
光源カバーの内面には虫の動きを制限するための粘着面を有する請求項1から7のいずれかに記載の捕虫器。
【請求項9】
光源カバーは、無地または、絵画、写真、模様、色彩のいずれか1種以上による装飾が施されている請求項1から8のいずれかに記載の捕虫器。
【請求項10】
LED光源部には制御部を配置して、周囲の明暗に対応してLEDの点灯条件を変更することが可能である請求項1から9のいずれかに記載の捕虫器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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