説明

捺染処理装置

【課題】 乾式転写捺染法における転写工程と定着工程とを連続的に処理する捺染処理装置を提供する。
【解決手段】 布帛Rを所定の送り速度vで搬送しながら、染料を含む転写層を有する転写紙rを布帛Rに積重して加圧・加熱処理し、転写紙rの転写層を布帛Rに転写する転写部2と、転写部2の下流側に設けられ、所定の送り速度vで搬送される布帛Rに対して蒸気によって加熱処理して、転写層の染料を布帛Rに定着させる定着部3とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の布帛に、染料を含む転写層を有する転写紙を積重して加熱処理または加圧・加熱処理することによって、転写紙の転写層を布帛に転写して布帛を捺染する捺染処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、布帛に図柄を堅牢・精細に描く方法として、コンピュータを用いて電子データで前記図柄を作成し、インクジェットプリント方式で染料を布帛に付与する無製版プリント法が注目されている。
【0003】
無製版プリント法は、インクジェットプリンタを用いて布帛へ図柄を直接描画する直描式の捺染法(たとえば、特許文献1参照)と、染料を受容するための糊剤などを含む染料受容層を基材上に積層して形成された転写用紙に対して、インクジェットプリンタを用いて染料を噴射して図柄を描画することによって、染料受容層と染料とから成る転写層を有する転写紙を先ず作製し、この転写紙の転写層を布帛に転写して布帛を捺染する転写捺染法とに大別される。転写捺染法としては、水で湿らせた布帛に転写紙を積重して加圧・圧着処理することによって転写層を転写する湿式転写捺染法と、布帛に転写紙を積重して加熱処理または加圧・加熱処理することによって転写層を転写する乾式転写捺染法(たとえば、特許文献2参照)とが知られている。
【0004】
直描式の捺染法は、
・インクジェットプリンタから噴射される染料が布帛に滲むことを防止するために、布帛には予め糊剤などの滲み防止剤を塗布しておく必要があるが、布帛は伸縮性を有するため、搬送ローラによって搬送される際に、塗布された滲み防止剤にひび割れが生じてしまい、高精度で描画することができない、
・布帛がたとえばレース地などのような空隙が大きい組織である場合、インクジェットプリンタによる描画は実際上困難である、
・グラデーションを綺麗に描画することができない、
・インクジェットプリンタを用いて布帛に対して直接描画されるので、適正に描画できなかった場合には廃棄しなければならず、布帛の損失が大きい、
などといった短所がある。また湿式転写捺染法は、図柄の繊細性と再現性に劣るといった短所がある。
【0005】
これに対し、乾式転写捺染法は、
・布帛に対して高画質・高精細に図柄を転写することができる、
・インクジェットプリンタを用いた描画は、染料を受容するための受容層を有する転写用紙に対して行われるため、適正に描画できなかった場合であっても、布帛を廃棄する必要がない、
などといった長所がある。
【0006】
この乾式転写捺染法では、大きく分類すると、布帛に転写紙を積重して加熱処理または加圧・加熱処理することによって、転写紙の転写層を布帛に転写する転写工程、転写層が転写された布帛を蒸気などで加熱処理することによって、転写層の染料を布帛に定着させる定着工程、定着工程後の布帛を洗浄液で洗浄することによって、染料受容層に含まれていた糊剤などを取り除く洗浄工程、および、洗浄工程後の布帛を乾燥させる乾燥工程が順次処理される。従来の乾式転写捺染では、前記の各工程は、1つの工程の処理だけを行う機能のみを備えた専用の各処理装置によって、工程ごとに個別に処理されている。
【0007】
前記のように工程ごとに専用の処理装置が用いられる場合、一の工程から次の工程へ移行する際に、一の工程における処理済の布帛を処理装置から取り外し、次の工程の処理装置まで搬送して該処理装置へセッティングするといった準備工程が必要となる。このような準備工程を容易かつ円滑に行うとともに、布帛に折り目や皺が生じることを回避するために、各工程における処理済の布帛は、ロール状に巻回された状態で管理されている。
【0008】
それ故、工程ごとに個別の処理装置を用いる従来の乾式転写捺染では、転写工程における処理済の布帛のロールにおいて、転写工程の処理開始側の端部(始端部)がロール中心部に配置され、転写工程の処理終了側の端部(終端部)がロール外周部に配置されることとなり、このような布帛のロールが定着工程の処理装置にセッティングされるので、転写工程における終端部が定着工程における始端部となり、転写工程における始端部が定着工程における終端部となってしまう。
【0009】
したがって、工程ごとに個別の処理装置を用いる従来の乾式転写捺染では、転写のための加熱処理または加圧・加熱処理が行われてから定着のための蒸気加熱処理が行われるまでの未定着期間が、布帛の長手方向の位置によって異なっている。このような未定着期間の差に起因して、従来の乾式転写捺染処理後の布帛には、布帛の長手方向に沿って色むらが生じているという問題がある。また、各工程間には準備工程が必要であり、転写工程が開始されてから乾燥工程が完了するまでの所要期間が長くなっているという問題もある。これらの問題を解決するためにも、乾式転写捺染法における各工程を連続的に処理可能な処理装置の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−311782号公報
【特許文献2】WO2007/111302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、特許文献2にも記載されているように、転写工程では、1〜3秒程度という短時間の加圧・加熱処理によって転写紙から布帛へ図柄が転写されるのに対し、定着工程では、布帛へ染料を定着させるために15〜30分程度という長時間の蒸気加熱処理を要する。また、処理対象の布帛の素材や染料の種類など種々の条件によって、加圧・加熱処理に要する処理時間と蒸気加熱処理に要する処理時間の組合せも異なる。
【0012】
従来の乾式転写捺染における各処理装置は、不変の布帛の搬送経路が形成され、装置内における布帛の送り速度を調整可能な機構を備えている。したがって、工程ごとに個別の処理装置を用いる従来の乾式転写捺染では、各処理装置における布帛の送り速度を個別に調整するだけで、加圧・加熱処理および蒸気加熱処理の各処理時間を所定の時間にすることが可能である。
【0013】
しかしながら、1つの処理装置で転写工程と定着工程とを連続的に処理させるためには、処理装置内における布帛の送り速度を同速にしておく必要がある。したがって、布帛の搬送経路が不変である従来の各処理装置を単純に連設しただけの装置では、加圧・加熱処理および蒸気加熱処理が所定の処理時間だけ行われるように、転写工程と定着工程とを連続的に処理させることができないという問題がある。
【0014】
特許文献1には、複数の処理部が連設されて成るインクジェット布帛捺染装置において、インクジェットにより布帛を印捺する捺染部と捺染後の布帛を加熱する後処理部とにおける布帛の移送速度を調整するために、捺染部と後処理部との間に調整部を設けることが開示されている。しかしながら、該調整部は、捺染部における布帛の移送が印捺動作に同期して所定距離ずつステップ的に行われるために設けられているものであり、インクジェットによる直描式の捺染に特有の構成であり、乾式転写捺染における転写工程と定着工程とを連続的に処理させる場合に適応することはできない。このように、乾式転写捺染においては、従来の各処理装置を単純に連設することができないという問題がある。
【0015】
また、転写工程と定着工程とを連続的に処理するために、転写工程を処理する転写部と定着工程を処理する定着部と連設すると、定着工程で用いられる加熱用の蒸気が転写部へ漏出してしまうおそれがある。漏出した蒸気は、転写部内の温度および湿度を上昇させるため、これにより、転写紙の転写層が布帛へ適正に転写されなくなるおそれがあるという問題がある。
【0016】
本発明の目的は、乾式転写捺染法における転写工程と定着工程とを連続的に処理する捺染処理装置を提供することである。また本発明の他の目的は、転写工程において、定着工程で用いられる蒸気による影響を可及的に軽減することができる捺染処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、布帛を所定の送り速度で搬送しながら、染料を含む転写層を有する転写紙を該布帛に積重して加熱処理または加圧・加熱処理し、転写紙の転写層を布帛に転写する転写部と、
前記転写部の下流側に設けられ、前記所定の送り速度で搬送される布帛に対して蒸気加熱処理して、転写層の染料を布帛に定着させる定着部とを含むことを特徴とする捺染処理装置である。
【0018】
また本発明は、前記定着部は、前記所定の送り速度に応じて、定着部内における布帛の搬送経路の経路長を調整する調整手段を備えることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記調整手段は、
布帛が巻き掛けられる複数の搬送用ローラと、
前記各搬送用ローラ間の間隔を変化させる間隔調整手段とを備えることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記定着部は、
チャンバと、
蒸気を発生し、前記チャンバ内の空間に蒸気を噴出する蒸気発生手段と、
前記転写部から搬送される布帛を、前記チャンバ内の空間へ搬入するための搬入口とを有し、
前記搬入口は、前記チャンバ内における有効定着温度領域よりも下方に配設されることを特徴とする。
【0021】
また本発明は、前記チャンバの外方から前記搬入口に向けて送風する送風手段をさらに備えることを特徴とする。
【0022】
また本発明は、前記搬入口を含む周囲の領域を加熱する加熱手段をさらに備えることを特徴とする。
【0023】
また本発明は、前記定着部の下流側に設けられ、前記所定の送り速度で該定着部から搬送される布帛に対して、洗浄液を用いて洗浄処理する洗浄部をさらに備えることを特徴とする。
【0024】
また本発明は、前記洗浄部の下流側に設けられ、前記所定の送り速度で該洗浄部から搬送される布帛に対して乾燥処理する乾燥部をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、染料を含む転写層を有する転写紙を布帛に積重して加熱処理または加圧・加熱処理して、転写紙の転写層を布帛に転写する転写部と、転写部の下流側に設けられ、転写部から搬送される布帛に蒸気加熱処理し、布帛に染料を定着させる定着部とを備え、捺染処理対象の布帛は、転写部から定着部に亘って転写工程を適切に処理するための所定の送り速度で搬送される。
【0026】
このように、転写工程と定着工程とを連続的に処理可能な捺染処理装置を実現することができるので、工程ごとに個別の処理装置を用いる従来の乾式転写捺染のように布帛をロール状に巻回する必要がなく、加圧・加熱処理が行われてから定着のための蒸気加熱処理が行われるまでの未定着期間が布帛の長手方向の位置によって異なるという問題を解消することができる。したがって、転写捺染処理後の布帛における色むらの発生を防止することができる。さらに、転写工程と定着工程との間の準備工程が必要なくなるので、作業者の負担を軽減できるとともに、転写工程の開始から定着工程の完了までの所要期間を短縮することができる。
【0027】
また本発明によれば、定着部には、前記所定の送り速度に応じて、定着部内における布帛の搬送経路の経路長を調整する調整手段が備えられている。したがって、布帛の種類などの条件によって異なる所定の送り速度で布帛を搬送したとしても、定着部内における布帛の搬送経路の経路長を調整することによって、定着工程における処理時間を所定の時間に調整することができる。
【0028】
転写工程と定着工程とを連続的に処理可能な捺染処理装置では、工程ごとに個別の処理装置を用いる従来の乾式転写捺染のように布帛をロール状に巻回する必要がないので、加圧・加熱処理が行われてから定着のための蒸気加熱処理が行われるまでの未定着期間が布帛の長手方向の位置によって異なるという問題を解消することができる。したがって、転写捺染処理後の布帛における色むらの発生を防止することができる。さらに、転写工程と定着工程との間の準備工程が必要なくなるので、作業者の負担を軽減できるとともに、転写工程の開始から定着工程の完了までの所要期間を短縮することができる。
【0029】
また本発明によれば、布帛が巻き掛けられる複数の搬送用ローラの間隔を変化させるという単純な構成を備えることによって、布帛の搬送経路の経路長を調整することができるので、装置全体が複雑化することを回避できる。
【0030】
また本発明によれば、定着部は、加熱用の蒸気が充満されるチャンバと、チャンバ内の空間に蒸気を噴出する蒸気発生手段と、転写部から搬送された布帛をチャンバ内の空間に搬入するための搬入口とを有し、搬入口は、チャンバ内における有効定着温度領域よりも下方に設けられる。したがって、チャンバ内に充満した蒸気が、搬入口を介して搬送方向上流側へ、すなわち転写部が設けられる側へ漏出してしまうことを可及的に防止することができる。これにより、転写部と定着部とが連設されている場合であっても、定着部の蒸気によって転写部内の温度および湿度に与える影響を軽減し、転写紙の転写層が布帛へ適正に転写されなくなることを阻止することができる。
【0031】
また本発明によれば、送風手段によってチャンバの外方から搬入口に向けて送風が行われるので、チャンバ内に充満している蒸気が搬入口付近で結露することを防止することができる。これにより、布帛に転写された転写層に、結露によって生じた液滴が付着することを防止することができる。すなわち、転写捺染処理後の布帛において、転写層への液滴の付着による色むらの発生を防止することができる。また、チャンバ内に充満した蒸気が、転写部が設けられる側へ漏出してしまうことを可及的に防止することができる。
【0032】
また本発明によれば、布帛が搬入される搬入口近傍が加熱手段によって加熱されるので、チャンバ内に充満している蒸気が搬入口付近で結露することを防止することができる。これにより、布帛に転写された転写層に、結露によって生じた液滴が付着することを防止することができる。すなわち、転写捺染処理後の布帛において、転写層への液滴の付着による色むらの発生を防止することができる。また、チャンバ内に充満した蒸気が、転写部が設けられる側へ漏出してしまうことを可及的に防止することができる。なお、送風手段と加熱手段とは、併設されることが好ましい。
【0033】
また本発明によれば、転写紙から布帛へ転写された転写層に含まれる、糊剤などの不要な成分を洗浄液によって洗い流すための洗浄部が、定着部の下流側に設けられる。したがって、定着工程と洗浄工程との間の準備工程が必要なくなるので、作業者の負担を軽減できるとともに、転写工程の開始から洗浄工程の完了までの所要期間を短縮することができる。
【0034】
また本発明によれば、洗浄部において洗浄液に浸漬された布帛を乾燥させるための乾燥部が、洗浄部の下流側に設けられる。したがって、洗浄工程と乾燥工程との間の準備工程が必要なくなるので、作業者の負担を軽減できるとともに、転写工程の開始から乾燥工程の完了までの所要期間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る捺染処理装置100の概略的な構成を示す系統図であり、捺染処理装置100の稼動時の状態を示す図である。
【図2】捺染処理装置100の定着部3およびその近傍を示す斜視図であり、搬送方向X1上流側から見たときの図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る捺染処理装置100Aの一部の概略的な構成を拡大して示す図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る捺染処理装置100Bの一部の概略的な構成を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、本発明の実施形態に係る捺染処理装置100の概略的な構成を示す系統図であり、捺染処理装置100の稼動時の状態を示す図である。捺染処理装置100は、乾式転写捺染法によって布帛Rを捺染する装置であって、染料を含む転写層を有する転写紙rを布帛Rに積重して、転写紙rと布帛Rの積層体Lを加圧・加熱処理し、転写紙rの転写層を布帛Rに転写する転写部2と、転写層が転写された後の布帛(以下、「転写後布帛」と称する)R1を蒸気によって加熱処理し、転写層に含まれる染料を布帛Rに定着させる定着部3と、定着処理が施された後の布帛(以下、「定着後布帛」と称する)R2を洗浄液42を用いて洗浄処理する洗浄部4と、洗浄処理が施された後の布帛(以下、「洗浄後布帛」と称する)R3を乾燥処理する乾燥部5とを含み、各処理部2〜5を、前記に記載した順番で一直線上に連設することによって構成されている。つまり、捺染処理装置100は、転写工程、定着工程、洗浄工程および乾燥工程を、連続的に処理するように構成された装置である。
【0037】
まず、捺染処理装置100による処理対象の布帛Rおよび転写紙rについて説明する。
布帛Rは、天然繊維材料または/および合成繊維材料から成り、より詳細には、セルロース系繊維材料、蛋白質系繊維材料および合成繊維材料選択された一種、またはこれらから選択された二種以上の繊維材料からなる織物、編物、または不織布である。ここで、セルロース系繊維材料としては、綿、麻、リヨセルおよびレーヨン(たとえば、ポリノジックレーヨン、ビスコースレーヨン、キュプラレーヨンなど)などを挙げることができ、蛋白質系繊維材料としては、絹、羊毛および獣毛などを挙げることができ、合成繊維材料としては、ナイロン、ビニロン、ポリエステル(たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアルキレンテレフタレート、乳酸ポリエステルなど)、トリアセテート、ジアセテート、ポリアミド、ポリアクリルなどを挙げることができる。
【0038】
転写紙rは、基材B上に染料受容層を積層して形成された転写用紙に対して、インクジェットプリンタを用いて染料を噴射して図柄を描画することによって作製される。ここで、前記転写層とは、基材B上に形成された層、すなわち染料受容層および染料から成る層のことである。すなわち、転写紙rは、基材Bと転写層とから構成される。
【0039】
基材Bは、用紙またはフィルムであってもよく、用紙またはフィルム上に離型剤層を積層して形成されたものであってもよい。用紙としては、クラフトパルプおよびグラインドパルプなどのパルプまたはリサイクル紙を原料として抄紙されたパルプ紙、再生紙を用いることができ、フィルムとしては、耐熱性の合成樹脂フィルム、たとえばポリエステルフィルムなどが用いることができる。また、離型剤層は、有機溶剤可溶性の合成樹脂層であることが、その形成が容易になるので好ましく、有機溶剤可溶性の合成樹脂としては、有機溶剤可溶性のシリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ステアリン酸樹脂およびポリエステル樹脂から選択された一種、またはこれらから選択された二種以上の混合物などを挙げることができる。
【0040】
染料受容層は、親水性合成樹脂と親水性糊剤とを主体として含み、さらに各種助剤が含まれてもよい。親水性合成樹脂は、加熱によって軟化または溶融する樹脂であり、たとえば水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ウレタン樹脂、水溶性ウレタン変性エーテル樹脂および水溶性ポリエチレンオキサイド樹脂から選択された一種、またはこれらから選択された二種以上の混合物である。また親水性糊剤は、天然素材、半合成素材または水溶性合成高分子からなる糊剤であり、たとえば海藻類、繊維素誘導糊、加工デンプン糊、水溶性合成高分子および天然ガム類から選択された一種、またはこれらから選択された二種以上の混合物である。また各種助剤は、たとえば酸性物質もしくはアルカリ剤、表面張力低下剤、増粘剤、箔転写バインダー糊、鉱物および保湿剤から選択された一種、またはこれらから選択された二種以上の薬剤である。
【0041】
また布帛Rを捺染するための染料は、繊維材料との組み合わせなどを考慮して、反応染料、分散染料、酸性染料、金属錯塩型染料および直接染料の中から適宜選択される。
【0042】
以下、捺染処理装置100について詳細に説明する。捺染処理装置100は、平坦かつ水平または略水平な床面8に設置されているものとし、転写部2から乾燥部5へ向かう、床面8に平行な方向X1を、以下では搬送方向と称する。また、床面8に垂直な方向Zを上下方向と称し、搬送方向X1および上下方向Zのいずれにも直交する方向Yを幅方向と称する。
【0043】
捺染処理装置100は、転写工程、定着工程、洗浄工程および乾燥工程を、連続的に処理するために、前記各処理部2〜5ごとに、布帛Rを搬送するための一または複数の搬送用ローラが備えられている。本実施形態では、各搬送用ローラは、その軸線方向と前記幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転可能に支持されており、捺染処理装置100において、布帛Rは、前記幅方向Yと布帛Rの幅方向とが一致した状態で、搬送方向X1に沿って搬送される。また捺染処理装置100は、装置全体を制御する図示しない制御装置を備え、前記各搬送用ローラは、制御装置によって、布帛Rを所定の送り速度vで搬送するように駆動される。所定の送り速度については後述する。なお、本明細書では、布帛Rが上下方向Zに複数回方向転換しながら搬送されているときの搬送経路の状態を蛇行と称する。
【0044】
処理対象の布帛Rは、転写部2の搬送方向X1上流側(以下、単に「上流側」と記す)に設けられる布帛設置部1に設置される。布帛設置部1は、布帛R0が装着される回転軸部11と、回転軸部11を所定の回転方向(図1では、反時計回り)に回転駆動する図示しない電動機とを備える。本実施形態では、該回転軸部11に対して、ロール状に巻回された状態の布帛(以下、「原反ロール」と称する)R0が、回転軸部11の軸線と原反ロールR0の軸線とが一致するように装着される。このとき、原反ロールR0は、原反ロールR0と回転軸部11とが一体となって回転するように取り付けられる。すなわち、布帛Rは、電動機が駆動されることにより、回転軸部11の回転に伴って原反ロールR0から巻き出される。
【0045】
なお、回転軸部11に装着された原反ロールR0は、原反ロールR0から巻き出された布帛Rの量が増加するにつれて、その巻径が減少していく。したがって、変化する巻径に対して原反ロールR0から布帛Rを一定の速度および一定のテンション(張力)で巻き出していくためにも、電動機としては、印加電圧を変更することによってトルク特性を変化させることが可能なトルクモータが好適に用いられる。すなわち、このトルクモータは、制御装置によって、前記所定の送り速度vで搬送される布帛Rを一定のテンションで巻き出し続けるように制御される。
【0046】
転写部2は、転写紙r0が設置される転写紙設置部21と、転写紙rと布帛Rの積層体Lに対して加圧・加熱処理を施す加圧・加熱ローラ22と、加圧・加熱処理後の積層体Lから転写紙rの基材Bを剥離して回収する基材回収部23と、布帛R(転写後布帛R1)を搬送するための搬送用ローラ24とを備える。転写部2における装置稼動時の布帛Rの搬送経路は、後述する搬送経路形成位置に配置されたときの加圧・加熱ローラ22および搬送用ローラ24によって、床面8に平行または略平行となるように規定されている。
【0047】
転写紙設置部21は、布帛設置部1よりも上方に設けられ、転写紙r0が装着される回転軸部211と、回転軸部211を所定の回転方向(図1では、時計回り)に回転駆動する図示しない電動機と、ローラ212とを備える。本実施形態では、該回転軸部211に対して、ロール状に巻回された状態の転写紙(以下、「紙ロール」と称する)r0が、回転軸部211の軸線と紙ロールr0の軸線とが一致するように装着される。
【0048】
このとき、紙ロールr0は、紙ロールr0と回転軸部211とが一体となって回転するように回転軸部211に取り付けられ、さらに、電動機を駆動することによって紙ロールr0から転写紙rが下方へ巻き出されたとき、転写紙rの転写層が下方に臨むように取り付けられる。なお、回転軸部211を駆動する電動機としては、布帛設置部1と同様にトルクモータが好適に用いられ、制御手段によって、布帛Rの送り速度vに一致する送り速度で搬送される転写紙rを、一定のテンションで巻き出し続けるように制御される。
【0049】
ローラ212は、加圧・加熱ローラ22の上流側に設けられており、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転可能に支持されている。またローラ212は、装置稼動時に配置される搬送経路形成位置(図1に示す位置)と非稼動時に配置される退避位置とに亘って上下方向Zに沿って変位可能に設けられ、図示しない変位駆動手段によって変位駆動される。なお、ローラ212の搬送経路形成位置とは、転写部2における装置稼動時の布帛Rの搬送経路に上方から隣接する位置である。またローラ212の退避位置は、搬送経路形成位置よりも上方の所定の位置である。
【0050】
紙ロールr0から巻き出された転写紙rは、搬送経路形成位置に配置されたローラ212によって、布帛Rの搬送経路に沿うように送り方向が転換される。すなわち、ローラ212は、ローラ212の下流側において転写紙rが布帛Rに積重されるように、転写紙rの送り方向を転換する。これにより、ローラ212の下流側に設けられる加圧・加熱ローラ22へは、転写紙rと布帛Rの積層体Lが搬送される。
【0051】
加圧・加熱ローラ22は、内部に熱源を有する加熱ローラ221と、加熱ローラ221表面に対して圧接される加圧ローラ222と、加圧ローラ222を支持する2本の支持ローラ223とを備える。
【0052】
加熱ローラ221は、ローラ状部材であって、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転自在に支持されており、図示しない回転駆動手段によって所定の回転方向(図1では、時計回り)に所定の回転速度で回転駆動される。また加熱ローラ221は、装置稼動時に配置される搬送経路形成位置と非稼動時に配置される退避位置とに亘って上下方向Zに沿って変位可能に設けられ、図示しない変位駆動手段によって変位駆動される。なお、加熱ローラ221の搬送経路形成位置とは、転写部2における装置稼動時の布帛Rの搬送経路に上方から隣接する位置である。また加熱ローラ221の退避位置は、搬送経路形成位置よりも上方の所定の位置である。
【0053】
加熱ローラ221は、たとえばアルミなどの金属性中空芯金の表面に弾性層を設けることによって形成され、この芯金の内部に、熱源として、たとえばハロゲンランプが設置される。加熱ローラ221の温度は、制御手段によって制御され、たとえば加熱ローラ221表面の温度を検出する温度センサから出力される信号に基づいて、制御装置がハロゲンランプのオン/オフを切り換えることによって制御される。
【0054】
加圧ローラ222は、ローラ状部材であって、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転自在に支持されている。また加圧ローラ222は、搬送経路形成位置に配置された加熱ローラ221表面に対して下方から所定の圧力で圧接できるように、上下方向Zに沿って変位可能に設けられ、圧接時には、加熱ローラ221の回転に従動して回転する。
【0055】
加圧ローラ222は、芯金上に、被覆層としてたとえばシリコーンゴムなどの耐熱性弾性層を設けることによって形成されている。したがって、圧接時には、加圧ローラ222を加熱ローラ221表面に対して圧接することにより生ずる、加圧ローラ222の弾性層の弾性変形によって、加熱ローラ221と加圧ローラ222との間にニップ部と呼ばれる圧接領域が形成される。
【0056】
ローラ212から搬送されてきた積層体Lは、このニップ部を通過する際に加圧・加熱処理が施され、これにより、転写紙rの転写層が布帛Rへ転写される。このとき、転写紙rの転写層を布帛Rに対して確実に転写するためには、加熱ローラ221の回転速度および温度ならびにニップ部における圧力などの各条件が適切に設定される必要がある。
【0057】
前記各条件は、布帛Rを構成する繊維材料の種類、布帛Rの厚さおよび織り方または編み方、ならびに染料受容層の成分などに従って決定される。すなわち、加熱ローラ221の最適な回転速度は、転写捺染処理に用いる布帛Rおよび転写紙rを決定することにより決定される。捺染処理装置100では、この加熱ローラ221の適切な回転速度に合致するように、布帛Rの送り速度vが決定される。
【0058】
基材回収部23は、加圧・加熱ローラ22の下流側に設けられ、加圧・加熱ローラ22によって転写層が布帛Rに転写された状態にある積層体Lから転写紙rの基材Bを剥離し、、剥離した基材Bを、回転軸部231まわりに巻き取りながら回収するように構成されている。
【0059】
搬送用ローラ24は、転写部2における最も下流側に設けられ、駆動側ローラ241と、従動側ローラ242とを備える。駆動側ローラ241は、ローラ状部材であって、転写部2における装置稼動時の転写後布帛R1の搬送経路に下方から隣接する位置に設けられ、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転可能に支持される。また駆動側ローラ241は、図示しない回転駆動手段によって、所定の回転方向(図1では、反時計回り)に所定の回転速度で回転駆動される。この回転駆動手段は、制御装置によって制御され、転写後布帛R1を送り速度vで搬送するように、所定の回転速度で駆動側ローラ241を回転駆動する。
【0060】
従動側ローラ242は、ローラ状部材であって、駆動側ローラ241の上方に設けられ、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転可能に支持される。従動側ローラ242は、装置稼動時に配置される搬送経路形成位置と非稼動時に配置される退避位置とに亘って上下方向Zに沿って変位可能に設けられ、図示しない変位駆動手段によって変位駆動される。従動側ローラ242は、搬送経路形成位置に配置されたとき、駆動側ローラ241の回転に従動して回転する。なお、従動側ローラ242の搬送経路形成位置とは、転写部2における装置稼動時の転写後布帛R1の搬送経路に上方から隣接する位置である。また従動側ローラ242の退避位置は、搬送経路形成位置よりも上方の所定の位置である。
【0061】
したがって、装置稼動時には、駆動側ローラ241および従動側ローラ242は、それぞれ転写部2における転写後布帛R1の搬送経路を挟むように配置される。前記のように、搬送用ローラ24が転写後布帛R1を所定の送り速度vで搬送するように駆動されることにより、転写後布帛R1は、駆動側ローラ241と従動側ローラ242の間を所定の送り速度vで通過する。
【0062】
定着部3は、前記転写部2の下流側に隣接して設けられ、転写部2から所定の送り速度vで搬送されてくる転写後布帛R1を水蒸気によって加熱処理し、転写層に含まれる染料を布帛Rに定着させる。
【0063】
定着部3は、加熱用の水蒸気が充満されるチャンバ31と、水蒸気を発生し、チャンバ31内の空間Sに水蒸気を噴出する蒸気発生手段32と、転写部2から搬送されてくる転写後布帛R1を、チャンバ31内の空間Sへ搬入するための搬入口33と、チャンバ31内に設けられ、所定の送り速度vに応じて、チャンバ31内、より詳細には、チャンバ31内の有効定着温度領域S1における転写後布帛R1の搬送経路の経路長を調整する調整手段34と、チャンバ31内の空間Sから転写後布帛R1を搬出するための搬出口35とを備える。ここで、有効定着温度領域S1とは、チャンバ31内の空間Sにおける一部の領域であり、染料を布帛Rに定着させるために必要な所定の温度以上に設定される領域のことである。
【0064】
チャンバ31は、中空の構造体であり、互いに連なる側壁部および頂部によって、チャンバ31の内部には空間Sが形成されている。頂部には、ファン311が設置され、さらに、水蒸気を排出するための蒸気排出口がファン311に隣接して形成されている。この蒸気排出口には、蒸気排出口から排出された水蒸気が導入される図示しない排気ダクトが連設されている。
【0065】
蒸気発生手段32は、水蒸気を発生する蒸気発生部321と、蒸気発生部321を包囲する構造体322と、上方に向かって開口するように構造体322に穿設された蒸気噴出口323とを備える。蒸気発生手段32は、蒸気噴出口323がチャンバ31の内部空間に配置されるように、定着部3に設置される。したがって、蒸気発生部321で発生した水蒸気は、上方に立上り、蒸気噴出口323を介して構造体322の内部から外部に向かって噴出される。このとき、蒸気噴出口323が、チャンバ31の内部空間Sに配置されているので、発生した蒸気は、チャンバ31内の空間Sへ噴出される。また、チャンバ31内の空間Sに充満する水蒸気を適量に維持するために、蒸気噴出口323からの水蒸気の噴出に伴って蒸気排出口から水蒸気が適宜排出される。本実施形態では、蒸気発生手段32は、転写部2における布帛Rの搬送経路よりも下方の位置に設けられている。
【0066】
またチャンバ31の内壁には、チャンバ31の内部空間Sに充満した水蒸気のうち、蒸気噴出口323の上方に設定される有効定着温度領域S1における水蒸気が前記所定の温度以上を維持するように、内部空間Sを加熱するための図示しない加熱手段が設置されている。チャンバ31の内部にはさらに温度センサが備えられ、加熱手段は、温度センサから出力される信号に基づいて、制御装置によって制御される。このようにして、蒸気噴出口323の上方の有効定着温度領域S1が所定の温度以上となるように制御される。
【0067】
なお、この所定の温度は、布帛Rを構成する繊維材料の種類、布帛Rの厚さおよび織り方または編み方、ならびに染料の種類などに応じて決定されるものである。すなわち、前記所定の温度は、転写捺染処理に用いる布帛Rおよび転写紙rを決定することにより決定される。
【0068】
図2は、捺染処理装置100の定着部3およびその近傍を示す斜視図であり、搬送方向X1上流側から見たときの図である。搬入口33は、転写部2に臨むチャンバ31の側壁部に設けられ、具体的には、該側壁部に穿設された開口312と、チャンバ31の内部であって該開口312に隣接して設けられる可動式のシャッタ部材331とによって形成される。
【0069】
開口312は、矩形状に形成され、幅方向Yには、処理対象の布帛Rの幅よりも大きく、上下方向Zには、転写部2における布帛Rの搬送経路よりも上方の位置から該搬送経路よりも下方の位置に亘って開放するように形成されている。 シャッタ部材331は、前記開口312の全領域を開放可能な退避位置P1と、退避位置P1よりも下方の位置であり、前記開口312の一部の領域を開放する搬送経路形成位置P2とに亘って、上下方向Zに変位可能に設けられ、たとえばエアシリンダなどの変位駆動手段332によって変位駆動される。搬入口33は、シャッタ部材331を搬送経路形成位置P2に配置したときに開放している領域に相当する。本実施形態に係る捺染処理装置100は、この搬入口33が、蒸気噴出口323よりも下方、すなわちチャンバ31内における有効定着温度領域S1よりも下方に設けられるように構成されている。
【0070】
調整手段34は、チャンバ31内の空間Sに設けられ、搬入口33から搬入された転写後布帛R1が巻き掛けられる複数(本実施形態では2)の搬送用ローラ341と、各搬送用ローラ341間の間隔を変化させるように、各搬送用ローラ341を少なくとも上下方向Zに沿って、好ましくは、上下方向Zおよび搬送方向X1に沿う方向に沿って、変位駆動する図示しない間隔調整手段とを備える。なお、定着部3における装置稼動時の布帛R(転写後布帛R1)の搬送経路は、搬送経路形成位置に配置されたときの各搬送用ローラ341、シャッタ部材331および後述するシャッタ部材351によって規定され、上下方向Zに蛇行している。
【0071】
搬送用ローラ341は、ローラ状部材であって、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転可能に支持されており、図示しない回転駆動手段によって、所定の回転方向(図1では、反時計回り)に所定の回転速度で回転駆動される。この回転駆動手段は、制御装置によって制御され、転写後布帛R1を送り速度vで搬送するように、所定の回転速度で搬送用ローラ341を回転駆動する。
【0072】
また搬送用ローラ341は、装置稼動時に配置される搬送経路形成位置と非稼動時に配置される退避位置とに亘って上下方向Zに沿って変位可能に設けられ、図示しない間隔調整手段によって上下方向Zに変位駆動される。なお、搬送用ローラ341の搬送経路形成位置とは、有効定着温度領域S1における所定の位置であり、搬送用ローラ341の退避位置は、転写部2における布帛Rの搬送経路よりも下方の所定の位置である。
【0073】
図1に示すように、装置稼動時には、転写部2の搬送用ローラ24を通過した転写後布帛R1は、搬送用ローラ24よりも下方に設けられる搬入口33に向かって垂下し、ループ状の搬送経路に沿って搬入口33からチャンバ31の内部へ搬入された後、搬入口33よりも上方に設定される有効定着温度領域S1に向けて搬送される。そして、有効定着温度領域S1内に侵入した転写後布帛R1は、間隔調整手段によって搬送経路形成位置に配置された各搬送用ローラ341に巻き掛けられながら、上下方向Zに蛇行した搬送経路に沿って有効定着温度領域S1内を搬送される。そして、有効定着温度領域S1内を通過した転写後布帛R1は、搬送用ローラ24よりも下方に設けられる搬出口35に向かって垂下し、ループ状の搬送経路に沿って搬出口35から搬出される。
【0074】
ここで、転写捺染処理に用いる布帛Rおよび染料の組合せに対する、定着処理に必要な処理時間、および、布帛Rが送り速度vで搬送される場合に定着処理に必要な搬送距離(すなわち、有効定着温度領域S1における転写後布帛R1の搬送経路の経路長)を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
表1に示すように、染料の種類が反応染料であり、布帛Rの種類が綿・シルクである場合、定着処理に必要な処理時間は10分である。たとえば、転写工程に最適な布帛の送り速度vが40[m/h]であれば、定着処理を10分施すために、搬送距離が6667[mm]だけ必要となり、転写工程に最適な布帛の送り速度vが10[m/h]であれば、定着処理を10分施すために、搬送距離が1667[mm]だけ必要となる。
【0077】
本実施形態に係る捺染処理装置100では、間隔調整手段によって、染料を定着させるために必要な所定の処理時間だけ有効定着温度領域S1内に転写後布帛R1が滞留するように、有効定着温度領域S1における転写後布帛R1の搬送経路の経路長を調整することができる。具体的には、各搬送用ローラ341の上下方向Zの位置および搬送方向X1に沿う方向の位置を調整することによって、有効定着温度領域S1における転写後布帛R1の搬送経路の経路長が調整される。
【0078】
搬出口35は、洗浄部4に臨むチャンバ31の側壁部に設けられ、具体的には、該側壁部に穿設された開口313と、チャンバ31の内部であって該開口313に隣接して設けられる可動式のシャッタ部材351とによって形成される。
【0079】
開口313は、前記開口312と同一の大きさで、該開口312に対向する位置に形成される。シャッタ部材331は、該開口313の全領域を開放可能な退避位置Q1と、退避位置Q1よりも下方の位置であり、該開口313の一部の領域を開放する搬送経路形成位置Q2とに亘って、上下方向Zに変位可能に設けられ、たとえばエアシリンダなどの変位駆動手段352(図2参照)によって変位駆動される。搬出口35は、シャッタ部材351を搬送経路形成位置Q2に配置したときに開放している領域に相当する。本実施形態に係る捺染処理装置100は、この搬出口35が、蒸気噴出口323よりも下方、すなわちチャンバ31内における有効定着温度領域S1よりも下方に設けられるように構成されている。
【0080】
なお、本実施形態に係る捺染処理装置100には、搬入口33および搬出口35付近において、搬入口33および搬出口35を通過するときに形成される転写後布帛R1のループを検出するためのループ検出手段36,37が設けられている。
【0081】
前記のように、本実施形態に係る捺染処理装置100は、転写工程に最適な送り速度で転写後布帛R1が搬送されている場合であっても、定着処理に必要な所定の処理時間だけ転写後布帛R1に対して蒸気加熱処理を施すことができる。布帛Rの種類や染料の種類などの諸条件によって、転写工程における最適な送り速度と蒸気加熱処理に要する時間の組合せは様々であるが、本実施形態に係る捺染処理装置100では、布帛Rおよび染料の種類によらず、転写工程における最適な送り速度に対して、定着処理に必要な所定の時間だけ転写後布帛R1に対して蒸気加熱処理を施すことができる。すなわち、捺染処理装置100は、蒸気加熱処理時間の不足による定着不良を生じさせることなく、転写工程と定着工程とを連続的に処理することができる。
【0082】
このように、転写工程と定着工程とを連続的に処理することができるので、転写工程後の布帛の巻き取りによって生じていた、布帛の長手方向位置による未定着期間の差異をなくし、転写捺染処理後の布帛における色むらの発生を防止することができる。また、転写工程と定着工程との間で作業者によって行われていた準備工程が不要となるので、作業者の負担を軽減できるとともに、転写工程の開始から定着工程の完了までの所要期間を短縮することができる。
【0083】
また、布帛が巻き掛けられる複数の搬送用ローラ341と、各搬送用ローラ341を上下方向Zに沿って変位させる間隔調整手段という単純な構成によって調整手段34を実現することができるので、捺染処理装置100の構成が複雑化することを回避できる。
【0084】
また、転写部2から搬送された布帛R1をチャンバ31内の空間Sに搬入するための搬入口33が、有効定着温度領域S1よりも下方に設けられているので、チャンバ31内に充満した水蒸気が、搬入口33を介して転写部2が設けられる側へ漏出してしまうことを可及的に防止することができる。これにより、転写部2と定着部3との連設によって生じ得る、定着部3の水蒸気による転写部2内の温度および湿度への影響を軽減し、転写紙rの転写層が布帛Rへ適正に転写されなくなることを阻止することができる。
【0085】
洗浄部4は、複数(本実施形態では5)の洗浄槽が設けられたタンク41と、定着後布帛R2を洗浄するために洗浄槽に注入される洗浄液42と、定着後布帛R2を搬送するための複数の搬送用ローラ43と、洗浄液42に浸漬されることにより洗浄液42を吸収している状態の定着後布帛R2から、洗浄液42を搾り出すための複数(本実施形態では2)のスクイズローラ44とを備える。
【0086】
タンク41は、上方に向かって開放した5つの洗浄槽を列設して構成され、搬送方向X1に沿って5つの洗浄槽が並ぶように、さらに、転写部2における布帛Rの搬送経路よりも下方の位置に設けられる。本実施形態では、5つの洗浄槽のうち4つの洗浄槽に対して、定着後布帛R2を洗浄するための洗浄液42が注入されている。洗浄液42としては、水または水にソーピング液を追加したものが用いられる。
【0087】
搬送用ローラ43は、複数(本実施形態では6)のローラ対431と、洗浄槽ごとに設けられる複数(本実施形態では5)のローラ432とを含む。ローラ対431は、装置稼動時において、転写部2における布帛Rの搬送経路を含む仮想平面を挟むように配置される駆動側ローラ431aと従動側ローラ431bとによって構成される。なお、洗浄部4における装置稼動時の布帛R(定着後布帛R2)の搬送経路は、搬送経路形成位置に配置されたときの各ローラ対431、各ローラ432および後述する各スクイズローラ44によって規定され、上下方向Zに蛇行している。
【0088】
駆動側ローラ431aは、ローラ状部材であって、洗浄部4における定着後布帛R2の搬送経路に下方から隣接する位置に設けられ、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転可能に支持される。また駆動側ローラ431aは、図示しない回転駆動手段によって、所定の回転方向(図1では、反時計回り)に所定の回転速度で回転駆動される。この回転駆動手段は、制御装置によって制御され、定着後布帛R2を送り速度vで搬送するように、所定の回転速度で駆動側ローラ431aを回転駆動する。
【0089】
従動側ローラ431bは、ローラ状部材であって、駆動側ローラ431aの上方に設けられ、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転可能に支持される。従動側ローラ431bは、装置稼動時に配置される搬送経路形成位置と非稼動時に配置される退避位置とに亘って上下方向Zに沿って変位可能に設けられ、図示しない変位駆動手段によって変位駆動される。従動側ローラ431bは、搬送経路形成位置に配置されたとき、駆動側ローラ431aの回転に従動して回転する。なお、従動側ローラ431bの搬送経路形成位置とは、洗浄部4における定着後布帛R2の搬送経路に上方から隣接する位置であり、従動側ローラ431bの退避位置は、搬送経路形成位置よりも上方の所定の位置である。
【0090】
ローラ432は、ローラ状部材であって、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転可能に支持されており、図示しない回転駆動手段によって、所定の回転方向(図1では、時計回り)に所定の回転速度で回転駆動される。この回転駆動手段は、制御装置によって制御され、定着後布帛R2を送り速度vで搬送するように、所定の回転速度でローラ432を回転駆動する。
【0091】
またローラ432は、装置稼動時に配置される搬送経路形成位置と非稼動時に配置される退避位置とに亘って上下方向Zに沿って変位可能に設けられ、図示しない変位駆動手段によって上下方向Zに変位駆動される。なお、ローラ432の搬送経路形成位置とは、洗浄槽内における所定の位置であり、搬送用ローラ341の退避位置は、転写部2における布帛Rの搬送経路よりも上方の所定の位置である。すなわち、ローラ432は、洗浄槽に注入された洗浄液42に浸漬可能に設けられている。
【0092】
スクイズローラ44は、洗浄部4における最も下流側に設けられ、装置稼動時において、転写部2における布帛Rの搬送経路を含む仮想平面を挟むように配置される駆動側ローラ441と従動側ローラ442とによって構成される。
【0093】
駆動側ローラ441は、ローラ状部材であって、洗浄部4における定着後布帛R2の搬送経路に下方から隣接する位置に設けられ、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転可能に支持される。また駆動側ローラ441は、図示しない回転駆動手段によって、所定の回転方向(図1では、反時計回り)に所定の回転速度で回転駆動される。この回転駆動手段は、制御装置によって制御され、定着後布帛R2を送り速度vで搬送するように、所定の回転速度で駆動側ローラ441を回転駆動する。
【0094】
従動側ローラ442は、ローラ状部材であって、駆動側ローラ441の上方に設けられ、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転可能に支持される。従動側ローラ442は、装置稼動時に配置される搬送経路形成位置と非稼動時に配置される退避位置とに亘って上下方向Zに沿って変位可能に設けられ、図示しない変位駆動手段によって変位駆動される。従動側ローラ442は、搬送経路形成位置に配置されたとき、駆動側ローラ441の回転に従動して回転する。なお、従動側ローラ442の搬送経路形成位置とは、洗浄部4における定着後布帛R2の搬送経路に上方から隣接する位置であり、洗浄液42を搾り出すために駆動側ローラ441に圧接された位置である。また従動側ローラ442の退避位置は、搬送経路形成位置よりも上方の所定の位置である。
【0095】
このように、転写紙rから布帛Rへ転写された転写層に含まれる、糊剤などの不要な成分を洗浄液42によって洗い流すための洗浄部4が、定着部3の下流側に設けられるので、定着工程と洗浄工程との間で作業者によって行われていた準備工程が不要となり、作業者の負担を軽減できるとともに、転写工程の開始から洗浄工程の完了までの所要期間を短縮することができる。
【0096】
乾燥部5は、前記洗浄部4の下流側に隣接して設けられ、洗浄部4から所定の送り速度vで搬送されてくる洗浄後布帛R3に対して、たとえば風、好ましくは温風を吹き当てることによって乾燥処理を施す。
【0097】
乾燥部5は、風または温風を送風する複数(本実施形態では2)の乾燥手段51と、洗浄後布帛R3を搬送するための複数(本実施形態では5)の搬送用ローラ52とを備える。2つの乾燥手段51は、搬送方向X1に沿って互いに対向するように、さらに、転写部2における布帛Rの搬送経路よりも下方の位置に設けられる。各乾燥手段51は、対向する乾燥手段51に向かって送風するように設けられている。
【0098】
搬送用ローラ52は、複数(本実施形態では3)の第1ローラ対521と、複数(本実施形態では2)の第2ローラ対522とを含む。第1ローラ対521は、装置稼動時において、転写部2における布帛Rの搬送経路を含む仮想平面を挟むように配置される駆動側ローラ521aと従動側ローラ521bとによって構成される。なお、乾燥部5における装置稼動時の布帛R(洗浄後布帛R3)の搬送経路は、搬送経路形成位置に配置されたときの各第1ローラ対521および第2ローラ対522によって規定され、上下方向Zに蛇行している。
【0099】
第1ローラ対521は、搬送方向X1における設置位置が異なる以外は、洗浄部4の前記ローラ対431と同様に構成される。したがって、重複する説明を省略する。
【0100】
第2ローラ対522は、対向する2つの乾燥手段51の中央部に設けられ、装置稼動時において、乾燥手段51よりも下方の位置で洗浄後布帛R3を挟むように配置される駆動側ローラ522aと従動側ローラ522bとによって構成される。
【0101】
駆動側ローラ522aは、ローラ状部材であって、乾燥部5における洗浄後布帛R3の搬送経路に上方から隣接する位置に設けられ、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転可能に支持される。また駆動側ローラ522aは、図示しない回転駆動手段によって、所定の回転方向(図1では、反時計回り)に所定の回転速度で回転駆動される。この回転駆動手段は、制御装置によって制御され、洗浄後布帛R3を送り速度vで搬送するように、所定の回転速度で駆動側ローラ522aを回転駆動する。
【0102】
また駆動側ローラ522aは、装置稼動時に配置される搬送経路形成位置と非稼動時に配置される退避位置とに亘って上下方向Zに沿って変位可能に設けられ、図示しない変位駆動手段によって変位駆動される。なお、駆動側ローラ522aの搬送経路形成位置とは、従動側ローラ522bに上方から隣接する位置であり、駆動側ローラ522aの退避位置は、転写部2における布帛Rの搬送経路よりも上方の所定の位置である。
【0103】
従動側ローラ522bは、ローラ状部材であって、駆動側ローラ522aの下方に設けられ、その軸線方向と幅方向Yとが一致するように、軸線まわりに回転可能に支持される。従動側ローラ442は、搬送経路形成位置に配置された駆動側ローラ441の回転に従動して回転する。
【0104】
このように、洗浄部4において洗浄液42に浸漬された洗浄後布帛R3を乾燥させるための乾燥部5が、洗浄部4の下流側に設けられているので、洗浄工程と乾燥工程との間で作業者によって行われていた準備工程が不要となり、作業者の負担を軽減できるとともに、転写工程の開始から洗浄工程の完了までの所要期間を短縮することができる。
【0105】
各処理部2〜5において所定の処理が施された布帛R4は、乾燥部5の下流側に設けられる布帛回収部6において、回転軸部61まわりに巻き取られながら回収される。
【0106】
図3は、本発明の他の実施形態に係る捺染処理装置100Aの一部の概略的な構成を拡大して示す図である。捺染処理装置100Aは、搬入口33の近傍に、チャンバ31の外方から搬入口33に向けて送風する送風手段38が設けられている点を除き、前記捺染処理装置100と同様に構成される。したがって、同一の構成については、捺染処理装置100における参照符と同様の参照符を付し、重複する説明については省略する。
【0107】
このように、搬入口33の近傍に設けられる送風手段38によってチャンバ31の外方から搬入口33に向けて送風が行われるので、チャンバ31内に充満している水蒸気が搬入口33付近で結露することを防止することができる。これにより、転写後布帛R1に転写された転写層に、結露によって生じた液滴が付着することを防止することができる。すなわち、転写捺染処理後の布帛において、転写層への液滴の付着による色むらの発生を防止することができる。また、チャンバ31内に充満した水蒸気が、転写部2が設けられる側へ漏出してしまうことを可及的に防止することができる。
【0108】
図4は、本発明の他の実施形態に係る捺染処理装置100Bの一部の概略的な構成を拡大して示す図である。捺染処理装置100Bは、搬入口33の近傍に、搬入口33を含む周囲の領域を加熱する加熱手段39が設けられている点を除き、前記捺染処理装置100と同様に構成される。したがって、同一の構成については、捺染処理装置100における参照符と同様の参照符を付し、重複する説明については省略する。
【0109】
このように、搬入口33の近傍に設けられる加熱手段39によって布帛R1が搬入される搬入口33近傍が加熱されるので、チャンバ31内に充満している水蒸気が搬入口33付近で結露することを防止することができる。これにより、転写後布帛R1に転写された転写層に、結露によって生じた液滴が付着することを防止することができる。すなわち、転写捺染処理後の布帛において、転写層への液滴の付着による色むらの発生を防止することができる。また、チャンバ31内に充満した水蒸気が、転写部2が設けられる側へ漏出してしまうことを可及的に防止することができる。なお、前記送風手段38と、加熱手段39とは、併設されることが好ましい。
【0110】
以上では、乾式転写捺染法によって布帛Rを捺染する装置、すなわち染料を含む転写層を有する転写紙を該布帛に積重して加圧・加熱処理することによって転写捺染する装置100について説明したが、これに限らず、乾式昇華転写捺染法によって布帛Rを捺染する装置、すなわち染料を含む転写層を有する転写紙を該布帛に積重して加熱処理することによって転写捺染する装置において実現されてもよい。
【符号の説明】
【0111】
1 布帛設置部
2 転写部
3 定着部
4 洗浄部
5 乾燥部
6 布帛回収部
100 捺染処理装置
R 布帛
r 転写紙
L 積層体
B 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛を所定の送り速度で搬送しながら、染料を含む転写層を有する転写紙を該布帛に積重して加熱処理または加圧・加熱処理し、転写紙の転写層を布帛に転写する転写部と、
前記転写部の下流側に設けられ、前記所定の送り速度で搬送される布帛に対して蒸気加熱処理して、転写層の染料を布帛に定着させる定着部とを含むことを特徴とする捺染処理装置。
【請求項2】
前記定着部は、前記所定の送り速度に応じて、定着部内における布帛の搬送経路の経路長を調整する調整手段を備えることを特徴とする請求項1記載の捺染処理装置。
【請求項3】
前記調整手段は、
布帛が巻き掛けられる複数の搬送用ローラと、
前記各搬送用ローラ間の間隔を変化させる間隔調整手段とを備えることを特徴とする請求項2記載の捺染処理装置。
【請求項4】
前記定着部は、
チャンバと、
蒸気を発生し、前記チャンバ内の空間に蒸気を噴出する蒸気発生手段と、
前記転写部から搬送される布帛を、前記チャンバ内の空間へ搬入するための搬入口とを有し、
前記搬入口は、前記チャンバ内における有効定着温度領域よりも下方に配設されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の捺染処理装置。
【請求項5】
前記チャンバの外方から前記搬入口に向けて送風する送風手段をさらに備えることを特徴とする請求項4記載の捺染処理装置。
【請求項6】
前記搬入口を含む周囲の領域を加熱する加熱手段をさらに備えることを特徴とする請求項4または5記載の捺染処理装置。
【請求項7】
前記定着部の下流側に設けられ、前記所定の送り速度で該定着部から搬送される布帛に対して、洗浄液を用いて洗浄処理する洗浄部をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の捺染処理装置。
【請求項8】
前記洗浄部の下流側に設けられ、前記所定の送り速度で該洗浄部から搬送される布帛に対して乾燥処理する乾燥部をさらに備えることを特徴とする請求項7記載の捺染処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−162916(P2011−162916A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28243(P2010−28243)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(311001347)NKワークス株式会社 (96)
【Fターム(参考)】