説明

掃気管制弁装置を備えた内燃機関

【課題】掃気管制弁とシリンダライナとの摺接部のシール性を良好に保持して掃気通路の開口面積を目標開口面積に正確に制御可能とするとともに、掃気通路の完全な閉塞を可能として掃気通路を通しての作動ガスの吹き返しを阻止してピストンリング、シリンダライナの耐久性を向上し、かつシリンダ注油用の潤滑油消費率を低減できる掃気管制弁装置を備えた内燃機関を提供する。
【解決手段】シリンダライナ10の内側に、該シリンダライナ10の内面に沿って移動可能に設けられて掃気孔12を開閉し燃焼室14内への掃気通路の開口面積を変化せしめる回動式掃気管制弁1と、機関のクランク角に対応して前記掃気管制弁1を駆動する油圧シリンダ3とを備え、前記クランク角の変化に対応して前記掃気管制弁1を移動させることにより、前記掃気通路の開口面積を変化せしめるように構成されたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2サイクル大型ディーゼル機関に適用され、シリンダカバーに排気弁を備えるとともに燃焼室内に掃気を供給する掃気孔がシリンダライナの下部に周方向に沿って複数開設され、さらに該掃気孔を開閉するとともに燃焼室内への掃気通路の開口面積を変化せしめる掃気管制弁装置を備えた内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
2サイクル大型ディーゼル機関は、通常、ユニフロー掃気方式が採用されており、ピストンの下死点前に、シリンダライナの下部に周方向に沿って複数開設された掃気孔を該ピストンの上縁によって開き、該掃気孔から掃気(空気)をシリンダ内に供給し、該シリンダ内の残留燃焼ガスを、シリンダカバーに設けられた排気弁を通して押し出すように構成されている。
図14は、かかるユニフロー掃気式2サイクル大型ディーゼル機関における、掃気孔の開口面積A、排気弁の開口面積A及び該掃気孔及び排気弁の合成通路面積即ち有効換算面積Aをクランク角に対応して示す掃、排気面積線図である。
【0003】
かかるユニフロー掃気式2サイクル大型ディーゼル機関において、図14に示される掃気孔及び排気弁の有効換算通路面積を調整するため、掃気孔を開閉する掃気管制弁を設けたものが、特許文献1(特開平7−324626号公報)等により提案されている。
前記特許文献1の技術は、ユニフロー掃気式2サイクル大型ディーゼル機関において、掃気孔の上側に周方向にそって複数の副掃気孔を開設するとともに、シリンダライナの外側に、該シリンダライナの外面に沿って軸方向に移動可能にされて、前記副掃気孔を開閉する掃気管制弁を設け、該掃気管制弁を軸方向に移動させることにより、燃焼室内への掃気通路開口面積を変化せしめるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−324626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載されたディーゼル機関においては、シリンダライナの外側に設けた掃気管制弁を軸方向に移動させることにより副掃気孔を開閉し、燃焼室内への掃気通路開口面積を変化せしめるように構成されており、副掃気孔の開口面積を変化させることにより掃気孔開口面積を変化させ、掃気孔及び排気弁の有効換算通路面積を調整しているが、掃気孔及び排気弁の開閉時期は基本的には、図10のような開閉タイミングとなっている。
【0006】
即ち、かかる従来技術にあっては、ピストンの下降工程で掃気孔が開口する為、高圧高温の作動ガスが、掃気孔から掃気室内に逆流して掃気室火災等の不具合を発生させる事を防ぐ為、排気弁からの高圧排気が掃気孔開口前に完了する様、図9中のA点で排気弁を開き始める事に因り作動ガスが排気弁から流出し、Kに示す有効仕事を喪失していた。更に掃気孔が閉じた後においても排気弁が開いており、この期間中は掃気孔からの掃気でシリンダ内の残留燃焼ガスを排気弁を通して過給機側に押し出すようになっているため、シリンダ内の新気が排気側に吹き抜けて該新気の流出損失が発生し、これらの流出損失により機関の熱効率が抑えられ燃料消費率の低減も抑制されている。
また、かかる従来技術にあっては、掃気孔がピストンの下降中である下死点前に開口しているため、掃気孔の開口から下死点までは、ピストンの下降運動が燃焼室の上部側に向かう掃気の流入運動に対して逆方向に作用し、燃焼室内の掃気作用が阻害され易く、高い掃気効率を維持でき難い。
【0007】
また、かかる従来技術にあっては、掃気孔の上側に周方向にそって複数開設された副掃気孔を開閉する掃気管制弁をシリンダライナの外側に設け、該掃気管制弁をシリンダライナの外側において軸方向に移動させることにより掃気通路開口面積を変化せしめるように構成されているため、該掃気管制弁で副掃気孔を全閉し第1ピストンリングによって掃気孔を閉じても、ピストンリングのリング隙間からガスが通流することとなり、掃気通路を完全に閉塞することは実質的に不可能となる。
このため、かかる従来技術にあっては、掃気通路の開口面積変化を目標とする開口面積パターンに正確に制御するのは困難となるとともに、掃気通路を通しての作動ガスの吹き返しが発生して、ピストンリング、シリンダライナの耐久性が低下するとともに、シリンダ注油用の潤滑油消費率も増大し易い、等の問題点を有している。
【0008】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、掃気管制弁とシリンダライナとの摺接部のシール性を良好に保持して掃気通路の開口面積を目標開口面積に正確に制御可能とするとともに、掃気通路の完全な閉塞を可能として掃気通路を通しての作動ガスの吹き返しを阻止してピストンリング、シリンダライナの耐久性を向上し、かつシリンダ注油用の潤滑油消費率を低減できる掃気管制弁装置を備えた内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はかかる目的を達成するもので、燃焼室内に掃気を供給する掃気孔がシリンダライナの下部に周方向に沿って複数開設されるとともに、シリンダカバーに排気弁を備えた内燃機関において、前記シリンダライナの内側に、該シリンダライナの内面に沿って移動可能に設けられて前記掃気孔を開閉し前記燃焼室内への掃気通路の開口面積を変化せしめる掃気管制弁と、機関のクランク角に対応して前記掃気管制弁を駆動する弁作動装置とを備え、前記クランク角の変化に対応して前記掃気管制弁を移動させることにより、前記掃気通路の開口面積を変化せしめるように構成されたことを特徴とする。
【0010】
前記掃気管制弁は、具体的には次のように構成する。
即ち第1の構成は、前記掃気管制弁は前記弁作動装置により前記シリンダライナの内面において該シリンダライナの周方向に往復回動せしめられる回動式掃気管制弁からなる。
かかる回動式掃気管制弁において、好ましくは、シリンダライナ軸方向高さ(H)を、第1段ピストンリング上面から最下段ピストンリング下面までの高さ(H)よりも小さく形成する。
【0011】
また、前記掃気管制弁の第2の構成は、前記掃気管制弁は前記弁作動装置により前記シリンダライナの内面において該シリンダライナの軸方向に往復動せしめられる往復式掃気管制弁からなる。
【0012】
かかる発明によれば、掃気管制弁をシリンダライナの内側に該ライナの内面に沿って移動可能に設けて掃気孔を開閉し、燃焼室内への掃気通路の開口面積を変化せしめるように構成したので、該掃気管制弁を前記回動式掃気管制弁に構成してシリンダライナの内面に沿って周方向に移動させ、あるいは往復式掃気管制弁に構成してシリンダライナの内面に沿って軸方向に移動させることにより、掃気管制弁とシリンダライナとの摺接部のシール性を良好に保持して掃気通路の開口面積を掃気孔の全閉状態から掃気孔の全開状態まで自在に変化させることができる。これにより、掃気通路の開口面積変化を目標とする開口面積パターンに正確に制御することができる。
【0013】
また、回動式掃気管制弁あるいは往復式掃気管制弁に構成された掃気管制弁を、シリンダライナの内側に該ライナの内面に沿って移動可能に設けて掃気孔を開閉するので、掃気通路の閉時には、掃気管制弁とシリンダライナとの摺接部のシール性を良好に保持して掃気通路を完全に閉塞することが可能となり、これによって掃気通路側からの作動ガスの吹き返しをゼロとすることができ、ピストンリング、シリンダライナの耐久性が向上するとともに、シリンダ注油用の潤滑油消費率を低減することができる。
【0014】
また、回動式掃気管制弁あるいは往復式掃気管制弁に構成された掃気管制弁の軸方向長さを長くすることにより、掃気孔高さを従来のものよりも高くして同一掃気通路開口面積を保持することが可能となって、ピストンストロークに対する掃気孔高さの割合を大きく採って掃気効率を向上させることができる。
【0015】
また、かかる発明において好ましくは、前記掃気管制弁とシリンダライナとの摺動面に潤滑油を強制注油する注油装置を設けてなる。
このように構成すれば、シリンダ内のガスが侵入し易い掃気管制弁とシリンダライナの摺動部の潤滑が十分になされ、掃気管制弁の作動性を良好に保持するとともに、焼き付きの発生を防止できる。
【0016】
また、かかる発明において好ましくは、前記掃気管制弁は、前記シリンダライナよりも高い強度を有する母材の該シリンダライナとの摺接面に窒化等の表面硬化処理を施した材料からなる。
このように構成すれば、掃気管制弁の耐摩耗性を高く保持して耐久性を向上できる。
また、かかる発明において好ましくは、前記シリンダライナの内側に位置する掃気管制弁が、シリンダライナ外側に配設された駆動系により、該シリンダライナの内面に沿って周方向若しくは軸方向に往復移動可能に構成された内燃機関の場合に、前記駆動系と掃気管制弁とを連結する伝導機構が、掃気管制弁により封止可能な位置に開口されたシリンダライナ開口部より駆動系側に延在されているように構成してもよく、また前記掃気管制弁を周方向若しくは軸方向に往復移動可能に構成するガイド部が、シリンダライナ内面側に設けられているのもよい。
【発明の効果】
【0017】
以上記載のごとく本発明によれば、掃気管制弁をシリンダライナの内面に沿って軸方向に移動させることにより、該掃気管制弁とシリンダライナとの摺接部のシール性を良好に保持して掃気通路の開口面積を掃気孔の全閉状態から掃気孔の全開状態まで自在に変化させることができる。
これにより、掃気通路の開口面積変化を目標とする開口面積パターンに正確に制御することができる。
【0018】
また、前記シリンダライナの内側に位置する掃気管制弁が、シリンダライナ外側に配設された駆動系により、該シリンダライナの内面に沿って周方向若しくは軸方向に往復移動可能に構成された内燃機関の場合に、
前記駆動系と掃気管制弁とを連結する伝導機構が、掃気管制弁により封止可能な位置に開口されたシリンダライナ開口部より駆動系側に延在されているように構成すれば、掃気孔下方のシリンダラィナに駆動リンク取出開口部を設けて該リンクをシリンダライナ外周に取り出す事で、管制弁高さと重量を最小とすることができ、これにより運動部である管制弁の質量が最小と成り制御性が向上するとともに、高強度材料によって作られる管制弁の重量が最小となりコストを下げる事が出来且つ全体をコンパクトに出来る。
また前記掃気管制弁を周方向若しくは軸方向に往復移動可能に構成するガイド部が、シリンダライナ内面側に設けられることにより、精度よく掃気管制弁を往復動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施例に係るユニフロー掃気式2サイクル大型ディーゼル機関の掃気管制弁装置の構成を示すシリンダ中心線に沿う要部断面図である。
【図2】図1のA―A矢視図である。
【図3】第2実施例を示す図1対応図(シリンダ中心線に沿う要部断面図)である。
【図4】図3のB―B矢視図である。
【図5】本発明が適用されるユニフロー掃気式2サイクル大型ディーゼル機関の構成を示すシリンダ中心線に沿う概略断面図である。
【図6】本発明の第3実施例に係るユニフロー掃気式2サイクル大型ディーゼル機関の掃気管制弁装置の構成を示し、(A)はシリンダ中心線に沿う要部断面図、(B)はそのA―A矢視図である。
【図7】本発明の第4実施例に係るユニフロー掃気式2サイクル大型ディーゼル機関の掃気管制弁装置の構成を示し、(A)はシリンダ中心線に沿う要部断面図、(B)はそのA―A矢視図である。
【図8】前記各実施例における掃気通路の開口面積線図である。
【図9】前記各実施例におけるシリンダ内圧力線図である。
【図10】従来技術における掃気通路の開口面積線図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0021】
図1は本発明の第1実施例に係るユニフロー掃気式2サイクル大型ディーゼル機関の掃気管制弁装置の構成を示すシリンダ中心線に沿う要部断面図、図2は図1のA―A矢視図である。図3は第2実施例を示す図1対応図(シリンダ中心線に沿う要部断面図)、図4は図3のB―B矢視図である。図5は本発明が適用されるユニフロー掃気式2サイクル大型ディーゼル機関の構成を示すシリンダ中心線に沿う概略断面図である。図6、図7は本発明の第3及び第4実施例に係るユニフロー掃気式2サイクル大型ディーゼル機関の掃気管制弁装置の構成を示し、(A)はシリンダ中心線に沿う要部断面図、(B)はそのA―A矢視図である。図8は前記各実施例における掃気通路の開口面積線図、図9はシリンダ内圧力線図である。
【0022】
本発明が適用されるユニフロー掃気式2サイクル大型ディーゼル機関の構成を示す図5において、10はシリンダライナ、11はピストン、13はピストンリング、15はピストンロッド、10aは該ピストン11及びピストンリング13が摺動するシリンダライナの内面(摺動面)、14は燃焼室、17はシリンダカバー、16は排気弁、18は排気ポートである。また23は掃気室、24はシールパッキンである。
12は前記シリンダライナ10の下部に複数開設された掃気孔で、前記掃気室23内の掃気(空気)が該掃気孔12群を通って前記燃焼室14内に供給されるようになっている。
【0023】
19は過給機で、前記燃焼室14内の排気ガスは、前記排気弁16の開弁により排気ポート18及び排気管20を通って該過給機19のタービン19aを駆動した後、図示しない廃熱回収装置に送られて廃熱回収がなされる。
一方、該過給機19のタービン19aと同軸駆動されるコンプレッサ19bにより圧縮された空気(掃気)は給気管22を通って空気冷却器21に入り、該空気冷却器21において冷却、降温された後、掃気室23に溜められ、前記掃気孔12群の開孔により燃焼室14内に流入して、該燃焼室14内の残留燃焼ガスを排気弁16側へ押し出す。
以上の基本構成は、従来のユニフロー掃気式2サイクル大型ディーゼル機関と同様である。
本発明は、前記シリンダライナ10の掃気孔及び該掃気孔を開閉する掃気管制弁装置に関するものである。
【0024】
本発明の第1実施例を示す図1〜2において、1は回動式掃気管制弁で、前記シリンダライナ10の内面10a側に、該シリンダライナ10の周方向に所定弧状角度往復回動可能に嵌合されている。該回動式掃気管制弁1の内面、即ち前記ピストンリング13と摺接する管制弁内面1bは前記シリンダライナ10の内面10aと同一面(同一径)に形成される。
図2に示されるように、前記回動式掃気管制弁1は、その円周方向に沿って管制弁開口部1aが開口されている。該管制弁開口部1aは前記掃気孔12と同一形状かつ同一ピッチで形成され、図2のように、該管制弁開口部1aが各掃気孔12の間にあるときに各掃気孔12が全閉となり、この位置から該管制弁開口部1aが円周方向に移動するに従い掃気孔12の開口面積が増大し、各管制弁開口部1aと各掃気孔12とが重なったとき各掃気孔12が全開となって掃気孔開口面積が最大となるように構成されている。
【0025】
また、前記各管制弁開口部1aは、シリンダライナ10軸方向高さHを、前記ピストンリング13の第1段ピストンリング上面から最下段ピストンリング下面までの高さHよりも小さく形成している。このように構成することによって、該回動式掃気管制弁1の全閉時に、ピストンリング13から外れた部位からガスの漏洩を確実に回避できる。
さらに、該回動式掃気管制弁1は、ステンレス系鋼材等の前記シリンダライナ10よりも高い強度を有する母材の前記管制弁内面1bつまり該シリンダライナ10との摺接面に窒化、浸炭等の表面硬化処理を施した材料を用いて、耐摩耗性を高く保持している。
【0026】
4は前記シリンダライナ10の下部外周面に図示しない複数のボルトによって固定された管制弁サポートで、前記回動式掃気管制弁1はその下端つば部1cを該管制弁サポート4とシリンダライナ10の下面との間に相対摺動可能に支持されている。
3は油圧シリンダで、前記管制弁サポート4の外面に図示しない複数のボルトによって固定されている。2は該油圧シリンダ3の出力軸であるピストンロッド3eと前記回動式掃気管制弁1の下部(前記下端つば部1c)とを連結する駆動リンクで、前記油圧シリンダ3のピストンロッド3eが図2のX矢方向に往復動すると、前記回動式掃気管制弁1が前記下端つば部1cにおいてスライドすることにより、円周方向(X矢方向)に往復動するようになっている。
【0027】
62は前記回動式掃気管制弁1と摺接するシリンダライナ10の内面に円周方向に沿って刻設された油溝である。61は該シリンダライナ10の円周方向複数箇所に穿孔された油孔で、前記油溝62とシリンダライナ10の外面10bとを連通している。
60は注油装置で、前記シリンダライナ10の外面10bに図示しない複数のボルトによって固定された環状のケース63の内周に前記油孔61に連通される油溝64が刻設され、該ケース63に穿孔された油孔65が該油溝64に連通するように構成されている。
66は注油管であり、図示しないシリンダ注油装置からの潤滑油(他の系統からの潤滑油でもよい)が該注油管66を通して供給され、前記油孔65から油溝64を経て前記シリンダライナ10の各油孔61に入り、各油孔61から前記油溝62を通して前記回動式掃気管制弁1とシリンダライナ10との摺接部1fを潤滑するようになっている。
前記注油装置60を設けたことにより、燃焼室14内のガスが侵入し易い回動式掃気管制弁1とシリンダライナ10との摺接部1fの潤滑が十分になされ、該回動式掃気管制弁1の作動性を良好に保持するとともに、前記摺接部1f焼き付きの発生を防止できる。
【0028】
52は機関のクランク角を検出するクランク角検出器、53は機関回転数を検出する回転数検出器、54は機関負荷(機関出力)を検出する負荷検出器である。50は前記油圧シリンダ3への作動油の供給、遮断を行う電磁弁、51は該電磁弁50を開閉制御する弁開閉制御装置である。50aは図示しない油圧源からの作動油を前記電磁弁50の入口に供給する作動油供給管、50b、50cは前記電磁弁50と前記油圧シリンダ3の油室(図示省略)とを接続する作動油管である。
前記クランク角検出器52からのクランク角の検出信号、前記回転数検出器53からの機関回転数の検出信号、及び前記負荷検出器54からの機関負荷(機関出力)の検出信号は前記弁開閉制御装置51に入力されるようになっている。
【0029】
次に、図1〜2及び図8〜9に基づき、かかる第1実施例の動作を説明する。
前記弁開閉制御装置51は、前記クランク角検出器52からのクランク角の検出信号、回転数検出器53からの機関回転数の検出信号、及び負荷検出器54からの機関負荷(機関出力)の検出信号に基づき、前記電磁弁50の開閉時期及び開弁期間を制御し、該電磁弁50は前記油圧シリンダ3への作動油管50b、50cと作動油供給管50aとの接続、遮断を行う。
【0030】
しかして、前記回動式掃気管制弁1が、これの各管制弁開口部1aと各掃気孔12とが重なり各掃気孔12が全開とされているときには、前記掃気室23と燃焼室14との間の掃気通路の開口面積は、図8のAのようになっている。
従って、前記のように回動式掃気管制弁1が各掃気孔12を全開としているときには、燃焼行程においてピストン11が下降し、図8のAにおいてピストンの肩部が前記回動式掃気管制弁1の各管制弁開口部1aを開口した後、ピストン11が下死点Cから上昇し、Eにおいてピストンの肩部が各管制弁開口部1aを閉じるまでは、掃気通路の開口面積は図8のAのように変化する。
【0031】
図2に示されるように、前記回動式掃気管制弁1の各管制弁開口部1aが各掃気孔12の間に位置しているときには、該回動式掃気管制弁1によって各掃気孔12が閉じられ、前記掃気通路の開口面積はゼロ(全閉)となっている。
かかる掃気通路の開口面積が全閉の状態において、前記クランク角の検出信号により、ピストンの位置が下死点C後のDにきたことが前記弁開閉制御装置51に入力されると、該弁開閉制御装置51は、電磁弁50を切り換えて前記油圧シリンダ3への作動油管50b、50cと作動油供給管50aとの接続を切り換え、該油圧シリンダ3によって前記回動式掃気管制弁1を前記全閉の状態から円周方向(図2のX矢方向)に移動させ、該回動式掃気管制弁1を開き始める。
【0032】
かかる回動式掃気管制弁1の開口面積は、前記ピストンの肩部により該回動式掃気管制弁1の各管制弁開口部1aの一部あるいは全部が閉じられていない場合には、該回動式掃気管制弁1の円周方向の移動に従い図8のAのように変化し、下死点C後のDにて該回動式掃気管制弁1が開き始め、Fにて閉じる。
然るに、かかる実施例においては、前記回動式掃気管制弁1の全閉状態から弁開度の増大と同時に、ピストン11が下死点Cから上昇して前記ピストンの肩部により該各管制弁開口部1aを軸方向において閉じて行き、該管制弁開口部1aの軸方向における開口高さが減少していくため、前記掃気通路の実際の開口面積は図8のAのようになり、後述するように、前記Fよりも早期のEにて前記排気弁16と同時に閉じることとなる。
【0033】
一方、前記排気弁16(図5参照)の開口面積は、図8のAのように、前記下死点C前のBにて開きはじめる。
そして、かかる実施例においては、前記弁開閉制御装置51は、前記掃気通路の実際の開口面積Aと前記排気弁の開口面積Aとが同一クランク角においてゼロになる、即ち下死点C後の掃気通路の閉時期を排気弁16の閉弁時期と同一時期(図8のE)になるように、前記回動式掃気管制弁1を開閉制御する。
前記回動式掃気管制弁1の開閉時期は、前記回転数検出器53にて検出される機関回転数及び負荷検出器54にて検出される機関負荷(機関出力)によって変化せしめることが可能である。
【0034】
かかる第1実施例によれば、前記弁開閉制御装置51によって前記回動式掃気管制弁1の開度を制御することにより、下死点C後の掃気通路の閉時期を排気弁16の閉弁時期と同一時期(図8のE)になるようにしたので、前記掃気通路の閉止と同時に排気弁16も閉じることとなり、従来技術のように掃気孔12が閉じた後も排気弁16が開いて燃焼室14内の新気が排気管20側に吹き抜けて新気の流出損失が発生することがない。更にピストン11の下降ストロークで掃気孔12群を閉じておく事で排気弁16の開弁を極限まで遅らせ最大の有効仕事を得ることが出来、これにより、図9のK部に示される面積に相当する量の、シリンダ内ガスの有効仕事を増大することが可能となる。
尚、図9におけるA、B、C、D、Eの符号は図8の符号に対応している。
また、機関回転数、機関負荷(機関出力)等の機関運転状態を検出して前記弁開閉制御装置51に入力し、該弁開閉制御装置51により、機関運転状態によって前記回動式掃気管制弁1を駆動するので、機関の運転状態に最適な掃気通路の開口面積変化を得ることが可能となり、NOxの発生を抑制しつつ機関の熱効率を高く維持する運転が可能となる。
【0035】
また、前記のように、掃気通路の閉止と同時に排気弁16も閉じることにより、燃焼室14内の新気が排気管20側に吹き抜けることがなくなるので、過給機19及び図示しない排気ガス熱回収システムに高排気温度の排気ガスを供給することができる。これにより、前記過給機19を駆動する排気ガスエネルギーが増大するとともに、前記排気ガス熱回収システムにおける廃熱回収効率が向上する。
【0036】
また、前記弁開閉制御装置51は、前記回動式掃気管制弁1を介して前記掃気通路の開口始め時期を下死点C後のDに設定するように構成されているので、下死点C後のピストン11の上昇とともに掃気作用が開始され、掃気の流入速度とピストン11の上昇運動との相乗作用によって燃焼室14内の掃気作用が助長、強化されることとなる。これにより、少ない掃気流量で掃気効率を高く維持できる。
【0037】
また、前記回動式掃気管制弁1をシリンダライナ10の内面10a側に、該シリンダライナ10の周方向に所定弧状角度往復回動可能に嵌合して掃気孔12を開閉し、前記掃気通路の開口面積を変化せしめるようにしたので、該回動式掃気管制弁1をシリンダライナ10の内面10aに沿って円周方向に移動させることにより、該回動式掃気管制弁1とシリンダライナ10との摺接部1fのシール性を良好に保持して掃気通路の開口面積を全閉状態から全開状態まで自在に変化させることができ、掃気通路の開口面積変化を目標とする開口面積パターンに正確に制御することが可能となる。
また、前記のように回動式掃気管制弁1とシリンダライナ10との摺接部1fのシール性を良好に保持して掃気通路を完全に閉塞することが可能となるので、掃気通路側からの作動ガスの吹き返しをゼロとすることができ、これによりピストンリング13、シリンダライナ10の耐久性が向上する。
【0038】
また、前記回動式掃気管制弁1の各管制弁開口部1aの開口幅を変化させることにより同一掃気通路開口面積を変化させるので、該管制弁開口部1aの軸方向長さを長くすることにより、掃気孔12の高さを従来のものよりも高くして、従来のものと同一掃気通路開口面積を保持することが可能となる。これにより、ピストンストロークに対する掃気孔12の高さの割合を大きく採って掃気効率を向上させることが可能となる。
【0039】
図3〜4に示す第2実施例においては、掃気管制弁を前記シリンダライナ10の内面において該シリンダライナ10の軸方向に往復動せしめられる往復式掃気管制弁5により構成している。
即ち、図3〜4において、5は往復式掃気管制弁で、前記シリンダライナ10の内面10a側に、該シリンダライナ10の軸方向に往復動可能に嵌合されている。該往復式掃気管制弁5の内面、即ち前記ピストンリング13と摺接する管制弁内面5bは前記シリンダライナ10の内面10aと同一面(同一径)に形成される。
【0040】
図4に示されるように、前記往復式掃気管制弁5は、その円周方向に沿って管制弁制御部5aが前記掃気孔12と同数形成されている。各管制弁制御部5aは、最上部ストローク時に前記掃気孔12を全閉可能なように、該掃気孔12よりも若干幅広に形成され、該管制弁制御部5aが図4のように最上部位置にあるときに各掃気孔12が全閉となり、この位置から該往復式掃気管制弁5が下降するに従い掃気孔12の開口面積が増大し、往復式掃気管制弁5が最下部にきたとき各掃気孔12が全開となって掃気孔開口面積が最大となるように構成されている。
【0041】
6は前記シリンダライナ10の下部外周面に図示しない複数のボルトによって固定された管制弁サポートであり、前記往復式掃気管制弁5はその下端つば部5cと該管制弁サポート6の下端支持部6aとの間に後述する油圧シリンダ7及びスプリング8を介して、シリンダライナ10との摺接部1fを往復摺動可能に採り付けられている。
【0042】
7は油圧シリンダで、前記往復式掃気管制弁5の下端つば部5cと前記管制弁サポート6の下端支持部6aとの間に介装され、該油圧シリンダ7の伸縮により前記往復式掃気管制弁5がシリンダライナ10の軸方向に往復動して、前記各掃気孔12を開閉するようになっている。該油圧シリンダ7の駆動系を構成する電磁弁50、弁開閉制御装置51等の構成は前記第1実施例と同様である。
8は圧縮ばね或いは圧縮空気からなるスプリングで、前記往復式掃気管制弁5の下端つば部5cと前記管制弁サポート6の下端支持部6aとの間に介装されて、前記往復式掃気管制弁5を上方に押し上げ、前記各掃気孔12を閉じる方向に付勢されている。
前記油圧シリンダ7及びスプリング8、シリンダライナ10の円周方向に沿って複数個設置されている。
【0043】
かかる第2実施例において、前記往復式掃気管制弁5が最下部に位置して各掃気孔12が全開とされているときには、前記掃気室23と燃焼室14との間の掃気通路の開口面積は、図8のAのようになっている。
従って、往復式掃気管制弁5が各掃気孔12を全開としているときには、燃焼行程においてピストン11が下降し、図8のAにおいてピストンの肩部が掃気孔12群を開口した後、ピストン11が下死点Cから上昇し、Eにおいてピストンの肩部が各掃気孔12を閉じるまでは、掃気通路の開口面積は図8のAのように変化する。
【0044】
図4に示されるように、前記スプリング8によって前記往復式掃気管制弁5が最上部に位置せしめられているときには、該往復式掃気管制弁5の管制弁制御部5aによって各掃気孔12が閉じられ、前記掃気通路の開口面積はゼロ(全閉)となっている。
かかる掃気通路の開口面積が全閉の状態において、前記クランク角の検出信号により、第1段のピストンリング13の位置が下死点C後のDにきたことが前記弁開閉制御装置51に入力されると、該弁開閉制御装置51は、前記電磁弁50及び弁開閉制御装置51を介して前記往復式掃気管制弁5を前記全閉の状態から軸方向下方(図3のY矢方向)に移動させ、該往復式掃気管制弁5を開き始める。
【0045】
かかる往復式掃気管制弁5の開口面積は、前記ピストン肩部により各掃気孔12群が閉じられていない場合には、該往復式掃気管制弁5軸方向の移動に従い図8のAのように変化し、下死点C後のDにて該往復式掃気管制弁5が開き始め、Fにて閉じる。
然るに、かかる実施例においては、前記往復式掃気管制弁1の全閉状態から弁開度の増大と同時に、ピストン11が下死点Cから上昇して前記第1段のピストンリング13により掃気孔12群を閉じて行き、該掃気孔12の軸方向における開口高さが減少するため、前記掃気通路の実際の開口面積は図8のAのように小さくなり、前記Fよりも早期のEにて閉じることとなる。
【0046】
一方、前記排気弁16(図5参照)の開口面積は、図8のAのように、前記下死点C前のBにて開きはじめとなる。
そして、かかる第2実施例においては前記第1実施例と同様に、前記弁開閉制御装置51は、前記掃気通路の実際の開口面積Aと前記排気弁の開口面積Aとが同一クランク角においてゼロになる、即ち下死点C後の掃気通路の閉時期を排気弁16の閉弁時期と同一時期(図8のE)になるように、前記回動式掃気管制弁1を開閉制御する。
従って前記掃気通路の閉止と同時に排気弁16も閉じることとなり、従来技術のように掃気孔が閉じた後も排気弁が開いて燃焼室14内の新気が排気管18側に吹き抜けて該ガスの流出損失が発生することはない。
【0047】
かかる第2実施例において、前記以外の作用、効果は、前記第1実施例と同様である。また前記以外の構成は前記第1実施例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
【0048】
図6に示す第3実施例においては、掃気管制弁1Aを前記シリンダライナ10の内面において該シリンダライナ10の円周方向に所定弧状角度往復動せしめられる回動式(ロータリスライド式)掃気管制弁により構成するとともに、該掃気管制弁1Aの開口部65を掃気孔群12と略同じ形状で且つ同一ピッチの開口群を持ち、シリンダライナ10の円周方向に所定弧状角度往復動せしめられることで掃気孔を管制するもので、該管制弁1Aの駆動リンク72Aを、シリンダライナ10に駆動リンク取出開口部73Aを設けて該駆動リンク72Aをライナ外周側に延在させる事で、排気管制弁1Aの高さと重量を最小にしている。
即ち図6において、1Aは回動式掃気管制弁で、前記シリンダライナ10の内面10aに、該シリンダライナ10の周方向に所定弧状角度往復回動可能に嵌合されている。
前記回動式掃気管制弁1Aは、その円周方向に沿って管制弁開口部65が前記掃気孔12と同一形状かつ同一ピッチで形成され、図6(B)に示すように、該管制弁開口群65が各掃気孔12群の間にあるときに各掃気孔12が全閉となり、この位置から該管制弁開口部65が円周方向に移動するに従い掃気孔12群の開口面積が増大し、各管制弁開口部65と各掃気孔12とが重なったとき各掃気孔12が全開となって掃気孔開口面積が最大となるように構成されている。
また前記掃気管制弁1Aは前記駆動リンク取出開口部73Aを気密シール可能に塞ぐように該開口部73A下端側より僅かに下方に延在させて蓋部1Abとなすとともに、該蓋部下端と掃気管制弁1A上端がライナ周方向に摺動可能に平行に形成するとともに、該摺動域のシリンダライナ10側を凹設し、その凹設端面を摺動ガイド10cとなす。
【0049】
71Aは駆動油圧シリンダで、前記駆動リンク取出開口部73A近傍のシリンダライナ10の外面に図示しない複数のボルトによって固定されている。72Aは該油圧シリンダ71Aの出力軸であるピストンロッド71Aeと前記回動式掃気管制弁1Aの下部とを連結する駆動リンクで、前記油圧シリンダ71Aのピストンロッド71Aeがシリンダライナ10の周方向に往復動すると、前記回動式掃気管制弁1Aがシリンダライナ10の内周面をスライドすることにより、円周方向に往復動して前記各掃気孔12を開閉するようになっている。
尚、前記油圧シリンダ71Aの駆動系を構成する電磁弁50、弁開閉制御装置51等の構成は前記第1実施例と同様である。
【0050】
かかる第3実施例における作用は第1実施例と同様であるが、管制弁1Aの駆動リンク72Aを、シリンダライナ10に駆動リンク取出開口部73Aを設けて該駆動リンク72Aをライナ外周側に延在させる事で、排気管制弁1Aの高さと重量を最小にしているために運動部である管制弁1Aの質量が最小となり制御性が向上するとともに、これにより高強度材料によって作られる管制弁1Aの重量が最小となりコストを下げる事が出来更にこれにより全体をコンパクトに出来る。
【0051】
図7に示す第4実施例においては、掃気管制弁を前記シリンダライナ10の内面において該シリンダライナ10の軸方向に往復動せしめられる往復式掃気管制弁5Aにより構成している点は、第1実施例と同様であるが、シリンダライナの管制弁駆動リンクを、シリンダライナの掃気孔下方にリンクストローク長さに対応する縦長帯状でリンクストロークに対応する長さの開口部を設けて該開口部を介してリンクをシリンダライナ外周に延在させて駆動油圧シリンダに取り付ける。
即ち、5Aは往復式掃気管制弁で、前記シリンダライナ10の内面10a側に、該シリンダライナ10の軸方向に往復動可能に嵌合されている。該往復式掃気管制弁5Aの内面、即ち前記ピストンリング13と摺接する管制弁内面5bは前記シリンダライナ10の内面10aと同一面(同一径)に形成される。
【0052】
図7(B)に示されるように、前記往復式掃気管制弁5Aは、その円周方向に沿って櫛歯状の管制弁制御部5Aaが前記掃気孔12群と同数形成されている。各管制弁制御部5Aaは、最上部ストローク時に前記各掃気孔12を全閉可能なように、該掃気孔12よりも若干幅広に形成され、該管制弁制御部5Aaが図7のように最上部位置にあるときに各掃気孔12が全閉となり、この位置から該往復式掃気管制弁5Aが下降するに従い掃気孔12の開口面積が増大し、往復式掃気管制弁5Aが最下部にきたとき各掃気孔12が全開となって掃気孔開口面積が最大となるように構成されている。
そして前記管制弁制御部5Aaの下側5Abは櫛歯状に垂下されており、該櫛歯部5Abはシリンダライナに設けた凹設したスライド溝101と軸方向に摺動自在に嵌合し、管制弁5Aが軸方向に往復動する際の揺動を防止している。
尚、櫛歯部の歯幅は管制弁制御部5Aaの幅と同等か僅かに小に設定するとともに、シリンダライナ10側のスライド溝101に容易に侵入できるように、先端U字状に形成する。
シリンダライナ10側のスライド溝101を形成する岸部102も先端U字状に形成するとともに、往復式掃気管制弁がシリンダライナ10の内面に沿って軸方向に往復動可能なストローク位置に形成する。
【0053】
また駆動リンク取出開口部73Bは掃気孔下方の前記櫛歯部5Abの櫛幅より小に設定し、その部分より漏れがないように開口する。
【0054】
71Bは駆動油圧シリンダで、前記駆動リンク取出開口部の下側に固定配置され、該油圧シリンダ71Bの伸縮により前記往復式掃気管制弁5Aがシリンダライナ10の軸方向に往復動して、前記各掃気孔12を開閉するようになっている。
【0055】
かかる実施例によれば掃気管制弁を軸方向に往復動させる管制弁駆動リンク72Bを、掃気孔下方のシリンダライナ10に駆動リンク取出開口部73Bを設けて該リンク72Bをシリンダライナ10外周に取り出す事で、管制弁高さと重量を最小とすることができ、これにより運動部である管制弁5Aの質量が最小となり制御性が向上するとともに、高強度材料によって作られる管制弁5Aの重量が最小となりコストを下げる事が出来且つ全体をコンパクトに出来る。
【産業上の利用可能性】
【0056】
2サイクル大型ディーゼル機関に適用され、シリンダカバーに排気弁を備えるとともに燃焼室内に掃気を供給する掃気孔がシリンダライナの下部に周方向に沿って複数開設され、さらに該掃気孔を開閉するとともに燃焼室内への掃気通路の開口面積を変化せしめる掃気管制弁を備えた内燃機関において、掃気管制弁とシリンダライナとの摺接部のシール性を良好に保持して掃気通路の開口面積を目標開口面積に正確に制御可能とするとともに、掃気通路の完全な閉塞を可能として掃気通路を通しての作動ガスの吹き返しを阻止してピストンリング、シリンダライナの耐久性を向上し、かつシリンダ注油用の潤滑油消費率を低減できる。
【符号の説明】
【0057】
1、1A、30 回動式掃気管制弁
1a 管制弁開口部
2 駆動リンク
3、7、41 油圧シリンダ
5A、40 往復式掃気管制弁
8 スプリング
10 シリンダライナ
10a シリンダライナの内面
11 ピストン
12 掃気孔
13 ピストンリング
14 燃焼室
16 排気弁
19 過給機
23 掃気室
50 電磁弁
51 弁開閉制御装置
52 クランク角検出器
53 回転数検出器
54 負荷検出器
60 注油装置
72A、72B 駆動リンク
73A、73B 駆動リンク取出開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室内に掃気を供給する掃気孔がシリンダライナの下部に周方向に沿って複数開設されるとともに、シリンダカバーに排気弁を備えた内燃機関において、
前記シリンダライナの内側に、該シリンダライナの内面に沿って移動可能に設けられて前記掃気孔を開閉し前記燃焼室内への掃気通路の開口面積を変化せしめる掃気管制弁と、機関のクランク角に対応して前記掃気管制弁を駆動する弁作動装置とを備え、前記クランク角の変化に対応して前記掃気管制弁を移動させることにより、前記掃気通路の開口面積を変化せしめるように構成されたことを特徴とする掃気管制弁装置を備えた内燃機関。
【請求項2】
前記掃気管制弁とシリンダライナとの摺動面に潤滑油を強制注油する注油装置を設けてなることを特徴とする請求項1記載の掃気管制弁装置を備えた内燃機関。
【請求項3】
前記掃気管制弁は、前記シリンダライナよりも高い強度を有する母材の該シリンダライナとの摺接面に窒化等の表面硬化処理を施した材料からなることを特徴とする請求項1記載の掃気管制弁装置を備えた内燃機関。
【請求項4】
前記掃気管制弁は、前記弁作動装置により前記シリンダライナの内面において該シリンダライナの周方向に往復回動せしめられる回動式掃気管制弁からなることを特徴とする請求項1記載の掃気管制弁装置を備えた内燃機関。
【請求項5】
前記回動式掃気管制弁のシリンダライナ軸方向高さ(H)を、第1段ピストンリング上面から最下段ピストンリング下面までの高さ(H)よりも小さく形成したことを特徴とする請求項4記載の掃気管制弁装置を備えた内燃機関。
【請求項6】
前記掃気管制弁は、前記弁作動装置により前記シリンダライナの内面において該シリンダライナの軸方向に往復動せしめられる往復式掃気管制弁からなることを特徴とする請求項1記載の掃気管制弁装置を備えた内燃機関。
【請求項7】
前記シリンダライナの内側に位置する掃気管制弁が、シリンダライナ外側に配設された駆動系により、該シリンダライナの内面に沿って周方向若しくは軸方向に往復移動可能に構成され、前記駆動系と掃気管制弁とを連結する伝導機構が、掃気管制弁により封止可能な位置に開口されたシリンダライナ開口部より駆動系側に延在されていることを特徴とする請求項1記載の掃気管制弁装置を備えた内燃機関。
【請求項8】
前記シリンダライナの内側に位置する掃気管制弁が、シリンダライナ外側に配設された駆動系により、該シリンダライナの内面に沿って周方向若しくは軸方向に往復移動可能に構成され、前記掃気管制弁を周方向若しくは軸方向に往復移動可能に構成するガイド部が、シリンダライナ内面側に設けられていることを特徴とする請求項1記載の掃気管制弁装置を備えた内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−115099(P2009−115099A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15745(P2009−15745)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【分割の表示】特願2003−385653(P2003−385653)の分割
【原出願日】平成15年11月14日(2003.11.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】