説明

排ガス処理装置および排ガス処理方法

【課題】排ガスの分解に伴い発生する窒素酸化物を低減する排ガス処理装置および排ガス処理方法を提供する。
【解決手段】排ガス処理装置100aは、加熱容器110と、排ガス導入部121と、加熱部と、測定部130と、制御部とを備えている。排ガス導入部121は、加熱容器110の内部に窒素元素を含む排ガスを導入する。加熱部は、加熱容器110の内部に火炎200を吹き出すノズル部120aを有し、加熱容器110内に生じた火炎200によって排ガス導入部121により加熱容器110内に導入された排ガスG1を分解する。測定部130は、ノズル部120aにおける火炎吹出口120bから火炎200を吹き出す方向に延びた加熱容器110内の領域Rに配置され、領域R内の温度を測定する。制御部は、測定部130の温度に応じて加熱部の加熱条件を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理装置および排ガス処理方法に関し、たとえば窒素を構成元素として含む排ガス(NH3等)を分解するための排ガス処理装置および排ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体の製造において可燃性または支燃性のガスが排ガスとして排出され、これらの排ガスを環境への負荷を減らすように除害している。このような排ガスを除害する装置として、たとえば特許第3280173号公報(特許文献1)には、電気ヒータ等の加熱源により加熱筒の内部を加熱して、この熱により有毒性のガスを加熱酸化分解する排ガス処理装置が開示されている。
【0003】
図15は、特許文献1に開示の排ガス処理装置を示す概略図である。図15に示すように、上記特許文献1の排ガス処理装置500は、加熱筒510の外周に配置された電気ヒータ590と、加熱筒510の内部の出口付近の温度を検出する温度センサ530と、加熱筒510の内部の出口付近の温度を所定の温度範囲内に維持するように電気ヒータ590を制御するコントローラ540とを備えている。温度センサ530とコントローラ540とによる電気ヒータ590の制御によって、加熱筒510の出口部分での排ガスの温度を一定範囲内に保つことで、排ガスの酸化分解反応が安定化されると上記特許文献1には記載されている。
【特許文献1】特許第3280173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、温度センサ530で測定される加熱筒510の出口部は、加熱筒510の内部において温度が高い領域ではない。
【0005】
排ガスを分解する際に発生する窒素酸化物(NOx)は、環境に負荷がかかる。雰囲気の温度が高い程、この窒素酸化物の発生量は増加する。このため、上記特許文献1では、仮に窒素酸化物の発生量を制御する場合であっても、温度の高い領域でない出口部の温度に基づいて電気ヒータ590の制御をする必要があるため、窒素酸化物の発生を正確に制御できないという問題がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、排ガスの分解に伴い発生する窒素酸化物を低減する排ガス処理装置および排ガス処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面における排ガス処理装置は、加熱容器と、排ガス導入部と、加熱部と、測定部と、制御部とを備えている。排ガス導入部は、加熱容器の内部に窒素元素を構成元素として含む排ガスを導入するためのものである。加熱部は、加熱容器の内部に火炎を吹き出すノズル部を有し、加熱容器内に生じた火炎によって排ガス導入部により加熱容器内に導入された排ガスを分解するためのものである。測定部は、ノズル部における火炎吹出口から火炎を吹き出す方向に延びた加熱容器内の領域に配置された、領域内の温度を測定するためのものである。制御部は、測定部の温度に応じて加熱部の加熱条件を制御するためのものである。
【0008】
本発明の一の局面における排ガス処理装置によれば、ノズル部から発生する火炎または火炎の近傍の領域に測定部が配置されているため、加熱容器において温度の高い領域の温度を測定することができる。雰囲気の温度が高い程、窒素酸化物の発生量が増加するので、測定部で測定される領域は、窒素酸化物の発生に大きく寄与している領域である。このため、窒素酸化物の発生に寄与しているこの領域の温度を、制御部によって窒素酸化物へ反応しやすい温度未満の温度に制御することにより、窒素酸化物の発生量を正確に制御できる。したがって、排ガスの分解に伴い発生する窒素酸化物を低減できる。
【0009】
上記一の局面における排ガス処置装置において好ましくは、加熱部は、加熱容器の内部に助燃ガスを導入するための助燃ガス導入部と、助燃ガスを燃焼させるための分解用ガスを加熱容器の内部に導入するための分解用ガス導入部とを含み、制御部は、助燃ガスおよび分解用ガスの少なくとも一方の流量を制御する。
【0010】
助燃ガス導入部から導入される助燃ガスと、分解用ガス導入部から導入される分解用ガスとにより、ノズル部から火炎を発生することができる。制御部で加熱条件として助燃ガスおよび分解用ガスの流量を制御することにより、火炎の発生状態を調整できる。したがって、窒素酸化物の発生に寄与している上記領域の温度を、窒素酸化物へ反応しやすい温度未満の温度に制御することができるので、窒素酸化物の発生を抑制できる。
【0011】
上記一の局面における排ガス処理装置において好ましくは、加熱容器は、排ガスを分解した後のガスを外部に排出するための出口部を有し、加熱容器の出口部に設けられ、出口部の酸素濃度を測定するための酸素測定部をさらに備え、制御部は、酸素測定部により測定された酸素濃度に応じて分解用ガスの流量を制御するための調整部を含んでいる。
【0012】
これにより、出口部で残存している酸素濃度がわかるので、この酸素濃度に応じて分解用ガスの流量を制御することにより燃焼状態を制御できる。このため、窒素酸化物の生成をより正確に制御できる。また、排ガスを燃焼させることにより排ガスを分解できるので、高効率で排ガスを除害できる。
【0013】
本発明の他の局面における排ガス処理装置は、加熱容器と、排ガス導入部と、加熱部と、測定部と、制御部とを備えている。加熱容器は、筒状部を有している。排ガス導入部は、加熱容器の内部に窒素元素を構成元素として含む排ガスを導入するためのものである。加熱部は、加熱容器の筒状部の外周側に配置され、かつ排ガスを分解するために加熱容器の内部を加熱するためのものである。測定部は、筒状部の軸方向に沿って加熱部が位置する範囲よりも小さい範囲内に位置する筒状部内の領域に配置された、領域内の温度を測定するためのものである。制御部は、測定部の温度に応じて加熱部の加熱条件を制御するためのものである。
【0014】
本発明の他の局面における排ガス処理装置によれば、加熱部により加えられる熱量の多い領域に測定部が配置されているので、加熱容器において温度の高い領域の温度を測定することができる。雰囲気の温度が高い程、窒素酸化物の発生量が増加するので、測定部で測定される領域は、窒素酸化物の発生に大きく寄与している領域である。このため、窒素酸化物の発生に寄与しているこの領域の温度を、制御部によって窒素酸化物へ反応しやすい温度未満の温度に制御することにより、窒素酸化物の発生量を正確に制御できる。したがって、排ガスの分解に伴い発生する窒素酸化物を低減できる。
【0015】
上記他の局面における排ガス処置装置において好ましくは、加熱容器は、排ガスを分解した後のガスを加熱容器の外部に排出するための出口部を有し、加熱容器の出口部に設けられ、出口部の酸素濃度を測定するための酸素測定部と、排ガスを分解させるための分解用ガスを導入するための分解用ガス導入部とをさらに備え、制御部は、酸素測定部により測定された酸素濃度に応じて分解用ガスの流量を制御するための調整部を含んでいる。
【0016】
これにより、出口部での残存している酸素の濃度がわかるので、この酸素濃度に応じて分解用ガスの流量を制御することにより加熱条件を制御できる。このため、窒素酸化物の生成をより正確に制御できる。
【0017】
上記一および他の局面における排ガス処理装置において好ましくは、測定部は、複数の測定素子を有し、制御部は、複数の測定素子により測定された温度のうち、最も高い温度に応じて加熱部による加熱条件を制御する。
【0018】
これにより、加熱容器内へ導入される排ガスの流量の変化、加熱量の変化などによって、加熱容器内で温度が高くなる領域が変化する場合であっても、排ガスから窒素酸化物への反応が促進される領域の温度を精度を向上して測定できる。このため、窒素酸化物の生成をより正確に制御できる。
【0019】
上記一および他の局面における排ガス処理装置において好ましくは、制御部は、測定部により測定される温度が700℃以上1000℃以下になるように加熱部の加熱条件を制御する。
【0020】
上記温度が700℃以上の場合、排ガスを高効率で分解することができる。上記温度が1000℃以下の場合、窒素酸化物の発生がより抑制される。
【0021】
なお、上記「温度」は、測定部が複数の測定素子を有している場合には、測定素子により測定された温度のうち最も高い温度を意味する。
【0022】
上記一および他の局面における排ガス処理装置において好ましくは、排ガスは、アンモニア(NH3)ガスおよびアミン系ガスの少なくともいずれかのガスを含んでいる。
【0023】
上記ガスは半導体の製造により排出されるため、本発明の排ガス処置装置に好適に用いられる。
【0024】
本発明の排ガス処理方法は、上記いずれかの排ガス処理装置を用いて、窒素元素を含む排ガスを分解することにより処理する方法であって、以下の工程が実施される。まず、加熱容器の内部に導入した排ガスを加熱部により加熱することで、排ガスが分解される。そして、測定部により上記領域内の温度が測定される。そして、測定された温度に応じて、制御部により加熱部の加熱条件が制御される。
【0025】
本発明の排ガス処理方法によれば、加熱容器内の温度の高い領域の温度を測定している。雰囲気の温度が高い程、窒素酸化物の発生量が増加するので、測定される領域は、窒素酸化物の発生に寄与している領域である。このため、窒素酸化物の発生に寄与しているこの領域の温度を制御部によって窒素酸化物へ反応しやすい温度未満の温度に制御することにより、窒素酸化物の発生量を正確に制御できる。したがって、排ガスの分解に伴い発生する窒素酸化物を低減できる。
【0026】
上記排ガス処理方法において好ましくは、温度を測定する工程では、上記領域内の複数の位置の温度を測定し、上記加熱条件を制御する工程では、複数の位置の温度のうち最も高い温度に応じて上記加熱条件を制御する。
【0027】
これにより、加熱容器内へ導入される排ガスの流量の変化、加熱量の変化などによって、加熱容器内で温度が高くなる領域が変化する場合であっても、排ガスから窒素酸化物への反応が促進される領域の温度を精度を向上して測定できる。このため、窒素酸化物の生成をより正確に制御できる。
【0028】
上記排ガス処理方法において好ましくは、上記温度が700℃以上1000℃以下になるように制御される。
【0029】
上記温度を700℃以上になるように制御することによって、排ガスを高効率で分解することができる。上記温度を1000℃以下になるように制御することによって、窒素酸化物の発生がより抑制される。
【0030】
なお、上記「温度」は、測定部が複数の測定素子を有している場合には、測定素子により測定された温度のうち最も高い温度を意味する。
【0031】
上記排ガス処理方法において好ましくは、上記排ガスを分解する工程では、助燃ガスおよび分解用ガスを加熱容器の内部に導入して排ガスを燃焼させ、加熱条件を制御する工程では、測定された温度に応じて、助燃ガスおよび分解用ガスの少なくとも一方の流量を制御する。
【0032】
助燃ガスと分解用ガスとにより、ノズル部から火炎を発生することができる。そのため、加熱条件として助燃ガスおよび分解用ガスの流量を制御することにより、火炎の発生状態を調整できる。したがって、上記領域を窒素酸化物へ反応しやすい温度未満の温度に制御することができるので、窒素酸化物の発生を抑制できる。
【0033】
上記排ガス処理方法において好ましくは、加熱容器において排ガスを処理した後のガスを加熱容器の外部に排出するための出口部の酸素濃度を測定する工程と、酸素濃度に応じて、分解用ガスの流量を制御する工程とをさらに備えている。
【0034】
これにより、出口部での残存している酸素の濃度に応じて分解用ガスの流量を制御することにより、加熱条件を制御できる。このため、窒素酸化物の生成をより正確に制御できる。
【0035】
上記排ガス処理方法において好ましくは、上記排ガスとして、アンモニアガスおよびアミン系ガスの少なくともいずれかを含むガスを用いる。
【0036】
上記ガスは半導体の製造により排出されるため、本発明の排ガス処置方法に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の排ガス処理装置および排ガス処理方法によれば、排ガスの分解に伴い発生する窒素酸化物を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における排ガス処理装置を示す概略模式図である。本実施の形態における排ガス処理装置100aは、燃焼により窒素を含む排ガスを分解させるための装置である。
【0039】
図1に示すように、本実施の形態における排ガス処理装置100aは、加熱容器110と、バーナ120と、測定部130と、温度制御装置141と、空燃制御装置142と、冷却ガス導入部161と、排出部171とを主に備えている。
【0040】
加熱容器110は、内部で排ガスG1を燃焼させることにより分解させる。加熱容器110は、たとえば円筒状などの筒状である。加熱容器110は、安全性の観点から、たとえば、金属材料からなる外壁と、外壁より内側に配置された耐火性材料からなる断熱材とを含んでいる。
【0041】
この加熱容器110に、バーナ120のノズル部120a側が接続されている。バーナ120は、加熱容器110の内部に火炎200を吹き出すノズル部120aを有し、加熱容器110内に生じた火炎200によって排ガス導入部121により加熱容器110内に導入された排ガスG1を分解する。
【0042】
バーナ120は、排ガス導入部121と、助燃ガス導入部122と、分解用ガス導入部123とを含んでいる。排ガス導入部121は、加熱容器110の内部に窒素元素を構成元素として含む排ガスG1を導入する。助燃ガス導入部122は、加熱容器110の内部に助燃ガスG2を導入する。分解用ガス導入部123は、助燃ガスG2を燃焼させるための分解用ガスG3を加熱容器110の内部に導入する。排ガス導入部121、助燃ガス導入部122および分解用ガス導入部123は、たとえば内部に排ガスG1、助燃ガスG2および分解用ガスG3を流動させるための中空を有する柱状の管であり、延在する方向がほぼ同じである。
【0043】
バーナ120の排ガス導入部121は開口部121aを有している。この開口部121aを介して分解用ガスG3をバーナ120の排ガス導入部121へ供給するための分解用ガス供給部151が、排ガス導入部121と接続されている。この分解用ガスG3を分解用ガス供給部151および分解用ガス導入部123へ導くために、分解ガス用ファン152が設けられている。分解用ガス供給部151の内部には、分解用ガス供給部151からバーナ120の分解用ガス導入部123へ分解用ガスG3の供給する流量を調整するためのダンパ153が設けられている。
【0044】
バーナ120は、加熱容器110の内部に火炎を吹き出すノズル部120aを有し、加熱容器110内に導入される火炎200により排ガス導入部121により導入された排ガスG1を分解する。
【0045】
このノズル部120aにおける火炎吹出口120bから火炎200を吹き出す方向(図1における矢印A)に延びた加熱容器110内の領域R(図1において点線で囲まれた領域R)に、測定部130が配置されている。言い換えると、ノズル部120aにおける火炎吹出口120bから火炎200を吹き出す方向(図1における矢印A)に火炎吹出口120bから仮想の線(図1における点線)を延ばしたときに、この仮想の線に囲まれた領域R内に測定部130は配置されている。さらに言い換えると、測定部130は、バーナ120により発生する火炎200または火炎200近傍に配置されている。この領域Rは、加熱容器110の内部において相対的に温度が高い領域である。測定部130は、この領域Rの温度を測定する。測定部130は、たとえば温度センサなどの測定素子を用いることができる。
【0046】
なお、排ガス処理装置100aが火炎200を発生させる方式の加熱部を備えている場合には、加熱条件を選択することにより火炎200を出口部まで伸ばすことができるので、領域Rは、加熱容器110の出口部を含んでいてもよい。
【0047】
測定部130から検出された領域Rの温度の信号を受信するための温度制御装置141が設けられている。この温度制御装置141は、測定部130により測定された温度に応じて、領域Rの温度を上昇、下降または維持することを判断する。この温度制御装置141からの信号に基づいて、助燃ガスG2および分解用ガスG3の流量を制御するための空燃制御装置142が設けられている。
【0048】
温度制御装置141および空燃制御装置142は、測定部130により測定される温度が700℃以上1000℃以下、好ましくは800℃以上900℃以下になるようにバーナ120の加熱条件を制御する。700℃以上の場合、排ガスG1を高効率で分解することができる。800℃以上の場合、排ガスG1をより高効率で分解することができる。一方、1000℃以下の場合、窒素酸化物の発生がより抑制される。900℃以下の場合、排ガスG1をより高効率で分解することができる。
【0049】
加熱容器110は、排ガスG1を分解した後のガスを加熱容器110の外部に排出するための出口部を有しており、この出口部と接続され、排ガスG1を燃焼により分解した後の処理ガスG5を外部に排出するための排出部171が設けられている。この排出部171に冷却ガスG4を導入するための冷却ガス導入部161が接続されている。冷却ガスG4を排出部171に導くために冷却ファン162が設けられている。加熱容器110から排出される排出ガスの温度が上昇した場合に、必要に応じて冷却ファン162が起動される。また、排出部171に導く冷却ガスG4の流量を調整するために、冷却ガス導入部161の内部にはダンパ163が設けられている。
【0050】
排ガス処理装置100aは、窒素元素を含む排ガスG1の分解に好適に用いられ、特にアンモニアガスおよびアミン系ガスの少なくともいずれかのガスを含む排ガスG1の分解に好適に用いられる。
【0051】
なお、排ガス処理装置100aは、バーナ120の出口部に配置される、点火プラグ等などの点火部材(図示せず)などの他の部材をさらに備えていてもよい。
【0052】
また、上記においては、加熱容器110の内部に火炎を吹き出すノズル部120aを有するバーナ120は、排ガス導入部121と助燃ガス導入部122と分解用ガス導入部123とが一体化された構成としているが特にこれに限定されず、排ガス導入部121とバーナ120とは分離されていてもよい。上述したように、一体化されている場合には、排ガス導入部121は、ノズル部120aに連通されており、ノズル部120aを構成する排ガス導入部121、助燃ガス導入部122および分解用ガス導入部123の各々の開口している外周縁を合わせてノズル部120aの外周縁とする。
【0053】
続いて、本実施の形態における変形例を説明する。
図2は、実施の形態1の変形例1における排ガス処理装置を示す概略模式図である。図2に示すように、変形例1では、排ガス処理装置100aを構成するノズル部120aの先端120cが、側壁部120dよりも広がっている形状である点においてのみ異なる。
【0054】
図3は、実施の形態1の変形例2における排ガス処理装置を示す概略模式図である。図3に示すように、変形例2では、排ガス処理装置100aを構成するノズル部120aの先端120cが、側壁部120dよりも狭くなっている形状である点においてのみ異なる。
【0055】
変形例1および2における領域Rは、実施の形態1と同様に、ノズル部120aにおける火炎吹出口120bから火炎200を吹き出す方向(図2および3における矢印A)に延びた加熱容器110内の領域である。ノズル部120aの先端120cの形状により、助燃ガスG2および分解用ガスG3により発生する火炎の状態が変化することから、ノズル部120aの先端120cでの開口部が火炎吹出口120bである。測定部130はこの領域Rの内部に配置される。
【0056】
図4は、実施の形態1の変形例3における排ガス処理装置を示す概略模式図である。図4に示すように、変形例3では、加熱容器110とバーナ120とが分離しており、かつバーナ120の外周縁よりも加熱容器110の開口部110aの径が大きい点においてのみ異なる。変形例3における領域Rは、実施の形態1と同様に、ノズル部120aにおける火炎吹出口120bから火炎200を吹き出す方向(図4における矢印A)に延びた加熱容器110内の領域である。
【0057】
図5は、実施の形態1の変形例4における排ガス処理装置を示す概略模式図である。図5に示すように、変形例4では、加熱容器110とバーナ120とが分離しており、かつバーナ120の開口部よりも加熱容器110の開口部110aの径が小さい点においてのみ異なる。変形例4における領域Rは、火炎が発生し得る領域であって、実施の形態1と同様に、ノズル部120aにおける火炎吹出口120bから火炎200を吹き出す方向(図5における矢印A)に延びた加熱容器110内の領域である。領域Rは、火炎が発生し得る領域なので、加熱容器110の内部において温度が相対的に高くなる。
【0058】
続いて、本実施の形態およびその変形例における排ガス処理方法を説明する。本実施の形態およびその変形例における排ガス処理方法は、上述した排ガス処理装置100aを用いて、窒素元素を含む排ガスを分解することにより処理する方法である。
【0059】
まず、加熱容器110の内部に導入した排ガスG1をバーナ120により加熱することで、排ガスG1を分解する。本実施の形態およびその変形例では、排ガス導入部121、助燃ガス導入部122および分解用ガス導入部123を介して加熱容器110の内部に排ガスG1、助燃ガスG2および分解用ガスG3を導入する。
【0060】
具体的には、排ガスG1は、窒素元素を含むガスであれば特に限定されないが、アンモニアガスおよびアミン系ガスの少なくともいずれかを含むガスを用いることができる。アミン系ガスとは、たとえばトリメチルアミン、ジメチルアミン、モノメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、モノエチルアミンなどが挙げられる。特に、窒化物半導体を製造する際に用いられるアンモニアを含んでいることが好ましい。なお、排ガスG1は、水素ガス、メタンガスなどの窒素を含まない可燃ガス、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの無害なガスを含んでいてもよい。
【0061】
また助燃ガスG2は、分解用ガスG3を用いて排ガスG1を燃焼できるガスであれば特に限定されないが、たとえば、メタンガス、天然ガス、都市ガス、プロパンガス、水素、ブタンガスなどの少なくとも1種以上のガスを用いることができる。なお、助燃ガスG2は、燃焼を補助する空気を含んでいてもよい。
【0062】
また分解用ガスG3は、助燃ガスG2を燃焼させることができるガスであれば特に限定されないが、酸素を含んでいることが好ましく、たとえば空気などを用いることができる。
【0063】
助燃ガスG2および分解用ガスG3とにより生じた火炎により排ガスが燃焼することにより、排ガスは分解されて除害される。一方、分解用ガスG3および排ガスG1中の窒素と、分解用ガスG3中の酸素によって、窒素酸化物が発生する。
【0064】
次に、測定部130により領域R内の温度を測定する。次に、測定部130により測定された温度に応じて、温度制御装置141および空燃制御装置142によりバーナ120の加熱条件を制御する。
【0065】
具体的には、測定部130により測定された温度が所定の温度範囲よりも高い場合には、排ガスG1および分解用ガスG3から窒素酸化物への反応が促進される。このため、温度制御装置141から火炎の発生を抑制する(加える熱量を小さくする)ための信号を空燃制御装置142に送る。この信号を受信した空燃制御装置142は、測定された温度に応じて、助燃ガスG2および分解用ガスG3の少なくとも一方の流量を減らすように制御する。一方、測定部130により測定された温度が所定の温度範囲よりも低い場合には、排ガスG1の分解が促進されない。このため、温度制御装置141から火炎をより発生させる(加える熱量を大きくする)ための信号を空燃制御装置142に送る。この信号を受信した空燃制御装置142は、測定された温度に応じて、助燃ガスG2および分解用ガスG3の少なくとも一方の流量を増やすように制御する。
【0066】
上記所定の温度範囲とは、たとえば700℃以上1000℃以下であり、好ましくは800℃以上900℃以下である。加熱条件を制御することにより、領域Rの温度がたとえば700℃以上に制御する場合、排ガスG1を高効率で分解することができる。800℃以上に制御する場合、排ガスG1をより高効率で分解することができる。一方、1000℃以下に制御する場合、窒素酸化物の発生がより抑制される。900℃以下に制御する場合、排ガスG1をより高効率で分解することができる。
【0067】
以上より、本実施の形態および変形例における排ガス処理装置100aおよび排ガス処理方法は、ノズル部120aにおける火炎吹出口120bから火炎200を吹き出す方向(矢印A)に延びた加熱容器110内の領域R内に配置された測定部130により測定された領域R内の温度に基づいて、温度制御装置141および空燃制御装置142によりバーナ120の温度を制御している。
【0068】
本実施の形態および変形例における排ガス処理装置100aおよび排ガス処理方法によれば、バーナ120により加えられる熱量の多い領域Rに測定部130が配置されているので、加熱容器110において温度の高い領域Rの温度を測定することができる。雰囲気の温度が高い程、窒素酸化物の発生量が増加するので、測定部130で測定される領域Rは、窒素酸化物の発生に寄与している領域である。このため、窒素酸化物の発生に寄与しているこの領域Rの温度を、温度制御装置141および空燃制御装置142によって窒素酸化物へ反応しやすい温度未満の温度に制御することにより、窒素酸化物の発生量を正確に制御できる。したがって、排ガスG1の分解に伴い発生する窒素酸化物を低減できる。すなわち、本実施の形態の排ガス処理装置100aおよび排ガス処理方法によれば、排ガスG1の除害の効率化と、除害に伴い発生する窒素酸化物の発生の抑制との両方を実現できる。
【0069】
特に、測定部130は、バーナ120のノズル部120aにより生じる火炎200近傍を測定することが好ましい。ここで、火炎200近傍の温度とは、火炎200により加熱容器110において最も温度が高くなる領域の温度であり、火炎200自体の温度と、加熱条件により火炎200が発生し得る領域の温度と、火炎200からの熱を直接受ける雰囲気ガスの温度とを含む。火炎200近傍に測定部130を配置することによって、加熱容器110において温度の最も高くなる領域Rの温度を測定することができる。そのため、窒素酸化物の生成に最も寄与する領域Rの温度を測定部130により測定できるので、排ガスG1の分解に伴い発生する窒素酸化物を低減できる。
【0070】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2における排ガス処理装置を示す概略模式図である。図6を参照して、本実施の形態における排ガス処理装置100bは、基本的には実施の形態1における排ガス処理装置100aと同様の構成を備えているが、測定部は複数の測定素子130a〜130cを有している点において異なる。
【0071】
具体的には、領域Rの内部に3つの測定素子130a〜130cが配置されている。すなわち、加熱容器110の内部において温度が高くなることが想定される領域Rにおいて、異なる位置に設けられる。測定素子130a〜130cは火炎200付近の長手方向に複数設けられることが好ましい。
【0072】
なお、本実施の形態の測定部は、3つの測定素子130a〜130cを有しているが、測定素子の数は特に限定されない。測定部は、測定の精度向上および装置の簡略化の観点から、3〜5の測定素子を有していることが好ましい。
【0073】
この3つの測定素子130a〜130cにより測定された温度のうち最も高い温度を検出するための最大値検出回路部131が設けられている。最大値検出回路部131から検出された最も温度の高い温度を温度制御装置141が受信する。この温度制御装置141の信号に基づいて、加熱条件として助燃ガスG2および分解用ガスG3の流量を制御するための空燃制御装置142が設けられている。
【0074】
また、測定素子130a〜130cを複数有している場合には、温度制御装置141および空燃制御装置142は、測定素子130a〜130cにより測定される最も高い温度が700℃以上1000℃以下になるようにバーナ120の加熱条件を制御する。
【0075】
なお、これ以外の排ガス処理装置100bの構成は、実施の形態1における排ガス処理装置100aの構成と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0076】
本実施の形態における排ガス処理方法は、基本的には実施の形態1における排ガス処理方法と同様の構成を備えているが、温度を測定する工程では、領域R内の複数の位置の温度を測定し、加熱条件を制御する工程では、複数の位置の温度のうち最も高い温度に応じて加熱条件を制御している点において異なる。
【0077】
以上より、本実施の形態の排ガス処理装置100bおよび排ガス処理方法によれば、複数の測定素子130a〜130cにより測定された温度のうち、温度制御装置141および空燃制御装置142により最も高い温度に応じてバーナ120による加熱条件を制御する。
【0078】
これにより、加熱容器110内へ導入される排ガスG1、助燃ガスG2および分解用ガスG3の流量の変化、排ガスG1、助燃ガスG2および分解用ガスG3のガスの種類の変化などによって、火炎200の長さが変化する場合には、加熱容器110内の温度の高い領域は変化する。しかし、この場合であっても、複数の測定素子130a〜130cの最大温度を領域Rの温度とすることにより、排ガスG1から窒素酸化物への反応が促進される領域Rの温度を精度を向上して測定できる。このため、窒素酸化物の生成をより正確に制御できる。
【0079】
(実施の形態3)
図7は、本発明の実施の形態3における排ガス処理装置を示す概略模式図である。図7を参照して、本実施の形態における排ガス処理装置100cは、基本的には実施の形態1における排ガス処理装置100aと同様の構成を備えているが、酸素測定部181と酸素検出部182と、調整部183とをさらに備えている点において異なる。
【0080】
具体的には、加熱容器110の出口部に設けられ、この出口部の酸素濃度を測定するための酸素測定部181が設けられている。出口部は、加熱容器110の内部であって、排出部171に近い側である。酸素測定部181は、領域Rの内部であっても外部であってもよいが、排ガスG1の分解および窒素酸化物への反応が完了しており、かつ冷却ガスG4が混合されない領域の酸素濃度を測定できる位置に配置されていることが好ましい。
【0081】
酸素測定部181により測定された酸素濃度を調整部に送るために酸素検出部182が設けられている。酸素検出部182から送られた酸素濃度からバーナ120の加熱条件を制御するために調整部183が設けられている。
【0082】
この調整部183は、たとえば酸素測定部181から測定された酸素濃度から空気比を算出し、この空気比に基づいて分解用ガスの流量を制御する。ここで、空気比とは、酸素濃度を[O2]としたときに、{0.21/(0.21−[O2])}で表わされる値である。
【0083】
この空気比は1.0を超え、3.0以下であることが好ましい。3.0以下とすることによって、窒素酸化物への進行が抑制される。なお、下限値は、完全燃焼するときの理論値が1.0であることから1.0を越えた値である。
【0084】
調整部183は、たとえば、空気比が3.0を越えると、分解用ガスの流量を減らすように制御する。特に、酸素測定部181により測定された酸素濃度に応じて、分解用ガスG3の流量を制御し、測定部130により測定された温度に応じて、助燃ガスG2の流量を制御することが好ましい。
【0085】
なお、これ以外の排ガス処理装置100cの構成は、実施の形態1における排ガス処理装置100aの構成と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0086】
本実施の形態における排ガス処理方法は、基本的には実施の形態1における排ガス処理方法と同様の構成を備えているが、酸素濃度を測定する工程と、この酸素濃度に基づいて分解用ガスの流量を制御する工程とをさらに備えている点において異なる。
【0087】
具体的には、加熱容器110において排ガスG1を処理した後のガスを加熱容器110の外部に排出するための出口部の酸素濃度を酸素測定部181により測定する。酸素測定部181で測定された酸素濃度に応じて、分解用ガスG3の流量を調整部183により制御する。
【0088】
なお、本実施の形態の構成および製造方法は、実施の形態1だけでなく実施の形態2にも適用することができる。
【0089】
以上より、本実施の形態における排ガス処理装置100cによれば、加熱容器110において排ガスG1を処理した後のガスを加熱容器110の外部に排出するための出口部の酸素濃度を測定するための酸素測定部181を備えている。これにより、加熱容器110の出口部で残存している酸素の濃度に応じて分解用ガスG3の流量を制御することにより、加熱条件を制御できる。このため、火炎の温度を排ガスG1を分解し、かつ窒素酸化物の発生を抑制できる所定の温度範囲に保ちつつ、分解用ガスG3の流量を窒素酸化物の発生を抑制できる所定の流量に保つことができる。したがって、排ガスG1の分解に伴い発生する窒素酸化物をより正確に制御できるので、窒素酸化物を効果的に低減できる。
【0090】
(実施の形態4)
図8は、本発明の実施の形態4における排ガス処理装置を示す概略模式図である。図8に示すように、本実施の形態4における排ガス処理装置100dは、ヒータなどの加熱源により窒素を含む排ガスを分解させるための装置である。
【0091】
本実施の形態における排ガス処理装置100dは、基本的には実施の形態1における排ガス処理装置100aと同様の構成を備えているが、実施の形態1における排ガス処理装置100aにおけるバーナ120の代わりにヒータ190を備えている。
【0092】
具体的には、図8に示すように、本実施の形態における排ガス処理装置100dは、加熱容器110と、排ガス導入部121と、ヒータ190と、測定部130と、温度制御装置141と、熱量制御装置143と、冷却ガス導入部161と、排出部171とを主に備えている。
【0093】
加熱容器110は、筒状部を有している。筒状部は、軸Bを有している。この加熱容器110と接続され、加熱容器110の内部に窒素元素を構成元素として含む排ガスを導入するための排ガス導入部121が設けられている。
【0094】
ヒータ190は、加熱容器110の筒状部の外周側に配置され、かつ排ガスG1を分解するために加熱容器110の内部を加熱する。ヒータ190は、筒状部の外周側の少なくとも一部に配置されていれば特に限定されず、加熱容器110において筒状部以外の外周側に配置されていてもよい。ヒータ190は、加熱容器110の外周を覆っていることが好ましい。
【0095】
測定部130は、筒状部の軸方向(図8における軸Bに沿った方向)に沿ってヒータ190が位置する範囲(図8における点線で囲まれた範囲)よりも小さい範囲内に位置する筒状部内の領域Rに配置されている。この領域Rは、図8における点線を含んでいないことが好ましい。言い換えると、測定部130は、ヒータ190の軸方向の端部から筒状部の軸Bに互いに延ばした領域よりも小さい領域Rに配置されている。なお、ヒータ190が筒状部の外周を覆っているときは、筒状部の内部においてヒータ190に覆われた範囲(図8における点線で囲まれた範囲)よりも小さい範囲に位置する領域Rに、測定部130は配置されている。特に、測定部130は、筒状部の軸B近傍に配置されることが好ましい。この領域Rは、測定部130は、ヒータ190からの熱の影響を受けやすいので、加熱容器110の内部において相対的に温度が高い領域である。測定部130は、この領域R内の温度を測定する。
【0096】
熱量制御装置143は、温度制御装置141からの信号に基づいて、ヒータ190の加熱量および分解用ガスG3の流量の少なくとも一方を制御するために熱量制御装置143が設けられている。ヒータ190の加熱量の制御は、たとえばヒータが電気ヒータの場合には電気ヒータに加えられる電力量を制御する。
【0097】
なお、これ以外の排ガス処理装置100cの構成は、実施の形態1における排ガス処理装置100aの構成と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0098】
続いて、本実施の形態における変形例を説明する。
図9は、実施の形態4の変形例1における排ガス処理装置を示す概略模式図である。図9に示すように、変形例1では、排ガス処理装置100eを構成するヒータ190が筒状部の外周側の一部に配置されている点においてのみ異なる。
【0099】
図10は、実施の形態4の変形例2における排ガス処理装置を示す概略模式図である。図10に示すように、変形例2では、排ガス処理装置100fを構成するヒータ190の伸びる方向は、筒状部の軸Bから傾斜するように配置されている。
【0100】
変形例1および2における領域Rは、ヒータ190が配置された位置によらず、筒状部の軸方向(図9および10における軸Bに沿った方向)に沿ってヒータ190が位置する範囲(図9および10における点線で囲まれた範囲)よりも小さい範囲内に位置する筒状部内の領域Rである。
【0101】
図11は、実施の形態4の変形例3における排ガス処理装置を示す概略断面図である。図11に示すように、変形例3では、排ガス処理装置100gを構成する加熱容器110の形状が略半球形である点において異なる。加熱容器110は、筒状部を有しており、この筒状部の外周側にヒータ190が設けられている。変形例3における領域Rは、加熱容器110の形状によらず、加熱容器110の筒状部の軸方向(図11における軸Bに沿った方向)に沿ってヒータ190が位置する範囲(図11における点線で囲まれた範囲)内に位置する筒状部内の領域Rである。
【0102】
なお、本実施の形態およびその変形例では加熱源としてヒータ190を用いて説明したが、ヒータ以外の排ガスG1を分解することができる加熱源を適用してもよい。
【0103】
続いて、本実施の形態およびその変形例における排ガス処理方法を説明する。本実施の形態およびその変形例における排ガス処理方法は、上述した排ガス処理装置100e〜100gを用いて、窒素元素を含む排ガスを分解することにより処理する方法である。
【0104】
本実施の形態および変形例における排ガス処理方法は、実施の形態1と基本的には同様の構成を備えているが、加熱条件を制御する工程において異なる。
【0105】
具体的には、排ガスを分解する工程では、ヒータ190により排ガスG1を加熱することにより排ガスを分解する点において実施の形態1と異なる。また、領域Rの温度を測定する工程では、測定する領域Rが実施の形態1と異なる。また、加熱条件を制御する工程では、測定部130で測定された温度に応じて、温度制御装置141および熱量制御装置143によりヒータ190の加熱量および分解用ガスG3の流量を制御する点において実施の形態1と異なる。
【0106】
なお、本実施の形態の構成および製造方法は、実施の形態1だけでなく実施の形態2および3にも適用することができる。実施の形態3における出口部とは、ヒータ190により排ガスG1を加熱する場合には、加熱容器110内部であってヒータ190で決まる領域R外であることが好ましい。
【0107】
以上より、本実施の形態および変形例における排ガス処理装置100d〜100gは、加熱容器110の筒状部の軸方向(軸Bに沿った方向)に沿ってヒータ190が位置する範囲内に位置する筒状部内の領域Rに配置された測定部130により測定された、領域R内の温度に基づいて、温度制御装置141および熱量制御装置143によりヒータ190の温度および分解用ガスG3の流量の少なくとも一方を制御している。
【0108】
本実施の形態および変形例における排ガス処理装置100d〜100gによれば、ヒータ190により加えられる熱量の多い領域Rに測定部130が配置されているので、加熱容器110において温度の高い領域Rの温度を測定することができる。雰囲気の温度が高い程、窒素酸化物の発生量が増加するので、測定部130で測定される領域Rは、窒素酸化物の発生に寄与している領域である。このため、窒素酸化物の発生に寄与しているこの領域Rの温度を、温度制御装置141および熱量制御装置143によって窒素酸化物へ反応しやすい温度未満の温度に制御することにより、窒素酸化物の発生量を正確に制御できる。したがって、排ガスG1の分解に伴い発生する窒素酸化物を低減できる。すなわち、本実施の形態の排ガス処理装置100e〜100gおよび排ガス処理方法によれば、排ガスG1の除害の効率化と、除害に伴い発生する窒素酸化物の発生の抑制との両方を実現できる。
【0109】
[実施例1]
本実施例では、実施の形態1における排ガス処理装置100aを用いて、加熱容器内部の温度と発生する窒素酸化物との関係について調べた。具体的には、空気を燃焼させて、空気中の窒素ガスが酸化されてなる窒素酸化物の濃度と、そのときの加熱容器の領域Rの温度について測定した。
【0110】
始めに、排ガスG1を導入せずに、助燃ガスG2としての都市ガス(13A)と、分解用ガスG3としての空気とを、助燃ガス導入部122および分解用ガス導入部123を介して加熱容器110の内部に導入した。その後、助燃ガスG2と分解用ガスG3とにより火炎を発生させて、それぞれの流量を適宜変更して、加熱容器110の内部の温度を適宜変更した。
【0111】
(測定方法)
測定部130で測定される温度と、そのときの窒素酸化物の濃度を堀場製作所社製のPG−200型を用いて、常圧化学発光法により測定した。その結果を図12に示す。図12中、横軸は測定部で測定された温度(単位:℃)を示し、縦軸は窒素酸化物の濃度(単位:ppm)を示す。
【0112】
(測定結果)
図12に示すように、測定部で測定された温度が高くなる程、発生した窒素酸化物が増加したことがわかった。このことから、窒素酸化物の濃度を低減するためには、測定部130で測定される温度を所定の範囲内に制御することが窒素酸化物の低減に効果的であることが確認できた。
【0113】
[実施例2]
本実施例では、実施の形態3における排ガス処理装置100cを用いて、加熱容器内部の温度と発生する窒素酸化物との関係について調べた。具体的には、排ガスを燃焼により分解したときの、窒素酸化物への転換率と、そのときの加熱容器の領域Rの温度について測定した。
【0114】
始めに、排ガスG1として30m3/hの流量のアンモニアと、助燃ガスG2としての流量都市ガス(13A)と、分解用ガスとしての空気とを、排ガス導入部121、助燃ガス導入部122および分解用ガス導入部とを介して加熱容器110の内部に導入した。その後、助燃ガスG2と分解用ガスG3とにより火炎を発生させて、助燃ガスG2および分解用ガスG3の流量を適宜変更して、加熱容器110の内部の温度を適宜変更させた。なお、酸素濃度を[O2]としたときに、{0.21/(0.21−[O2])}で表わされる空気比を約4になるように助燃ガスG2および分解用ガスG3の流量を調整した。
【0115】
(測定方法)
測定部130で測定される温度と、そのときの窒素酸化物の濃度を実施例1と同様に測定した。その結果を図13に示す。図13中、横軸は測定部で測定された温度(単位:℃)を示し、縦軸は燃焼後のアンモニアから窒素酸化物への転換率(単位:%)を示す。
【0116】
(測定結果)
図13に示すように、測定部で測定された温度が高くなる程、排ガスG1中のアンモニアから窒素酸化物への転換率が高くなることがわかった。このことから排ガスを分解する際に発生する窒素酸化物を低減するためには、測定部130で測定される温度を所定の範囲内に制御することが窒素酸化物の低減に効果的であることが確認できた。
【0117】
[実施例3]
本実施例では、実施の形態3における排ガス処理装置100cを用いて、加熱容器に供給される空気比と、発生する窒素酸化物との関係について調べた。具体的には、排ガスを燃焼により分解したときの、窒素酸化物への転換率と、そのときの空気比について測定した。
【0118】
始めに、排ガスG1として30m3/hの流量のアンモニアと、助燃ガスG2としての流量都市ガス(13A)と、分解用ガスとしての空気とを、排ガス導入部121、助燃ガス導入部122および分解用ガス導入部とを介して加熱容器110の内部に導入した。その後、助燃ガスG2と分解用ガスG3とにより火炎を発生させて、助燃ガスG2および分解用ガスG3の流量を適宜変更して、酸素濃度を[O2]としたときに、{0.21/(0.21−[O2])}で表わされる空気比を適宜変更させた。なお、測定部130により測定される温度は約820℃で一定とした。
【0119】
また、排ガスG1として5m3/hの流量のアンモニアを用いて、同様に空気比を適宜変更させた。
【0120】
(測定方法)
酸素測定部181で測定される空気比と、そのときの窒素酸化物の濃度とを実施例1と同様に測定した。その結果を図14に示す。図14中、横軸は空気比(単位なし)を示し、縦軸は燃焼後のアンモニアから窒素酸化物への転換率(単位:%)を示す。
【0121】
(測定結果)
図14に示すように、空気比が高い程、排ガスG1中のアンモニアから窒素酸化物への転換率が高くなることがわかった。このことから、排ガスを分解する際に発生する窒素酸化物を低減するためには、酸素測定部181で測定される酸素濃度により算出される空気比を所定の範囲内に制御することが窒素酸化物の低減に効果的であることが確認できた。
【0122】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の実施の形態1における排ガス処理装置を示す概略模式図である。
【図2】本発明の実施の形態1の変形例1における排ガス処理装置を示す概略模式図である。
【図3】本発明の実施の形態1の変形例2における排ガス処理装置を示す概略模式図である。
【図4】本発明の実施の形態1の変形例3における排ガス処理装置を示す概略模式図である。
【図5】本発明の実施の形態1の変形例4における排ガス処理装置を示す概略模式図である。
【図6】本発明の実施の形態2における排ガス処理装置を示す概略模式図である。
【図7】本発明の実施の形態3における排ガス処理装置を示す概略模式図である。
【図8】本発明の実施の形態4における排ガス処理装置を示す概略模式図である。
【図9】本発明の実施の形態4の変形例1における排ガス処理装置を示す概略模式図である。
【図10】本発明の実施の形態4の変形例2における排ガス処理装置を示す概略模式図である。
【図11】本発明の実施の形態4の変形例3における排ガス処理装置を示す概略断面図である。
【図12】実施例1における加熱容器の領域Rの温度と、窒素酸化物の濃度との関係を示す図である。
【図13】実施例2における加熱容器の領域Rの温度と、燃焼後のアンモニアから窒素酸化物への転換率との関係を示す図である。
【図14】実施例3における空気比と、燃焼後のアンモニアから窒素酸化物への転換率との関係を示す図である。
【図15】特許文献1に開示の排ガス処理装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0124】
100a〜100g 排ガス処理装置、110 加熱容器、110a、121a 開口部、120 バーナ、120a ノズル部、120b 火炎吹出口、120c 先端、120d 側壁部、121 排ガス導入部、122 助燃ガス導入部、123 分解用ガス導入部、130 測定部、130a 測定素子、131 最大値検出回路部、141 温度制御装置、142 空燃制御装置、143 熱量制御装置、151 分解用ガス供給部、152 分解ガス用ファン、153 ダンパ、161 冷却ガス導入部、162 冷却ファン、163 ダンパ、171 排出部、181 酸素測定部、182 酸素検出部、183 調整部、190 ヒータ、200 火炎、G1 排ガス、G2 助燃ガス、G3 分解用ガス、G4 冷却ガス、G5 処理ガス、R 領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱容器と、
前記加熱容器の内部に窒素元素を構成元素として含む排ガスを導入するための排ガス導入部と、
前記加熱容器の内部に火炎を吹き出すノズル部を有し、前記加熱容器内に生じた前記火炎によって前記排ガス導入部により前記加熱容器内に導入された前記排ガスを分解するための加熱部と、
前記ノズル部における火炎吹出口から前記火炎を吹き出す方向に延びた前記加熱容器内の領域に配置された、前記領域内の温度を測定するための測定部と、
前記測定部の温度に応じて前記加熱部の加熱条件を制御するための制御部とを備えた、排ガス処理装置。
【請求項2】
前記加熱部は、前記加熱容器の内部に助燃ガスを導入するための助燃ガス導入部と、前記助燃ガスを燃焼させるための分解用ガスを前記加熱容器の内部に導入するための分解用ガス導入部とを含み、
前記制御部は、前記助燃ガスおよび前記分解用ガスの少なくとも一方の流量を制御する、請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記加熱容器は、前記排ガスを分解した後のガスを外部に排出するための出口部を有し、
前記加熱容器の前記出口部に設けられ、前記出口部の酸素濃度を測定するための酸素測定部をさらに備え、
前記制御部は、前記酸素測定部により測定された前記酸素濃度に応じて前記分解用ガスの流量を制御するための調整部を含む、請求項2に記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
筒状部を有する加熱容器と、
前記加熱容器の内部に窒素元素を構成元素として含む排ガスを導入するための排ガス導入部と、
前記加熱容器の前記筒状部の外周側に配置され、かつ前記排ガスを分解するために前記加熱容器の内部を加熱するための加熱部と、
前記筒状部の軸方向に沿って前記加熱部が位置する範囲よりも小さい範囲内に位置する前記筒状部内の領域に配置された、前記領域内の温度を測定するための測定部と、
前記測定部の温度に応じて前記加熱部の加熱条件を制御するための制御部とを備えた、排ガス処理装置。
【請求項5】
前記加熱容器は、前記排ガスを分解した後のガスを前記加熱容器の外部に排出するための出口部を有し、
前記加熱容器の前記出口部に設けられ、前記出口部の酸素濃度を測定するための酸素測定部と、
前記排ガスを分解させるための分解用ガスを導入するための分解用ガス導入部とをさらに備え、
前記制御部は、前記酸素測定部により測定された前記酸素濃度に応じて前記分解用ガスの流量を制御するための調整部を含む、請求項4に記載の排ガス処理装置。
【請求項6】
前記測定部は、複数の測定素子を有し、
前記制御部は、前記複数の測定素子により測定された温度のうち、最も高い温度に応じて前記加熱部による前記加熱条件を制御する、請求項1〜5のいずれかに記載の排ガス処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記測定部により測定される温度が700℃以上1000℃以下になるように前記加熱部の前記加熱条件を制御する、請求項1〜6のいずれかに記載の排ガス処置装置。
【請求項8】
前記排ガスは、アンモニアガスおよびアミン系ガスの少なくともいずれかのガスを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の排ガス処理装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の排ガス処理装置を用いて、窒素元素を含む排ガスを分解することにより処理する方法であって、
前記加熱容器の内部に導入した前記排ガスを前記加熱部により加熱することで、前記排ガスを分解する工程と、
前記測定部により前記領域内の温度を測定する工程と、
測定された温度に応じて、前記制御部により前記加熱部の加熱条件を制御する工程とを備えた、排ガス処理方法。
【請求項10】
前記温度を測定する工程では、前記領域内の複数の位置の温度を測定し、
前記加熱条件を制御する工程では、前記複数の位置の温度のうち最も高い温度に応じて前記加熱条件を制御する、請求項9に記載の排ガス処理方法。
【請求項11】
前記温度が700℃以上1000℃以下になるように制御される、請求項9または10に記載の排ガス処置方法。
【請求項12】
前記排ガスを分解する工程では、助燃ガスおよび分解用ガスを前記加熱容器の内部に導入して前記排ガスを燃焼させ、
前記加熱条件を制御する工程では、前記測定された温度に応じて、前記助燃ガスおよび前記分解用ガスの少なくとも一方の流量を制御する、請求項9〜11のいずれかに記載の排ガス処理方法。
【請求項13】
前記加熱容器において前記排ガスを処理した後のガスを前記加熱容器の外部に排出するための出口部の酸素濃度を測定する工程と、
前記酸素濃度に応じて、前記分解用ガスの流量を制御する工程とをさらに備えた、請求項12に記載の排ガス処理方法。
【請求項14】
前記排ガスとして、アンモニアガスおよびアミン系ガスの少なくともいずれかを含むガスを用いる、請求項9〜13のいずれかに記載の排ガス処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−109138(P2009−109138A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284139(P2007−284139)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000106597)サンレー冷熱株式会社 (8)
【Fターム(参考)】