説明

排ガス処理設備の流体拡散装置

【課題】排ガス中に含まれる濃度ムラを解消して効率良く反応させる排ガス処理設備の流体拡散装置を提供する。
【解決手段】火炉から排ガスを流す流路4に配置される排ガス処理設備の流体拡散装置1であって、流路4に流体を添加する添加手段10a,10bを設置すると共に、添加手段10a,10bの下流側で流路4の口径を狭くする絞り部11a,11bを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火炉からの排ガスを処理する排ガス処理設備の流体拡散装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に石炭焚きボイラの排ガス処理設備は、火炉から煙突へ排ガスを流す流路に、上流側から順に脱硝装置、集塵器、脱硫装置を設置している。
【0003】
脱硝装置は、所定の触媒を備えた構成であり、触媒で排ガス中のNOxを還元処理して除去するようにしている。又、集塵器は、電気集塵器やバグフィルタ等であり、排ガス中の煤や塵を除去するようにしている。更に脱硫装置は、炭酸カルシウムを含む反応液を噴霧する噴霧手段を備え、反応液の噴霧により排ガス中のSOxを硫酸カルシウムにして除去するようにしている。
【0004】
一方で、石炭焚きボイラで石炭を燃焼した際には、排ガス中に難燃性の金属水銀Hgが含まれる可能性があることから、排ガス中に塩化水素HClを添加して[式1]より難燃性の金属水銀Hgを2価水銀Hg2+に形態変換させ、湿式脱硫装置で溶解除去することが考えられている。
[式1]
Hg+2HCl+1/2O→HgCl+H
ここで2価水銀Hg2+はHgClで示されている。
【0005】
なお、本発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、下記の特許文献1等が既に存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−237244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら排ガスには流路断面で濃度ムラがあるため、難燃性の金属水銀Hgと塩化水素HClとを効率良く反応させることができないという問題があった。又、排ガス中には灰や煤が多量に含まれているため、複雑な処理や機器を用いた場合には灰や煤が付着して適切に処理できないという問題があった。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、排ガス中に含まれる濃度ムラを解消して効率良く反応させる排ガス処理設備の流体拡散装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の排ガス処理設備の流体拡散装置は、火炉から排ガスを流す流路に配置される排ガス処理設備の流体拡散装置であって、前記流路に流体を添加する添加手段を設置すると共に、該添加手段の下流側で流路の口径を狭くする絞り部を備えたものである。
【0010】
本発明の排ガス処理設備の流体拡散装置において、石炭焚きボイラの火炉から脱硝手段までの流路に添加手段及び絞り部を配置し、前記脱硝手段は、水銀酸化反応を生じる第一触媒を備えると共に、第一触媒の下流側で脱硝反応を生じる第二触媒を備えることが好ましい。
【0011】
又、本発明の排ガス処理設備の流体拡散装置において、第一触媒の上流側の流路に添加手段及び絞り部を配置し、前記添加手段は、排ガスにハロゲン化ガスを噴霧するように構成されることが好ましい。
【0012】
又、本発明の排ガス処理設備の流体拡散装置において、第一触媒と第二触媒との間の流路に添加手段及び絞り部を配置し、前記添加手段は、排ガスにアンモニアガスを噴霧するように構成されることが好ましい。
【0013】
更に、本発明の排ガス処理設備の流体拡散装置において、添加手段は、流路の下流側に向けて流体を噴霧する噴出管を備えると共に、絞り部は、口径を徐々に絞る斜面を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の排ガス処理設備の流体拡散装置によれば、添加手段により流体を流路に添加して排ガスと混合すると共に、流路の口径を狭くした絞り部により添加手段の下流側で排ガスの流速を上げて排ガスと添加の流体を撹拌するので、濃度ムラを無くして添加の流体と効率良く反応させることができる。又、排ガス中に灰や煤が多量に含まれる場合であっても、複雑な処理や機器を用いた場合と異なり、添加手段と絞り部の簡易な構成で処理し得るので、灰や煤の付着を抑制して排ガスを適切に処理することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の排ガス処理設備を示す全体概要構成図である。
【図2】本発明の排ガス処理設備の流体拡散装置を示す概要構成図である。
【図3】本発明の排ガス処理設備の流体拡散装置における第一例の添加手段を示す平面図である。
【図4】第一例の添加手段の構成を示す概念図である。
【図5】本発明の排ガス処理設備の流体拡散装置における第二例の添加手段を示す平面図である。
【図6】本発明の排ガス処理設備の流体拡散装置における第三例の添加手段を示す平面図である。
【図7】第三例の添加手段の作用を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態例を図1〜図7を参照して説明する。
【0017】
実施の形態例である排ガス処理設備の流体拡散装置1は、石炭焚きボイラの火炉2から煙突3までの流路4に位置し、且つ火炉2から脱硝装置(脱硝手段)5までの煙道や配管等に設置されている。
【0018】
又、火炉2から煙突3までの排ガスの流路4には、排ガス処理設備として上流側から順に脱硝装置5、集塵器6、脱硫装置7が設置されており、脱硝装置5は、水銀酸化反応を生じる第一触媒8を備えると共に、第一触媒8の下流側に脱硝反応を生じる第二触媒9を備えている。ここで第一触媒8及び第二触媒9は、担体がTiO、Al、ZrO、SiO等から選択され、担体にはV、Cu、W等の単体、酸化物、化合物から選択した活性成分が担持されている。
【0019】
流体拡散装置1は、火炉2と第一触媒8の間に第一の添加手段10aを設置すると共に、第一の添加手段10aの下流側に位置するように第一の添加手段10aと第一触媒8との間に第一の絞り部11aを備えている。又、流体拡散装置1は、第一触媒8と第二触媒9の間に第二の添加手段10bを設置すると共に、第二の添加手段10bの下流側に位置するように第二の添加手段10bと第2触媒との間に第二の絞り部11bを備えている。
【0020】
第一の添加手段10a及び第二の添加手段10bは、煙道や配管等の流路4に一本又は複数本の噴出管12を配置し、噴出管12には、供給管13を介してポンプ等の圧送手段14及びタンク等の貯留手段15が接続されている。又、噴出管12には、下流側に向かう噴射孔16が形成されている。
【0021】
ここで第一の添加手段10aは、水銀酸化反応を生じる第一触媒8に対応してHCl等のハロゲン化ガスを噴射するようになっており、第二の添加手段10bは、脱硝反応を生じる第二触媒9に対応してNH等のアンモニアガスを噴射するようになっている。又、第一の添加手段10a及び第二の添加手段10bは、噴射時に高温の排ガスで溶液がガス化することから貯留手段15等から液体のハロゲン化溶液又はアンモニア溶液を添加しても良い。更に第一の添加手段10aは、HCl以外のF、Br等の他のハロゲン化ガスを用いても良い。
【0022】
又、第一の添加手段10a及び第二の添加手段10bを構成する噴出管12は種々の構成があり、第一例から第三例の構成を示すと、第一例の構成は、図3、図4に示す如く二本の噴出管12を流路4の断面で互いに直交するように互い違いに配置すると共に、供給管13を二本の噴出管12の手前で分岐させて二本の噴出管12に接続している。第二例の構成は、図5に示す如く複数の噴出管12を、流路4の断面で一方向で並列に並べると共に、他の複数の噴出管12を、一方向の噴出管12と直交する方向で並列に並べ且つ一方向の噴出管12と互い違いになるように配置している。又、第二例の構成は、供給管13を、一方向の噴出管12の外方端、及び他方向の噴出管12の外方端に接続している。第三例の構成は、図6、図7に示す如く一本の噴出管12を流路4の断面で一方向(径方向)に配置していると共に、噴出管12の噴射孔16を、噴出管12の延在方向に沿って複数列(図6では二列)に形成し、更にハロゲン化ガス又は/及びアンモニアガスを斜め下流の両側へ噴射するように構成している。又、第三例は、一列の噴射孔16の配置を他列の噴射孔16の配置と異なる間隔にし、噴射孔16の位置が交互になるようにすることが好ましい。
【0023】
一方、第一の絞り部11a及び第二の絞り部11bは、上流側から順に流路4の径を徐々に狭くする縮径部17、流路4の狭い径を維持する筒状部18、流路4の径を徐々に元に戻す拡径部19からなる形状を備えている。
【0024】
ここで第一の絞り部11aは、溝等の不要な凹凸を設けることなく、内周面を滑面にすると共に、縮径部17及び拡径部19に斜面を備え、ハロゲン化ガス及び排ガス中の灰や煤の付着を抑制するようにしている。又、第一の絞り部11aの内径は、排ガス中の灰や煤により閉塞することがなく且つハロゲン化ガスと排ガスの撹拌を十分に為し得る径で設定されている。
【0025】
第二の絞り部11bは、溝等の不要な凹凸を設けることなく、内周面を滑面にすると共に、縮径部17及び拡径部19に斜面を備え、アンモニアガス及び排ガス中の煤や灰の付着を抑制するようにしている。又、第二の絞り部11bの内径は、排ガス中の煤や灰により閉塞することがなく且つアンモニアガスと排ガスの撹拌を十分に為し得る径で設定されている。
【0026】
以下本発明を実施する形態例の作用を説明する。
【0027】
石炭焚きボイラの火炉2からの排ガスを排ガス処理設備で処理する際には、最初に第一の添加手段10aの噴出管12から流路4にハロゲン化ガスを噴霧して排ガスと混合し、第一の絞り部11aで排ガスの流速を上げ、排ガスとハロゲン化ガスを撹拌して濃度ムラを無くし、第一触媒8下での難燃性の水銀Hgとハロゲン化ガスとの反応により難燃性の水銀Hgを2価水銀Hg2+に形態変換させる。
【0028】
次に、第二の添加手段10bの噴出管12から流路4にアンモニアガスを噴霧して排ガスと混合し、第二の絞り部11bによって排ガスの流速を上げ、排ガスとアンモニアガスを撹拌して濃度ムラを無くし、第二触媒9下でのNOとアンモニアガスとの反応により脱硝を行う。ここでアンモニアガスを第一触媒8の上流側で添加した場合には、アンモニアが第一触媒8での触媒反応を阻害することから、第一触媒8と第二触媒9との間でアンモニアガスを添加することが好ましい。
【0029】
その後、排ガス処理設備の集塵器6で灰や煤を取り除き、脱硫装置7で脱硫して煙突3から排ガスを外気へ放出する。
【0030】
而して、このように実施の形態例によれば、第一の添加手段10a及び第二の添加手段10bによりハロゲン化ガスやアンモニアガス等の流体を流路4に添加して排ガスと混合すると共に、流路4の口径を狭くした第一の絞り部11a及び第二の絞り部11bにより添加手段の下流側で排ガスの流速を上げて排ガスと添加の流体を撹拌するので、濃度ムラを無くして添加の流体と効率良く反応させることができる。又、排ガス中に灰や煤が多量に含まれる場合であっても、複雑な処理や機器を用いた場合と異なり、添加手段と絞り部の簡易な構成で処理し得るので、灰や煤の付着を抑制して排ガスを適切に処理することができる。
【0031】
実施の形態例において、石炭焚きボイラの火炉2から脱硝装置(脱硝手段)5までの流路4に第一の添加手段10a、第一の絞り部11a、第二の添加手段10b、第二の絞り部11bを配置し、又、第一の添加手段10aは流体としてハロゲン化ガスを噴霧するように構成され、第二の添加手段10bは、流体としてアンモニアガスを噴霧するように構成され、更に脱硝装置(脱硝手段)5は、水銀酸化反応を生じる第一触媒8を備えると共に、第一触媒8の下流側で脱硝反応を生じる第二触媒9を備えるので、第一の絞り部11aにより排ガスの流速を上げて排ガスとハロゲン化ガスとを好適に撹拌し、且つ第二の絞り部11bにより排ガスの流速を上げて排ガスとアンモニアガスとを好適に撹拌する。よって濃度ムラを無くして排ガス中に含まれる難燃性の金属水銀Hgを形態変換して効率良く処理できると共に、排ガスの脱硝を適切に行うことができる。
【0032】
実施の形態例において、第一の添加手段10aは、流路4の下流側に向けてハロゲン化ガスを噴霧する噴出管12を備えると共に、第一の絞り部11aは、灰の付着を防止するように口径を徐々に絞る斜面を備えると、排ガスとハロゲン化ガスを好適に撹拌するので、濃度ムラを無くして排ガス中に含まれる難燃性の金属水銀Hgを形態変換して効率良く処理できる。又、第二の添加手段10bは、流路4の下流側に向けてアンモニアガスを噴霧する噴出管12を備えると共に、第二の絞り部11bは、灰の付着を防止するように口径を徐々に絞る斜面を備えると、排ガスとアンモニアガスを好適に撹拌するので、濃度ムラを無くして排ガスの脱硝を最適に行うことができる。更に第一の添加手段10a及び第二の添加手段10bが図3、図4に示す第一例の構成で形成されると、単純な形状で排ガス中の灰や煤の付着を防止することができると共に、ハロゲン化ガス等の流体を二方向から均質に噴霧し、排ガスと適切に混合することができる。更に第一の添加手段10a及び第二の添加手段10bが図5に示す第二例の構成で形成されると、流路4の断面に対してハロゲン化ガス等の流体を極めて均質に噴霧し、排ガスと好適に混合することができる。更に第一の添加手段10a及び第二の添加手段10bが図6、図7に示す第三例の構成で形成されると、極めて単純な形状で排ガス中の灰や煤の付着を好適に防止することができると共に、ハロゲン化ガス等の流体を均質に噴霧し、排ガスと適切に混合することができる。
【0033】
尚、本発明の排ガス処理設備の流体拡散装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、流体拡散装置を他の箇所に配置して他の流体の攪拌に用いても良いこと、第一の添加手段及び第一の絞り部のみを配置しても良いこと、第二の添加手段及び第二の絞り部のみを配置しても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
1 流体拡散装置
2 火炉
4 流路
5 脱硝装置(脱硝手段)
8 第一触媒
9 第二触媒
10a 第一の添加手段
10b 第二の添加手段
11a 第一の絞り部
11b 第二の絞り部
12 噴出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炉から排ガスを流す流路に配置される排ガス処理設備の流体拡散装置であって、前記流路に流体を添加する添加手段を設置すると共に、添加手段の下流側で流路の口径を狭くする絞り部を備えたことを特徴とする排ガス処理設備の流体拡散装置。
【請求項2】
石炭焚きボイラの火炉から脱硝手段までの流路に添加手段及び絞り部を配置し、前記脱硝手段は、水銀酸化反応を生じる第一触媒を備えると共に、第一触媒の下流側で脱硝反応を生じる第二触媒を備えたことを特徴とする請求項1に記載の排ガス処理設備の流体拡散装置。
【請求項3】
第一触媒の上流側の流路に添加手段及び絞り部を配置し、前記添加手段は、排ガスにハロゲン化ガスを噴霧するように構成されたことを特徴とする請求項2に記載の排ガス処理設備の流体拡散装置。
【請求項4】
第一触媒と第二触媒との間の流路に添加手段及び絞り部を配置し、前記添加手段は、排ガスにアンモニアガスを噴霧するように構成されたことを特徴とする請求項2に記載の排ガス処理設備の流体拡散装置。
【請求項5】
添加手段は、流路の下流側に向けて流体を噴霧する噴出管を備えると共に、絞り部は、口径を徐々に絞る斜面を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の排ガス処理設備の流体拡散装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−11159(P2011−11159A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158404(P2009−158404)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】