説明

排ガス浄化用触媒

【課題】内燃機関の排ガスに含まれるHC、CO、H及びNOに対し、優れた浄化性能を備える触媒を提供する。
【解決手段】内燃機関の排ガスを浄化する触媒は、YとMnとを含むと共に六方晶を含む複合金属酸化物に白金族金属を担持してなる。前記複合金属酸化物は、より好ましくは斜方晶と六方晶との混晶を含む。前記複合金属酸化物は、式YMnO又は一般式YMn1−xTi(式中、0.01≦x≦0.50)で表される。前記白金族金属はPt、Pd、Rhからなる群から選択される金属であって、前記複合金属酸化物に対して0.1〜1.0質量%の範囲の量で担持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排ガスに含まれるHC、CO、Hを酸化する一方、NOを還元して浄化する触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の排ガスに含まれるHC、CO、Hを酸化する一方、NOを還元して浄化する触媒として、Aサイト欠損型ペロブスカイト複合金属酸化物に貴金属として少なくともPdが担持された触媒が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
前記従来の触媒において、前記複合金属酸化物は、具体的には、一般式(A’1−xA”1−α(Co1−yB”3−δで表され、式中、0.1<α<0.15、0≦δ≦1、0≦x≦1、0<y≦1である。また、A’はLa、Nd、Gd及びYからなる群から選択された少なくとも1種の金属であり、A”はCe、Pr、Ba、Sr、Ca及びKからなる群から選択された少なくとも1種の金属であり、B”はMn、Fe、Ni及びAlからなる群から選択された少なくとも1種の金属である。また、前記複合金属酸化物において、B”はFeまたはTiであってもよい。
【0004】
特許文献1によれば、前記従来の触媒は、前記複合金属酸化物を用いることにより、酸化還元の触媒作用に重要な役割を果たす酸素の放出吸収特性に優れているとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−175337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の触媒は、内燃機関の排ガスに含まれるHC、CO、H及びNOに対し、十分な浄化性能が得られないという不都合がある。
【0007】
本発明は、かかる不都合を解消して、内燃機関の排ガスに含まれるHC、CO、H及びNOに対し、優れた浄化性能を備える触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、内燃機関の排ガスを浄化する触媒において、YとMnとを含むと共に六方晶を含む複合金属酸化物に白金族金属を担持してなることを特徴とする。前記複合金属酸化物は、より好ましくは斜方晶と六方晶との混晶を含み、例えば、式YMnOで表され、斜方晶であるペロブスカイト型複合金属酸化物の一部が六方晶となっている化合物である。
【0009】
本発明の触媒は、前記複合金属酸化物に白金族金属を担持することにより、内燃機関の排ガスに含まれるHC、CO、Hを酸化し、NOを還元する反応をより低い温度で行うことができ、該排ガスに対して優れた浄化性能を得ることができる。
【0010】
本発明の触媒において、前記複合金属酸化物は、一般式YMn1−xTi(式中、0.01≦x≦0.50)で表されることが好ましい。前記一般式で表される複合金属酸化物を備える本発明の触媒によれば、特にNOに対して優れた浄化性能を得ることができる。
【0011】
また、本発明の触媒において、前記白金族金属はPt、Pd、Rhからなる群から選択される金属を用いることができる。前記白金族金属は、前記複合金属酸化物に対して0.1〜1.0質量%の範囲の量で担持されることが好ましい。前記白金族金属の担持量は、前記複合金属酸化物に対して0.1質量%未満の量では、前記排ガスに対して十分な浄化性能を得ることができないことがある。また、前記白金族金属の担持量は、前記複合金属酸化物に対して1.0質量%を超えても、前記排ガスに対してそれ以上の浄化性能を得ることができない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の触媒に用いる複合金属酸化物の一例に対するX線回折結果を示すグラフ。
【図2】Pt担持YMnO触媒のPt担持量と、出口側の各ガス成分における浄化率50%のときの温度との関係を示すグラフ。
【図3】Pt担持LaMnO触媒のPt担持量と、出口側の各ガス成分における浄化率50%のときの温度との関係を示すグラフ。
【図4】Pd担持YMnO触媒のPd担持量と、出口側の各ガス成分における浄化率50%のときの温度との関係を示すグラフ。
【図5】Pd担持LaMnO触媒のPd担持量と、出口側の各ガス成分における浄化率50%のときの温度との関係を示すグラフ。
【図6】Rh担持YMnO触媒のRh担持量と、出口側の各ガス成分における浄化率50%のときの温度との関係を示すグラフ。
【図7】Rh担持LaMnO触媒のRh担持量と、出口側の各ガス成分における浄化率50%のときの温度との関係を示すグラフ。
【図8】本発明の触媒に用いる複合金属酸化物の他の例に対するX線回折結果を示すグラフ。
【図9】Pd担持YMn0.95Ti0.05触媒のPd担持量と、出口側の各ガス成分における浄化率50%のときの温度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0014】
本実施形態の触媒は、内燃機関の排ガス中のHC、CO、H、NO等の含有物を浄化する触媒であって、YとMnとを含むと共に六方晶を含む複合金属酸化物に白金族金属を担持してなる。前記複合金属酸化物は、より好ましくは斜方晶と六方晶との混晶を含み、例えば、式YMnOで表され、斜方晶であるペロブスカイト型複合金属酸化物の一部が六方晶となっている化合物である。
【0015】
また、前記白金族金属はPt、Pd、Rhからなる群から選択される金属を用いることができるが、安価であり、優れた浄化性能を得ることができることから、特にPdが好ましい。前記白金族金属は、前記複合金属酸化物に対して0.1〜1.0質量%の範囲の量で担持されることにより、内燃機関の排ガス中の含有物に対して優れた浄化性能を得ることができる。
【0016】
本実施形態の触媒は、前記構成を備えることにより、内燃機関の排ガスに含まれるHC、CO、Hを酸化し、NOを還元する反応をより低い温度で行うことができ、該排ガスに対して優れた浄化性能を得ることができる。
【0017】
また、本実施形態の触媒は、前記複合金属酸化物として、一般式YMn1−xTi(式中、0.01≦x≦0.50)で表され、斜方晶であるペロブスカイト型複合金属酸化物の一部が六方晶となっている化合物を用いることが好ましい。前記一般式で表される複合金属酸化物を備える本実施形態の触媒によれば、特にNOに対して優れた浄化性能を得ることができる。
【0018】
本実施形態において、式YMnOで表される前記複合金属酸化物は、例えば、イットリウム塩及びマンガン塩を等モル比で含む化合物を、さらに所定量の有機酸及び水と混合し、粉砕した後、焼成することにより製造することができる。前記イットリウム塩としては例えば硝酸イットリウムを用いることができ、前記マンガン塩としては例えば硝酸マンガンを用いることができる。また、前記有機酸としては、例えばリンゴ酸を用いることができる。
【0019】
また、本実施形態において、一般式YMn1−xTi(式中、0.01≦x≦0.50)で表される前記複合金属酸化物は、イットリウム塩1モルに対し、マンガン塩(1−x)モル、チタン塩xモルを含む化合物を、さらに所定量の有機酸及び水と混合し、粉砕した後、焼成することにより製造することができる。前記イットリウム塩としては例えば硝酸イットリウムを用いることができ、前記マンガン塩としては例えば硝酸マンガンを用いることができ、前記チタン塩としては例えばアナターゼ型酸化チタンを用いることができる。また、前記有機酸としては、例えばリンゴ酸を用いることができる。
【0020】
前記焼成は、例えば、350〜500℃の範囲の温度に1〜10時間の範囲の時間保持する一次焼成の後、該一次焼成で得られた焼成物を乾式粉砕し、さらに、650〜1000℃の範囲の温度に1〜10時間の範囲の時間保持する二次焼成により行うことができる。
【0021】
また、前記複合金属酸化物に前記白金族金属を担持させるには、例えば、該複合金属酸化物1000重量部に、白金族金属塩溶液を白金族金属換算で、1〜10重量部となるように混合し、熱処理することにより製造することができる。前記熱処理は、まず、前記複合金属酸化物と前記白金族金属塩溶液との混合液を、例えば120〜150℃の範囲の温度で蒸発乾固する。次に、前記蒸発乾固により得られた結果物を、大気中で500〜700℃の範囲の温度に1〜5時間の範囲の時間保持する。
【0022】
前記白金族金属塩溶液としては、例えば、塩化白金水溶液、硝酸パラジウム(II)水溶液、硝酸ロジウム(III)水溶液等を用いることができる。
【0023】
次に、本発明の実施例及び比較例を示す。
【実施例1】
【0024】
本実施例では、まず、硝酸イットリウム、硝酸マンガン、リンゴ酸及び水を、1:1:3:40のモル比で混合し、50℃の温度下、乳鉢で15分間混合した。次に、得られた混合物を大気中350℃の温度に1時間保持して一次焼成を行った。次に、前記一次焼成で得られた焼成物を15分間乾式粉砕した後、大気中900℃の温度に3時間保持して二次焼成を行い、YMnOの化学式で表される複合金属酸化物の粉末を得た。
【0025】
本実施例で得られた前記複合金属酸化物に対するX線回折の結果を図1に示す。図1において、「▼」は斜方晶であるペロブスカイト型複合金属酸化物のピークを示し、「●」は六方晶のピークを示す。図1から、本実施例で得られた前記複合金属酸化物は、斜方晶であるペロブスカイト型複合金属酸化物と六方晶との混晶を含むことが明らかである。
【0026】
次に、本実施例で得られた複合金属酸化物の粉末(YMnO)1000重量部と、塩化白金水溶液をPt換算で、それぞれ、1,5,10,20重量部となるようにビーカーに取り、混合した。次に、前記複合金属酸化物の粉末と塩化白金水溶液との混合物が入ったビーカーを、150℃のホットプレート上に載置し、スターラーで攪拌しながら蒸発乾固した。次に、前記蒸発乾固で得られた結果物を、700℃の大気中に2時間保持して熱処理し、Ptをそれぞれ、0.1質量%、0.5質量%、1.0質量%、2.0質量%担持してなるPt担持YMnO触媒を得た。
【0027】
次に、石英ガラスウール(株式会社大興製作所製)6mgを内径4mmの石英管に長さ60mmになるように充填したものを5本用意した。次に、前記4種のPt担持YMnO触媒と、Ptを担持していないYMnO触媒とを75mgずつエタノールに分散させたエタノール分散液を調製し、それぞれ前記石英管内の前記石英ガラスウールに浸潤させ、100℃の温度に1時間保持した。この結果、それぞれPtの担持量の異なる4種のPt担持YMnO触媒75mgが前記石英ガラスウールに分散されている4本の石英管と、Ptが全く担持されていないYMnO触媒が該石英ガラスウールに分散されている1本の石英管が得られた。
【0028】
次に、各石英管の両端部に前記Pt担持YMnO触媒が分散されていない石英ガラスウールを、ガスの流通の障害とならない程度に充填し、該Pt担持YMnO触媒が分散されている石英ガラスウールを各石英管内に固定した。
【0029】
次に、前記石英管を管状炉にセットし、該石英管にガス浄化試験用合成ガス(以下、合成ガスと略記する)を流通しながら、該石英管を昇温し、昇温に伴う出口側のCO、C、NOxのガス濃度をFTIRガス分析計で測定することにより触媒性能を評価した。前記合成ガスは、質量基準でNO500ppm、H1700ppm、C400ppm、O5000ppm、CO14%、HO6%を含み、残部がNである。本実施例では、各石英管毎に、前記合成ガスを754ml/分(空間速度100000/時間)で流通しつつ、20℃/分の昇温速度で100℃から600℃まで昇温した。
【0030】
そして、前記触媒の浄化性能として、出口側のCO、C、NOxのガス濃度が初期濃度の50%となったとき(浄化率50%)の温度を求めた。一般に、触媒の浄化性能は、浄化率50%のときの温度が低いほど優れている。
【0031】
尚、前記触媒性能の評価は、Ptの担持量の異なる4種のPt担持触媒75mgが前記石英ガラスウールに分散されている4本の石英管と、Ptが全く担持されていないYMnO触媒が該石英ガラスウールに分散されている1本の石英管のそれぞれについて行った。
【0032】
次に、本実施例のPt担持YMnO触媒のPt担持量と、出口側の各ガス成分における浄化率50%のときの温度との関係を表1及び図2に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
表1及び図2から、本実施例のPt担持YMnO触媒によれば、Ptを全く担持しない場合(Pt担持量=0)に比較して、前記合成ガス中のCO、C、NOに対する浄化率が50%のときの温度が低く、優れた浄化性能を備えていることが明らかである。また、本実施例のPt担持YMnO触媒は、Pt担持量が0.1質量%未満では十分な浄化性能が得られず、1.0質量%を超えてもそれ以上の効果は得られない。
〔比較例1〕
本比較例では、硝酸イットリウムに代えて硝酸ランタン六水和物を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、LaMnOの化学式で表される複合金属酸化物の粉末を得た。
【0035】
次に、YMnO粉末に代えて本比較例で得られた複合金属酸化物の粉末(LaMnO)を用いた以外は実施例1と全く同一にして、Ptをそれぞれ、0.1質量%、0.5質量%、1.0質量%、2.0質量%担持してなるPt担持LaMnO触媒を得た。
【0036】
次に、実施例1で得られたPt担持YMnO触媒に代えて本比較例で得られたPt担持LaMnO触媒を用いた以外は実施例1と全く同一にして、本比較例で得られたPt担持LaMnO触媒の触媒性能を評価した。
【0037】
次に、本比較例のPt担持LaMnO触媒のPt担持量と、出口側の各ガス成分における浄化率50%のときの温度との関係を表2及び図3に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
表1,2及び図2,3から、実施例1のPt担持YMnO触媒によれば、比較例1のPt担持LaMnO触媒に比較して、前記合成ガス中のCO、C、NOに対する浄化率が50%のときの温度が低く、優れた浄化性能を備えていることが明らかである。
【実施例2】
【0040】
本実施例では、塩化白金水溶液に代えて硝酸パラジウム(II)水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、Pdをそれぞれ、0.1質量%、0.5質量%、1.0質量%、2.0質量%担持してなるPd担持YMnO触媒を得た。
【0041】
次に、実施例1で得られたPt担持YMnO触媒に代えて本実施例で得られたPd担持YMnO触媒を用いた以外は実施例1と全く同一にして、本実施例で得られたPd担持YMnO触媒の触媒性能を評価した。
【0042】
次に、本実施例のPd担持YMnO触媒のPd担持量と、出口側の各ガス成分における浄化率50%のときの温度との関係を表3及び図4に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
表3及び図4から、本実施例のPd担持YMnO触媒によれば、Pdを全く担持しない場合(Pd担持量=0)に比較して、前記合成ガス中のCO、C、NOに対する浄化率が50%のときの温度が低く、優れた浄化性能を備えていることが明らかである。また、本実施例のPd担持YMnO触媒は、Pd担持量が0.1質量%未満では十分な浄化性能が得られず、1.0質量%を超えてもそれ以上の効果は得られない。
〔比較例2〕
本比較例では、塩化白金水溶液に代えて硝酸パラジウム(II)水溶液を用いた以外は、比較例1と同様にして、Pdをそれぞれ、0.1質量%、0.5質量%、1.0質量%、2.0質量%担持してなるPd担持LaMnO触媒を得た。
【0045】
次に、実施例1で得られたPt担持YMnO触媒に代えて本比較例で得られたPd担持LaMnO触媒を用いた以外は実施例1と全く同一にして、本比較例で得られたPd担持LaMnO触媒の触媒性能を評価した。
【0046】
次に、本比較例のPd担持LaMnO触媒のPd担持量と、出口側の各ガス成分における浄化率50%のときの温度との関係を表4及び図5に示す。
【0047】
【表4】

【0048】
表3,4及び図4,5から、実施例2のPd担持YMnO触媒によれば、比較例2のPd担持LaMnO触媒に比較して、前記合成ガス中のCO、C、NOに対する浄化率が50%のときの温度が低く、優れた浄化性能を備えていることが明らかである。
【実施例3】
【0049】
本実施例では、塩化白金水溶液に代えて硝酸ロジウム(III)水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、Rhをそれぞれ、0.1質量%、0.5質量%、1.0質量%、2.0質量%担持してなるRh担持YMnO触媒を得た。
【0050】
次に、実施例1で得られたPt担持YMnO触媒に代えて本実施例で得られたRh担持YMnO触媒を用いた以外は実施例1と全く同一にして、本実施例で得られたRh担持YMnO触媒の触媒性能を評価した。
【0051】
次に、本実施例のRh担持YMnO触媒のRh担持量と、出口側の各ガス成分における浄化率50%のときの温度との関係を表5及び図6に示す。
【0052】
【表5】

【0053】
表5及び図6から、本実施例のRh担持YMnO触媒によれば、Rhを全く担持しない場合(Rh担持量=0)に比較して、前記合成ガス中のCO、C、NOに対する浄化率が50%のときの温度が低く、優れた浄化性能を備えていることが明らかである。また、本実施例のRh担持YMnO触媒は、Rh担持量が0.1質量%未満では十分な浄化性能が得られず、1.0質量%を超えてもそれ以上の効果は得られない。
〔比較例3〕
本比較例では、塩化白金水溶液に代えて硝酸ロジウム(III)水溶液を用いた以外は、比較例1と同様にして、Rhをそれぞれ、0.1質量%、0.5質量%、1.0質量%、2.0質量%担持してなるRh担持LaMnO触媒を得た。
【0054】
次に、実施例1で得られたPt担持YMnO触媒に代えて本比較例で得られたRh担持LaMnO触媒を用いた以外は実施例1と全く同一にして、本比較例で得られたRh担持LaMnO触媒の触媒性能を評価した。
【0055】
次に、本比較例のRh担持LaMnO触媒のRh担持量と、出口側の各ガス成分における浄化率50%のときの温度との関係を表6及び図7に示す。
【0056】
【表6】

【0057】
表5,6及び図6,7から、実施例3のRh担持YMnO触媒によれば、比較例3のRh担持LaMnO触媒に比較して、前記合成ガス中のCO、C、NOに対する浄化率が50%のときの温度が低く、優れた浄化性能を備えていることが明らかである。
【実施例4】
【0058】
本実施例では、硝酸イットリウム、硝酸マンガン、リンゴ酸及び水を、1:1:3:40のモル比で混合した混合物に代えて、硝酸イットリウム、硝酸マンガン、アナターゼ型酸化チタン、リンゴ酸及び水を、1:0.95:0.05:3:40のモル比で混合した混合物を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、YMn0.95Ti0.05の化学式で表される複合金属酸化物の粉末を得た。
【0059】
本実施例で得られた前記複合金属酸化物に対するX線回折の結果を図8に示す。図8において、「▼」は斜方晶であるペロブスカイト型複合金属酸化物のピークを示し、「●」は六方晶のピークを示す。図8から、本実施例で得られた前記複合金属酸化物は、斜方晶であるペロブスカイト型複合金属酸化物と六方晶との混晶を含むことが明らかである。
【0060】
次に、実施例1で得られたYMnO粉末に代えて本実施例で得られた複合金属酸化物の粉末(YMn0.95Ti0.05)を用いると共に、塩化白金水溶液に代えて硝酸パラジウム(II)水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、Pdをそれぞれ、0.1質量%、0.5質量%、1.0質量%、2.0質量%担持してなるPd担持YMn0.95Ti0.05触媒を得た。
【0061】
次に、実施例1で得られたPt担持YMnO触媒に代えて本実施例で得られたPd担持YMn0.95Ti0.05触媒を用いた以外は実施例1と全く同一にして、本実施例で得られたPd担持YMn0.95Ti0.05触媒の触媒性能を評価した。
【0062】
次に、本実施例のPd担持YMn0.95Ti0.05触媒のPd担持量と、出口側の各ガス成分における浄化率50%のときの温度との関係を表7及び図9に示す。
【0063】
【表7】

【0064】
表7及び図9から、本実施例のPd担持YMn0.95Ti0.05触媒によれば、Pdを全く担持しない場合(Pd担持量=0)に比較して、前記合成ガス中のCO、C、NOに対する浄化率が50%のときの温度が低く、優れた浄化性能を備えていることが明らかである。また、本実施例のPd担持YMn0.95Ti0.05触媒は、Pd担持量が0.1質量%未満では十分な浄化性能が得られず、1.0質量%を超えてもそれ以上の効果は得られない。
【0065】
さらに、本実施例のPd担持YMn0.95Ti0.05触媒は、前記合成ガス中のNOに対する浄化性能に特に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排ガスを浄化する触媒において、
YとMnとを含むと共に六方晶を含む複合金属酸化物に白金族金属を担持してなることを特徴とする触媒。
【請求項2】
請求項1記載の触媒において、内燃機関の排ガスを浄化する触媒において、
前記複合金属酸化物は、斜方晶と六方晶との混晶を含むことを特徴とする触媒。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の触媒において、前記複合金属酸化物は、式YMnO又は一般式YMn1−xTi(式中、0.01≦x≦0.50)で表されることを特徴とする触媒。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の触媒において、前記白金族金属はPt、Pd、Rhからなる群から選択される金属であって、前記複合金属酸化物に対して0.1〜1.0質量%の範囲の量で担持されることを特徴とする触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−189306(P2011−189306A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58809(P2010−58809)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】