説明

排ガス浄化用触媒

【課題】使用初期から安定した酸素ストレージ能を良好に維持できる排ガス浄化用触媒を提供すること。
【解決手段】排ガス浄化用触媒に、ランタノイドを40%以上の原子割合で含み、酸素吸蔵率が、0.55〜0.75重量%である複合酸化物を含む触媒層を含有させる。この排ガス浄化用触媒によれば、使用初期から、安定した酸素ストレージ能を良好に維持できる。そのため、この排ガス浄化用触媒によれば、自動車用エンジンなどの排気ガス中に含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)および窒素酸化物(NO)を、使用初期から効率よく浄化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒に関し、詳しくは、自動車用エンジンなどの排気ガス中に含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)および窒素酸化物(NO)を効率よく浄化するための排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガス中に含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)および窒素酸化物(NO)を同時に浄化できる三元触媒からなる排ガス浄化用触媒は、Pt、Rh、Pdなどの貴金属を活性物質としている。このような排ガス浄化用触媒において、近年、酸化セリウム(CeO)の有する気相中の酸素を吸蔵または放出する機能(酸素ストレージ能)に着目して、酸化セリウムを三元触媒に含有させて、COおよびHCの酸化反応およびNOの還元反応における気相雰囲気を調整し、浄化効率の向上を図ることが知られている。そのため、例えば、酸化セリウムを貴金属とともにアルミナなどに担持した排ガス浄化用触媒が種々提案されている。
【0003】
しかし、酸化セリウムは耐熱性に劣るため、酸化セリウムを含有する触媒を高温環境下において使用すると、酸化セリウムが粒成長してしまい、その性能を長期間にわたって維持することができない場合がある。そのため、近年では、酸化セリウムを耐熱性複合酸化物として調製することが、検討されている。
そのような複合酸化物としては、例えば、Ce1−(x+y)Zr2−zで表され、Rは希土類金属を、zは酸素欠陥量を示し、0.2≦x+y≦0.9、0.1≦x≦0.8、0.05≦y≦0.3である、酸素吸蔵性セリウム系複合酸化物が、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このような酸素吸蔵性セリウム系複合酸化物を用いれば、高温環境下においても、触媒の性能を長期間にわたって維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−216509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の酸素吸蔵性セリウム系複合酸化物は、触媒の使用初期において高い酸素ストレージ能を示し、長期使用に伴って酸素ストレージ能が低下する。すなわち、この酸素吸蔵性セリウム系複合酸化物の酸素ストレージ能は、使用初期から長期使用に伴って変化する。
一般に、酸素吸蔵性セリウム系複合酸化物の酸素ストレージ能が高い場合には、排ガス浄化用触媒は、一酸化炭素(CO)を、炭化水素(HC)に比べて優先的に浄化する。
【0007】
そのため、特許文献1に記載の酸素吸蔵性セリウム系複合酸化物を含む触媒によれば、使用初期において、一酸化炭素(CO)を良好に浄化できるが、その一方で、炭化水素(HC)を十分に浄化できない場合がある。
さらに、近年では、排ガス測定のテストモードとして、従来の10−15モードおよび11モードに代えて、加減速の過渡領域を含んだJC08モードを採用することが要求されており、このJC08モードを採用する場合には、過渡領域に対応するため、とりわけ、触媒の使用初期から、安定した酸素ストレージ能を良好に維持することが、求められている。
【0008】
本発明の目的は、使用初期から安定した酸素ストレージ能を良好に維持できる排ガス浄化用触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の排ガス浄化用触媒は、ランタノイドを40%以上の原子割合で含む複合酸化物を含む触媒層を含有する排ガス浄化用触媒であって、前記複合酸化物の酸素吸蔵率が、0.55〜0.75重量%であることを特徴としている。
また、本発明の排ガス浄化用触媒では、前記複合酸化物が、Ce、ZrおよびYを含む蛍石型複合酸化物であることが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の排ガス浄化用触媒によれば、使用初期から、安定した酸素ストレージ能を良好に維持できる。
そのため、本発明の排ガス浄化用触媒によれば、自動車用エンジンなどの排気ガス中に含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)および窒素酸化物(NO)を、使用初期から効率よく浄化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、排ガス浄化用触媒を備えた車両の走行距離と、排出されるNMHCとの関係を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の排ガス浄化用触媒は、触媒層を含有しており、その触媒層は、複合酸化物を含んでいる。
本発明において、複合酸化物は、ランタノイドを40%以上の原子割合で含んでおり、また、その酸素吸蔵率は、詳しくは後述するが、0.55〜0.75重量%の範囲である。
【0013】
このような複合酸化物としては、その結晶構造などは特に限定されず、例えば、ペロブスカイト型、イルメナイト型、蛍石型などの結晶構造を有する複合酸化物が挙げられる。好ましくは、蛍石型の結晶構造を有する複合酸化物(以下、蛍石型複合酸化物と称する場合がある。)が挙げられる。
このような蛍石型複合酸化物は、例えば、下記一般式(1)で表わされる。
【0014】
Ln1-(a+b)Zr2-c (1)
(式中、Lnは、ランタノイドを示し、Lは、アルカリ土類金属および/または希土類元素(ただし、ランタノイドを除く。)を示し、aは、Zrの原子割合を示し、bは、Lの原子割合を示し、1−(a+b)は、Lnの原子割合を示し、cは、酸素欠陥量を示す。)
一般式(1)において、Lnで示されるランタノイドとしては、周期律表(IUPAC Periodic Table of the Elements(version date 22 June 2007)に従う。以下同じ。)において、原子番号57〜71の各元素が挙げられ、より具体的には、La(ランタン)、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジム)、Nb(ネオジム)、Pm(プロメチウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユウロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビニウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、Yb(イッテルビウム)、Lu(ルテチウム)が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。好ましくは、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジム)が挙げられ、より好ましくは、Ce(セリウム)が挙げられる。
【0015】
一般式(1)において、Lで示されるアルカリ土類金属としては、例えば、Be(ベリリウム)、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Ra(ラジウム)などが挙げられる。また、Lで示される希土類元素としては、例えば、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)などが挙げられる。これらアルカリ土類金属および希土類元素は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0016】
また、aで示されるZrの原子割合は、0.2〜0.6の範囲であり、好ましくは、0.2〜0.5の範囲である。
また、bで示されるLの原子割合は0〜0.2の範囲である(すなわち、Lは必須成分ではなく任意的に含まれる任意成分であり、含まれる場合には、0.2以下の原子割合である)。0.2を超えると、相分離や他の複合酸化物相を生成する場合がある。
【0017】
また、1−(a+b)で示されるLnの原子割合は、0.4以上(すなわち、40%以上)、通常、0.6以下(すなわち、60%以下)である。
さらに、cは酸素欠陥量を示し、これは、Ln、ZrおよびLの酸化物が形成する蛍石型の結晶格子において、その結晶格子にできる空孔の割合を意味する。
このような蛍石型複合酸化物として、より具体的には、セリア系複合酸化物、プラセオジム系複合酸化物などが挙げられる。
【0018】
セリア系複合酸化物は、下記一般式(2)で表される。
Ce1-(d+e)Zr2-f (2)
(式中、Lは、アルカリ土類金属および/または希土類元素(ただし、ランタノイドを除く。)を示し、dは、Zrの原子割合を示し、eは、Lの原子割合を示し、1−(d+e)は、Ceの原子割合を示し、fは、酸素欠陥量を示す。)
一般式(2)において、Lで示されるアルカリ土類金属としては、一般式(1)で示したアルカリ土類金属が挙げられる。また、Lで示される希土類元素としては、一般式(1)で示した希土類金属が挙げられる。これらアルカリ土類金属および希土類元素は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。好ましくは、希土類元素、より好ましくは、Y(イットリウム)が挙げられる。
【0019】
また、dで示されるZrの原子割合は、0.2〜0.6の範囲であり、好ましくは、0.2〜0.5の範囲である。
また、eで示されるLの原子割合は0〜0.2の範囲である(すなわち、Lは必須成分ではなく任意的に含まれる任意成分であり、含まれる場合には、0.2以下の原子割合である)。0.2を超えると、相分離や他の複合酸化物相を生成する場合がある。
【0020】
また、1−(d+e)で示されるCeの原子割合は、0.4以上(すなわち、40%以上)、通常、0.6以下(すなわち、60%以下)である。
さらに、fは酸素欠陥量を示し、これは、Ce、ZrおよびLの酸化物が形成する蛍石型の結晶格子において、その結晶格子にできる空孔の割合を意味する。
プラセオジム系複合酸化物は、下記一般式(3)で表される。
【0021】
Pr1−(g+h)Zr2−i (3)
(式中、Lは、アルカリ土類金属および/または希土類元素(ただし、ランタノイドを除く。)を示し、gは、Zrの原子割合を示し、hは、Lの原子割合を示し、1−(g+h)は、Prの原子割合を示し、iは、酸素欠陥量を示す。)
一般式(3)において、Lで示されるアルカリ土類金属としては、一般式(1)で示したアルカリ土類金属が挙げられる。また、Lで示される希土類元素としては、一般式(1)で示した希土類金属が挙げられる。これらアルカリ土類金属および希土類元素は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0022】
また、gで示されるZrの原子割合は、0.2〜0.6の範囲であり、好ましくは、0.2〜0.5の範囲である。
また、hで示されるLの原子割合は、0〜0.2の範囲である(すなわち、Lは必須成分ではなく任意的に含まれる任意成分であり、含まれる場合には、0.2以下の原子割合である)。0.2を超えると、相分離や他の複合酸化物相を生成する場合がある。
【0023】
また、1−(g+h)で示されるPrの原子割合は、0.4以上(すなわち、40%以上)、通常、0.6以下(すなわち、60%以下)である。
さらに、iは酸素欠陥量を示し、これは、Pr、ZrおよびLの酸化物が形成する蛍石型の結晶格子において、その結晶格子にできる空孔の割合を意味する。
これら複合酸化物は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0024】
複合酸化物として、好ましくは、Ce、ZrおよびYを含む蛍石型複合酸化物(すなわち、上記一般式(2)において、LとしてY(イットリウム)を含み、蛍石型の結晶構造を有するセリア系複合酸化物)が挙げられる。
複合酸化物として、Ce、ZrおよびYを含む蛍石型複合酸化物を用いれば、酸素ストレージ能の向上を図ることができる。
【0025】
本発明において、複合酸化物に含まれるランタノイドの原子割合は、0.4以上(すなわち、40%以上)、通常、0.6以下(すなわち、60%以下)である。
複合酸化物に含まれるランタノイドの原子割合が、上記下限に満たない場合には、酸素ストレージ能が低下する。
一方、複合酸化物に含まれるランタノイドの原子割合が、上記上限を超過する場合には、粒成長が抑制できず、耐熱性が低下する場合がある。
【0026】
なお、複合酸化物に含まれるランタノイドの原子割合は、後述する複合酸化物の製造に用いられる各原料成分の配合比から、求めることができる。
また、複合酸化物の酸素吸蔵率は、0.55〜0.75重量%となるように調整されている。
本発明において、複合酸化物の酸素吸蔵率は、複合酸化物が吸蔵する酸素の重量(以下、吸蔵酸素重量と称する場合がある。)の、複合酸化物の重量(以下、酸化物重量と称する場合がある。)に対する割合として、定義される。
【0027】
このような複合酸化物の酸素吸蔵率は、下記式により求めることができる。
酸素吸蔵率(重量%)=(吸蔵酸素重量/酸化物重量)×100
吸蔵酸素重量は、例えば、一定の温度条件下において、複合酸化物に酸素を吸蔵および放出させ、酸素吸蔵状態の複合酸化物の重量から酸素放出状態の複合酸化物の重量を差し引くことにより、求めることができる。
【0028】
より具体的には、この方法では、例えば、まず、複合酸化物を、公知の方法により粉末状とし、熱天秤によって、酸化雰囲気(例えば、50%O(Nbalance)条件)下、室温(例えば、20℃)から所定温度(例えば、400℃)まで、所定の昇温速度(例えば、20℃/分)で加熱する。
次いで、この方法では、複合酸化物を所定温度(例えば、400℃)で所定時間(例えば、15分間)維持し、複合酸化物に酸素を吸蔵させるとともに、その重量を測定する(吸蔵工程)。
【0029】
次いで、この方法では、複合酸化物を、不活性ガス雰囲気(例えば、N100%条件)下において、所定温度(例えば、400℃)で所定時間(例えば、3分間)維持し、不活性ガスでパージする(パージ工程)。
次いで、この方法では、複合酸化物を、還元雰囲気(例えば、20%H(Nbalance)条件)下おいて、所定温度(例えば、400℃)で所定時間(例えば、7分間)維持することにより、複合酸化物から酸素を放出させるとともに、その重量を測定する(放出工程)。
【0030】
次いで、この方法では、上記と同様の方法により、不活性ガスでパージし(パージ工程)、さらにその後、上記と同様の方法により、複合酸化物に酸素を吸蔵させるとともに、その重量を測定する(吸蔵工程)。
このようにして、吸蔵工程および放出工程を、それらの間にパージ工程を介在させながら複数回(例えば、吸蔵工程を3回、放出工程を2回)繰り返し、各吸蔵工程および各放出工程における複合酸化物の重量を測定する。
【0031】
そして、この方法では、各放出工程における酸素放出状態の複合酸化物の重量と、その放出工程の後にパージ工程を介して連続する各吸蔵工程における酸素吸蔵状態の複合酸化物の重量との差を、それぞれ求め、それらの平均値を吸蔵酸素重量として算出する。
なお、酸素放出状態および酸素吸蔵状態における複合酸化物の重量の差は、通常、各放出工程と各吸蔵工程との間のそれぞれにおいて、実質的に同一であるため、平均値を算出することなく、例えば、任意に選択される放出工程(例えば、2回目の放出工程)と、その放出工程の後にパージ工程を介して連続する吸蔵工程(例えば、3回目の吸蔵工程)とにおける複合酸化物の重量の差を、吸蔵酸素重量として採用することもできる。
【0032】
また、複合酸化物が吸蔵する酸素量と、放出する酸素量とは、通常、実質的に等しいため、例えば、酸素放出状態の複合酸化物の重量から、酸素吸蔵状態の複合酸化物の重量を差し引いた値の絶対値を吸蔵酸素重量として採用することもできる。
また、上記式において、酸化物重量は、酸素吸蔵状態における複合酸化物の重量である。
【0033】
複合酸化物の酸素吸蔵率は、0.55〜0.75重量%である。
複合酸化物の酸素吸蔵率が、上記上限を超過する場合には、COの浄化が優先され、NMHC(ノンメタン炭化水素)の浄化性能が低下する。
一方、複合酸化物の酸素吸蔵率が、上記下限未満の場合には、COおよびHCの酸化反応およびNOの還元反応における気相雰囲気を調整できず、浄化効率が低下する。
【0034】
このような複合酸化物を製造するには、例えば、まず、公知の方法によって複合酸化物と同一組成の1次焼成体を形成し(1次焼成工程)、その後、得られた1次焼成体を、さらに酸素吸蔵率が上記範囲となるように焼成する(2次焼成工程)。これにより、複合酸化物を2次焼成体として得ることができる。
より具体的には、この方法では、まず、1次焼成体を形成する(1次焼成工程)。
【0035】
1次焼成体は、例えば、共沈法、クエン酸錯体法、アルコキシド法などによって、製造することができる。
共沈法では、例えば、上記した各元素の塩を所定の化学量論比で含む混合塩水溶液を調製し、この混合塩水溶液に中和剤を加えて共沈させた後、得られた共沈物を乾燥後、熱処理する。
【0036】
各元素の塩としては、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、りん酸塩などの無機塩、例えば、酢酸塩、しゅう酸塩などの有機酸塩などが挙げられる。また、混合塩水溶液は、例えば、各元素の塩を、所定の化学量論比となるような割合で水に加えて、攪拌混合することにより調製することができる。
その後、この混合塩水溶液に、中和剤を加えて共沈させる。中和剤としては、例えば、アンモニア、例えば、トリエチルアミン、ピリジンなどのアミン類などの有機塩基、例えば、カセイソーダ、カセイカリ、炭酸カリ、炭酸アンモンなどの無機塩基が挙げられる。なお、中和剤は、その中和剤を加えた後の溶液のpHが8〜11程度となるように加える。
【0037】
そして、得られた共沈物を、必要により水洗し、例えば、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させた後、例えば、約400〜700℃で、1〜48時間熱処理することにより、1次焼成体を製造する。
また、クエン酸錯体法では、例えば、クエン酸と上記した各元素の塩とを、上記した各元素に対し化学量論比よりやや過剰のクエン酸水溶液を加えてクエン酸混合塩水溶液を調製し、このクエン酸混合塩水溶液を乾固させて、上記した各元素のクエン酸錯体を形成させた後、得られたクエン酸錯体を仮焼成後、熱処理する。
【0038】
各元素の塩としては、上記と同様の塩が挙げられ、また、クエン酸混合塩水溶液は、例えば、上記と同様に混合塩水溶液を調製して、その混合塩水溶液に、クエン酸の水溶液を加えることにより、調製することができる。
その後、このクエン酸混合塩水溶液を乾固させて、上記した各元素のクエン酸錯体を形成させる。乾固は、形成されるクエン酸錯体が分解しない温度、例えば、室温〜150℃程度で、水分を除去する。これによって、上記した各元素のクエン酸錯体を形成させることができる。
【0039】
そして、形成されたクエン酸錯体を仮焼成後、熱処理する。仮焼成は、例えば、真空または不活性雰囲気下において250〜350℃で加熱すればよい。その後、例えば、約400〜700℃で1〜48時間熱処理することにより、1次焼成体を製造することができる。
また、アルコキシド法では、例えば、上記した各元素のアルコキシドを、上記した化学量論比で含む混合アルコキシド溶液を調製し、この混合アルコキシド溶液に、脱イオン水を加えて加水分解により沈殿させた後、得られた沈殿物を乾燥後、熱処理する。
【0040】
各元素のアルコキシドとしては、例えば、各元素と、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシなどのアルコキシとから形成されるアルコラートや、下記一般式(4)で示される各元素のアルコキシアルコラートなどが挙げられる。
E[OCH(R)−(CH−OR (4)
(式中、Eは、各元素を示し、Rは、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示し、jは、1〜3の整数、kは、2〜4の整数を示す。)
アルコキシアルコラートは、より具体的には、例えば、メトキシエチレート、メトシキプロピレート、メトキシブチレート、エトキシエチレート、エトキシプロピレート、プロポキシエチレート、ブトキシエチレートなどが挙げられる。
【0041】
そして、混合アルコキシド溶液は、例えば、各元素のアルコキシドを、上記した化学量論比となるように有機溶媒に加えて、攪拌混合することにより調製することができる。有機溶媒としては、各元素のアルコキシドを溶解できれば、特に制限されないが、例えば、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類などが用いられる。好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類が挙げられる。
【0042】
その後、この混合アルコキシド溶液に、脱イオン水を加えて沈殿させる。
そして、得られた沈殿物を、例えば、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させた後、例えば、約400〜700℃で1〜48時間熱処理することにより、1次焼成体を製造する。
1次焼成体の酸素吸蔵率は、0.85〜1.00重量%である。
【0043】
次いで、この方法では、得られた1次焼成体を、酸素吸蔵率が上記範囲となるように焼成し、2次焼成体として複合酸化物を得る(2次焼成工程)。
焼成では、上記により得られた1次焼成体を、例えば、常圧下、空気中において、例えば、800〜1000℃で、例えば、3〜8時間熱処理する。
これにより、2次焼成体として複合酸化物を製造する。
【0044】
また、本発明において、複合酸化物は、貴金属が担持されていてもよい。
貴金属としては、例えば、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
複合酸化物に、貴金属を担持させるには、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、貴金属を含む塩の溶液を調製し、この含塩溶液を複合酸化物に含浸させた後、焼成すればよい。
【0045】
含塩溶液としては、上記した例示の塩の溶液を用いてもよく、また実用的には、硝酸塩水溶液、ジニトロジアンミン硝酸溶液、塩化物水溶液などが挙げられる。より具体的には、パラジウム塩溶液として、例えば、硝酸パラジウム水溶液、ジニトロジアンミンパラジウム硝酸溶液、4価パラジウムアンミン硝酸溶液など、ロジウム塩溶液として、例えば、硝酸ロジウム溶液、塩化ロジウム溶液など、白金塩溶液として、例えば、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液、塩化白金酸溶液、4価白金アンミン溶液などが挙げられる。
【0046】
このようにして得られる複合酸化物の貴金属の担持量は、例えば、複合酸化物100重量部に対して、通常0.01〜5重量部であり、好ましくは、0.02〜2重量部である。
複合酸化物に貴金属を含浸させた後は、例えば、50〜200℃で1〜48時間乾燥し、さらに、例えば、還元雰囲気下において、350〜1000℃で1〜12時間焼成する。
【0047】
なお、複合酸化物が貴金属を担持する場合には、すべての複合酸化物に貴金属が担持されていてもよく、また、一部の複合酸化物に貴金属が担持されていてもよい。
また、本発明において、触媒層は、少なくとも上記の複合酸化物(以下、第1複合酸化物と称する場合がある。)を含んでいればよく、例えば、第1複合酸化物と異なる種類の複合酸化物(以下、第2複合酸化物と称する場合がある。)を含むこともできる。
【0048】
本発明において、第2複合酸化物としては、特に制限されず、例えば、ペロブスカイト型複合酸化物、ジルコニア系複合酸化物、セリア系複合酸化物(上記したセリア系複合酸化物とは異なる種類のセリア系複合酸化物であって、以下、第2セリア系複合酸化物とする。)、アルミナなどが挙げられる。
ペロブスカイト型複合酸化物は、下記一般式(5)で示される。
【0049】
ABO (5)
(式中、Aは、希土類元素およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Bは、貴金属を除く遷移元素およびAlから選ばれる少なくとも1種の元素を示す。)
一般式(5)において、Aで示される希土類元素としては、例えば、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジム)、Nd(ネオジム)、Pm(プロメチウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユーロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、Yb(イッテルビウム)、Lu(ルテチウム)などが挙げられる。
【0050】
また、Aで示されるアルカリ土類金属としては、例えば、Be(ベリリウム)、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Ra(ラジウム)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
一般式(5)において、Bで示される貴金属を除く遷移元素およびAlとしては、例えば、周期律表において、原子番号21(Sc)〜原子番号30(Zn)、原子番号39(Y)〜原子番号48(Cd)、および、原子番号57(La)〜原子番号80(Hg)の各元素(ただし、貴金属(原子番号44〜47および76〜78)を除く)、Alが挙げられ、好ましくは、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)およびAl(アルミニウム)が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0051】
このようなペロブスカイト型複合酸化物は、特に制限されることなく、例えば、特開2004−243305号の段落番号〔0039〕〜〔0059〕の記載に準拠して、複合酸化物を調製するための適宜の方法、例えば、共沈法、クエン酸錯体法、アルコキシド法などの製造方法によって、製造することができる。
また、ペロブスカイト型複合酸化物は、貴金属を担持するか、または、組成として含有することができる。
【0052】
貴金属が担持されたペロブスカイト型複合酸化物は、下記一般式(6)で示される。
N/ABO (6)
(式中、Aは、希土類元素およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Bは、貴金属を除く遷移元素およびAlから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Nは、貴金属を示す。)
このような貴金属が担持されたペロブスカイト型複合酸化物は、例えば、上記の方法により製造された一般式(5)で示されるペロブスカイト型複合酸化物に、特開2004−243305号の段落番号〔0063〕の記載に準拠して、貴金属を担持することによって、製造することができる。
【0053】
このようにして得られるペロブスカイト型複合酸化物の貴金属の担持量は、例えば、ペロブスカイト型複合酸化物100重量部に対して、通常20重量部以下であり、好ましくは、0.2〜5重量部である。
一方、貴金属が組成として含有されたペロブスカイト型複合酸化物は、下記一般式(7)で示される。
【0054】
ABNO (7)
(式中、Aは、希土類元素およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Bは、貴金属を除く遷移元素およびAlから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Nは、貴金属を示す。)
このような貴金属が組成として含有されたペロブスカイト型複合酸化物は、例えば、上記したように、特開2004−243305号の段落番号〔0039〕〜〔0059〕の記載に準拠して、製造することができる。
【0055】
このようにして得られるペロブスカイト型複合酸化物の貴金属の含有量は、例えば、ペロブスカイト型複合酸化物100重量部に対して、通常20重量部以下であり、好ましくは、0.2〜5重量部である。
なお、この貴金属が組成として含有されたペロブスカイト型複合酸化物に、さらに、上記のように貴金属を担持させることもできる。
【0056】
また、本発明において、一般式(5)〜(7)で示されるペロブスカイト型複合酸化物のランタノイド(一般式(5)〜(7)のAがランタノイドである場合)の原子割合が40%以上であり、さらに、そのペロブスカイト型複合酸化物の酸素吸蔵率が0.55〜0.75重量%である場合には、本発明においては、その重複するペロブスカイト型複合酸化物は、第1複合酸化物に属するものとする。
【0057】
ジルコニア系複合酸化物は、下記一般式(8)で示される。
Zr1−(l+m)Ce2−n (8)
(式中、Lは、アルカリ土類金属および/または希土類元素(ただし、Ceを除く。)を示し、lは、Ceの原子割合を示し、mは、Lの原子割合を示し、1−(l+m)は、Zrの原子割合を示し、nは、酸素欠陥量を示す。)
一般式(8)において、Lで示されるアルカリ土類金属としては、一般式(5)で示したアルカリ土類金属が挙げられる。また、Lで示される希土類元素としては、一般式(5)で示した希土類金属が挙げられる(ただし、Ceを除く。)。これらアルカリ土類金属および希土類元素は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0058】
また、lで示されるCeの原子割合は、0.1〜0.65の範囲であり、好ましくは、0.1〜0.5の範囲である。
また、mで示されるLの原子割合は0〜0.55の範囲である(すなわち、Lは必須成分ではなく任意的に含まれる任意成分であり、含まれる場合には、0.55以下の原子割合である)。0.55を超えると、相分離や他の複合酸化物相を生成する場合がある。
【0059】
また、1−(l+m)で示されるZrの原子割合は、0.35〜0.9の範囲であり、好ましくは、0.5〜0.9の範囲である。
さらに、nは酸素欠陥量を示し、これは、Zr、CeおよびLの酸化物が通常形成する蛍石型の結晶格子において、その結晶格子にできる空孔の割合を意味する。
このようなジルコニア系複合酸化物は、特に制限されることなく、例えば、特開2004−243305号の段落番号〔0090〕〜〔0102〕の記載に準拠して、複合酸化物を調製するための適宜の方法、例えば、共沈法、クエン酸錯体法、アルコキシド法などの製造方法によって、製造することができる。
【0060】
このようなジルコニア系複合酸化物は、貴金属を担持するか、または、組成として含有することができる。
貴金属が担持されたジルコニア系複合酸化物は、下記一般式(9)で示される。
N/Zr1−(l+m)Ce2−n (9)
(式中、Lは、アルカリ土類金属および/または希土類元素(ただし、Ceを除く。)を示し、Nは、貴金属を示し、lは、Ceの原子割合を示し、mは、Lの原子割合を示し、1−(l+m)は、Zrの原子割合を示し、nは、酸素欠陥量を示す。)
このような、貴金属が担持されたジルコニア系複合酸化物は、例えば、上記の方法により製造された一般式(8)で示されるジルコニア系複合酸化物に、特開2004−243305号の段落番号〔0122〕、〔0125〕の記載に準拠して、貴金属を担持することによって、製造することができる。
【0061】
このようにして得られるジルコニア系複合酸化物の貴金属の担持量は、例えば、ジルコニア系複合酸化物100重量部に対して、通常0.01〜5重量部であり、好ましくは、0.02〜2重量部である。
一方、貴金属が組成として含有されたジルコニア系複合酸化物は、下記一般式(10)で示される。
【0062】
Zr1−(o+p+q)Ce2−r (10)
(式中、Lは、アルカリ土類金属および/または希土類元素(ただし、Ceを除く。)を示し、Nは、貴金属を示し、oは、Ceの原子割合を示し、pは、Lの原子割合を示し、qは、Nの原子割合を示し、1−(o+p+q)は、Zrの原子割合を示し、rは、酸素欠陥量を示す。)
oで示されるCeの原子割合は、0.1〜0.65の範囲であり、好ましくは、0.1〜0.5の範囲である。
【0063】
また、pで示されるLの原子割合は0〜0.55の範囲である(すなわち、Lは必須成分ではなく任意的に含まれる任意成分であり、含まれる場合には、0.55以下の原子割合である)。0.55を超えると、相分離や他の複合酸化物相を生成する場合がある。
また、qで示されるNの原子割合は、0.001〜0.3の範囲であり、好ましくは、0.001〜0.2の範囲である。
【0064】
また、1−(o+p+q)で示されるZrの原子割合は、0.35〜0.9の範囲であり、好ましくは、0.5〜0.9の範囲である。
さらに、rは酸素欠陥量を示し、これは、Zr、Ce、LおよびNの酸化物が通常形成する蛍石型の結晶格子において、その結晶格子にできる空孔の割合を意味する。
このような貴金属が組成として含有されたジルコニア系複合酸化物は、例えば、上記したように、特開2004−243305号の段落番号〔0090〕〜〔0102〕の記載に準拠して、製造することができる。
【0065】
なお、この貴金属が組成として含有されたジルコニア系複合酸化物に、さらに、上記のように貴金属を担持させることもできる。
このようにして得られるジルコニア系複合酸化物の貴金属の含有量(担持された貴金属と、組成として含有された貴金属との合計量)は、例えば、ジルコニア系複合酸化物100重量部に対して、通常0.01〜5重量部であり、好ましくは、0.02〜2重量部である。
【0066】
また、本発明において、一般式(8)〜(10)で示されるジルコニア系複合酸化物のランタノイド(Ce(一般式(8)〜(10)のLがランタノイドを含む場合には、そのランタノイドとCeとの総量))の原子割合が40%以上であり、さらに、そのジルコニア系複合酸化物の酸素吸蔵率が0.55〜0.75重量%である場合には、本発明においては、その重複するジルコニア系複合酸化物は、第1複合酸化物に属するものとする。
【0067】
第2セリア系複合酸化物は、下記一般式(11)で表される。
Ce1-(s+t)Zr2-u (11)
(式中、Lは、アルカリ土類金属および/または希土類元素(ただし、Ceを除く。)を示し、sは、Zrの原子割合を示し、tは、Lの原子割合を示し、1−(s+t)は、Ceの原子割合を示し、uは、酸素欠陥量を示す。)
一般式(11)において、Lで示されるアルカリ土類金属としては、一般式(5)で示したアルカリ土類金属が挙げられる。また、Lで示される希土類元素としては、一般式(5)で示した希土類金属が挙げられる(ただし、Ceを除く。)。これらアルカリ土類金属および希土類元素は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0068】
また、sで示されるZrの原子割合は、ジルコニア系複合酸化物のZrの原子割合よりも少なく、0.2〜0.7の範囲であり、好ましくは、0.2〜0.5の範囲である。
また、tで示されるLの原子割合は0〜0.2の範囲である(すなわち、Lは必須成分ではなく任意的に含まれる任意成分であり、含まれる場合には、0.2以下の原子割合である)。0.2を超えると、相分離や他の複合酸化物相を生成する場合がある。
【0069】
また、1−(s+t)で示されるCeの原子割合は、ジルコニア系複合酸化物のCeの原子割合よりも多く、0.3〜0.8の範囲であり、好ましくは、0.4〜0.6の範囲である。
さらに、uは酸素欠陥量を示し、これは、Ce、ZrおよびLの酸化物が通常形成する蛍石型の結晶格子において、その結晶格子にできる空孔の割合を意味する。
【0070】
このような第2セリア系複合酸化物は、上記したジルコニア系複合酸化物の製造方法と同様の製造方法によって、製造することができる。
また、このような第2セリア系複合酸化物として、上記した1次焼成体を用いることもできる。
このような第2セリア系複合酸化物は、貴金属を担持するか、または、組成として含有することができる。
【0071】
貴金属が担持された第2セリア系複合酸化物は、下記一般式(12)で示される。
N/Ce1-(s+t)Zr2-u (12)
(式中、Lは、アルカリ土類金属および/または希土類元素(ただし、Ceを除く。)を示し、Nは、貴金属を示し、sは、Zrの原子割合を示し、tは、Lの原子割合を示し、1−(s+t)は、Ceの原子割合を示し、uは、酸素欠陥量を示す。)
このような、貴金属が担持された第2セリア系複合酸化物は、例えば、上記の方法により製造された一般式(11)で示される第2セリア系複合酸化物に、上記したジルコニア系複合酸化物の担持方法と同様の方法によって貴金属を担持することによって、製造することができる。
【0072】
このようにして得られる第2セリア系複合酸化物の貴金属の担持量は、例えば、第2セリア系複合酸化物100重量部に対して、通常0.01〜5重量部であり、好ましくは、0.02〜2重量部である。
一方、貴金属が組成として含有された第2セリア系複合酸化物は、下記一般式(13)で示される。
【0073】
Ce1−(v+w+x)Zr2−y (13)
(式中、Lは、アルカリ土類金属および/または希土類元素(ただし、Ceを除く。)を示し、Nは、貴金属を示し、vは、Zrの原子割合を示し、wは、Lの原子割合を示し、xは、Nの原子割合を示し、1−(v+w+x)は、Ceの原子割合を示し、yは、酸素欠陥量を示す。)
vで示されるZrの原子割合は、ジルコニア系複合酸化物のZrの原子割合よりも少なく、0.2〜0.7の範囲であり、好ましくは、0.2〜0.5の範囲である。
【0074】
また、wで示されるLの原子割合は0〜0.2の範囲である(すなわち、Lは必須成分ではなく任意的に含まれる任意成分であり、含まれる場合には、0.2以下の原子割合である)。0.2を超えると、相分離や他の複合酸化物相を生成する場合がある。
また、xで示されるNの原子割合は、0.001〜0.3の範囲であり、好ましくは、0.001〜0.2の範囲である。
【0075】
また、1−(v+w+x)で示されるCeの原子割合は、ジルコニア系複合酸化物のCeの原子割合よりも多く、0.3〜0.8の範囲であり、好ましくは、0.4〜0.6の範囲である。
さらに、yは酸素欠陥量を示し、これは、Ce、Zr、LおよびNの酸化物が通常形成する蛍石型の結晶格子において、その結晶格子にできる空孔の割合を意味する。
【0076】
このような貴金属が組成として含有された第2セリア系複合酸化物は、例えば、上記した貴金属が組成として含有されたジルコニア系複合酸化物の製造方法と同様の製造方法によって、製造することができる。
なお、この貴金属が組成として含有された第2セリア系複合酸化物に、さらに、上記のように貴金属を担持させることもできる。
【0077】
このようにして得られる第2セリア系複合酸化物の貴金属の含有量(担持された貴金属と、組成として含有された貴金属との合計量)は、例えば、第2セリア系複合酸化物100重量部に対して、通常0.01〜5重量部であり、好ましくは、0.02〜2重量部である。
また、本発明において、一般式(11)〜(13)で示される第2セリア系複合酸化物のランタノイド(Ce(一般式(11)〜(13)のLがランタノイドを含む場合には、そのランタノイドとCeとの総量))の原子割合が40%以上であり、さらに、その第2セリア系複合酸化物の酸素吸蔵率が0.55〜0.75重量%である場合には、本発明においては、その重複する第2セリア系複合酸化物は、第1複合酸化物に属するものとする。
【0078】
アルミナとしては、例えば、αアルミナ、θアルミナ、γアルミナなどが挙げられ、好ましくは、θアルミナが挙げられる。
αアルミナは、結晶相としてα相を有し、例えば、AKP−53(商品名、高純度アルミナ、住友化学社製)などが挙げられる。このようなαアルミナは、例えば、アルコキシド法、ゾルゲル法、共沈法などの方法によって得ることができる。
【0079】
θアルミナは、結晶相としてθ相を有し、αアルミナに遷移するまでの中間(遷移)アルミナの一種であって、例えば、SPHERALITE 531P(商品名、γアルミナ、プロキャタリゼ社製)などが挙げられる。このようなθアルミナは、例えば、市販の活性アルミナ(γアルミナ)を、大気中にて、900〜1100℃で、1〜10時間熱処理することによって得ることができる。
【0080】
γアルミナは、結晶相としてγ相を有し、特に限定されず、例えば、排ガス浄化用触媒などに用いられている公知のものが挙げられる。
また、これらのアルミナにLaおよび/またはBaが含まれるアルミナを用いることもできる。Laおよび/またはBaを含むアルミナは、特開2004−243305号の段落番号〔0073〕の記載に準拠して、製造することができる。
【0081】
また、これらのアルミナには、貴金属を担持することができる。貴金属が担持されたアルミナは、例えば、上記したアルミナに、特開2004−243305号の段落番号〔0122〕、〔0126〕の記載に準拠して、貴金属を担持することによって、製造することができる。
このようにして得られたアルミナの貴金属の担持量(複数の貴金属が担持されている場合は、その合計量)は、例えば、アルミナ100重量部に対して、通常0.01〜5重量部であり、好ましくは、0.02〜2重量部である。
【0082】
これら第2複合酸化物は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。好ましくは、ジルコニア系複合酸化物、アルミナが挙げられ、より好ましくは、貴金属を担持するジルコニア系複合酸化物、貴金属を担持するアルミナが挙げられる。
触媒層として、好ましくは、複合酸化物(第1複合酸化物)と第2複合酸化物とを含む触媒層が挙げられる。
【0083】
そして、このような触媒層は、例えば、触媒担体上にコート層として形成することができる。触媒担体としては、特に制限されず、例えば、コージェライトなどからなるハニカム状のモノリス担体など、公知の触媒担体が用いられる。
触媒担体上にコート層として触媒層を形成するには、例えば、まず、第1複合酸化物と、必要により配合される第2複合酸化物とを混合し、得られた混合物に、水を加えてスラリーとした後、触媒担体上にコーティングし、50〜200℃で1〜48時間乾燥し、さらに、350〜1000℃で1〜12時間焼成すればよい。また、上記した各成分のそれぞれに、水を加えてスラリーとした後、これらスラリーを混合して、触媒担体上にコーティングし、50〜200℃で1〜48時間乾燥し、さらに、350〜1000℃で1〜12時間焼成してもよい。
【0084】
なお、第1複合酸化物と第2複合酸化物とを混合するには、特に制限されず、第1複合酸化物を第2複合酸化物に、物理的に混合すればよく、例えば、第1複合酸化物の粉末と、第2複合酸化物の粉末とを、乾式混合または湿式混合すればよい。
また、触媒層は、例えば、触媒担体上に、表面に形成される外側層と、その外側層の内側に形成される内側層とを有する多層(例えば、2層〜4層、好ましくは、2層)として形成することができる。
【0085】
触媒層を多層として形成する場合において、内側層は、上記と同様に、各成分を含むスラリーを触媒担体上にコーティングし、乾燥後、焼成すればよい。また、外側層は、触媒担体上に形成された内側層上に、上記と同様に、各成分を含むスラリーをコーティングし、乾燥後、焼成すればよい。
触媒層を多層として形成する場合には、第1複合酸化物は、2つ以上の層に含まれていてもよく、いずれの層に含ませるかは、その目的および用途によって適宜決定される。
【0086】
触媒層を多層として形成する場合において、第1複合酸化物は、好ましくは、内側層に含まれている。
内側層に第1複合酸化物を含有させることにより、第1複合酸化物の被毒および熱劣化を防止し、触媒性能の向上を図ることができる。
なお、触媒層を多層として形成する場合において、第1複合酸化物を含まない層(例えば、2層として形成する場合における外側層など)は、例えば、第2複合酸化物から形成される。
【0087】
また、本発明において、触媒層は、このように多層として形成される場合には、好ましくは、第2複合酸化物、より好ましくは、Pdおよび/またはPt含有(Pdおよび/またはPtを担持、および/または、組成として含有する)アルミナが、内側層に含まれている。内側層に、Pdおよび/またはPtを含有するアルミナを含有させることにより、そのアルミナに含まれるPdおよび/またはPtの被毒および熱劣化を防止して、耐久性の向上を図ることができる。
【0088】
また、本発明において、触媒層は、このように多層として形成される場合には、好ましくは、Rh含有(Rhを担持、および/または、組成として含有する)アルミナが、外側層に含まれている。外側層に、Rh含有アルミナを含有させることにより、Pdおよび/またはPtを担持するアルミナが内側層に含まれている場合などにおいて、Pdおよび/またはPtとの合金化を防止することができる。
【0089】
また、本発明において、触媒層は、このように多層として形成される場合には、好ましくは、Rh含有(Rhを担持、および/または、組成として含有する)ジルコニア系酸化物が、外側層に含まれている。外側層に、Rh含有ジルコニア系複合酸化物を含有させることにより、Pdおよび/またはPtを担持するアルミナが内側層に含まれている場合などにおいて、Pdおよび/またはPtとの合金化を防止することができる。
【0090】
そして、このような触媒層を、上記したように触媒担体上に形成することにより、触媒層を含有する排ガス浄化用触媒を得ることができる。
また、このようにして得られる本発明の排ガス浄化用触媒は、さらに、Ba、Ca、Sr、Mg、Laの硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩および/または酢酸塩を含ませてもよい。このような硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩および/または酢酸塩は、多層として形成される場合には、Pdが含まれている層に含ませることが好ましい。硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩および/または酢酸塩を含ませれば、Pdの炭化水素(HC)などの被毒を抑制することができ、触媒活性の低下を防止することができる。
【0091】
また、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩および/または酢酸塩を含ませる割合は、その目的および用途によって適宜選択される。なお、このような硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩および/または酢酸塩を含む内側層および/または外側層の形成は、例えば、内側層および/または外側層を形成するためのスラリーに、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩および/または酢酸塩を混合すればよい。
【0092】
そして、このようにして得られる本発明の排ガス浄化用触媒は、40%以上の原子割合でランタノイドを含み、酸素吸蔵率が0.55〜0.75重量%である複合酸化物を含む触媒層を、含有する。
そのため、本発明の排ガス浄化用触媒によれば、使用初期から、安定した酸素ストレージ能を良好に維持できる。
【0093】
その結果、本発明の排ガス浄化用触媒によれば、自動車用エンジンなどの排気ガス中に含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)および窒素酸化物(NO)を、使用初期から効率よく浄化できる。
【実施例】
【0094】
次に、本発明を製造例、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。また、製造例などに用いられる測定方法を、以下に示す。
<酸素吸蔵率(重量%)>
試料として粉末状の複合酸化物を20mg採取し、熱天秤によって、表1に示す各条件下における複合酸化物の重量を、それぞれ測定した。その後、ステップ8とステップ10との間における複合酸化物の重量の差を酸素吸蔵重量として、下記式により、酸素吸蔵率を求めた。なお、酸化物重量は、酸素吸蔵状態における複合酸化物の重量の値である。
【0095】
【表1】

【0096】
酸素吸蔵率(重量%)=(吸蔵酸素重量/酸化物重量)×100
製造例1
(1次焼成体(Ce0.48Zr0.500.02Oxide粉末)の製造)
セリウムメトキシプロピレート[Ce(OCH(CH)CHOCH]をCe換算で0.096molと、ジルコニウムメトキシプロピレート[Zr(OCH(CH)CHOCH]をZr換算で0.100molと、イットリウムメトキシプロピレート[Y(OCH(CH)CHOCH]をY換算で0.004molと、トルエン200mLとを配合して、撹拌溶解することにより、混合アルコキシド溶液を調製した。さらに、この混合アルコキシド溶液に、脱イオン水80mLを滴下して、加水分解した。
【0097】
次いで、加水分解された溶液から、トルエンおよび脱イオン水を留去し、乾固させて、前駆体を得た。さらに、この前駆体を、60℃で24時間通風乾燥させた後、電気炉にて、450℃で3時間熱処理(焼成)することにより、Ce0.48Zr0.500.02Oxideで示される耐熱性酸化物(1次焼成体)の粉末を得た。
得られた耐熱性酸化物(1次焼成体)の酸素吸蔵率は、0.88重量%であった。
【0098】
製造例2
(2次焼成体(Ce0.48Zr0.500.02Oxide粉末)の製造)
製造例1で得られた耐熱性酸化物(1次焼成体)の粉末を、電気炉にて、1000℃で5時間熱処理(焼成)することにより、Ce0.48Zr0.500.02Oxideで示される複合酸化物(2次焼成体)の粉末を得た。
【0099】
得られた複合酸化物(2次焼成体)の酸素吸蔵率は、0.66重量%であった。
製造例3
(Zr0.78Ce0.16La0.02Nd0.04Oxide粉末の製造)
ジルコニウムメトキシプロピレートをZr換算で0.156molと、セリウムメトキシプロピレートをCe換算で0.032molと、ランタンメトキシプロピレート[La(OCH(CH)CHOCH]をLa換算で0.004molと、ネオジムメトキシプロピレート[Nd(OCH(CH)CHOCH]をNd換算で0.008molと、トルエン200mLとを配合して、撹拌溶解することにより、混合アルコキシド溶液を調製した。さらに、この混合アルコキシド溶液に、脱イオン水80mLを滴下して、加水分解した。
【0100】
次いで、加水分解された溶液から、トルエンおよび脱イオン水を留去し、乾固させて、前駆体を得た。さらに、この前駆体を、60℃で24時間通風乾燥させた後、電気炉にて、450℃で3時間熱処理(焼成)することにより、Zr0.78Ce0.16La0.02Nd0.04Oxideで示される耐熱性酸化物の粉末を得た。
製造例4
(Rh/Zr0.778Ce0.160La0.020Nd0.040Rh0.002Oxide粉末の製造)
製造例3で得られたZr0.78Ce0.16La0.02Nd0.04Oxide粉末89.7gに、硝酸ロジウム水溶液(Rh換算で0.12g)を含浸させ、乾燥後、電気炉にて、800℃で3時間熱処理(焼成)することにより、Zr0.778Ce0.160La0.020Nd0.040Rh0.002Oxide粉末を得た。
【0101】
次いで、この粉末89.82gに硝酸ロジウム水溶液(Rh換算で0.18g)を含浸させ、乾燥後、電気炉にて、500℃で3時間焼成することにより、Rh担持Zr0.778Ce0.160La0.020Nd0.040Rh0.002Oxideを得た。
この焼成体のRh担持および含有量は、粉末90gに対して、Rh0.30gの割合であった。
【0102】
製造例5
(Rh/θ−Al粉末の製造)
θアルミナに、硝酸ロジウム水溶液を含浸させ、乾燥後、電気炉にて、600℃で3時間熱処理(焼成)することにより、Rh担持θアルミナ粉末を得た。
この粉末のRh担持量は、粉末60gに対して、Rh0.25gの割合であった。
【0103】
製造例6
(Pt−Pd/θ−Al粉末の製造)
θアルミナに、ジニトロジアンミン白金硝酸水溶液とともに、ジニトロアンミンパラジウム硝酸水溶液を含浸させ、乾燥後、電気炉にて、600℃で3時間熱処理(焼成)することにより、Pt−Pd担持θアルミナ粉末を得た。
【0104】
この粉末のPtおよびPd担持量は、粉末50gに対して、Pt0.20gおよびPd3.00gの割合であった。
実施例1
製造例2で得られたCe0.48Zr0.500.02Oxideで示される複合酸化物(2次焼成体)の粉末、製造例6で得られたPt−Pd担持θアルミナ粉末、および、BaSOを、ボールミルにて混合および粉砕し、これに蒸留水を加えてスラリーを調製した。このスラリーを、モノリス担体の各セルの内表面にコーティングして、乾燥させた後、600℃で3時間焼成することにより、内側層を形成した。
【0105】
上記内側層は、モノリス担体1Lあたり、複合酸化物(2次焼成体)の粉末を45g、Pt−Pd担持θアルミナ粉末を50g(Pt担持量0.20g、Pd担持量3.00g)、および、BaSOを20g、それぞれ担持するように形成した。
次いで、製造例5で得られたRh担持θアルミナ粉末、および、製造例4で得られたRh担持Zr0.778Ce0.160La0.020Nd0.040Rh0.002Oxideを、ボールミルにて混合および粉砕し、これに蒸留水を加えてスラリーを調製した。このスラリーを、上記モノリス担体の内側層の表面にコーティングして、乾燥させた後、600℃で3時間焼成することにより、外側層を形成した。
【0106】
上記外側層は、モノリス担体1Lあたり、Rh担持θアルミナ粉末を60g(Rh担持量0.25g)、および、Rh担持Zr0.778Ce0.160La0.020Nd0.040Rh0.002Oxideを90g(Rh担持および含有量0.30g)、それぞれ担持するように形成した。
これにより、2層コートからなる排ガス浄化用触媒を得た。排ガス浄化用触媒全体でのPt、RhおよびPdの担持量は、それぞれ、0.20g/L、0.55g/Lおよび3.00g/Lであった。
【0107】
比較例1
製造例2で得られたCe0.48Zr0.500.02Oxideで示される複合酸化物(2次焼成体)の粉末に代えて、製造例1で得られたCe0.48Zr0.500.02Oxideで示される耐熱性酸化物(1次焼成体)の粉末を用いた以外は、実施例1と同様に操作し、2層コートからなる排ガス浄化用触媒を得た。排ガス浄化用触媒全体でのPt、RhおよびPdの担持量は、それぞれ、0.20g/L、0.55g/Lおよび3.00g/Lであった。
【0108】
性能評価
実施例1および比較例1で得られた各排ガス浄化用触媒(モノリス状触媒)を排気管に取り付けた、直列3気筒、排気量0.66Lのガソリンエンジンを搭載した車両を、排ガス分析装置(HORIBA社製)を備えたシャシダイナモメーター上で10−15モード試験手順に沿って運転し、排出されたNMHC(ノンメタン炭化水素)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0109】
【表2】

【0110】
また、得られた測定結果から、排ガス浄化用触媒を備えた車両の走行距離と、排出されるNMHCとの関係をグラフ化した。図1は、排ガス浄化用触媒を備えた車両の走行距離と、排出されるNMHCとの関係を表したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランタノイドを40%以上の原子割合で含む複合酸化物を含む触媒層を含有する排ガス浄化用触媒であって、
前記複合酸化物の酸素吸蔵率が、0.55〜0.75重量%であることを特徴とする、排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記複合酸化物が、Ce、ZrおよびYを含む蛍石型複合酸化物であることを特徴とする、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。

【図1】
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【公開番号】特開2011−36740(P2011−36740A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183627(P2009−183627)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【出願人】(000104607)株式会社キャタラー (161)
【Fターム(参考)】