排ガス浄化用触媒
【課題】本発明は、硫化物の生成を抑制し、触媒活性を低下させることなく、硫黄被毒を回避することを目的とする。また、本発明は、高温環境下においても触媒活性を維持しつつ、硫黄の蓄積を抑制して、硫黄被毒を回避することを目的とする。
【解決手段】比表面積が100〜150m2/g且つ塩基量が0.5〜3.0μmol/m2の金属酸化物と、白金族金属と、を含んでなることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【解決手段】比表面積が100〜150m2/g且つ塩基量が0.5〜3.0μmol/m2の金属酸化物と、白金族金属と、を含んでなることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄被毒を抑制することができる排ガス浄化用触媒に関係する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車用エンジン等の内燃機関から排出される排気ガス中には、炭化水素系化合物(以下「HC」という。)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の物質(エミッション)が含まれている。これらの物質の排出量を減らすために、エンジンの空燃比等の、燃焼条件の最適化の他、排ガス中に含まれる物質を排ガス浄化触媒によって除去する方法が一般的に用いられている。
【0003】
この排ガス浄化触媒としては、アルミナ等の多孔質金属酸化物担体に、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)等の貴金属を担持した、いわゆる三元触媒が一般的である。この三元触媒は、CO及びHCを酸化するとともに、NOxをN2に還元する能力を有することが知られている。
【0004】
一方、近年、地球環境保護の観点から各国で排ガス規制は強化されており、また埋蔵量が少なく資源リスクの高い貴金属の使用を最小限に抑えることも求められている。自動車産業を持続的に繁栄させるには、これらの要求に応えることが必要である。
【0005】
触媒を使用するにあたり、触媒被毒は避けられない課題の一つである。被毒は、主にガソリン中に含まれる硫黄分によるもの、エンジンオイル中に含まれるジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)によるもの、またオクタン価向上剤としてガソリン中に添加されるメチルシクロペンタジエニルマンガントリカルボニル(MMT)によるものが挙げられる。
【0006】
硫黄分による被毒から触媒を回復させるには、エンジンの空燃比制御や温度制御で、SO2もしくはH2Sとして気化させて触媒から脱離させることが必要になる。一方、そのような制御を行うと浄化能の低下や触媒劣化が促進されるため、硫黄を根本的に蓄積し難い触媒を用いることが、硫黄による触媒被毒の回避につながる。
【0007】
従来技術として、特許文献1は、Ti−Zr複合担体を用いてSOx を吸着しにくくすることを提案している。また、特許文献2は、リン酸ジルコニウムからなる担体を用いて硫黄被毒を防止することを提案している。さらに、特許文献3は、遷移金属を担持した多孔質担体を用いて、SOx を付着しにくくすることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−192051号公報
【特許文献2】特開平8−281116号公報
【特許文献3】特開平8−224479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記先行技術文献に記載された改良触媒のいずれもストイキ雰囲気中で活性点上に硫化物を形成し触媒活性が低下することがあるという問題がある。また、これらの改良触媒のいずれも、硫黄の蓄積は低減可能であるが、ガソリンエンジンのような高温環境下で仕様する場合に、触媒活性が低下することがあるという問題もある。
【0010】
本発明は、硫化物の生成を抑制し、触媒活性を低下させることなく、硫黄被毒を回避することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、高温環境下においても触媒活性を維持しつつ、硫黄の蓄積を抑制して、硫黄被毒を回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明により、
(1)比表面積が100〜150m2/g且つ塩基量が0.5〜3.0μmol/m2の金属酸化物と、白金族金属と、を含んでなることを特徴とする排ガス浄化用触媒、
が提供される。
【0013】
また、本発明により、
(2)前記金属酸化物が、チタニア、シリカ、またはアルミナ・ジルコニア・チタニア複合体であること、を特徴とする(1)に記載の排ガス浄化用触媒、
が提供される。
【0014】
また、本発明により、
(3)前記金属酸化物を前記白金族金属の担体とすること、を特徴とする(1)または(2)に記載の排ガス浄化用触媒、
が提供される。
【0015】
また、本発明により、
(4)前記白金族金属を担持した担体と前記金属酸化物とを混合したこと、を特徴とする(1)または(2)に記載の排ガス浄化用触媒、
が提供される。
【0016】
また、本発明により、
(5)前記金属酸化物を前記担体の等倍〜5倍量(質量比)で混合したこと、を特徴とする(4)に記載の排ガス浄化用触媒、
が提供される。
【0017】
また、本発明により、
(6)混合方法が湿式混合であることを特徴とする(4)または(5)に記載の排ガス浄化用触媒、
が提供される。
【0018】
また、本発明により、
(7)前記担体が、セリア・ジルコニア複合体またはジルコニアであること、を特徴とする(4)〜(6)のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒、
が提供される。
【0019】
また、本発明により、
(8)前記白金族金属が白金またはパラジウムであること、を特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒、
が提供される。
【0020】
また、本発明により、
(9)前記白金族金属がパラジウムであること、を特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒、
が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の一般的な触媒と本発明の触媒(Bシリーズ触媒)の模式図である。
【図2】S被毒処理(Aシリーズ触媒)の温度管理、暴露時間等を示す図である。
【図3】モデルガス装置でのNOx浄化率測定(ストイキ活性評価)の概略イメージを示す図である。
【図4】触媒のストイキ活性評価を行う際の、温度管理パターンを示す図である。
【図5】Aシリーズ触媒に蓄積されたS蓄積量およびその塩形態についての測定結果を示す図である。
【図6】比較例AC−1触媒のS被毒状態についての軟X線XAFSチャートである。
【図7】実施例A−1触媒のS被毒状態についての軟X線XAFSチャートである。
【図8】S被毒処理を行ったAシリーズ触媒のNOx浄化率を示す図である。
【図9】高温耐久およびS被毒処理(Bシリーズ触媒)の温度管理、暴露時間等を示す図である。
【図10】Bシリーズ触媒に蓄積されたS蓄積量についての測定結果を示す図である。
【図11】Bシリーズ触媒に蓄積されたSの分布についてのEPMAチャートである。
【図12】Bシリーズ触媒において、混合する酸化物の混合量とNOx浄化率の関係を表したグラフである。
【図13】比較例触媒BC−1および実施例触媒B−1のNOx浄化率の関係を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の排ガス浄化用触媒は、比表面積が100〜150m2/g且つ塩基量が0.5〜3.0μmol/m2の金属酸化物と、白金族金属とを含んでなることを特徴とする。
【0023】
本発明の排ガス浄化用触媒は、白金族金属を含む。白金族金属とは、周期表8〜10族に属する元素のうち、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)および白金(Pt)の6元素をいう。白金族金属は、単体の密度が大きい(>12g/cm3)、化学反応性に乏しいなどの共通性がいちじるしく、CO及びHCを酸化するとともに、NOxをN2に還元する能力を有することが知られている。白金族金属の担持量は、0.3〜10wt%とすることが好ましい。この範囲より少ないと白金族金属の作用効果、すなわち浄化活性が十分でなく、この範囲より多くても効果が飽和して高価になるからである。この白金族金属は、一般的な方法により、例えば白金族金属を含む溶液に担体を浸漬し、乾燥させることによって担持させることができる。
【0024】
これらの白金族金属のうち、白金(Pt)またはパラジウム(Pd)が好ましい。白金(Pt)またはパラジウム(Pd)のNOx浄化率が、他の白金族金属に比べて高いためである。また、パラジウム(Pd)がさらに好ましい。同じ条件下では、パラジウム(Pd)のときのNOx浄化率が、白金(Pt)のときのそれよりも高くなるためである。
【0025】
本発明の排ガス浄化用触媒は、金属酸化物を含む。この金属酸化物の比表面積は、100〜150m2/gである。本発明の排ガス浄化触媒は、白金族金属担持型の触媒であり、白金族金属を高分散状態に保持し、ガスと有効に接触させるために、高比表面積を持つことが望ましいからである。所定の比表面積を有する金属酸化物またはその前駆物質は、多くの化学品メーカーから市販されており、所望する比表面積を有するものを入手可能である。
【0026】
比表面積の測定は、BET1点法により行うことができる。BET1点法では、液体窒素温度下における試料への窒素ガスの吸着量を実測し、BET式に従って、単原子層吸着量を求める。
Vm=V(1−P/Ps) (BET式)
V;吸着量(試料に吸着した窒素ガスの標準状態における体積
Vm;単分子層吸着量(吸着第1層だけの吸着量)
P;吸着平衡圧
Ps;吸着ガス(N2)の飽和蒸気圧
この単分子吸着量(Vm)から吸着分子数を求め、さらに分子占有断面積(吸着分子1ヶが試料の表面上で占める面積)をかけることにより、試料の表面積を求める。
S=Vm・A・s/M
S;表面積
A;アボガドロ数
s;窒素分子の占有断面積
M;標準状態における1モルのガスの体積
得られた表面積を試料質量で割り、比表面積(m2/g)を計算する。
【0027】
加えて、この金属酸化物の塩基量は、0.5〜3.0μmol/m2である。塩基点には、硫黄および窒素等の酸性物質が吸着するので、塩基量を調整することにより、硫黄および窒素等の酸性物質の吸着を調整することができる。塩基量がこの範囲より少ないと、塩基性が低く、十分な窒素酸化物(NOx)の浄化性能が得られないことがある。また塩基量がこの範囲より多いと、塩基性が高く、硫黄等の酸性物質が吸着し脱離し難くなることがある。塩基量がこの範囲にあることで、硫黄等の酸性物質による被毒を防止する効果が得られる。所定の塩基量を有する金属酸化物またはその前駆物質は、多くの化学品メーカーから市販されており、所望する塩基量を有するものを入手可能である。
【0028】
塩基量の測定は、昇温脱離法(Temperature−Programmed Desorption 以下TPDと略す)を用いて行うことができる。TPDとは、固体試料にプローブ分子(NH3、CO2等)を吸着させ、試料層の温度を連続的に上昇させることによって生じる脱離ガスを測定する方法である。塩基点の量や強度を調べるには、酸プローブ分子である二酸化炭素(CO2)を吸着させてTPDを行う(CO2−TPD)。
【0029】
金属酸化物は、チタニア、シリカ、またはアルミナ・ジルコニア・チタニア複合体を用いることができる。これらの金属酸化物またはその前駆物質であって、所定の比表面積および塩基量を有するものが、多くの化学品メーカーから市販されており、所望する比表面積および塩基量を有するものを入手可能である。
【0030】
本発明の一つの態様では、前記金属酸化物を前記白金族金属の担体としてもよい。担持方法としては、蒸発凝固法、含浸法、イオン交換法、吸着法、還元析出法等の触媒担持法、好適には蒸発乾固法によってPdやPtなどの触媒金属(白金族金属)を担持させることができる。蒸発乾固とは、溶媒を加熱蒸発させて溶質を析出乾固させる方法である。例えば、担体を含む溶液に白金族金属を加え、次に溶媒を加熱蒸発させることによって、担体に白金族金属を担持させることができる。
【0031】
本発明の一の態様である、前記金属酸化物を前記白金族金属の担体とした触媒では、硫黄蓄積量が減少する。また、このような触媒は、ストイキ雰囲気中でも硫化物が生成し難く、硫黄被毒による触媒活性低下を抑制できる。
【0032】
本発明の別の態様として、前記白金族金属を担持した担体と前記金属酸化物とを混合してもよい。すなわち、前記金属酸化物は、前記白金族金属の担体としては用いない。前記白金族金属は、別の担体に担持される。その白金族金属を担持した担体と、前記金属酸化物とを、混合して、排ガス浄化用触媒となす。図1を参照して説明すると、従来の一般的な触媒では、担体(セリアジルコニア等)に貴金属が担持されている。これに対して、本発明の触媒では、さらに、酸化物が混合されている。
【0033】
前記金属酸化物は、前記担体の等倍〜5倍量(質量比)で混合することができる。好ましくは、前記金属酸化物は、前記担体の3倍〜4倍量(質量比)で混合することができる。金属酸化物が担体の等倍未満(質量比)であると、従来の触媒、例えば白金担持セリア・ジルコニア触媒が有する、硫黄被毒による大幅な触媒活性の低下という問題を避けられない。金属酸化物が担体の5倍量超(質量比)であると、触媒中の白金族金属の相対量が低下し、十分なNOx除去性能を得られないことがある。
【0034】
混合方法は、白金族金属を担持した担体と、前記金属酸化物とが均一に混合されるものであれば、特に制限はされない。湿式混合は、均一な混合が期待できることから、好ましい。湿式混合では、適当な揮発性溶媒中に、混合対象物、(すなわち、金族金属を担持した担体、および金属酸化物)を投入して、溶液またはスラリーとし、次にこの溶液またはスラリーを乾燥させて、固形化された混合物を得る。湿式混合以外の方法として、粉体状態の白金族金属を担持した担体と、前記金属酸化物とを乳鉢内で混合してもよい。
【0035】
白金族金属を担持する担体(ここでの担体は前記金属酸化物とは異なる担体)は、セリア・ジルコニア複合体またはジルコニアであってもよい。ジルコニアは、熱伝導率が低く高融点を有し、且つ機械的性質に優れているため内燃機関の一部などによく用いられる材料である。セリアは、排ガス中の酸素濃度が高いときには酸素を吸蔵し、排ガス中の酸素濃度が低いときには酸素を放出する、いわゆる酸素吸放出能を有する材料である。セリア・ジルコニア複合体は、セリアに由来する酸素吸放出能を有し、ジルコニアに由来する安定性も兼ね備えた材料である。
【0036】
担体(ここでの担体は前記金属酸化物とは異なる担体)に前記白金族金属を担持する方法としては、蒸発凝固法、含浸法、イオン交換法、吸着法、還元析出法等の触媒担持法、好適には蒸発乾固法によってPdやPtなどの触媒金属(白金族金属)を担持させることができる。蒸発乾固とは、溶媒を加熱蒸発させて溶質を析出乾固させる方法である。例えば、担体を含む溶液に白金族金属を加え、次に溶媒を加熱蒸発させることによって、担体に白金族金属を担持させることができる。
【0037】
白金族金属を含む溶液を担体に含浸させ、次いで前記金属酸化物をこの溶液中に投入して、白金族金属を担持した担体と、前記金属酸化物との混合を行ってもよい。この混合は、湿式混合に該当し、白金族金属を担持した担体と、前記金属酸化物との均一な混合が期待できる。
【0038】
この態様で用いられる金属酸化物も、前述の金属酸化物、すなわち、比表面積が100〜150m2/g且つ塩基量が0.5〜3.0μmol/m2の金属酸化物であり、チタニア、シリカ、またはアルミナ・ジルコニア・チタニア複合体であってもよい。
【0039】
本発明の別の態様である、前記白金族金属を担持した担体と前記金属酸化物とを混合した触媒では、白金族金属を担持した担体の近傍に金属酸化物が配置される。このような触媒は、硫黄蓄積量が減少し、また硫黄存在下や高温環境下においても触媒活性を高く維持することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を用いて本発明について説明する。
【0041】
1.触媒の作製
触媒として、Aシリーズの触媒とBシリーズの触媒を作製した。Aシリーズの触媒は、金属酸化物を白金族金属の担体とした触媒である。Bシリーズの触媒は、別の担体に白金族金属を担持した後に、金属酸化物を混合した触媒である。各触媒は番号を付して呼称する。番号の1桁目で、AシリーズのものにAを、BシリーズのものにBを付している。番号の2桁目には、本発明の例と比較例を区別するために、比較例のものにCを付している。続いて、ハイフンと番号を付している。例えば、AC−1は、Aシリーズの比較例の1番目の触媒であることを示す。
【0042】
例A−1:Pd担持アルミナ−ジルコニア−チタニア複合酸化物(Al2O3:ZrO2:TiO2=50:40:10[wt%]、以下AZTと略す)触媒の作製
(1)ビーカー中でイオン交換水1000gに硝酸アルミニウム9水和物(ナカライテスク、純度98%、分子量375.13)を、AZTにされたときにAl2O3:ZrO2:TiO2=50:40:10[wt%]となるように溶解させ、硝酸アルミニウム溶液とした。
(2)(1)の硝酸アルミニウム溶液にオキシ硝酸ジルコニウム(ナカライテスク、純度95%、分子量267.26)、および四塩化チタン(ナカライテスク、純度98%、分子量189.68)を、AZTにされたときにAl2O3:ZrO2:TiO2=50:40:10[wt%]となるように加えた。
(3)(2)の溶液を攪拌しながら、過酸化水素(ナカライテスク、純度30〜35.5%、分子量34.01)154gを加えた。
(4)(3)の溶液にアンモニア水(ナカライテスク、濃度28%、分子量17.03)を加えてpHが9〜10になるようにpH調整し、濾過・洗浄後、得られた沈殿を、120℃の恒温炉で一晩熟成させた。
(5)(4)の熟成後の沈殿物を900℃で5時間焼成し、AZT粉末を得た。AZTにされたときに、Al2O3:ZrO2:TiO2=50:40:10[wt%]となるように、硝酸アルミニウム、オキシ硝酸ジルコニウムおよび四塩化チタンの投入量を調整しておいた。得られたAZTの比表面積は140m2/g、塩基量は3μmol/m2であった。
(6)ビーカー中のイオン交換水150gに、担体としての(5)のAZT粉末40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(AZT粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、蒸発乾固法(200℃)により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0043】
例A−2:Pt担持AZT触媒の作製
(6)の手順で硝酸パラジウムの代わりに硝酸プラチナ(8.6%)2.33g(AZT粉末の質量を基準として、Ptが0.5質量%となるように調製)を入れたことを除いて、例A−1の作製方法と同様の手順を行い、ペレットを得た。
【0044】
例A−3:Pd担持チタニア触媒の作製
(1)ビーカー中でイオン交換水100gに硫酸チタニル2水和物(富士チタン工業、79%)51.5gを溶解させ、硫酸チタニル2水和物溶液(濃度34%(飽和濃度))とした。
(2)(1)の溶液にアンモニア水(メーカー、純度、仕様をご教示ください)を加えてpHが9〜10になるようにpH調整し、濾過・洗浄後、得られた沈殿を、97℃の恒温炉で一晩熟成させた。
(3)(2)の熟成後の沈殿物を900℃で5時間焼成し、チタニア粉末を得た。得られたチタニア粉末の比表面積は102m2/g、塩基量は1μmol/m2であった。
(4)ビーカー中でイオン交換水150gに、担体としての(3)のチタニア粉末40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(チタニア粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、蒸発乾固法(200℃)により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0045】
例A−4:Pd担持シリカ触媒の作製
ビーカー中でイオン交換水150gに、担体としてナノテックSiO2粉末(シーアイ化成社製、比表面積110m2/g、塩基量0.5μmol/m2、純度99.9%、平均粒径25nm)40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(SiO2粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、蒸発乾固法(200℃)により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0046】
例AC−1:比較用Pd担持セリア−ジルコニア触媒の作製
ビーカー中でイオン交換水150gに、担体としてセリア−ジルコニア粉末(ローディア社製、比表面積50m2/g、塩基量25μmol/m2)40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(セリア−ジルコニア粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、蒸発乾固法(200℃)により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0047】
例AC−2:比較用Pd担持チタニア触媒の作製
ビーカー中でイオン交換水150gに、担体としてチタニア粉末(石原産業、比表面積45m2/g、塩基量1μmol/m2)40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(チタニア粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、蒸発乾固法(200℃)により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0048】
例AC−3:比較用Pd担持シリカ触媒の作製
ビーカー中でイオン交換水150gに、担体としてシリカ粉末(比表面積65m2/g、塩基量0.5μmol/m2)40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(シリカ粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、蒸発乾固法(200℃)により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0049】
例AC−4:比較用Pd担持アルミナ触媒の作製
ビーカー中でイオン交換水150gに、担体としてアルミナ粉末(グレース、比表面積112m2/g、塩基量12μmol/m2)40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(アルミナ粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、蒸発乾固法(200℃)により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0050】
例B−1:Pd担持セリア−ジルコニアとアルミナ−ジルコニア−チタニア複合酸化物(Al2O3:ZrO2:TiO2=50:40:10[wt%]、以下AZTと略す)との混合触媒の作製
(1)担体として、ローディア社製 セリア−ジルコニア複合体(CeO2:ZrO2:Y2O3:La2O3=50:40:5:5[wt%]、以下CZと略す)を用意した。
(2)例A−1の手順(1)〜(5)により、アルミナ−ジルコニア−チタニア複合酸化物(Al2O3:ZrO2:TiO2=50:40:10[wt%]、以下AZTと略す)を用意した。
(3)ビーカー中のイオン交換水150gに、担体としての(1)のCZ粉末40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(CZ粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、2時間攪拌し、PdをCZ担体に担持する。
(4)(3)の溶液に、CZ担体の4倍量のAZTを入れて、さらに2時間、200℃で加熱攪拌し、溶媒を蒸発させる。
(5)(4)の後で、ビーカーごと120℃の恒温炉に入れて、一晩乾燥させる。
(6)600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0051】
例B−2:Pd担持セリア−ジルコニアとチタニアとの混合触媒の作製
(1)担体として、CZを用意した。
(2)ビーカー中のイオン交換水150gに、担体としての(1)のCZ粉末40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(CZ粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、2時間攪拌し、PdをCZ担体に担持する。
(3)別のビーカー中でイオン交換水100gに硫酸チタニル2水和物(富士チタン工業、79%)51.5gを溶解させ、硫酸チタニル2水和物溶液(濃度34%(飽和濃度))とした。
(4)(3)の溶液にアンモニア水(メーカー、純度、仕様をご教示ください)を加えてpHが9〜10になるようにpH調整し、濾過・洗浄後、得られた沈殿を、97℃の恒温炉で一晩熟成させた。
(5)(4)の熟成後の沈殿物を900℃で5時間焼成し、チタニア粉末を得た。得られたチタニア粉末の比表面積は102m2/g、塩基量は1μmol/m2であった。
(6)(2)の溶液に、CZ担体の4倍量の(5)のチタニアを入れて、さらに2時間、200℃で加熱攪拌し、溶媒を蒸発させる。
(7)(6)の後で、ビーカーごと120℃の恒温炉に入れて、一晩乾燥させる。
(8)600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0052】
例B−3:Pd担持セリア−ジルコニアとナノテックSiO2粉末(シーアイ化成製)との混合触媒の作製
(1)担体として、CZを用意した。
(2)ビーカー中のイオン交換水150gに、担体としての(1)のCZ粉末40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(CZ粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、2時間攪拌し、PdをCZ担体に担持する。
(3)ナノテックSiO2粉末(シーアイ化成製)を用意した。このシリカ粉末の比表面積は110m2/g、塩基量は0.5μmol/m2であった。
(4)(2)の溶液に、CZ担体の4倍量の(3)のシリカを入れて、さらに2時間、200℃で加熱攪拌し、溶媒を蒸発させる。
(5)(4)の後で、ビーカーごと120℃の恒温炉に入れて、一晩乾燥させる。
(6)600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0053】
例B−4:Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(1倍量)との混合触媒の作製
例B−1の手順(4)において、CZ担体の4倍量のAZTの代わりに、CZ担体の1倍(等倍)量のAZTを入れたことを除いて、例B−1と同様の手順で、Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(1倍量)との混合触媒ペレットを得た。
【0054】
例B−5:Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(2倍量)との混合触媒の作製
例B−1の手順(4)において、CZ担体の4倍量のAZTの代わりに、CZ担体の2倍量のAZTを入れたことを除いて、例B−1と同様の手順で、Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(2倍量)との混合触媒ペレットを得た。
【0055】
例B−6:Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(3倍量)との混合触媒の作製
例B−1の手順(4)において、CZ担体の4倍量のAZTの代わりに、CZ担体の3倍量のAZTを入れたことを除いて、例B−1と同様の手順で、Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(3倍量)との混合触媒ペレットを得た。
【0056】
例B−7:Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(5倍量)との混合触媒の作製
例B−1の手順(4)において、CZ担体の4倍量のAZTの代わりに、CZ担体の5倍量のAZTを入れたことを除いて、例B−1と同様の手順で、Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(5倍量)との混合触媒ペレットを得た。
【0057】
例BC−1:比較用Pd担持CZ触媒の作製(混合なしケース)
(1)担体として、CZを用意した。
(2)ビーカー中のイオン交換水150gに、担体としての(1)のCZ粉末40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(CZ粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、2時間攪拌し、PdをCZ担体に担持する。
(3)(2)の溶液を、さらに2時間、200℃で加熱攪拌し、溶媒を蒸発させる。(本例では、酸化物との混合は行わない。)
(4)(3)の後で、ビーカーごと120℃の恒温炉に入れて、一晩乾燥させる。
(5)600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0058】
例BC−2:比較用Pd担持セリア−ジルコニアとチタニアとの混合触媒の作製
(1)担体として、CZを用意した。
(2)ビーカー中のイオン交換水150gに、担体としての(1)のCZ粉末40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(CZ粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、2時間攪拌し、PdをCZ担体に担持する。
(3)市販のチタニア粉末を用意した。このチタニア粉末の比表面積は45m2/g、塩基量は1μmol/m2であった。
(4)(2)の溶液に、CZ担体の4倍量の(3)のチタニア粉末を入れて、さらに2時間、200℃で加熱攪拌し、溶媒を蒸発させる。
(5)(4)の後で、ビーカーごと120℃の恒温炉に入れて、一晩乾燥させる。
(6)600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0059】
例BC−3:比較用Pd担持セリア−ジルコニアとシリカとの混合触媒の作製
(1)担体として、CZを用意した。
(2)ビーカー中のイオン交換水150gに、担体としての(1)のCZ粉末40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(CZ粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、2時間攪拌し、PdをCZ担体に担持する。
(3)市販のシリカ粉末を用意した。このチタニア粉末の比表面積は65m2/g、塩基量は0.5μmol/m2であった。
(4)(2)の溶液に、CZ担体の4倍量の(3)のシリカ粉末を入れて、さらに2時間、200℃で加熱攪拌し、溶媒を蒸発させる。
(5)(4)の後で、ビーカーごと120℃の恒温炉に入れて、一晩乾燥させる。
(6)600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0060】
例BC−4:比較用Pd担持セリア−ジルコニアとアルミナとの混合触媒の作製
(1)担体として、CZを用意した。
(2)ビーカー中のイオン交換水150gに、担体としての(1)のCZ粉末40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(CZ粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、2時間攪拌し、PdをCZ担体に担持する。
(3)市販のアルミナ粉末を用意した。このアルミナ粉末の比表面積は112m2/g、塩基量は12μmol/m2であった。
(4)(2)の溶液に、CZ担体の4倍量の(3)のアルミナ粉末を入れて、さらに2時間、200℃で加熱攪拌し、溶媒を蒸発させる。
(5)(4)の後で、ビーカーごと120℃の恒温炉に入れて、一晩乾燥させる。
(6)600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0061】
例BC−5:比較用Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(6倍量)との混合触媒の作製
例B−1の手順(4)において、CZ担体の4倍量のAZTの代わりに、CZ担体の6倍量のAZTを入れたことを除いて、例B−1と同様の手順で、比較用Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(6倍量)との混合触媒ペレットを得た。
【0062】
例BC−6:比較用Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(7倍量)との混合触媒の作製
例B−1の手順(4)において、CZ担体の4倍量のAZTの代わりに、CZ担体の7倍量のAZTを入れたことを除いて、例B−1と同様の手順で、比較用Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(7倍量)との混合触媒ペレットを得た。
【0063】
例BC−7:比較用Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(8倍量)との混合触媒の作製
例B−1の手順(4)において、CZ担体の4倍量のAZTの代わりに、CZ担体の8倍量のAZTを入れたことを除いて、例B−1と同様の手順で、比較用Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(8倍量)との混合触媒ペレットを得た。
【0064】
例BC−8:比較用Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(9倍量)との混合触媒の作製
例B−1の手順(4)において、CZ担体の4倍量のAZTの代わりに、CZ担体の9倍量のAZTを入れたことを除いて、例B−1と同様の手順で、比較用Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(9倍量)との混合触媒ペレットを得た。
【0065】
例BC−9:比較用Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(10倍量)との混合触媒の作製
例B−1の手順(4)において、CZ担体の4倍量のAZTの代わりに、CZ担体の10倍量のAZTを入れたことを除いて、例B−1と同様の手順で、比較用Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(10倍量)との混合触媒ペレットを得た。
【0066】
例BC−10:比較用Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(4倍量)との混合触媒の作製(物理的混合)
(1)担体として、CZを用意した。
(2)ビーカー中のイオン交換水150gに、担体としての(1)のCZ粉末40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(CZ粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、2時間攪拌し、PdをCZ担体に担持する。
(3)(2)の溶液を、さらに2時間、200℃で加熱攪拌し、溶媒を蒸発させる。
(4)(3)の後で、ビーカーごと120℃の恒温炉に入れて、一晩乾燥させて、Pd担持CZ粉末を得る。
(5)例A−1の手順(1)〜(5)により、アルミナ−ジルコニア−チタニア複合酸化物(Al2O3:ZrO2:TiO2=50:40:10[wt%]、以下AZTと略す)を用意した。
(6)(4)のPd担持CZ粉末に、CZ担体の4倍量の(5)のAZT粉末を加え、乳鉢内で物理的に30分間、混合した。
(7)(6)の混合後、600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0067】
2.Aシリーズ触媒の試験概要
(1)得られたAシリーズ触媒について、比表面積および塩基量を測定した。測定結果は、表3に示す。
(2)得られたAシリーズ触媒について、S被毒処理を行い、各触媒に蓄積されたS蓄積量を測定した。さらに、蓄積されたS分の塩形態(硫化物、亜硫酸塩、硫酸塩等のいずれであるか)についても測定を行った。測定結果は、図5〜7に示す。
(3)S被毒後のAシリーズ触媒を用いて、NOx浄化率を測定して、触媒ペレットのストイキ活性評価を行った。測定結果は、図8および表3に示す。
【0068】
3.Aシリーズ触媒の試験方法
比表面積は、発明を実施するための形態で説明したBET1点法により測定した。
【0069】
塩基量は、発明を実施するための形態で説明したCO2−TPDにより測定した。
【0070】
S被毒処理は、Aシリーズの触媒ペレット各3g(ペレット粒径1.0〜1.7mm)に対して表1に示す組成のガスを5L/分で被毒処理を行った。被毒処理の温度管理、暴露時間等を図2に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
S被毒処理を行った触媒のうち、実施例A−1触媒および比較例AC−1触媒のS蓄積量を、C-S分析(炭素・硫黄分析装置 EMIA−820W)にて測定した。
【0073】
さらに、S蓄積量測定を行った触媒中のS種をイオンクロマト分析にて測定した。
【0074】
S種について、イオンクロマト分析に加えて、触媒中軟X線XAFS(X線吸収微細構造:X-ray absorption fine structure)による分析も行った。XAFS測定は物質のX線吸収強度(吸光度)の波長依存性を測定することで、吸収元素、吸収原子の配位数や価数などの化学結合状態、吸収原子周りとその近傍原子の距離の分布など、物質の局所構造に関する情報を得ることができる測定手法である。
【0075】
S被毒処理を行った触媒についてNOx浄化率を測定して、触媒ペレットのストイキ活性評価を行った。NOx浄化率測定には、モデルガス装置を用いた。図3は、モデルガス装置でのNOx浄化率測定(ストイキ活性評価)の概略イメージを示したものである。
上記のS被毒処理を行った排ガス浄化用触媒について、各々のペレット3gをモデルガス装置に配置した。次に、表2に示す、モデルガスを、図4に示すパターンでモデルガス装置へ15L/分で流しながら、室温から150℃まで20℃/分で昇温し、150℃で5分間安定化し、150℃から500℃まで20℃/分で昇温し、500℃で3分間保持し、室温まで自然降温することによって行った。
触媒の入りガス中NOx濃度および、触媒の出ガス中NOx濃度をガス分析計(メーカー、型番、仕様、測定条件等分かる範囲でご教示ください。)で測定した。NOx浄化率(%)を(触媒の入りガス中NOx濃度−触媒の出ガス中NOx濃度)/(触媒の入りガス中NOx濃度)×100として求めた。
【0076】
【表2】
【0077】
4.Aシリーズ触媒の試験結果
Aシリーズ触媒の比表面積、塩基量およびNOX浄化率について、測定結果を表3に示す。表3より、実施例の触媒A−1〜A−4において、NOx浄化率が高いことが分かる。
【0078】
【表3】
【0079】
S被毒処理を行ったAシリーズ触媒(実施例A−1触媒および比較例AC−1触媒)に蓄積されたS蓄積量およびその塩形態についての測定結果を図5に示す。
図5から、実施例A−1触媒の硫黄蓄積量が、比較例AC−1触媒よりも少ないことが分かる。また、実施例A−1触媒には、硫黄分が亜硫酸として蓄積していた。すなわち、実施例A−1触媒では亜硫酸の生成が確認された。
蓄積されたS分の塩形態(硫化物、亜硫酸塩、硫酸塩等のいずれであるか)については、軟X線XAFSによる測定も行い、その結果を図6および7に示す。図6は比較例AC−1触媒についてのチャートであり、図7は実施例A−1触媒についてのチャートである。軟X線XAFSによる測定でも、実施例A−1触媒では、硫黄分が亜硫酸として蓄積していた。すなわち、実施例A−1触媒では亜硫酸の生成が確認された。なお、図6および図7のチャートにおいて、ピークの高さと各S種の量とは比例しないことに留意されたい。
【0080】
S被毒処理を行ったAシリーズ触媒を用いて、NOx浄化率を測定して、触媒ペレットのストイキ活性評価を行った。測定結果は、図8および表3に示す。図8および表3より、実施例の触媒A−1〜A−4において、NOx浄化率が高いことが分かる。
【0081】
前記金属酸化物を前記白金族金属の担体とした、本発明の触媒では、硫黄蓄積量が減少することが分かった。また、このような触媒は、ストイキ雰囲気中でも硫化物が生成し難いことも分かった。これにより、本発明の触媒は、硫黄被毒による触媒活性低下を抑制できたと考えられる。
【0082】
5.Bシリーズ触媒の試験概要
(1)得られたBシリーズ触媒について、比表面積および塩基量を測定した。測定結果は、表4に示す。
(2)得られたBシリーズ触媒について、高温耐久処理およびS被毒処理を行い、各触媒に蓄積されたS蓄積量を測定した。さらに、蓄積されたS分の分布状態も測定した。測定結果は、図10〜11に示す。
(3)高温耐久およびS被毒後のBシリーズ触媒を用いて、NOx浄化率を測定して、触媒ペレットのストイキ活性評価を行った。測定結果は、表4〜6および図12〜13に示す。表4は、混合する酸化物の性質(比表面積、塩基量)のNOx浄化率に対する影響を示している。表5は、混合する酸化物の混合量のNOx浄化率に対する影響を示している。表6は、混合する酸化物の混合方法のNOx浄化率に対する影響を示している。
【0083】
6.Bシリーズ触媒の試験方法
比表面積は、発明を実施するための形態で説明したBET1点法により測定した。
【0084】
塩基量は、発明を実施するための形態で説明したCO2−TPDにより測定した。
【0085】
高温耐久処理は、Bシリーズペレット各3g(ペレット粒径1.0〜1.7mm)に対して表1の(1)に示す組成のガスを5L/分で高温耐久処理を行った。高温耐久処理の温度管理、暴露時間等を図9に示す。高温耐久処理後に常温まで自然降温し、続いてS被毒処理を行った。
【0086】
S被毒処理は、Bシリーズペレット各3g(ペレット粒径1.0〜1.7mm)に対して表1に示す組成のガスを5L/分で被毒処理を行った。被毒処理の温度管理、暴露時間等を図9に示す。
【0087】
S被毒処理を行った触媒のうち、実施例B−1触媒および比較例BC−1触媒のS蓄積量を、C-S分析(炭素・硫黄分析装置 EMIA−820W)にて測定した。
【0088】
さらに、S蓄積量測定を行った触媒中でのSの蓄積(分布)状態を確認するために、当該触媒ペレットの断面についてEPMA(Electron probe micro analyzer)面分析を行った。
【0089】
高温耐久およびS被毒処理を行った触媒についてNOx浄化率を測定して、触媒ペレットのストイキ活性評価を行った。NOx浄化率測定は、Aシリーズ触媒の場合と同様の方法で行った。
【0090】
7.Bシリーズ触媒の試験結果
Bシリーズ触媒の比表面積、塩基量およびNOX浄化率について、測定結果を表4に示す。表4は、混合する酸化物の性質(比表面積、塩基量)のNOx浄化率に対する影響を示している。表4より、実施例の触媒B−1〜B−3において、NOx浄化率が高いことが分かる。すなわち、比表面積が100〜150m2/g且つ塩基量が0.5〜3.0μmol/m2の酸化物を混合した触媒が、NOx浄化において顕著な効果を示すことがわかる。
【0091】
【表4】
【0092】
表5は、混合する酸化物の混合量のNOx浄化率に対する影響を示している。また、図12は混合する酸化物の混合量とNOx浄化率の関係を表したグラフである。図13は、比較例触媒BC−1および実施例触媒B−1のNOx浄化率の関係を表したグラフである。
表5および図12、13より、酸化物混合量を担体の等倍〜5倍量(質量比)の実施例触媒B−1およびB−4〜B−7において、NOx浄化率が高いことが分かる。特に、酸化物混合量が担体の3倍〜4倍量(質量比)のときに、NOx浄化率が非常に高いことが分かる。
【0093】
【表5】
【0094】
表6は、混合する酸化物の混合方法のNOx浄化率に対する影響を示している。表6から、貴金属を担持した担体と酸化物とを湿式混合することにより、貴金属を担持した担体と酸化物との均一な混合状態が実現され、NOx浄化率が高くなっていると考えられる。
【0095】
【表6】
【0096】
高温耐久およびS被毒処理を行ったBシリーズ触媒(実施例B−1触媒および比較例BC−1触媒)に蓄積されたS蓄積量についての測定結果を図10に示す。
図10から、実施例B−1触媒の硫黄蓄積量が、比較例BC−1触媒よりも少ないことが分かる。
【0097】
蓄積されたS分の分布状態については、EPMAによる測定も行い、その結果を図11に示す。
図11の上段右側の画像が、実施例B−1触媒断面のS分布状況である。実施例B−1触媒断面の全面にわたって、S濃度は低く、本発明の触媒ではS蓄積が抑制されることが分かった。Sのレベル(画像右端の値)は、最大でも0.4程度であった。
図11の下段右側の画像が、比較例BC−1触媒断面のS分布状況である。比較例BC−1触媒断面において、局所的に高いS濃度(画像中の○で囲んだ部分)が見られる。そのSのレベル(画像右端の値)は、最大で2.0程度であった。また、図11の下段右側の画像は、同試料(比較例BC−1触媒)のPd分布状況である。局所的に高いS濃度を示す箇所は、Pdの存在している箇所の近傍であることも分かった。
【0098】
貴金属を担持した担体からなる従来の触媒は、S被毒し、それによって触媒活性が低下するという問題を有していた。これに対して、貴金属を担持した担体と酸化物とを混合した、本発明の触媒は、S蓄積を抑制できる上に、高温環境下を経ても高いNOx浄化率を維持できることが分かった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄被毒を抑制することができる排ガス浄化用触媒に関係する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車用エンジン等の内燃機関から排出される排気ガス中には、炭化水素系化合物(以下「HC」という。)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の物質(エミッション)が含まれている。これらの物質の排出量を減らすために、エンジンの空燃比等の、燃焼条件の最適化の他、排ガス中に含まれる物質を排ガス浄化触媒によって除去する方法が一般的に用いられている。
【0003】
この排ガス浄化触媒としては、アルミナ等の多孔質金属酸化物担体に、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)等の貴金属を担持した、いわゆる三元触媒が一般的である。この三元触媒は、CO及びHCを酸化するとともに、NOxをN2に還元する能力を有することが知られている。
【0004】
一方、近年、地球環境保護の観点から各国で排ガス規制は強化されており、また埋蔵量が少なく資源リスクの高い貴金属の使用を最小限に抑えることも求められている。自動車産業を持続的に繁栄させるには、これらの要求に応えることが必要である。
【0005】
触媒を使用するにあたり、触媒被毒は避けられない課題の一つである。被毒は、主にガソリン中に含まれる硫黄分によるもの、エンジンオイル中に含まれるジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)によるもの、またオクタン価向上剤としてガソリン中に添加されるメチルシクロペンタジエニルマンガントリカルボニル(MMT)によるものが挙げられる。
【0006】
硫黄分による被毒から触媒を回復させるには、エンジンの空燃比制御や温度制御で、SO2もしくはH2Sとして気化させて触媒から脱離させることが必要になる。一方、そのような制御を行うと浄化能の低下や触媒劣化が促進されるため、硫黄を根本的に蓄積し難い触媒を用いることが、硫黄による触媒被毒の回避につながる。
【0007】
従来技術として、特許文献1は、Ti−Zr複合担体を用いてSOx を吸着しにくくすることを提案している。また、特許文献2は、リン酸ジルコニウムからなる担体を用いて硫黄被毒を防止することを提案している。さらに、特許文献3は、遷移金属を担持した多孔質担体を用いて、SOx を付着しにくくすることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−192051号公報
【特許文献2】特開平8−281116号公報
【特許文献3】特開平8−224479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記先行技術文献に記載された改良触媒のいずれもストイキ雰囲気中で活性点上に硫化物を形成し触媒活性が低下することがあるという問題がある。また、これらの改良触媒のいずれも、硫黄の蓄積は低減可能であるが、ガソリンエンジンのような高温環境下で仕様する場合に、触媒活性が低下することがあるという問題もある。
【0010】
本発明は、硫化物の生成を抑制し、触媒活性を低下させることなく、硫黄被毒を回避することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、高温環境下においても触媒活性を維持しつつ、硫黄の蓄積を抑制して、硫黄被毒を回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明により、
(1)比表面積が100〜150m2/g且つ塩基量が0.5〜3.0μmol/m2の金属酸化物と、白金族金属と、を含んでなることを特徴とする排ガス浄化用触媒、
が提供される。
【0013】
また、本発明により、
(2)前記金属酸化物が、チタニア、シリカ、またはアルミナ・ジルコニア・チタニア複合体であること、を特徴とする(1)に記載の排ガス浄化用触媒、
が提供される。
【0014】
また、本発明により、
(3)前記金属酸化物を前記白金族金属の担体とすること、を特徴とする(1)または(2)に記載の排ガス浄化用触媒、
が提供される。
【0015】
また、本発明により、
(4)前記白金族金属を担持した担体と前記金属酸化物とを混合したこと、を特徴とする(1)または(2)に記載の排ガス浄化用触媒、
が提供される。
【0016】
また、本発明により、
(5)前記金属酸化物を前記担体の等倍〜5倍量(質量比)で混合したこと、を特徴とする(4)に記載の排ガス浄化用触媒、
が提供される。
【0017】
また、本発明により、
(6)混合方法が湿式混合であることを特徴とする(4)または(5)に記載の排ガス浄化用触媒、
が提供される。
【0018】
また、本発明により、
(7)前記担体が、セリア・ジルコニア複合体またはジルコニアであること、を特徴とする(4)〜(6)のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒、
が提供される。
【0019】
また、本発明により、
(8)前記白金族金属が白金またはパラジウムであること、を特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒、
が提供される。
【0020】
また、本発明により、
(9)前記白金族金属がパラジウムであること、を特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒、
が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の一般的な触媒と本発明の触媒(Bシリーズ触媒)の模式図である。
【図2】S被毒処理(Aシリーズ触媒)の温度管理、暴露時間等を示す図である。
【図3】モデルガス装置でのNOx浄化率測定(ストイキ活性評価)の概略イメージを示す図である。
【図4】触媒のストイキ活性評価を行う際の、温度管理パターンを示す図である。
【図5】Aシリーズ触媒に蓄積されたS蓄積量およびその塩形態についての測定結果を示す図である。
【図6】比較例AC−1触媒のS被毒状態についての軟X線XAFSチャートである。
【図7】実施例A−1触媒のS被毒状態についての軟X線XAFSチャートである。
【図8】S被毒処理を行ったAシリーズ触媒のNOx浄化率を示す図である。
【図9】高温耐久およびS被毒処理(Bシリーズ触媒)の温度管理、暴露時間等を示す図である。
【図10】Bシリーズ触媒に蓄積されたS蓄積量についての測定結果を示す図である。
【図11】Bシリーズ触媒に蓄積されたSの分布についてのEPMAチャートである。
【図12】Bシリーズ触媒において、混合する酸化物の混合量とNOx浄化率の関係を表したグラフである。
【図13】比較例触媒BC−1および実施例触媒B−1のNOx浄化率の関係を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の排ガス浄化用触媒は、比表面積が100〜150m2/g且つ塩基量が0.5〜3.0μmol/m2の金属酸化物と、白金族金属とを含んでなることを特徴とする。
【0023】
本発明の排ガス浄化用触媒は、白金族金属を含む。白金族金属とは、周期表8〜10族に属する元素のうち、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)および白金(Pt)の6元素をいう。白金族金属は、単体の密度が大きい(>12g/cm3)、化学反応性に乏しいなどの共通性がいちじるしく、CO及びHCを酸化するとともに、NOxをN2に還元する能力を有することが知られている。白金族金属の担持量は、0.3〜10wt%とすることが好ましい。この範囲より少ないと白金族金属の作用効果、すなわち浄化活性が十分でなく、この範囲より多くても効果が飽和して高価になるからである。この白金族金属は、一般的な方法により、例えば白金族金属を含む溶液に担体を浸漬し、乾燥させることによって担持させることができる。
【0024】
これらの白金族金属のうち、白金(Pt)またはパラジウム(Pd)が好ましい。白金(Pt)またはパラジウム(Pd)のNOx浄化率が、他の白金族金属に比べて高いためである。また、パラジウム(Pd)がさらに好ましい。同じ条件下では、パラジウム(Pd)のときのNOx浄化率が、白金(Pt)のときのそれよりも高くなるためである。
【0025】
本発明の排ガス浄化用触媒は、金属酸化物を含む。この金属酸化物の比表面積は、100〜150m2/gである。本発明の排ガス浄化触媒は、白金族金属担持型の触媒であり、白金族金属を高分散状態に保持し、ガスと有効に接触させるために、高比表面積を持つことが望ましいからである。所定の比表面積を有する金属酸化物またはその前駆物質は、多くの化学品メーカーから市販されており、所望する比表面積を有するものを入手可能である。
【0026】
比表面積の測定は、BET1点法により行うことができる。BET1点法では、液体窒素温度下における試料への窒素ガスの吸着量を実測し、BET式に従って、単原子層吸着量を求める。
Vm=V(1−P/Ps) (BET式)
V;吸着量(試料に吸着した窒素ガスの標準状態における体積
Vm;単分子層吸着量(吸着第1層だけの吸着量)
P;吸着平衡圧
Ps;吸着ガス(N2)の飽和蒸気圧
この単分子吸着量(Vm)から吸着分子数を求め、さらに分子占有断面積(吸着分子1ヶが試料の表面上で占める面積)をかけることにより、試料の表面積を求める。
S=Vm・A・s/M
S;表面積
A;アボガドロ数
s;窒素分子の占有断面積
M;標準状態における1モルのガスの体積
得られた表面積を試料質量で割り、比表面積(m2/g)を計算する。
【0027】
加えて、この金属酸化物の塩基量は、0.5〜3.0μmol/m2である。塩基点には、硫黄および窒素等の酸性物質が吸着するので、塩基量を調整することにより、硫黄および窒素等の酸性物質の吸着を調整することができる。塩基量がこの範囲より少ないと、塩基性が低く、十分な窒素酸化物(NOx)の浄化性能が得られないことがある。また塩基量がこの範囲より多いと、塩基性が高く、硫黄等の酸性物質が吸着し脱離し難くなることがある。塩基量がこの範囲にあることで、硫黄等の酸性物質による被毒を防止する効果が得られる。所定の塩基量を有する金属酸化物またはその前駆物質は、多くの化学品メーカーから市販されており、所望する塩基量を有するものを入手可能である。
【0028】
塩基量の測定は、昇温脱離法(Temperature−Programmed Desorption 以下TPDと略す)を用いて行うことができる。TPDとは、固体試料にプローブ分子(NH3、CO2等)を吸着させ、試料層の温度を連続的に上昇させることによって生じる脱離ガスを測定する方法である。塩基点の量や強度を調べるには、酸プローブ分子である二酸化炭素(CO2)を吸着させてTPDを行う(CO2−TPD)。
【0029】
金属酸化物は、チタニア、シリカ、またはアルミナ・ジルコニア・チタニア複合体を用いることができる。これらの金属酸化物またはその前駆物質であって、所定の比表面積および塩基量を有するものが、多くの化学品メーカーから市販されており、所望する比表面積および塩基量を有するものを入手可能である。
【0030】
本発明の一つの態様では、前記金属酸化物を前記白金族金属の担体としてもよい。担持方法としては、蒸発凝固法、含浸法、イオン交換法、吸着法、還元析出法等の触媒担持法、好適には蒸発乾固法によってPdやPtなどの触媒金属(白金族金属)を担持させることができる。蒸発乾固とは、溶媒を加熱蒸発させて溶質を析出乾固させる方法である。例えば、担体を含む溶液に白金族金属を加え、次に溶媒を加熱蒸発させることによって、担体に白金族金属を担持させることができる。
【0031】
本発明の一の態様である、前記金属酸化物を前記白金族金属の担体とした触媒では、硫黄蓄積量が減少する。また、このような触媒は、ストイキ雰囲気中でも硫化物が生成し難く、硫黄被毒による触媒活性低下を抑制できる。
【0032】
本発明の別の態様として、前記白金族金属を担持した担体と前記金属酸化物とを混合してもよい。すなわち、前記金属酸化物は、前記白金族金属の担体としては用いない。前記白金族金属は、別の担体に担持される。その白金族金属を担持した担体と、前記金属酸化物とを、混合して、排ガス浄化用触媒となす。図1を参照して説明すると、従来の一般的な触媒では、担体(セリアジルコニア等)に貴金属が担持されている。これに対して、本発明の触媒では、さらに、酸化物が混合されている。
【0033】
前記金属酸化物は、前記担体の等倍〜5倍量(質量比)で混合することができる。好ましくは、前記金属酸化物は、前記担体の3倍〜4倍量(質量比)で混合することができる。金属酸化物が担体の等倍未満(質量比)であると、従来の触媒、例えば白金担持セリア・ジルコニア触媒が有する、硫黄被毒による大幅な触媒活性の低下という問題を避けられない。金属酸化物が担体の5倍量超(質量比)であると、触媒中の白金族金属の相対量が低下し、十分なNOx除去性能を得られないことがある。
【0034】
混合方法は、白金族金属を担持した担体と、前記金属酸化物とが均一に混合されるものであれば、特に制限はされない。湿式混合は、均一な混合が期待できることから、好ましい。湿式混合では、適当な揮発性溶媒中に、混合対象物、(すなわち、金族金属を担持した担体、および金属酸化物)を投入して、溶液またはスラリーとし、次にこの溶液またはスラリーを乾燥させて、固形化された混合物を得る。湿式混合以外の方法として、粉体状態の白金族金属を担持した担体と、前記金属酸化物とを乳鉢内で混合してもよい。
【0035】
白金族金属を担持する担体(ここでの担体は前記金属酸化物とは異なる担体)は、セリア・ジルコニア複合体またはジルコニアであってもよい。ジルコニアは、熱伝導率が低く高融点を有し、且つ機械的性質に優れているため内燃機関の一部などによく用いられる材料である。セリアは、排ガス中の酸素濃度が高いときには酸素を吸蔵し、排ガス中の酸素濃度が低いときには酸素を放出する、いわゆる酸素吸放出能を有する材料である。セリア・ジルコニア複合体は、セリアに由来する酸素吸放出能を有し、ジルコニアに由来する安定性も兼ね備えた材料である。
【0036】
担体(ここでの担体は前記金属酸化物とは異なる担体)に前記白金族金属を担持する方法としては、蒸発凝固法、含浸法、イオン交換法、吸着法、還元析出法等の触媒担持法、好適には蒸発乾固法によってPdやPtなどの触媒金属(白金族金属)を担持させることができる。蒸発乾固とは、溶媒を加熱蒸発させて溶質を析出乾固させる方法である。例えば、担体を含む溶液に白金族金属を加え、次に溶媒を加熱蒸発させることによって、担体に白金族金属を担持させることができる。
【0037】
白金族金属を含む溶液を担体に含浸させ、次いで前記金属酸化物をこの溶液中に投入して、白金族金属を担持した担体と、前記金属酸化物との混合を行ってもよい。この混合は、湿式混合に該当し、白金族金属を担持した担体と、前記金属酸化物との均一な混合が期待できる。
【0038】
この態様で用いられる金属酸化物も、前述の金属酸化物、すなわち、比表面積が100〜150m2/g且つ塩基量が0.5〜3.0μmol/m2の金属酸化物であり、チタニア、シリカ、またはアルミナ・ジルコニア・チタニア複合体であってもよい。
【0039】
本発明の別の態様である、前記白金族金属を担持した担体と前記金属酸化物とを混合した触媒では、白金族金属を担持した担体の近傍に金属酸化物が配置される。このような触媒は、硫黄蓄積量が減少し、また硫黄存在下や高温環境下においても触媒活性を高く維持することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を用いて本発明について説明する。
【0041】
1.触媒の作製
触媒として、Aシリーズの触媒とBシリーズの触媒を作製した。Aシリーズの触媒は、金属酸化物を白金族金属の担体とした触媒である。Bシリーズの触媒は、別の担体に白金族金属を担持した後に、金属酸化物を混合した触媒である。各触媒は番号を付して呼称する。番号の1桁目で、AシリーズのものにAを、BシリーズのものにBを付している。番号の2桁目には、本発明の例と比較例を区別するために、比較例のものにCを付している。続いて、ハイフンと番号を付している。例えば、AC−1は、Aシリーズの比較例の1番目の触媒であることを示す。
【0042】
例A−1:Pd担持アルミナ−ジルコニア−チタニア複合酸化物(Al2O3:ZrO2:TiO2=50:40:10[wt%]、以下AZTと略す)触媒の作製
(1)ビーカー中でイオン交換水1000gに硝酸アルミニウム9水和物(ナカライテスク、純度98%、分子量375.13)を、AZTにされたときにAl2O3:ZrO2:TiO2=50:40:10[wt%]となるように溶解させ、硝酸アルミニウム溶液とした。
(2)(1)の硝酸アルミニウム溶液にオキシ硝酸ジルコニウム(ナカライテスク、純度95%、分子量267.26)、および四塩化チタン(ナカライテスク、純度98%、分子量189.68)を、AZTにされたときにAl2O3:ZrO2:TiO2=50:40:10[wt%]となるように加えた。
(3)(2)の溶液を攪拌しながら、過酸化水素(ナカライテスク、純度30〜35.5%、分子量34.01)154gを加えた。
(4)(3)の溶液にアンモニア水(ナカライテスク、濃度28%、分子量17.03)を加えてpHが9〜10になるようにpH調整し、濾過・洗浄後、得られた沈殿を、120℃の恒温炉で一晩熟成させた。
(5)(4)の熟成後の沈殿物を900℃で5時間焼成し、AZT粉末を得た。AZTにされたときに、Al2O3:ZrO2:TiO2=50:40:10[wt%]となるように、硝酸アルミニウム、オキシ硝酸ジルコニウムおよび四塩化チタンの投入量を調整しておいた。得られたAZTの比表面積は140m2/g、塩基量は3μmol/m2であった。
(6)ビーカー中のイオン交換水150gに、担体としての(5)のAZT粉末40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(AZT粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、蒸発乾固法(200℃)により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0043】
例A−2:Pt担持AZT触媒の作製
(6)の手順で硝酸パラジウムの代わりに硝酸プラチナ(8.6%)2.33g(AZT粉末の質量を基準として、Ptが0.5質量%となるように調製)を入れたことを除いて、例A−1の作製方法と同様の手順を行い、ペレットを得た。
【0044】
例A−3:Pd担持チタニア触媒の作製
(1)ビーカー中でイオン交換水100gに硫酸チタニル2水和物(富士チタン工業、79%)51.5gを溶解させ、硫酸チタニル2水和物溶液(濃度34%(飽和濃度))とした。
(2)(1)の溶液にアンモニア水(メーカー、純度、仕様をご教示ください)を加えてpHが9〜10になるようにpH調整し、濾過・洗浄後、得られた沈殿を、97℃の恒温炉で一晩熟成させた。
(3)(2)の熟成後の沈殿物を900℃で5時間焼成し、チタニア粉末を得た。得られたチタニア粉末の比表面積は102m2/g、塩基量は1μmol/m2であった。
(4)ビーカー中でイオン交換水150gに、担体としての(3)のチタニア粉末40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(チタニア粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、蒸発乾固法(200℃)により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0045】
例A−4:Pd担持シリカ触媒の作製
ビーカー中でイオン交換水150gに、担体としてナノテックSiO2粉末(シーアイ化成社製、比表面積110m2/g、塩基量0.5μmol/m2、純度99.9%、平均粒径25nm)40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(SiO2粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、蒸発乾固法(200℃)により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0046】
例AC−1:比較用Pd担持セリア−ジルコニア触媒の作製
ビーカー中でイオン交換水150gに、担体としてセリア−ジルコニア粉末(ローディア社製、比表面積50m2/g、塩基量25μmol/m2)40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(セリア−ジルコニア粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、蒸発乾固法(200℃)により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0047】
例AC−2:比較用Pd担持チタニア触媒の作製
ビーカー中でイオン交換水150gに、担体としてチタニア粉末(石原産業、比表面積45m2/g、塩基量1μmol/m2)40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(チタニア粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、蒸発乾固法(200℃)により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0048】
例AC−3:比較用Pd担持シリカ触媒の作製
ビーカー中でイオン交換水150gに、担体としてシリカ粉末(比表面積65m2/g、塩基量0.5μmol/m2)40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(シリカ粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、蒸発乾固法(200℃)により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0049】
例AC−4:比較用Pd担持アルミナ触媒の作製
ビーカー中でイオン交換水150gに、担体としてアルミナ粉末(グレース、比表面積112m2/g、塩基量12μmol/m2)40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(アルミナ粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、蒸発乾固法(200℃)により担持し、120℃で乾燥した後、600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0050】
例B−1:Pd担持セリア−ジルコニアとアルミナ−ジルコニア−チタニア複合酸化物(Al2O3:ZrO2:TiO2=50:40:10[wt%]、以下AZTと略す)との混合触媒の作製
(1)担体として、ローディア社製 セリア−ジルコニア複合体(CeO2:ZrO2:Y2O3:La2O3=50:40:5:5[wt%]、以下CZと略す)を用意した。
(2)例A−1の手順(1)〜(5)により、アルミナ−ジルコニア−チタニア複合酸化物(Al2O3:ZrO2:TiO2=50:40:10[wt%]、以下AZTと略す)を用意した。
(3)ビーカー中のイオン交換水150gに、担体としての(1)のCZ粉末40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(CZ粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、2時間攪拌し、PdをCZ担体に担持する。
(4)(3)の溶液に、CZ担体の4倍量のAZTを入れて、さらに2時間、200℃で加熱攪拌し、溶媒を蒸発させる。
(5)(4)の後で、ビーカーごと120℃の恒温炉に入れて、一晩乾燥させる。
(6)600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0051】
例B−2:Pd担持セリア−ジルコニアとチタニアとの混合触媒の作製
(1)担体として、CZを用意した。
(2)ビーカー中のイオン交換水150gに、担体としての(1)のCZ粉末40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(CZ粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、2時間攪拌し、PdをCZ担体に担持する。
(3)別のビーカー中でイオン交換水100gに硫酸チタニル2水和物(富士チタン工業、79%)51.5gを溶解させ、硫酸チタニル2水和物溶液(濃度34%(飽和濃度))とした。
(4)(3)の溶液にアンモニア水(メーカー、純度、仕様をご教示ください)を加えてpHが9〜10になるようにpH調整し、濾過・洗浄後、得られた沈殿を、97℃の恒温炉で一晩熟成させた。
(5)(4)の熟成後の沈殿物を900℃で5時間焼成し、チタニア粉末を得た。得られたチタニア粉末の比表面積は102m2/g、塩基量は1μmol/m2であった。
(6)(2)の溶液に、CZ担体の4倍量の(5)のチタニアを入れて、さらに2時間、200℃で加熱攪拌し、溶媒を蒸発させる。
(7)(6)の後で、ビーカーごと120℃の恒温炉に入れて、一晩乾燥させる。
(8)600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0052】
例B−3:Pd担持セリア−ジルコニアとナノテックSiO2粉末(シーアイ化成製)との混合触媒の作製
(1)担体として、CZを用意した。
(2)ビーカー中のイオン交換水150gに、担体としての(1)のCZ粉末40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(CZ粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、2時間攪拌し、PdをCZ担体に担持する。
(3)ナノテックSiO2粉末(シーアイ化成製)を用意した。このシリカ粉末の比表面積は110m2/g、塩基量は0.5μmol/m2であった。
(4)(2)の溶液に、CZ担体の4倍量の(3)のシリカを入れて、さらに2時間、200℃で加熱攪拌し、溶媒を蒸発させる。
(5)(4)の後で、ビーカーごと120℃の恒温炉に入れて、一晩乾燥させる。
(6)600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0053】
例B−4:Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(1倍量)との混合触媒の作製
例B−1の手順(4)において、CZ担体の4倍量のAZTの代わりに、CZ担体の1倍(等倍)量のAZTを入れたことを除いて、例B−1と同様の手順で、Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(1倍量)との混合触媒ペレットを得た。
【0054】
例B−5:Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(2倍量)との混合触媒の作製
例B−1の手順(4)において、CZ担体の4倍量のAZTの代わりに、CZ担体の2倍量のAZTを入れたことを除いて、例B−1と同様の手順で、Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(2倍量)との混合触媒ペレットを得た。
【0055】
例B−6:Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(3倍量)との混合触媒の作製
例B−1の手順(4)において、CZ担体の4倍量のAZTの代わりに、CZ担体の3倍量のAZTを入れたことを除いて、例B−1と同様の手順で、Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(3倍量)との混合触媒ペレットを得た。
【0056】
例B−7:Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(5倍量)との混合触媒の作製
例B−1の手順(4)において、CZ担体の4倍量のAZTの代わりに、CZ担体の5倍量のAZTを入れたことを除いて、例B−1と同様の手順で、Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(5倍量)との混合触媒ペレットを得た。
【0057】
例BC−1:比較用Pd担持CZ触媒の作製(混合なしケース)
(1)担体として、CZを用意した。
(2)ビーカー中のイオン交換水150gに、担体としての(1)のCZ粉末40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(CZ粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、2時間攪拌し、PdをCZ担体に担持する。
(3)(2)の溶液を、さらに2時間、200℃で加熱攪拌し、溶媒を蒸発させる。(本例では、酸化物との混合は行わない。)
(4)(3)の後で、ビーカーごと120℃の恒温炉に入れて、一晩乾燥させる。
(5)600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0058】
例BC−2:比較用Pd担持セリア−ジルコニアとチタニアとの混合触媒の作製
(1)担体として、CZを用意した。
(2)ビーカー中のイオン交換水150gに、担体としての(1)のCZ粉末40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(CZ粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、2時間攪拌し、PdをCZ担体に担持する。
(3)市販のチタニア粉末を用意した。このチタニア粉末の比表面積は45m2/g、塩基量は1μmol/m2であった。
(4)(2)の溶液に、CZ担体の4倍量の(3)のチタニア粉末を入れて、さらに2時間、200℃で加熱攪拌し、溶媒を蒸発させる。
(5)(4)の後で、ビーカーごと120℃の恒温炉に入れて、一晩乾燥させる。
(6)600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0059】
例BC−3:比較用Pd担持セリア−ジルコニアとシリカとの混合触媒の作製
(1)担体として、CZを用意した。
(2)ビーカー中のイオン交換水150gに、担体としての(1)のCZ粉末40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(CZ粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、2時間攪拌し、PdをCZ担体に担持する。
(3)市販のシリカ粉末を用意した。このチタニア粉末の比表面積は65m2/g、塩基量は0.5μmol/m2であった。
(4)(2)の溶液に、CZ担体の4倍量の(3)のシリカ粉末を入れて、さらに2時間、200℃で加熱攪拌し、溶媒を蒸発させる。
(5)(4)の後で、ビーカーごと120℃の恒温炉に入れて、一晩乾燥させる。
(6)600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0060】
例BC−4:比較用Pd担持セリア−ジルコニアとアルミナとの混合触媒の作製
(1)担体として、CZを用意した。
(2)ビーカー中のイオン交換水150gに、担体としての(1)のCZ粉末40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(CZ粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、2時間攪拌し、PdをCZ担体に担持する。
(3)市販のアルミナ粉末を用意した。このアルミナ粉末の比表面積は112m2/g、塩基量は12μmol/m2であった。
(4)(2)の溶液に、CZ担体の4倍量の(3)のアルミナ粉末を入れて、さらに2時間、200℃で加熱攪拌し、溶媒を蒸発させる。
(5)(4)の後で、ビーカーごと120℃の恒温炉に入れて、一晩乾燥させる。
(6)600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0061】
例BC−5:比較用Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(6倍量)との混合触媒の作製
例B−1の手順(4)において、CZ担体の4倍量のAZTの代わりに、CZ担体の6倍量のAZTを入れたことを除いて、例B−1と同様の手順で、比較用Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(6倍量)との混合触媒ペレットを得た。
【0062】
例BC−6:比較用Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(7倍量)との混合触媒の作製
例B−1の手順(4)において、CZ担体の4倍量のAZTの代わりに、CZ担体の7倍量のAZTを入れたことを除いて、例B−1と同様の手順で、比較用Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(7倍量)との混合触媒ペレットを得た。
【0063】
例BC−7:比較用Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(8倍量)との混合触媒の作製
例B−1の手順(4)において、CZ担体の4倍量のAZTの代わりに、CZ担体の8倍量のAZTを入れたことを除いて、例B−1と同様の手順で、比較用Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(8倍量)との混合触媒ペレットを得た。
【0064】
例BC−8:比較用Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(9倍量)との混合触媒の作製
例B−1の手順(4)において、CZ担体の4倍量のAZTの代わりに、CZ担体の9倍量のAZTを入れたことを除いて、例B−1と同様の手順で、比較用Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(9倍量)との混合触媒ペレットを得た。
【0065】
例BC−9:比較用Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(10倍量)との混合触媒の作製
例B−1の手順(4)において、CZ担体の4倍量のAZTの代わりに、CZ担体の10倍量のAZTを入れたことを除いて、例B−1と同様の手順で、比較用Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(10倍量)との混合触媒ペレットを得た。
【0066】
例BC−10:比較用Pd担持セリア−ジルコニアとAZT(4倍量)との混合触媒の作製(物理的混合)
(1)担体として、CZを用意した。
(2)ビーカー中のイオン交換水150gに、担体としての(1)のCZ粉末40g、および硝酸パラジウム(8.2%)2.44g(CZ粉末の質量を基準として、Pdが0.5質量%となるように調製)を入れ、2時間攪拌し、PdをCZ担体に担持する。
(3)(2)の溶液を、さらに2時間、200℃で加熱攪拌し、溶媒を蒸発させる。
(4)(3)の後で、ビーカーごと120℃の恒温炉に入れて、一晩乾燥させて、Pd担持CZ粉末を得る。
(5)例A−1の手順(1)〜(5)により、アルミナ−ジルコニア−チタニア複合酸化物(Al2O3:ZrO2:TiO2=50:40:10[wt%]、以下AZTと略す)を用意した。
(6)(4)のPd担持CZ粉末に、CZ担体の4倍量の(5)のAZT粉末を加え、乳鉢内で物理的に30分間、混合した。
(7)(6)の混合後、600℃で2時間焼成し、ペレットとした。
【0067】
2.Aシリーズ触媒の試験概要
(1)得られたAシリーズ触媒について、比表面積および塩基量を測定した。測定結果は、表3に示す。
(2)得られたAシリーズ触媒について、S被毒処理を行い、各触媒に蓄積されたS蓄積量を測定した。さらに、蓄積されたS分の塩形態(硫化物、亜硫酸塩、硫酸塩等のいずれであるか)についても測定を行った。測定結果は、図5〜7に示す。
(3)S被毒後のAシリーズ触媒を用いて、NOx浄化率を測定して、触媒ペレットのストイキ活性評価を行った。測定結果は、図8および表3に示す。
【0068】
3.Aシリーズ触媒の試験方法
比表面積は、発明を実施するための形態で説明したBET1点法により測定した。
【0069】
塩基量は、発明を実施するための形態で説明したCO2−TPDにより測定した。
【0070】
S被毒処理は、Aシリーズの触媒ペレット各3g(ペレット粒径1.0〜1.7mm)に対して表1に示す組成のガスを5L/分で被毒処理を行った。被毒処理の温度管理、暴露時間等を図2に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
S被毒処理を行った触媒のうち、実施例A−1触媒および比較例AC−1触媒のS蓄積量を、C-S分析(炭素・硫黄分析装置 EMIA−820W)にて測定した。
【0073】
さらに、S蓄積量測定を行った触媒中のS種をイオンクロマト分析にて測定した。
【0074】
S種について、イオンクロマト分析に加えて、触媒中軟X線XAFS(X線吸収微細構造:X-ray absorption fine structure)による分析も行った。XAFS測定は物質のX線吸収強度(吸光度)の波長依存性を測定することで、吸収元素、吸収原子の配位数や価数などの化学結合状態、吸収原子周りとその近傍原子の距離の分布など、物質の局所構造に関する情報を得ることができる測定手法である。
【0075】
S被毒処理を行った触媒についてNOx浄化率を測定して、触媒ペレットのストイキ活性評価を行った。NOx浄化率測定には、モデルガス装置を用いた。図3は、モデルガス装置でのNOx浄化率測定(ストイキ活性評価)の概略イメージを示したものである。
上記のS被毒処理を行った排ガス浄化用触媒について、各々のペレット3gをモデルガス装置に配置した。次に、表2に示す、モデルガスを、図4に示すパターンでモデルガス装置へ15L/分で流しながら、室温から150℃まで20℃/分で昇温し、150℃で5分間安定化し、150℃から500℃まで20℃/分で昇温し、500℃で3分間保持し、室温まで自然降温することによって行った。
触媒の入りガス中NOx濃度および、触媒の出ガス中NOx濃度をガス分析計(メーカー、型番、仕様、測定条件等分かる範囲でご教示ください。)で測定した。NOx浄化率(%)を(触媒の入りガス中NOx濃度−触媒の出ガス中NOx濃度)/(触媒の入りガス中NOx濃度)×100として求めた。
【0076】
【表2】
【0077】
4.Aシリーズ触媒の試験結果
Aシリーズ触媒の比表面積、塩基量およびNOX浄化率について、測定結果を表3に示す。表3より、実施例の触媒A−1〜A−4において、NOx浄化率が高いことが分かる。
【0078】
【表3】
【0079】
S被毒処理を行ったAシリーズ触媒(実施例A−1触媒および比較例AC−1触媒)に蓄積されたS蓄積量およびその塩形態についての測定結果を図5に示す。
図5から、実施例A−1触媒の硫黄蓄積量が、比較例AC−1触媒よりも少ないことが分かる。また、実施例A−1触媒には、硫黄分が亜硫酸として蓄積していた。すなわち、実施例A−1触媒では亜硫酸の生成が確認された。
蓄積されたS分の塩形態(硫化物、亜硫酸塩、硫酸塩等のいずれであるか)については、軟X線XAFSによる測定も行い、その結果を図6および7に示す。図6は比較例AC−1触媒についてのチャートであり、図7は実施例A−1触媒についてのチャートである。軟X線XAFSによる測定でも、実施例A−1触媒では、硫黄分が亜硫酸として蓄積していた。すなわち、実施例A−1触媒では亜硫酸の生成が確認された。なお、図6および図7のチャートにおいて、ピークの高さと各S種の量とは比例しないことに留意されたい。
【0080】
S被毒処理を行ったAシリーズ触媒を用いて、NOx浄化率を測定して、触媒ペレットのストイキ活性評価を行った。測定結果は、図8および表3に示す。図8および表3より、実施例の触媒A−1〜A−4において、NOx浄化率が高いことが分かる。
【0081】
前記金属酸化物を前記白金族金属の担体とした、本発明の触媒では、硫黄蓄積量が減少することが分かった。また、このような触媒は、ストイキ雰囲気中でも硫化物が生成し難いことも分かった。これにより、本発明の触媒は、硫黄被毒による触媒活性低下を抑制できたと考えられる。
【0082】
5.Bシリーズ触媒の試験概要
(1)得られたBシリーズ触媒について、比表面積および塩基量を測定した。測定結果は、表4に示す。
(2)得られたBシリーズ触媒について、高温耐久処理およびS被毒処理を行い、各触媒に蓄積されたS蓄積量を測定した。さらに、蓄積されたS分の分布状態も測定した。測定結果は、図10〜11に示す。
(3)高温耐久およびS被毒後のBシリーズ触媒を用いて、NOx浄化率を測定して、触媒ペレットのストイキ活性評価を行った。測定結果は、表4〜6および図12〜13に示す。表4は、混合する酸化物の性質(比表面積、塩基量)のNOx浄化率に対する影響を示している。表5は、混合する酸化物の混合量のNOx浄化率に対する影響を示している。表6は、混合する酸化物の混合方法のNOx浄化率に対する影響を示している。
【0083】
6.Bシリーズ触媒の試験方法
比表面積は、発明を実施するための形態で説明したBET1点法により測定した。
【0084】
塩基量は、発明を実施するための形態で説明したCO2−TPDにより測定した。
【0085】
高温耐久処理は、Bシリーズペレット各3g(ペレット粒径1.0〜1.7mm)に対して表1の(1)に示す組成のガスを5L/分で高温耐久処理を行った。高温耐久処理の温度管理、暴露時間等を図9に示す。高温耐久処理後に常温まで自然降温し、続いてS被毒処理を行った。
【0086】
S被毒処理は、Bシリーズペレット各3g(ペレット粒径1.0〜1.7mm)に対して表1に示す組成のガスを5L/分で被毒処理を行った。被毒処理の温度管理、暴露時間等を図9に示す。
【0087】
S被毒処理を行った触媒のうち、実施例B−1触媒および比較例BC−1触媒のS蓄積量を、C-S分析(炭素・硫黄分析装置 EMIA−820W)にて測定した。
【0088】
さらに、S蓄積量測定を行った触媒中でのSの蓄積(分布)状態を確認するために、当該触媒ペレットの断面についてEPMA(Electron probe micro analyzer)面分析を行った。
【0089】
高温耐久およびS被毒処理を行った触媒についてNOx浄化率を測定して、触媒ペレットのストイキ活性評価を行った。NOx浄化率測定は、Aシリーズ触媒の場合と同様の方法で行った。
【0090】
7.Bシリーズ触媒の試験結果
Bシリーズ触媒の比表面積、塩基量およびNOX浄化率について、測定結果を表4に示す。表4は、混合する酸化物の性質(比表面積、塩基量)のNOx浄化率に対する影響を示している。表4より、実施例の触媒B−1〜B−3において、NOx浄化率が高いことが分かる。すなわち、比表面積が100〜150m2/g且つ塩基量が0.5〜3.0μmol/m2の酸化物を混合した触媒が、NOx浄化において顕著な効果を示すことがわかる。
【0091】
【表4】
【0092】
表5は、混合する酸化物の混合量のNOx浄化率に対する影響を示している。また、図12は混合する酸化物の混合量とNOx浄化率の関係を表したグラフである。図13は、比較例触媒BC−1および実施例触媒B−1のNOx浄化率の関係を表したグラフである。
表5および図12、13より、酸化物混合量を担体の等倍〜5倍量(質量比)の実施例触媒B−1およびB−4〜B−7において、NOx浄化率が高いことが分かる。特に、酸化物混合量が担体の3倍〜4倍量(質量比)のときに、NOx浄化率が非常に高いことが分かる。
【0093】
【表5】
【0094】
表6は、混合する酸化物の混合方法のNOx浄化率に対する影響を示している。表6から、貴金属を担持した担体と酸化物とを湿式混合することにより、貴金属を担持した担体と酸化物との均一な混合状態が実現され、NOx浄化率が高くなっていると考えられる。
【0095】
【表6】
【0096】
高温耐久およびS被毒処理を行ったBシリーズ触媒(実施例B−1触媒および比較例BC−1触媒)に蓄積されたS蓄積量についての測定結果を図10に示す。
図10から、実施例B−1触媒の硫黄蓄積量が、比較例BC−1触媒よりも少ないことが分かる。
【0097】
蓄積されたS分の分布状態については、EPMAによる測定も行い、その結果を図11に示す。
図11の上段右側の画像が、実施例B−1触媒断面のS分布状況である。実施例B−1触媒断面の全面にわたって、S濃度は低く、本発明の触媒ではS蓄積が抑制されることが分かった。Sのレベル(画像右端の値)は、最大でも0.4程度であった。
図11の下段右側の画像が、比較例BC−1触媒断面のS分布状況である。比較例BC−1触媒断面において、局所的に高いS濃度(画像中の○で囲んだ部分)が見られる。そのSのレベル(画像右端の値)は、最大で2.0程度であった。また、図11の下段右側の画像は、同試料(比較例BC−1触媒)のPd分布状況である。局所的に高いS濃度を示す箇所は、Pdの存在している箇所の近傍であることも分かった。
【0098】
貴金属を担持した担体からなる従来の触媒は、S被毒し、それによって触媒活性が低下するという問題を有していた。これに対して、貴金属を担持した担体と酸化物とを混合した、本発明の触媒は、S蓄積を抑制できる上に、高温環境下を経ても高いNOx浄化率を維持できることが分かった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
比表面積が100〜150m2/g且つ塩基量が0.5〜3.0μmol/m2の金属酸化物と、白金族金属と、を含んでなることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記金属酸化物が、チタニア、シリカ、またはアルミナ・ジルコニア・チタニア複合体であること、を特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記金属酸化物を前記白金族金属の担体とすること、を特徴とする請求項1または2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記白金族金属を担持した担体と前記金属酸化物とを混合したこと、を特徴とする請求項1または2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
前記金属酸化物を前記担体の等倍〜5倍量(質量比)で混合したこと、を特徴とする請求項4に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
混合方法が湿式混合であることを特徴とする請求項4または5に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
前記担体が、セリア・ジルコニア複合体またはジルコニアであること、を特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項8】
前記白金族金属が白金またはパラジウムであること、を特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項9】
前記白金族金属がパラジウムであること、を特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項1】
比表面積が100〜150m2/g且つ塩基量が0.5〜3.0μmol/m2の金属酸化物と、白金族金属と、を含んでなることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記金属酸化物が、チタニア、シリカ、またはアルミナ・ジルコニア・チタニア複合体であること、を特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記金属酸化物を前記白金族金属の担体とすること、を特徴とする請求項1または2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記白金族金属を担持した担体と前記金属酸化物とを混合したこと、を特徴とする請求項1または2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
前記金属酸化物を前記担体の等倍〜5倍量(質量比)で混合したこと、を特徴とする請求項4に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
混合方法が湿式混合であることを特徴とする請求項4または5に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
前記担体が、セリア・ジルコニア複合体またはジルコニアであること、を特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項8】
前記白金族金属が白金またはパラジウムであること、を特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項9】
前記白金族金属がパラジウムであること、を特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図11】
【公開番号】特開2012−71235(P2012−71235A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216792(P2010−216792)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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