説明

排ガス浄化触媒及び排ガス浄化触媒の製造方法

【課題】活性金属の必要量が少なく、高温の条件下で長期間使用しても活性が低下し難い排ガス浄化触媒及びその製造方法を提供する。
【解決手段】排ガス浄化触媒は担体に活性金属を担持して構成され、この担体は、第1の細孔径領域と、この第1の細孔径領域よりも細孔径の大きな第2の細孔径領域とに細孔径分布のピークを有するバイモーダル構造のBaAl1219と、ZrOとを含むと共に、BaAl1219に対するZrOの質量比が1:0.1〜1:20の範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車排ガス中の有害物質を除去する排ガス浄化触媒及びこの排ガス浄化触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の排ガス中に含まれる窒素酸化物や一酸化炭素、炭化水素は環境規制の対象となっており、三元触媒(以下、排ガス浄化触媒という)はこれらの物質を分解して排ガスを浄化してから大気へと排出する役割を果たしている。排ガス浄化触媒は、例えばアルミナなどの担体に、白金(Pt)やパラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)などの貴金属を活性金属として担持させたものが一般的に知られている。この排ガス浄化触媒は、例えばエンジンの出口部付近に配置され、高温の排ガスと接触させることにより汚染物質を分解する活性を得ている。
【0003】
一般的に、排ガス浄化触媒は例えば100m/g以上もの比表面積を有する担体の表面に粒子径の小さな活性金属を均一に分散担持することにより、汚染物質と活性金属との接触効率を向上させるといった構造的な効果を利用して触媒の活性を高めている。ところが排ガス浄化触媒は、高温の排ガスと長期間接触すると、担体の比表面積が低下したり、活性金属が凝集して粒子径が大きくなったりするため、次第にこうした構造的な効果が失われて触媒の活性が低下してしまうシンタリングと呼ばれる現象が知られている。
【0004】
このため従来の排ガス浄化触媒は、シンタリングによる活性の低下を見越して、使用開始時の必要量よりも例えば3%程度多い活性金属を担持しておくことにより、構造的な効果が失われた後も必要な活性を維持する方策が採られてきた。しかしながらこの方策は、使用開始後、当面の期間中に必要な量以上の活性金属を触媒に担持する必要があるため、触媒コストへの影響が大きく、排ガス処理システムを高額にする要因となっていた。
【0005】
特許文献1には、スピネル構造を持つBaAlを含む排ガス浄化触媒が記載されており、当該触媒は高温雰囲気下で使用しても活性金属が凝集しにくい点と、それでも活性が低下してしまった場合には活性金属を再分散させる再生処理が可能である点とに特徴を有している。
【0006】
特許文献2には、触媒作用を有する貴金属と、この貴金属が担持される第1の酸化物と、この触媒貴金属が担持された第1の酸化物を包む第2の酸化物とを少なくとも有する触媒粒子ユニットを備え、この触媒粒子ユニットが複数個集まってなる触媒粉末中に、助触媒成分である遷移元素、アルカリ土類金属元素、アルカリ金属元素、希土類元素から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする排気ガス浄化触媒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−23482号公報:第0017段落〜第0018段落
【特許文献2】特開2008−168192号公報:請求項1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、活性金属の必要量が少なく、高温の条件下で長期間使用しても活性が低下し難い排ガス浄化触媒及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願における第1の発明は、第1の細孔径領域と、この第1の細孔径領域よりも細孔径の大きな第2の細孔径領域とに細孔径分布のピークを有するバイモーダル構造のBaAl1219と、ZrOと、を含む担体であって、BaAl1219に対するZrOの質量比が1:0.1〜1:20の範囲にある担体に活性金属が担持されていることを特徴とする排ガス浄化触媒である。
【0010】
本出願における第2の発明は、前記細孔径分布において、第1の細孔径領域は3.4nm以上、5.3nm以下であり、第2の細孔径領域は54nm以上、200nm以下であることを特徴とする前記排ガス浄化触媒である。
本出願における第3の発明は、前記排ガス浄化触媒の比表面積が0.1m/g以上、110m/g以下の範囲であることを特徴とする前記排ガス浄化触媒である。
本出願における第4の発明は、前記活性金属は、Pt、Pd、Rh、Ru、Os、Ir、Au及びAgからなる貴金属群から選ばれる少なくとも1種類以上の活性金属であることを特徴とする前記排ガス浄化触媒である。
本出願における第5の発明は、前記活性金属の担持量が、前記排ガス浄化触媒重量の0.01重量%以上、2.0重量%以下の範囲であることを特徴とする前記排ガス浄化触媒である。
【0011】
本出願における第6の発明は、次の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とする排ガス浄化触媒の製造方法である。
(1)アルミニウム含有化合物、第2の細孔径領域に細孔径分布のピークを有するBaAl1219、BaAl及び有機酸を含む混合物であって、この混合物中のアルミニウムとバリウムのモル比が1:0.02〜1:0.1の範囲であり、アルミニウムと有機酸のモル比が1:0.1〜1:0.5の範囲であるものを700℃以上、1300℃以下の温度で焼成し、第1の細孔径領域と、この第1の細孔径領域よりも細孔径の大きな前記第2の細孔径領域とに細孔径分布のピークを有するバイモーダル構造のBaAl1219を調製する工程。
(2)このバイモーダル構造のBaAl1219とZrOとを混合して担体を調製する工程。
(3)前記担体にPt、Pd、Rh、Ru、Os、Ir、Au及びAgからなる貴金属群から選ばれる少なくとも1種類以上の活性金属を担持させる工程。
【0012】
本出願における第7の発明は、次の[1]及び[2]の工程を含むことを特徴とする排ガス浄化触媒の製造方法である。
[1]第1の細孔径領域と、この第1の細孔径領域よりも細孔径の大きな第2の細孔径領域とに細孔径分布のピークを有するバイモーダル構造のBaAl1219と、ZrOとを含む担体を調製する工程。
[2]前工程で得られた担体に活性金属溶液を含浸させ、350〜550℃で焼成させて、前記担体に活性金属を担持する工程。
【0013】
本出願における第8の発明は、前記バイモーダル構造のBaAl1219が次の[1]〜[4]の工程を含む製造方法により得られたものであることを特徴とする排ガス浄化触媒の製造方法である。
[1]BaAl、アルミニウム含有化合物及び有機溶媒からなる分散液を湿式処理することにより第1のスラリーを調製し、該第1のスラリーを1200〜1600℃にて焼成することにより、第2の細孔径領域に細孔径分布のピークを有するBaAl1219を調製する工程。
[2]前工程[1]で得られたBaAl1219と有機酸水溶液の混合物を湿式粉砕処理し、第2のスラリーを調製する工程。
[3]BaAlとアルミニウム含有化合物に有機酸水溶液を加え、pH3.0〜4.0の混合液を調整し、該混合液を湿式粉砕処理して第3のスラリーを調製する工程。
[4]前記第2のスラリーと第3のスラリーを混合し、700〜1300℃で焼成して、前記バイモーダル構造のBaAl1219を調製する工程。
【0014】
本出願における第9の発明は、前記アルミニウム含有化合物は、アルミニウム酸化物、アルミニウム水酸化物、アルミニウム硝酸塩、アルミニウム塩化物、アルミニウム酢酸塩、アルミニウム炭酸塩、アルミニウム錯塩、アルミニウムアルコキシドからなるアルミニウム源群から選択される少なくとも1種類以上のアルミニウム源を含むことを特徴とする前記排ガス浄化触媒の製造方法である。
本出願における第10の発明は、前記工程[1]で使用するアルミニウム含有化合物が結晶性アルミナからなるアルミニウム酸化物であることを特徴とする前記排ガス浄化触媒の製造方法である。
本出願における第11の発明は、前記工程[3]で使用するアルミニウム含有化合物がアルミニウム水酸化物であることを特徴とする前記排ガス浄化触媒の製造方法である。
本出願における第12の発明は、前記細孔径分布において、第1の細孔径領域は3.4nm以上、5.3nm以下であり、第2の細孔径領域は54nm以上、200nm以下であることを特徴とする前記排ガス浄化触媒の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バイモーダルな細孔径分布を有するBaAl1219にZrOを質量比で1:0.1〜1:20の範囲で混合して得た担体に活性金属を担持することにより活性金属の活性が向上するものと推測される。そして担体の比表面積が低下したり、担体上で活性金属が凝集したりするシンタリングが進行した場合であっても、従来の排ガス浄化触媒に比べて高い触媒活性を維持することができる。この結果、シンタリングの進行に伴う活性の低下を見越して使用開始時に必要量以上の活性金属を担持するといった方策を採る必要がないか、必要があったとしてもその担持量を削減することが可能となり触媒コストの低減に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実験に使用したモデルガスの組成を示す表である。
【図2】実施例及び比較例に用いるBaAl1219の細孔径分布を示す説明図である。
【図3】担体調製の各工程で得られたBaAl1219の細孔容積及び比表面積を示す表である。
【図4】実施例及び比較例に係る排ガス浄化触媒のX線回折パターンである。
【図5】実施例及び比較例等の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施の形態に係わる排ガス浄化触媒は、所定の細孔径分布を備えたBaAl1219及びZrOを含有する担体に活性金属を担持してなるものである。担体中にBaAl1219及びZrOが共存することにより、排ガス浄化触媒の高温耐久性が向上し、高温雰囲気下においても優れた触媒性能(排ガス浄化効果)を示すことができる。本発明に係わる排ガス浄化触媒について、以下に説明する。
【0018】
[排ガス浄化触媒の構成]
既述のように排ガス浄化触媒を構成する担体は、少なくともBaAl1219及びZrOを含有しており、その含有比は、担体中におけるBaAl1219の質量基準の含有割合に対して、ZrOの質量基準の含有割合の比、即ち含有量の質量比が1:0.1〜1:20の範囲であことが好ましく、さらに好ましくは、1:0.6〜1:5.4の範囲が好適である。
【0019】
BaAl1219とZrOとを含む担体に活性金属を担持してなる排ガス浄化触媒が、高温での良好な耐久性を示す作用機構の詳細については明らかではないが、ZrOを含んだ担体に貴金属からなる活性金属を担持すると、ZrOは当該活性金属に対して、助触媒としての役割を果たし、さらにBaAl1219とZrOとが共存することによる相互作用により、担体自体の耐久性が向上したものと推察される。
【0020】
さらに本排ガス浄化触媒の担体のひとつであるBaAl1219は、原料段階においては、細孔径分布が例えば3nm〜10nmの範囲内の、例えば第1の細孔径領域(3.4nm〜5.3nm)と、30nm〜200nmの範囲内の、例えば第2の細孔径領域(54nm〜200nm)とに2つのピークを備えたバイモーダル分布を有したものである。このようなBaAl1219とZrOとを含む担体に水素化活性金属を担持してなる排ガス浄化触媒が、高温での良好な耐久性を示すことについては、バイモーダル分布を有したBaAl1219において細孔径が3nm〜10nmの範囲の細孔が触媒の比表面積を大きくし、細孔径が30nm〜200nmの範囲の細孔が活性金属のシンタリングの抑制に影響しているものと推察される。
【0021】
本発明に係る排ガス浄化触媒は、前記担体が、さらにBaAlを含むものであっても構わない。この場合、その2θ値及び相対強度で規定されるX線回折パターンにおいて、BaAl1219の面指数(107)のピーク強度に対するBaAlの面指数(202)のピーク強度比は1:0.4〜1:16の範囲が好ましい。本発明に係る排ガス浄化触媒は、さらにBaZrOを含むものであっても構わない。この場合、その2θ値及び相対強度で規定されるX線回折パターンにおいて、BaAl1219の面指数(107)のピーク強度に対するBaZrOの面指数(220)のピーク強度比は1:0.04〜1:1.2の範囲が好ましい。
【0022】
[排ガス浄化触媒の比表面積]
従来の排ガス浄化用触媒(活性金属担持後)の比表面積は、概ね100m/g程度であり、触媒として使用した場合は、経時的に比表面積が低下し、触媒活性が低下する傾向があった。これに対して本実施の形態に係る排ガス浄化触媒の比表面積については、格別に限定されるものではないが、例えば、0.1m/g〜110m/gの範囲で使用可能である。
【0023】
[活性金属]
前記活性金属としては、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Rh(ロジウム)、Ru(ルテニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Au(金)及びAg(銀)からなる貴金属群から選ばれる少なくとも1種類以上の活性金属が使用される。前記排ガス浄化触媒に占める活性金属の割合については、0.01質量%以上、2.0質量%以下の範囲が好ましい。活性金属の割合が0.01質量%未満の場合には、実用的な触媒性能が得られない場合がある。また、活性金属の割合が2.0質量%を超える場合は、触媒性能を向上させる効果が飽和する傾向が強くなるので、必ずしも必要とはされない。排ガス浄化触媒に占める活性金属の割合については、さらに好適には0.1〜1.0質量%の範囲が推奨される。
【0024】
本発明に係る排ガス浄化触媒には、前記活性金属に加えて、例えば遷移金属元素あるいは希土類元素等の元素、例えばMn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、La(ランタン)、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジム)などから選択される1以上の元素を添加剤として担持しても構わない。これらの添加剤は、活性向上の目的で必要に応じて適宜添加される。
【0025】
[排ガス浄化触媒の製造方法]
本実施の形態に係わる排ガス浄化触媒は、例えばアルミニウム含有化合物、細孔径30〜200nmの範囲、好ましくは第2の細孔径領域に細孔径分布のピークを有するBaAl1219、BaAl及び有機酸を含む混合物を700℃〜1300℃の範囲で焼成し得られたBaAl1219をZrOと混合して担体を形成し、この担体に活性金属を担持させることなどにより得ることができる。以下、本実施の形態に係る排ガス浄化触媒の具体的な製造方法の一例を示すが、当該排ガス浄化触媒の製造方法はこれに限定されるものではない。
【0026】
[担体の製造工程]
BaAl1219は、例えばアルミニウム含有化合物とBaAlとを混合してから焼成することなどにより得ることができる。
前記アルミニウム含有化合物については、通常は、アルミニウムの酸化物、水酸化物、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、錯塩及びアルコキシドから選ばれる少なくとも1種類のアルミニウム含有化合物から選ばれる。前記アルミニウム含有化合物の具体例としては、アルミニウム酸化物、アルミニウム水酸化物、アルミニウム硝酸塩、アルミニウム塩化物、アルミニウム酢酸塩、アルミニウム炭酸塩、アルミニウム錯塩、アルミニウムアルコキシドから選ばれるアルミニウム含有化合物が好適に使用される。
【0027】
特に細孔径分布がバイモーダル構造のBaAl1219は、例えば、次の工程により調製することができる。
(第1工程)
BaAl、アルミニウム含有化合物及びメチルアルコールなどの有機溶媒からなる分散液を湿式粉砕処理することにより第1のスラリーを調製し、該第1のスラリーを1200〜1800℃にて焼成することにより、細孔径30〜200nmの範囲に細孔径分布のピークを有するBaAl1219を調製する。アルミニウム含有化合物には、例えば結晶性アルミナなどのアルミニウム酸化物が好適に使用される。
(第2工程)
第1工程で得られたBaAl1219と有機酸水溶液の混合物を湿式粉砕処理し、第2のスラリーを調製する。
(第3工程)
BaAlとアルミニウム含有化合物に有機酸水溶液を加え、pH3.0〜4.0の混合液を調製し、該混合液を湿式粉砕処理して第3のスラリーを調製する。アルミニウム含有化合物には例えばアルミニウム水酸化物が好適に使用される。
(第4工程)
第2のスラリーと第3のスラリーを混合し、700〜1300℃で焼成して、BaAl1219を調製する。
【0028】
このような製造方法において第1工程は、例えばアルミニウム含有化合物とBaAlとに所定量のメチルアルコールを加え、例えば湿式粉砕処理し、得られたスラリーを焼成すると、数十〜200nm付近に細孔径分布のピークを持つBaAl1219が得られる現象を利用している。また、第3工程及び第4工程は、アルミニウム含有化合物とBaAlとに所定量の有機酸水溶液を加え、例えば湿式粉砕処理し、得られたスラリーを焼成すると、数nm〜10nm付近に細孔径分布のピークを持つBaAl1219が得られる現象を使用したものである。
【0029】
例えばメチルアルコール、アルミニウム含有化合物及びBaAlとの混合物から細孔径30〜200nmの範囲に細孔径分布のピークを有するBaAl1219を予め調製する。次いで、有機酸水溶液、アルミニウム含有化合物及びBaAlとの混合物に、細孔径30〜200nmの範囲に細孔径分布のピークを有する上述のBaAl1219を混合して焼成を行うことにより、バイモーダル構造であり、細孔径分布において細孔径3nm〜10nmの範囲内と30nm〜200nmの範囲内とに各々細孔径のピークを有するBaAl1219を得ることができる。
【0030】
[第1工程]
アルミニウムとBaAlとの混合比は、焼成後の生成物がBaAl1219となる混合比を予め求めておき、その混合比に基づいて原料が混合される。BaAl1219を得る場合には、混合物中のアルミニウムに対するバリウムのモル比は例えば1:0.02〜1:0.1(化学量論比1:0.083)の範囲に調整して混合することが好ましい。また、焼成によってアルミニウムとBaAlとの反応を進行しやすくして効率よくBaAl1219を生成することができるように、アルミニウムとBaAlとの混合物の平均粒子径を例えば0.01μm〜0.2μmの範囲となるように調製するとよい。
【0031】
メチルアルコールの使用量については、アルミニウム含有化合物とBaAlの合計質量(100質量部)に対して、100〜10000質量部の範囲が好ましい。100質量部未満では、湿式粉砕処理に適さない。10000質量部を超えると、効率的に粉砕が行えない問題がある。メチルアルコールのより好適な使用量範囲としては、180〜300質量部の範囲が推奨される。
【0032】
ここでアルミニウム含有化合物とBaAlは、メチルアルコールに溶解しにくいため、湿式粉砕処理により概ね0.1〜2.0μmの粒子となりやすく、この結果、焼成により細孔径30〜200nmの範囲に細孔径分布のピークを有するBaAl1219を得やすくなる。湿式粉砕処理に用いることのできる有機溶媒は、既述のメチルアルコールに限定されるものではなく、例えばエチルアルコール、2−プロパノン、アセトアルデヒドなどの公知の有機溶媒を用いることもできる。
【0033】
アルミニウム化合物、BaAl及びメチルアルコールは、湿式粉砕処理により第1のスラリーとし、1200〜1800℃で焼成することにより30〜200nmの範囲に細孔径分布のピークを有するBaAl1219を得ることができる。湿式粉砕の処理条件については、例えばボールミルにて、70〜120rpmで20〜40時間処理して、平均粒子径0.01〜0.2μmの粒子とすることが好ましい。
【0034】
[第2工程]
第1工程で得られた細孔径30〜200nmの範囲に細孔径分布のピークを有するBaAl1219に、有機酸水溶液を加え、湿式粉砕処理を行いスラリー化する。有機酸水溶液の使用量は、BaAl1219が100質量部に対して、1〜35質量部の範囲が好ましい。湿式粉砕の処理条件については、例えばボールミルにて70〜120rpmで、0.5〜2時間処理して、平均粒子径0.5〜2.5μmの粒子とすることが好ましい。ここで得られた第2のスラリーを次の第3工程で得られる第3のスラリーと混合する。第2のスラリーのpHは特段の限定はないが、例えば第3のスラリーと混合した後の混合スラリーのpHが大きく変わらないように、第3のスラリーと同程度のpHとする場合などが考えられる。
【0035】
[第3工程]
アルミニウムとBaAlとの混合比は、焼成後の生成物がBaAl1219となる混合比を予め求めておき、その混合比に基づいて原料が混合される。BaAl1219を得る場合には、混合物のアルミニウムに対するバリウムのモル比は例えば1:0.02〜1:0.1(化学量論比1:0.083)の範囲に調整して混合することが好ましい。また、焼成によってアルミニウムとBaAlとの反応を進行しやすくして効率よくBaAl1219を生成することができるように、アルミニウムとBaAlとの混合物の平均粒子径を例えば0.01μm〜0.2μmの範囲となるように調製するとよい。
【0036】
有機酸水溶液の使用量については、アルミニウム含有化合物とBaAlの合計量(100質量部)に対して、50〜80質量部の範囲が好ましい。50質量部未満では、分解活性の効果が低減する傾向にある。80質量部を超えると効果が飽和する。有機酸水溶液のより好適な使用量範囲としては60〜65質量部の範囲が推奨される。
【0037】
ここでアルミニウム含有化合物とBaAlは、有機酸水溶液を加えpHを2.0〜6.0に低下させることにより、湿式粉砕処理にて概ね0.01〜0.1μmの粒子となりやすい。この結果、焼成により細孔径1〜10nmの範囲に細孔径分布のピークを有するBaAl1219が得やすくなる。第3のスラリーのより好適なpHは3.0〜4.0である。
【0038】
有機酸水溶液としては、公知のものを使用することができる。具体的には、グリコール酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
アルミニウム含有化合物、BaAl及び有機酸水溶液は、湿式粉砕処理により第3のスラリーとする。湿式粉砕の処理条件については、例えばボールミルにて、70〜120rpmで、15〜20時間処理して、平均粒子径0.05〜05μmの粒子とすることが好ましい。
【0039】
[第4工程]
第2のスラリーと第3のスラリーとを混合してなる混合物を、700〜1300℃で焼成することにより、細孔径分布がバイモーダル構造であり、細孔径1〜10nmの範囲と30〜200nmの範囲とに細孔を顕著に有するBaAl1219を得ることができる。また、細孔径の大きなBaAl1219に細孔径の小さなBaAl1219を成長させることにより、これらピークの異なる細孔径を共存させ、バイモーダル構造が得られやすくなる。
【0040】
BaAl1219の焼成は、上述の各混合物を必要に応じて乾燥させ、その後、例えば空気中で700℃〜1300℃の範囲の温度に加熱することにより行われる。焼成温度が700℃より低い場合には、BaAl1219が形成されにくく十分な触媒活性を得ることができず、また、調製時に混合している有機酸が完全に燃焼しない可能性がある。また、1300℃を超える温度で焼成を行う場合には、耐熱性の高い特殊な炉材を用いた焼成炉が必要となり経済性が低くなるおそれがある。
【0041】
このようにして得られたバイモーダル構造のBaAl1219にZrOを例えば質量比で1:0.1〜1:20の割合にて混合することにより、バイモーダル構造のBaAl1219と、ZrOとからなる本実施の形態に係る排ガス浄化触媒の担体を得ることができる。
そして、後述の実施例中に示すように、バイモーダル構造のBaAl1219を含む担体は、バイモーダル構造を備えていないBaAl1219とZrOとを混合して得られた担体と比較して、より高い高温耐久性を示すことが分かっている。
【0042】
[活性金属の担持工程]
上述の手法により得られた担体に、Pt、Pd、Rh、Ru、Os、Ir、AuまたはAgからなる貴金属群から選ばれる活性金属を担持することにより、本実施の形態の排ガス浄化触媒を得ることができる。活性金属の担持方法については、格別に限定されるものではないが、通常は固相混合法、液相混合法、共沈法、含浸法、逆ミセル法などの各種の担持法が適応される。
【0043】
例えば、含浸法による場合には、前記活性金属の単体を溶解した溶液、または当該活性金属を含む化合物(例えば、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物)の溶液に、前記工程で調製した担体を含浸させ、溶媒を蒸発乾固させた後、大気中または不活性雰囲気中にて温度300℃〜500℃で焼成することにより、排ガス浄化触媒を調製する。前記焼成時間については、通常は1〜5時間の範囲で行われる。なお、焼成に先立って、温度90〜150℃で1〜12時間の範囲で乾燥処理を行っても構わない。
【0044】
活性金属の単体又は活性金属を含む化合物の溶液の溶媒については、水または有機溶媒が使用される。ここで、有機溶媒としては、担体、活性金属の単体金属又は活性金属を含む化合物と反応性のないものであれば利用することができる。
【0045】
排ガス浄化触媒における前記活性金属の担持量、担持した活性金属の粒子径については、活性金属の担持方法によっても異なるが、通常は前記活性金属の溶液(金属単体の溶液、活性金属を含む化合物の溶液)に含まれる金属成分の濃度を調節することにより制御することができる。金属濃度としては、通常は0.1〜10重量%の範囲が選択され、例えば当該溶液中に含まれる活性金属と、担体との質量比に基づいて、例えば0.01重量%以上、2.0重量%以下の活性金属が担持された排ガス浄化触媒を調製することができる。
【0046】
ここで排ガス浄化触媒に担持される活性金属の粒子径は、担体の組成によっても影響を受ける場合がある。したがって、排ガス浄化触媒の設計にあたっては、事前に担体組成、活性金属の種類、活性金属を含む化合物の溶液濃度などと、粒子径との関係について、実験により検量線を作成し、排ガス浄化触媒上に担持される活性金属が所望の粒子径となるように調製するとよい。
【0047】
[モノリス触媒]
以上に例示した手法により製造された排ガス浄化触媒を、例えばウォッシュコート法などによって例えばセラミック製のハニカム基体にコーティングすることによりモノリス触媒が得られる。ウォッシュコート法は、当該排ガス浄化触媒を均一に分散させ、粘度を調整したスラリー中に前記ハニカム基体を浸漬してから引き上げ、これを乾燥させることにより触媒をコーティングする手法である。
【0048】
なお、自動車などに搭載する排ガス浄化触媒の形状はモノリス触媒に限定されるものではなく、例えば打錠や転動により、触媒をペレット状に形成してもよい。この場合は、例えばペレット触媒が充填された反応器内に排ガスを通流させることなどにより、排ガスを浄化することができる。
【0049】
以上に述べた手法によって得られた排ガス浄化触媒は、後述の実験結果に示すように、従来の排ガス浄化触媒(比表面積100m/g以上)と比較して例えば比表面積が0.1m/g〜100m/g程度と小さく、且つ活性金属の担持量が少ないにもかかわらず、排ガス中の窒素酸化物や一酸化窒素、炭化水素を分解して排ガスを浄化する高い触媒活性を備えている。さらにこの排ガス浄化触媒は、高温の排ガスと長期間接触させてもその触媒活性が低下しにくいといった特徴も備えている。
【0050】
本実施の形態に係る排ガス浄化触媒によれば、BaAl1219とZrOとを含有し、バイモーダルな細孔径分布を有する担体に活性金属を担持することにより活性金属の活性が向上するものと推測され、担体の比表面積が低下したり、担体上で活性金属が凝集したりするシンタリングが進行した場合であっても、従来の排ガス浄化触媒に比べて高い触媒活性を維持することができる。この結果、シンタリングの進行に伴う活性の低下を見越して使用開始時に必要量以上の活性金属を担持するといった方策を採る必要がないか、必要があったとしてもその担持量を削減することが可能となり触媒コストの低減に貢献することができる。
【実施例】
【0051】
[1]X線回折測定(XRD)
X線回折測定は株式会社リガク製MultiFlexを用いた。測定はX線源をCu、波長15.4056nm)、管電圧を40kV、管電流を20mA、データ範囲を2θ=10〜80Deg.、サンプリング間隔を0.02Deg.、スキャン速度を0.3Deg./秒、発散スリットを1.0Deg.、散乱スリットを1.0Deg.、発光スリットを0.3mmの条件で行った。
【0052】
[2]比表面積測定
比表面積はBET法によって測定した。測定はユアサアイオニクス株式会社製マルチソーブ12型を用い、サンプルの前処理は250℃で40分間行った。
【0053】
[3]COパルス法による担持微粒子の平均粒子径測定
貴金属の担持微粒子の平均粒子径測定は、自作の流通式の装置を用いた。測定は日本触媒学会発行の触媒(1986年、page28-41)に記載されているCOパルス法によって求めた。
【0054】
[4]触媒活性試験
実施例及び比較例で調製した各排ガス浄化触媒を高温雰囲気下で保持する高温耐久処理を行い、処理前後での触媒の活性を調べた。使用したモノリス触媒の作製方法とライトオフ温度の測定方法は次の通り。
【0055】
(1)モノリス触媒の作製方法
実施例及び比較例で調製した排ガス浄化触媒を水に分散して、排ガス浄化用触媒を含有するスラリー(固形分30質量%)を得た。そして、コージェライト製のセラミックハニカム基体(体積5.3cm、400cells/inch)を前記スラリー中に浸漬し、引き上げる方法(ウォッシュコート法)により、コート密度が100g/Lとなるようにコートして、基体上に均一な触媒層を形成させ、サンプル用のモノリス触媒を得た。
【0056】
(2)ライトオフ温度の測定方法
各モノリス触媒を800℃に加熱した大気雰囲気中で24時間保持する高温耐久処理を行い、当該処理の前後にてモデルガスを処理し、各触媒の耐久性能を調べた。
モデルガスの処理実験にあたっては、各モノリス触媒を常圧流通式の試験装置に装填し、図1に示す組成のモデルガス(理論空気比14.7)を空間速度50000h−1で通流した。試験装置の触媒のホルダーにはヒータが設けられており、このヒータによりモノリス触媒の温度を150℃から650℃へと漸次上昇させ、モデルガス中のプロピレン(C:以下HCという)の浄化率((モノリス触媒入口のHC濃度−モノリス触媒出口のHC濃度)×100/モノリス触媒入口のHC濃度[%])が50%に達したときの温度をライトオフ温度(以下、T50温度と記す)と定義して、このライトオフ温度を比較することにより評価を行った。
【0057】
[5]細孔径分布がバイモーダル構造の担体の調製方法
(1)細孔径が30nm〜200nmの範囲に細孔径分布のピークを有するBaAl1219の調製
外径120φ、内容積900cm3の磁製ボールミルにBaAl(株式会社高純度化学研究所、純度99.9%)16.7g、α-アルミナ(日本軽金属株式会社製)33.3g、ZrOボール750gとメチルアルコール117mgを充填し、ボールミルを100rpmで回転させながら30時間湿式粉砕を行った。得られた第1のスラリーを、減圧下、50℃で乾燥し混合粉体を調製した。混合粉体100重量部(20g)に対して50重量部(10g)の蒸留水を加え混練した後、含水物を室温下で静置し硬化させた。硬化した含水物全量を32メッシュふるいに通して、1500℃で2時間焼成し、粉末状のBaAl1219を得た。得られたBaAl1219の細孔容積及び比表面積を図3に示し、細孔径分布を図2(b)に示す。図2(b)の横軸はBaAl1219の細孔径d[nm]、縦軸はログ微分細孔容積d/d(logd)[cm/g]を示している。また、同粉末中にBaAl1219が含まれていることはX線回折にて確認した。
図2(b)によれば、上述の方法により製造したBaAl1219は、およそ120nm〜130nm付近に単一のピークを有する細孔径分布を備えたBaAl1219となっていることが確認できる。
【0058】
(2)バイモーダルBaAl1219の調製
(1)で得たBaAl1219を36.4gとグリコール酸(デュポン株式会社製、70%水溶液)9.7gとを混合し、さらに、ZrOボール750g及び蒸留水を充填し、ボールミル100rpmで回転させながら5時間湿式粉砕を行い第2のスラリーを得た。
一方、外径120φ、内容積900cmの磁製ボールミルにBaAl(株式会社高純度化学研究所、純度99.9%)15.6g、水酸化アルミナ(日本軽金属株式会社製)47.7g、グリコール酸(デュポン株式会社製、70%水溶液)39.9gを混合し、pHを3.0に調整して更に、ZrOボールを750gと蒸留水を充填して、ボールミルを100rpmで回転させながら60時間湿式粉砕を行って第3のスラリーを得た。
【0059】
次いで、第2、第3のスラリーを混合し、150℃の大気雰囲気下で静置乾燥させ混合粉末を得た。この混合粉末を800℃の大気雰囲気中で2時間焼成することにより粉末状のBaAl1219を得た。得られたBaAl1219の細孔容積及び比表面積を図3に示し、細孔径分布を図2(a)に示す。また、同粉末中にBaAl1219が含まれていることはX線回折にて確認した。
図2(a)によれば、上述の方法により製造したBaAl1219は、およそ4nm付近に第1のピークを有し、およそ140nm付近に第2のピークを有する細孔径分布を備えたバイモーダル構造のBaAl1219となっていることが確認できる。そして本例では例えば第1のピークの前後において、ログ微分細孔容積の値が当該第1のピークの半値となる細孔径の範囲を第1の細孔径領域とした。また第2のピークより小径の位置にてログ微分細孔容積が当該第2のピークの半値となる細孔径を第2の細孔径領域の下端とし、細孔径分布の測定上限である細孔径200nmの位置を第2の細孔径領域の上端とした。
【0060】
[実施例1]
細孔径分布がバイモーダル構造のBaAl1219:75.8gと、ZrO(第一稀元素株式会社):24.2gとを乳鉢混合することで粉末状の担体を調製した(BaAl1219:ZrO=1:0.32)。この混合粉末担体50gにジニトロジアンミン白金溶液(田中貴金属工業株式会社、Pt金属として8.4質量%含有)1.7gを加えて、その全量を含浸させた後、ホットプレートを用いて蒸発乾固させて、さらに110℃の大気雰囲気中で3時間乾燥後、400℃の大気雰囲気中で3時間焼成し、排ガス浄化触媒を得た。
[実施例1]に係る排ガス浄化触媒の物性値(活性金属割合、比表面積)と高温耐久処理前後でのライトオフ温度の測定結果を図5に示す。また当該排ガス浄化触媒に用いたBaAl1219のX線回折パターンを図4(a)に示す。同パターンによれば、BaAl1219特有の面指数(107)のピークを確認できる。
【0061】
[参考例2]
細孔径分布がバイモーダル構造のBaAl1219:95.2gとZrO:4.8gとを混合することで粉末状担体を調製した(BaAl1219:ZrO=1:0.05)。この混合粉末担体に[実施例1]と同様の要領にてPtを担持し、排ガス浄化触媒を得た。
[参考例2]に係る排ガス浄化触媒の物性値と高温耐久処理前後でのライトオフ温度の測定結果を図5に示す。
【0062】
[実施例3]
細孔径分布がバイモーダル構造のBaAl1219:85.6gとZrO:14.4gとを混合することで粉末状担体を調製した(BaAl1219:ZrO=1:0.17)。この混合粉末担体に[実施例1]と同様の要領にてPtを担持し、排ガス浄化触媒を得た。
[実施例3]に係る排ガス浄化触媒の物性値と高温耐久処理前後でのライトオフ温度の測定結果を図5に示す。
【0063】
[実施例4]
細孔径分布がバイモーダル構造のBaAl1219:61.1gとZrO:38.9gとを混合することで粉末状担体を調製した(BaAl1219:ZrO=1:0.64)。この混合粉末担体に[実施例1]と同様の要領にてPtを担持し、排ガス浄化触媒を得た。
[実施例4]に係る排ガス浄化触媒の物性値と高温耐久処理前後でのライトオフ温度の測定結果を図5に示す。
【0064】
[実施例5]
細孔径分布がバイモーダル構造のBaAl1219:36.0gとZrO:64.0gとを混合することで粉末状担体を調製した(BaAl1219:ZrO=1:1.78)。この混合粉末担体に[実施例1]と同様の要領にてPtを担持し、排ガス浄化触媒を得た。
[実施例5]に係る排ガス浄化触媒の物性値と高温耐久処理前後でのライトオフ温度の測定結果を図5に示す。
【0065】
[実施例6]
細孔径分布がバイモーダル構造のBaAl1219:20.7gとZrO:79.3gとを混合することで粉末状担体を調製した(BaAl1219:ZrO=1:3.83)。この混合粉末担体に[実施例1]と同様の要領にてPtを担持し、排ガス浄化触媒を得た。
[実施例6]に係る排ガス浄化触媒の物性値と高温耐久処理前後でのライトオフ温度の測定結果を図5に示す。
【0066】
[実施例7]
細孔径分布がバイモーダル構造のBaAl1219:15.6gとZrO:84.4gとを混合することで粉末状担体を調製した(BaAl1219:ZrO=1:5.41)。この混合粉末担体に[実施例1]と同様の要領にてPtを担持し、排ガス浄化触媒を得た。
[実施例7]に係る排ガス浄化触媒の物性値と高温耐久処理前後でのライトオフ温度の測定結果を図5に示す。
【0067】
[実施例8]
細孔径分布がバイモーダル構造のBaAl1219:10.4gとZrO:89.6gとを混合することで粉末状担体を調製した(BaAl1219:ZrO=1:8.62)。この混合粉末担体に[実施例1]と同様の要領にてPtを担持し、排ガス浄化触媒を得た。
[実施例5]に係る排ガス浄化触媒の物性値と高温耐久処理前後でのライトオフ温度の測定結果を図5に示す。
【0068】
[比較例1]
細孔径分布がバイモーダル構造ではない[5]−(1)に記載の第1のBaAl1219に:75.8gとZrO:24.2gとを混合することで粉末状担体を調製した(BaAl1219:ZrO=1:8.62)。この混合粉末担体に[実施例1]と同様の要領にてPtを担持し、排ガス浄化触媒を得た。
[比較例1]に係る排ガス浄化触媒の物性値と高温耐久処理前後でのライトオフ温度の測定結果を図5に示す。また当該排ガス浄化触媒に用いたBaAl1219のX線回折パターンを図4(b)に示す。同パターンによれば、BaAl1219に特有の面指数(107)のピークを確認できる。
【0069】
[比較例2]
細孔径分布がバイモーダル構造ではない[5]−(1)に記載の第1のBaAl1219をZrOとは混合せず、単体のBaAl1219:50gに[実施例1]と同様の要領にてPtを担持し、排ガス浄化触媒を得た。
[比較例2]に係る排ガス浄化触媒の物性値と高温耐久処理前後でのライトオフ温度の測定結果を図5に示す。
【0070】
[比較例3]
細孔径分布がバイモーダル構造のBaAl1219をZrOとは混合せず、単体のBaAl1219:50gに[実施例1]と同様の要領にてPtを担持し、排ガス浄化触媒を得た。
[比較例2]に係る排ガス浄化触媒の物性値と高温耐久処理前後でのライトオフ温度の測定結果を図5に示す。
【0071】
[比較例4]
BaAl1219とは混合していない単体のZrO:50gに[実施例1]と同様の要領にてPtを担持し、排ガス浄化触媒を得た。
[比較例2]に係る排ガス浄化触媒の物性値と高温耐久処理前後でのライトオフ温度の測定結果を図5に示す。
【0072】
[比較例5]
酸化アルミニウム粉末(和光純薬工業株式会社製、和光特級)からなる担体50gにジニトロジアンミン白金溶液(Ptとして4.5質量%含有)3.33gを加えて、その全量を含浸させ、ホットプレートを用いて、蒸発乾固させて、さらに110℃の大気雰囲気中で3時間乾燥後、400℃の大気雰囲気中で3時間焼成し、排ガス浄化触媒を得た。
[比較例5]に係る排ガス浄化触媒の物性値と高温耐久処理前後でのライトオフ温度の測定結果を図5に示す。
【0073】
図5に示した結果によれば、細孔径分布がバイモーダル構造のBaAl1219と、ZrOとを含む担体に、活性金属としてPtを担持した(実施例1〜8)の排ガス浄化触媒においては、高温耐久処理後のT50温度が410〜477℃の範囲であり、各比較例と比べて全般的に高温耐久処理後のT50温度が低い。また高温耐久処理前後のT50温度差は、21〜51℃の範囲であり、この値についても各比較例と比べてT50温度差は小さく良好な耐久性が確認された。但し、高温耐久化処理前の温度が温度計のレンジを超えた参考例2ではT50温度差を算出しなかった。
【0074】
一方で、細孔径分布がバイモーダル構造ではないBaAl1219をZrOと混合した担体(比較例1)、細孔径分布がバイモーダル構造ではないBaAl1219のみからなる担体(比較例2)、細孔径分布がバイモーダル構造のBaAl1219のみからなる担体(比較例3)、ZrOのみからなる担体(比較例4)、酸化アルミニウムのみからなる担体(比較例5)に、活性金属としてPtを担持した排ガス浄化触媒(比較例1〜5)では、高温耐久処理後のT50温度が486〜621℃であり各実施例と比べて高温である。また、T50温度差についても91〜234℃であり、各実施例よりも耐久性が低い。
これらの実験結果から(実施例1〜8)に係る排ガス浄化触媒は、良好な高温耐久性を備えているといえる。
【0075】
ここで(実施例1〜8)に用いたBaAl1219の細孔径分布は、図2(a)に示すように第1、第2のピークに近い細孔径を持つ細孔がこれらのピークの前後に分布している。そして(実施例1〜8)の排ガス浄化触媒の作用は、前記第1、第2のピークの細孔径の細孔のみならず、これら第1、第2のピーク付近に分布している細孔径の細孔の作用も相俟って良好な高温耐久性が発揮されたものといえる。
【0076】
従ってバイモーダル構造のBaAl1219におけるピークの位置は、図2(a)に示した例に限定されるものではなく、少なくとも例えば図2(a)に示した第1の細孔径領域(3.4nm以上、5.3nm以下の領域)に第1のピークが存在し、第2の細孔径領域(54nm以上、200nm以下の領域)に第2のピークが存在する場合には、(比較例1〜5)の場と比べて高い高温耐久性が発揮されると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の細孔径領域と、この第1の細孔径領域よりも細孔径の大きな第2の細孔径領域とに細孔径分布のピークを有するバイモーダル構造のBaAl1219と、
ZrOと、を含む担体であって、
BaAl1219に対するZrOの質量比が1:0.1〜1:20の範囲にある担体に活性金属が担持されていることを特徴とする排ガス浄化触媒。
【請求項2】
前記細孔径分布において、第1の細孔径領域は3.4nm以上、5.3nm以下であり、第2の細孔径領域は54nm以上、200nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項3】
前記排ガス浄化触媒の比表面積が0.1m/g以上、110m/g以下の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項4】
前記活性金属は、Pt、Pd、Rh、Ru、Os、Ir、Au及びAgからなる貴金属群から選ばれる少なくとも1種類以上の活性金属であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の排ガス浄化触媒。
【請求項5】
前記活性金属の担持量が、前記排ガス浄化触媒重量の0.01重量%以上、2.0重量%以下の範囲であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の排ガス浄化触媒。
【請求項6】
次の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とする排ガス浄化触媒の製造方法。
(1)アルミニウム含有化合物、第2の細孔径領域に細孔径分布のピークを有するBaAl1219、BaAl及び有機酸を含む混合物であって、この混合物中のアルミニウムとバリウムのモル比が1:0.02〜1:0.1の範囲であり、アルミニウムと有機酸のモル比が1:0.1〜1:0.5の範囲であるものを700℃以上、1300℃以下の温度で焼成し、第1の細孔径領域と、この第1の細孔径領域よりも細孔径の大きな前記第2の細孔径領域とに細孔径分布のピークを有するバイモーダル構造のBaAl1219を調製する工程。
(2)このバイモーダル構造のBaAl1219とZrOとを混合して担体を調製する工程。
(3)前記担体にPt、Pd、Rh、Ru、Os、Ir、Au及びAgからなる貴金属群から選ばれる少なくとも1種類以上の活性金属を担持させる工程。
【請求項7】
次の[1]及び[2]の工程を含むことを特徴とする排ガス浄化触媒の製造方法。
[1]第1の細孔径領域と、この第1の細孔径領域よりも細孔径の大きな第2の細孔径領域とに細孔径分布のピークを有するバイモーダル構造のBaAl1219と、ZrOとを含む担体を調製する工程。
[2]前工程で得られた担体に活性金属溶液を含浸させ、350〜550℃で焼成させて、前記担体に活性金属を担持する工程。
【請求項8】
前記バイモーダル構造のBaAl1219が次の[1]〜[4]の工程を含む製造方法により得られたものであることを特徴とする請求項7に記載の排ガス浄化触媒の製造方法。
[1]BaAl、アルミニウム含有化合物及び有機溶媒からなる分散液を湿式処理することにより第1のスラリーを調製し、該第1のスラリーを1200〜1600℃にて焼成することにより、第2の細孔径領域に細孔径分布のピークを有するBaAl1219を調製する工程。
[2]前工程[1]で得られたBaAl1219と有機酸水溶液の混合物を湿式粉砕処理し、第2のスラリーを調製する工程。
[3]BaAlとアルミニウム含有化合物に有機酸水溶液を加え、pH3.0〜4.0の混合液を調整し、該混合液を湿式粉砕処理して第3のスラリーを調製する工程。
[4]前記第2のスラリーと第3のスラリーを混合し、700〜1300℃で焼成して、前記バイモーダル構造のBaAl1219を調製する工程。
【請求項9】
前記工程[1]または工程[3]で使用するアルミニウム含有化合物は、アルミニウム酸化物、アルミニウム水酸化物、アルミニウム硝酸塩、アルミニウム塩化物、アルミニウム酢酸塩、アルミニウム炭酸塩、アルミニウム錯塩、アルミニウムアルコキシドからなるアルミニウム源群から選択される少なくとも1種類以上のアルミニウム源を含むことを特徴とする請求項8記載の排ガス浄化触媒の製造方法。
【請求項10】
前記工程[1]で使用するアルミニウム含有化合物が結晶性アルミナからなるアルミニウム酸化物であることを特徴とする請求項9記載の排ガス浄化触媒の製造方法。
【請求項11】
前記工程[3]で使用するアルミニウム含有化合物がアルミニウム水酸化物であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の排ガス浄化触媒の製造方法。
【請求項12】
前記細孔径分布において、第1の細孔径領域は3.4nm以上、5.3nm以下であり、第2の細孔径領域は54nm以上、200nm以下であることを特徴とする請求項6ないし請求項11のいずれか一つに記載の排ガス浄化触媒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−11308(P2012−11308A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150171(P2010−150171)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】