説明

排気ガスセンサの制御装置

この発明は排気ガスセンサの制御装置に関し、排気ガスセンサの暖機時に、学習に頼ることなく、センサ素子の劣化状態をリアルタイムに判断して迅速に活性判定を完了させることを目的とする。内燃機関の排気通路に空燃比センサを搭載する。空燃比センサは活性温度に達することで活性状態となるセンサ素子を備える。空燃比センサの活性が判定されていない場合は(ステップ142)、センサ素子の素子インピーダンスZが活性判定値Zact以下であるかを判断する(条件A)と共に、吸入空気量積算値GAsumがセンサ活性判定吸入空気量積算値GAsumtg以上であるか(条件B)を判断する(ステップ144)。何れかの条件が成立する場合は、その時点で空燃比センサの活性を判定する(ステップ146)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
この発明は、内燃機関の排気通路に搭載される排気ガスセンサの制御装置に係り、特に、活性温度に達することで活性状態となるセンサ素子を備える排気ガスセンサを制御する装置として好適な排気ガスセンサの制御装置に関する。
【背景技術】
従来、例えば日本特開2002−48761号公報に開示されるように、内燃機関の排気通路に空燃比センサを配置し、そのセンサの検出値に基づいて燃料噴射量をフィードバック制御するシステムが知られている。空燃比センサは、活性温度に過熱されることにより活性状態となるセンサ素子と、そのセンサ素子を過熱するヒータとを備えている。上記従来のシステムは、センサ素子の温度と素子インピーダンスとの間に相関が認められることを利用して、素子インピーダンスが所定の目標インピーダンスになるようにヒータへの供給電力をフィードバック制御する。ここで、目標インピーダンスは、活性温度下でのセンサ素子のインピーダンスである。このようなヒータ制御の手法によれば、センサ素子を活性温度に維持することができ、空燃比センサを安定に活性状態に維持することができる。
上記のセンサ素子は、その温度が上がるに連れて素子インピーダンスを低下させ、一方、その劣化が進むに連れて素子インピーダンスを上昇させる特性を有している。このため、センサ素子の劣化が進むと、センサ素子の温度が活性温度に達した時点で、素子インピーダンスが目標インピーダンスまで低下しない事態が生ずる。この場合、目標インピーダンスを固定したままヒータのフィードバック制御が継続されれば、結果的に、センサ素子温が活性温度を超える温度に加熱されることになる。
上記従来の装置は、このような事態の発生を防ぐべく、ヒータのフィードバック制御中に所定の判定時間を超えてヒータが連続通電された場合に、センサ素子に劣化が生じていると判断し、目標インピーダンスを増大方向に補正することとしている。このような処理によれば、センサ素子の劣化に伴う素子インピーダンスの増大を速やかに検知し、その劣化に合わせて目標インピーダンスを高めることにより、センサ素子の過熱を有効に防ぐことができる。
ところで、上記従来の装置において、空燃比センサの出力を利用した燃料噴射量のフィードバック制御を開始するにあたっては、センサ素子の活性判定を行う必要がある。このような活性判定は、例えば、内燃機関の始動後、素子インピーダンスを監視し、その値が所定の活性判定値まで低下したか否かを見ることで行うことができる。ところが、素子インピーダンスには上述した温度特性が重畳していることから、活性判定値が一定値であるとすれば、素子インピーダンスを目標インピーダンスに制御しようとする場合と同様の問題が生ずる。より具体的には、ここでは、センサ素子の劣化に伴って素子インピーダンスが上昇することにより、活性判定が遅れるという事態が生ずる。
活性判定の遅れは、燃料噴射量のフィードバック制御の開始遅れに直結する。内燃機関において良好なエミッション特性を得るためには、燃料噴射量のフィードバック制御は、可能な限り早期に開始されることが望ましい。この点、従来の活性判定の手法は、空燃比センサの劣化に合わせて内燃機関のエミッション特性を悪化させ易いという特性を有するものであった。
このような活性判定の遅れは、例えば、上記従来の装置が目標インピーダンスに施している補正の手法を、活性判定値にも適用することで解消することが可能である。つまり、内燃機関の運転中にセンサ素子の劣化が判定された場合に、その時点で活性判定値を上昇方向に補正し、かつ、記憶しておき、次回の始動時に、補正後の活性判定値を用いて活性判定を行うこととすれば、センサ素子の劣化に伴う活性判定の遅れは避けることができる。
しかしながら、このような手法によれば、ヒータのフィードバック制御が開始されるまでは(つまり、センサ素子温が活性温度近傍に達するまでは)センサ素子の劣化が判定されず、従って、その劣化の影響が活性判定値に反映されない。つまり、活性判定値の補正に、常に1トリップ分の遅れが発生し、内燃機関の始動時にセンサ素子の劣化状態をリアルタイムに活性判定の手法に反映させることができない。
また、上述した手法を実現するためには、活性判定値を補正し、かつ、記憶する処理、つまり、活性判定値の学習処理が必須であり、複雑な制御が必要となる。加えて、この手法によれば、バッテリ交換等に伴って補正後の活性判定値がクリアされた場合には、再びその学習が完了するまでの間は、活性判定が遅延するという不都合が生ずる。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、活性判定値の学習に頼ることなく、排気ガスセンサの暖機時に、センサ素子の劣化状態をリアルタイムに判断して常に迅速な活性判定を可能とする排気ガスセンサの制御装置を提供することを目的とする。
【発明の開示】
上記の目的を達成するため、本発明に係る排気ガスセンサの制御装置は、内燃機関の排気通路に搭載され、活性温度に達することで活性状態となるセンサ素子を備える。また、本発明に係る制御装置は、前記センサ素子の素子インピーダンスを検出するインピーダンス検出装置と、前記素子インピーダンスが活性判定値にまで低下したか否かを判定するインピーダンス判定装置を備える。更に、本発明に係る制御装置は、前記センサ素子の受容熱量を推定する受容熱量推定装置と、前記受容熱量が活性判定熱量に達したか否かを判定する熱量判定装置と、前記インピーダンス判定装置による判定、および前記熱量判定装置による判定の何れかが成立した時点で前記排気ガスセンサの活性判定を行う活性判定装置とを備える。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の実施の形態1において用いられる空燃比センサの構成を説明するための図である。
第2図は、本発明の実施の形態1の制御装置の全体構成を説明するための図である。
第3図は、空燃比センサの素子インピーダンスの温度特性を説明するための図である。
第4図は、本発明の実施の形態1において実行されるヒータ制御ルーチンのフローチャートである。
第5図は、空燃比センサの素子インピーダンスの温度特性とセンサ素子の劣化との関係を説明するための図である。
第6図は、本発明の実施の形態1において生じ得る活性判定時間の遅延の原因を説明するための図である。
第7図は、本発明の実施の形態1において実行されるセンサ活性判定ルーチンのフローチャートである。
第8図は、本発明の実施の形態1において実行される始動時水温記憶ルーチンのフローチャートである。
第9図は、本発明の実施の形態1において実行される吸入空気量積算値算出ルーチンのフローチャートである。
第10図は、第7図に示すルーチンの実行過程で参照されるセンサ活性判定吸入空気量GAsumtgのマップの一例である。
第11図は、本発明の実施の形態2において実行される吸入空気量積算値算出ルーチンのフローチャートである。
第12図は、本発明の実施の形態2において実行されるバッテリ電圧なまし値算出ルーチンのフローチャートである。
第13図は、第11図に示すルーチンの実行過程で参照されるセンサ活性判定吸入空気量GAsumtgのマップの一例である。
第14図は、本発明の実施の形態3において実行される吸入空気量積算値算出ルーチンのフローチャートである。
第15図は、本発明の実施の形態3において実行されるイニシャル処理ルーチンのフローチャートである。
第16図は、本発明の実施の形態3において実行される学習制御ルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
実施の形態1.
[実施の形態1のハードウェア構成]
図1は、本発明の実施の形態1において用いられる空燃比センサ10の構成を説明するための図である。図1に示す空燃比センサ10は、内燃機関の排気通路に配置され、排気ガスの空燃比を検出するために用いられるセンサである。空燃比センサ10は、カバー12を備えており、このカバー12が排気ガスに晒されるように排気通路に組み付けられる。
カバー12には、その内部に排気ガスを導くための孔(図示せず)が設けられている。カバー12の内部には、センサ素子14が配置されている。センサ素子14は、一端(図1における下端)が閉じられた管状の構造を有している。管状構造の外側表面は、拡散抵抗層16で覆われている。拡散抵抗層16は、アルミナ等の耐熱性の多孔質物質であり、センサ素子14の表面付近における排気ガスの拡散速度を律する働きを有している。
拡散抵抗層16の内側には排気側電極18、固体電解質層20および大気側電極22が設けられている。排気側電極18および大気側電極22は、Ptのように触媒作用の高い貴金属で構成された電極であり、それぞれ後述する制御回路と電気的に接続されている。固体電解質層20は、ZrOなどを含む焼結体であり、酸素イオンの通過を許容する特性を有している。
センサ素子14の内側には、大気に開放された大気室24が形成されている。大気室24には、センサ素子14を加熱するためのヒータ26が配置されている。センサ素子14は、700℃程度の活性温度において安定した出力特性を示す。ヒータ26は、後述する制御回路と電気的に接続されており、その制御回路に制御されることにより、センサ素子14を適当な温度に加熱維持することができる。
図2は、空燃比センサ12の制御装置の構成を示すブロック図である。図2に示すように、センサ素子14は、抵抗成分と起電力成分を用いて等価的に表すことができる。また、ヒータ26は抵抗成分を用いて等価的に表すことができる。センサ素子14には、センサ素子駆動回路28が接続されている。センサ素子駆動回路28には、センサ素子14に対して所望の電圧を印加するためのバイアス制御回路と、センサ素子14を流れる電流を検出するためのセンサ電流検出回路とが含まれている。
センサ素子制御回路28が備えるバイアス制御回路には、ローパスフィルタ(LPF)30およびD/Aコンバータ32を介してマイクロコンピュータ34が接続されている。マイクロコンピュータ34は、それらの要素を介して、バイアス制御回路に、センサ素子14に印加すべき電圧を指令することができる。
バイアス制御回路は、マイクロコンピュータ34の指令に従い、センサ素子14に対して、空燃比検出用のバイアス電圧と、インピーダンス検出用電圧とを印加することができる。センサ素子14は、空燃比検出用のバイアス電圧が印加されている場合には、排気ガスの空燃比に応じたセンサ電流を流通させる。このため、そのセンサ電流を検出すれば、排気ガスの空燃比を検知することが可能である。
センサ素子14に対するバイアス電圧が、空燃比検出用のバイアス電圧からインピーダンス検出用電圧に変更されると、印加電圧に変化に対応してセンサ電流に変化が生ずる。この際、印加電圧の変化量とセンサ電流の変化量との比は、センサ素子の素子インピーダンスに相当する値となる。このため、インピーダンス検出用電圧の印加に伴って生ずるセンサ電流を検出すれば、センサ素子の素子インピーダンスを検知することが可能である。
センサ素子制御回路28が備えるセンサ電流検出回路には、D/Aコンバータ36を介してマイクロコンピュータ34が接続されている。マイクロコンピュータ34は、D/Aコンバータ36を介して、センサ電流検出回路によって検出されたセンサ電流を読み込むことができる。従って、マイクロコンピュータ34は、センサ素子14に空燃比検出用電圧が印加されている状況下では、センサ電流に基づいて排気ガスの空燃比を検知することができる。また、センサ素子14にインピーダンス検出用電圧が印加されている状況下では、センサ電流に基づいて素子インピーダンスを検知することができる。
図2に示すように、ヒータ26には、ヒータ制御回路38が接続されている。また、ヒータ制御回路38には、マイクロコンピュータ34が接続されている。ヒータ制御回路38は、マイクロコンピュータから供給される指令を受けて、その指令に応じた駆動信号をヒータ26に供給し、ヒータ26に所望の熱量を発生させることができる。
[実施の形態1におけるヒータ制御]
図3は、本実施形態の装置において実行されるヒータ制御の概要を説明するための図である。ここで、図3中に示す曲線は、素子インピーダンスと素子温との関係を示す。この曲線に示す通り、素子インピーダンスは温度特性を有しており、素子温が高いほど小さな値となる。図3中に示すZactおよびZtgは、それぞれ活性判定値および目標インピーダンスである。活性判定値Zactは、素子温が活性判定温度(例えば650℃)である場合の素子インピーダンスに設定されている。また、目標インピーダンスZtgは、素子温が活性目標温度(例えば700℃)である場合の素子インピーダンスに設定されている。
センサ素子14は、活性判定温度以上の温度で安定したセンサ特性を示す。このため、本実施形態の装置は、内燃機関の始動後、素子温が活性判定温度(例えば650℃)に達した時点で空燃比センサ10の活性を判定し、その出力に基づく空燃比フィードバック制御を開始する。その後、素子温の変動に対して余裕を確保しておくため、センサ素子14は、活性判定温度より高温の活性目標温度(例えば700℃)にまで過熱され、その温度に維持される。その結果、安定状態では、素子温が700℃程度に過熱された状態で空燃比フィードバック制御が行われる。
ここで、マイクロコンピュータ34は、素子温と素子インピーダンスの相関関係を利用して、素子温が活性判定温度に達したか否かを素子インピーダンスが活性判定温度Zactまで低下したか否かに基づいて判断する。また、マイクロコンピュータ34は、素子温を活性目標温度に維持するために、素子インピーダンスが目標インピーダンスZtgと一致するようにヒータ26の通電量をフィードバック制御する。
内燃機関において、良好なエミッション特性を得るためには、空燃比センサ10の暖機が開始された後、その活性判定がなされるまでの期間はできるだけ短いことが望ましい。このため、本実施形態の装置は、素子インピーダンスが活性判定温度Zactより大きい領域では、ヒータ26を100%デューティで駆動することとしている(図3に示す100%通電領域)。その後、素子インピーダンスが活性判定温度Zactまで低下したら、センサ素子14の過熱を避けるべく、駆動デューティを70%に下げてヒータ26の駆動を継続する(図3に示す70%通電領域)。そして、素子インピーダンスが目標インピーダンスZtgの近傍値となったら、素子インピーダンスに基づくフィードバック制御によりヒータ26の駆動を継続する(図3に示すF/B制御領域)。
図4は、上述したヒータ制御を実現するためにマイクロコンピュータ34が実行するヒータ制御ルーチンのフローチャートを示す。図4に示すルーチンでは、先ず、素子インピーダンスZが検出される(ステップ100)。次に、その検出値Zと目標インピーダンスZtgとの差ΔZ=Z−Ztgが算出される(ステップ102)。次いで、ヒータ制御の許可条件が成立しているか否かが判断され(ステップ104)、その条件が不成立である場合はヒータ26の駆動デューティRDUTYが0%とされる(ステップ106)。
一方、上記ステップ104の処理により、許可条件の成立が認められた場合は、100%通電の条件が成立しているか否かが判別される(ステップ108)。ここでは、具体的には、内燃機関の始動後経過時間が10sec以下であり、かつ、ΔZが判定値K1(図3参照)以上であるか(Z≧Zactと同義)が判別される。その結果、上記の条件が成立すると認められた場合は、ヒータ26の駆動デューティRDUTYが100%に設定される(ステップ110)。
上記ステップ108の処理により、100%通電の条件が成立していないと判別された場合は、次に、ΔZが判定値K2(図3参照)より大きいか否かが判別される(ステップ112)。つまり、ヒータ26を70%通電すべき条件が成立しているか否かが判別される。その結果、ΔZ>K2の成立が認められた場合は、ヒータ26の駆動デューティRDUTYが70%に設定される(ステップ114)。
これに対して、上記ステップ112において、ΔZ>K2の成立が認められないと判別された場合は、素子インピーダンスF/B制御ルーチンが実行される(ステップ116)。このルーチンによれば、ΔZが小さくなるように、つまり、素子インピーダンスZが目標インピーダンスZtgに近づくように、PID制御の手法でヒータ26の駆動デューティRDUTYが設定される。
上述したステップ106,110,114および116の何れかによりヒータ26の駆動デューティRDUTYが設定されると、最後に駆動デューティRDUTYのなまし処理が実行される(ステップ118)。このようななまし処理によれば、ステップ106,110,114および116の処理により設定される駆動デューティRDUTYが段階的な変化を示した場合に、ヒータ26に対する供給電力が急変するのを避けることができる。
[素子インピーダンスの劣化上昇の影響とその影響に対する対策]
図5は、センサ素子14の劣化と素子インピーダンスとの関係を説明するための図である。この図に示すように、素子インピーダンスは、センサ素子14の劣化が進むに連れて増加方向にシフトする。このため、活性判定値Zactが一定値であるとすると、センサ素子14の活性が判定される素子温は、図5に示すように、その劣化の進行と共に高温化することとなる。
図6は、センサ素子14の暖機が開始された後、素子インピーダンスが活性判定値Zact(一定値とする)に低下するまでの時間、つまり、素子インピーダンスに基づいてセンサ素子14の活性が判定できるまでの時間に遅延を生じさせる原因と、個々の原因に起因する遅延の割合とを説明するための図である。この図に示すように、上記の判定に要する時間には、(1)バッテリ電圧の変動に起因する遅延(つまり、ヒータ26への印加電圧の低下に起因する遅延)と、(2)ヒータ26の抵抗劣化に起因する遅延(つまり、ヒータ26を流れる電流の低下に起因する遅延)と、(3)センサ素子14のアドミタンス劣化(素子インピーダンスの増加)に起因する遅延とが含まれる。
(1)および(2)の遅れは、センサ素子14の温度上昇自体の遅れを伴うもの、つまり、素子温が活性判定温度に達するまでの時間を現実に遅延させる遅れである。これに対して、(3)の遅れは、素子温が活性判定温度に到達した後、素子インピーダンスに基づいてその到達が判定されるまでの時間に対応する遅れである。そして、(3)の遅れの比率は、図6に示すように、無視できない程度の大きさを有している。このため、素子インピーダンスが活性判定温度Zactに低下したか否かのみを基準としてセンサ素子14の活性判定が行われると、センサ素子14の劣化に伴って、素子温度が活性判定温度に達した後、現実に活性判定がなされるまでの間に、無視できない大きな遅延が生ずることとなる。このような遅延は、空燃比フィードバックの開始時期を不当に遅らせるものであり、可能な限り圧縮することが望ましい。
ところで、センサ素子14の暖機状態は、内燃機関の始動後にセンサ素子14が受容した熱量の積算値と相関を有している。このため、センサ素子14が活性温度に達したか否かは、素子インピーダンスに頼る他、センサ素子14の受容熱量を基礎としても判断することができる。そこで、本実施形態の装置は、素子温が活性判定温度(例えば650℃)に到達したことを確実に判定できる値として活性判定熱量を予め設定しておき、内燃機関の始動後にセンサ素子14に受容された熱量が、その活性判定熱量に達したと推定できる場合には、素子インピーダンスが活性判定値Zactまで低下していなくても、その時点でセンサ素子14の活性を判定することとした。
[実施の形態1における特徴的処理]
以下、図7乃至図10を参照して、上記の機能を実現するためにマイクロコンピュータ34が実行する具体的処理の内容について説明する。図7は、本実施形態においてマイクロコンピュータが実行するセンサ活性判定ルーチンのフローチャートである。このルーチンでは、先ず、始動時水温(TWI)記憶ルーチンが実行される(ステップ120)。
図8は、上記ステップ120の処理として実行される始動時水温記憶ルーチンのフローチャートを示す。このルーチンでは、先ず、内燃機関のイグニッションスイッチ(IG)がONとされた後、50msecが経過する以前であるか否かが判別される(ステップ122)。その結果、上記条件の成立が認められる場合は、内燃機関の始動時判定がなされ、現在の冷却水温TWが始動時水温TWIとして記憶される(ステップ124)。一方、上記条件の成立が認められない場合は、何ら処理が行われることなく今回の処理サイクルが終了される。
図7に示すルーチンにおいて、始動時水温記憶ルーチンが終了すると、次に、吸入空気量積算値(GAsum)算出ルーチンが実行される(ステップ130)。吸入空気量積算値算出ルーチンは、内燃機関の始動後に生じた吸入空気量GAの積算値Gasumを算出するためのルーチンである。吸入空気量積算値GAsumが多量であるということは、内燃機関の始動後の経過時間が長いことを意味し、従って、ヒータ26の通電時間が長いことを意味する。同時に、吸入空気量積算値GAsumが大きいということは、内燃機関の始動後に空燃比センサ10の周囲を流通した排気ガスが多量であることを意味する。センサ素子14の受容熱量は、ヒータ26の通電時間が長いほど多量となり、また、排気ガスの流通量が多量であるほど一般的には多量となる。このため、本実施形態において、吸入空気量積算値GAsumは、センサ素子14の受容熱量の代用値として用いることができる。
図9は、上記ステップ130の処理として実行される吸入空気量積算値算出ルーチンのフローチャートを示す。このルーチンでは、先ず、内燃機関が始動された後であるか否かが判別される(ステップ132)。その結果、上記条件の成立が認められる場合は、前回の処理サイクル時までに算出されていたGAsumに今回の処理サイクルで検出された吸入空気量GAを加算することで、吸入空気量積算値GAsumの更新が行われる(ステップ134)。一方、上記条件の成立が認められない場合は、何ら処理が行われることなく今回の処理サイクルが終了される。
図7に示すルーチンにおいて、吸入空気量積算値算出ルーチンが終了すると、次に、センサ活性判定吸入空気量積算値(GAsumtg)が算出される(ステップ140)。センサ活性判定吸入空気量積算値GAsumtgは、センサ素子14が活性温度に達したと判定するに足る吸入空気量積算値GAsumの最小値として予め設定された値である。つまり、GAsumtgは、GAsum≧GAsumtgの成立が認められる場合には、センサ素子14の活性判定が確定できる値として適合等により定められた判定値である。
図10は、本実施形態においてマイクロコンピュータ34が記憶しているGAsumtgのマップの一例である。このマップは、始動時冷却水温TWIをパラメータとして、TWIが低いほどGAsumtgが多量となるように定められている。内燃機関が始動された後、センサ素子14が活性温度に達するまでに必要な受容熱量は、始動時の素子温が低いほど多量となる。図10に示すマップによれば、始動時冷却水温TWIが低く、センサ素子14が活性温度に達するまでに多量の受容熱量が必要とされるほど、センサ活性判定吸入空気量積算値GAsumtgを大きな値に設定することができる。このため、本実施形態の装置によれば、暖機開始時における素子温の高低に関わらず、センサ素子14が活性温度に達したと判定できる最小のGAsumを常に適正にGAsumtgとして設定することができる。
図7に示すルーチンでは、次に、内燃機関の始動後、最初の活性判定が既に実行済みであるか否かが判別される。より具体的には、内燃機関の始動後に、センサ素子14の活性判定が初めてなされた際にONとされる活性判定終了フラグxactstが、既にONとされているか否かが判別される(ステップ142)。
xactst=ONの成立が認められない場合は、以下に示す条件AおよびBの少なくとも一方が成立しているかが判別される(ステップ144)。
(条件A)素子インピーダンスZが活性判定値Zact以下か(Z≦Zact?);
(条件B)吸入空気量積算値GAsumがセンサ活性判定吸入空気量積算値GAsumtg以上か(GAsum≧GAsumtg?)。
その結果、条件AおよびBが何れも成立しないと判別された場合は、センサ素子14が未だ活性温度に達していないと判断され、そのまま今回の処理サイクルが終了される。一方、条件AおよびBの何れかが成立すると判別された場合は、センサ素子14の活性判定がなされ、活性判定フラグxactおよび活性判定終了フラグxactstが共にONとされる(ステップ146)。
条件Aは、センサ素子14が初期のインピーダンス特性を示す場合に、素子温が活性判定温度に達した時点で成立するように設定されている。ここで、センサ素子14のインピーダンス特性には、ある程度の公差(例えば10%)が認められているため、初期の段階であっても、条件Aの成立は、素子インピーダンスの公差に対応する温度ΔTだけ、素子温が活性判定温度より高温となるまで判定されないことがある。
本実施形態において、条件Bは、素子温が「活性判定温度(例えば650℃)+ΔT」となった時点で成立するように設定されている。つまり、条件Bは、センサ素子14が公差枠一杯の誤差を含んでいる場合に、条件Aと同時に成立するように設定されている。このため、上記ステップ144の処理によれば、素子温に対する素子インピーダンスの誤差が公差内に収まっている場合には、条件Aの成立によりセンサ素子14の活性が判定されることとなり、一方、その誤差が公差の範囲を超える場合には、条件Bの成立によりセンサ素子14の活性が判定されることとなる。つまり、上記ステップ144の処理によれば、素子インピーダンスにどのような誤差が重畳しているにせよ、素子温が、公差の範囲で認められている上限温度(活性判定温度+ΔT)に達する以前には活性判定を完了させることができる。このため、図7に示すルーチンによれば、センサ素子14の劣化に伴い、活性判定の時期が大幅に遅れるのを確実に防ぐことができる。
図7に示すルーチン中、上記ステップ142の処理によりxactst=ONの成立が認められた場合は、内燃機関の始動後、一旦はセンサ素子14が活性判定温度に達したと判断できる。この場合は、次に、素子インピーダンスZが活性判定値Zact以下の値を維持しているか(Z≦Zact?)が判別される(ステップ148)。その結果、Z≦Zactが成立すると判別された場合は、センサ素子14の活性が維持されていることを表すべく、活性フラグxactがONとされる(ステップ150)。一方、Z≦Zactの成立が認められないと判別された場合は、何らかの原因でセンサ素子14が非活性状態になったと判断され、活性フラグxactがOFFとされる(ステップ152)。
以上説明した通り、図7に示すルーチンによれば、センサ素子14が初期の特性を示す間は、主として条件Aの判定により、素子温が現実に活性判定温度に到達した時点の直後において、活性判定を行うことができる。そして、センサ素子14の劣化が進んだ後においても、遅くとも現実の素子温が(活性判定温度+ΔT)に達した時点で活性判定を行うことができる。このため、本実施形態の装置によれば、何ら学習的な処理に頼ることなく、空燃比センサ10の暖機時に、センサ素子14の劣化状態をリアルタイムに判断して、常に迅速に活性判定を完了させることができる。
ところで、上述した実施の形態1においては、センサ素子14の受容熱量が活性判定熱量に達したか否かを、吸入空気量積算値GAsumに基づいて(GAsum≧GAsumtgが成立するか否かに基づいて)判断することとしているが、その判断の手法はこれに限定されるものではない。例えば、そのような判断は、内燃機関の始動後におけるヒータ26の通電時間の積算値、燃機関の始動後におけるヒータ26に対する電力量の積算値、或いは、燃料噴射量の積算値に基づいて行うこととしてもよい。このような変形例は、例えば、上記ステップ130においてヒータ26の通電時間、ヒータ26に対する電力量、或いは燃料噴射量の積算量を積算し、上記ステップ140において「センサ活性判定ヒータ通電時間」、「センサ活性判定電力量積算値」、或いは「センサ活性判定燃料噴射量積算値」を算出し、また、上記ステップ144において、GAsum≧GAsumtgの判定に代えて、(ヒータ通電時間)≧(センサ活性判定ヒータ通電時間)の判定、(ヒータ電力量積算値)≧(センサ活性判定電力量積算値)、或いは、(燃料噴射量積算値)≧(センサ活性判定燃料噴射量積算値)の判定を行うことにより実現することができる。
また、上述した実施の形態1においては、センサ素子14の受容熱量が活性判定熱量に達したか否かを、吸入空気量積算値GAsumのみに基づいて判断することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、センサ素子14の受容熱量が活性判定熱量に達したか否かは、(1)吸入空気量積算値GAsumがセンサ活性判定吸入空気量積算値に達したか、(2)ヒータ通電時間がセンサ活性判定ヒータ通電時間に達したか否か、(3)内燃機関の始動後におけるヒータ26に対する電力量の積算値がセンサ活性判定電力量積算値に達したか、および、(4)燃料噴射量がセンサ活性判定燃料噴射量積算値に達したか否かのうち、2つ以上の条件の組み合わせから判断することとしてもよい。
また、上述した実施の形態1においては、センサ活性判定吸入空気量積算値GAsumtgを、始動時冷却水温TWIに応じて異ならしめることとしているが(図10参照)、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、センサ活性判定吸入空気量積算値GAsumtgは、冷却水温TWIによらず常に一定の値で代用することとしてもよい(センサ活性判定ヒータ通電時間、センサ活性判定電力量積算値、およびセンサ活性判定燃料噴射量積算値についても同様)。
実施の形態2.
次に、図11乃至図13を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。本実施形態の装置は、上述した実施の形態1の装置において、マイクロコンピュータ34に、上記図7に示すルーチンに代えて、後述する図11に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
上述した実施の形態1では、吸入空気量積算値GAsumを、センサ素子14の受容熱量の代用値として用いることとしている。そして、そこでは、始動時冷却水温TWIに応じてセンサ活性判定吸入空気量積算値GAsumtgを可変とすることで、その値GAsumtgを、センサ素子14を現実に活性化させるのに必要な吸入空気量積算値GAsumと整合させることとしている。
内燃機関の始動後にセンサ素子14が受容する熱量は、主としてヒータ26から発せられた熱量の総和により決せられる。そして、ヒータ26から発せられる熱量の総和は、ヒータ26が単位時間当たりに発生する熱量と、ヒータ26の通電時間とにより決定される。ヒータ26の単位時間当たりの発熱量は、ヒータ26に対する印加電圧に応じて変化する。従って、ヒータ通電時間が同じであっても、バッテリ電圧が異なれば、センサ素子14の受容熱量は異なるものとなる。一方、バッテリ電圧には、バッテリの状態に応じて有意な変化が生ずる。このため、センサ素子14の受容熱量が活性判定熱量に達したか否かを精度良く判定するためには、活性判定熱量(ここではGAsumtg)を設定するにあたり、暖機開始時における素子温(ここではTWI)に加えて、暖機仮定におけるヒータ印加電圧(例えばバッテリ電圧)をも考慮することが有効である。
図11は、上記の要求に応えるべく本実施形態において実行されるセンサ活性判定ルーチンのフローチャートを示す。図11に示すルーチンは、ステップ130および140が、ステップ160および170に置き換えられている点を除き、図7に示すルーチンと同様である。以下、図11において、上記図7に示すルーチンと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
図11に示すルーチンでは、ステップ130において、吸入空気量積算値算出ルーチンが終了すると、次に、バッテリ電圧なまし値(VBsm)算出ルーチンが実行される(ステップ160)。このルーチンでは、内燃機関の始動後、センサ素子14の暖機が終了するまでのバッテリ電圧VBの平均値をバッテリ電圧なまし値VBsmとして算出するための処理が行われる。
図12は、上記ステップ160の処理として実行されるバッテリ電圧なまし値算出ルーチンのフローチャートを示す。このルーチンでは、先ず、内燃機関の始動後、既にヒータ26の通電が開始されているか否かが判別される(ステップ162)。その結果、未だヒータ通電が開始されていないと判別された場合は、以後速やかに今回の処理サイクルが終了される。一方、ヒータ通電が既に開始されていると判別された場合は、次式に従ってバッテリ電圧VBsmが算出される。
VBsm=(VBsm×63+VB)/64 ・・・(1)
上記(1)式において、左辺のVBsmは、今回の処理サイクルで算出された最新のバッテリ電圧なまし値である。一方、右辺のVBsmは、前回の処理サイクル時に算出されたバッテリ電圧なまし値VBsmであり、右辺のVBは今回の処理サイクルで検出されたバッテリ電圧VBである。上記(1)式によれば、処理サイクル毎に、最新のバッテリ電圧VBを1/64の比率で反映させることにより、バッテリ電圧なまし値VBsmを最新値に更新することができる。
図11に示すルーチンにおいて、バッテリ電圧なまし値ルーチンが終了すると、次に、センサ活性判定吸入空気量積算値(GAsumtg)の算出処理が実行される(ステップ170)。本実施形態において、この値GAsumtgは、既述した理由により、始動時冷却水温TWIとバッテリ電圧なまし値VBsmとに基づいて算出される。
図13は、本実施形態においてマイクロコンピュータ34が記憶しているGAsumtgのマップの一例である。このマップにおいて、センサ活性判定吸入空気量積算値GAsumtgは、始動時冷却水温TWIが低いほど、また、バッテリ電圧VBsmが低いほど多量となるように定められている。このようなマップによれば、始動時冷却水温TWIが低くセンサ素子14の暖機に大きな熱量が必要であるほど、また、バッテリ電圧VBが低くセンサ素子14の暖機に長いヒータ通電時間が必要であるほど、センサ活性判定吸入空気量積算値GAsumtgを大きな値に設定することができる。このため、本実施形態の装置によれば、暖機開始時における素子温や暖機過程におけるバッテリ電圧VBの高低に影響されることなく、センサ素子14が活性温度に達したと判定できる最小のGAsumを常に適正にGAsumtgとして設定することができる。
図11に示すルーチンにおいて、ステップ170に次いで実行される処理は、図7に示すルーチン中で実行される処理と同様である(ステップ142〜152)。これらの処理によれば、素子インピーダンスZが活性判定値Zact以下に低下するか(条件A)、或いは、吸入空気量積算値GAsumがセンサ活性判定吸入空気量積算値GAsumtgに達するか(条件B)により、センサ素子14の活性判定がなされる。そして、本実施形態では、センサ活性判定吸入空気量積算値GAsumtgにバッテリ電圧VBが反映されているため、条件Bに基づく活性判定を、実施の形態1の場合に比して高い精度で行うことができる。このため、本実施形態の装置によれば、実施の形態1の装置と同様の効果が達成できることに加えて、その装置に比して、更に高い精度でセンサ素子14の活性が判定できるという効果を得ることができる。
ところで、上述した実施の形態2においては、センサ素子14の受容熱量が活性判定熱量に達したか否かを、吸入空気量積算値GAsumに基づいて判断することとしているが、その判断の手法はこれに限定されるものではない。例えば、そのような判断は、内燃機関の始動後におけるヒータ26の通電時間の積算値、内燃機関の始動後におけるヒータ26に対する電力量の積算値、或いは、燃料噴射量の積算値に基づいて行うこととしてもよい(実施の形態1の変形例参照)。
また、上述した実施の形態2においては、センサ素子14の受容熱量が活性判定熱量に達したか否かを、吸入空気量積算値GAsumのみに基づいて判断することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、センサ素子14の受容熱量が活性判定熱量に達したか否かは、(1)吸入空気量積算値GAsumがセンサ活性判定吸入空気量積算値に達したか、(2)ヒータ通電時間がセンサ活性判定ヒータ通電時間に達したか否か、(3)内燃機関の始動後におけるヒータ26に対する電力量の積算値がセンサ活性判定電力量積算値に達したか、および、(4)燃料噴射量がセンサ活性判定燃料噴射量積算値に達したか否かのうち、2つ以上の条件の組み合わせから判断することとしてもよい。
実施の形態3.
次に、図14乃至図16を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。本実施形態の装置は、上述した実施の形態1または2の装置において、マイクロコンピュータ34に、上記図7または図11に示すルーチンに代えて、後述する図14に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
上述した実施の形態1および2では、既述した通り、初期の段階では条件Aが条件Bに先だって成立し、センサ素子14が公差範囲を外れる程度に劣化すると条件Aに先だって条件Bが成立するような設定が施されている。この場合、条件Bが条件Aより先に成立すれば、センサ素子14に劣化が生じていることが判断できる。ところで、センサ素子14に劣化が生じ、素子インピーダンスZに増加方向のシフトが生ずると、素子温が活性温度(700℃)に達した時点で素子インピーダンスZが目標インピーダンスZtgまで低下しない事態が生ずる。この場合、目標インピーダンスZtgが一定であれば、ヒータ26のフィードバック制御領域においてセンサ素子14に過熱が生ずることになる。そこで、本実施形態の装置は、条件Bが条件Aに先だって成立したか否かを判別し、その条件が成立する場合には、目標インピーダンスZtgを上昇方向にシフトさせることとした。
図14は、上記の機能を実現すべく本実施形態においてマイクロコンピュータ34が実行するセンサ活性判定ルーチンのフローチャートである。図11に示すルーチンは、ステップ130の前にステップ180が挿入されている点、および、ステップ144および146がステップ190に置き換えられている点を除き、図7に示すルーチンと同様である。以下、図14において、上記図7に示すルーチンと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
図14に示すルーチンでは、その起動の直後にイニシャル処理が実行される(ステップ180)。イニシャル処理は、具体的には、図15に示すフローチャートに沿って行われる。ここでは、マイクロコンピュータ34に接続されているSRAM(図示省略)から、目標インピーダンス学習値Ztggおよび活性判定学習値Zactgを読み出す処理(ステップ182)、およびそれらの学習値ZtggおよびZactgを、それぞれ目標インピーダンスZtgおよび活性判定値Zactに設定する処理(ステップ184)が順次行われる。
図14に示すルーチンでは、また、ステップ142の処理により、活性判定終了フラグxactstがONでないと判別された場合に、学習制御ルーチンが実行される(ステップ190)。学習制御ルーチンは、目標インピーダンス学習値Ztggおよび活性判定学習値Zactgを学習するためのルーチンである。
図16は、上記ステップ190において実行される学習制御ルーチンのフローチャートを示す。図16に示すルーチンでは、先ず、吸入空気量積算値GAsumが、センサ活性判定吸入空気量積算値GAsumtgより少ないか否かが判別される(ステップ192)。つまり、ここでは、既述した条件Bの成否が判断される。
GAsum<GAsumの成立(条件Bの不成立)が認められた場合は、受容熱量を判断の基礎とする限りはセンサ素子14の活性が未だ判定できないと判断できる。この場合は、次に、素子インピーダンスZが活性判定値Zact以下となっているか、つまり、条件Aが成立しているか否かが判別される(ステップ194)。
上記ステップ194において、Z≦Zactの成立が認められない場合は、素子インピーダンスZを判断の基礎としても、センサ素子14の活性は判定できないと判断できる。この場合は、センサ素子14が非活性状態であると判定された後(ステップ196)、学習制御ルーチンが終了される。
一方、上記ステップ194において、Z≦Zactの成立が認められた場合は、素子インピーダンスZを判断の基礎とした場合には、センサ素子14の活性が判定できると判断できる。つまり、この場合は、条件Bに先だって条件Aが成立したこと、および、センサ素子14が活性状態に至ったことが判断できる。この場合、先ず、センサ素子14の活性判定がなされ、活性判定フラグxactおよび活性判定終了フラグxactstが共にONとされる(ステップ198)。
次に、学習補正量Zgが正の値であるか否かが判別される(ステップ200)。図16に示すルーチンでは、後述の如く、センサ素子14の劣化が認められた場合に、活性判定値Zact(厳密には活性判定学習値)が正方向に補正(インクリメント)される。学習補正量Zgは、その活性判定値Zactの補正量に相当する係数である。従って、Zg>0が成立する場合は、活性判定値Zactが初期の値より増加方向に補正されていると判断できる。
ステップ200の処理は、条件B(GAsum≧GAsumtg)からはセンサ素子14の活性が判定できないが、条件A(Z≦Zact)の成立が認められる状況下で実行される処理である。この場合、仮にZactが過剰に大きな値であるとすれば、素子温が活性判定温度に達していないにも関わらずセンサ素子14の活性が判定されることとなる。そして、学習補正量Zgが正の値である場合には、学習の結果として、活性判定値Zactが過剰な値となっている可能性があると判断できる。このため、上記ステップ200においてZg>0の成立が認められた場合は、条件Aの成立時期を遅らせるべく、学習補正量Zgのデクリメント処理が行われる(ステップ202)。尚、このようにして学習補正量Zgがデクリメントされた場合、目標インピーダンス学習値Ztggおよび活性判定学習値Zactgも、同様にデクリメントされるものとする。
これに対して、上記ステップ200の処理によりZg>0の成立が認められない場合は、活性判定値Zactが過剰な値に補正されている可能性はないと判断できる。つまり、この場合は、当初の設定通りに、条件Aが条件Bに先だって成立し、その結果、条件Aの成立を根拠にセンサ素子14の活性が判定されたに過ぎないと判断できる。この場合は、以後、何ら処理が行われることなく、学習制御ルーチンが終了される。
図16に示すルーチンにおいて、上記ステップ192の処理により、GAsum<GAsumtgが成立しないと判別された場合は、その処理に次いで、素子インピーダンスZが活性判定値Zact以下となっているかが判別される。その結果、Z≦Zactの成立が認められる場合は、条件Bおよび条件Aが何れも成立していると判断できる。この場合は、以後、センサ素子14の活性判定がなされた後(ステップ206)、今回の処理サイクルが終了される。
一方、上記ステップ204において、Z≦Zactが成立しないと判別された場合は、センサ素子14の受容熱量が活性判定熱量に達した(条件Bが成立した)と判断された時点で、素子インピーダンスZが活性判定値Zactにまで低下していない(条件Aが成立していない)と判断することができる。この場合は、センサ素子14の劣化に伴い、素子インピーダンスZが増加側にシフトした可能性が高いと判断され。次に、学習条件が成立しているか否かが判別される(ステップ208)。
上記ステップ208では、条件Aに先だって条件Bが成立するという現象から、センサ素子14の劣化を帰結するに足る条件が成立しているか否かが判断される。具体的には、始動時冷却水温TWIが学習許可温度以下であったか(内燃機関の始動は冷間始動であったか)など、センサ素子14の暖機環境が、特異な環境でなかったかが判別される。その結果、学習条件の成立が認められないと判別された場合は、以後速やかに今回の処理サイクルが終了される。一方、学習条件の成立が認められた場合は、目標インピーダンス学習値Ztgg、活性判定学習値Zactg、および学習補正量Zgが、それぞれインクリメントされる(ステップ210)。
図16に示すルーチンによれば、上記ステップ202の処理、および上記ステップ210の処理により、目標インピーダンス学習値Ztgg、活性判定学習値Zactg、および学習補正量Zgが更新される。このようにして更新された値は、既述したSRAMに書き込まれる。そして、図14に示すルーチン中、既述したステップ180のイニシャル処理では、常に最新の学習値Ztgg、Zactgが、目標インピーダンスZtgおよび活性判定値Zactにセットされる。このため、本実施形態の装置によれば、センサ素子14の劣化が進んだ後に、条件Aの成立が不当に遅延するのを防ぎ、また、ヒータ26のフィードバック制御領域でセンサ素子14が過熱するのを防ぐことができる。
ところで、上述した実施の形態3の説明においては、図16に示すルーチン中、ステップ210および202の処理により、Ztgg、ZactgおよびZgをインクリメントまたはデクリメントすること、つまり、それらの学習値を「1」づつ増減させることとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、それらのステップ210,202で学習値を増減させる幅は「1」に限定されるものではなく、その幅は任意の「所定値」であればよい。
また、上述した実施の形態3においては、センサ素子14の劣化状態に合わせて、目標インピーダンスZtgと共に活性判定値Zactをも学習することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、活性判定値Zactは一定値としたまま、目標インピーダンスZtgのみを学習することとしてもよい。
本発明の内容および効果は、以下のように要約することができる。
すなわち、第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の排気通路に搭載される排気ガスセンサの制御装置であって、前記排気ガスセンサは活性温度に達することで活性状態となるセンサ素子を備え、前記センサ素子の素子インピーダンスを検出するインピーダンス検出装置と、前記素子インピーダンスが活性判定値にまで低下したか否かを判定するインピーダンス判定装置と、前記センサ素子の受容熱量を推定する受容熱量推定装置と、前記受容熱量が活性判定熱量に達したか否かを判定する熱量判定装置と、前記インピーダンス判定装置による判定、および前記熱量判定装置による判定の何れかが成立した時点で前記排気ガスセンサの活性判定を行う活性判定装置と、を備えるものである。
また、第2の発明は、第1の発明において、前記排気ガスセンサは、センサ素子を過熱するヒータを備え、前記排気ガスセンサの活性が要求される環境下で前記ヒータを駆動するヒータ駆動装置を備え、前記熱量判定装置は、前記排気ガスセンサの活性が要求された後のヒータ通電時間が活性判定時間に達したか否かに基づいて、前記センサ素子の受容熱量が活性判定熱量に達したか否かを判定するものである。
また、第3の発明は、第1の発明において、前記排気ガスセンサは、センサ素子を過熱するヒータを備え、前記排気ガスセンサの活性が要求される環境下で前記ヒータを駆動するヒータ駆動装置を備え、前記熱量判定装置は、前記排気ガスセンサの活性が要求された後のヒータに対する電力量の積算値が活性判定電力量積算値に達したか否かに基づいて、前記センサ素子の受容熱量が活性判定熱量に達したか否かを判定するものである。
また、第4の発明は、第1の発明において、前記熱量判定装置は、内燃機関の始動後に生じた吸入空気量の積算値が活性判定空気量に達したか否かに基づいて、前記センサ素子の受容熱量が活性判定熱量に達したか否かを判定するものである。
また、第5の発明は、第1の発明において、前記熱量判定装置は、内燃機関に対して、その始動後に供給された燃料の積算量が活性判定燃料量に達したか否かに基づいて、前記センサ素子の受容熱量が活性判定熱量に達したか否かを判定するものである。
また、第6の発明は、第1乃至第5の発明の何れかにおいて、内燃機関の始動時冷却水温を検知する始動時水温検知装置を備え、前記熱量判定装置は、前記始動時冷却水温が低いほど前記活性判定熱量を多量とする活性判定熱量設定装置を含むものである。
また、第7の発明は、第1乃至第6の発明の何れかにおいて、前記排気ガスセンサは、センサ素子を過熱するヒータを備え、前記排気ガスセンサの活性が要求される環境下で前記ヒータを駆動するヒータ駆動装置と、バッテリ電圧を検知するバッテリ電圧検知装置とを備え、前記受容熱量推定装置は、前記センサ素子の暖機時間と相関を有する暖機期間相関値を検出する暖機期間相関値算出装置を備え、前記熱量判定装置は、前記暖機期間相関値がセンサ活性判定相関値に達した時点で前記受容熱量が前記活性判定熱量に達したと判断する装置と、前記センサ素子の暖機過程におけるバッテリ電圧が低いほど前記センサ活性判定相関値を大きな値に設定する判定値設定装置とを備えるものである。
また、第8の発明は、第1乃至第7の発明の何れかにおいて、前記排気ガスセンサは、センサ素子を過熱するヒータを備え、前記排気ガスセンサの活性が要求される環境下で前記ヒータを駆動するヒータ駆動装置を備え、当該ヒータ駆動装置は、前記素子インピーダンスが目標インピーダンスとなるように前記ヒータをフィードバック制御するフィードバック制御装置を含み、前記センサ素子の受容熱量に対して前記素子インピーダンスが過大であると判断される場合に、前記センサ素子の劣化を判定する劣化判定装置と、前記センサ素子の劣化が判定された場合に、前記目標インピーダンスを増大方向に補正する目標インピーダンス補正装置と、を備えるものである。
また、第9の発明は、第1乃至第8の発明の何れかにおいて、前記排気ガスセンサは、センサ素子を過熱するヒータを備え、前記排気ガスセンサの活性が要求される環境下で前記ヒータを駆動するヒータ駆動装置を備え、当該ヒータ駆動装置は、前記素子インピーダンスが目標インピーダンスとなるように前記ヒータをフィードバック制御するフィードバック制御装置を含み、前記センサ素子の受容熱量に対して前記素子インピーダンスが過大であると判断される場合に、前記センサ素子の劣化を判定する劣化判定装置と、前記センサ素子の劣化が判定された場合に、前記活性判定値を増大方向に補正する活性判定値補正装置と、を備えるものである。
また、第10の発明は、第8または第9の発明において、前記インピーダンス判定装置により判定される条件と、前記受容熱量推定装置により判定される条件とは、前記センサ素子が初期のインピーダンスを示す場合には、前者の条件が後者の条件に比して早期に成立するように設定されており、前記劣化判定装置は、後者の条件が前者の条件より早期に成立した場合に、前記素子インピーダンスが前記受容熱量に対して過大であると判断するものである。
また、第11の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の排気通路に搭載される排気ガスセンサの制御装置であって、前記排気ガスセンサは活性温度に達することで活性状態となるセンサ素子を備え、前記センサ素子の素子インピーダンスを検出するインピーダンス検出手段と、前記素子インピーダンスが活性判定値にまで低下したか否かを判定するインピーダンス判定手段と、前記センサ素子の受容熱量を推定する受容熱量推定手段と、前記受容熱量が活性判定熱量に達したか否かを判定する熱量判定手段と、前記インピーダンス判定手段による判定、および前記熱量判定手段による判定の何れかが成立した時点で前記排気ガスセンサの活性判定を行う活性判定手段と、を備えるものである。
第1または第11の発明によれば、素子インピーダンスが活性判定値にまで低下するか、或いは、センサ素子の受容熱量が活性判定熱量に達した時点で排気ガスセンサの活性を判定することができる。つまり、センサ素子の劣化に伴って素子インピーダンスが活性判定値に低下する時点に遅れが生じても、センサ素子の受容熱量に基づく判定により、センサ素子の活性判定を遅滞なく行うことができる。このように、本発明によれば、活性判定値の学習に頼ることなく、センサ素子の活性判定を常に迅速に行うことができる。
第2の発明によれば、ヒータ通電時間が活性判定時間に達したか否かに基づいて、センサ素子の受容熱量が活性判定熱量に達したか否かを精度良く判定することができる。
第3の発明によれば、ヒータに対する電力量の積算値が活性判定電力量積算値に達したか否かに基づいて、センサ素子の受容熱量が活性判定熱量に達したか否かを精度良く判定することができる。
第4の発明によれば、内燃機関の始動後に生じた吸入空気量の積算値が活性判定空気量に達したか否かに基づいて、センサ素子の受容熱量が活性判定熱量に達したか否かを精度良く判定することができる。
第5の発明によれば、内燃機関に供給された燃料の積算量が活性判定燃料量に達したか否かに基づいて、センサ素子の受容熱量が活性判定熱量に達したか否かを精度良く判定することができる。
第6の発明によれば、内燃機関の始動時冷却水温が低いほど活性判定熱量を多量とすることができる。排気ガスセンサが活性状態となるのに必要な熱量は、始動時冷却水温が低く、暖機開始時点のセンサ素子温が低いほど多量となる。本発明によれば、そのような暖機開始時の環境を考慮することで、センサ素子の受容熱量に関する活性判定の精度を高めることができる。
第7の発明によれば、ヒータを用いたセンサ素子の暖機が行われる期間がセンサ活性判定相関値に相当する値となった時点で受容熱量が活性判定熱量に達したと判断することができる。そして、ここでは、センサ素子の暖機過程におけるバッテリ電圧が低いほどセンサ活性判定相関値を大きな値とすることができる。ヒータの発する熱量は、バッテリ電圧が低いほど小さくなる。そして、センサ素子の活性化には、ヒータの発する熱量が小さいほど長い期間が必要となる。本発明によれば、バッテリ電圧が低く、ヒータの発する熱量が少量となる状況下では、センサ活性判定相関値が大きな値とされるため、バッテリ電圧の高低に関わらず、受容熱量を基礎とする活性判定を常に正確に行うことができる。
第8の発明によれば、センサ素子の受容熱量が十分に多量であるにも関わらず、素子インピーダンスが過大な値を維持している場合に、センサ素子が劣化していると判断することができる。そして、その劣化が判定された際には、目標インピーダンスを増大方向に補正することにより、ヒータのフィードバック制御により、センサ素子が適正に活性温度に制御される状況を作り出すことができる。
第9の発明によれば、センサ素子の受容熱量が十分に多量であるにも関わらず、素子インピーダンスが過大な値を維持している場合に、センサ素子が劣化していると判断することができる。そして、その劣化が判定された際には、活性判定値を増大方向に補正することにより、素子インピーダンスに基づく活性判定が適正に行われる状況を作り出すことができる。このため、本発明によれば、センサ素子の劣化に伴う活性判定の遅れを防ぐことができる。
第10の発明によれば、センサ素子が初期のインピーダンスを示す状況下では、素子インピーダンスに基づく条件判定により活性判定を行うことができる。そして、センサ素子の劣化が進み、センサ素子の受容熱量に基づく判定により活性判定がなされる状況に至った時点で素子インピーダンスが過大であり、センサ素子に劣化が生じていると判断することができる。このように、本発明によれば、迅速な活性判定を可能とするための条件判定の結果を利用することにより、新たな条件判定を行うことなく素子インピーダンスの劣化の有無を精度良く判断することができる。
尚、上述した実施の形態1においては、マイクロコンピュータ34が素子インピーダンスを検出することにより前記第1の発明における「インピーダンス検出装置」または前記第11の発明における「インピーダンス検出手段」が、上記ステップ144において条件Aの成否を判定することにより前記第1の発明における「インピーダンス判定装置」または前記第11の発明におけるインピーダンス判定手段」が、上記ステップ130の処理を実行することにより前記第1の発明における「受容熱量推定装置」または前記第11の発明における受容熱量推定手段」が、上記ステップ144において条件Bの成否を判定することにより前記第1の発明における「熱量判定装置」または前記第11の発明における「熱量判定手段」が、上記ステップ146の処理を実行することにより前記第1の発明における「活性判定装置」または前記第11の発明における活性判定手段」が、それぞれ実現されている。また、上述した実施の形態1においては、ヒータ制御回路38が前記第2または第3の発明における「ヒータ駆動装置」に相当していると共に、マイクロコンピュータ34が上記ステップ120の処理を実行することにより前記第6の発明における「始動時水温検知装置」が実現されている。
また、上述した実施の形態2においては、ヒータ制御回路38が前記第7の発明における「ヒータ駆動装置」に相当していると共に、マイクロコンピュータ34が、上記ステップ160の処理を実行することにより前記第7の発明における「バッテリ電圧検知装置」が、上記ステップ130の処理を実行することにより前記第7の発明における「暖機期間相関値算出装置」が、上記ステップ144において条件Bによる判定を行うことにより前記第7の発明における「前記受容熱量が前記活性判定熱量に達したと判断する装置」が、上記ステップ170の処理を実行することにより前記第7の発明における「判定値設定装置」が、それぞれ実現されている。
また、上述した実施の形態3においては、ヒータ制御回路38が前記第8または第9の発明における「ヒータ駆動装置」に相当していると共に、マイクロコンピュータ34が、上記ステップ116の処理を実行することにより前記第8または第9の発明における「フィードバック制御装置」が、上記ステップ192および204の処理を実行することにより前記第8または第9の発明における「劣化判定装置」が、上記ステップ210の処理を実行することにより前記第8の発明における「目標インピーダンス補正装置」または第9の発明における「活性判定値補正装置」が、それぞれ実現されている。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に搭載される排気ガスセンサの制御装置であって、
前記排気ガスセンサは活性温度に達することで活性状態となるセンサ素子を備え、
前記センサ素子の素子インピーダンスを検出するインピーダンス検出装置と、
前記素子インピーダンスが活性判定値にまで低下したか否かを判定するインピーダンス判定装置と、
前記センサ素子の受容熱量を推定する受容熱量推定装置と、
前記受容熱量が活性判定熱量に達したか否かを判定する熱量判定装置と、
前記インピーダンス判定装置による判定、および前記熱量判定装置による判定の何れかが成立した時点で前記排気ガスセンサの活性判定を行う活性判定装置と、
を備える排気ガスセンサの制御装置。
【請求項2】
前記排気ガスセンサは、センサ素子を過熱するヒータを備え、
前記排気ガスセンサの活性が要求される環境下で前記ヒータを駆動するヒータ駆動装置を備え、
前記熱量判定装置は、前記排気ガスセンサの活性が要求された後のヒータ通電時間が活性判定時間に達したか否かに基づいて、前記センサ素子の受容熱量が活性判定熱量に達したか否かを判定する請求項1記載の排気ガスセンサの制御装置。
【請求項3】
前記排気ガスセンサは、センサ素子を過熱するヒータを備え、
前記排気ガスセンサの活性が要求される環境下で前記ヒータを駆動するヒータ駆動装置を備え、
前記熱量判定装置は、前記排気ガスセンサの活性が要求された後のヒータに対する電力量の積算値が活性判定電力量積算値に達したか否かに基づいて、前記センサ素子の受容熱量が活性判定熱量に達したか否かを判定する請求項1記載の排気ガスセンサの制御装置。
【請求項4】
前記熱量判定装置は、内燃機関の始動後に生じた吸入空気量の積算値が活性判定空気量に達したか否かに基づいて、前記センサ素子の受容熱量が活性判定熱量に達したか否かを判定する請求項1記載の排気ガスセンサの制御装置。
【請求項5】
前記熱量判定装置は、内燃機関に対して、その始動後に供給された燃料の積算量が活性判定燃料量に達したか否かに基づいて、前記センサ素子の受容熱量が活性判定熱量に達したか否かを判定する請求項1記載の排気ガスセンサの制御装置。
【請求項6】
内燃機関の始動時冷却水温を検知する始動時水温検知装置を備え、
前記熱量判定装置は、前記始動時冷却水温が低いほど前記活性判定熱量を多量とする活性判定熱量設定装置を含む請求項1乃至5の何れか1項記載の排気ガスセンサの制御装置。
【請求項7】
前記排気ガスセンサは、センサ素子を過熱するヒータを備え、
前記排気ガスセンサの活性が要求される環境下で前記ヒータを駆動するヒータ駆動装置と、
バッテリ電圧を検知するバッテリ電圧検知装置とを備え、
前記受容熱量推定装置は、前記センサ素子の暖機時間と相関を有する暖機期間相関値を検出する暖機期間相関値算出装置を備え、
前記熱量判定装置は、前記暖機期間相関値がセンサ活性判定相関値に達した時点で前記受容熱量が前記活性判定熱量に達したと判断する装置と、前記センサ素子の暖機過程におけるバッテリ電圧が低いほど前記センサ活性判定相関値を大きな値に設定する判定値設定装置とを備える請求項1乃至6の何れか1項記載の排気ガスセンサの制御装置。
【請求項8】
前記排気ガスセンサは、センサ素子を過熱するヒータを備え、
前記排気ガスセンサの活性が要求される環境下で前記ヒータを駆動するヒータ駆動装置を備え、
当該ヒータ駆動装置は、前記素子インピーダンスが目標インピーダンスとなるように前記ヒータをフィードバック制御するフィードバック制御装置を含み、
前記センサ素子の受容熱量に対して前記素子インピーダンスが過大であると判断される場合に、前記センサ素子の劣化を判定する劣化判定装置と、
前記センサ素子の劣化が判定された場合に、前記目標インピーダンスを増大方向に補正する目標インピーダンス補正装置と、
を備える請求項1乃至7の何れか1項記載の排気ガスセンサの制御装置。
【請求項9】
前記排気ガスセンサは、センサ素子を過熱するヒータを備え、
前記排気ガスセンサの活性が要求される環境下で前記ヒータを駆動するヒータ駆動装置を備え、
当該ヒータ駆動装置は、前記素子インピーダンスが目標インピーダンスとなるように前記ヒータをフィードバック制御するフィードバック制御装置を含み、
前記センサ素子の受容熱量に対して前記素子インピーダンスが過大であると判断される場合に、前記センサ素子の劣化を判定する劣化判定装置と、
前記センサ素子の劣化が判定された場合に、前記活性判定値を増大方向に補正する活性判定値補正装置と、
を備える請求項1乃至8の何れか1項記載の排気ガスセンサの制御装置。
【請求項10】
前記インピーダンス判定装置により判定される条件と、前記受容熱量推定装置により判定される条件とは、前記センサ素子が初期のインピーダンスを示す場合には、前者の条件が後者の条件に比して早期に成立するように設定されており、
前記劣化判定装置は、後者の条件が前者の条件より早期に成立した場合に、前記素子インピーダンスが前記受容熱量に対して過大であると判断する請求項8または9記載の排気ガスセンサの制御装置。
【請求項11】
内燃機関の排気通路に搭載される排気ガスセンサの制御装置であって、
前記排気ガスセンサは活性温度に達することで活性状態となるセンサ素子を備え、
前記センサ素子の素子インピーダンスを検出するインピーダンス検出手段と、
前記素子インピーダンスが活性判定値にまで低下したか否かを判定するインピーダンス判定手段と、
前記センサ素子の受容熱量を推定する受容熱量推定手段と、
前記受容熱量が活性判定熱量に達したか否かを判定する熱量判定手段と、
前記インピーダンス判定手段による判定、および前記熱量判定手段による判定の何れかが成立した時点で前記排気ガスセンサの活性判定を行う活性判定手段と、
を備える排気ガスセンサの制御装置。

【国際公開番号】WO2005/022141
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【発行日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513564(P2005−513564)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013016
【国際出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】