説明

排気ガス処理装置

【課題】内燃機関から排出される排気ガス中の粒子状物質の除去と窒素酸化物等の改質を効率的に行うことができる排気ガス処理装置を提供する。
【解決手段】内燃機関1の排気管3,4に接続して粒子状物質を含む排気ガスを処理する排気ガス処理装置10であって、中空管構造のハウジング11と、ハウジング内に排気ガスを取り込む導入口12と、導入口12からハウジング内に取り込まれた排気ガスを通過させる金属メッシュ体14と、金属メッシュ体14を通過した排気ガス中の粒子状物質の通過を妨げる金属構造体17と、金属メッシュ体14及び金属構造体17に向けて紫外線を照射してオゾン又はヒドロキシラジカルを生じさせる紫外線発生部材18と、紫外線が照射された後の排気ガスをハウジング11から排出する排出口13とを備えるように構成して、上記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス処理装置に関する。更に詳しくは、内燃機関から排出される排気ガス中の粒子状物質の除去と窒素酸化物等の改質を行うことができる排気ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関から排出される排気ガスには、粒子状物質(PM:particulate matter)が含まれている。粒子状物質を除去するための研究は従来から種々提案されている。
【0003】
特許文献1には、プラズマ放電を利用し、その放電時に発生した電子で粒子状物質を帯電させて、酸化マンガン担持基板への付着を促進し、その酸化マンガンの触媒作用によって粒子状物質を酸化分解するという技術が提案されている。この技術では、プラズマ放電時に発生したOHラジカルやオゾンでも粒子状物質を直接酸化して除去することができ、粒子状物質の除去をより一層促進できるとしている。
【0004】
特許文献2には、セラミックスのハニカムフィルタで排気ガス中の粒子状物質を捕獲し、捕獲した粒子状物質が予め設定した許容値を超えたときに加熱して、粒子状物質を燃焼して除去する技術が提案されている。この技術では、耐熱性フィルタで粒子状物質を捕獲し、任意のタイミングで捕獲した粒子状物質を除去できるとしている。
【0005】
他方、本発明者は紫外線を利用した処理装置を提案している(特許文献3)。この処理装置は、水が供給されて水滴で濡れた状態に維持される保水体と、この保水体から10mm以内の至近距離に設置され、波長が254nmの紫外線を保水体に照射させる水銀ランプとを備え、10℃〜40℃の温度域に制御しつつ、照射した紫外線のエネルギーで保水体からOHラジカルを生成させる装置である。この処理装置では、生成したOHラジカルを有する保水体にエチレンを含む気体を通過させて、生鮮食品から発生するエチレンを分解してエタンと水に改質するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−508840号公報
【特許文献2】特開2005−337153号公報
【特許文献3】特開2005−261428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1で提案する技術は、プラズマ放電を利用するので大きな電力量が必要となるため、自動車等のような移動機械が備える内燃機関に対しては、電力供給の観点から適さない。また、自動車エンジン等の内燃機関では、排気ガスの流速が速く、その排気ガスが含む粒子状物質の移動速度も速い。高速移動する粒子状物質の燃焼にプラズマ放電方式を適用した場合、粒子状物質と放電路との接触時間が短いため、放電エネルギーの授受効率が低くなる。そのため、粒子状物質を効果的に燃焼させるためには、放電エネルギーをより大きくしなければならないという難点がある。
【0008】
このような点から、プラズマ放電を利用した粒子状物質の燃焼技術では、装置が複雑且つ高価になるとともに大型化し、自動車等のような移動機械が備える内燃機関に対しては適さない。
【0009】
特許文献2で提案する技術は、ハニカムフィルタを利用しているので目詰まりが生じ易く、排気ガスの流通抵抗が大きくなるという難点がある。
【0010】
本発明者が提案した特許文献3の技術は、生鮮食品から生じるエチレン等の改質を目的としたものであるので、その技術を内燃機関用の処理装置に適用して粒子状物質を除去することは、装置の使用環境等の点でもそのまま適用することは困難である。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、内燃機関から排出される排気ガス中の粒子状物質の除去と窒素酸化物等の改質を効率的に行うことができる排気ガス処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明に係る排気ガス処理装置は、内燃機関の排気管に接続して粒子状物質を含む排気ガスを処理する排気ガス処理装置であって、中空管構造のハウジングと、該ハウジング内に排気ガスを取り込む導入口と、該導入口からハウジング内に取り込まれた排気ガスを通過させる金属メッシュ体と、該金属メッシュ体を通過した排気ガス中の粒子状物質の通過を妨げる金属構造体と、前記金属メッシュ体及び前記金属構造体に向けて紫外線を照射してオゾン又はヒドロキシラジカルを生じさせる紫外線発生部材と、紫外線が照射された後の排気ガスを前記ハウジングから排出する排出口と、を備えることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、粒子状物質を含む排気ガスが通過するハウジング内に、排気ガスを通過させる金属メッシュ体と、排気ガス中の粒子状物質の通過を妨げる金属構造体とを備え、さらにその金属メッシュ体と金属構造体に向けて紫外線を照射してオゾン又はヒドロキシラジカルを生じさせる紫外線発生部材を備えるので、生じたオゾン又はヒドロキシラジカルが排気ガス中の粒子状物質を酸化して除去できるとともに、排気ガス中の窒素酸化物等を酸化して無害なガスに改質することができる。こうした排気ガス処理装置は、プラズマ放電のような大電力を必要としない紫外線発生部材を備えるので、装置の軽量化と小型化を実現でき、自動車等のような移動機械が備える内燃機関に対して好ましく適用できる。
【0014】
本発明に係る排気ガス処理装置において、前記金属構造体は、気体を通過するが粒子状物質を捕獲する金属繊維積層体であり、前記紫外線発生部材は、200nm以下の波長の紫外線を発生する部材であり、前記金属メッシュ体を正極とし前記金属構造体を負極とする電圧を印加する電源をさらに備え、前記電圧の印加により、前記金属メッシュ体を通過した排気ガス中の粒子状物質は負の空間電荷を付着し、該粒子状物質は前記金属繊維積層体に近づくほど減速する。
【0015】
この発明によれば、金属メッシュ体を正極とし金属構造体を負極とする電圧を印加する電源をさらに備え、その電圧の印加により、金属メッシュ体を通過した排気ガス中の粒子状物質は負の空間電荷を付着し、その粒子状物質は金属繊維積層体に近づくほど減速する。減速した粒子状物質は、200nm以下の波長の紫外線の照射によって生じたオゾン又はヒドロキシラジカルに長時間接触できるので、粒子状物質を効率的に酸化させて除去することができる。また、気体を通過するが粒子状物質を捕獲する金属繊維積層体を金属構造体としたので、その金属繊維積層体に捕獲された粒子状物質も、生じたオゾン又はヒドロキシラジカルに長時間接触できるので、粒子状物質を効率的に酸化させて除去できる。
【0016】
本発明に係る排気ガス処理装置において、前記導入口側から前記排出口側に向かって前記金属メッシュ体、前記紫外線発生部材及び前記金属構造体の順で構成された処理ユニットが、前記ハウジングの軸方向に複数配置されている。
【0017】
この発明によれば、導入口側から排出口側に向かって金属メッシュ体、紫外線発生部材及び金属構造体の順で構成された処理ユニットが、ハウジングの軸方向に複数配置されているので、ハウジングの軸方向に処理ユニットを2以上並べることにより、例えば微小な粒子状物質が最初の処理ユニットで十分に酸化除去できない場合であっても、2番目以降の処理ユニットで酸化除去できる。また、窒素酸化物等が最初の処理ユニットで酸化改質できない場合であっても、2番目以降の処理ユニットで酸化改質できる。
【0018】
本発明に係る排気ガス処理装置において、前記金属メッシュ体は、前記ハウジングの軸方向に延びる複数の酸化チタン被覆メッシュ製円筒体であり、前記金属構造体は、前記酸化チタン被覆メッシュ製円筒体の中空部を途中で遮る位置に配置されて、前記酸化チタン被覆メッシュ製円筒体内での排気ガスの通過を遮って他の酸化チタン被覆メッシュ製円筒体内に進路変更させる遮蔽金属板であり、前記紫外線発生部材は、前記ハウジングの軸心位置に設けられて軸方向に延び、300nm〜400nmの波長の紫外線を発生する部材である。
【0019】
この発明によれば、金属メッシュ体を複数の酸化チタン被覆メッシュ製円筒体とし、金属構造体を酸化チタン被覆メッシュ製円筒体の中空部を途中で遮る遮蔽金属板とし、その遮蔽金属板を、酸化チタン被覆メッシュ製円筒体内での排気ガスの通過を遮って他の酸化チタン被覆メッシュ製円筒体内に進路変更させるものとしたので、排気ガスは、進路を変更しなから複数の酸化チタン被覆メッシュ製円筒体の中を進む。そして、酸化チタン被覆メッシュは紫外線発生部材から発生する300nm〜400nmの紫外線によって、オゾン又はヒドロキシラジカルを光化学反応によって生成するので、そのオゾン又はヒドロキシラジカルが、進路変更しなから進む排気ガス中の粒子状物質を酸化除去したり窒素酸化物等を酸化改質したりする。
【0020】
本発明に係る排気ガス処理装置において、前記酸化チタン被覆メッシュ製円筒体は同径からなり、前記ハウジング内に所定の間隔で隣接して設けられている、又は、前記酸化チタン被覆メッシュ製円筒体は異径からなり、前記ハウジング内に同心円状に設けられている。
【0021】
この発明によれば、(ア)酸化チタン被覆メッシュ製円筒体を同径とし、ハウジング内に所定の間隔で隣接して設けたり、(イ)酸化チタン被覆メッシュ製円筒体を異径とし、ハウジング内に同心円状に設けたりして構成したので、いずれの構成であっても、排気ガスを進路変更させなから複数の酸化チタン被覆メッシュ製円筒体の中を進めることができる。その結果、排気ガスの移動距離を長くして、生成したオゾン又はヒドロキシラジカルに長時間接触させることができるので、排気ガス中の粒子状物質の酸化除去と窒素酸化物等の酸化改質をより効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る排気ガス処理装置によれば、生じたオゾン又はヒドロキシラジカルが排気ガス中の粒子状物質を酸化して除去できるとともに、排気ガス中の窒素酸化物を酸化して無害なガスに改質できる。そして、こうした排気ガス処理装置は、プラズマ放電のような大電力を必要としない紫外線発生部材を備えるので、装置の軽量化と小型化を実現でき、自動車等のような移動機械が備える内燃機関に対して好ましく適用できる。
【0023】
また、本発明に係る排気ガス処理装置によれば、粒子状物質を金属繊維積層体に近づくほど減速させることができるので、粒子状物質を生じたオゾン又はヒドロキシラジカルに長時間接触できる。その結果、粒子状物質を効率的に酸化させて除去できる。
【0024】
また、本発明に係る排気ガス処理装置によれば、排気ガスを進路を変更しなから複数の酸化チタン被覆メッシュ製円筒体の中を進めることができ、さらに、酸化チタン被覆メッシュは紫外線発生部材から発生する300nm〜400nmの紫外線によって、オゾン又はヒドロキシラジカルを光化学反応で生成するので、そのオゾン又はヒドロキシラジカルが、進路変更しなから進む排気ガス中の粒子状物質を酸化除去したり窒素酸化物等を酸化改質したりすることができる。
【0025】
以上、本発明に係る排気ガス処理装置によれば、(i)低電力の紫外線発生部材を用いるので、プラズマ放電とは異なり、装置の低電力化、簡易化及び軽量化を図ることができ、自動車等のような移動機械が備える内燃機関に対して好ましく適用できる。(ii)粒子状物質を減速化したり排気ガスの進路を長くしたりすることができるので、オゾン又はヒドロキシラジカルと長時間接触させることができ、酸化除去や酸化改質を効率的に行うことができる。(iii)紫外線を照射し又は空気存在下の酸化チタンに紫外線を照射したので、生成したオゾン又はヒドロキシラジカルによって、粒子状物質の酸化除去と窒素酸化物等の酸化改質を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る排気ガス処理装置を内燃機関の排気口に接続したときの配置図である。
【図2】本発明に係る排気ガス処理装置の一例を示す断面図である。
【図3】金属メッシュ体の一例を示す平面図である。
【図4】紫外線発生部材である水銀ランプの一例を示す正面図である。
【図5】本発明に係る排気ガス処理装置の他の一例を示す断面図である。
【図6】本発明に係る排気ガス処理装置のさらに他の一例を示す断面図である。
【図7】図6の排気ガス処理装置を構成する酸化チタン被覆メッシュ製円筒体の一例を示す平面図である。
【図8】図6の排気ガス処理装置に使用される保持板の一例を示す平面図である。
【図9】本発明に係る排気ガス処理装置のさらに他の一例を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る排気ガス処理装置を図面を参照しつつ説明する。本発明の技術的範囲は、下記の記載や図面のみに限定されるものではない。
【0028】
[基本構成]
本発明に係る排気ガス処理装置10は、図1に示すように、内燃機関(エンジン)1の排気口2に連結する排気管(例えばSUS製のマフラー)3,4の途中に接続して粒子状物質を含む排気ガスを処理するための装置である。通常、図2等に示すような導入口12と排出口13とを有しており、その導入口12がマフラー3に連結し、排出口13がマフラー4に連結して設けられる。
【0029】
その基本的な構成は、図2〜図9に示すように、中空管構造のハウジング11と、ハウジング内に排気ガスを取り込む導入口12と、導入口12からハウジング内に取り込まれた排気ガスを通過させる金属メッシュ体14と、金属メッシュ体14を通過した排気ガス中の粒子状物質の通過を妨げる金属構造体17と、金属メッシュ体14及び金属構造体17に向けて紫外線を照射してオゾン又はヒドロキシラジカルを生じさせる紫外線発生部材18と、紫外線が照射された後の排気ガスをハウジング11から排出する排出口13と、を備える。
【0030】
本発明では、粒子状物質を含む排気ガスが通過するハウジング11内に、排気ガスを通過させる金属メッシュ体14と、排気ガス中の粒子状物質の通過を妨げる金属構造体17とを備えており、さらにその金属メッシュ体14と金属構造体17に向けて紫外線を照射してオゾン又はヒドロキシラジカルを生じさせる紫外線発生部材18を備えている。その結果、生じたオゾン又はヒドロキシラジカルが排気ガス中の粒子状物質を酸化して除去できるとともに、排気ガス中の窒素酸化物等を酸化して無害なガスに改質することができる。こうした排気ガス処理装置10は、プラズマ放電のような大電力を必要としない紫外線発生部材18を備えるので、装置の軽量化と小型化を実現でき、自動車等のような移動機械が備える内燃機関に対して好ましく適用できるという格別の効果を奏する。
【0031】
本発明に係る排気ガス処理装置10は、金属メッシュ体14と金属構造体17に向けて紫外線を照射してオゾン又はヒドロキシラジカルを生じさせる実施形態として、以下の2つの実施形態に大別できる。
【0032】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る排気ガス処理装置10は、上記した基本的な構成を備え、さらに図2に示すように、(1)金属構造体17を、気体を通過するが粒子状物質を捕獲する金属繊維積層体(符号17で表す)とし、(2)紫外線発生部材18を、200nm以下の波長の紫外線を発生する部材とし、さらに、(3)金属メッシュ体14を正極とし、金属構造体17を負極とする電圧を印加する電源21をさらに備えるように構成されている。
【0033】
こうした構成を備えた第1実施形態に係る排気ガス処理装置10によれば、排気ガス中の粒子状物質がオゾン又はヒドロキシラジカルと反応して酸化除去される効率を高めるため、粒子状物質がオゾン又はヒドロキシラジカルに接触する時間を長くすることができる。すなわち、電源21からの電圧の印加により、金属繊維積層体14を通過した排気ガス中の粒子状物質が負の空間電荷を付着するので、負の空間電荷を付着した粒子状物質は、金属繊維積層体17に近づくほど減速することになる。その結果、金属繊維積層体17で捕獲される粒子状物質をオゾン又はヒドロキシラジカルに接触させる時間を長くすることができる。
【0034】
以下、各構成について詳しく説明する。
【0035】
(ハウジング)
ハウジング11は、長手方向の両端が開放された中空構造からなるものであって、装置の外殻をなすものである。中空構造であれば、図2に示すような円形断面からなる円筒構造でも、多角形断面からなる角筒構造であってもよい。ハウジング11の長手方向の一方の端は、ハウジング内に排気ガスを取り込む導入口12となり、他方の端は、処理後の排気ガスを排出する排出口13となっている。
【0036】
ハウジング11の材質は、波長200nm以下の真空紫外線に対して耐久性のある材質であれば特に限定されないが、ステンレス鋼や炭素鋼等の鋼管が好ましく用いられる。このハウジング11は、その内部に紫外線発生部材18を備えるので、その紫外線発生部材18から照射された真空紫外線の外部への漏れを遮断する構造であることが好ましい。なお、円筒状のハウジング11の場合に、その内径は、例えば30mm〜100mm、好ましくは50mm〜80mm程度である。
【0037】
(導入口と排出口)
導入口12と排出口13は、図2に示すように、ハウジング11の長手方向の両端の開口部のことである。導入口12は、ハウジング11内に排気ガスを取り込む開口部であり、排出口13は、後述する金属構造体17を通過した排気ガスを排出する開口部である。この導入口12と排出口13は、図2に示すように、ハウジング11の内径と同じ内径からなるように構成されていてもよいし、小さい内径からなるように絞り加工された形態で構成されていてもよいし、大きい内径からなるように拡管加工された形態で構成されていてもよい。こうした導入口12と排出口13には、マフラー3,4が接続されている。
【0038】
(金属メッシュ体)
金属メッシュ体14は、導入口12からハウジング内に取り込まれた排気ガスを通過させることができる網目構造体である。そして、金属メッシュ体14は、図2に示すように、導入口12と紫外線発生部材18との間に、ハウジング11内の軸方向を遮るように設けられている。こうした金属メッシュ体14の形状は、ハウジング11の内面形状と同一又は略同一であり、例えばハウジング11の内面が円形である場合には、図3に示すような円形形状で形成されている。金属メッシュ体14の外縁には、金属メッシュ体14をハウジング11の内面に嵌合等するために、図3に示すようなフレーム15が設けられる。
【0039】
金属メッシュ体14は、図3の例では、フレーム15の内側で縦横に交差する網(メッシュ)16で形成されている。網目の細かさは特に限定されないが、例えば2μmの粒子状物質が抵抗なく自由に通過できる開口を持つメッシュであればよい。なお、排気ガスを通過することができるものであれば、必ずしも網16でなくてもよい。
【0040】
金属メッシュ体14の材質は、波長200nm以下の真空紫外線に対して耐久性があり、また、窒素酸化物や硫黄酸化物等の排気ガス成分に対しても耐久性のある金属であることが好ましい。そうした金属としては、例えば線径0.4mm、20メッシュ程度のタングステン製メッシュやステンレス製メッシュが好ましく採用されるが、これらに限定されない。なお、メッシュとは、1インチ当たりの目の数を表したものであり、例えば20メッシュは、1インチに20目(1cmでは8目)のものである。
【0041】
この金属メッシュ体14は、後述する金属構造体17との間に印加される電圧によって、正電極となる。正電極となった金属メッシュ体14には、負の空間電荷(負電荷)が集まるので、その金属メッシュ体14を通過する排気ガスに含まれる粒子状物質の全部又は一部は、負電荷を付着し、負に帯電した粒子状物質となって下流側に流れることになる。
【0042】
(金属構造体)
金属構造体17は、金属メッシュ体14を通過した排気ガス中の気体は通過するが、粒子状物質は捕獲される金属繊維積層体17である。そして、この金属繊維積層体17は、図2に示すように、紫外線発生部材18と排気口13との間に、ハウジング11内の軸方向を遮るように設けられている。こうした金属繊維積層体17の形状は、上記した金属メッシュ体14と同様、ハウジング11の内面形状と同一又は略同一であり、例えばハウジング11の内面が円形である場合には円形形状で形成されている。金属繊維積層体17の外縁も、上記した金属メッシュ体14と同様、金属繊維積層体17をハウジング11に内面に嵌合等するためのフレームが設けられることが好ましい。
【0043】
金属繊維積層体17は、排気ガス中の気体は通すが粒子状物質は通さない金属繊維の積層体であることが好ましく、例えば金属繊維で構成された不織布等を挙げることができる。金属繊維の線径は特に限定されないが、例えば直径20μm程度の金属繊維が用いられることが好ましい。金属繊維積層体17の開口は、例えば0.18μm程度の粒子状物質の通過を妨げ、捕獲できる大きさであればよい。金属繊維積層体17の空隙率は、例えば50%〜85%程度のように、気体の通過が可能なように空隙の占める割合が大きく形成されていることが好ましい。なお、排気ガス中の粒子状物質を捕獲できるものであれば、必ずしも不織布(金属繊維積層体17)でなくてもよい。
【0044】
金属繊維積層体17の材質は、波長200nm以下の真空紫外線に対して耐久性があり、また、窒素酸化物や硫黄酸化物等の排気ガス成分に対しても耐久性のある金属であることが好ましい。そうした金属としては、例えばタングステン繊維やステンレス繊維が好ましく採用されるが、これらに限定されない。金属繊維積層体17の厚さも特に限定されないが、例えば1mm〜5mm程度の厚さを挙げることができる。
【0045】
この金属繊維積層体17は、前記した金属メッシュ体14との間に印加される電圧によって負電極となる。負電極となった金属構造体17は、上流側に設けられた金属メッシュ体14で負電荷を付着し、負に帯電した粒子状物質を静電的に反発するように作用する。その結果、負の空間電荷を付着した粒子状物質は、金属繊維積層体17に近づくほど減速することになる。減速した粒子状物質は、紫外線照射によって発生したオゾン又はヒドロキシラジカルとの接触時間が長くなり、且つ金属繊維積層体17にも捕獲されるので、より効率的な酸化除去が可能となる。
【0046】
(電源)
電源21は、排気ガス中の粒子状物質を負に帯電させる金属メッシュ体14と、その粒子状物質を静電的に反発する金属繊維積層体17とに電圧を印加する装置である。電源21には、図2に示すように、バッテリー23が接続されている。電源21は、金属メッシュ体14を正電極とし、金属繊維積層体17を負電極とする電圧を印加する直流電源又は直流パルス電源である。特に直流パルス電圧を印加することが好ましい。
【0047】
(紫外線発生部材)
紫外線発生部材18は、金属メッシュ体14及び金属繊維積層体17に向けて波長200nm以下の真空紫外線を照射してオゾン又はヒドロキシラジカルを生じさせる部材である。この紫外線発生部材18は、図2に示すように、金属メッシュ体14と金属繊維積層体17との間に設けられるが、具体的には、粒子状物質を捕獲する金属繊維積層体17に向けて紫外線を照射するように配置されていることが好ましい。
【0048】
紫外線発生部材18としては、波長200nm以下の真空紫外線を少なくとも発するものであれば特に限定されず、真空紫外線のみを発するものでもよいし、真空紫外線と200nm以上の紫外線を同時に発するものであってもよい。例えば、アーク放電型のArAgランプ(波長185nm及び波長254nm、岡谷電機産業株式会社製)、誘電体バリア放電型のXeエキシマランプ(波長172nm、ウシオ電機株式会社製)、誘電体バリア放電型のArFエキシマランプ(波長193nm、ウシオ電機株式会社製)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fレーザー(157nm)等を挙げることができる。これらの紫外線発生部材18は、外部に設けられた定電圧装置22から所定電圧が印加されるが、消費電力が小さいので、従来のプラズマ放電とは異なり、装置の低電力化、簡易化及び軽量化を図ることができ、自動車等のような移動機械が備える内燃機関に対して好ましく適用できる。
【0049】
紫外線発生部材18は、円板構造の金属繊維積層体17の全面に満遍なく照射できるように、金属繊維積層体17の金属メッシュ体側に複数並べて配置することが好ましい。その配置態様は特に限定されないが、円板構造の金属繊維積層体17の面内に所定間隔を開けて並べることが好ましく、具体的には、紫外線発生部材18を保持フレームに取り付けて行うことができる。こうすることで、真空紫外線の照射によって生じたオゾン又は単寿命のヒドロキシラジカルを金属繊維積層体17上に堆積した粒子状物質に接触させることができ、その結果、粒子状物質の酸化除去を効率的に行うことができる。
【0050】
図4はアーク放電型のU字管ランプの一例である。このU字管ランプは、ガラス管からなる発光部19と、発光部19を保持する口金20とで構成されている。例えばこのU字管ランプを用いる場合には、U字管ランプを金属繊維積層体17の表面に複数並べることが好ましい。
【0051】
ここで、真空紫外線について説明する。一般に、紫外線とは、可視光線よりも波長が短く、X線よりも波長の長い電磁波であって、波長が10nm〜400nmの不可視光線をいう。さらに、波長が300nm〜400nmのものを近紫外線といい、波長が200nm〜300nmのものを遠紫外線という、波長が10nm〜200nmを真空紫外線という。
【0052】
(酸化除去作用及び酸化改質作用)
本発明に係る排気ガス処理装置10において、粒子状物質に対する酸化除去作用と排気ガスに対する酸化改質作用について詳しく説明する。
【0053】
導入口3から取り込まれた排気ガスは、電圧が印加されて正電極になっている金属メッシュ体14を通過する。金属メッシュ体14は負の空間電荷を引き寄せるので、その負の空間電荷を付着した粒子状物質は負に帯電した態様で下流に向かう。下流に向かった粒子状物質は、電圧が印加されて負電極になっている金属繊維積層体17に対して静電的に反発する。その結果、粒子状物質は金属繊維積層体17に近づくにつれて減速するとともに、粒子状物質は減速した状態で金属繊維積層体17に到達するので表面部分に主に捕獲される。
【0054】
一方、紫外線発生部材18から発する真空紫外線は、排気ガス中の水分に作用して酸素ラジカルとヒドロキシラジカルを生成させる。酸素ラジカルは酸素と結合してオゾンとなる。また、真空紫外線は、排気ガス中の酸素に作用してオゾンを生成させる。こうしたオゾン又はヒドロキシラジカルは、生成されてから消滅するまでの寿命が極めて短いことから、主に紫外線発生部材18の周辺に存在する。そのため、紫外線発生部材18の近傍を通過する粒子状物質の速度は遅い方が好ましく、また、紫外線発生部材18は粒子状物質を堆積する金属繊維積層体17の表面に近い位置に配置されていることが好ましい。その結果、粒子状物質を紫外線発生部材18の近傍を減速した状態で通過させることができ、さらに金属繊維積層体17の表面に粒子状物質を堆積させることができるので、粒子状物質をオゾン又はヒドロキシラジカルで酸化して除去することができる。
【0055】
また、生成したオゾン又はヒドロキシラジカルは、排気ガス中の窒素酸化物や硫黄酸化物等を酸化し、無害なガスに改質することができる。
【0056】
なお、オゾン又はヒドロキシラジカルは寿命が短いことから、紫外線発生部材18と金属繊維積層体17との距離は好ましくは1mm〜5mmの範囲とすることができ、特に好ましくは1mm〜3mmである。
【0057】
次に、粒子状物質の酸化除去作用と排気ガスの改質作用について具体的に説明する。
【0058】
波長200nm以下の真空紫外線が排気ガス中の水分に作用すると、式1に示すように酸素ラジカル(・O)とヒドロキシラジカル(・OH)が生成する。また、真空紫外線が排気ガス中の酸素に作用すると、式2に示すように酸素ラジカルが生成する。生成した酸素ラジカルは酸素と結合して、式3に示すようにオゾン(・O)を生成する。
【0059】
【化1】

【0060】
生成したヒドロキシラジカルは、式4に示すように粒子状物質を酸化(燃焼)して二酸化炭素にし、消失除去する。また、生成したヒドロキシラジカルは、式5に示すように二酸化窒素を酸化して硝酸ラジカルにし、その硝酸ラジカルは式6に示すように水分と反応して窒素ガスに改質される。
【0061】
【化2】

【0062】
一方、生成したオゾンは、式7に示すように粒子状物質を酸化(燃焼)して二酸化炭素にし、消失除去する。また、生成したオゾンは、式8に示すように二酸化窒素を酸化して五酸化窒素に改質する。
【0063】
【化3】

【0064】
以上のように、真空紫外線が水分や酸素ガスに作用して生じたオゾン又はヒドロキシラジカルが、排気ガス中の粒子状物質に作用してその粒子状物質を酸化除去するとともに、排気ガス中のガス成分に作用してそのガス成分を酸化改質することができる。
【0065】
以上説明したように、本発明に係る排気ガス処理装置10によれば、金属メッシュ体14を正極とし金属構造体(金属繊維積層体)17を負極として配置し、金属メッシュ体14を通過した排気ガス中の粒子状物質に負の空間電荷を付着させ、その粒子状物質を金属繊維積層体17に近づくほど減速させることができる。減速した粒子状物質は、200nm以下の真空紫外線の照射によって生じたオゾン又はヒドロキシラジカルに長時間接触できるので、粒子状物質を効率的に酸化させて除去することができる。また、気体を通過するが粒子状物質を捕獲する金属繊維積層体17を金属構造体としたので、その金属繊維積層体17に捕獲された粒子状物質も、生じたオゾン又はヒドロキシラジカルに長時間接触できるので、粒子状物質を効率的に酸化させて除去できる。さらに、排気ガス中の気体成分についても、酸化して無害なガスに酸化改質することができる。
【0066】
(応用例)
次に、図5を参照して、本発明に係る排気ガス処理装置の他の一例(応用例)について説明する。この排気ガス処理装置30は、導入口12側から排出口13側に向かって金属メッシュ体14、紫外線発生部材18及び金属繊維積層体(金属構造体)17の順で構成された処理ユニットが、ハウジング11の軸方向に複数配置されている例である。ここでは、3つの処理ユニットを直列配列しているが、2つの処理ユニットを直列配列したものであっても、4つ以上の処理ユニットを直列配列したものであってもよい。なお、以下では、図2に示す排気ガス処理装置10と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0067】
この排気ガス処理装置30では、導入口12側から排出口13側に向かって、金属メッシュ体14、紫外線発生部材18及び金属構造体17(17A,17B,17C)の順で構成された単位処理ユニットが、ハウジング11の軸方向に3つ直列に配置されている。ハウジング11は、3つの単位処理ユニットを内部に収容できるようにやや長めの中空管で構成されていることが好ましいが、それ以外は図2に示した排気ガス処理装置10の場合と同じである。また、金属メッシュ体14、紫外線発生部材18及び金属構造体17(17A,17B,17C)についても図2に示した排気ガス処理装置10の場合と同じであり、単位処理ユニット毎に粒子状物質の減速作用、オゾン又はヒドロキシラジカルによる酸化除去作用及び酸化改質作用を実行することができる。
【0068】
なお、各処理ユニットを構成する金属メッシュ体14と金属繊維積層体17との間には、電源21から電圧が印加される。各金属メッシュ体14では、その都度、粒子状物質が負に帯電し、各金属繊維積層体17に近づくにつれて減速し、各区間での減速作用を実行できる。
【0069】
金属繊維積層体17A,17B,17Cは、上流側に位置する金属繊維積層体17Aから下流側に位置する金属繊維積層体17Cに向かうにしたがって、その空隙率が順次小さくなるように構成することができる。一例としては、上流側の金属繊維積層体17Aを85%とし、中間部の金属繊維積層体17Bを80%とし、下流側の金属繊維積層体17Cを75%とすることができる。こうすることによって、最も上流側に位置する金属繊維積層体17Aでは、比較的大きな粒子状物質を酸化除去し、順に小さな粒子状物質を酸化除去することができる。その結果、排気ガスに含まれる様々な大きさの粒子状物質を確実に酸化除去することができる。また、上流側に配置される金属繊維積層体17Aの空隙率を大きくすることで、堆積した粒子状物質によって金属繊維積層体17Aの目詰まりを防ぐこともできる。
【0070】
この排気ガス処理装置30によれば、ハウジング11の軸方向に処理ユニットを2以上並べることにより、例えば微小な粒子状物質が最初の処理ユニットで十分に酸化除去できない場合であっても、2番目以降の処理ユニットで酸化除去できる。また、窒素酸化物等が最初の処理ユニットで酸化改質できない場合であっても、2番目以降の処理ユニットで酸化改質できる。
【0071】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る排気ガス処理装置40は、上記した基本的な構成を備え、さらに図6に示すように、(I)金属メッシュ体を、ハウジング41の軸方向に延びる複数の酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44とし、(II)金属構造体を、酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44の中空部を途中で遮る位置に配置されて、酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44内での排気ガスの通過を遮って他の酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44内に進路変更させる遮蔽金属板45とし、(III)紫外線発生部材を、ハウジング41の軸心位置に設けられて軸方向に延び、300nm〜400nmの波長の紫外線を発生する紫外線発生部材48を備えるように構成されている。なお、符号49は紫外線発生部材48に電力を印加するための電源である。
【0072】
具体的には、図6に示す排気ガス処理装置40は、ハウジング41の軸芯位置(中心部)に、複数の紫外線ランプからなる紫外線発生部材48が設けられている。ハウジング41の内部には、図6及び図8に示すように、紫外線発生部材18の周囲を囲むようにして酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44が所定の間隔で隣接して設けられている。酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44の長手方向の両端部には、紫外線発生部材18がハウジング41から抜け出すことを防止すると共に、酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44を保持するための保持板46(図8参照)が設けられている。
【0073】
(ハウジング、導入口、排出口)
ハウジング41は、酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44の長さに応じた長さであればよく、それ以外は図2に示した排気ガス処理装置10の場合と同じであるのでここではその説明を省略する。
【0074】
ハウジング41の導入口42側と排気口43側には保持板46が設けられる。保持板46の形状は、ハウジング41の内面形状と同じであり、ハウジング41の内面形状が円形である場合には円盤状であることが好ましい(図8参照)。保持板46には、複数の円形の保持穴47が形成されている。保持穴47は、酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44の外径と略同じ大きさで形成されており、酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44をその保持穴47から挿入することができる。挿入された酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44は、保持板46に設けられたビス等の止め具(図示しない)によって保持板46に固定される。
【0075】
図8の例では、保持板46の中心には、紫外線発生部材18を挿入するための保持穴は設けられていないが、設けてもよい。なお、保持板46の内面には、紫外線発生部材18を中心部に保持するための凹部が設けられていてもよい。こうした保持板46は、ハウジング41の導入口42と排気口43とにそれぞれ挿入され、その周縁がハウジング41の内周面に嵌合されるようにしてハウジング41に取り付けられる。
【0076】
保持板46の材質等は、ハウジングの場合と同様、波長200nm以下の真空紫外線に対して耐久性があり、また、窒素酸化物や硫黄酸化物等の排気ガス成分に対しても耐久性のある金属であることが好ましい。そうした金属としては、例えばステンレス鋼等の鉄鋼材料を好ましく挙げることができる。
【0077】
導入口42と排出口43についても、図2に示した排気ガス処理装置10の場合と同じであるのでここではその説明を省略する。
【0078】
(酸化チタン被覆メッシュ製円筒体)
酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44は、図7に示すように、ハウジング41の軸方向に延びる複数の円筒体であり、排気ガス中に気体成分と粒子状物質のいずれも通過できるように円筒の外周壁が酸化チタン被覆メッシュで形成されたものである。酸化チタン製メッシュ状円筒体44は、波長200nm以下の真空紫外線に対して耐久性があり、また、窒素酸化物や硫黄酸化物等の排気ガス成分に対しても耐久性がある。そして、この酸化チタン製メッシュ状円筒体44は、後述するように、真空紫外線で光化学反応を起こし、水分や酸素からヒドロキシラジカルや酸素ラジカルを生成できる。
【0079】
酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44のメッシュは、少なくとも酸化チタンを表面に被覆するメッシュである。具体的には、チタン線で作製されたメッシュの表面が酸化チタンで被覆されてなるものである。酸化チタン被覆メッシュは、チタン線で作製されたメッシュを所定の酸化雰囲気化で加熱して得ることができる。チタン線の外径は特に限定されないが、100μm〜500μm、好ましくは100μm〜200μm程度である。また、酸化チタンの厚さも特に限定されないが、1μm〜10μm、好ましくは1μm〜2μm程度であることが好ましい。なお、酸化チタンの被覆メッシュ製円筒体44の開口は、例えば2μm程度の粒子状物質も通過できる大きさであればよい。
【0080】
(遮蔽金属板)
遮蔽金属板45は、酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44の内部の長手方向(軸方向)の所定位置に、円筒空間を途中で遮る位置に設けられている。遮蔽金属板45の形状は、酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44の内面形状と同じ円板形状である。こうした遮蔽金属板45は、酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44の中を長手方向に進む排気ガス中の粒子状物質の通過を妨げるように機能する。さらに、排気ガス中の気体の通過も妨げるように機能する。この遮蔽金属板45により、粒子状物質を含む排気ガスは、その進路が変更され、酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44の外周壁を通過し、隣接する酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44内に進むことになる。
【0081】
遮蔽金属板45は、酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44毎に異なる位置に設けることが好ましい。異なる位置に遮蔽金属板45を設けることにより、酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44内を通過する排気ガスの進路変更を、ハウジング41内の種々の位置で行うことができる。
【0082】
遮蔽金属板45の材質は、波長200nm以下の真空紫外線に対して耐久性があり、また、窒素酸化物や硫黄酸化物等の排気ガス成分に対しても耐久性があることが好ましい。そうした金属としては、例えばステンレス鋼等の鉄鋼材料を好ましく挙げることができる。遮蔽金属板45の厚さは特に限定されないが、例えば0.1mm〜1mm、好ましくは0.1mm〜0.2mm程度であればよい。
【0083】
(紫外線発生部材)
紫外線発生部材48は、ハウジング41の中心部の長手方向(軸方向)に紫外線ランプを複数並べて構成されている。この紫外線発生部材18は、酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44に対して紫外線を照射し、その酸化チタンの光化学反応によってヒドロキシラジカルや酸素ラジカルを生成させる。紫外線発生部材18は、波長300〜400nmの紫外線を発するものであればよく、各種の紫外線ランプを採用できる。例えば、波長380nmの高圧水銀ランプ等を挙げることできる。なお、紫外線発生部材18は、外部に設けられた電源49に接続されている。
【0084】
(酸化除去作用及び酸化改質作用)
本発明に係る排気ガス処理装置40において、粒子状物質に対する酸化除去作用と排気ガスに対する酸化改質作用について詳しく説明する。
【0085】
導入口42から取り込まれた排気ガスは、ハウジング41内に設けられた保持板46の保持穴47で分流され、複数の酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44に送り込まれる。送り込まれた排気ガスは、各酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44の内部をその長手方向に進む。内部を進んだ排気ガスは、酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44内に設けられた遮蔽金属板45に当たって進行が遮られ、排気ガスは他の酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44内に進路を変更する。進路が変更された排気ガスは、酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44の外周壁のメッシュ部を通過し、隣接する他の酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44の外周壁を通過してその内部に導入される。その後、隣接した酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44の内部に導入された排気ガスは、その酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44内の遮蔽金属板45に衝突するまで下流側に向かって進行する。
【0086】
このように、複数設けられた同径の酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44それぞれは、ハウジング41内に所定の間隔で隣接して設けられているので、排気ガスは、直進と上下左右の進路変更とを繰り返しなから複数の酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44の中を進む。その結果、排気ガスの移動距離を長くして、生成したオゾン又はヒドロキシラジカルに長時間接触させることができる。その結果、排気ガス中の粒子状物質の酸化除去と窒素酸化物等の酸化改質をより効率的に行うことができる。
【0087】
酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44には、紫外線発生部材18からの紫外線が照射されている。紫外線が照射された酸化チタンは、空気と酸素からヒドロキシラジカル(・OHラジカル)や酸素ラジカルを生じさせる。酸素ラジカルは酸素に反応してオゾンを生成する。こうして生成したヒドロキシラジカルやオゾンは強い酸化作用がある。そのため、オゾン又はヒドロキシラジカルが排気ガス中の粒子状物質に作用して、その粒子状物質を酸化し、除去する。
【0088】
また、排気ガス中の窒素酸化物や硫黄酸化物等の有害ガスも、そのオゾン又はヒドロキシラジカルによって酸化し、無害な酸化物に改質される。
【0089】
以上のように、排気ガスは、導入口42側の保持板46から排気口43側の保持板46に到達するまでの間に複数回にわたって酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44の外周壁を通過する。つまり、排気ガスは、進路を変更しなから複数の酸化チタン被覆メッシュ製円筒体44の中を進むことになる。そして、酸化チタン被覆メッシュは紫外線発生部材48から発生する300nm〜400nmの紫外線によって、オゾン又はヒドロキシラジカルを光化学反応によって生成するので、そのオゾン又はヒドロキシラジカルが、進路変更しなから進む排気ガス中の粒子状物質を酸化除去したり窒素酸化物等を酸化改質したりするという作用効果を奏する。
【0090】
(応用例)
次に、図9を参照して、本発明に係る排気ガス処理装置のさらに他の一例(応用例)について説明する。この排気ガス処理装置50は、図6に示す排気ガス処理装置40において、ハウジング51の内部に直径の異なる酸化チタン被覆メッシュ製円筒体52,53,54を同心円状に配置したものである。こうした酸化チタン被覆メッシュ製円筒体52,53,54を設けた場合、外側に配置された酸化チタン被覆メッシュ製円筒体52と内側に配置された酸化チタン被覆メッシュ製円筒体53との間に適宜に遮蔽金属板(図示しない)を設ける。これにより、酸化チタン被覆メッシュ製円筒体52,53,54の外周壁同士の間を直進してきた排気ガスは、遮蔽金属板に衝突し、方向が変更して外周壁に形成された網目を通り抜けることになる。
【0091】
方向変更した排気ガスが酸化チタン被覆メッシュ製円筒体52,53,54の外周壁を通り抜ける際に、酸化チタンの光化学反応によって生じたオゾン又はヒドロキシラジカルは、排気ガス中の粒子状物質とガス成分に作用し、上記したように、粒子状物質の酸化除去と気体成分の酸化改質を行うことができる。なお、それ以外の構成は、図6で説明した内容と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0092】
このように、酸化チタン被覆メッシュ製円筒体52,53,54を異径とし、ハウジング内に同心円状に設けているので、排気ガスを進路変更させなから複数の酸化チタン被覆メッシュ製円筒体の中を進めることができる。その結果、排気ガスの移動距離を長くして、生成したオゾン又はヒドロキシラジカルに長時間接触させることができるので、排気ガス中の粒子状物質の酸化除去と窒素酸化物等の酸化改質をより効率的に行うことができる。
【0093】
以上、本発明に係る排気ガス処理装置10,30,40,50によれば、(i)低電力の紫外線発生部材を用いるので、プラズマ放電とは異なり、装置の低電力化、簡易化及び軽量化を図ることができ、自動車等のような移動機械が備える内燃機関に対して好ましく適用できる。(ii)粒子状物質を減速化したり排気ガスの進路を長くしたりすることができるので、オゾン又はヒドロキシラジカルと長時間接触させることができ、酸化除去や酸化改質を効率的に行うことができる。(iii)紫外線を照射し又は空気存在下の酸化チタンに紫外線を照射したので、生成したオゾン又はヒドロキシラジカルによって、粒子状物質の酸化除去と窒素酸化物等の酸化改質を効率的に行うことができる。
【符号の説明】
【0094】
1 内燃機関
2 排気部
3,4 排気管(マフラー)
10,30 排気ガス処理装置
11 ハウジング
12 導入口
13 排気口
14 金属メッシュ体
15 フレーム
16 網(メッシュ)
17,17A,17B,17C 金属構造体(金属繊維積層体)
18 紫外線発生部材
19 発光部
20 口金
21 電源
22 定電圧装置
23 バッテリー
【0095】
40,50 排気ガス処理装置
41,51 ハウジング
42 導入口
43 排気口
44 酸化チタン被覆メッシュ製円筒体
45 金属構造体
46 保持板
47 保持穴
48,55 紫外線発生部材
49 電源
52,53,54 異径の酸化チタン被覆メッシュ製円筒体




【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気管に接続して粒子状物質を含む排気ガスを処理する排気ガス処理装置であって、
中空管構造のハウジングと、該ハウジング内に排気ガスを取り込む導入口と、該導入口からハウジング内に取り込まれた排気ガスを通過させる金属メッシュ体と、該金属メッシュ体を通過した排気ガス中の粒子状物質の通過を妨げる金属構造体と、前記金属メッシュ体及び前記金属構造体に向けて紫外線を照射してオゾン又はヒドロキシラジカルを生じさせる紫外線発生部材と、紫外線が照射された後の排気ガスを前記ハウジングから排出する排出口と、を備えることを特徴とする排気ガス処理装置
【請求項2】
前記金属構造体は、気体を通過するが粒子状物質を捕獲する金属繊維積層体であり、
前記紫外線発生部材は、200nm以下の波長の紫外線を発生する部材であり、
前記金属メッシュ体を正極とし前記金属構造体を負極とする電圧を印加する電源をさらに備え、
前記電圧の印加により、前記金属メッシュ体を通過した排気ガス中の粒子状物質は負の空間電荷を付着し、該粒子状物質は前記金属繊維積層体に近づくほど減速する、請求項1に記載の排気ガス処理装置。
【請求項3】
前記導入口側から前記排出口側に向かって前記金属メッシュ体、前記紫外線発生部材及び前記金属構造体の順で構成された処理ユニットが、前記ハウジングの軸方向に複数配置されている、請求項1又は2に記載の排気ガス処理装置。
【請求項4】
前記金属メッシュ体は、前記ハウジングの軸方向に延びる複数の酸化チタン被覆メッシュ製円筒体であり、
前記金属構造体は、前記酸化チタン被覆メッシュ製円筒体の中空部を途中で遮る位置に配置されて、前記酸化チタン被覆メッシュ製円筒体内での排気ガスの通過を遮って他の酸化チタン被覆メッシュ製円筒体内に進路変更させる遮蔽金属板であり、
前記紫外線発生部材は、前記ハウジングの軸心位置に設けられて軸方向に延び、300nm〜400nmの波長の紫外線を発生する部材である、請求項1に記載の排気ガス処理装置。
【請求項5】
前記酸化チタン被覆メッシュ製円筒体は同径からなり、前記ハウジング内に所定の間隔で隣接して設けられている、又は、
前記酸化チタン被覆メッシュ製円筒体は異径からなり、前記ハウジング内に同心円状に設けられている、請求項4に記載の排気ガス処理装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−207536(P2012−207536A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71332(P2011−71332)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(304036743)国立大学法人宇都宮大学 (209)
【Fターム(参考)】