説明

排気ガス加熱装置

【課題】排気ガス浄化装置に導入される排気ガスを均一に加熱できると共に、圧力損失が過大とならず内燃機関の運転に支障を与えない排気ガス加熱装置を提供する。
【解決手段】内燃機関2と排気ガス浄化装置3との間の排気ガスの流路上に配置され、排気ガスGが出入する筐体部101と、筐体部内に収容され、かつ該筐体部内の排気ガスの流れ方向Lに自身の長手方向が沿うように配置される複数のシースヒータ110と、複数のシースヒータの間に充填される金属製の伝熱媒体120と、を備えた排気ガス加熱装置100において、シースヒータの単位消費電力に対する伝熱媒体の表面積SWが0.7 cm2/W以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関からディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)等の排気ガス浄化装置に導入される排気ガスを加熱する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関の排気ガスを再燃焼させて排気ガス中のカーボンを除去するため、排気ガスをシースヒータで加熱する装置が開発されている(特許文献1)。この装置は、セラミック製のハニカムフィルタの上流側に、排気路の外周から中心に向かって複数本の棒状のシースヒータを突き出させた構成となっている。
又、ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質(パティキュレート・マター、以下、適宜「PM」という)を捕集、浄化する技術として、ディーゼルパティキュレートフィルタ(粒子状物質捕集装置(Diesel particulate filter);以下、適宜「DPF」という)が知られている。このDPFはセラミックやステンレス鋼等から製造され、ハニカム構造等によってPMを捕集しているが、PMが堆積し過ぎると目詰まりを起こし、圧力損失を生じる。このため、DPFの前段に酸化触媒を配置して排気ガス中のNOxをNOにし、NOによりDPF内に捕集されたPMを燃焼させる、いわゆる連続再生方式が用いられている。そして、DPF内で上記触媒反応を生じさせるためには、排気ガス温度を250〜300℃程度に昇温する必要があることから、DPFに導入される排気ガスには加熱装置が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭64-006315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1記載の加熱装置の場合、棒状のシースヒータで排気ガスを直接加熱しているために排気ガスが局所的に加熱され、ヒータに近い位置と遠い位置で排気ガスのガス温度にむらが生じ、昇温が十分でない排気ガスが生じる。その上、この加熱装置の場合、排気ガスの流れ方向に沿ってみたときには1つのシースヒータしか配置されていないため、当該流れ方向に排気ガスとシースヒータとの接触面積が小さく、ガス温度にむらが生じた排気ガスがそのままDPF内に導入される(つまり、昇温が十分でない排気ガスがそのままDPF内に導入される)ため、DPF内で上記触媒反応を安定して生じさせ難いという問題がある。そこで、特許文献1の加熱装置のシースヒータ間の隙間を埋める(充填する)ように伝熱媒体を配置することが考えられる。これにより、ヒータに近い箇所と遠い箇所でのガス温度のむらを抑制することができる。しかしながら、伝熱媒体で隙間を密に埋めてしまうため、加熱装置内の通気抵抗(圧力損失)が過大となり、ディーゼルエンジンの運転を妨げてしまう虞がある。
そこで、本発明は、DPF等の排気ガス浄化装置に導入される排気ガスを均一に加熱して温度むらを抑制すると共に、圧力損失が過大とならずディーゼルエンジン等の内燃機関の運転に支障を与えない排気ガス加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の排気ガス加熱装置は、内燃機関と排気ガス浄化装置との間の排気ガスの流路上に配置され、
前記排気ガスが出入する筐体部と、前記筐体部内に収容され、かつ該筐体部内の前記排気ガスの流れ方向に自身の長手方向が沿うように配置される複数のシースヒータと、前記複数のシースヒータの間に充填される金属製の伝熱媒体と、を備えた排気ガス加熱装置において、前記シースヒータの単位消費電力に対する前記伝熱媒体の表面積SWが0.7 cm2/W以上である。
このような排気ガス加熱装置によれば、シースヒータの単位消費電力に対する伝熱媒体の表面積が0.7 cm2/W以上とすることで、排気ガスを筐体内で均一に加熱できるようになる。つまり、表面積が大きくなるほど、シースヒータに投入した電力によるシースヒータの発熱がより多くの伝熱媒体に伝わり、筐体部内の排気ガスを伝熱媒体が均一に加熱し、筐体内を通過する排気ガスの位置による温度むらが少なくなる。
特に、DPF内で酸化触媒反応を生じさせてDPFの連続再生を行うためには、排気ガス温度を250〜300℃程度に昇温する必要があるが、DPFに導入される排気ガスの温度差が50℃を超えると、上記昇温範囲内に排気ガス温度を管理することができず、上記触媒反応を安定して生じさせることが困難となる。その点、本発明のように伝熱媒体の表面積を0.7 cm2/W以上とすることで、筐体部内の位置による排気ガスの温度差が50℃未満となるので、上記した不具合を解消することができる。
そのうえ、本発明の排気ガス加熱装置によれば、シースヒータの長手方向が排気ガスの流れ方向に沿うように配置している。これにより、シースヒータの単位消費電力に対する伝熱媒体の表面積が0.7 cm2/W以上となることを維持しつつ、排気ガス加熱装置内の通気抵抗(圧力損失)が過大となることを抑制できる。つまり、排気ガスの流れ方向におけるシースヒータと伝熱媒体との接触面積を増やすことで、流れ方向における1箇所の隙間を伝熱媒体で粗に埋めることができ、排気ガス加熱装置内の通気抵抗(圧力損失)が過大となることを抑制できる。
【0006】
又、本発明の排気ガス加熱装置は、内燃機関と排気ガス浄化装置との間の排気ガスの流路上に配置され、前記排気ガスが出入する筐体部と、前記筐体部内に収容され、かつ該筐体部内の前記排気ガスの流れ方向と自身の長手方向が交差して配置される複数のシースヒータであって、該筐体内の該流れ方向に沿って離間して配置される複数のシースヒータと、前記シースヒータの間に充填される金属製の伝熱媒体と、を備えた排気ガス加熱装置において、前記シースヒータの単位消費電力に対する前記伝熱媒体の表面積SWが0.7 cm2/W以上である。
このような排気ガス加熱装置によれば、シースヒータの単位消費電力に対する伝熱媒体の表面積が0.7 cm2/W以上とすることで、排気ガスを筐体内で均一に加熱できるようになる。つまり、表面積が大きくなるほど、シースヒータに投入した電力によるシースヒータの発熱がより多くの伝熱媒体に伝わり、筐体部内の排気ガスを伝熱媒体が均一に加熱し、筐体内を通過する排気ガスの位置による温度むらが少なくなる。
特に、DPF内で酸化触媒反応を生じさせてDPFの連続再生を行うためには、排気ガス温度を250〜300℃程度に昇温する必要があるが、DPFに導入される排気ガスの温度差が50℃を超えると、上記昇温範囲内に排気ガス温度を管理することができず、上記触媒反応を安定して生じさせることが困難となる。その点、本発明のように伝熱媒体の表面積を0.7 cm2/W以上とすることで、筐体部内の位置による排気ガスの温度差が50℃未満となるので、上記した不具合を解消することができる。
そのうえ、本発明の排気ガス加熱装置によれば、複数のシースヒータを筐体部の流れ方向に沿って、離間するように配置している。これにより、シースヒータの単位消費電力に対する伝熱媒体の表面積が0.7 cm2/W以上となることを維持しつつ、排気ガス加熱装置内の通気抵抗(圧力損失)が過大となることを抑制できる。つまり、排気ガスの流れ方向におけるシースヒータと伝熱媒体との接触面積を増やすことで、流れ方向における1箇所の隙間を伝熱媒体で粗に埋めることができ、排気ガス加熱装置内の通気抵抗(圧力損失)が過大となることを抑制できる。
【0007】
本発明の排気ガス加熱装置において、前記伝熱媒体は、リボン状の金属箔又はハニカム状の金属からなることが好ましい。
このような排気ガス加熱装置によれば、伝熱媒体と排気ガスとの接触面積が増え、排気ガスをより均一に加熱することができる。
【0008】
本発明の排気ガス加熱装置において、前記筐体部の周囲を覆う断熱材をさらに備えてもよい。
このような排気ガス加熱装置によれば、筐体部から外部に熱が奪われ難く、排気ガスをより均一に加熱することができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、DPF等の排気ガス浄化装置に導入される排気ガスを均一に加熱して温度むらを抑制すると共に、圧力損失が過大とならずディーゼルエンジン等の内燃機関の運転に支障を与えない排気ガス加熱装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る排気ガス加熱装置を取り付けたエンジンの排気系統の断面図である。
【図2】排気ガス加熱装置の透視斜視図である。
【図3】排気ガスの流れ方向に沿う排気ガス加熱装置の断面図である。
【図4】シースヒータの断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る排気ガス加熱装置の透視斜視図である。
【図6】筐体部からコネクタを取り外した状態を示す図である。
【図7】ガスの温度むらを測定する際の、筐体部の出側断面の各位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る排気ガス加熱装置100を取り付けたエンジンの排気系統の断面図を示す。エンジンの排気系統は、内燃機関であるディーゼルエンジン2と、ディーゼルエンジン2の排気ポートに接続された第1排気管12と、コネクタ(アタッチメント)14を介して第1排気管12に接続される排気ガス加熱装置100と、コネクタ16を介して排気ガス加熱装置100の下流に接続される第2排気管18と、第2排気管18に接続されるディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF4)と、DPF4の下流に接続される最終排気管20とを備える。最終排気管20の下流には図示しない消音装置等が接続されている。
なお、排気ガス加熱装置100の一端の側方にはコネクタ14に接続される排気ガス導入ポート102が突出し、排気ガス加熱装置100の他端の側方にはコネクタ16に接続される排気ガス排出ポート104が突出している。そして、排気ガスGは排気ガス導入ポート14から排気ガス加熱装置100内に導入されて加熱された後、排気ガス排出ポート16から排出されるようになっている。
【0012】
DPF4はハニカム構造の筒状セラミックからなり、ディーゼルエンジン2の排気ポートから排出されたPMを含む排気ガスGはDPF4の上流側に流れ、このとき煤状のPMがDPF4に捕集され、浄化された排気ガスGがDPF4の下流から最終排気管20を通って外部に排出される。
又、第1排気管12内には、排気ガスG中のNOxをNOにする酸化触媒反応を生じさせるための尿素水を噴射するノズル10が配置されている。
【0013】
次に、図2〜図4を参照し、本発明の第1の実施形態に係る排気ガス加熱装置100の構成について説明する。なお、図2は排気ガス加熱装置100の透視斜視図であり、図3は排気ガスGの流れ方向に沿う排気ガス加熱装置100の断面図であり、図4は排気ガス加熱装置100が有するシースヒータの断面図である。
【0014】
図2において、排気ガス加熱装置100は、細長い箱状に形成されて排気ガスGが出入する筐体部101と、筐体部101の一端(図2では上端)から側方に突出する角筒状の排気ガス導入ポート102と、筐体部101の他端(図2では下端)から側方に突出する角筒状の排気ガス排出ポート104と、筐体部101内に収容された複数本のシースヒータ110と、シースヒータ110の間に充填される金属製ハニカム構造の伝熱媒体120と、を備えている。
筐体部101は、例えばステンレス鋼板を加工した金属からなり、シースヒータ110は後述する金属製の外管を有している。又、伝熱媒体120もステンレス鋼板やアルミニウム板をハニカム状に加工して形成することができる。伝熱媒体120をシースヒータ110(の外管)に溶接やロウ付けして接合すると、シースヒータ110から伝熱媒体120へ熱が伝わり易くなるので好ましい。
【0015】
ここで、排気ガス導入ポート102から筐体部101の上端側方に導入された排気ガスGは、筐体部101の長手方向(一端から他端側へ向かう方向)Lに沿って流れ、筐体部101の下端側方を通って排気ガス排出ポート104から排出される。各シースヒータ110は、筐体部101のL方向(排気ガスGの流れ方向)に自身の長手方向が沿うように配置され、かつL方向に直行する方向にそれぞれ離間している(図3参照)。
なお、本発明において、「排気ガス加熱装置」は、筐体部101、シースヒータ110、伝熱媒体120、及び筐体部101に一体に接続された部材(本実施形態の場合は排気ガス導入ポート102及び排気ガス排出ポート104)を含むが、筐体部101から着脱可能で排気ガスGの流路上に配置される部材(本実施形態の場合はコネクタ14、16)を含まない。
【0016】
断面図3に示すように、複数本のシースヒータ110はL方向に自身の長手方向を沿わせ、かつL方向に直交する方向に互いのシースヒータ110が離間しつつ、筐体部101内に並んでいる。そして、各シースヒータ110の長手方向の中央部にハニカム構造の伝熱媒体120が配置されている。
【0017】
なお、この実施形態では、各シースヒータ110の長手方向の長さが筐体部101のL方向の長さより長く、各シースヒータ110の外管(鞘管)111が筐体部101のL方向に垂直な両壁面を貫通している。このため、シースヒータ110の外管111の両端から延びる中軸113が筐体部101の外部に位置し、中軸113に発熱コイルの端部が通っている。
従って、この中軸113を通るコイルの端部を配線119で接続することにより、各シースヒータ110を直列に接続し易く、排気ガス加熱装置100に供給される電源電圧にシースヒータ110の抵抗を合わせやすいという利点がある。特に、室外据え置き型のディーゼルエンジンに排気ガス加熱装置100を取り付ける場合、屋外電源の電圧は高いことが多く、各シースヒータ110を適宜直列に接続することで、個々のシースヒータ110に過大な電圧が負荷されることを防止できる。
又、シースヒータ110の外管111の両端を筐体部101で支持することにより、筐体部101でシースヒータ110の一端のみを片持ちで支持する場合に比べ、シースヒータ110を確実に支持することができ、シースヒータ110の脱落等を回避できる。
【0018】
なお、断面図4に示すように、シースヒータ110は、金属製筒状の外管(鞘管)111と、外管111内に収容されるアルミナ管114と、中軸113と、アルミナ管114に巻回される発熱コイル(Fe−Cr−Al線)117及び制御コイル118と、無機絶縁体(MgO粉末)116と、シール部材(ゴムパッキン)115とを備える。
外管(鞘管)111は、例えばインコネル等の耐熱金属から形成することができる。中軸113はアルミナ管114の両端に同軸に接続され、例えばクロム-モリブデン鋼等の金属(合金)から形成することができる。発熱コイル117はアルミナ管114の長手方向中央部に巻回され、制御コイル118は発熱コイル117の両端にそれぞれ接続されて発熱コイル117への負荷電圧を調整して発熱量を制御する。無機絶縁体116は、外管111とアルミナ管114(及び中軸113)との隙間に充填され、シール部材115は、外管111の両端部で外管111と中軸113との隙間をシールする。
発熱コイル117の両端にそれぞれ接続された制御コイル118の端部はリード部となっていて、このリード部は中軸113内を通ってシースヒータ110の外部に引き出されている。
【0019】
本発明において、シースヒータの直径は通常2〜15mmである。シースヒータの直径が15mmを越えると、発熱コイル117の巻き径が大きくなり、その結果、シースヒータの抵抗が大きくなるため、電力を一定と考えると、シースヒータの本数を減らすこととなり、その結果、排気ガス加熱装置100に温度むらが生じる。
一方、筐体の内部径は通常30〜150mmであり、ヒータの直径に対して筐体の内部径は比較的大きく、ヒータに近い位置と遠い位置で排気ガスのガス温度にむらが生じる虞がある。
そこで、第1の実施形態においては、シースヒータ110の単位消費電力に対する伝熱媒体120の表面積SWが0.7 cm2/W以上とすることで、排気ガスGを筐体101内で均一に加熱できるようになる(後述の実施例参照)。つまり、表面積SWが大きくなるほど、L方向において、シースヒータ110に投入した電力によるシースヒータ110の発熱がより多くの伝熱媒体120に伝わり、筐体部101内の排気ガスGを伝熱媒体120が均一に加熱し、筐体101内を通過する排気ガスGの位置による温度むらが少なくなる(具体的には、筐体部101内の位置による排気ガスGの温度差が50℃未満となる)。
さらに、温度むらを抑制することで、シースヒータ(外管)110の表面温度が局所的に高くなり過ぎることを防止することが可能になり、シースヒータ(外管)110の腐食を抑制することができる。
【0020】
一方、上記表面積SWが0.7 cm2/W未満の場合、シースヒータ110からの発熱が伝熱媒体120に伝わる領域(表面積)が少なく、筐体部101内の排気ガスGを伝熱媒体120が均一に加熱できず、ガスの位置による温度むらが生じる。
【0021】
さらに、シースヒータ110の長手方向がL方向に沿うように配置させているので、シースヒータ110の単位消費電力に対する伝熱媒体の表面積が0.7 cm2/W以上となることを維持しつつ、排気ガス加熱装置100内の通気抵抗(圧力損失)が過大となることを抑制できる。つまり、L方向におけるシースヒータ110と伝熱媒体120との接触面積を増やすことで、L方向における1箇所の隙間を伝熱媒体120で粗に埋めることができ、排気ガス加熱装置100内の通気抵抗(圧力損失)が過大となることを抑制できる。
【0022】
次に、図5、図6を参照し、本発明の第2の実施形態に係る排気ガス加熱装置200の構成について説明する。
図5において、排気ガス加熱装置200は、細長い角筒状に形成されて排気ガスGが出入する筐体部201と、筐体部201内に収容された複数本のシースヒータ210と、シースヒータ210の間に充填されるリボン状金属箔からなる伝熱媒体220と、を備えている。伝熱媒体220は、リボン状や線状のステンレス鋼やアルミニウムの箔を不定形に折り畳んで形成することができる。
ここで、筐体部201の一端(図5では上端)側の矩形開口には、この開口に合致するコネクタ(アタッチメント)14xが接続され、コネクタ14xは第1の実施形態と同様にディーゼルエンジン2の排気ポートに接続されている。又、筐体部201の他端(図5では下端)側の矩形開口には、この開口に合致するコネクタ16xが接続され、コネクタ16xは第1の実施形態と同様にDPF4に接続されている。そして、コネクタ14xから筐体部201の上端開口に導入された排気ガスGは、筐体部201の長手方向(一端開口から他端開口側へ向かう方向)Lに沿って流れ、筐体部201の下端開口を通ってコネクタ16xから排出される。この方向Lは、筐体部201内の排気ガスGの流れ方向となっている。
【0023】
一方、各シースヒータ210は、筐体部101のL方向(排気ガスGの流れ方向)と自身の長手方向が直交しつつ、筐体部101の方向Lに沿って離間して配置されている。
なお、本発明において、「排気ガス加熱装置」は、筐体部201、シースヒータ210、伝熱媒体220を含むが、筐体部201から着脱可能で排気ガスの流路上に配置される部材(本実施形態の場合はコネクタ14x、16x)を含まない。
【0024】
図6は、筐体部201からコネクタ14x、16xを取り外した状態を示す。L方向に沿い、各シースヒータ210と筐体部201との隙間にリボン状金属箔からなる伝熱媒体220が充填されている。
そして、第2の実施形態においては、シースヒータ210の単位消費電力に対する伝熱媒体220の表面積SWが0.7 cm2/W以上とすることで、排気ガスGを筐体201内で均一に加熱できるようになる(後述の実施例参照)。つまり、表面積SWが大きくなるほど、L方向において、シースヒータ210に投入した電力によるシースヒータ210の発熱がより多くの伝熱媒体220に伝わり、筐体部201内の排気ガスGを伝熱媒体220が均一に加熱し、筐体101内を通過する排気ガスGの位置による温度むらが少なくなる(具体的には、筐体部201内の位置による排気ガスGの温度差が50℃未満となる)。
【0025】
さらに、複数のシースヒータ210を筐体部201の流れ方向に沿って、離間するように配置しているので、シースヒータ210の単位消費電力に対する伝熱媒体の表面積が0.7 cm2/W以上となることを維持しつつ、排気ガス加熱装置200内の通気抵抗(圧力損失)が過大となることを抑制できる。つまり、L方向におけるシースヒータ210と伝熱媒体220との接触面積を増やすことで、L方向における1箇所の隙間を伝熱媒体220で粗に埋めることができ、排気ガス加熱装置200内の通気抵抗(圧力損失)が過大となることを抑制できる。
【0026】
なお、第2の実施形態では、各シースヒータ210の長手方向の長さが筐体部201のL方向に垂直な方向の長さより長く、各シースヒータ210の外管(鞘管)211が筐体部201のL方向に沿う両壁面を貫通している。このため、第1の実施形態と同様、シースヒータ210の外管211の両端から延びる中軸213が筐体部201の外部に位置し、中軸213に発熱コイルの端部が通っている。
従って、この中軸213を通るコイルの端部を配線219で接続することにより、各シースヒータ210を直列に接続し易く、排気ガス加熱装置100に供給される電源電圧にシースヒータ210の抵抗を合わせやすい。
又、シースヒータ210の外管211の両端を筐体部201で支持することにより、筐体部201でシースヒータ210の一端のみを片持ちで支持する場合に比べ、シースヒータ210を確実に支持することができ、シースヒータ210の脱落等を回避できる。
【0027】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
例えば、筐体部の周囲を断熱材で覆ってもよい。
【実施例】
【0028】
第1の実施形態及び第2の実施形態に係る排気ガス加熱装置100、200(それぞれ図1、図5に示す)を作製し、実施例1〜3とした。実施例1〜3の各排気ガス加熱装置100、200のL方向の筐体部長さをいずれも200mmとした。なお、実施例1〜3では、L方向の筐体部長さが、シースヒータで加熱する部分の長さ(加熱長さ)となる。
比較例1として、第2の実施形態に係る排気ガス加熱装置において、シースヒータ210を方向Lに1本のみ配置(筐体部の断面に平行に2本配置)し、シースヒータ210の隙間にリボン状の金属箔(伝熱媒体)を密に充填したものを用意した。
比較例2として、比較例1において伝熱媒体充填しなかったものを用意した。この比較例2の排気ガス加熱装置は、特許文献1の装置に相当する。なお、比較例1、2では、外枠長さが30mmであり、これがシースヒータで加熱する部分の長さ(加熱長さ)となる。
比較例3として、第2の実施形態に係る排気ガス加熱装置において、伝熱媒体を充填しなかったものを用意した。
なお、シースヒータは実施例1〜3、比較例1〜3共に直径5mmのものを使用した。
【0029】
得られた各排気ガス加熱装置について、シースヒータに通電し、流速1000L/minにしてガスを流した状態で、図7に示す筐体部の出側断面の各位置a〜eの雰囲気温度を熱電対で測定した。そして、それぞれ|a-b|,|a-c|,|a-d|,|a-e|で表される2箇所の位置の温度差の絶対値を測定し、これら絶対値の平均をΔT(℃)とした。ΔTが50℃未満であれば、加熱むらが無く均一に加熱できるとし、評価を○(良好)とした。
次に、筐体部の入側開口に市販のドライヤを配置し、筐体部の入側の風速W及び出側開口の風速Wを風速計(TESTO製、型式405−VI)にて測定した。W/Wが0.7以上であれば圧力損失が小さく、評価を○(良好)とした。
得られた結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
表1から明らかなように、実施例1〜実施例3(つまり第1の実施形態及び第2の実施形態)場合、排気ガスの加熱むらが無くガスを均一に加熱できると共に、圧力損失が少なく、総合評価が良好であった。
一方、シースヒータを方向Lに1本のみ配置した比較例1の場合、方向Lの加熱長さが短い分、シースヒータと伝熱媒体との接触面積を増やすため、第1及び第2の実施形態に比べて伝熱媒体を密に充填することになり、その結果、加熱むらは無かったものの、圧力損失が0.7を超えて大きくなった。
又、シースヒータを方向Lに1本のみ配置し、さらに伝熱媒体を充填しなかった比較例2や、第2の実施形態に係る排気ガス加熱装置において、伝熱媒体を充填しなかった比較例3の場合、シースヒータ210の単位消費電力に対する伝熱媒体220の表面積SWが0.7 cm2/W未満となり、加熱むらが生じた。
【符号の説明】
【0032】
2 内燃機関(ディーゼルエンジン)
4 排気ガス浄化装置(DPF)
100、200 排気ガス加熱装置
101、201 筐体部
110、210 シースヒータ
120、220 伝熱媒体
L 筐体部内の排気ガスの流れ方向
G 排気ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と排気ガス浄化装置との間の排気ガスの流路上に配置され、
前記排気ガスが出入する筐体部と、
前記筐体部内に収容され、かつ該筐体部内の前記排気ガスの流れ方向に自身の長手方向が沿うように配置される複数のシースヒータと、
前記複数のシースヒータの間に充填される金属製の伝熱媒体と、を備えた排気ガス加熱装置において、
前記シースヒータの単位消費電力に対する前記伝熱媒体の表面積SWが0.7 cm2/W以上である排気ガス加熱装置。
【請求項2】
内燃機関と排気ガス浄化装置との間の排気ガスの流路上に配置され、
前記排気ガスが出入する筐体部と、
前記筐体部内に収容され、かつ該筐体部内の前記排気ガスの流れ方向と自身の長手方向が交差して配置される複数のシースヒータであって、該筐体部の該流れ方向に沿って、離間して配置される複数のシースヒータと、
前記複数のシースヒータの間に充填される金属製の伝熱媒体と、を備えた排気ガス加熱装置において、
前記シースヒータの単位消費電力に対する前記伝熱媒体の表面積SWが0.7 cm2/W以上である排気ガス加熱装置。
【請求項3】
前記伝熱媒体は、リボン状の金属箔又はハニカム状の金属からなる請求項1又は2に記載の排気ガス加熱装置。
【請求項4】
前記筐体部の周囲を覆う断熱材をさらに備えた請求項1〜3のいずれかに記載の排気ガス加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−122353(P2012−122353A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271609(P2010−271609)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】