説明

排気ガス浄化装置

【課題】一体化された異なる部材間でそれぞれの排気ガス浄化機能を充分に発揮させることが可能な排気ガス浄化装置の提供にある。
【解決手段】流通路の下流側開口部28が閉鎖された導入側流通路19と、流通路の上流側開口部27が閉鎖された排出側流通路20とが交互に形成されたウォールフロー型のフィルタ基材18と、排出側流通路20に下流側より隔壁21と非接触で挿入される挿入担体23及び挿入担体23と結合された保持部24からなる挿入担体集合体22とから構成されたSCR/DPF一体化触媒13である。SCR/DPF一体化触媒13におけるフィルタ基材18の隔壁21にはSCR触媒が担持されると共に、挿入担体23の表面には酸化触媒が担持されている。また、挿入担体集合体22の保持部24はフィルタ基材18の下流側の外周部18Aに一体連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1で開示された従来技術においては、隔壁によりガス導入セルとガス排出セルが区画形成された排気ガスのパーティキュレートフィルタが開示されている。ガス導入セル内には副隔壁が配設され、副隔壁は隔壁とは別体に形成されている。副隔壁はガス排出セルの栓部材に結合され、栓部材と副隔壁とは一体に形成されている。副隔壁はガス導入セル内に挿入され、副隔壁の一部が隔壁と接触してガス導入セル内で副隔壁が移動しないように配置されている。そして、隔壁と副隔壁の表面には酸化触媒又は、NOx吸着層がコーティングされている。これらの層は、排気ガス中の成分と反応して活性酸素を生成し、生成された活性酸素は隔壁内、或いは隔壁の表面に捕集されたPM(粒子状物質)を燃焼分解するとある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−220848公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1で開示された従来技術においては、ガス導入セル内に副隔壁が配設されているので、排気ガス中のPMが隔壁で捕集される前に副隔壁に付着し、副隔壁の表面の触媒層などの活性が不十分となる恐れがある。また、小型のパーティキュレートフィルタであって、隔壁と副隔壁とに異なる触媒コーティングを施す場合、隔壁と副隔壁の間隔が小さく設定されることから、異なる触媒が近接することによる触媒の不活性化の恐れがある。なお、異なる触媒の近接による不活性化とは、一方の触媒が他方の触媒の活性化を阻害しそれぞれの触媒の機能が充分に発揮できないことを指す。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、一体化された異なる部材間でそれぞれの排気ガス浄化機能を充分に発揮させることが可能な排気ガス浄化装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、排気ガス浄化装置であって、内燃機関から排出された排気ガスが流通し互いに平行に形成された流通路と、隣接する前記流通路間に形成された隔壁とを有する浄化部材を備え、表面に触媒を担持する挿入担体と、前記挿入担体と結合されると共に、前記浄化部材の上流側の部位又は下流側の部位と連結される保持部とからなる挿入担体集合体を備え、前記挿入担体は前記流通路に前記隔壁と非接触で挿入されていることを特徴とする。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、挿入担体集合体の保持部によって浄化部材と挿入担体集合体とは一体連結されていると共に、浄化部材の流通路の隔壁と挿入担体集合体の挿入担体とは非接触で配置されているので、浄化部材と挿入担体集合体間でそれぞれの排気ガス浄化機能を充分に発揮させることが可能となる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の排気ガス浄化装置において、前記浄化部材の前記隔壁及び前記挿入担体集合体の前記挿入担体には互いに種類の異なる触媒がコーティングされていることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、浄化部材の隔壁及び挿入担体集合体の挿入担体に互いに種類の異なる触媒がコーティングされていても、隔壁と挿入担体とは非接触で配置されているので異なる触媒が近接することによる触媒の不活性化を防止できる。なお、異なる触媒が近接することによる触媒の不活性化とは、一方の触媒が他方の触媒の活性化を阻害しそれぞれの触媒の機能が充分に発揮できないことを指す。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の排気ガス浄化装置において、前記浄化部材が、前記流通路の下流側開口部が閉鎖された導入側流通路と前記流通路の上流側開口部が閉鎖された排出側流通路が交互に形成されたウォールフロー型のフィルタ基材であり、前記挿入担体集合体の前記挿入担体は前記排出側流通路に前記下流側より挿入されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、浄化部材が流通路の下流側開口部が閉鎖された導入側流通路と流通路の上流側開口部が閉鎖された排出側流通路が交互に形成されたウォールフロー型基材なので、導入側流通路に導入された排気ガスは、多孔質の隔壁を通過して排出側流通路に到達する。従って、排気ガスが隔壁を通過することにより排気ガス中のPM(粒子状物質)が隔壁で捕集されてから排出側流通路に到達する。また、挿入担体集合体の挿入担体はウォールフロー型基材の排出側流通路に下流側より挿入されていることにより、PMを含まない排気ガスが挿入担体に接触する。よって、挿入担体へのPMの付着を防止できるので、挿入担体にコーティングされた触媒の活性を充分に確保することが可能である。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3に記載の排気ガス浄化装置において、前記浄化部材の前記隔壁にはSCR触媒がコーティングされ、前記挿入担体集合体の前記挿入担体には酸化触媒がコーティングされていることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、浄化部材の導入側流通路に導入された排気ガスは、浄化部材の隔壁を通過して排出側流通路に到達するが、隔壁にはSCR触媒がコーティングされているので、排気ガス中に含まれるNOxの選択還元が行われる。そして、排出側流通路に到達した排気ガスは、挿入担体に接触し挿入担体にコーティングされている酸化触媒によって排気ガス中の残留NH3などが酸化される。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項3又は4に記載の排気ガス浄化装置において、前記挿入担体における触媒のコーティング量が、前記排出側流通路の上流側より下流側が多くなるように設定されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、導入側流通路に導入された排気ガスが導入側流通路の下流側より排出側流通路に到達した場合には、排出側流通路に挿入されている挿入担体の下流側とのみ接触し外部に排出される。しかし、挿入担体における触媒のコーティング量が排出側流通路の上流側より下流側が多くなるように設定されているので、排気ガスが挿入担体の下流側とのみ接触しても触媒機能を低下させること無く、排気ガスの浄化処理を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、浄化部材と挿入担体集合体とを一体連結されると共に、挿入担体集合体の挿入担体を浄化部材の隔壁と非接触で配置可能なので、それぞれの排気ガス浄化機能を充分に発揮させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る排気ガス浄化装置を備えた排気ガス浄化システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係るSCR/DPF一体化触媒の分解斜視図を示す。
【図3】図2のA−A線断面斜視図を示す。
【図4】本発明の実施形態に係るSCR/DPF一体化触媒の後面図を示す。
【図5】本発明の実施形態に係るSCR/DPF一体化触媒の要部を拡大して示す要部拡大断面図である。
【図6】その他の実施形態に係るSCR/DPF一体化触媒の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るディーゼルエンジンなどの内燃機関における排気ガス浄化システム10を図1〜図5に基づいて説明する。
図1に示すように、図示しない内燃機関から排出された排出ガスは、排気ガス浄化システム10の排気経路11に排出される。
排気経路11にはDOC(酸化触媒)12が設けられ、DOC12は排気ガス中に含まれる炭化水素(HC)を酸化させる作用と排気ガス中に含まれる一酸化窒素(CO)を酸化させる作用を有する。DOC12としては、白金(Pt)などの貴金属触媒が用いられている。
【0019】
このDOC12の下流に排気ガス中に含まれるPM(粒子状物質)を捕集するためのDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)と排気ガス中に含まれるNOxの選択還元を行うSCR触媒(選択還元触媒)とを一体化したSCR/DPF一体化触媒13が配置されている。
SCR/DPF一体化触媒13は排気ガス浄化装置に相当する。
DOC12とSCR/DPF一体化触媒13間の排気経路11には、尿素水添加弁14が配置され、この尿素水添加弁14と尿素水溶液タンク17とをつなぐ供給管15が設けられている。また、供給管15には供給ポンプ16が設けられている。なお、尿素水添加弁14、供給管15、供給ポンプ16及び尿素水溶液タンク17が尿素添加手段に相当する。
尿素水溶液タンク17内に貯蔵されている尿素水溶液は供給ポンプ16によって移送され、尿素水添加弁14から排気経路11内を流れる排気ガス中に噴射される。排気経路11中に噴射された尿素の加水分解により発生したアンモニア(NH3)は排気ガスと混合されてSCR/DPF一体化触媒13に導入される。
【0020】
図2及び図3に示すように、SCR/DPF一体化触媒13は、フィルタ基材18と挿入担体集合体22を備えている。
フィルタ基材18は円筒状であってハニカム構造を有している。フィルタ基材18は、互いに平行であって多数の断面格子状の流通路を備えている。フィルタ基材18は流通路間を仕切る隔壁21を有している。各流通路は、上流側開口部27と下流側開口部28とを備えている。なお、フィルタ基材18が浄化部材に相当する。
【0021】
フィルタ基材18は、図3に示すように、流通路の下流側開口部28が閉鎖された導入側流通路19と、流通路の上流側開口部27が閉鎖された排出側流通路20とを備えている。つまり、本実施形態のフィルタ基材18は所謂ウォールフロー型ハニカム構造を有している。導入側流通路19は下流側開口部28が閉鎖されて上流側開口部27が開口し、この導入側流通路19の上流側開口部27から排気ガスが導入される。排出側流通路20は上流側開口部27が閉鎖されて下流側開口部28が開口し、この排出側流通路20の下流側開口部28から排気ガスが排出される。導入側流通路19と排出側流通路20は、特定の方向(図3で上下方向および左右方向)において交互に隣接配置されている。隣接する導入側流通路19と排出側流通路20間には隔壁21が形成されている。
【0022】
フィルタ基材18は、セラミックやゼオライトなどの多数の細孔を有する多孔質材料から形成されている。隔壁21には、銅ゼオライト(Cu−ZSM5)などのSCR触媒がコーティングされている。図5に示すように、SCR触媒25は隔壁21の表面のみならず、隔壁21内の細孔21Aの周囲にも担持されている。
【0023】
図2に示すように、挿入担体集合体22は、複数の挿入担体23と、複数の挿入担体23をまとめて片持ち支持する保持部24とを備えている。
挿入担体23は、長尺状の細丸棒より形成され、排出側流通路20の長さ距離よりやや短く形成されている。挿入担体23は、フィルタ基材18の排出側流通路20に下流側より挿入され隔壁21と平行で且つ隔壁21と非接触で配置されている。
図4に示すように、挿入担体23は、断面矩形の排出側流通路20の中心に位置するように配置され、予め排出側流通路20の配設ピッチにあわせて保持部24に固定されている。
挿入担体23としては、ステンレス鋼(SUS)やセラミックなどの細丸棒が基材として使用されている。図5に示すように、この挿入担体23の表面には、Pt/Al2O3などの酸化触媒26がコーティングされているが、触媒のコーティング量が、排出側流通路20の上流側より下流側が多くなるように設定されている。
【0024】
保持部24は金属の線材を交差するように組合せた網目状に形成されている。挿入担体23は保持部24に対して直角に突出するようにして挿入担体23の一方の端部が保持部24に固定されている。
保持部24にはフィルタ基材18との係止を図る係止部24Aが形成されている。係止部24Aは、線材の端部の折り曲げにより形成されており、保持部24の外周にわたって複数の係止部24Aが配設されている。複数の係止部24Aはフィルタ基材18の下流側の外周部18Aに係止可能である。各係止部24Aは線材の弾性を利用して外周部18Aを押圧し、挿入担体集合体22をフィルタ基材18に支持可能とする。なお、フィルタ基材18の下流側の外周部18Aが浄化部材の下流側の部位に相当する。
【0025】
図2に示すように、挿入担体集合体22は挿入担体集合体22の挿入担体23をフィルタ基材18の排出側流通路20の下流側開口部28に対向するように配置し、挿入担体23を排出側流通路20の下流側開口部28から挿入させつつ挿入担体集合体22の保持部24がフィルタ基材18の下流側の端部に当接するまで挿入させる。このとき、保持部24の外周に配設されている係止部24Aがフィルタ基材18の外周部18Aに係止され固定される。このことにより、挿入担体集合体22はフィルタ基材18に一体連結されると共に、挿入担体23はフィルタ基材18の隔壁21と非接触で配置される。
【0026】
以上の構成を有する排気ガス浄化システム10につきその作用説明を行う。
排気ガスは、排気経路11の上流側に配置されたDOC12を通過した後、DOC12とSCR/DPF一体化触媒13間の排気経路11にて尿素水添加弁14から尿素水の噴射が行われる。噴射された尿素水は排気ガス中の水分と結合してアンモニアが生成され、このアンモニアと混合された排気ガスは、SCR/DPF一体化触媒13におけるフィルタ基材18の導入側流通路19に導入される。
【0027】
図5に示すように、フィルタ基材18の導入側流通路19に導入されたアンモニアと混合された排気ガスは、フィルタ基材18の隔壁21を通過して隣接する排出側流通路20に到達する。図5においては、導入側流通路19の上流側開口部27より導入された排気ガスが、導入側流通路19を下流側に進んだ後、隔壁21を通過して上下に隣接配置された排出側流通路20に到達する様子を矢印で示している。このとき、隔壁21は多孔質材料から形成されているので、細孔21Aを通過するときに排気ガス中のPMが捕集される。また、導入側流通路19を下流側に進んだ後、隔壁21の細孔21Aを通過するとき排気ガス中のアンモニアは、隔壁21の表面にコーティングされたSCR触媒25および隔壁21内の細孔21Aの周囲にコーティングされたSCR触媒25に吸着される。この吸着されたアンモニアにより排気ガス中に含まれるNOxの選択還元が行われる。なお、図5のP部拡大図は、隔壁21の断面を拡大して示したものであり、矢印で示すように排気ガスは隔壁21内の細孔21A部分を紆余曲折しながら移送される。
【0028】
隔壁21を通過して排出側流通路20に到達した排気ガスは、排出側流通路20に配置されている挿入担体集合体22の挿入担体23と接触する。挿入担体23には酸化触媒26がコーティングされているので、排気ガス中に残存しているアンモニアや炭化水素及び一酸化窒素などがこの酸化触媒26により酸化される。このとき、隔壁21を通過して排出側流通路20に到達した排気ガス中にはPMが含まれておらず、従って、挿入担体23へのPMの付着を防止することが可能である。
【0029】
図5に示すように、導入側流通路19の上流側開口部27に近い箇所から排出側流通路20に到達した排気ガス(この経路をルートR1とする)は、排出側流通路20に配置されている挿入担体23と長い距離接触した後、排出側流通路20の下流側開口部28より外部に排出される。一方、導入側流通路19の上流側開口部27から遠い距離にある箇所から排出側流通路20に到達した排気ガス(この排出ルートをルートR2とする)は、排出側流通路20に配置されている挿入担体23と短い距離接触した後、排出側流通路20の下流側開口部28より外部に排出される。ところで、挿入担体23への酸化触媒26のコーティング量が、排出側流通路20の上流側より下流側が多くなるように設定されているので、例え排気ガスの一部が上記ルートR2を経由したとしても触媒機能を低下させること無く、排気ガス中のアンモニアなどを確実に酸化させることが可能である。
図5に矢印で示すように、排出側流通路20に配置されている挿入担体23と接触し浄化された排気ガスは、排出側流通路20の下流側開口部28より外部に排出される。
【0030】
ところで、SCR触媒25がコーティングされているフィルタ基材18の隔壁21と、酸化触媒26がコーティングされている挿入担体集合体22の挿入担体23とは、非接触で間隔を空けて配置されている。ところで、SCR触媒25と酸化触媒26とが近接配置された場合には、触媒の相互作用により一方の触媒が他方の触媒の活性化を阻害しそれぞれの触媒の機能が充分に発揮できないことがある。従って、SCR触媒25と酸化触媒26とが近接配置されることによる触媒の不活性化を防止でき、フィルタ基材18と挿入担体集合体22間でそれぞれの排気ガス浄化機能を充分に発揮させることが可能となる。
【0031】
また、挿入担体23は排出側流通路20に沿って配置され、排出側流通路20における排気ガスの流れに対して平行となっているので、排気ガスの流れを阻害することなく圧力損失を抑制することが可能である。さらに、挿入担体23を支持する保持部24は、排出側流通路20の下流側開口部28を遮るように配置されているが、網目状の形状を有しているので下流側開口部28から排出される排気ガスの圧力損失を最小限の圧力損失に留めることができる。
【0032】
このように、SCR/DPF一体化触媒13を排気ガス浄化システム10に設けることにより、排気ガス中のPMを捕集するDPF機能と、排気ガス中のNOxの選択還元を行うSCR機能と、排気ガス中のアンモニアなどの酸化をおこなうDOC機能とを一体化させた触媒ユニットを形成することが可能であり、排気ガス浄化システム10の小型化を図ることが可能である。
【0033】
この本実施形態に係る排気ガス浄化装置によれば以下の効果を奏する。
(1)SCR/DPF一体化触媒13は、排気ガス中のPMを捕集するDPF機能と、排気ガス中のNOxの選択還元を行うSCR機能と、排気ガス中のアンモニアなどの酸化をおこなうDOC機能とを一体化させた触媒ユニットであり、排気ガス浄化システム10の小型化を図ることが可能である。
(2)SCR触媒25がコーティングされているフィルタ基材18の隔壁21と、酸化触媒26がコーティングされている挿入担体集合体22の挿入担体23とは、非接触で間隔を空けて配置されている。従って、SCR触媒25と酸化触媒26とが近接配置されることによる触媒の不活性化を防止でき、フィルタ基材18と挿入担体集合体22間でそれぞれの排気ガス浄化機能を充分に発揮させることが可能となる。
(3)フィルタ基材18は、流通路の下流側開口部28が閉鎖された導入側流通路19と、流通路の上流側開口部27が閉鎖された排出側流通路20とが交互に形成されたウォールフロー型ハニカム構造の基材であり、導入側流通路19に導入された排気ガスは、多孔質の隔壁21を通過して排出側流通路20に到達する。このとき、排気ガス中のPMが隔壁21で捕集されてから排出側流通路20に到達する。一方、挿入担体集合体22の挿入担体23はフィルタ基材18の排出側流通路20に下流側より挿入されていることにより、隔壁21を通過し排出側流通路20に到達した排気ガスは挿入担体23に接触するが、排気ガス中にはPMが含まれていないので、挿入担体23へのPMの付着を防止できる。
(4)挿入担体23は排出側流通路20に沿って配置され、排出側流通路20における排気ガスの流れに対して平行となっているので、排気ガスの流れを阻害することなく圧力損失を抑制することが可能である。さらに、挿入担体23を支持する保持部24は、排出側流通路20の下流側開口部28を遮るように配置されているが、網目状の形状を有しているので下流側開口部28から排出される排気ガスの圧力損失を最小限の圧力損失に留めることができる。
(5)SCR/DPF一体化触媒13の組付けは、挿入担体集合体22の挿入担体23をフィルタ基材18の排出側流通路20に挿入させ、挿入担体集合体22の保持部24がフィルタ基材18の下流側の端部に当接するまで押し込んだ上で、保持部24の外周の係止部24Aをフィルタ基材18の外周部18Aに係止させ固定すれば良い。従って、組付けが簡単である。
(6)挿入担体23への酸化触媒26のコーティング量が、排出側流通路20の上流側より下流側が多くなるように設定されているので、例え排気ガスがルートR2を経由して挿入担体23と短い距離接触したとしても触媒機能を低下させること無く、排気ガス中のアンモニアなどを確実に酸化させることが可能である。
【0034】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更しても良い。
○ 本発明の実施形態(略して本実施形態とする)では、浄化部材としてフィルタ基材18がウォールフロー型ハニカム構造のフィルタ基材として説明したが、別例1の排気ガス浄化装置として、浄化部材がストレートフロー型ハニカム構造の基材であっても良い。ストレートフロー型ハニカム構造の基材は互いに平行に形成された流通路が貫通され、閉鎖されていないものである。ストレートフロー型ハニカム構造の基材の隔壁にはSCR触媒がコーティングされている。ストレートフロー型ハニカム構造の基材の全流通路に上流側又は下流側より挿入担体集合体の挿入担体が挿入され保持部によって固定されている。挿入担体集合体は本実施形態と同等の構成を有し、挿入担体には酸化触媒がコーティングされている。この場合には、SCR機能とDOC機能とを一体化した触媒ユニットを得ることが可能である。
○ 本実施形態と同等の構成を有する別例2の排気ガス浄化装置を説明する。別例2の排気ガス浄化装置では、フィルタ基材18がウォールフロー型ハニカム構造のフィルタ基材であり挿入担体集合体22はフィルタ基材18の排出側流通路20に下流側より挿入固定されている。但し、フィルタ基材18の隔壁21には、SCR触媒に代えてPM燃焼触媒(例えば、Ag/CeO2など)がコーティングされている。また、排気ガス浄化システムにおいて尿素添加手段は設けられていない。PM燃焼触媒を燃焼処理することによりフィルタ基材18の隔壁21で捕集されたPMを除去することが可能である。この場合には、DPF機能とDOC機能とを一体化しPM燃焼触媒によってフィルタ基材18の再生が可能である。
○ 上記別例1と同等の構成を有する別例3の排気ガス浄化装置を説明する。別例3の排気ガス浄化装置では、ストレートフロー型基材の隔壁にはSCR触媒に代えてHC吸着剤(ゼオライト等を主成分とする担体)がコーティングされている。なお、尿素添加手段は設けられていない。HC吸着剤で一時的にHC成分を吸着させ、排気ガスの温度上昇に伴いHC成分を放出させてHC浄化(酸化)を行うことが可能である。この場合には、DOC機能を強化できHC被毒の防止が可能である。
○ 上記別例2と同等の構成を有する別例4の排気ガス浄化装置を説明する。別例4の排気ガス浄化装置では、フィルタ基材の隔壁にはSCR触媒に代えて酸化触媒がコーティングされており、挿入担体集合体の挿入担体にはNSR(NOx吸蔵還元触媒)がコーティングされている。なお、尿素添加手段は設けられていない。この場合には、DPF機能とDOC機能とNSR機能とを一体化したものである。
○ 本実施形態では、挿入担体集合体22の挿入担体23を長尺状の細丸棒から形成されているとして説明したが、極薄板状であっても良く、また、ガス流れを阻害しないような形状であればどのような形状でも構わない。
○ 本実施形態では、ステンレス鋼やセラミックなどから形成された挿入担体23の表面にPt/Al2O3などの酸化触媒26がコーティングされているとして説明したが、Al(アルミニウム)を基材として表面をアルマイト処理(Al2O3層)しその上にPtを担持させたものでも良い。
○ 本実施形態では、挿入担体集合体22の挿入担体23をフィルタ基材18の排出側流通路20に下流側より挿入し保持部24をフィルタ基材18の下流側の外周部18Aに係止させるとして説明したが、図6に示すような構成であっても良い。図6に示す排気ガス浄化装置では、フィルタ基材18の排出側流通路20の閉鎖されている上流側開口部には貫通孔33が設けられ、挿入担体集合体30の挿入担体31は上流側よりこの貫通孔33に挿入され排出側流通路20に配置される。挿入担体集合体30の保持部32は、フィルタ基材18の上流側の外周部に係止され固定される。貫通孔33の大きさは、挿入担体31の径よりやや大きく形成されており、貫通孔33と挿入担体31間のすきまにシール部材でシールされる。
【符号の説明】
【0035】
10 排気ガス浄化システム
13 SCR/DPF一体化触媒
18 フィルタ基材
19 導入側流通路
20 排気側流通路
21 隔壁
22 挿入担体集合体
23 挿入担体
24 保持部
25 SCR触媒
26 酸化触媒
27 上流側開口部
28 下流側開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出された排気ガスが流通し互いに平行に形成された流通路と、隣接する前記流通路間に形成された隔壁とを有する浄化部材を備え、
表面に触媒を担持する挿入担体と、前記挿入担体と結合されると共に、前記浄化部材の上流側の部位又は下流側の部位と連結される保持部とからなる挿入担体集合体を備え、
前記挿入担体は前記流通路に前記隔壁と非接触で挿入されていることを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項2】
前記浄化部材の前記隔壁及び前記挿入担体集合体の前記挿入担体には互いに種類の異なる触媒がコーティングされていることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項3】
前記浄化部材が、前記流通路の下流側開口部が閉鎖された導入側流通路と前記流通路の上流側開口部が閉鎖された排出側流通路が交互に形成されたウォールフロー型のフィルタ基材であり、前記挿入担体集合体の前記挿入担体は前記排出側流通路に前記下流側より挿入されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項4】
前記浄化部材の前記隔壁にはSCR触媒がコーティングされ、前記挿入担体集合体の前記挿入担体には酸化触媒がコーティングされていることを特徴とする請求項2又は3に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項5】
前記挿入担体における触媒のコーティング量が、前記排出側流通路の上流側より下流側が多くなるように設定されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の排気ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−32706(P2013−32706A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167891(P2011−167891)
【出願日】平成23年7月31日(2011.7.31)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】