説明

排気再循環ガス流量測定装置

【課題】本発明の目的は、脈動低減効果が得られる程度の長さを確保したバイパス通路を、ガスが流れる際の圧力損失を低くすると共に、すすの付着抑制の効果を高め、高温の排気に耐え得る材料を用いて量産可能にした排気再循環ガス流量測定装置を提供することにある。
【解決手段】排気再循環ガス流量測定装置において、ケース部材4をバイパス通路14a,c,d,e,f,bの両側部と外周の一部とを覆うように金属板を絞り加工して形成し、ケース部材4の内側に配置されてバイパス通路14a,c,d,e,f,bの内周を仕切る仕切り部材5を金属板を曲げ加工して形成し、ケース部材4と仕切り部材5とを用いてバイパス通路14を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排気の質量流量を計測することに関するものであり、特にディーゼルエンジンの排気再循環のガス流量測定装置に有効となるものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ディーゼルエンジンにおいては、排気を吸気に混ぜることで、燃焼で発生するNOx(窒素酸化物)を低減するEGR(排気再循環)技術が用いられている。排気に含まれるNOxは、燃焼中の高温火炎が生じている場で、空気中の窒素が熱乖離を起こし、それが酸素と結び付くことによって発生している。このため、一般には火炎温度(=燃焼反応が起きている場の温度)を下げるとNOxの発生が低下することから、燃焼室に吸入される空気に対し、排ガスを混ぜることで不活性ガスの濃度を増やし、かつ、酸素濃度を減らすことで、燃焼反応を緩慢にし、火炎温度を下げるとともに、酸素濃度を減らすことで熱乖離した窒素と酸素が結び付くことを抑制し、NOxの発生低減を図ってる。しかし、吸入ガスにおける酸素濃度が低下すると、燃焼反応場での酸素が不足することで、燃料が十分に燃え切らず、蒸し焼きのような状態になってすすの発生が起きる。このため、ディーゼルエンジンは高負荷で大量の燃料を燃焼させようとする場合、黒煙が発生する。最近の自動車用ディーゼルエンジンは、排気管中にフィルターを設置し、黒煙の発生を防いでいる。しかし、フィルターに堆積したすすは、定期的に燃焼させて除去する必要があり、そのフィルターの再生にエネルギー消費が起きることから、エンジンでの燃焼段階でなるべくすすを発生させないことが好ましい。このためには、燃焼時にNOxとすすの両方の発生が少ない、ごく狭い領域の酸素濃度になるように吸入ガスを制御することが好ましく、EGRのガス流量を精密に制御することが求められる。EGRのガス流量は一般に、EGR弁とスロットル弁の組み合わせで制御されるが、精密な制御のためには、EGRのガス流量を計測しながら行うことが好ましい。しかし、EGRガスは排ガスであるため、流量測定には種々の困難が発生する。
【0003】
自動車用ディーゼルエンジンにおいて、吸入空気量を計測する装置として、エアクリーナーの下流で空気流量を計測するエアフローセンサーがあり、特許文献1に示される技術が知られている。特許文献1では熱線式流量計を構成するにあたり、流体が流れるメイン通路に対し、バイパス通路を設け、バイパス通路の中にセンサを配置して流量計測を行っている。これにより、メイン通路(主流通路)を流れる流体の流量が脈動していてもバイパス通路は定常流に近い状態にすることができ、流量の計測精度を向上させることができる。さらに特許文献1では、バイパスの通路長を長くすることで脈動振幅の低減効果増大を狙い、メイン通路の外周を迂回させてバイパス通路を形成する技術が開示されている。また、特許文献2では、バイパス通路を形成する部材の質量が大きい場合、吸気温度の急激な変化が生じた場合の温度の追従性が悪化して、流量の計測誤差が生じることに着目し、バイパス通路を、薄い鋼板の絞り加工で形成することにより、熱容量を低減し、温度追従性を良くする技術が開示されている。
【0004】
一方、排気の質量流量を計測するための技術としては、特許文献3に示される技術があり、センサエレメントを高温に保つことで排気中の汚損物質がセンサエレメントに付着することを防止した上で、センサエレメントの発熱が、エレメントの支持部側に熱伝導で流れることを防止することで、排気環境下で流量計測を可能にするセンサエレメントを構成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−135916号公報
【特許文献2】特開昭60−164219号公報
【特許文献3】特開2008−298425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
EGRの配管は、排気と吸気をつなぐものであるため、排気管と吸気管の両方の圧力変動の影響を受けて脈動が生じる。吸気管と排気管の圧力変動は、エンジン燃焼室の吸気弁と排気弁の開け閉めによって生じる。すなわち、吸気工程で吸気弁が開いている時は吸気管に負圧が生じ、吸気弁を閉めた瞬間には、吸気管のガスの流れが急にせき止められることによる圧力上昇が生じる。排気管では、排気弁を開けた瞬間に燃焼室に残っている圧力が伝播して圧力上昇し、排気工程が終了して、排気弁が閉じられるとガスの流出がなくなるので圧力が低下する。このため、吸気管と排気管はそれぞれが脈動流になっているが、それらをつなぐEGR配管はさらに大きな振幅で脈動が生じる。この脈動強さは、瞬間的には逆流が生じる程であり、条件によっては、逆流の瞬間最大流量が、平均流量の数倍に達することもある。EGR流量を計測してエンジン制御を行うにあたっては、脈動をある程度ならした平均的な流量を知ることが必要である。従来の吸気流量を計測する際に使われていたバイパス通路にも、脈動を低減して、平均的な流量を計測することを可能にする機能があったが、EGRの流量測定にあたっては、バイパス通路にさらなる脈動低減効果が求められる。
【0007】
バイパス通路を形成するにあたっては、流量計測の感度確保のため、メイン通路からバイパス側に流れる流量の割合をある程度確保する必要がある。そのための手段として、メイン通路側の圧力損失を増大させる手法もあるが、その場合、EGR流量を確保するためにスロットル弁を絞って負圧を作らなければならない時が出てくる。スロットル弁で作った負圧はそのまま、エンジンの吸気工程での圧力を低下させるため、その分損失仕事となり、エンジンのエネルギー効率が低下する。このため、バイパス通路の形成にあたっては、メイン通路の圧力損失が少なくて、バイパスの流量が確保されることが望ましい。そのためには、バイパス通路をガスが流れる際の圧力損失を低くする必要がある。このためにはバイパス通路を滑らかにガスが流れる形状にする必要がある。
【0008】
バイパス通路は、メイン通路からいったん分岐して、ある程度の通路長を経た後、メイン通路に戻るものであることから、必ず曲がりを含む流路となる。しかし、脈動低減効果を高めたバイパス通路を、メイン通路の圧力損失が小さくなるように構成するには、バイパス通路において、メイン通路から分岐して再びメイン通路に合流するまでの間を、2次元的な曲がりのみで構成するのは難しく、3次元的な曲がり通路が必要となる。吸気流量を計測するエアフローセンサーの場合は、樹脂成形により3次元的な曲がり通路で構成されるバイパス通路を実現しているが、EGR流量を計測する場合、高温の排気にさらされるため樹脂成形を採用することは難しい。そのため、3次元的な曲がり通路の形状を実現するためには、部品点数が増加したり、作業工程数が増加し、量産性が低下するという課題がある。
【0009】
また、EGRのガス中には未燃燃料成分を含んだすすが混ざっており、このすすは通路壁面に付着しやすい性質を持つ。バイパス通路の中にすすが付着し、その付着量が増えていくと、通路断面積が変化し、バイパス通路を流れる流量の割合が変化する。このような現象が生じると流量計測値がずれてくるために、すすの付着は極力避けたい。そのための手段として、バイパス通路の曲がりを滑らかにして、すすが極力壁面に接触することを避ける方法がある。このこと自体は非常に有効であるが、量産可能な加工手段で滑らかな通路を形成するのが困難である上、滑らかというだけでは、すすが壁面に接触する機会はなくならないので、実用可能なレベルですすの付着を抑制することは非常に難しい課題である。
【0010】
本発明の目的は、脈動低減効果が得られる程度の長さを確保したバイパス通路を、ガスが流れる際の圧力損失を低くすると共に、すすの付着抑制の効果を高め、高温の排気に耐え得る材料を用いて量産可能にした排気再循環ガス流量測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明では、排気再循環ガス流量測定装置において、ケース部材をバイパス通路の両側部と外周の一部とを覆うように金属板を絞り加工して形成し、ケース部材の内側に配置されてバイパス通路の内周を仕切る仕切り部材を金属板を曲げ加工して形成し、ケース部材と仕切り部材とを用いてバイパス通路を構成する。
【0012】
このとき、バイパス通路は、主流通路の流れ方向のままでガスが流入する向きに入口が開口し、この入口から流入したガスが主流通路の上流側から下流側に向かって流れた後、主流通路の下流側から上流側に向けて流れ方向を変えるように通路が曲がっており、さらにガスが主流通路の下流側から上流側に向かって流れた後、主流通路の中央部側へ向けて流れ方向を変えるように通路が曲がっており、バイパス通路の側部を覆うケース部材の部分に出口が開口するようにするとよい。
【0013】
また、仕切り部材は、バイパス通路の入口から出口まで連続した内周面を形成するとよい。
【0014】
また、仕切り部材には、ガスが主流通路の下流側から上流側に向かって流れた後に主流通路の中央部側へ向けて流れる通路部分の外周を覆う部分が設けられ、前記部分は仕切り部材におけるバイパス通路の入口開口部を形成する部分に繋がっているとよい。
【0015】
また、バイパス通路の入口部に下流側に行くに従って外周面と内周面との間隔が狭くなるように絞られた絞り部を有し、仕切り部材における絞り部を形成する部分の裏面側にバイパス通路の出口が開口しているとよい。
【0016】
バイパス通路に取り込んだガスが主流通路の下流側から上流側に向かって流れるバイパス通路の部分に、センサを配置するとよい。
【0017】
バイパス通路のセンサが配置される部分を、主流通路の内周面の外側に位置するように構成するとよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ケース部材をバイパス通路の両側部と外周の一部とを覆うように金属板を絞り加工して形成し、ケース部材の内側に配置されてバイパス通路の内周を仕切る仕切り部材を金属板を曲げ加工して形成し、ケース部材と仕切り部材とを用いてバイパス通路を構成することにより、部品点数や作業工程数が少なく、量産性の高い排気再循環ガス流量測定装置を提供することができる。また、バイパス通路の外周を、金属板を絞り加工により形成できるので、通路形状が滑らかになり、すすの付着抑制が図られると共に、バイパス通路の圧力損失を低減してバイパス流量を確保することができる。
【0019】
また、バイパス通路を構成するケース部材と仕切り部材とを金属板を絞り加工或いは曲げ加工することによって製作することにより、高温の排気に耐え得る材料を用いて量産が可能になり、金属を削り出して製作した場合に比べ、薄肉構造にすることが可能になる。薄肉化によって、使用する材料が減るだけでなく、バイパス通路の熱容量が削減され、EGRのガス温度に対するバイパス通路の壁面温度の追従性が良くなる。このことは温度計測の誤差を小さくするだけでなく、壁面に付着するすすの量を低減することができる。エンジンが冷えた状態から始動する場合、EGRガス温度は比較的早く昇温するものの、金属で形成されたバイパス通路壁面の温度はすぐには昇温しない。バイパス通路壁面はその表面を通過するガスから熱を受けて昇温するため、熱容量が大きいほど昇温が遅れる。逆に言うと、薄肉化して熱容量を下げると早く昇温するようになる。エンジンの排気に含まれるすすは、より冷えた表面に対して付着しやすい性質を持っていたため、壁面温度がすばやく昇温するとすすの付着を低減することができる。
【0020】
また、バイパス通路のセンサが配置される部分を、主流通路の内周面の外側に位置するように構成することにより、主流通路の圧力損失を増大させずに、バイパス通路の通路長を伸ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る排気再循環ガス流量測定装置の正面図およびその断面図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る排気再循環ガス流量測定装置の分解図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る排気再循環ガス流量測定装置用のバイパス通路に対する定常流れ解析結果。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る排気再循環ガス流量測定装置用のバイパス通路に対する脈動流に対する非定常流れ解析結果。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る排気再循環ガス流量測定装置の分解図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る排気再循環ガス流量測定装置の正面図およびその断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明による排気再循環ガス流量測定装置の具体的な実施形態を図1〜6を用いて説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の第1の実施形態であって、正面図とその断面図を表す。EGRガスはEGR配管7のパイプ8を主流通路13として、左から右へと流れており、その質量流量を計測するために本発明の装置が取り付けられている。バイパス通路14はケースプレート4と仕切板5によって形成されており、熱線プローブ2と温度プローブ3によって流量計測がなされている。熱線プローブ2と温度プローブ3に関しては特許文献3に詳細技術が開示されている。質量流量測定の基本的な原理としては、熱線プローブ2先端のエレメント2aを高温の一定温度に保ち、その一定温度を保つために必要な電気ヒータの発熱量を計測することで、流量計測を行っている。エレメント2aの表面温度が一定の場合、そこからの放熱量はガス温度と質量流量の関数となるため、温度と発熱量の計測によって質量流量を算出することが可能となる。
【0024】
バイパス通路14は前面下側の4aの場所を入口14aとしてガスが流入し、直線通路部14cの下流側で仕切板5に沿ってU字状に曲がり(曲がり通路部14d),主流通路13のパイプ8より上側の空間に持ち上がる。この上側の通路(測定通路部14e)に、温度プローブ3の先端にあるエレメント3aと、熱線プローブ2の先端にあるエレメント2aが挿入され、それぞれ温度計測と放熱量計測がなされることで質量流量が検知される。これらのセンサ部を通過した後、通路は下に曲がり(曲がり通路部14f),バイパス通路側面に設けられた開口4bを出口14bとしてガスは流出する。バイパス通路14の天井14gは、センサ用フランジ6によって封止され、同時にセンサ用フランジ6は熱線プローブ2と温度プローブ3の固定も担う。センサ用フランジ6が、EGR配管用フランジ9と接合することで流量センサが配管に取り付くが、同時に、EGR配管用フランジ9の高さによってバイパス通路14は主流通路13から持ち上げられている。バイパス通路14を持ち上げることにより、パイプ8(主流通路13)の通路断面積を減少させる量が減り、EGR配管7のパイプ8内における圧力損失を低減することに貢献している。
【0025】
図2は、図1と同じものを分解状態にして表示したものである。バイパス通路14にセンサ(熱線プローブ2,温度プローブ3)が取り付いたものはセンサユニット1としてまとまり、このセンサユニット1のバイパス通路14をEGR配管用フランジ9が設置されているEGR配管7に挿入して取り付けることになる。センサ用フランジ6に対し、ケースプレート4と仕切板5は溶接し、熱線プローブ2と温度プローブ3は取外し可能なようにネジ込み接合している。バイパス通路14の外壁を形成するケースプレート4は、上側4dと前側4eが開き、下側4fと後側4gが閉じた袋状の形状となり(図2参照)、1枚の金属板を絞り加工することで成形される。側面の開口部4bの右側には、くぼみ4cを設けて内側にくぼませることにより、ガスがバイパス通路14から流出する際、主流通路13の流れに直交することをやわらげ、滑らかに流出する形にしている。このくぼみ4cは、仕切板5を接合する前に加工してもよいし、仕切板5とケースプレート4の接合後に加工してもよい。
【0026】
ケースプレート4の下側4fは半円弧形状となってバイパス通路14の両側面(両側部)を覆うケースプレート4の部分4hと4iとをつないでおり、その半円弧はバイパス通路14(ケースプレート4)の下側4fおよび右下のコーナー部4j,後側4g,右上のコーナー部4kと続いている。ケースプレート4の下側4f,右下のコーナー部4j,後側4g及び右上のコーナー部4kは、バイパス通路14の外周の一部を覆う外周壁面を構成している。また、ケースプレート4の部分4hと4iとはバイパス通路14の側壁面を構成している。このような形状を1枚の金属板の絞り加工で製作すると、継ぎ目がなく、角もなくなるので、すすが滞留する空間をなくせる。すすの壁面付着は、一旦起きると連鎖的に成長するため、流れの滞留が起きる場所をなくせば、すすの付着が起きて成長する現象を抑える効果が大きい。また、半円弧の形状は外壁を形成する上で最小の面積で済むことから、すすの付着が起きる機会の低減にもなっている。
【0027】
仕切板5は左側5aが、バイパス通路14(ケースプレート4)の前面4eの外壁を担っており、その曲げ部5bが、バイパス通路14の曲がり通路部14fの外側のコーナーを形成している。仕切板5の左下側5cは、バイパス通路14の入口14aの形状を形成しており、板の曲がりが、入口の広い開口から徐々にバイパス通路高さが減少して直線通路部14cに繋がる形状を担っている。この形状は、バイパス通路14の入口14aの部分に、下流側に行くに従ってケースプレート4に形成された外周面4m(図1参照)と仕切板5の左下側5c部分によって形成された内周面部分との間隔が狭くなるように絞られた絞り部14hを形成している。そして、仕切板5における絞り部14hを形成する部分5cの裏面側にバイパス通路14の出口14bが開口している。
【0028】
仕切板5の左下側5cと下側5d以降は、バイパス通路14の曲がりの内側の壁(内周壁)を形成し、出口14bまで連続し、「の」の字状に、一端を自身の中間部分5eに接合している。このような仕切板5は金属板を曲げ加工して作ることができ、本実施例ではバイパス通路14の入口14aから出口14bまで連続した内周面を形成しており、さらにバイパス通路14の外周の一部を覆う外周壁面部5a,5bも備えている。外周壁面部5a,5bは、ガスが測定通路部14eを主流通路13の下流側から上流側に向かって流れた後に、主流通路13の中央部側へ向けて流れる通路部分の外周を覆っており、仕切板5におけるバイパス通路14の入口開口部14aを形成する部分5cに繋がっている。このように、仕切板5を、バイパス通路14の入口14aから出口14bまで連続した内周面5c,5d,5eと、外周壁面部5a,5bとを備えるように、一枚の板材を曲げ加工して製作することにより、部品点数を減らし、組み立て作業を容易にすることができる。また、出口14b付近には、4cのくぼみがあるため、そこだけ仕切板5の板の幅が削られている。ケースプレート4と仕切板5は溶接によって固定接合することが望ましい。
【0029】
ケースプレート(ケース部材)4と仕切板(仕切り部材)5とにより、バイパス通路14は以下のように構成される。バイパス通路14は、主流通路13の流れ方向のままでガスが流入する向きに入口14aが開口し、入口14aから流入したガスが主流通路13の上流側から下流側に向かって直線通路部14cを流れた後、主流通路13の下流側から上流側に向けて流れ方向を変えるように通路が曲がっており(曲がり通路部14d)、さらにガスが主流通路13の下流側から上流側に向かって測定通路部14eを流れた後、主流通路13の中央部側へ向けて流れ方向を変えるように通路が曲がっており(曲がり通路部14f)、バイパス通路14の側部を覆うケースプレート4の部分に出口14bが開口している。
【0030】
センサユニット1とEGR配管7との固定は、センサ用フランジ6,EGR配管用フランジ9の四隅のネジ穴を通して行う。センサ用フランジ6,EGR配管用フランジ9は、簡略的に厚肉部材で表示したが、薄肉構造化することも可能である。また、フランジの接合はネジ以外の方法であってもかまわない。
【0031】
図3,図4は、本発明によるバイパス通路14の特性を示すため、流れ解析によって得られた結果を示している。図3(a)は、主流通路13の順流方向にガスが流れる条件での定常流の解析結果であり、図1の断面図と同じ方向の断面における速度ベクトルの分布図である。流れ解析を行うにあたり、流れに関係のないセンサ用フランジ6,EGR配管用フランジ9は形状を簡略化した。速度ベクトル図により、順流方向の定常流では、バイパス通路14にガスが滑らかに流入し、センサのエレメント2a,3aに対して、直交してガスが流れている。また、バイパス通路14の外側の流れに関しても、バイパスの右下側のコーナー部4jが滑らかな曲線になっていることで、主流通路13の流路断面積が徐々に回復する形状となり、後流で形成される渦が少なく、圧力損失が少ない流れになっている。順流方向の流れでは、違う流量でも速度分布の相似形が比較的保たれ、主流通路13からバイパス通路14に分流する流量の割合はほぼ一定である。このため、バイパス通路14での流量測定によって全体流量を計測することができる。
【0032】
図3(b)は、主流通路13の逆流方向に定常流があった場合の流れ解析結果である。EGR配管7の主流通路13で逆流が定常的に続くということはないが、基礎的な特性の把握のためにこの解析を行っている。主流通路13で逆流が生じている場合、バイパス通路14入口付近の外側に逆流の流れがあることによってバイパス通路14内のガスが引きずられ、バイパス通路14も順流時とは逆向きにガスが流れている。また、バイパス通路14の出口に形成したくぼみ4cも、逆流の流れがバイパス通路14に流入しやすくしており、逆流を促進している。ただし、順流時に比べれば、逆流時にバイパス通路14に流入するガスの割合は低い。
【0033】
図4は、非定常流れ解析によって、脈動流におけるバイパス通路14の流量を解析した結果である。グラフの横軸は時刻であり、縦軸は流量である。主流通路13の流量を破線で示しており、目盛は左側になる。脈動流の設定条件として、平均流量を25kg/hとし、瞬間最大流量と瞬間最小流量の差である全振幅を200kg/hとした。この大きな振幅の脈動により、瞬間最小流量は−75kg/hに達し、絶対値として、平均流量の3倍に達する逆流が発生する条件にしている。また、脈動の周波数は100Hzに設定した。参考として、4気筒の4サイクルエンジンの場合、エンジンの回転1回で2回の吸排気弁の開閉があることから、エンジン回転数が毎分3000回転の場合、毎分6000回の弁の開閉があり、1秒あたり100回の弁の開閉が起きる。この弁の開閉をもとにして複雑な脈動が起きることから、100Hzの脈動は実際に起きる現象の範囲にある。主流通路13がこのような脈動流になっていた場合の、バイパス通路14の流量がグラフの実線となり、目盛は右側になる。この解析結果によるバイパス通路14の流量は、平均流量が1.4kg/h、瞬間最大流量が2.9kg/h、瞬間最小流量が0.2kg/hとなった。特徴は、主流通路13は大きな逆流が生じる瞬間があるにも関わらず、バイパス通路14では逆流になる瞬間がないことである。この現象は、バイパス通路14が脈動の振幅を小さくする効果を持つことで生じる。すなわち、バイパス通路14は主流通路13に比べて通路長を長くしていることで、通路内のガスの慣性が主流通路13よりも強く働き、加速しづらい状況にしている。この慣性の効果によって、バイパス通路14の流量のピークは、主流通路13よりも遅れて生じる。また、主流通路13の側は、ピーク流量が平均流量の5倍になっているにも関わらず、バイパス通路14の側は、ピーク流量は平均流量の2倍程度になっており、脈動が弱まっている。このため、バイパス通路14には逆流が起きずに済んでいる。熱線式の流量計の場合、逆流があっても放熱量はマイナスにならないので、逆流がある脈動に対しては流量の計測誤差を生じる。しかし、本発明のバイパス通路14を使えば、逆流のない脈動にすることができるので、流量の計測精度を向上させることができる。
【実施例2】
【0034】
図5は、本発明の第2の実施形態を簡略的な形状で、分解図にしたものである。図6は、図5と同じものを正面図と断面図で表示したものである。第1の実施形態と同じ部品は符号を同じにすることで説明を省略する。
【0035】
第2の実施形態においては、ケースプレート4′において第1の実施形態におけるケースプレート4の右上のコーナー4kを無くしている。これによりケースプレート4′の絞り加工はより容易になる。また、ケースプレート4側面のくぼみ4cもなくしている。バイパス通路14′を形成するにあたっては、ケースプレート4′と仕切板5′によって行う。図6において、温度プローブ3′の位置が、第1の実施形態と異なる。すなわち、バイパス通路14′の直線通路部14c′が上側の測定通路部14e′につながるコーナー部(曲がり通路部14d′)に温度プローブ3′のエレメント3a′を配置している。この場所は、ケースプレート4′と仕切板5′のすき間を狭まることでバイパス通路の流路断面積が狭まり流速を増加させることが可能であるため、高い流速を温度プローブ3′のエレメント3a′にあたるようにすることで、温度計測の感度を高く保った上で、バイパス通路14′の小型化を図ることができる。それ以外の構成は第1の実施形態と同様である。
【0036】
上述の各実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0037】
上記のようなバイパス通路の形状および加工方法にすることにより、通路形状の滑らかさが実現され、バイパス通路の圧力損失低減によるバイパス流量の確保と、すすの付着抑制が図られる。また、バイパス通路が上に曲がってUターンし、その後下に曲がる形状であることにより、その上側の通路をEGR配管の外側の空間に持ち出すことが可能になる。バイパス通路をEGR配管の内側に構成した場合、メイン通路の流路断面積が削減されることになり、メイン通路の圧力損失が増大する。EGRガスの流量計測にあたっては、吸気の流量計測の場合より大きな脈動に対処する必要があり、脈動低減のためのより長いバイパス通路長が求められるが、それをEGR配管の内側に形成したのであればメイン通路の圧力損失がより一層増大してしまう。このため、バイパス通路に上に向かう箇所と下に向かう箇所を設けることで通路長を伸ばしつつ、上側の流路をEGR配管の外側に持ち出すことで、メイン通路の圧力損失を増大させずに、バイパス通路の通路長を伸ばすことが可能になった。このメイン通路の圧力損失低減はエンジンのエネルギー効率向上を可能にする。
【0038】
また、バイパス通路の形成をケースプレートと仕切板の板によって行うことにより、エアフローセンサー用のバイパス通路と同じ形状を金属を削り出して製作した場合に比べ、薄肉の構造にすることが可能になった。削り出しの加工であれば、3次元的な形状も自由に成形可能であるが、加工の際に加わる荷重に耐えられる必要があるため、全面的に薄肉化することは不可能である。それに対し、本発明の構造のように板材の組合せでバイパス通路を形成する場合、使用する板材の肉厚を薄くするだけで、薄肉化することが可能となる。この薄肉化によって、使用する材料が減るだけでなく、より大きな利点を得ることができた。すなわち、薄肉化によってバイパス通路の熱容量が削減され、EGRのガス温度に対する壁面温度の追従が良くなった。このことは温度計測の誤差を小さくするだけでなく、壁面に付着するすすの量の低減をもたらした。エンジンが冷えた状態から始動する場合、EGRガス温度は比較的早く昇温するものの、金属で形成されたバイパス通路壁面の温度はすぐには昇温しない。バイパス通路壁面はその表面を通過するガスから熱を受けて昇温するため、熱容量が大きいほど昇温が遅れる。逆に言うと、薄肉化して熱容量を下げると早く昇温するようになる。ディーゼルエンジンの排気に含まれるすすは、より冷えた表面に対して付着しやすい性質を持っていたため、壁面温度がすばやく昇温するとすすの付着が低減するという大きな利点を得ることができた。
【符号の説明】
【0039】
1 センサユニット
2 熱線プローブ
3,3′ 温度プローブ
4,4′ ケースプレート
5,5′ 仕切板
6 センサ用フランジ
7 EGR配管
8 パイプ
9 EGR配管用フランジ
13 主流通路
14 バイパス通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主流通路を流れるガスの一部を取り込み、取り込んだガスの流れ方向を変えるバイパス通路と、前記バイパス通路に流れるガスの流量を計測するセンサとを備え、前記バイパス通路のガス流量測定によって主流通路のガス流量を測定する排気再循環ガス流量測定装置において、
前記バイパス通路を、
前記バイパス通路の両側部と外周の一部とを覆うように、金属板を絞り加工して形成したケース部材と、
金属板を曲げ加工して形成され、前記ケース部材の内側に配置されて前記バイパス通路の内周を仕切る仕切り部材と、
を用いて構成したことを特徴とする排気再循環ガス流量測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排気再循環ガス流量測定装置において、
前記バイパス通路は、主流通路の流れ方向のままでガスが流入する向きに入口が開口し、前記入口から流入したガスが主流通路の上流側から下流側に向かって流れた後、主流通路の下流側から上流側に向けて流れ方向を変えるように通路が曲がっており、さらにガスが主流通路の下流側から上流側に向かって流れた後、主流通路の中央部側へ向けて流れ方向を変えるように通路が曲がっており、前記バイパス通路の前記側部を覆う前記ケース部材の部分に出口が開口していることを特徴とする排気再循環ガス流量測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の排気再循環ガス流量測定装置において、
前記仕切り部材は、前記バイパス通路の入口から出口まで連続した内周面を形成していることを特徴とする排気再循環ガス流量測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の排気再循環ガス流量測定装置において、
前記仕切り部材には、ガスが主流通路の下流側から上流側に向かって流れた後に主流通路の中央部側へ向けて流れる通路部分の外周を覆う部分が設けられ、前記部分は前記仕切り部材における前記バイパス通路の入口開口部を形成する部分に繋がっていることを特徴とする排気再循環ガス流量測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の排気再循環ガス流量測定装置において、
前記バイパス通路の入口部に下流側に行くに従って外周面と内周面との間隔が狭くなるように絞られた絞り部を有し、前記仕切り部材における前記絞り部を形成する部分の裏面側に前記バイパス通路の出口が開口していることを特徴とする排気再循環ガス流量測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の排気再循環ガス流量測定装置において、
前記バイパス通路に取り込んだガスが主流通路の下流側から上流側に向かって流れる前記バイパス通路の部分に、前記センサを配置したことを特徴とする排気再循環ガス流量測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の排気再循環ガス流量測定装置において、
前記バイパス通路の前記センサが配置される部分を、主流通路の内周面の外側に位置するように構成したことを特徴とする排気再循環ガス流量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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