説明

排気処理装置

【課題】排ガスの温度に関わらず排ガス中のN2Oの量を低減可能な排気処理装置を提供する。
【解決手段】エンジン2の燃焼室3から排出される排ガス排ガスは、排気管20の排気通路21を流通する。排気通路21には、排ガス中のNOxを還元するNOx還元触媒30と、このNOx還元触媒30に対し排ガス流れの下流側で排ガスの温度に関わらず排ガス中のN2Oを酸化可能なコロナ放電装置40とを備えている。これにより、NOx還元触媒30でNOxを還元する際に排ガス中にN2Oが発生する場合、NOx還元触媒30の下流側に位置するコロナ放電装置40によりN2Oを酸化してNOまたはNO2に変化させることができる。したがって、排ガスの温度に関わらず排ガス中のN2Oの量を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排出する燃焼ガスとしての排ガス中の窒素酸化物(以下、NOxという。)を処理する排気処理装置に関し、特に排ガス中のN2Oを処理する排気処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の排出する排ガスを浄化するために排気通路にNOxを還元するNOx還元触媒を配置する排気処理装置が知られている。
ところで、内燃機関での燃料の燃焼状態によっては排ガス中に窒素酸化物の一つであるN2Oが発生する。N2Oは、他の窒素酸化物であるNOやNO2と比べて大気中での寿命が長く、成層圏でオゾン層を破壊する。また、N2Oは、CO2と比べて温暖化係数が大きいため、大気中に放出されると温暖化を促進するという問題がある。特に、NOx還元触媒ではNOやNO2を還元する際にN2Oが発生し、NOx還元触媒を通過した排ガスにはN2Oが多く含まれることとなる。そのため、排ガス中のN2Oの量を低減して大気中へ排出することが求められている。
【0003】
特許文献1に開示される排気浄化装置では、特許文献2に開示されるような放電装置を排気通路に設置し、この放電装置からの放電により排ガス中のN2OなどのNOxを酸化してNOxの量の低減を図っている。しかしながら、特許文献1の排気浄化装置では、放電装置が触媒に対して排ガス流れの上流側に設置されている。そのため、放電装置で排ガス中のN2Oの量が低減されても、この排ガス中のNOxが触媒で還元されることによりN2Oが発生しN2Oの濃度が高まった排ガスが大気中へ排出されるおそれがある。
【0004】
一方、特許文献3には、NOx還元触媒でスリップした還元剤としてのアンモニアを酸化するための酸化触媒を、排気通路のNOx還元触媒に対し排ガス流れの下流側に設置した排気浄化装置が開示されている。しかしながら、この排気浄化装置の場合、排ガスの温度が低いときは酸化触媒の酸化能力が低いため、NOx還元触媒を通過して排ガス中に発生したN2Oを酸化触媒によって十分に酸化できないおそれがある。これに対し、例えば酸化触媒中の貴金属の量を増加すれば、排ガスが低温のときでも酸化触媒の酸化能力を高めることができるが、この場合、酸化触媒の製造コストが増大するという問題が生じる。
【特許文献1】特開2001−164926号公報
【特許文献2】特開2002−361037号公報
【特許文献3】特開2005−105914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、排ガスの温度に関わらず排ガス中のN2Oの量を低減可能な排気処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、内燃機関の燃焼室から排出される排ガスが流通する排気通路を有する排気管と、排気通路に設けられ排ガス中のNOxを還元する還元手段と、排気通路の還元手段に対し排ガス流れの下流側に設けられ排ガスの温度に関わらず排ガス中のN2Oを酸化可能な第1酸化手段とを備えている。これにより、還元手段でNOxを還元する際に排ガス中にN2Oが発生する場合、還元手段の下流側に位置する第1酸化手段によりN2Oを酸化してNOまたはNO2に変化させることができる。したがって、排ガスの温度に関わらず排ガス中のN2Oの量を低減することができる。
【0007】
請求項2記載の発明では、第1酸化手段はコロナ放電装置である。コロナ放電装置は、排気通路に露出した電極の先端にコロナ放電を生じさせる。これにより、排ガス中に電子および紫外線が放出される。放出された電子および紫外線が排ガス中の酸素に作用することによりオゾンが発生する。排ガス中のN2Oは、発生したオゾンによって酸化され、NOまたはNO2に変化する。また、排ガス中のN2Oは、放出された紫外線によってNOとN2とに変化する。したがって、排ガスの温度に関わらず排ガス中のN2Oの量を効果的に低減することができる。
【0008】
請求項3記載の発明では、第1酸化手段は沿面放電装置である。沿面放電装置は、排気通路に露出した線状電極近傍に放電を生じさせる。これにより、排ガス中に電子および紫外線が放出される。放出された電子および紫外線が排ガス中の酸素に作用することによりオゾンが発生する。排ガス中のN2Oは、発生したオゾンによって酸化され、NOまたはNO2に変化する。また、排ガス中のN2Oは、放出された紫外線によってNOとN2とに変化する。したがって、排ガスの温度に関わらず排ガス中のN2Oの量を効果的に低減することができる。
【0009】
請求項4記載の発明では、第1酸化手段は紫外線発生装置である。紫外線発生装置は、紫外線を発生させ、この紫外線を排気通路内の排ガスに照射する。紫外線が排ガス中の酸素に作用することによりオゾンが発生する。排ガス中のN2Oは、発生したオゾンによって酸化され、NOまたはNO2に変化する。また、排ガス中のN2Oは、照射された紫外線によってNOとN2とに変化する。したがって、排ガスの温度に関わらず排ガス中のN2Oの量を効果的に低減することができる。
【0010】
請求項5記載の発明は、排気通路の第1酸化手段に対し排ガス流れの下流側に設けられ排ガス中のNOxを吸着する吸着剤を有する吸着手段をさらに備えている。吸着手段は、第1酸化手段を通過した排ガス中に含まれるNOxを吸着剤で吸着する。そのため、第1酸化手段によりN2OがNOまたはNO2に変化しても、これらを含むNOxを吸着手段で吸着することができる。したがって、大気中に排出される排ガス中のNOxの量を低減することができる。
【0011】
請求項6記載の発明は、第1酸化手段の作動を制御可能な制御手段をさらに備えている。これにより、第1酸化手段の作動を所定の条件に応じて制御することができる。
請求項7記載の発明は、排気通路の還元手段に対し排ガス流れの上流側に設けられ排ガスの温度を検出する排ガス温検出手段と、排気通路の還元手段に対し排ガス流れの下流側に設けられ排ガス中のN2Oを酸化可能な第2酸化手段とをさらに備えている。制御手段は、排ガス温検出手段により検出される温度の値が所定値以下のとき、第1酸化手段を作動させる。これにより、排ガスの温度が低く第2酸化手段が活性化していないときでも、第1酸化手段により排ガス中のN2Oを酸化することができる。よって、排ガス低温時の酸化能力を高めるために第2酸化手段中の貴金属の量を増加する必要がない。これにより、第2酸化手段の製造コストを低減することができる。また、所定の条件を満たしたときのみ第1酸化手段を作動させるため、第1酸化手段の消費電力を低減することができる。
【0012】
請求項8記載の発明は、排気通路の第1酸化手段に対し排ガス流れの上流側に設けられ排ガス中のN2Oの濃度を検出するN2O濃度検出手段をさらに備えている。制御手段は、N2O濃度検出手段により検出されるN2Oの濃度の値が所定値以上のとき第1酸化手段を作動させる。また、制御手段は、第1酸化手段に印加する電圧または供給する電力をN2Oの濃度に応じて調節する。これにより、排ガス中のN2Oの濃度に応じて第1酸化手段の酸化能力の高低を変更することができる。したがって、排ガス中のN2Oを効率的に酸化することができる。また、所定の条件を満たしたときのみ第1酸化手段を作動させるため、第1酸化手段の消費電力を低減することができる。
【0013】
請求項9記載の発明は、排気通路の還元手段に対し排ガス流れの上流側に設けられ排ガス中のNOxの濃度を検出するNOx濃度検出手段をさらに備えている。制御手段は、NOx濃度検出手段により検出されるNOxの濃度の値が所定値より小さいとき、第1酸化手段の作動を停止させる。これにより、第1酸化手段の消費電力を低減することができる。
【0014】
請求項10記載の発明は、排気通路の還元手段に対し排ガス流れの上流側に設けられ還元手段に還元剤を添加可能な還元剤添加手段をさらに備えている。制御手段は、NOx濃度検出手段により検出されるNOxの濃度の値が所定値以上のとき還元剤添加手段を作動させ、還元剤添加手段から還元手段に添加する還元剤の量をNOxの濃度に応じて調節する。これにより、NOxを還元剤によって効率的に還元することができる。また、所定の条件を満たしたときのみ還元剤添加手段を作動させるため、還元剤添加手段の消費電力を低減するとともに還元剤の余分な消費を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による排気処理装置を図1に示す。排気処理装置1は、内燃機関としてのエンジン2の燃焼室3から排出される排ガスを処理する。排気処理装置1は、排気管20、還元手段としてのNOx還元触媒30、第1酸化手段としてのコロナ放電装置40、還元剤添加手段としての還元剤噴射弁50、制御手段としての電子制御ユニット(以下、「ECU」という。)11、N2O濃度検出手段としてのN2Oセンサ12、およびNOx濃度検出手段としてのNOxセンサ13などを備えている。
【0016】
排気管20は、エンジン2から排出された排ガスをエンジン2の外部へ導く。排気管20の内壁は、排気通路21を形成している。排気通路21は、エキゾーストマニホールド22を経由して燃焼室3に連通している。これにより、燃焼室3からの排ガスは、エキゾーストマニホールド22を経由して排気通路21に流入する。なお、燃焼室3からの排ガスは、燃焼室3で燃料が燃焼することにより生じた燃焼ガスを含んでいる。燃焼室3から排気通路21に流入した排ガスは、排気通路21を流通し、排気管20に形成された開口23から大気中に排出される。
【0017】
排気通路21のエキゾーストマニホールド22に対し排ガス流れの下流側には、過給器4のタービン5が設けられている。過給器4は、図示しない吸気通路に設けられるコンプレッサおよびタービン5などからなる。タービン5は、排気通路21を流通する高圧の排ガスによって回転駆動される。タービン5とコンプレッサとは、シャフト6によって接続している。そのため、排ガスの流通によってタービン5が駆動されると、タービン5とともにコンプレッサが回転する。これにより、コンプレッサは、吸気通路を流れる空気をエンジン2側へ加圧して給送する。その結果、吸気はエンジン2へ過給される。
【0018】
排気通路21のタービン5に対し排ガス流れの下流側には、酸化触媒7が設けられている。酸化触媒7は、白金を坦持するハニカム状の担体(図示せず)を内部に有している。排気通路21を流通する排ガスがこの担体を通過するとき、排ガスに含まれる種々の成分が酸化される。例えば、排ガス中の一酸化炭素(CO)は二酸化炭素(CO2)に、未燃焼燃料である炭化水素(HC)は水(H2O)および二酸化炭素に、窒素酸化物(NOx)は二酸化窒素(NO2)などに酸化される。
【0019】
NOx還元触媒30は、排気通路21の酸化触媒7に対し排ガス流れの下流側に設けられている。還元剤噴射弁50は、排気通路21のNOx還元触媒30に対し排ガス流れの上流側、すなわちNOx還元触媒30と酸化触媒7との間に設けられている。還元剤噴射弁50には、ECU11が接続している。ECU11は、所定の条件を満たしたとき還元剤噴射弁50を作動させる。還元剤噴射弁50は、ECU11からの指令により還元剤としての尿素(CO(NH22)を排ガス中に噴射する。このとき、ECU11は、還元剤噴射弁50から噴射する尿素の量を所定の条件に応じて調節する。
【0020】
還元剤噴射弁50から噴射された尿素は、排気通路21を流通する排ガスとともにNOx還元触媒30に流入する。NOx還元触媒30に流入した尿素は加水分解され、アンモニア(NH3)が生成される。NOx還元触媒30で生成されたアンモニアは、排ガス中のNOxを還元する。これにより、排ガスに含まれるNOやNO2などのNOxは、窒素(N2)および水に変化する。なお、排ガス中のNOxがNOx還元触媒30で還元されるとき、排ガス中に一酸化二窒素(N2O)が発生する。
【0021】
コロナ放電装置40は、排気通路21のNOx還元触媒30に対し排ガス流れの下流側に設けられている。コロナ放電装置40には、ECU11が接続している。ECU11は、所定の条件を満たしたときコロナ放電装置40を作動させる。コロナ放電装置40が作動すると、排気通路21に露出した電極にコロナ放電が生じる。これにより、排ガス中に電子(e)および紫外線(hv)が放出される。コロナ放電装置40の放電により放出された電子および紫外線が排ガス中の酸素(O2)に作用することによってオゾン(O3)が発生する。排ガス中のN2Oは、発生したオゾンによって酸化されNOまたはNO2に変化する。また、排ガス中のN2Oは、コロナ放電装置40の放電により放出された紫外線によってNOとN2とに変化する。
【0022】
排気通路21のコロナ放電装置40に対し排ガス流れの下流側には、マフラー8が設けられている。マフラー8は、排ガスが排気通路21を流通するときに生じる音を消音する。マフラー8を通過した排ガスは、排気管20の開口23から大気中へ排出される。
【0023】
2Oセンサ12は、排気通路21のコロナ放電装置40に対し排ガス流れの上流側、すなわちコロナ放電装置40とNOx還元触媒30との間に設けられている。N2Oセンサ12には、ECU11が接続している。N2Oセンサ12は、排ガス中のN2Oの濃度を検出し、その濃度に応じた電気信号をECU11に送出する。これにより、ECU11は、排ガス中のN2Oの濃度を随時知ることができる。
【0024】
NOxセンサ13は、排気通路21のNOx還元触媒30に対し排ガス流れの上流側、すなわちNOx還元触媒30と酸化触媒7との間に設けられている。NOxセンサ13には、ECU11が接続している。NOxセンサ13は、排ガス中のNOxの濃度を検出し、その濃度に応じた電気信号をECU11に送出する。これにより、ECU11は、排ガス中のNOxの濃度を随時知ることができる。
【0025】
次に、コロナ放電装置40について詳細に説明する。
コロナ放電装置40は、図2に示すようにハウジング41および放電器42を有している。ハウジング41は、筒状に形成され、両方の端部が排気管20に接続している。すなわち、ハウジング41の内壁は、排気通路21の一部を構成している。ハウジング41には、外壁面と内壁面とを接続する開口411が形成されている。
【0026】
放電器42は、本体421および放電部422を有している。本体421は、略円柱状に形成されている。本体421の一方の端部は、開口411が形成されたハウジング41に固定されている。放電部422は、略円柱状に形成されている。放電部422は、一方の端部が本体421の一方の端部に接続し、本体421と軸を概ね同一にしている。これにより、放電部422は、排気通路21に露出している。放電部422は、例えばセラミックなどの絶縁体と内部を貫通する導電体により形成され、導電体の端部に複数の針状電極423を有している。これにより、針状電極423は、排気通路21を流通する排ガスに晒される。
【0027】
本体421は、リード線によりバッテリ9と接続している。また、本体421は、リード線によりECU11と接続している。ECU11は、所定の条件を満たしたときコロナ放電装置40を作動させ、所定の条件に応じてバッテリ9からの電力の電圧を昇圧し、昇圧した電圧を針状電極423に印加する。このとき針状電極423に印加される電圧は、例えば−5〜−30kVの範囲の直流高電圧である。針状電極423に電圧が印加されると、印加される電圧に応じて針状電極423の先端にコロナ放電が生じる。これにより、排ガス中に電子(e)および紫外線(hv)が放出される。以下の化学式で示すとおり、コロナ放電装置40の放電により放出された電子および紫外線が排ガス中の酸素(O2)に作用することによってオゾン(O3)が発生する。
2+e→2O+e
2+hv→2O+e
O+O2→O3
【0028】
そして、排ガス中のN2Oは、以下の化学式で示すとおり、発生したオゾンによって酸化されNOまたはNO2に変化する。
2O+O3→2NO+O2
NO+O3→NO2+O2
【0029】
また、排ガス中のN2Oは、以下の化学式で示すとおり、コロナ放電装置40の放電により放出された紫外線によってNOとN2とに変化する。
2N2O+hv→2NO+N2
【0030】
このように、コロナ放電装置40は、作動することによって排ガスの温度に関わらず排ガス中のN2Oを酸化可能である。これにより、排ガス中のN2Oの量を低減することができる。
針状電極423の先端でのコロナ放電により発生するオゾンの量は、針状電極423に印加される電圧に応じて変化する。すなわち、針状電極423近傍のオゾンの濃度は、図3のグラフ中に実線L1で示すとおり、針状電極423に印加される電圧値が大きくなるほど高くなる。つまり、針状電極423に印加される電圧値が大きくなるほどコロナ放電装置40の酸化能力が高くなる。このように、ECU11は、針状電極423に印加する電圧を調節することにより、コロナ放電装置40の酸化能力の高低を変更可能である。
【0031】
さらに、コロナ放電装置40では、以下の化学式で示すとおり、排ガス中のアンモニア(NH3)および煤(C)をもオゾンによって酸化可能である。
2NH3+O3→N2+3H2
2C+2O3→2CO2+O2
このように、排ガス中にアンモニアが含まれていても、コロナ放電装置40によって排ガス中のアンモニアを窒素と水とに変化させることができる。そのため、コロナ放電装置40の上流側に設けられたNOx還元触媒30でのNOx還元時に余剰となったアンモニアが排ガス中に含まれていても、下流のコロナ放電装置40によりアンモニアを無臭の物質に変化させて大気中に排出することができる。また、排ガス中に煤が含まれていても、コロナ放電装置40によって排ガス中の煤を二酸化炭素と酸素とに変化させて大気中に排出することができる。
【0032】
次に、排気処理装置1による排ガス処理の例について、図4に基づいて説明する。図4のフローチャートは、排気処理装置1による排ガス処理に関する一連の処理を示している。この一連の処理は、エンジン2が始動すると開始される。
【0033】
ステップS101(以下、「ステップ」を省略し、単に記号「S」で示す。)では、ECU11は、エンジン2が運転中かどうかを判断する。ECU11によってエンジン2が運転中であると判断された場合(S101:Yes)、処理はS102へ移行する。一方、エンジン2が停止していると判断された場合(S101:No)、図4に示す一連の処理を抜け、排ガス処理を終了する。
【0034】
S102では、ECU11は、NOxセンサ13から送出された電気信号に基づき排ガス中のNOxの濃度を測定する。その後、処理はS103へ移行する。
S103では、ECU11は、所定の条件を満たしたか否か、すなわちS102で測定した排ガス中のNOxの濃度の値が所定値以上か否かを判定する。排ガス中のNOxの濃度の値が所定値以上の場合(S103:Yes)、処理はS105へ移行する。一方、排ガス中のNOxの濃度の値が所定値以上でない場合(S103:No)、すなわち排ガス中のNOxの濃度の値が所定値より小さい場合、処理はS104へ移行する。
【0035】
S104では、ECU11は、コロナ放電装置40が作動している場合、その作動を停止させる。その後、処理はS101へ戻る。
S105では、ECU11は、還元剤噴射弁50を作動させ、還元剤噴射弁50から噴射する添加剤としての尿素の量を所定の条件に応じて調節する。すなわち、ECUは、還元剤噴射弁50から噴射する尿素の量をS102で測定した排ガス中のNOxの濃度に応じて調節する。これにより、排ガス中のNOxの濃度に応じた量の尿素が排ガス中に噴射され、還元剤噴射弁50の下流に位置するNOx還元触媒30に尿素が流入する。NOx還元触媒30に流入した尿素は、加水分解されてアンモニアとなり、排ガス中のNOxを還元する。その結果、排ガスに含まれるNOやNO2などのNOxは、窒素および水に変化する。S105の後、処理はS106へ移行する。
【0036】
S106では、ECU11は、N2Oセンサ12から送出された電気信号に基づき排ガス中のN2Oの濃度を測定する。その後、処理はS107へ移行する。
S107では、ECU11は、所定の条件を満たしたか否か、すなわちS106で測定した排ガス中のN2Oの濃度の値が所定値以上か否かを判定する。排ガス中のN2Oの濃度の値が所定値以上の場合(S107:Yes)、処理はS109へ移行する。一方、排ガス中のN2Oの濃度の値が所定値以上でない場合(S107:No)、処理はS108へ移行する。
S108では、ECU11は、コロナ放電装置40が作動している場合、その作動を停止させる。その後、処理はS101へ戻る。
【0037】
S109では、ECU11は、コロナ放電装置40を作動させ、所定の条件に応じてバッテリ9の電圧を昇圧し、昇圧した電圧をコロナ放電装置40の針状電極423に印加する。すなわち、ECU11は、針状電極423に印加する電圧をS106で測定した排ガス中のN2Oの濃度に応じて調節する。これにより、コロナ放電装置40で発生するオゾンおよび紫外線の量が変化し、コロナ放電装置40の酸化能力の高低が変更される。コロナ放電装置40の内部を流通する排ガス中のN2Oは、コロナ放電装置40の内部で発生したオゾンおよび紫外線により酸化され、NO、NO2またはN2に変化する。S109の後、処理はS110へ移行する。
【0038】
S110では、ECU11は、N2Oセンサ12から送出された電気信号に基づき排ガス中のN2Oの濃度を測定する。その後、処理はS111へ移行する。
S111では、ECU11は、所定の条件を満たしたか否か、すなわちS110で測定した排ガス中のN2Oの濃度の値が所定値以上か否かを判定する。排ガス中のN2Oの濃度の値が所定値以上の場合(S111:Yes)、処理はS112へ移行する。一方、排ガス中のN2Oの濃度の値が所定値以上でない場合(S111:No)、処理はS101へ戻る。
【0039】
S112では、ECU11は、コロナ放電装置40の針状電極423に印加している電圧の値をさらに所定値上昇させる。これにより、コロナ放電装置40の酸化能力がより高まる。S112の後、処理はS101へ戻る。
上述したS101〜S112の処理を実行することにより、排気処理装置1は、排気通路21を流通する排ガスにN2Oが含まれていても、排ガスの温度に関わらず排ガス中のN2Oの量を低減することができる。
【0040】
以上説明したように、第1実施形態による排気処理装置1は、排気通路21のNOx還元触媒30に対し排ガス流れの下流側に、排ガスの温度に関わらず排ガス中のN2Oを酸化可能なコロナ放電装置40を備えている。コロナ放電装置40は、排気通路21に露出した針状電極423の先端にコロナ放電を生じさせる。これにより、排ガス中に電子および紫外線が放出され、放出された電子および紫外線が排ガス中の酸素に作用することによりオゾンが発生する。排ガス中のN2Oは、発生したオゾンによって酸化され、NOまたはNO2に変化する。また、排ガス中のN2Oは、放出された紫外線によってNOとN2とに変化する。そのため、NOx還元触媒30でNOxを還元する際に排ガス中にN2Oが発生しても、NOx還元触媒30の下流側に位置するコロナ放電装置40によりN2Oを酸化してNO、NO2またはN2に変化させることができる。したがって、排ガスの温度に関わらず排ガス中のN2Oの量を効果的に低減することができる。
【0041】
また、第1実施形態による排気処理装置1は、コロナ放電装置40の作動を制御可能なECU11、および排ガス中のN2Oの濃度を検出するN2Oセンサ12を備えている。ECU11は、所定の条件を満たしたとき、すなわちN2Oセンサ12により検出されるN2Oの濃度の値が所定値以上のときコロナ放電装置40を作動させる。また、ECU11は、コロナ放電装置40に印加する電圧をN2Oの濃度に応じて調節する。これにより、排ガス中のN2Oの濃度に応じてコロナ放電装置40の酸化能力の高低を変更することができる。したがって、排ガス中のN2Oを効率的に酸化することができる。また、所定の条件を満たしたときのみコロナ放電装置40を作動させるため、コロナ放電装置40の消費電力を低減することができる。
【0042】
また、第1実施形態による排気処理装置1は、排ガス中のNOxの濃度を検出するNOxセンサ13をさらに備えている。ECU11は、NOxセンサ13により検出されるNOxの濃度の値が所定値より小さいとき、コロナ放電装置40の作動を停止させる。これにより、コロナ放電装置40の消費電力を低減することができる。
【0043】
さらに、第1実施形態による排気処理装置1は、NOx還元触媒30に還元剤としての尿素を添加可能な還元剤噴射弁50をさらに備えている。ECU11は、所定の条件を満たしたとき、すなわちNOxセンサ13により検出されるNOxの濃度の値が所定値以上のとき還元剤噴射弁50を作動させ、還元剤噴射弁50からNOx還元触媒30に添加する尿素の量をNOxの濃度に応じて調節する。これにより、NOxを尿素によって効率的に還元することができる。また、所定の条件を満たしたときのみ還元剤噴射弁50を作動させるため、還元剤噴射弁50の消費電力を低減するとともに尿素の余分な消費を抑えることができる。
【0044】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による排気処理装置を図5に示す。なお、第1実施形態と実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
第2実施形態では、排ガス温検出手段としての排ガス温センサ14、および第2酸化手段としての酸化触媒60をさらに備えている。
【0045】
排ガス温センサ14は、排気通路21のNOx還元触媒30に対し排ガス流れの上流側に設けられている。排ガス温センサ14には、ECU11が接続している。排ガス温センサ14は、排気通路21を流通する排ガスの温度を検出し、その温度に応じた電気信号をECU11に送出する。これにより、ECU11は、排ガスの温度を随時知ることができる。
【0046】
酸化触媒60は、排気通路21のNOx還元触媒30に対し排ガス流れの下流側に設けられ、NOx還元触媒30に接している。酸化触媒60は、酸化触媒7と同様、白金を坦持するハニカム状の担体(図示せず)を内部に有し、排ガスに含まれる種々の成分を酸化する。図6は、酸化触媒60およびコロナ放電装置40について、酸化率と排ガスの温度との関係をグラフで示したものである。図6のグラフ中に示す実線L2は、酸化触媒60による酸化率と排ガス温度との関係を示している。一方、破線L3は、コロナ放電装置40による酸化率と排ガス温度との関係を示している。L2から、酸化触媒60は、排ガス温度が200℃以上のとき酸化率が高く、排ガス温度が200℃より低いとき酸化率が低いもしくは酸化率がほぼ0%であることがわかる。一方、L3から、コロナ放電装置40は、排ガス温度が高くなるに従い酸化率が若干低下するものの、排ガス温度に関わらず酸化率が高いことがわかる。また、L2およびL3から、排ガス温度が例えば300℃以上の高温のとき、酸化触媒60の酸化率は、コロナ放電装置40の酸化率を上回ることがわかる。
【0047】
このように、酸化触媒60は、排ガス温度が高いとき、特に排ガス温度が200℃以上のとき、排ガスに含まれる種々の成分を酸化可能である。そのため、NOx還元触媒30でN2Oが発生して排ガス中にN2Oが含まれていても、排ガス温度が高ければ、酸化触媒60によってN2Oを酸化可能である。
【0048】
次に、第2実施形態による排ガス処理の例について、図7に基づいて説明する。図7のフローチャートに示す排ガス処理に関する一連の処理は、第1実施形態と同様、エンジン2が始動すると開始さる。
【0049】
S201では、ECU11は、エンジン2が運転中かどうかを判断する。ECU11によってエンジン2が運転中であると判断された場合(S201:Yes)、処理はS202へ移行する。一方、エンジン2が停止していると判断された場合(S201:No)、図7に示す一連の処理を抜け、排ガス処理を終了する。
【0050】
S202では、ECU11は、NOxセンサ13から送出された電気信号に基づき排ガス中のNOxの濃度を測定する。その後、処理はS203へ移行する。
S203では、ECU11は、所定の条件を満たしたか否か、すなわちS202で測定した排ガス中のNOxの濃度の値が所定値以上か否かを判定する。排ガス中のNOxの濃度の値が所定値以上の場合(S203:Yes)、処理はS205へ移行する。一方、排ガス中のNOxの濃度の値が所定値以上でない場合(S203:No)、すなわち排ガス中のNOxの濃度の値が所定値より小さい場合、処理はS204へ移行する。
【0051】
S204では、ECU11は、コロナ放電装置40が作動している場合、その作動を停止させる。その後、処理はS201へ戻る。
S205では、ECU11は、還元剤噴射弁50を作動させ、還元剤噴射弁50から噴射する添加剤としての尿素の量を所定の条件に応じて調節する。すなわち、ECUは、還元剤噴射弁50から噴射する尿素の量をS202で測定した排ガス中のNOxの濃度に応じて調節する。これにより、排ガス中のNOxの濃度に応じた量の尿素が排ガス中に噴射され、還元剤噴射弁50の下流に位置するNOx還元触媒30に尿素が流入する。NOx還元触媒30に流入した尿素は、加水分解されてアンモニアとなり、排ガス中のNOxを還元する。その結果、排ガスに含まれるNOやNO2などのNOxは、窒素および水に変化する。S205の後、処理はS206へ移行する。
【0052】
S206では、ECU11は、排ガス温センサ14から送出された電気信号に基づき排ガスの温度を測定する。その後、処理はS207へ移行する。
S207では、ECU11は、所定の条件を満たしたか否か、すなわちS206で測定した排ガスの温度の値が所定値以下か否かを判定する。排ガスの温度の値が所定値以下の場合(S207:Yes)、処理はS208へ移行する。一方、排ガスの温度の値が所定値以下でない場合(S207:No)、すなわち排ガスの温度の値が所定値より大きい場合、処理はS201へ戻る。なお、本実施形態の場合、このときの所定値は例えば200(℃)である。
【0053】
S208では、ECU11は、N2Oセンサ12から送出された電気信号に基づき排ガス中のN2Oの濃度を測定する。その後、処理はS209へ移行する。
S209では、ECU11は、所定の条件を満たしたか否か、すなわちS208で測定した排ガス中のN2Oの濃度の値が所定値以上か否かを判定する。排ガス中のN2Oの濃度の値が所定値以上の場合(S209:Yes)、処理はS211へ移行する。一方、排ガス中のN2Oの濃度の値が所定値以上でない場合(S209:No)、処理はS210へ移行する。
S210では、ECU11は、コロナ放電装置40が作動している場合、その作動を停止させる。その後、処理はS201へ戻る。
【0054】
S211では、ECU11は、コロナ放電装置40を作動させ、所定の条件に応じて昇圧した電圧をコロナ放電装置40に印加する。すなわち、ECU11は、コロナ放電装置40に印加する電圧をS208で測定した排ガス中のN2Oの濃度に応じて調節する。これにより、コロナ放電装置40で発生するオゾンおよび紫外線の量が変化し、コロナ放電装置40の酸化能力の高低が変更される。コロナ放電装置40の内部を流通する排ガス中のN2Oは、コロナ放電装置40の内部で発生したオゾンおよび紫外線により酸化され、NO、NO2またはN2に変化する。S211の後、処理はS212へ移行する。
【0055】
S212では、ECU11は、N2Oセンサ12から送出された電気信号に基づき排ガス中のN2Oの濃度を測定する。その後、処理はS213へ移行する。
S213では、ECU11は、所定の条件を満たしたか否か、すなわちS212で測定した排ガス中のN2Oの濃度の値が所定値以上か否かを判定する。排ガス中のN2Oの濃度の値が所定値以上の場合(S213:Yes)、処理はS214へ移行する。一方、排ガス中のN2Oの濃度の値が所定値以上でない場合(S213:No)、処理はS201へ戻る。
【0056】
S214では、ECU11は、コロナ放電装置40に印加している電圧の値をさらに所定値上昇させる。これにより、コロナ放電装置40の酸化能力がより高まる。S214の後、処理はS201へ戻る。
上述したS201〜S214の処理を実行することにより、排気通路21を流通する排ガスにN2Oが含まれていても、排ガスの温度に関わらず排ガス中のN2Oの量を低減することができる。
【0057】
以上説明したように、第2実施形態では、排ガスの温度を検出する排ガス温センサ14と、排ガス中のN2Oを酸化可能な酸化触媒60とをさらに備えている。ECU11は、排ガス温センサ14により検出される温度の値が所定値以下のとき、コロナ放電装置40を作動させる。これにより、排ガスの温度が低く酸化触媒60が活性化していないときでも、コロナ放電装置40により排ガス中のN2Oを酸化することができる。よって、排ガス低温時の酸化能力を高めるために酸化触媒60中の貴金属の量を増加する必要がない。これにより、酸化触媒60の製造コストを低減することができる。また、所定の条件を満たしたときのみコロナ放電装置40を作動させるため、コロナ放電装置40の消費電力を低減することができる。
【0058】
なお、第2実施形態では、酸化触媒60は、排気通路21のNOx還元触媒30の下流側に、NOx還元触媒30に接して設けられている。これにより、NOx還元触媒30と酸化触媒60とが離れて設けられる場合に比べて、NOx還元触媒30と酸化触媒60との間を通過するときの排ガスの温度低下の程度を小さくすることができる。そのため、排ガス温度低下による酸化触媒60の酸化率の低下を防ぐことができる。
【0059】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による排気処理装置を図8に示す。なお、第2実施形態と実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
第3実施形態では、吸着手段としてのNOx吸着器70をさらに備えている。NOx吸着器70は、排気通路21のコロナ放電装置40に対し排ガス流れの下流側に設けられている。NOx吸着器70は、図示しないハニカム状の担体を内部に有している。NOx吸着器70の担体は、排気通路21に位置し、排気通路21を流通する排ガスに晒される。NOx吸着器70の担体は、例えば炭酸カリウム(K2CO3)または炭酸バリウム(BaCO3)などの吸着剤を坦持している。これにより、排ガスがNOx吸着器70を通過するとき、排ガス中のNOxは、吸着剤と反応することにより硝酸塩となって吸着され担体に保持される。
【0060】
上述の構成により、第3実施形態では、NOx吸着器70の上流側に位置するコロナ放電装置40または酸化触媒60により排ガス中のN2Oが酸化されてNOまたはNO2に変化しても、これらを含むNOxをNOx吸着器70で吸着することができる。したがって、大気中に排出される排ガス中のNOxの量を低減することができる。
【0061】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態による排気処理装置の第1酸化手段を図9に示す。なお、第3実施形態と実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
第4実施形態では、第1酸化手段として沿面放電装置を採用している。沿面放電装置80は、ハウジング81および放電器82を有している。ハウジング81は、筒状に形成され、両方の端部が排気管20に接続している。すなわち、ハウジング81の内壁は、排気通路21の一部を構成している。ハウジング81には、外壁面と内壁面とを接続する開口811が形成されている。
【0062】
放電器82は、本体821および放電部822を有している。本体821は、略円柱状に形成されている。本体821の一方の端部は、開口811が形成されたハウジング81に固定されている。放電部822は、略円柱状に形成されている。放電部822は、一方の端部が本体821の一方の端部に接続し、本体821と軸を概ね同一にしている。これにより、放電部822は、排気通路21に露出している。放電部822は、例えばセラミックなどの絶縁体により形成されている。放電部822の外周面には、放電部822の軸方向へ延びる複数の線状電極823が配置されている。これにより、線状電極823は、排気通路21を流通する排ガスに晒される。また、放電部822の内部には、図示しない円筒状の面状電極が埋め込まれている。この面状電極の外周面と、放電部822の外周面に配置された線状電極823との間には、所定の距離が設定されている。
【0063】
本体821は、リード線によりバッテリ9と接続している。また、本体821は、リード線によりECU11と接続している。ECU11は、所定の条件を満たしたとき沿面放電装置80を作動させ、所定の条件に応じてバッテリ9からの電力の電圧を昇圧し、昇圧した電圧を線状電極823に印加する。このとき線状電極823に印加される電圧は、例えば5〜30kVの範囲の交流高電圧である。線状電極823に電圧が印加されると、線状電極823と面状電極との間を電子が飛び交う。これにより、印加される電圧に応じて線状電極823の近傍に放電が生じ、排ガス中に電子(e)および紫外線(hv)が放出される。沿面放電装置80の放電により放出された電子および紫外線が排ガス中の酸素(O2)に作用することによってオゾン(O3)が発生する。そして、排ガス中のN2Oは、発生したオゾンによって酸化されNOまたはNO2に変化する。また、排ガス中のN2Oは、沿面放電装置80の放電により放出された紫外線によってNOとN2とに変化する。
【0064】
このように、沿面放電装置80は、作動することによって排ガスの温度に関わらず排ガス中のN2Oを酸化可能である。これにより、排ガス中のN2Oの量を低減することができる。
なお、線状電極823の近傍での放電により発生するオゾンの量は、線状電極823に印加される電圧に応じて変化する。すなわち、線状電極823に印加される電圧値が大きくなるほど単位時間当たりに発生するオゾンの量が増大し、沿面放電装置80の酸化能力が高くなる。このように、ECU11は、線状電極823に印加する電圧を調節することにより、沿面放電装置80の酸化能力の高低を変更可能である。
【0065】
以上説明したように、第4実施形態では、第1酸化手段として沿面放電装置を採用することにより、多くのオゾンと紫外線とを発生させることができるため排ガスの温度に関わらず排ガス中のN2Oの量を効果的に低減することができる。また、沿面放電装置80は印加される電圧に応じて酸化能力を変更可能なので、第1実施形態または第2実施形態の排ガス処理フロー中に示したコロナ放電装置の酸化能力を変更する処理と同様の処理を実行可能である。そのため、沿面放電装置80の酸化能力の高低を排ガス中のN2Oの濃度に応じて変更することができ、排ガス中のN2Oを効率的に酸化することができる。さらに、沿面放電装置80では、第1実施形態で示したコロナ放電装置と同様、排ガス中のアンモニア(NH3)および煤(C)をもオゾンによって酸化可能である。
【0066】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態による排気処理装置の第1酸化手段を図10に示す。なお、第3実施形態と実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
第5実施形態では、第1酸化手段として紫外線発生装置を採用している。紫外線発生装置90は、ハウジング91および紫外線発生器92を有している。ハウジング91は、筒状に形成され、両方の端部が排気管20に接続している。すなわち、ハウジング91の内壁は、排気通路21の一部を構成している。ハウジング91には、外壁面と内壁面とを接続する開口911が形成されている。
【0067】
紫外線発生器92は、本体921および紫外線照射部922を有している。本体921は、略円柱状に形成されている。本体921の一方の端部は、開口911が形成されたハウジング91に固定されている。紫外線照射部922は、本体921の一方の端部に接続し、排気通路21に露出している。これにより、紫外線照射部922は、排気通路21を流通する排ガスに晒される。
【0068】
本体921は、リード線によりバッテリ9と接続している。また、本体921は、リード線によりECU11と接続している。ECU11は、所定の条件を満たしたとき紫外線発生装置90を作動させ、所定の条件に応じてバッテリ9からの電力を紫外線発生器92へ供給する。紫外線発生器92に電力が供給されると、紫外線照射部922に紫外線(hv)が発生する。紫外線照射部922で発生した紫外線は、排気通路21を流通する排ガスに照射される。紫外線照射部922からの紫外線が排ガス中の酸素(O2)に作用することによってオゾン(O3)が発生する。そして、排ガス中のN2Oは、発生したオゾンによって酸化されNOまたはNO2に変化する。また、排ガス中のN2Oは、紫外線照射部922からの紫外線によってNOとN2とに変化する。
【0069】
このように、紫外線発生装置90は、作動することによって排ガスの温度に関わらず排ガス中のN2Oを酸化可能である。これにより、排ガス中のN2Oの量を低減することができる。
なお、紫外線照射部922からの紫外線が排ガス中の酸素に作用することによって発生するオゾンの量は、紫外線発生器92に供給される電力に応じて変化する。すなわち、紫外線発生器92に供給される電力値が大きくなるほど単位時間当たりに発生するオゾンの量が増大し、紫外線発生装置90の酸化能力が高くなる。このように、ECU11は、紫外線発生器92に供給する電力を調節することにより、紫外線発生装置90の酸化能力の高低を変更可能である。
【0070】
以上説明したように、第5実施形態では、第1酸化手段として紫外線発生装置を採用することにより、排ガスの温度に関わらず排ガス中のN2Oの量を効果的に低減することができる。また、紫外線発生装置90は供給される電力に応じて酸化能力を変更可能なので、第1実施形態または第2実施形態の排ガス処理フロー中に示したコロナ放電装置の酸化能力を変更する処理と同様の処理を実行可能である。そのため、紫外線発生装置90の酸化能力の高低を排ガス中のN2Oの濃度に応じて変更することができ、排ガス中のN2Oを効率的に酸化することができる。さらに、紫外線発生装置90では、第1実施形態で示したコロナ放電装置および第4実施形態で示した沿面放電装置と同様、排ガス中のアンモニア(NH3)および煤(C)をもオゾンによって酸化可能である。
【0071】
(その他の実施形態)
上述の第4実施形態または第5実施形態では、第3実施形態の第1酸化手段の代替として沿面放電装置または紫外線発生装置を採用する構成を示した。本発明のその他の実施形態では、第1実施形態または第2実施形態の第1酸化手段の代替として沿面放電装置または紫外線発生装置を採用する構成としてもよい。
【0072】
上述の第2実施形態または第3実施形態では、第2酸化手段としての酸化触媒は、NOx還元触媒に接して設けられている。本発明のその他の実施形態では、NOx還元触媒と第2酸化手段としての酸化触媒とは、互いに離れた位置に設けられていてもよい。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1実施形態による排気処理装置を示す模式図。
【図2】本発明の第1実施形態による排気処理装置の第1酸化手段を示す模式図。
【図3】本発明の第1実施形態による排気処理装置の第1酸化手段に印加される電圧と第1酸化手段から発生するオゾンの濃度との関係を示すグラフ。
【図4】本発明の第1実施形態による排気処理装置の排ガス処理に関する一連の処理を示すフローチャート。
【図5】本発明の第2実施形態による排気処理装置を示す模式図。
【図6】本発明の第2実施形態による排気処理装置の第1酸化手段および第2酸化手段の酸化率と排ガスの温度との関係を示すグラフ。
【図7】本発明の第2実施形態による排気処理装置の排ガス処理に関する一連の処理を示すフローチャート。
【図8】本発明の第3実施形態による排気処理装置を示す模式図。
【図9】本発明の第4実施形態による排気処理装置の第1酸化手段を示す模式図。
【図10】本発明の第5実施形態による排気処理装置の第1酸化手段を示す模式図。
【符号の説明】
【0074】
1:排気処理装置、2:エンジン(内燃機関)、3:燃焼室、20:排気管、21:排気通路、30:NOx還元触媒(還元手段)、40:コロナ放電装置(第1酸化手段)、80:沿面放電装置(第1酸化手段)、90:紫外線発生装置(第1酸化手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼室から排出される排ガスが流通する排気通路を有する排気管と、
前記排気通路に設けられ、排ガス中の窒素酸化物であるNOxを還元する還元手段と、
前記排気通路の前記還元手段に対し排ガス流れの下流側に設けられ、排ガスの温度に関わらず排ガス中のN2Oを酸化可能な第1酸化手段と、
を備えることを特徴とする排気処理装置。
【請求項2】
前記第1酸化手段は、コロナ放電装置であることを特徴とする請求項1記載の排気処理装置。
【請求項3】
前記第1酸化手段は、沿面放電装置であることを特徴とする請求項1記載の排気処理装置。
【請求項4】
前記第1酸化手段は、紫外線発生装置であることを特徴とする請求項1記載の排気処理装置。
【請求項5】
前記排気通路の前記第1酸化手段に対し排ガス流れの下流側に設けられ、排ガス中のNOxを吸着する吸着剤を有する吸着手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の排気処理装置。
【請求項6】
前記第1酸化手段の作動を制御可能な制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の排気処理装置。
【請求項7】
前記排気通路の前記還元手段に対し排ガス流れの上流側に設けられ、排ガスの温度を検出する排ガス温検出手段と、
前記排気通路の前記還元手段に対し排ガス流れの下流側に設けられ、排ガス中のN2Oを酸化可能な第2酸化手段とをさらに備え、
前記制御手段は、前記排ガス温検出手段により検出される温度の値が所定値以下のとき、前記第1酸化手段を作動させることを特徴とする請求項6記載の排気処理装置。
【請求項8】
前記排気通路の前記第1酸化手段に対し排ガス流れの上流側に設けられ、排ガス中のN2Oの濃度を検出するN2O濃度検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記N2O濃度検出手段により検出されるN2Oの濃度の値が所定値以上のとき前記第1酸化手段を作動させ、前記第1酸化手段に印加する電圧または供給する電力をN2Oの濃度に応じて調節することを特徴とする請求項6または7記載の排気処理装置。
【請求項9】
前記排気通路の前記還元手段に対し排ガス流れの上流側に設けられ、排ガス中のNOxの濃度を検出するNOx濃度検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記NOx濃度検出手段により検出されるNOxの濃度の値が所定値より小さいとき、前記第1酸化手段の作動を停止させることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項記載の排気処理装置。
【請求項10】
前記排気通路の前記還元手段に対し排ガス流れの上流側に設けられ、前記還元手段に還元剤を添加可能な還元剤添加手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記NOx濃度検出手段により検出されるNOxの濃度の値が所定値以上のとき前記還元剤添加手段を作動させ、前記還元剤添加手段から前記還元手段に添加する還元剤の量をNOxの濃度に応じて調節することを特徴とする請求項9記載の排気処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−281154(P2009−281154A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131120(P2008−131120)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】