説明

排気流案内用ガイド

【課題】構成を簡素化してコスト増を抑制し、SCRに供給される還元剤の拡散効果を促進することができるようにした、排気流案内用ガイを提供する。
【解決手段】排気流通パイプ19の内部に装着されて排気流を案内する排気流案内用ガイド12であって、平面素材11を凸状と凹状とに交互に折り曲げ加工されて星型横断面形状に形成され、排気流通パイプ19内の排気流方向に沿って配置されるガイド基部12Bと、ガイド基部12Bの下流端に平面素材11を折り曲げ加工されて形成され、前記排気流方向に対して角度を有するように配置される乱流発生フィン部12Fと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置、特に排気通路を流通する排気中に還元剤を添加し、下流側の選択還元型触媒に供給して排気を浄化する排気浄化装置に用いて好適の排気流案内用ガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関(以下、エンジンともいう)、中でもディーゼルエンジンの排気中には、大気汚染物質である窒素酸化物(以下、NOxという)等が含まれている。そこで、エンジンの排気通路に、NOxを浄化するための選択還元型触媒(Selective Catalytic Reduction、以下、SCRと略称する)を設置し、還元剤としての尿素水をSCRに流入する排気中に添加することにより、SCRにおいて排気中のNOxを還元して排気を浄化するようにした技術が知られている。
【0003】
SCRは、例えば、軸方向に互いに平行な微小な穴が複数連通したハニカム構造の担体に、触媒が担持されて構成されている。このSCRを用いた排気浄化装置では、排気中に尿素水を添加する尿素水添加装置としてのノズルがSCRの上流側に設けられる。ノズルから添加される尿素水は、排気管内やSCR上で排気熱によってアンモニアに分解され、NOxの還元剤として働く。SCRの近傍のアンモニアは、一旦SCRに吸着し、このアンモニアと排気中のNOxとの間の脱硝反応がSCRによって促進されることによりNOxが窒素に還元される。
【0004】
ところで、SCRのNOx浄化性能を最大限に発揮させるには、SCRの各部位にアンモニアを均一に供給することが必須条件であり、そのためには排気中に尿素水を均一に拡散させ、排気と十分に混合させる必要がある。また、尿素水が排気と十分に混合できない場合、水分だけ蒸発して尿素水が昇華せずに配管の内壁やSCRのケーシングの内壁に付着して堆積物となる場合がある。
【0005】
このような場合、SCRへのアンモニア供給量が減少してしまうため、NOx浄化性能が低下するおそれがある。また、排気が高温になったときに、配管等の内壁に堆積した尿素が一気にアンモニア化して、不快臭を引き起こすという課題もある。このため、排気中に還元剤としての尿素水を拡散させ、排気と十分に混合させるための装置として、下記の特許文献1などが提案されている。
【0006】
特許文献1に記載の排気処理装置は、排気通路にミキサー(混合手段)を設けて排気に添加した尿素と排気とを良好に混合させるものであり、このミキサーが複数のフィンを備えて構成されている。この複数のフィンは、排気流れ方向の略同一位置において中心部廻りに放射状に所定間隔で配設されており、旋回流を形成するために、排気の流れに対して所定の方向に所定角度回転された位置で固定されている。また、フィンには切欠部(スリット)が設けられ、このスリットにより圧力損失を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−2213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の排気処理装置は、ミキサーを構成する複数のフィンに切欠部を設けているため、フィンの構成が複雑である。また、この複数のフィンは、排気通路の中心部廻りに放射状に所定間隔で配設され、さらに排気の流れに対して所定の方向に所定角度回転された位置で固定されることが開示されているが、この複数のフィンがどのようにして排気通路内に固定されているのかは明記されていない。おそらく、特許文献1の図3,図5及び図6を参照すると、複数のフィンの径方向外側の一端は排気通路の壁面に固定され、複数のフィンの径方向中心側の他端は両隣のフィンに固定されているものと推測される。そのため、上記の特許文献1に記載のミキサーは、フィンの構成が複雑な上、ミキサー全体の構造も複雑で、製造コストがかかる。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、構成を簡素化してコスト増を抑制し、SCRに供給される還元剤の拡散効果を促進する等、排気中の成分の拡散や均一化ができるようにした、排気流案内用ガイドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の排気流案内用ガイドは、排気流通パイプの内部に装着されて排気流を案内する排気流案内用ガイドであって、平面素材を凸状と凹状とに交互に折り曲げ加工されて星型横断面形状に形成され、前記排気流通パイプ内の排気流方向に沿って配置されるガイド基部と、前記ガイド基部の下流端に前記平面素材を折り曲げ加工されて形成され、前記排気流方向に対して角度を有するように配置される乱流発生フィン部と、を有することを特徴としている。
【0011】
なお、前記星型横断面形状は、前記平面素材を互いに平行な複数の直線部をそれぞれ折れ目として凸状と凹状とに交互に折り曲げ加工されて形成される。また、前記ガイド基部は、前記複数の直線部を前記排気流通パイプ内の排気流方向に沿って配置される。
前記平面素材は、前記ガイド基部を形成する矩形部と、前記ガイド基部の前記排気流通パイプ内への配置時に下流端となる前記矩形部の一辺部に複数延設される延設部とから構成されることが好ましい。なお、前記延設部は、前記ガイド基部の前記排気流通パイプ内への配置時に下流端となる前記矩形部の一辺部における前記複数の直線部の相互間に1つおきに複数延設されることがより好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の排気流案内用ガイドによれば、平面素材を折り曲げ加工することによりガイド基部と乱流発生フィン部とを形成することができるため、低コストで容易に製作することができる。また、量産も可能である。さらに、排気流方向に対して角度を有するように乱流発生フィン部が配置されることにより、排気流通パイプを流れる排気が乱流発生フィン部に衝突して旋回流を発生させることができる。
【0013】
また、平面素材が、ガイド基部を形成する矩形部と、複数の延設部とから構成される場合、平面素材をプレス加工や打抜き加工等により矩形部と延設部とを成形し、この平面素材を屈曲形成するため、比較的容易に排気流案内用ガイドを製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態にかかる排気流案内用ガイドを説明する図であり、図1(a)はDPF装置のケーシングを排気下流側から見た模式的な部分断面図(図4のA−A矢視部分断面図)、図1(b)は図1(a)のB−B矢視断面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる排気流案内用ガイドの模式的な図であり、図2(a)は排気流案内用ガイドを屈曲形成する前の平面素材の平面図、図2(b)は排気流案内用ガイドを屈曲形成した後の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる排気流案内用ガイドの設置方法を説明する模式図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる排気浄化装置を示す全体構成図である。
【図5】本発明の他の実施形態にかかる排気流案内用ガイドを説明する図1(a)に対応する模式的な部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[1.構成]
[1−1.全体構成]
以下、図面により実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
【0016】
本実施形態にかかる排気浄化装置について、図4を用いて説明する。本排気浄化装置は、車両だけでなくエンジンを搭載した乗り物、例えば船舶等に適用することも可能であるが、ここでは、一般的な乗用車やトラック,バス等の車両に適用した例で説明する。
図4に示すように、エンジン40は、ここでは直列6気筒機関のディーゼルエンジンとして構成されている。エンジン40の各気筒には燃料噴射弁41が設けられ、各燃料噴射弁41はコモンレール42から加圧燃料を供給され、開弁に伴って対応する気筒の筒内に燃料を噴射する。なお、エンジン40はガソリンエンジンでもよく、気筒数はこれに限定されない。
【0017】
エンジン40の吸気側には吸気マニホールド43が装着され、吸気マニホールド43に接続された吸気通路44には、上流側よりエアクリーナ45,ターボチャージャ46のコンプレッサ46a及びインタークーラ37が設けられている。また、エンジン40の排気側には排気マニホールド48が装着され、排気マニホールド48には、コンプレッサ46aと同軸上に連結されたターボチャージャ46のタービン46bが接続されている。タービン46bには排気通路49が接続されている。この排気通路49の途中に、排気浄化装置10が設けられている。
【0018】
排気浄化装置10は、排気上流側に設けられた上流側排気浄化装置20と、上流側排気浄化装置20の排気下流側に設けられた下流側排気浄化装置30とから構成され、上流側排気浄化装置20と下流側排気浄化装置30とは、中間パイプ(排気流通パイプ)19により接続されている。
上流側排気浄化装置20は、筒状のケーシング21内に、排気上流側に配置される前段酸化触媒22と、下流側に配置されるパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter、以下、DPFと略称する)23とが内蔵されて構成されている。なお、以下、上流側排気浄化装置20をDPF装置20という。
【0019】
下流側排気浄化装置30は、筒状のケーシング31内に、排気上流側に配置される選択還元型触媒(Selective Catalytic Reduction、以下、SCRと略称する)32と、下流側に配置される後段酸化触媒33とが内蔵されて構成されている。なお、以下、下流側排気浄化装置30をSCR装置30という。
中間パイプ19は、DPF装置20内のDPF23の排気下流側に設けられた図示しない排気出口と、SCR装置30内のSCR32の排気上流側に設けられた図示しない排気入口とを接続する。中間パイプ19は、排気通路49の一部を構成するものであり、ここでは最も一般的な円筒状パイプである。なお、中間パイプ19は一般的な円筒状パイプに限られず、その他の筒状のパイプであってもよい。この中間パイプ19を介して、DPF装置20を通過した排気がSCR装置30へと流入する。
【0020】
また、DPF23の下流側であってSCR32の上流側に設けられる中間パイプ19の内部には尿素水添加ノズル(ノズル)15が配設されている。尿素水添加ノズル15は、図示しないタンクから圧送される還元剤としての尿素水を、SCR装置30内に配設されたSCR32に向かう排気中に噴射し添加する。この尿素水の添加量や添加のタイミングは、コントローラ(ECU,Engine (electronic) Control Unit)50により制御される。
【0021】
コントローラ50は、エンジン制御や排気浄化制御等にかかる各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時的に記憶されるRAM、外部との間で信号を入出力するための入出力ポート等を備えて構成されている。
【0022】
[1−2.排気浄化装置]
DPF装置20は、排気中に含まれる粒子状物質(Particulate Matter、以下、PMと略称する)を捕集する機能と、捕集したPMを連続的に酸化させて除去する機能とを併せ持つ。なお、PMとは、炭素からなる黒煙(すす)の周囲に燃え残った燃料や潤滑油の成分,硫黄化合物等が付着した粒子状の物質である。
【0023】
前段酸化触媒22は、排気中の成分に対する酸化性能を持った酸化触媒であり、金属,セラミックス等からなるハニカム状の担体に触媒物質を担持したものである。前段酸化触媒22によって酸化される排気中の成分には、一酸化窒素(NO)や未燃燃料中の炭化水素(HC)等及び一酸化炭素(CO)が挙げられる。例えば、NOが前段酸化触媒22で酸化されると二酸化窒素(NO2)が生成される。
【0024】
DPF23は、PMを捕集する多孔質フィルタ(例えば、セラミックフィルタ)である。DPF23の内部は、多孔質の壁体によって排気の流通方向に沿って複数に分割されている。この壁体には、PMの微粒子に見合った大きさの多数の細孔が形成される。排気が壁体の近傍や内部を通過する際に壁体内,壁体表面にPMが捕集され、排気が濾過される。このようなDPF23の再生制御は、コントローラ50によって制御される。
【0025】
DPF23の下流側には混合室24と称される空間が形成されている。混合室24内には、ケーシング21の周壁を貫通するように中間パイプ19が配設されている。本実施形態にかかる排気浄化装置10では、中間パイプ19の混合室24内への露出部分(挿入部分)に、中間パイプ19の内外を連通させる孔部19h〔図1(a)参照〕が複数貫設され、これらの孔部19hを介して混合室24内と中間パイプ19内とを相互に連通している。なお、混合室24と中間パイプ19との連通構造はこれに限られず、例えば、中間パイプ19の上流側をケーシング21の周壁に貫通させ、ケーシング21の周壁に片持ち支持されるように配設し、中間パイプ19の先端を開放端にして混合室24と中間パイプ19とを連通するようにしてもよい。
【0026】
SCR装置30は、ここでは、そのケーシング31の軸方向がDPF装置20のケーシング21の軸方向に対して直交するような向きに配置されて、平面視でT字型の配置となっているが、SCR装置30の配置はこれに限られず、車両等への搭載性や周囲の装置との配置関係等によって適宜設定可能である。
SCR装置30に内蔵されたSCR32は、尿素添加型の窒素酸化物選択還元型触媒であり、中間パイプ19の上流側に配設された尿素水添加ノズル15から添加される尿素水をアンモニアに加水分解するとともに、アンモニアを吸着する機能を持ち、さらに吸着したアンモニアを還元剤として排気中のNOxをN2へと還元するものである。なお、SCR32に担持される触媒の種類は任意であり、例えばゼオライト系,バナジウム系等を用いることが考えられる。また、還元剤として尿素水以外を用いるものでもよい。
【0027】
後段酸化触媒33は、SCR32での還元反応における余剰分のアンモニアを除去するための酸化触媒である。
なお、ここでは、SCR装置30は、SCR32と後段酸化触媒33とをケーシング31の軸方向に直列に2組ずつ配設され、中間パイプ19がケーシング31の軸方向中心部に接続されている。また、排気出口はケーシング31の両端部に設けられ、SCR装置30を通過した排気は出口パイプ39から大気中へ放出されるよう構成されているが、SCR装置30の構成はこれに限られない。例えば、SCR32及び後段酸化触媒33を1つずつ内蔵して構成されていてもよく、ケーシング31の一端に排気入口を設け、他端に排気出口を設けて構成されていてもよい。
本実施形態にかかる排気浄化装置10は、DPF装置20とSCR装置30とを接続する中間パイプ19の内部に、排気流を案内する排気流案内用ガイド12が装着されている。
【0028】
[1−3.排気流案内用ガイド]
ここで、排気流案内用ガイド12について、図1(a)〜図3を用いて説明する。図1(a)はDPF装置20のケーシング21を排気下流側から見た模式的な部分断面図(図4のA−A矢視部分断面図)、図1(b)は図1(a)のB−B矢視断面図である。また、図2(a)は排気流案内用ガイド12を屈曲形成する前の平面素材11の平面図、図2(b)は排気流案内用ガイド12を屈曲形成した後の斜視図である。また、図3は排気流案内用ガイド12を中間パイプ19に設置する方法を説明する模式図である。
【0029】
図1(a)及び図1(b)に示すように、排気流案内用ガイド12は、中間パイプ19の内部であって、中間パイプ19に形成された複数の孔部19hの下流に、これらの孔部19hと重複しない位置に装着されている。排気流案内用ガイド12は、中間パイプ19の内壁に当接し、排気流案内用ガイド12を固定するガイド基部12Bと、中間パイプ19内を流通する排気の方向に対して角度を有するように配置される乱流発生フィン部12Fとを有している。
【0030】
本実施形態にかかる排気流案内用ガイド12は、図2(a)に示すように形成された1枚の平板状の板金(平面素材)11を図中の破線部にて曲げ加工することにより屈曲形成される。この板金11は、ガイド基部12Bを形成する矩形部11Bと、乱流発生フィン部12Fを形成する複数〔図2(a)では6つ〕の延設部11Fとから構成される。
【0031】
矩形部11Bは、ここでは、板金11の長さL方向(組み立て時には周方向となる)に延在する2つの辺11a,11aと、板金11の幅W方向(組み立て時には排気流方向となる)に延在する幅WBの2つの辺11b,11bとからなる長方形である。この矩形部11Bは、後述するように、互いに平行な複数の直線部11cをそれぞれ折れ目として凸状と凹状とに交互に折り曲げ加工される部分であり、辺11aを複数〔図2(a)では12個〕に等分して、この複数の直線部11cを形成する。
【0032】
矩形部11Bは、図2(a)に示すように、辺11aを複数の直線部11cで等分された1つ分の長さである長さLBと、幅WBとからなる長方形が複数〔図2(a)では12個〕並んで構成されている。なお、図2(a)では、幅WBのほうが長さLBよりも長い長方形となっているが、これらの長さは中間パイプ19の形状に合わせ適宜設定可能であるため、長さLBのほうが幅WBより長くてもよく、また、長さLB及び幅WBが同じ長さであってもよい。
【0033】
延設部11Fは、ガイド基部12Bの中間パイプ19内への配置時に排気下流端となる矩形部11Bの辺11aから幅WFだけ延設されており、矩形部11Bの長さL方向に複数等分〔図2(a)では12等分〕されたときの互いに平行な複数〔図2(a)では13本〕の直線部11cの相互間に1つおきに設けられている。言い換えると、板金11は、長さLBごとに、矩形部11Bの幅WBと延設部11Fの幅WFとを足した幅W(WB+WF)と長さLBとからなる長方形の面と、幅WBと長さLBとからなる長方形の面とが交互に並んで構成されている。図2(a)に示す板金11の形状は、例えば、板金をプレス加工や打抜き加工等することにより形成される。
【0034】
なお、排気流案内用ガイド12となる板金11は、耐熱性に優れ、適度な塑性と弾性を有する金属材料(例えば、SUS等)であることが好ましい。
板金11の長さLは、中間パイプ19の内径及び排気流案内用ガイド12の横断面の形状及び大きさに応じて設定される。また、矩形部11Bの幅WBは、中間パイプ19の内径及び排気流案内用ガイド12の強度に応じて設定され、延設部11Fの幅WFは、中間パイプ19の内径及び乱流発生フィン部12Fを形成するときに折り曲げ加工される角度に応じて設定される。また、延設部11Fの数は、排気流案内用ガイド12の横断面の形状に応じて設定される。
【0035】
本実施形態の排気流案内用ガイド12のガイド基部12Bは、図2(a)に示す板金11を、互いに平行な複数の直線部11cをそれぞれ折れ目として凸状と凹状とに交互に折り曲げ加工され、図1(b)及び図2(b)に示すような、横断面形状が六芒星の星型の形状(以下、星型横断面形状という)に形成される。
ここで、星型とは、平板状のものを折り曲げることにより、凸部と凹部とが交互に並んで環状に配列されたものであって、好ましくは全ての凸部の先端が同一円周上に並び得るものである。最もシンプルな構成のものは、凸状と凹状とに折り曲げる面が同じ大きさの面であるもの、すなわち、平板状のものの折り曲げられる辺を同じ長さに等分し、凸部と凹部とが形成されるものである。
【0036】
ガイド基部12Bは、矩形部11Bの両端部、すなわち2つの辺11b,11bが当接し合うことによって1つの凸状を構成するように形成されることにより、矩形部11Bの両端部が溶接等で固着されていなくても中間パイプ19内へ固定し配置することができる。これについて図3を用いて詳述する。図3中の円は中間パイプ19の内径を示し、星型はガイド基部12Bの模式的な断面形状を示す。図3において、二点鎖線で示す星型は、ガイド基部12Bが折り曲げ加工された状態、すなわち塑性変形後の自然な状態、一点鎖線で示す星型は、ガイド基部12Bが中間パイプ19内に挿入される時の状態、実線で示す星型は、ガイド基部12Bが中間パイプ19内に固定された状態、をそれぞれ示す。
【0037】
図3中に二点鎖線で示すように、ガイド基部12Bは、板金11を折り曲げ加工することにより塑性変形されて形成されるが、自然の状態では、複数の凸状の先端がそれぞれ中間パイプ19の内径を示す円の外側に突出するように形成される。言い換えると、折り曲げ加工により形成されるガイド基部12Bは、外力が加えられない状態では、外径、すなわち、複数の凸状の先端を結ぶ仮想的な円(以下、仮想円という)の直径が、中間パイプ19の内径よりも大きくなるように塑性変形される。このとき、図中の矢印Cで示す凸状の先端は固着されていないため隙間を有する。
【0038】
このように塑性変形されたガイド基部12Bは、中間パイプ19内へ配置されるときには、環状の星型全体に外側から外力が加えられて、図3中に一点鎖線で示すように、凸状はさらに鋭角な凸状に、凹状もさらに鋭角な凹状になるよう弾性変形されて、ガイド基部12Bの中心に向けて外径が縮められる。このように変形されることにより、仮想円の直径が中間パイプ19の内径よりも小さくなるため、ガイド基部12Bは中間パイプ19内の所望の位置へ円滑に配置される。
【0039】
その後、この外力を取り除くことにより、ガイド基部12Bは自然な状態、すなわち二点鎖線で示す星型の状態に戻ろうと弾性力を発揮する。このとき、図3中の隙間Cは、ガイド基部12B(矩形部11B)の両端部が密着するようことによりなくなり、この弾性力により、ガイド基部12Bは中間パイプ19内に固定される。すなわち、図3中に実線で示すように、ガイド基部12Bは、中間パイプ19の内周面に対して弾性力を加えながら、複数の凸部の先端を内周面に当接させて、この弾性力に応じた接触摩擦によって中間パイプ19内に固定される。
【0040】
なお、矩形部11Bの両端部は、板金11の剛性が部分的に大きく変化しないように溶接等で固着させてもよい。この場合は、両端部でガイド基部12Bの凹部を構成するように形成されていてもよい。
また、本実施形態の排気流案内用ガイド12の乱流発生フィン部12Fは、延設部11Fを、ガイド基部12Bの中間パイプ19内への配置時に排気下流端となる矩形部11Bの辺11aを折れ目として、ガイド基部12Bの星型横断面形状の内側に向かって折り曲げ加工されて形成される。
【0041】
このように形成された排気流案内用ガイド12は、図1(a)及び図1(b)に示すように、乱流発生フィン部12Fがガイド基部12Bの排気下流側になる向きで、ガイド基部12Bの複数の直線部11cを中間パイプ19内の排気流方向沿って配置される。
【0042】
[2.作用]
本実施形態にかかる排気流案内用ガイド12は上述のように構成されているので、排気浄化装置10による排気の浄化は以下のように実施される。
【0043】
エンジン40の運転中において、エンジン40から排出された排気は、排気通路49の上流部を経てDPF装置20内に導入され、前段酸化触媒22及びDPF23を通過した後に混合室24内に移送され、中間パイプ19の複数の孔部19hを経て中間パイプ19内に導入される。そして、中間パイプ19の内部を流通してSCR装置30内に導入され、SCR32及び後段酸化触媒33を通過した後に排気出口から出口パイプ39へ流れ、大気中に排出される。このとき、DPF23では排気中のPMが捕集され、SCR32では排気中のNOxが還元され、これらの作用により大気中への有害成分の排出が防止される。
【0044】
以下、詳しく説明すると、DPF23で排気中のPMが捕集された後、中間パイプ19内へ流入した排気は、排気流案内用ガイド12の乱流発生フィン部12Fへ衝突して、流れの方向を中間パイプ19内部へ案内される。この乱流発生フィン部12Fは、中間パイプ19の内周に沿って複数(ここでは6つ)設けられているため、排気はそれぞれの乱流発生フィン部12Fに衝突することで、中間パイプ19内で渦となり旋回流を生じる。
【0045】
このとき、中間パイプ19内に設けられた尿素水添加ノズル15により、SCR装置30へ向かう排気中に尿素水が添加されると、添加された尿素水は、排気流案内用ガイド12によって生じる旋回流の乱流成分により拡散され、排気熱によって加水分解されてアンモニアが生成される。生成されたアンモニアは、中間パイプ19によってSCR装置30内のSCR32へ送給され、SCR32において排気中のNOxの還元が行われる。
【0046】
[3.効果]
したがって、本実施形態にかかる排気流案内用ガイド12によれば、平面素材である板金11を、プレス加工や打抜き加工等により矩形部11Bと延設部11Fとに成形し、この板金11を折り曲げ加工することにより形成できるため、低コストで容易に製作することができ、量産も可能である。また、ガイド基部12Bが、星型横断面形状であって、中間パイプ19内に配置したときに中間パイプ19の内周面に対して弾性力を加えるように形成されるため、排気流案内用ガイド12を中間パイプ19内の所望な位置に固定することができ、設置も容易に行うことができる。なお、平面素材は板金であれば比較的容易に加工することができるが、平面素材は板金、すなわち金属に限られるものではなく、耐熱性に優れ、適度な塑性と弾性を有する平面素材であればよい。
【0047】
また、乱流発生フィン部12Fにより生じた旋回流の中に還元剤としての尿素水を添加するため、尿素水を効率よく拡散させることができる。これにより、中間パイプ19の内壁やSCR装置30のケーシング31の内壁等に尿素水が付着して堆積物となることを防ぐことができ、尿素水が堆積することにより引き起こされるNOx浄化率の低下や不快臭を生じるといった事態を招くこともなく、SCR32に適切な量のアンモニアを供給することができ、SCR32によるNOx浄化率を向上させることができる。
【0048】
[4.その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
例えば、図5に示すように、中間パイプ19内への排気流案内用ガイド12の配置位置を、ガイド基部12Bが尿素水添加ノズル15の先端よりも下流側になるようしてもよい。図5では、DPF装置20のケーシング21に挿入される中間パイプ19の上流側の部分と、SCR装置30へ連通する下流側の部分とを接続するフランジ18よりも排気下流側に排気流案内用ガイド12が固定されている。
【0049】
この場合であっても、尿素水添加ノズル15からSCR装置30へ向かう排気中に添加された尿素水は、尿素水添加ノズル15の下流側に配設された排気流案内用ガイド12により、中間パイプ19内を流れる排気とともに旋回流となることができるため、尿素水を効率よく排気中に拡散させることができる。
また、排気流案内用ガイド12は、SCR32の還元剤を排気中に拡散させるためのみならず、排気中の成分の拡散や均一化を図りたい部分に広く適用可能である。
【0050】
また、上記実施形態における排気流案内用ガイド12の星型横断面形状は、6つの凸条を有する六芒星型横断面形状であり、円形断面を有する中間パイプ19と相性がよく内挿し易いものであるが、星型横断面形状はこれに限られず、複数の凸条を有する星型多角形であればよい。例えば、5つの凸条を有する五芒星型横断面形状や、7つの凸条を有する七芒星型横断面形状でもよい。また、星型を形成する面が全て同じ形状で構成されていなくてもよい。
【0051】
また、排気流案内用ガイド12となる平面素材は必ずしも1枚である必要はなく、プレス曲げ加工を容易に行うため2枚以上に分割したものを曲げ加工後に合体させてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 排気浄化装置
11 板金(平面素材)
11B 矩形部
11F 延設部
12 排気流案内用ガイド
12B ガイド基部
12F 乱流発生フィン部
15 尿素水添加ノズル(ノズル)
19 中間パイプ(排気流通パイプ)
20 DPF装置(上流側排気浄化装置)
22 前段酸化触媒
23 DPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ,フィルタ)
30 SCR装置(下流側排気浄化装置)
32 SCR(選択還元型触媒)
33 後段酸化触媒
40 エンジン(ディーゼルエンジン)
50 コントローラ(ECU)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気流通パイプの内部に装着されて排気流を案内する排気流案内用ガイドであって、
平面素材を凸状と凹状とに交互に折り曲げ加工されて星型横断面形状に形成され、前記排気流通パイプ内の排気流方向に沿って配置されるガイド基部と、
前記ガイド基部の下流端に前記平面素材を折り曲げ加工されて形成され、前記排気流方向に対して角度を有するように配置される乱流発生フィン部と、を有する
ことを特徴とする、排気流案内用ガイド。
【請求項2】
前記平面素材は、前記ガイド基部を形成する矩形部と、前記ガイド基部の前記排気流通パイプ内への配置時に下流端となる前記矩形部の一辺部に複数延設される延設部とから構成される
ことを特徴とする、請求項1記載の排気流案内用ガイド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−67635(P2012−67635A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211327(P2010−211327)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】