説明

排気熱回収器

【課題】簡易な構成で熱応力を緩和することができる排気熱回収器を提供する。
【解決手段】内燃機関から排出された排気ガスが流通する第1の筐体100内に配置され、排気ガスと内部に封入された蒸発および凝縮可能な作動流体との間で熱交換を行い、作動流体を蒸発させる蒸発部1と、内燃機関の冷却水が流通する第2の筐体200内に配置され、蒸発部1で蒸発した作動流体と冷却水との間で熱交換を行い、作動流体を凝縮させる凝縮部2と、蒸発部1で蒸発した作動流体を凝縮部2に導く蒸発側連結部61と、凝縮部2で凝縮した作動流体を蒸発部1に導く凝縮側連結部62とを備える排気熱回収器において、第1の筐体100に、蒸発側連通部61および凝縮側連通部62がともに接合される蓋部材8を設け、蓋部材8を蒸発側連通部61と凝縮側連通部62との間で分割する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に用いられる排気熱回収器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒートパイプの原理を利用して車両のエンジンの排気系から排気ガスの排気熱を回収して、この排気熱を暖機促進等に利用する技術が知られている。
【0003】
このような排気熱回収器は、エンジンの排気管内にヒートパイプの蒸発部を配設するとともに、エンジンの冷却水経路内にヒートパイプの凝縮部を配設し、排気ガスの排気熱によって冷却水を加熱している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、ヒートパイプの原理を利用した熱交換器として、ループ型ヒートパイプ式熱交換器が提案されている(例えば、特許文献2参照)。これは、閉ループを形成する密閉された循環経路と、循環経路内に封入され、蒸発および凝縮可能な伝熱流体と、循環経路に配設され、外部からの入熱により伝熱流体を蒸発させる蒸発部と、循環経路の蒸発部より高い位置に配設され、蒸発部で蒸発した伝熱流体と外部からの被伝熱流体との間で熱交換を行う凝縮部とを有するものである。
【特許文献1】特開昭62−268722号公報
【特許文献2】特開平4−45393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような排気熱回収器の一例を図6に示す。図6は、排気熱回収器の断面図である。
【0006】
図6に示す排気熱回収器では、熱交換部である蒸発部J1と凝縮部J2を水平方向に隣接して配置し、蒸発部J1および凝縮部J2のヒートパイプJ3の鉛直方向両端部をそれぞれ連通させるヘッダJ5を設けている。また、隣接するヒートパイプJ3間には、空気との伝熱面積を増大させて伝熱流体と空気との熱交換を促進させるフィンJ4を配置している。
【0007】
このとき、蒸発部J1は排気ガスが流通する第1の筐体J100内に配置され、凝縮部J2はエンジン冷却水が流通する第2の筐体J200内に配置されている。以下、ヘッダJ5における蒸発部J1と凝縮部J2とを連結する部位を連結部J6という。
【0008】
このような排気熱回収器において、排気ガスが流通するために高温になりやすい蒸発部J1と、エンジンの冷却水が流通するために比較的低温になりやすい凝縮部J2との間に温度差が生じる。より詳細には、蒸発部J1を構成する蒸発側ヒートパイプJ3a、蒸発部J1における凝縮部J2に近い側の端部と第1の筐体J100における連結部J6が接合された面(以下、接合面J8という)との間の部位、すなわち連結部J6における最も凝縮部J2に近い側に配置される蒸発側ヒートパイプJ30aと接合面J8との間の部位(以下、狭間部J60という)、接合面J8、連結部J6の順に低温となっており、これら各部材間に温度差が生じる。さらに、隣接する蒸発側ヒートパイプJ3a間でも温度差が生じる。そして、各部材間に温度差が生じると、熱膨張差に起因する熱応力が発生するという問題がある。
【0009】
ところで、排気熱回収器は、例えば冬季の始動時等には、排気熱を回収することで早期に冷却水温度を上昇させることができるため、燃費や暖房性能を向上させることができる。一方、夏季のエンジン高負荷時等には、オーバーヒートを回避するために排気熱の回収を停止する必要がある。このため、排気熱回収器に、作動流体の循環を停止させる弁機構を設けることが望ましい。
【0010】
このような弁機構を備える排気熱回収器において、弁機構が閉じ、作動流体の還流が停止すると、作動流体は凝縮部に貯留されて排気熱回収が行われないので、蒸発部の温度は排気ガス温度と同じ位(300〜800℃)になる。このため、蒸発部と凝縮部(110℃以下)に多大な温度差が生じるので、大きな熱応力が生じる。したがって、特に弁機構を備える排気熱回収器において、蒸発部と凝縮部の温度差に基づく熱応力が大きな問題となる。
【0011】
これに対し、ヘッダJ5における隣接する蒸発側ヒートパイプJ3a間の部位および連結部J6にベローズのような弾性変形可能な部材を用い、熱応力を吸収することが考えられるが、構造が複雑になるため、製造コストが増加してしまうという問題がある。
【0012】
ところで、狭間部J60にはヒートパイプJ3およびフィンJ4が配置されない、すなわち狭間部J60では空気と伝熱流体との熱交換が行われないので、狭間部J60を大きくすると排気熱回収器の熱交換効率が低下することになる。このため、狭間部J60を大きくすることは望ましくない。したがって、狭間部J60にはベローズのような弾性変形可能な部材を用いることができず、狭間部J60と接合面J8との間の熱応力を吸収することができないという問題がある。
【0013】
本発明は、上記点に鑑み、簡易な構成で熱応力を緩和することができる排気熱回収器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明では、内燃機関から排出された排気ガスが流通する第1の筐体(100)内に配置され、排気ガスと内部に封入された蒸発および凝縮可能な作動流体との間で熱交換を行い、作動流体を蒸発させる蒸発部(1)と、内燃機関の冷却水が流通する第2の筐体(200)内に配置され、蒸発部(1)で蒸発した作動流体と冷却水との間で熱交換を行い、作動流体を凝縮させる凝縮部(2)と、蒸発部(1)で蒸発した作動流体を凝縮部(2)に導く蒸発側連結部(61)と、凝縮部(2)で凝縮した作動流体を蒸発部(1)に導く凝縮側連結部(62)とを備え、第1の筐体(100)は、蒸発側連通部(61)および凝縮側連通部(62)がともに接合される接合面(8)を有しており、接合面(8)は、蒸発側連通部(61)と凝縮側連通部(62)との間で分割されていることを特徴としている。
【0015】
これによれば、蒸発側、凝縮側連結部(61、62)と接合面(8)との間に温度差が生じた場合、分割された接合面(8)がそれぞれ互いに離れる方向に変位することで、熱膨張差に起因する熱応力を吸収することができる。このとき、蒸発側、凝縮側連結部(61、62)をベローズのような弾性構造にする必要がないため、簡易な構成で熱応力を緩和することが可能となる。
【0016】
また、蒸発部(1)における凝縮部(2)に近い側の端部と接合面(8)との間の部位(60)および接合面(8)間に温度差が生じた場合でも、分割された接合面(8)がそれぞれ互いに離れる方向に変位することで、熱膨張差に起因する熱応力を吸収することができる。
【0017】
また、上記特徴の排気熱回収器において、接合面(8)は、第1の接合面(81)と第2の接合面(82)とに分割されており、第1の接合面(81)および第2の接合面(82)間の隙間(800)から排気ガスが流出することを抑制するシール手段(91)を備えていてもよい。
【0018】
これによれば、第1の接合面(81)および第2の接合面(82)間の隙間(800)から第1の筐体(100)の外部に排気ガスが流出することを抑制できるため、排気騒音を低減することが可能となる。
【0019】
また、上記特徴の排気熱回収器において、シール手段は、接合面(8)の分割部位に設けられたガスケット(91)であってもよい。
【0020】
また、上記特徴の排気熱回収器において、シール手段は、隙間(800)に形成された迷路構造により構成されていてもよい。
【0021】
これによれば、第1の接合面(81)および第2の接合面(82)間の隙間(800)をシールするための別部材を設ける必要がないため、簡易な構成で隙間(800)から第1の筐体(100)の外部に排気ガスが流出することを抑制でき、排気騒音を低減することができる。
【0022】
なお、「迷路構造」とは、周知のごとく、通路の入口側から出口側までに至る部位に、通路が屈曲する部位を少なくとも一カ所設けることにより、通路を流通する流体が直線的に流通することができないようにしたものである。
【0023】
また、上記特徴の排気熱回収器において、第1の筐体(100)には開口部(101)が形成され、蒸発部(1)が開口部(101)から第1の筐体(100)内に挿入されるようになっており、接合面(8)は、蒸発部(1)を第1の筐体(100)内に挿入した際に開口部(101)を塞ぐようになっていてもよい。
【0024】
また、上記特徴の排気熱回収器において、第1の筐体(100)には第1の開口部(105)および第2の開口部(106)が形成されており、第2の開口部(106)は、第1の筐体(100)における第1の開口部(105)と対向する面に設けられており、蒸発部(1)は、第2の開口部(106)から第1の筐体(100)内に挿入されるようになっており、接合面(8)は、蒸発部(1)を第1の筐体(100)内に挿入した際に第1の開口部(105)を塞ぐようになっていてもよい。
【0025】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1および図2に基づいて説明する。本実施形態の排気熱回収器Xは、車両のエンジン(内燃機関)の排気系から排気ガスの排気熱を回収して、この排気熱を暖機促進等に利用するものである。
【0027】
図1は、本第1実施形態に係る排気熱回収器を示す断面図である。図1に示すように、本実施形態の排気熱回収器は、蒸発部1と凝縮部2とを備えている。
【0028】
蒸発部1は、図示しないエンジンの排気筒内に配置される第1の筐体100内に設けられている。また、蒸発部1は、排気ガスと後述する作動流体との間で熱交換を行い、作動流体を蒸発させるようになっている。
【0029】
凝縮部2は、排気筒の外部に設けられており、図示しないエンジンの冷却水経路内に配置される第2の筐体200内に設けられている。また、凝縮部2は、蒸発部1で蒸発した作動流体とエンジン冷却水との間で熱交換を行い、作動流体を凝縮させるようになっている。第2の筐体200には、エンジンの冷却水出口側に接続される冷却水流入口201と、エンジンの冷却水入口側に接続される冷却水流出口202とが設けられている。
【0030】
第1の筐体100と第2の筐体200は、隣接するように配置されている。また、第1の筐体100と第2の筐体200の間には、クリアランスが設けられている。
【0031】
次に、蒸発部1の構成について説明する。
【0032】
蒸発部1は、複数本の蒸発側ヒートパイプ3aと、蒸発側ヒートパイプ3aの外表面に接合された蒸発側コルゲートフィン4aとを有している。蒸発側ヒートパイプ3aは、排気ガスの流通方向(紙面垂直方向)が長径方向と一致するように扁平状に形成されているとともに、その長手方向が鉛直方向に一致するように複数本平行に配置されている。
【0033】
蒸発部1において、蒸発側ヒートパイプ3a長手方向両端部には、蒸発側ヒートパイプ3a積層方向に延びて、全ての蒸発側ヒートパイプ3aと連通する蒸発側ヘッダ5aがそれぞれ設けられている。二つの蒸発側ヘッダ5aのうち、排気熱回収器の鉛直方向上端側に配置される蒸発側ヘッダ5aを第1の蒸発側ヘッダ51aといい、鉛直方向下端側に配置される蒸発側ヘッダ5aを第2の蒸発側ヘッダ52aという。
【0034】
次に、凝縮部2の構成について説明する。
【0035】
凝縮部2は、複数本の凝縮側ヒートパイプ3bと、凝縮側ヒートパイプ3bの外表面に接合された凝縮側コルゲートフィン4bとを有している。凝縮側ヒートパイプ3bは、蒸発部1における排気ガスの流通方向(紙面垂直方向)が長径方向と一致するように扁平状に形成されているとともに、その長手方向が鉛直方向に一致するように複数本平行に配置されている。
【0036】
凝縮部2において、凝縮側ヒートパイプ3b長手方向両端部には、凝縮側ヒートパイプ3b積層方向に延びて、全ての凝縮側ヒートパイプ3bと連通する凝縮側ヘッダ5bがそれぞれ設けられている。二つの凝縮側ヘッダ5bのうち、排気熱回収器の鉛直方向上端側に配置される凝縮側ヘッダ5bを第1の凝縮側ヘッダ51bといい、鉛直方向下端側に配置される凝縮側ヘッダ5bを第2の凝縮側ヘッダ52bという。
【0037】
蒸発側ヘッダ5aと凝縮側ヘッダ5bは、筒状の連結部6を介して連通状態に接続されている。そして、蒸発側、凝縮側ヒートパイプ3a、3b、蒸発側、凝縮側ヘッダ5a、5bおよび連結部6によって閉ループが形成されており、これらの内部に水やアルコール等の蒸発・凝縮可能な作動流体が封入されている。これにより、作動流体は蒸発部1および凝縮部2を循環するようになっている。
【0038】
ここで、二つの連結部6のうち、鉛直方向上方側に配置され、第1の蒸発側ヘッダ51aと第1の凝縮側ヘッダ51bとを接続し、蒸発部1で蒸発した作動流体を凝縮部2に導くものを蒸発側連結部61という。また、二つの連結部6のうち、鉛直方向下方側に配置され、第2の蒸発側ヘッダ52aと第2の凝縮側ヘッダ52bとを接続し、凝縮部2で凝縮された作動流体を蒸発部1に導くものを凝縮側連結部62という。
【0039】
また、第2の凝縮側ヘッダ52b内には、弁機構7が配設されている。弁機構7は、凝縮側ヒートパイプ3bと、凝縮側連結部62とを接続する流路を形成するとともに、蒸発側ヒートパイプ3aの内圧(作動流体の圧力)に応じて流路を開閉するダイアフラム式の開閉手段となっている。
【0040】
具体的には、弁機構7は、通常の開弁状態から、所定の冷却水温において内圧が上昇して第1の所定圧力を超えると閉弁し、逆に内圧が低下して、第1の所定圧力より低い第2の所定圧力を下回ると、再び開弁するように構成されている。
【0041】
ところで、第1の筐体100には開口部101が形成されており、蒸発部1が開口部101から第1の筐体100内に挿入されるようになっている。本実施形態では、蒸発部1は、第2の筐体200(凝縮部2)側から第1の筐体100に挿入されるようになっている。
【0042】
また、蒸発側連結部61および凝縮側連通部62には、蒸発部1を第1の筐体100内に挿入した際に開口部101を塞ぐ蓋部材8が接合されている。本実施形態では、蓋部材8はヒートパイプ積層方向(蒸発部1および凝縮部2の配置方向)に垂直に配置されている。蓋部材8におけるヒートパイプ積層方向に垂直な面は、第1の筐体100の開口部101より大きく形成されている。このため、蒸発部1を第1の筐体100に挿入した際に、蓋部材8により開口部101を第1の筐体100の外側から塞ぐことができるようになっている。なお、蓋部材8が、本発明の接合面に相当している。
【0043】
蓋部材8は、蒸発側連結部61と凝縮側連結部62との間で2つに分割されている。以下、分割された蓋部材8のうち、上側に配置されて蒸発側連結部61に接合されているものを第1の蓋部材81といい、下側に配置されて凝縮側連結部62に接合されているものを第2の蓋部材82という。なお、第1の蓋部材81が本発明の第1の接合面に相当し、第2の蓋部材82が第2の接合面に相当している。
【0044】
図2は、本第1実施形態における蒸発部1近傍を示す拡大断面図である。図2に示すように、蓋部材8の分割部には、第1の蓋部材81および第2の蓋部材82間の隙間800を密閉し、排気ガスが隙間800から外部に流出することを防止するガスケット91が設けられている。本実施形態では、ガスケット91は、第1、第2の蓋部材81、82の外側(凝縮部2側)の面にともに接触した状態で固定されている。
【0045】
第1の筐体100における開口部101の外周部には、開口部101の外側に向かって突出するフランジ102がそれぞれ形成されている。フランジ102には、ボルト92を通すためのフランジ側ボルト通し穴103が形成されている。
【0046】
フランジ102におけるフランジ側ボルト通し穴103より開口部101側には、他の部位より板厚が薄い薄肉部104が形成されている。また、フランジ102の薄肉部104と第1、第2の蓋部材81、82との間には、シール材93がそれぞれ配設されている。これにより、フランジ102と第1、第2の蓋部材81、82とは、シール材93を介してそれぞれ接触している。
【0047】
このシール材93は、後述するボルト締めを行うことにより、フランジ102側および第1、第2の蓋部材81、82側の両側から荷重がかけられる。これにより、フランジ102および第1、第2の蓋部材81、82間をシールすることができる。このとき、第1、第2の蓋部材81、82は、荷重方向(フランジ102と蓋部材8の配置方向、本実施形態ではヒートパイプ積層方向)には動かないようになっている。
【0048】
一方、シール部材93は、シール部材93および第1、第2の蓋部材81、82における互いに接触する面同士が滑らかに摺動するように構成されている。これにより、第1、第2の蓋部材81、82は、上記荷重方向に対して垂直な方向に可動となっている。
【0049】
また、第1、第2の蓋部材81、82におけるフランジ側ボルト通し穴103に対応する部位には、ボルト92を通すための蓋部材側ボルト通し穴801がそれぞれ形成されている。蓋部材側ボルト通し穴801は、蓋部材側ボルト通し穴801にボルト92を貫通させた際に、ボルト92の外面と蓋部材側ボルト通し穴801の内周縁部との間にクリアランスができる大きさに形成されている。
【0050】
そして、フランジ側ボルト通し穴103および蓋部材側ボルト通し穴801にボルト92を貫通させてナット94と締結させることで、第1、第2の蓋部材81、82はシール材93を介してフランジ102にそれぞれ固定されている。
【0051】
以上説明したように、蓋部材8を蒸発側連結部61および凝縮側連結部62間で分割することで、蒸発側、凝縮側連結部61、62と蓋部材8との間に温度差が生じた場合に、第1、第2の蓋部材81、82がそれぞれ互いに離れる方向に変位して、熱膨張差に起因する熱応力を吸収することができる。このとき、蒸発側、凝縮側連結部61、62をベローズのような弾性構造にする必要がないため、簡易な構成で熱応力を緩和することが可能となる。
【0052】
また、蒸発部1における凝縮部2に近い側の端部と蓋部材8との間の部位、すなわち蒸発側、凝縮側連結部61、62における最も凝縮部2に近い側に配置される蒸発側ヒートパイプ30aと蓋部材8との間の部位60および蓋部材8間に温度差が生じた場合でも、第1、第2の蓋部材81、82がそれぞれ互いに離れる方向(本実施形態では、ヒートパイプ長手方向)に変位することで、熱膨張差に起因する熱応力を吸収することができる。
【0053】
また、蓋部材8の分割部位にガスケット91を設けることで、第1、第2の蓋部材81、82間の隙間800から第1の筐体100の外部に排気ガスが流出することを抑制でき、排気騒音を低減することが可能となる。
【0054】
また、第1、第2の蓋部材81、82を、シール部材93を介して、上記荷重方向には動かないように、上記荷重方向に対して垂直な方向には可動となるようにフランジ102に固定することで、第1、第2の蓋部材81、82の変位を拘束することなく、第1、第2の蓋部材81、82をフランジ102に固定することができる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図3に基づいて説明する。上記第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0056】
図3は、本第3実施形態に係る排気熱回収器の蒸発部1近傍を示す拡大断面図である。図3に示すように、第1の筐体100における第2の筐体200と対向する第1の面100aには、第1の開口部105が形成されている。第1の開口部105の開口面積は、蒸発部1におけるヒートパイプ積層方向に垂直な面の面積より小さくなっている。このため、蒸発部1を第1の開口部105から第1の筐体100内に挿入することは不可能である。
【0057】
また、第1の筐体100における第1の面100aと対向する第2の面は、ほぼ全面が開口しており、第2の開口部106となっている。第2の開口部106の開口面積は、蒸発部1におけるヒートパイプ積層方向に垂直な面の面積より大きくなっている。
【0058】
本実施形態では、蒸発部1が第2の開口部106から第1の筐体100内に挿入されるようになっている。より詳細には、蒸発部1は第2の筐体200(凝縮部2)と反対側から第1の筐体100に挿入され、蒸発側連結部61および凝縮側連通部62が第1の開口部105を貫通するようになっている。
【0059】
また、蒸発側連結部61および凝縮側連通部62には、蒸発部1を第1の筐体100内に挿入した際に第1の開口部105を塞ぐ蓋部材8が接合されている。本実施形態では、蓋部材8はヒートパイプ積層方向に垂直に配置されている。蓋部材8におけるヒートパイプ積層方向に垂直な面は、第1の開口部105より大きく、かつ、第1の面100aより小さく形成されている。このため、蒸発部1を第1の筐体100に挿入した際に、蓋部材8により第1の開口部105を第1の筐体100の内側から塞ぐことができるようになっている。
【0060】
蓋部材8は、蒸発側連結部61と凝縮側連結部62との間で、第1の蓋部材81と第2の蓋部材82とに分割されている。蓋部材8の分割部には、ガスケット91が設けられている。本実施形態では、ガスケット91は、第1、第2の蓋部材81、82の外側(凝縮部2側)の面にともに接触した状態で固定されている。
【0061】
第1の面100aにおける第1の開口部105が形成されていない部位107と第1、第2の蓋部材81、82との間には、シール材93がそれぞれ配設されている。これにより、第1の面100aと第1、第2の蓋部材81、82とは、シール材93を介してそれぞれ接触している。
【0062】
第1の筐体100における第2の開口部106の外周部には、第2の開口部106の外側に向かって突出するフランジ108がそれぞれ形成されている。また、蒸発部1における凝縮部2と反対側の端部には、第2の開口部106を塞ぐ密閉部材110が接合されている。そして、フランジ108と密閉部材110とを溶接により接合することで、第2の開口部106が密閉されている。
【0063】
本実施形態のように、蒸発部1が凝縮部2と反対側の第2の開口部106から第1の筐体100内に挿入されるようにしても、蒸発側、凝縮側連結部61、62と第1の開口部105を塞ぐ蓋部材8との間に温度差が生じた場合に、第1、第2の蓋部材81、82がそれぞれ互いに離れる方向に変位して、熱膨張差に起因する熱応力を吸収することができる。このため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図4に基づいて説明する。本第3実施形態は、上記第1実施形態に比較して、蒸発部1の上方側に凝縮部2を配設した点が異なるものである。上記第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0065】
図4は、本第3実施形態に係る排気熱回収器を示す断面図である。図4に示すように、本実施形態の凝縮部2は、上記第1実施形態のものを90度回転させた状態で、蒸発部1の上側に配設されている。なお、本実施形態では、凝縮側ヒートパイプ3b(図1参照)を廃止するとともに、作動流体が流通するチューブ3cを採用している。チューブ3は、蒸発部1における排気ガスの流通方向(紙面垂直方向)が長径方向と一致するように扁平状に形成されているとともに、その長手方向が水平方向に一致するように複数本平行に配置されている。
【0066】
本実施形態のように、蒸発部1の上方側に凝縮部2を配設しても、蒸発側、凝縮側連結部61、62と開口部101を塞ぐ蓋部材8との間に温度差が生じた場合に、第1、第2の蓋部材81、82がそれぞれ互いに離れる方向(本実施形態では、ヒートパイプ積層方向)に変位して、熱膨張差に起因する熱応力を吸収することができる。このため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、第1、第2の蓋部材81、82間の隙間800から外部に排気ガスが流出することを防止するシール手段として、ガスケット91を設けた例について説明したが、これに限らず、第1、第2の蓋部材81、82間の隙間800に迷路構造を形成してもよい。例えば図5に示すように、第1、第2の蓋部材81、82の互いに対向する壁面により迷路構造を構成してもよい。迷路構造により排気ガスが流通する通路を蛇行させることができるため、第1の筐体100から外部に排気ガスが流出することを抑制できる。このとき、隙間800をシールするための別部材を設ける必要がないため、簡易な構成で第1の筐体100から外部に排気ガスが流出することを抑制でき、排気騒音を低減することができる。
【0068】
また、上記第2実施形態では、第2の開口部106を密閉するために、フランジ108と密閉部材110とを溶接により接合した例について説明したが、これに限らず、フランジ108と密閉部材110とをボルト締め等の機械的結合手段により結合してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】第1実施形態に係る排気熱回収器を示す断面図である。
【図2】第1実施形態における蒸発部1近傍を示す拡大断面図である。
【図3】第2実施形態における蒸発部1近傍を示す拡大断面図である。
【図4】第3実施形態に係る排気熱回収器を示す断面図である。
【図5】他の実施形態における第1、第2の蓋部材81、82間の隙間800近傍を示す拡大断面図である。
【図6】従来の排気熱回収器を示す断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1…蒸発部、2…凝縮部、8…蓋部材(接合面)、61…蒸発側連結部、62…凝縮側連結部、81…第1の蓋部材(第1の接合面)、82…第2の蓋部材(第2の接合面)、91…ガスケット(シール手段)、100…第1の筐体、101…開口部、105…第1の開口部、106…第2の開口部、200…第2の筐体、800…隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出された排気ガスが流通する第1の筐体(100)内に配置され、前記排気ガスと内部に封入された蒸発および凝縮可能な作動流体との間で熱交換を行い、前記作動流体を蒸発させる蒸発部(1)と、
前記内燃機関の冷却水が流通する第2の筐体(200)内に配置され、前記蒸発部(1)で蒸発した前記作動流体と前記冷却水との間で熱交換を行い、前記作動流体を凝縮させる凝縮部(2)と、
前記蒸発部(1)で蒸発した前記作動流体を前記凝縮部(2)に導く蒸発側連結部(61)と、
前記凝縮部(2)で凝縮した前記作動流体を前記蒸発部(1)に導く凝縮側連結部(62)とを備え、
前記第1の筐体(100)は、前記蒸発側連通部(61)および前記凝縮側連通部(62)がともに接合される接合面(8)を有しており、
前記接合面(8)は、前記蒸発側連通部(61)と前記凝縮側連通部(62)との間で分割されていることを特徴とする排気熱回収器。
【請求項2】
前記接合面(8)は、第1の接合面(81)と第2の接合面(82)とに分割されており、
前記第1の接合面(81)および前記第2の接合面(82)間の隙間(800)から前記排気ガスが流出することを抑制するシール手段(91)を備えることを特徴とする請求項1に記載の排気熱回収器。
【請求項3】
前記シール手段は、前記接合面(8)の分割部位に設けられたガスケット(91)であることを特徴とする請求項2に記載の排気熱回収器。
【請求項4】
前記シール手段は、前記隙間(800)に形成された迷路構造により構成されていることを特徴とする請求項2に記載の排気熱回収器。
【請求項5】
前記第1の筐体(100)には開口部(101)が形成され、前記蒸発部(1)が前記開口部(101)から前記第1の筐体(100)内に挿入されるようになっており、
前記接合面(8)は、前記蒸発部(1)を前記第1の筐体(100)内に挿入した際に前記開口部(101)を塞ぐようになっていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の排気熱回収器。
【請求項6】
前記第1の筐体(100)には第1の開口部(105)および第2の開口部(106)が形成されており、
前記第2の開口部(106)は、前記第1の筐体(100)における前記第1の開口部(105)と対向する面に設けられており、
前記蒸発部(1)は、前記第2の開口部(106)から前記第1の筐体(100)内に挿入されるようになっており、
前記接合面(8)は、前記蒸発部(1)を前記第1の筐体(100)内に挿入した際に前記第1の開口部(105)を塞ぐようになっていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の排気熱回収器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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