説明

排気系部品の支持構造

【課題】本発明は、排気系部品を支持する弾性部材の遮熱、排気系部品の位置規制を行い、弾性部材の耐久性向上、車室内騒音の低減、排気系部品の設計自由度向上を目的としている。
【解決手段】このため、排気系部品を支持するための弾性部材をブラケットを介して車体に支持する排気系部品の支持構造において、ブラケットは車体に取り付けられる車体取付け板とこの車体取付け板から下方に延び、弾性部材が取り付けられる弾性部材取付け板と車体取付け板の端部及び、弾性部材取付け板の端部に連結される側板を有し、側板は弾性部材と排気系部品との間に配置され、鉛直方向で弾性部材と同等か、それ以上の長さを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は排気系部品の支持構造に係り、特に排気系部品を支持するための弾性部材を車体に取り付けるブラケットを改良し、排気系部品を支持する弾性部材の遮熱や排気系部品の位置規制を図るとともに、弾性部材の耐久性向上、車室内騒音の低減、そして排気系部品の設計自由度向上をも図る排気系部品の支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の排気管は、内燃機関から発生する排気ガスを大気に放出させるためにガスを車両後方まで導くように装着される。
同時に、排気管は排気騒音を低減させる役割も持たせており、発生した排気騒音が車体に伝播し難くするために、排気管を懸架する際に車体を構成する鋼板にハンガーステーを設定し、防振ゴムを介して懸架する方法、またはハンガーステーの代わりにブラケットを設定し防振ゴムを介して排気管を懸架する方法が一般的である。
また、特許文献1(特開平7−32893)、特許文献2(特開2010−138784)によって開示されるように、内燃機関から発生した排気騒音の車体伝達を防ぐために、防振ゴム(「弾性部材」あるいは「マウントゴム」ともいう。)を使って排気系部品は懸架させている。
つまり、図5及び図6に示す如く、車体101に排気系部品であるマフラ102を支持している。
このとき、このマフラ102は、図5及び図6に示す如く、弾性部材103によって支持されている。
前記マフラ102は、車両前側に取り付けた前部マフラハンガー121と、車両後側に取り付けた後部右側マフラハンガー105と後部左側マフラハンガー106とを備えている。
【0003】
そして、同時に内燃機関から発生する排気ガスによって排気管は熱せられるため、特に排気管近傍にある防振ゴムは排気系部品から熱的ダメージを受け、熱劣化が促進されてしまうというおそれがある。
これを防ぐため、遮熱板が装着される。
更に、特許文献2によって開示されるように、防振ゴムで懸架された排気管は車体の挙動によって大きな変位を与えられえる。
これを抑制するためにブラケット形状の工夫や車体に溶接したハンガーを使って防振ゴムの回転規制をかける構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−32893号公報
【特許文献2】特開2010−138784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、以下のような不都合がある。
(1)上述の特許文献1のように、防振ゴム用の遮熱板を設定する場合は部品点数が増えてしまうこと。
(2)また、上述の特許文献2においては、ブラケットに遮熱板の役割を持たせ部品点数を削減しているが、ブラケットの形状が複雑化してしまい、生産性を損なうこと。
(3)更に、防振ゴムを挿入のみで組み付けるタイプであるため厚い防振ゴムを使いたい場合は挿入代が多くなり、組み付け性(作業性)が悪くなること。
また、特許文献2における回転規制構造については、消音器側面に設定された際に、その機能が十分に機能しないという課題がある。
【0006】
この発明は、排気系部品を支持する弾性部材の遮熱、排気系部品の位置規制を行い、弾性部材の耐久性向上、車室内騒音の低減、排気系部品の設計自由度向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、排気系部品を支持するための弾性部材をブラケットを介して車体に支持する排気系部品の支持構造において、前記ブラケットは車体に取り付けられる車体取付け板とこの車体取付け板から下方に延び、前記弾性部材が取り付けられる弾性部材取付け板と前記車体取付け板の端部及び、前記弾性部材取付け板の端部に連結される側板を有し、前記側板は前記弾性部材と排気系部品との間に配置され、鉛直方向で前記弾性部材と同等か、それ以上の長さを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上詳細に説明した如くこの発明によれば、弾性部材と排気系部品との間にブラケットの側板が位置するため、排気系部品が発する輻射熱から弾性部材を遮熱することができ、弾性部材の耐久性が向上する。
前記のように弾性部材をブラケットで遮熱することで弾性部材を排気系部品に近づけることができ、排気系部品の支持構造を短くし、剛性を高め、車室内騒音の低減が図れるとともに、支持構造のコンパクト化、部品重量低減が図れる。
弾性部材から一定の隙間を介してブラケットの側板が位置するため、排気系部品が揺動したときに弾性部材がブラケットの側板に接触することで、位置規制(ストッパ)となり、排気系部品の過度の揺動が抑えられ、車室内騒音の低減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は弾性部材とブラケットとの要部拡大図である。(実施例)
【図2】図2は車両後方から見た車体にマフラを支持した状態の要部拡大図である。(実施例)
【図3】図3は車体にマフラを支持した状態の要部拡大底面図である。(実施例)
【図4】図4はマフラの移動状態を示す図であり、(a)はマフラの非移動時である中央状態を示す図、(b)はマフラの右側移動時である右揺動時状態を示す図、(c)はマフラの左側移動時である左揺動時状態を示す図である。(実施例)
【図5】図5はこの発明の従来技術を示す車体にマフラを支持した状態の要部拡大底面図である。
【図6】図6はこの発明の従来技術を示す車両後方から見た車体にマフラを支持した状態の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例】
【0011】
図1〜図4はこの発明の実施例を示すものである。
図2及び図3において、1は車体(「車体メンバ」とも換言できる。)、2は排気系部品、例えばマフラである。
そして、このマフラ2は、図2及び図3に示す如く、弾性部材(「マウントゴム」ともいう。)3によって支持されており、この弾性部材3をブラケット4を介して前記車体1に支持している。
つまり、前記マフラ2は、車両前側に取り付けた前部マフラハンガー(図示せず。図5の符号121参照。)と、車両後側に取り付けた後部右側マフラハンガー5と後部左側マフラハンガー6とを備えている。
そして、これらのマフラハンガー5、6を前記車体1に固定されるブラケット4に弾性部材3を介して支持する。
このとき、この弾性部材3は、図1に示す如く、上部に形成したブラケット取付孔部(図示せず)によって前記ブラケット4に固定する一方、下部に形成したハンガー取付孔部7に複数のマフラハンガー5、6を夫々挿通させるものである。
【0012】
また、前記ブラケット4は車体1に取り付けられる車体取付け板8とこの車体取付け板8から下方に延び、前記弾性部材3が取り付けられる弾性部材取付け板9と前記車体取付け板8の端部及び、前記弾性部材取付け板9の端部に連結される側板10を有する。
そして、この側板10は前記弾性部材3と排気系部品である前記マフラ2との間に配置され、鉛直方向で前記弾性部材3と同等か、それ以上の長さを有する構成とする。
詳述すれば、前記ブラケット4は、図1〜図3に示す如く、このブラケット4の上部に水平状態に位置し、かつ、ブラケット4を前記車体1に車両下方から車体取付用ボルト11によって取り付ける前記車体取付け板8を有する。
また、前記ブラケット4は、車体取付け板8の車両前側端部から下方に延び、かつ、前記弾性部材3を車両後方から弾性部材取付用ボルト12によって取り付ける前記弾性部材取付け板9を有する。
更に、水平状態の前記車体取付け板8の端部と鉛直方向に延びる前記弾性部材取付け板9の端部とを連結する前記側板10を設ける。
つまり、この側板10は、図1及び図2に示す如く、車両幅方向及び鉛直方向に延びる前記弾性部材取付け板9の端部から車両後方、かつ、鉛直方向に延びるように形成する。
このとき、前記側板10の上端部を水平状態の前記車体取付け板8の端部に連結するものである。
なお、前記ブラケット4を、前記車体取付け板8と前記弾性部材取付け板9と前記側板10とにより形成する際に、図1〜図3に示す如く、板状部材からプレスにより一体成形するものや、夫々別体に形成したものを溶接するものなどがある。
【0013】
そして、前記ブラケット4の車体取付け板8を、前記車体1に車両下方から車体取付用ボルト11によって取り付けた際に、図1〜図3に示す如く、前記側板10を前記弾性部材3と前記マフラ2との間に配置する。
このとき、前記側板10の長さを、鉛直方向で前記弾性部材3と同等か、それ以上の長さ、例えば、この実施例においては、図1及び図2から明らかなように、前記側板10の長さを前記弾性部材3よりも長く形成している。
【0014】
これにより、前記弾性部材3と排気系部品である前記マフラ2との間に前記ブラケット4の側板10が位置するため、マフラ2が発する輻射熱から弾性部材3を遮熱することができ、弾性部材3の耐久性が向上する。
また、上述のように弾性部材3を前記ブラケット4で遮熱することで弾性部材3をマフラ2に近づけることができ、マフラ2の支持構造を短くし、剛性を高め、車室内騒音の低減が図れるとともに、支持構造のコンパクト化、部品重量低減が図れる。
つまり、従来の後部右側マフラハンガー13(比較のため、図2の中に図6の105を重ね描きしたものである。)の取付位置とこの発明の前記後部右側マフラハンガー5の取付位置とを比較すると、図2に示す如く、距離Aだけ後部右側マフラハンガー5の取付位置を前記マフラ2に近づけることができる。
更に、前記弾性部材3から一定の隙間を介して前記ブラケット4の側板10が位置するため、前記マフラ2が揺動したときに弾性部材3がブラケット4の側板10に接触することで、位置規制(ストッパ)となり、マフラ2の過度の揺動が抑えられ、車室内騒音の低減が図れる。
【0015】
次に、作用を説明する。
先ず、車両が停止している場合には、図4(a)に示す如く、前記マフラ2は移動せず、非移動時である中央状態となる。
そして、車両が駆動され、車両走行時に左折や右折などの方向転換が行われると、前記マフラ2が揺動して左右に移動することとなる。
つまり、前記マフラ2の右揺動時に、図4(b)に示す如く、マフラ2が右方向に移動すると、前記ブラケット4の車体取付け板8に前記弾性部材3を取り付けた弾性部材取付用ボルト12を回動中心として、弾性部材3が反時計回りに回動する。
そして、左側に位置する前記弾性部材3の外周部位が左側に位置する前記ブラケット4の側板10に接触する。
また、前記マフラ2の左揺動時に、図4(c)に示す如く、マフラ2が左方向に移動すると、前記ブラケット4の車体取付け板8に前記弾性部材3を取り付けた弾性部材取付用ボルト12を回動中心として、弾性部材3が時計回りに回動する。
そして、右側に位置する前記弾性部材3の外周部位が右側に位置する前記ブラケット4の側板10に接触する。
このため、前記マフラ2の右揺動時やマフラ2の左揺動時に、前記弾性部材3の外周部位が前記ブラケット4の側板10に接触することにより、図4(b)及び図4(c)のB部分に示す如く、前記側板10がストッパとして機能して前記弾性部材3の揺動距離を抑制する。
【0016】
なお、この発明は上述実施例に限定されるものではなく、種々の応用改変が可能である。
【0017】
例えば、この発明の実施例においては、前記車体に固定されるブラケットに弾性部材を取り付ける際に、車両幅方向及び鉛直方向に延びる前記弾性部材取付け板に車両後方から弾性部材取付用ボルトによって弾性部材を取り付け、ブラケットによって車両左右方向の動きを規制する構成としたが、前記弾性部材取付け板を車両前後方向及び鉛直方向に延びるように、取付向きを90度変更させる特別構成とすることも可能である。
さすれば、ブラケットによって車両前後方向の動きを規制することも可能である。
【符号の説明】
【0018】
1 車体
2 排気系部品、例えばマフラ
3 弾性部材(「マウントゴム」ともいう。)
4 ブラケット
5 後部右側マフラハンガー
6 後部左側マフラハンガー
7 ハンガー取付孔部
8 車体取付け板
9 弾性部材取付け板
10 側板
11 車体取付用ボルト
12 弾性部材取付用ボルト
13 従来の後部右側マフラハンガー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気系部品を支持するための弾性部材をブラケットを介して車体に支持する排気系部品の支持構造において、前記ブラケットは車体に取り付けられる車体取付け板とこの車体取付け抜から下方に延び、前記弾性部材が取り付けられる弾性部材取付け板と前記車体取付け板の端部及び、前記弾性部材取付け板の端部に連結される側板を有し、前記側板は前記弾性部材と排気系部品との間に配置され、鉛直方向で前記弾性部材と同等か、それ以上の長さを有することを特徴とする排気系部品の支持構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate