説明

排水処理装置及び排水処理方法

【課題】後処理を行うことなく、排水中の有機物の分解性能を高くすることが可能な排水処理装置及び排水処理方法を提供する。
【解決手段】第一の排水処理装置10Aは、排水11中の有機物12を分解処理する排水処理装置であって、排水11を貯留する貯水槽13と、貯水槽13の下端面13a側に垂下して複数設けられ、有機物12を分解するTiO2層をグラスファイバの表面に被覆したTiO2コーティンググラスファイバ16と、TiO2コーティンググラスファイバ16により排水11中の有機物12が分解された処理水17を溜める受水部18とを有する。TiO2コーティンググラスファイバ16を貯水槽13の下端面13aに垂下して設け、互いに接触しないように配置し、TiO2コーティンググラスファイバ16に光22を照射することで、TiO2コーティンググラスファイバ16の外壁に沿って流下してくる排水11中の有機物12を分解できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物を含んだ排水の処理を行う排水処理装置及び排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排水中の有機物を分解処理する方法として光触媒を利用した排水処理方法がある。例えば、光触媒を担持した活性炭などを吸着剤として用いて有機物等を吸着除去し、光触媒が担持されている活性炭に紫外線及び/又は可視光線を照射して、有機物を処理する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、排水中の有機物の処理方法として光触媒を利用する他に、有機物を含有する排水中にオゾン(O3)を添加して紫外光を照射することで、排水中の有機物を分解し、処理する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。これらの処理方法は、排水の有効な排水処理技術として従来より排水処理設備において活性汚泥法や物理化学的処理方法の補完装置として用いられている。
【0003】
光触媒を用いて排水中の有機物を分解処理する際、光触媒を活性炭に担持させて使用する他に、例えば、吸着剤であるゼオライト等に光触媒を担持させて使用する方法も挙げられる。また、光透過性の高いガラス容器、プラスチック等に光触媒を担持させてチューブ構造に成型した組成物を使用する方法、ガラス容器、プラスチック等を用いて成型した光透過性を有する透明円筒体の表面、裏面に光触媒をコーティングして使用する方法などが挙げられる(例えば、特許文献3、4参照)。更に、管壁に複数の微細孔を有する中空管を円筒形に複数束ねて容器内に配置し、各々の中空管内に光触媒を充填するか、中空管の内壁及び外壁に光触媒を付着させ、光源の周囲に反射鏡を設け、光源からの光を複数の中空管に照射させる方法がある(例えば、特許文献5参照)。上記方法により光触媒を使用することで排水中の有機物を二酸化炭素と水とに分解することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−10136号公報
【特許文献2】特開平11−104618号公報
【特許文献3】特開2000−354762号公報
【特許文献4】特開2000−93952号公報
【特許文献5】特開平11−290656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光触媒を担持させたゼオライトを排水中に分散させて排水中の有機物を分解処理する場合、排水中でゼオライト同士が接触することで分解し、ゼオライトに担持させていた光触媒の粉末が処理水中に混入するため、光触媒の粉末を除去するための後処理を行う必要がある、という問題がある。
【0006】
また、光触媒をコーティングしたガラス容器等に排水を供給してもガラス容器中の光触媒と排水との接触面積が小さいため、排水中の有機物が十分に分解除去されず、十分な排水処理効果が得られない、という問題がある。
【0007】
本発明は、前記問題に鑑み、後処理を行うことなく、排水中の有機物の分解性能を高くすることが可能な排水処理装置及び排水処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、下記構成とすることができる。
1) 第1の発明は、排水中の有機物を分解処理する排水処理装置であって、前記排水を貯留する貯水部と、前記貯水部の下端面側に垂下して少なくとも一つ設けられ、棒状又は筒状に形成された成形体の表面に光触媒からなる光触媒層を被覆した光触媒被覆成形体と、を有し、前記貯水部の下端面の流水孔から前記光触媒層の表面を流れ落ちる前記排水中の有機物を光触媒により分解除去することを特徴とする排水処理装置にある。
【0009】
2) 第2の発明は、第1の発明において、前記光触媒被覆成形体が、透明な反応容器内に設けられてなることを特徴とする排水処理装置にある。
【0010】
3) 第3の発明は、第2の発明において、前記反応容器内に酸素を供給する酸素供給部を有することを特徴とする排水処理装置にある。
【0011】
4) 第4の発明は、第2又は3の発明において、前記光触媒被覆成形体の外周に設けられ、前記光触媒被覆成形体に紫外光を照射する紫外光照射手段を少なくとも一つ有することを特徴とする排水処理装置にある。
【0012】
5) 第5の発明は、第2又は3の発明において、前記光触媒被覆成形体の外周に設けられ、前記光触媒被覆成形体に光の波長が172nmの光を照射する光照射手段を少なくとも一つ有することを特徴とする排水処理装置にある。
【0013】
6) 第6の発明は、第4又は5の発明において、前記紫外光照射手段又は前記光照射手段が、前記反応容器内に設けられてなることを特徴とする排水処理装置にある。
【0014】
7) 第7の発明は、第5の発明において、前記反応容器の外周に設けられる密閉容器と、該密閉容器内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段とを有し、前記密閉容器内に前記光照射手段を有することを特徴とする排水処理装置にある。
【0015】
8) 第8の発明は、第1乃至7の何れか一つの発明において、前記成形体の他端側が支持板で固定されていることを特徴とする排水処理装置にある。
【0016】
9) 第9の発明は、第1乃至8の何れか一つの発明において、前記成形体が、グラスファイバ、ガラス管、ガラス棒、ガラスキャピラリー管の何れかであることを特徴とする排水処理装置にある。
【0017】
10) 第10の発明は、第1乃至9の何れか一つの発明において、前記光触媒が酸化チタンであることを特徴とする排水処理装置にある。
【0018】
11) 第11の発明は、第1乃至10の何れか一つの発明の排水処理装置を用いて前記排水中の前記有機物を分解処理することを特徴とする排水処理方法にある。
【0019】
更に上述の課題を解決するため、更に下記構成を採用することもできる。
【0020】
12) 即ち、紫外光を照射する場合において、光の波長が250nm以上、260nm以下の光を除去する光除去手段が、前記反応容器内の前記光触媒被覆成形体の外周と前記紫外光照射手段との間に設けられるようにしてもよい。
【0021】
13) 太陽の光を用いる場合において、光を集光する光集光手段と、該光集光手段により集光された光を伝達する光伝達手段と、該光伝達手段により伝達された光を拡散する光拡散手段とからなる集光装置を有するようにしてもよい。
【0022】
14) 前記光触媒被覆成形体が、透明な反応容器内に設けられ、前記反応容器内に酸素を供給する酸素供給部を有し、太陽の光を用いる場合において、光を集光する光集光手段と、該光集光手段により集光された光を分光する分光手段と、該分光手段により分光された光のうち、光の波長が250nm以上、260nm以下の光を除去する光除去手段と、分光された光を拡散する光拡散手段とからなる集光・分光装置を有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、棒状又は筒状に形成された成形体の表面に光触媒層が被覆された光触媒被覆成形体の外壁に沿って貯水部の下端面の流水孔から流れ落ちる排水を薄い液膜として流下させ、隣接する光触媒被覆成形体同士の接触を防止することができる。このため、排水中の有機物を分解除去することができると共に、隣接する光触媒被覆成形体同士が接触し、光触媒の粉末が排水中に混入することを防止することができるため、光触媒の粉末を取り除くための後処理を行うことなく、排水中の有機物の分解性能を高く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る第一の排水処理装置の構成を簡略に示す図である。
【図2】図2は、TiO2コーティンググラスファイバの外観を示す斜視図である。
【図3】図3は、TiO2コーティンググラスファイバの断面図である。
【図4】図4は、TiO2コーティンググラスファイバと貯水槽との連結部分を簡略に示す図である。
【図5】図5は、TiO2コーティンググラスファイバ表面を排水が流れる状態を示す図である。
【図6】図6は、TiO2コーティンググラスファイバの配置の構成を示す図である。
【図7】図7は、TiO2コーティンググラスファイバの配置の他の構成を示す図である。
【図8】図8は、排水処理装置の他の構成を簡略に示す図である。
【図9】図9は、本発明の実施例2に係る第二の排水処理装置の構成を簡略に示す図である。
【図10】図10は、本発明の実施例3に係る第三の排水処理装置の構成を簡略に示す図である。
【図11】図11は、本発明の実施例4に係る第四の排水処理装置の構成を簡略に示す図である。
【図12】図12は、本発明の実施例5に係る第五の排水処理装置の構成を簡略に示す図である。
【図13】図13は、本発明の実施例6に係る第六の排水処理装置の構成を簡略に示す図である。
【図14】図14は、本発明の実施例7に係る第七の排水処理装置の構成を簡略に示す図である。
【図15】図15は、本発明の実施例8に係る第八の排水処理装置の構成を簡略に示す図である。
【図16】図16は、本発明の実施例9に係る第九の排水処理装置の構成を簡略に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0026】
本発明の実施例1に係る第一の排水処理装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る第一の排水処理装置の概略図であり、図2は、TiO2コーティンググラスファイバの外観を示す斜視図であり、図3は、TiO2コーティンググラスファイバの断面図である。
図1〜図3に示すように、本実施例に係る第一の排水処理装置10Aは、排水11中の有機物12を分解処理する排水処理装置であって、排水11を貯留する貯水槽(貯水部)13と、この貯水槽13の下端面13a側に垂下して複数設けられ、グラスファイバ(担持体)14の表面に酸化チタン(TiO2)からなるTiO2層15を被覆したTiO2被覆グラスファイバ(TiO2コーティンググラスファイバ)16と、このTiO2コーティンググラスファイバ16により排水11中の有機物12が分解された処理水17を溜める受水部18と、を有するものである。
【0027】
貯水槽13には、例えば工場等から排出される排水11が排水供給管19を介して送給され、貯留される。貯水槽13に送給される排水11の供給量は、調節弁V11により調節される。また、貯水槽13に送給される排水11は、例えば工場等から排出される排水等であるため、固形物や油等の光触媒を劣化させる物質等が含有されている。そのため、工場等から排出される排水中に含有されている光触媒を劣化させる原因となる物質等は、予め沈殿槽あるいはろ過装置等を用いて除去し、上記物質等の除去された排水11が貯水槽13に送給される。
【0028】
貯水槽13の下端面13aには、複数のTiO2コーティンググラスファイバ16が垂下して設けられ、簾状に形成されている。TiO2コーティンググラスファイバ16は、光透過性を有する線状のグラスファイバ14の外壁にTiO2が積層されて形成されるTiO2層15を薄膜としてコーティングしたものである。グラスファイバ14は、図2、3に示すように、円柱状に形成され、グラスファイバ14の外壁の表面にTiO2層15が形成されている。
なお、本発明におけるグラスファイバは、ガラスを融解、牽引して繊維状にしたものである。また、グラスファイバには、プラスチックにガラス繊維を混合して固めることで得られるガラス繊維強化プラスチックも含む。プラスチック単体では得られない高強度、高靭性を持つ軽量な材料とすることができる。
【0029】
また、光触媒として使用する材料としてTiO2を用いるのが好ましい。また、TiO2を用いる場合、触媒性能に優れたアナターゼ型の結晶構造を有するTiO2を用いるのが特に好ましい。また、本実施例に係る第一の排水処理装置10Aにおいては、光触媒の材料としてTiO2を用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、酸化亜鉛(ZnO)、硫化カドミウム(CdS)、酸化鉄なども用いることができる。
【0030】
また、本実施例に係る第一の排水処理装置10Aにおいては、TiO2をコーティングする成形体として、グラスファイバ14が用いられている。グラスファイバ14は、光の透過性に優れた石英(SiO2)により形成されている。また、成形体は、TiO2など光触媒として用いられる材料をコーティングするものであるため、光の透過性に優れた材料であることが好ましいが、本発明はこれに限定されるものではなく、TiO2などの光触媒を被覆することが可能な成形体であれば特に限定されるものでない。
【0031】
TiO2コーティンググラスファイバ16の作製方法としては、例えばグラスファイバ14をTiO2の原料となる溶液に浸漬し、引上げた後、熱処理等を行なうことで、TiO2コーティンググラスファイバ16を作製する方法などがある。
【0032】
図4は、TiO2コーティンググラスファイバと貯水槽との連結部分を示す図であり、図5は、TiO2コーティンググラスファイバ表面を排水が流れる状態を示す図である。図4に示すように、各々のTiO2コーティンググラスファイバ16は、貯水槽13の下端面13aに連結されている。また、貯水槽13の下端面13aは、各々のTiO2コーティンググラスファイバ16との連結部分の周囲に、TiO2コーティンググラスファイバ16の外周に沿って形成されたリング状の流水孔21がTiO2コーティンググラスファイバ16に対応するように形成されている。図5に示すように、貯水槽13内の貯留されている排水11は下端面13aの流水孔21から排出され、流水孔21から排出される排水11はTiO2コーティンググラスファイバ16の外壁を伝搬して流れる。即ち、排水11はTiO2コーティンググラスファイバ16の外壁に沿って薄い液膜20となって流下していく。
【0033】
TiO2コーティンググラスファイバ16の貯水槽13への固定方法は、これに限定されるものではなく、例えば貯水槽13の上部側で固定し、貯水槽13の下端面13aにはTiO2コーティンググラスファイバ16の外周より広い孔を設け、TiO2コーティンググラスファイバ16が貯水槽13の下端面13aを貫通するようにしてよい。これにより、下端面13aに形成した孔とTiO2コーティンググラスファイバ16との隙間から排水11が排出され、TiO2コーティンググラスファイバ16の外壁に沿って流下するようにしてもよい。
【0034】
また、排水処理装置10Aの外部からは太陽の光22が照射されている。TiO2に光22が照射されることで、空気に由来する酸素(O2)と排水11に由来する水(H2O)とが、TiO2により下記式のように反応して酸化剤を発生させ、有機物12を酸化分解する。
2 → O2- ・・・(1)
2O → OH- ・・・(2)
【0035】
また、TiO2コーティンググラスファイバ16のTiO2層15の表面には排水11が薄い液膜20となって流下している。このため、光22の減衰は最小限に抑えることができ、TiO2層15に多量の光22を照射することができる。
【0036】
複数のTiO2コーティンググラスファイバ16は、TiO2コーティンググラスファイバ16同士が接触しないように配列している。例えば、図6に示すように、貯水槽13の下端面13aに等間隔で四方に配列してもよい。また、図7に示すように、TiO2コーティンググラスファイバ16を貯水槽13の下端面13aに六方格子状に配列してもよい。各々のTiO2コーティンググラスファイバ16同士が互いに接触しないように下端面13aに配置されているため、TiO2コーティンググラスファイバ16同士が互いに接触してTiO2層15からTiO2粉末が発生することを防止することができる。複数のTiO2コーティンググラスファイバ16は、TiO2コーティンググラスファイバ16同士が接触しないように配列すればよいため、図6、7に示すように規則的に配列する必要はない。
【0037】
よって、複数のTiO2コーティンググラスファイバ16を貯水槽13の下端面13aに垂下して設け、互いに接触しないように配置しつつ、TiO2コーティンググラスファイバ16に光22を照射することで、貯水槽13からTiO2コーティンググラスファイバ16の外壁に沿って流下してくる排水11中の有機物12を効率良く分解することができる。
【0038】
また、TiO2コーティンググラスファイバ16同士は互いに接触することがないため、表面にコーティングされたTiO2層15の耐久性を高く維持することができると共に、処理水17にTiO2等の不純物の混入を防止することができる。よって処理水17は特別な後処理を必要とすることなく処理水17の廃棄等の処理を行うことができる。
【0039】
また、複数のTiO2コーティンググラスファイバ16を貯水槽13の下端面13aに垂下して設けるだけであり、光を発生させるための特別な装置等を必要とせず、メンテナンスの必要も少ないため、設備に要する運転費用を低くすることができると共に、装置の操作を簡単に行なうことができる。また、TiO2は太陽光などの光22を用いるため、環境に配慮しつつ排水11中の有機物12を除去することができる。
【0040】
更に、TiO2の光触媒効果によってTiO2コーティンググラスファイバ16の表面には微生物や水垢等が付着することがないうえ、TiO2の光触媒性能の劣化はないため、装置の維持、管理などを容易に行なうことができる。
【0041】
また、受水部18にはTiO2コーティンググラスファイバ16の壁面に沿って排水11が流下し、排水11中の有機物12が分解された処理水17が貯留される。受水部18内に貯留されている処理水17は排出管23を介して外部へ排出される。受水部18内の処理水17は排出管23に設けた調節弁V12により外部への排出量が調整される。処理水17にはTiO2の粉末等の不純物等は含まれていないため、こうした不純物を除去するための後処理を行なうことなく外部に排出することができる。
【0042】
また、本実施例に係る第一の排水処理装置10Aにおいては、グラスファイバ14の軸方向から見たときの断面形状を円形としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、三角形状、四角形状など多角形状としてもよい。
【0043】
また、本実施例に係る第一の排水処理装置10Aにおいては、グラスファイバ14は円柱状のものを用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、グラスファイバ14をガラス管、ガラスキャピラリーなど円筒状のチューブ構造からなるものを用いるようにしてもよい。このとき、チューブ構造からなる成形体の内径は、TiO2層15を形成することができる大きさとすると共に、チューブ構造からなる成形体の内部を流れる排水11の流量、チューブ構造からなる成形体の大きさ、設置する数等に応じて適宜調整する。また、成形体の内壁側のTiO2層にも触媒機能を発揮できるようにするため、成形体の外壁側のTiO2層15の膜厚は光が通過可能となる膜厚となるように調整する。このようなチューブ構造からなる成形体を用いることで、内壁側にもTiO2層15を形成することができるため、更に効率良く排水11中の有機物12を分解除去することができる。
【0044】
また、グラスファイバ14は円柱状、円筒状の他に螺旋状に形成してもよい。グラスファイバ14を螺旋状に形成することで、グラスファイバ14の表面積を増大させることができるため、コーティングできるTiO2の量を増大させることができる。このため、排水11中の有機物12の分解性能を向上させることができる。
【0045】
また、貯水槽13の下端面13aに垂下して設けられるTiO2コーティンググラスファイバ16の数、外径、長さは、TiO2コーティンググラスファイバ16の表面に沿って液膜20を形成しながら排水11が流れるようにできればよく、排水11の流量、排水11中に含まれる有機物12の濃度に応じて適宜変更可能なものである。
【0046】
また、流水孔21は、TiO2コーティンググラスファイバ16の外周より広めのリング状に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、貯水槽13の下端面13aにTiO2コーティンググラスファイバ16の外周に沿うように複数の孔を設けるようにしてもよい。
【0047】
また、貯水槽13の下端面13aに垂下して設けられるTiO2コーティンググラスファイバ16の数、外径、長さは、TiO2コーティンググラスファイバ16の表面に沿って排水11が流れるようにできればよく、排水11の流量、排水11中に含まれる有機物12の濃度に応じて適宜変更可能なものである。
【0048】
また、排出管23には、処理水17を抜出して貯水槽13に循環させる循環通路を設けるようにしてもよい。前記循環通路により処理水17を抜出して貯水槽13に循環させることで、TiO2コーティンググラスファイバ16により、排水11中の有機物12を分解処理することができる。このため、処理水17中に有機物12等が残っている場合には、前記循環通路から処理水17を抜出し、TiO2コーティンググラスファイバ16により、再度、有機物12を分解することで、有機物12が更に除去された処理水17として排出することができる。
【0049】
また、TiO2コーティンググラスファイバ16は、貯水槽13の下端面13aにのみ連結するようにしているが、TiO2コーティンググラスファイバ16の固定方法はこれに限定されるものではなく、例えば、図8に示すように、TiO2コーティンググラスファイバ16の下端側に支持板24を設け、TiO2コーティンググラスファイバ16の両端を固定するようにしてもよい。TiO2コーティンググラスファイバ16の両端を固定することで、TiO2コーティンググラスファイバ16の外面を流下してくる排水11によりTiO2コーティンググラスファイバ16が揺れて隣接するTiO2コーティンググラスファイバ16同士が接触するのを防止することができる。
【0050】
また、本実施例に係る第一の排水処理装置10Aにおいては、排水11を貯水槽13に直接貯留するようにしているが、貯水槽13に送給される排水11に予め過酸化水素(H22)を供給するようにしてもよい。また、貯水槽13内に貯留されている排水11に予め過酸化水素(H22)を供給するようにしてもよい。排水11に予めH22を混合しておくことで、排水11中の酸化剤を増加させることができるため、排水11中の有機物12の分解を更に促進することができる。
【0051】
このように、本実施例に係る第一の排水処理装置10Aによれば、TiO2コーティンググラスファイバ16の外壁に沿って貯水槽13から供給される排水11が液膜20を形成しながら流下させ、TiO2コーティンググラスファイバ16同士の接触を防止しているため、隣接するTiO2コーティンググラスファイバ16が接触し、TiO2の粉末が排水11中に混入することを防止することができるため、TiO2の粉末を取り除くための後処理を行うことなく、排水11中の有機物12の分解性能を高く維持することができる。
【0052】
また、本実施例に係る第一の排水処理装置10Aにおいては、工場等から排出される排水を対象として説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、有機物濃度が比較的低い家庭用排水等にも用いることができる。
【実施例2】
【0053】
本発明の実施例2に係る第二の排水処理装置について、図面を参照して説明する。
図9は、本発明の実施例2に係る第二の排水処理装置の構成を簡略に示す図である。なお、実施例1と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図9に示すように、本実施例に係る排水処理装置10Bは、図1に示す実施例1に係る第一の排水処理装置10Aに、太陽等からの光22を集光する集光装置31を有するものである。集光装置31は、光22を集光する一対の反射板(光集光手段)32−1、32−2と、一対の反射板32−1、32−2により集光された光を伝達する光ファイバー(光伝達手段)33と、光ファイバー33により伝達された光22を拡散する一対の拡散板(光拡散手段)34−1、34−2とからなる。
【0054】
一対の反射板32−1、32−2は、太陽の光22が照射される方向に湾曲した放物曲面を有する板で形成されている。反射板32−1に入射した光22は反射板32−1によって反射板32−2の曲面上で一点又はその周辺に集光され、反射板32−1で反射された光22を光ファイバー33の一端側に反射する。一対の反射板32−1、32−2により集光した光22は、光ファイバー33を介してTiO2コーティンググラスファイバ16の近傍まで伝達される。光ファイバー33の他端側と拡散板34−1とは連結又は近接されており、拡散板34−1と拡散板34−2とは対向するように一対設けられている。光ファイバー33により伝達された光22は拡散板34−1から拡散板34−2に向けて放射される。拡散板34−1から放射された光22は拡散板34−2で拡散板34−1に向けて反射され、拡散板34−1において再度反射された光22は、更に広角に照射される。この拡散板34−1で反射された光22は、TiO2コーティンググラスファイバ16の全体に照射される。
【0055】
よって、本実施例に係る第二の排水処理装置10Bの集光装置31を用いることにより、太陽の傾きや影の影響を受けることなく、日中安定して光22をTiO2コーティンググラスファイバ16に照射することができる。また、TiO2コーティンググラスファイバ16の回りに設置する集光装置31の数を適宜変更することにより、TiO2コーティンググラスファイバ16に照射する光量を調節することができる。
【0056】
また、太陽光などからの光22はその他の装置等に吸収されることはないため、照射される光22を低減することなく効率良く利用することができる。
【0057】
また、本実施例に係る排水処理装置においては、装置全体を反射率の高い反射鏡などで囲み、光22を集光するようにしてもよい。一対の反射板32−1、32−2、一対の拡散板34−1、34−2の回りを反射率の高い反射鏡などで囲むことにより、光22の集光効率を向上させ、外部の光22を更に効率良く利用することができる。
【実施例3】
【0058】
本発明の実施例3に係る第三の排水処理装置について、図10を参照して説明する。
図10は、本発明の実施例3に係る第三の排水処理装置の構成を簡略に示す図である。なお、実施例1、2と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図10に示すように、本実施例に係る第三の排水処理装置10Cは、図1に示す実施例1に係る第一の排水処理装置10AのTiO2コーティンググラスファイバ16の外周にTiO2コーティンググラスファイバ16に紫外光を照射する紫外線ランプ(紫外光照射手段)35を複数設けてなるものである。また、TiO2コーティンググラスファイバ16および紫外線ランプ35は透明な反応容器36内に設けられている。
【0059】
TiO2コーティンググラスファイバ16にコーティングされたTiO2層15に紫外線ランプ35から紫外光を照射した場合でも、太陽の光を照射した場合と同様に、空気に由来する酸素(O2)と排水11に由来する水(H2O)から酸化剤が発生し、有機物12を酸化分解する。
【0060】
TiO2を活性化させるためには380nmより波長が短い紫外光でなければならいので、太陽光22中の4%程度の光しか利用できない。よって、太陽光22を使用するよりも、他の紫外光源を使用する方がより多くの酸化剤を発生させることができる。また、太陽の光22に依存しないため、昼夜問わず使用することができる。さらに、貯水槽13から流下する排水11により反応容器36には自然対流が発生するため、紫外線ランプ35から照射された紫外光の照射部分の付近で発生したオゾンは、反応容器36内を循環し、内部のTiO2コーティンググラスファイバ16にも作用することができる。
【0061】
よって、光源として紫外線ランプ35を使用し、TiO2コーティンググラスファイバ16に紫外光を照射することで、TiO2の触媒効率を向上させることができるため、有機物12の分解能力を更に向上させ、十分な排水11の処理効果を得ることができる。このため、昼夜を問うことなく排水11中の有機物12の濃度が高い場合であっても有機物12を効率良く分解除去し、処理水17として排出することができる。
【0062】
また、本実施例に係る第三の排水処理装置10Cにおいては、紫外線ランプ35を反応容器36内に設けているが、紫外線ランプ35を反応容器36の外部に設けるようにしてもよい。
【実施例4】
【0063】
本発明の実施例4に係る第四の排水処理装置について、図11を参照して説明する。
図11は、本発明の実施例4に係る第四の排水処理装置の構成を簡略に示す図である。なお、実施例1乃至実施例3と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図11に示すように、本実施例に係る第四の排水処理装置10Dは、図1に示す実施例1に係る第一の排水処理装置10AのTiO2コーティンググラスファイバ16の外周に透明な反応容器36を設け、反応容器36内に酸素(O2)37を供給する酸素供給部38を有するものである。また、反応容器36内に供給される酸素37の供給量は、調節弁V13により調節される。
【0064】
酸素供給部38から供給された酸素37は太陽の光22に含まれる185nmの波長の光を吸収すると、下記式のようにオゾン(O3)となる。
2 +O → O3 ・・・(3)
【0065】
また、TiO2コーティンググラスファイバ16にコーティングされたTiO2層15に太陽の光22を照射すると、185nmの波長の光を受けて酸素から生成されたオゾンは、TiO2の表面において下記式のように反応して酸化剤を生成し、有機物12を酸化分解する。
3 → O・+O2- ・・・(4)
【0066】
また、従来よりTiO2などの光触媒とオゾンを併用して使用する方法も提案されているが、オゾンを発生させるオゾン発生装置を用いてオゾンを生成しても低効率であるうえ、コストが高く、設置スペースが必要である。これに対し、本実施例に係る第四の排水処理装置10Dによれば、反応容器36内に存在する酸素に対して、TiO2を機能させるために使用する光22を照射することでオゾンを生成すると共に、オゾンに変化しなかった酸素もTiO2により有機物12を分解する酸化剤に変化させているため、照射される光と酸素37とを無駄なく使用することができる。さらに、貯水槽13から流下する排水11により反応容器36には自然対流が発生するため、光22が照射されることで発生したオゾンは、反応容器36内を循環し、内部のTiO2コーティンググラスファイバ16にも作用することができる。
【0067】
よって、反応容器36内に供給した酸素37により生成されたオゾンがTiO2層15の表面で分解することで、排水11に接触する酸化剤を増加させ、有機物12の酸化分解を促進することができるため、有機物12の分解効率を更に向上させ、十分な排水11の処理効果を得ることができる。また、オゾンに変化しなかった酸素もTiO2層15のTiO2により酸化剤を生成するため、有機物12の分解に使用することができる。更に、オゾンを発生させるための装置を用いることなく使用することができるため、コストを更に低く抑えることができる。
【0068】
また、貯水槽13から流下する排水11により反応容器36内には自然対流が発生するため、反応容器36内に供給された酸素37は、反応容器36内を循環し、反応容器36内に供給された酸素37に起因して発生するCO2などのガス40はガス排出管39を介して反応容器36の外に排出される。また、反応容器36内の上部に攪拌機を設け、反応容器36内に供給される酸素37を強制的に循環させ、ガス40をガス排出管39から排出するようにしてもよい。また、ガス排出管39には調節弁V14を設けており、ガス40の排出量は調節弁V14によって調節される。
【実施例5】
【0069】
本発明の実施例5に係る第五の排水処理装置について、図12を参照して説明する。
図12は、本発明の実施例5に係る第五の排水処理装置の構成を簡略に示す図である。なお、実施例1乃至実施例4と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図12に示すように、本実施例に係る第五の排水処理装置10Eは、図11に示す実施例4に係る排水処理装置10Dに、太陽等からの光22aを集光し、分光する集光・分光装置41を有するものである。集光・分光装置41は、光22aを集光する一対の反射板(光集光手段)32−1、32−2と、一対の反射板32−1、32−2により集光された光22aを分光する分光器(分光手段)42と、分光器42により分光された光22bのうち、光の波長が254nm前後の光を除去する光学フィルタ(光除去手段)43と、分光された光22cを拡散する一対の拡散板(光拡散手段)44−1、44−2とからなる。
なお、光学フィルタとしては、シグマ光機株式会社、他多数社において作成されるノッチフィルタやバンドパスフィルタ等、目的とする波長の光以外の光を透過させるものを使用することができる。
【0070】
まず、集光・分光装置41では、一対の反射板32−1、32−2は、上述のように、太陽の光22aが照射される方向に湾曲した放物曲面を有する板で形成されている。反射板32−1に入射した光22aは反射板32−1によって反射板32−2の曲面上で一点又はその周辺に集光され、反射板32−1で反射された光22aを反射板32−1に設けてある隙間32aを通過させて分光器42に向けて反射する。
【0071】
分光器42によって赤外領域以外の波長の光は、赤外領域の波長の光と分光され、光22bとして凸レンズ45の方向に導く。また、赤外領域の波長の光は光22bの進行方向とは異なる方向に反射させる。なお、凸レンズ45は、フッ化カルシウムやアルミナ等、紫外光を透過させる物質で作成されたものが用いられる。
【0072】
また、酸素は、特に、185nm前後の光を吸収し、オゾンを生成するが、オゾンは254nm前後の波長の光を吸収することで、下記式のように活性酸素(O・)に分解される。そのため、分光器42により分光された赤外領域以外の波長の光から予め波長が254nm前後の光を除去しておく必要がある。
3 → O・+O2- ・・・(5)
【0073】
分光器42によって分光された光22bは、凸レンズ45により集光される。凸レンズ45を通過した光22bのうち、波長が254nm前後の光は、光学フィルタ43により除去される。光学フィルタ43により波長が254nm前後の光が除去された光は、光22cとして光学フィルタ43を通過する。拡散板44−1と拡散板44−2とは対向するように一対設けられている。光学フィルタ43を通過した光22cは拡散板44−1を通過して拡散板44−2で拡散板44−1に向けて反射される。拡散板44−2で拡散板44−1に向けて反射された光22cは、拡散板44−1において再度反射され、更に広角に照射される。この拡散板44−1で反射された光22cは、TiO2コーティンググラスファイバ16の全体に照射される。
【0074】
波長が185nm前後の光を吸収して酸素から生成されたオゾンは波長が254nm前後の光を吸収し、活性酸素(O・)に分解されるが、分光器42により赤外領域の波長の光は除去し、光学フィルタ43により光22bからオゾンを分解する254nmの波長の光を予め除去しておくことにより、オゾンの大部分をTiO2の表面で分解させ、TiO2の表面以外でオゾンが分解する割合を低下させることができる。
【0075】
このため、オゾンの分解により生成されるO・及びO2-などの酸化剤の大部分はTiO2コーティンググラスファイバ16の表面で発生させることができるため、排水11に接触する酸化剤を増加させ、有機物12の酸化分解を促進することができ、排水11中の有機物12を効率的に分解することができ、十分な排水11の処理効果を得ることができる。
【実施例6】
【0076】
本発明の実施例6に係る第六の排水処理装置について、図13を参照して説明する。
図13は、本発明の実施例6に係る第六の排水処理装置を示す概念図である。なお、実施例1乃至実施例5と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図13に示すように、本実施例に係る第六の排水処理装置10Fは、図11に示す実施例4に係る第四の排水処理装置10DのTiO2コーティンググラスファイバ16の外周に、TiO2コーティンググラスファイバ16に向けて紫外光を照射する紫外線ランプ(紫外光照射手段)35を複数設けてなるものである。また、TiO2コーティンググラスファイバ16および紫外線ランプ35は透明な反応容器36内に設けられている。
【0077】
TiO2被覆グラスファイバ16にコーティングされたTiO2層15に紫外線ランプ35により紫外光を照射することで、上述のように、空気に由来する酸素(O2)と排水11に由来する水(H2O)から酸化剤が発生し、有機物12を酸化分解することができる。この時、紫外線に含まれる波長が185nm前後の光によって酸素37からオゾンを生成することができるが、紫外光を用いた場合の方が太陽の光22を用いた場合よりもTiO2の活性を高くすることができるため、より多くの酸化剤を発生させることができる。
【0078】
よって、光源として紫外線ランプ35を用いることで、反応容器36内に供給した酸素37からより多くのオゾンを生成することができるため、生成されたオゾンがTiO2の表面で分解し、生成される酸化剤の量を増大させることができる。このため、有機物12の酸化分解を促進し、有機物12の分解能力を更に向上させ、十分な排水11の処理効果を得ることができる。
【0079】
また、上述の通り、貯水槽13から流下する排水11により反応容器36内には自然対流が発生し、反応容器36内に供給された酸素37は反応容器36内を循環しているため、紫外線ランプ35の近傍にオゾンが集中するのを防ぎ、反応容器36内にオゾンを分散させ、各々のTiO2コーティンググラスファイバ16にオゾンを供給することができる。また、反応容器36内の上部に攪拌機を設け、反応容器36内に発生したオゾンを強制的に循環させるようにしてもよい。
【実施例7】
【0080】
本発明の実施例7に係る第七の排水処理装置について、図14を参照して説明する。
図14は、本発明の実施例7に係る第七の排水処理装置を示す概念図である。なお、実施例1乃至実施例6と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図14に示すように、本実施例に係る第七の排水処理装置10Gは、図13に示す実施例6に係る第六の排水処理装置10Fの反応容器36内のTiO2コーティンググラスファイバ16と紫外線ランプ35との間に、光学フィルタ(光除去手段)43を設けてなるものである。この光学フィルタ43は、上述の通り、波長が254nm前後の光を選択的に除去するものである。
【0081】
TiO2コーティンググラスファイバ16と紫外線ランプ35との間に設けた光学フィルタ43により波長が254nm前後の光を予め除去しておくことで、TiO2コーティンググラスファイバ16の表面以外でオゾンが分解する割合を低下させ、オゾンの分解により発生するO・及びO2-などの酸化剤の大部分をTiO2コーティンググラスファイバ16の表面で発生させることができる。このため、排水11に接触する酸化剤を増加させ、有機物12の酸化分解を促進することができる。
【0082】
よって、紫外線ランプ35と光学フィルタ43を併用することで、紫外線ランプ35から紫外光を照射して酸素供給部38より供給される酸素37からオゾンを効率良く生成することができると共に、光学フィルタ43により生成されたオゾンが分解されるのを防止し、生成されたオゾンをTiO2の表面で分解させることができるため、有機物12の分解効率を更に向上させ、排水11中の有機物12を更に効率良く分解することができ、十分な排水11の処理効果を得ることができる。
【0083】
また、上述の通り、貯水槽13から流下する排水11により反応容器36内には自然対流が発生し、反応容器36内に供給された酸素37は反応容器36内を循環しているため、紫外線ランプ35の近傍にオゾンが集中するのを防ぎ、反応容器36内にオゾンを分散させ、各々のTiO2コーティンググラスファイバ16にオゾンを供給することができる。また、反応容器36内の上部に攪拌機を設け、反応容器36内に発生したオゾンを強制的に循環させるようにしてもよい。
【実施例8】
【0084】
本発明の実施例8に係る第八の排水処理装置について、図15を参照して説明する。
図15は、本発明の実施例8に係る第八の排水処理装置を示す概念図である。なお、実施例1乃至実施例7と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図15に示すように、本実施例に係る第八の排水処理装置10Hは、図13に示す実施例6に係る第六の排水処理装置10Fの紫外線ランプ35に代えて、TiO2コーティンググラスファイバ16の外周にTiO2コーティンググラスファイバ16に向けて波長が172nm前後の光を照射するエキシマランプ(光照射手段)51を複数設けてなるものである。また、反応容器36の外周に密閉容器52を設け、この密閉容器52内にエキシマランプ51を設けている。
【0085】
TiO2にエキシマランプ51から照射される光の波長は172nm前後であり、波長が172nm前後の光の方が、波長が185nm前後の光より酸素からオゾンをより生成し易い。また、オゾンは上述の通り、波長が254nm前後の光によって分解され、酸化剤を生成するが、エキシマランプ51から照射される光には波長が254nm前後の光は含まれていない。そのため、TiO2コーティンググラスファイバ16の表面以外でオゾンが分解される割合が低下し、オゾンが分解することで生成されるO・及びO2-などの酸化剤の大部分はTiO2コーティンググラスファイバ16の表面のTiO2層15で発生させることができるため、排水11中の有機物12を効率的に分解することができる。
【0086】
よって、エキシマランプ51を用いると共に、反応容器36内に酸素(O2)を供給することで、反応容器36内に更に高濃度のオゾンを生成することができる。このため、より多くのオゾンがTiO2と接触し、TiO2の表面で分解することで、排水11に接触する酸化剤を増加させ、有機物12の酸化分解を促進することができる。従って、本発明の実施例8に係る第八の排水処理装置10Hでは、図10に示す実施例3に係る第三の排水処理装置10Cのように紫外線ランプ35から紫外光のみを照射する場合よりも生成されるオゾンの濃度を高くすることができるため、排水11中の有機物12の分解効率を向上させ、十分な排水11の処理効果を得ることができる。
【0087】
また、貯水槽13から流下する排水11により反応容器36内には自然対流が発生し、反応容器36内に供給された酸素37は反応容器36内を循環しているため、紫外線ランプ35を用いた場合と同様に、エキシマランプ51の近傍にオゾンが集中するのを防ぎ、反応容器36内にオゾンを分散させ、各々のTiO2コーティンググラスファイバ16にオゾンを供給することができる。また、反応容器36内の上部に攪拌機を設け、反応容器36内に発生したオゾンを強制的に循環させるようにしてもよい。
【実施例9】
【0088】
本発明の実施例9に係る第九の排水処理装置について、図16を参照して説明する。
図16は、本発明の実施例9に係る第九の排水処理装置を示す概念図である。なお、実施例1乃至8と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図16に示すように、本実施例に係る第九の排水処理装置10Iは、図15に示す実施例8に係る第八の排水処理装置10Hの反応容器36の外周に設けられる密閉容器52と、この密閉容器52内に窒素ガス53を供給する窒素ガス供給部(不活性ガス供給手段)54とを有し、密閉容器52内にエキシマランプ51を設けてなるものである。
【0089】
エキシマランプ51から波長が172nm前後の光を照射することで熱が発生するが、密閉容器52内に窒素ガス55を供給することで、エキシマランプ51を冷却することができる。このため、エキシマランプ51から発生する熱に影響を受けることなく、安定して装置を運転することができる。
【0090】
また、本実施例に係る第九の排水処理装置10Iにおいては、密閉容器52内に供給する不活性ガスとしてN2を用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、Arなど他の不活性ガスを用いるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上のように、本発明に係る排水処理装置は、排水中の有機物を効率的に分解することができるため、二次処理水などに含まれる有機物を分解処理するのに適している。
【符号の説明】
【0092】
10A〜10I 第一〜第九の排水処理装置
11 排水
12 有機物
13 貯水槽
13a 下端面
14 グラスファイバ
15 TiO2
16 TiO2被覆グラスファイバ(TiO2コーティンググラスファイバ)
17 処理水
18 受水部
19 排水供給管
20 液膜
21 孔
22,22a〜22c 光
23 排出管
24 支持板
31 集光装置
32−1、32−2 反射板(光集光手段)
32a 隙間
33 光ファイバー(光伝達手段)
34−1、34−2、44−1、44−2 拡散板(光拡散手段)
35 紫外線(UV)ランプ(紫外光照射手段)
36 反応容器
37 酸素
38 酸素供給部
39 ガス排出管
40 ガス
41 集光・分光装置
42 分光器(分光手段)
43 光学フィルタ(光除去手段)
45 凸レンズ
51 エキシマランプ(光照射手段)
52 密閉容器
53 窒素ガス
54 窒素ガス供給部(不活性ガス供給手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水中の有機物を分解処理する排水処理装置であって、
前記排水を貯留する貯水部と、
前記貯水部の下端面側に垂下して少なくとも一つ設けられ、棒状又は筒状に形成された成形体の表面に光触媒からなる光触媒層を被覆した光触媒被覆成形体と、を有し、
前記貯水部の下端面の流水孔から前記光触媒層の表面を流れ落ちる前記排水中の有機物を光触媒により分解除去することを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記光触媒被覆成形体が、透明な反応容器内に設けられてなることを特徴とする排水処理装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記反応容器内に酸素を供給する酸素供給部を有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記光触媒被覆成形体の外周に設けられ、前記光触媒被覆成形体に紫外光を照射する紫外光照射手段を少なくとも一つ有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項5】
請求項2又は3において、
前記光触媒被覆成形体の外周に設けられ、前記光触媒被覆成形体に光の波長が172nmの光を照射する光照射手段を少なくとも一つ有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項6】
請求項4又は5において、
前記紫外光照射手段又は前記光照射手段が、前記反応容器内に設けられてなることを特徴とする排水処理装置。
【請求項7】
請求項5において、
前記反応容器の外周に設けられる密閉容器と、
該密閉容器内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段とを有し、
前記密閉容器内に前記光照射手段を有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一つにおいて、
前記成形体の他端側が支持板で固定されていることを特徴とする排水処理装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一つにおいて、
前記成形体が、グラスファイバ、ガラス管、ガラス棒、ガラスキャピラリー管の何れかであることを特徴とする排水処理装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一つにおいて、
前記光触媒が酸化チタンであることを特徴とする排水処理装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一つの排水処理装置を用いて前記排水中の前記有機物を分解処理することを特徴とする排水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−279917(P2010−279917A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136457(P2009−136457)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】