説明

排水浄化装置の洗浄方法

【課題】浄化処理槽によって排水を浄化することにより得られた浄化水の有効利用を図ることにより、洗浄作業を容易化できるようにする。
【解決手段】トイレから排出された汚水等の汚泥成分を含有する排水を段階的に浄化する複数の浄化処理室4〜8を備えた浄化処理槽1と、この浄化処理槽1とは別体に形成されるとともに、浄化処理槽1から導出された浄化水を貯留する浄化水貯留槽2とを有する排水浄化装置の洗浄方法であって、上記複数の浄化処理室4〜8の内部に収容された排水及び処理水の導出作業を行った後に、上記浄化水貯留槽2内に貯留された浄化水を、浄化処理槽1の最上流部に位置する最上流浄化処理室4の上部から洗浄水として供給することにより、最上流浄化処理室4の内壁面に付着した汚泥成分等を除去するとともに、最上流浄化処理室4およびその下流側の浄化処理室内に上記浄化水からなる洗浄水を充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレから排出された屎尿水等からなる排水を迅速かつ高度に浄化処理する排水浄化装置の洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、カキ殻を接触材として汚水をばっ気処理する第1ばっ気室と、同第1ばっ気室の溢水を多孔質の人工櫨材に接触させて嫌気分解処理を行う嫌気ろ床室と、同嫌気ろ床室で浄化された汚水を流入してカキ殻を接触材としてばっ気処理する第2ばっ気室と、同第2ばっ気室で浄化された水を流入し活性炭に接触させて脱色・脱臭の高度処理を行う仕上げ処理室からなり、しかも汚水を沈殿分離する沈殿分離室と、同沈殿分離された汚水の液体を流入して接触ばっ気する接触ばっ気室と、同接触ばっ気室で接触ばっ気処理した汚水を蓄えて第1ばっ気室に送り込む沈殿室とを第1ばっ気室に流入する汚水の前処理の室として設けた高度処理浄化槽が知られている。
【特許文献1】特許第2756657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に示されるように、沈殿分離室、接触ばっ気室、第1ばっ気室、嫌気ろ床室、第2ばっ気室および仕上げ処理室が設けられた高度処理浄化槽からなる排水浄化装置によれば、トイレから排出された汚水等からなる排水を段階的に処理することにより、この排水を迅速かつ高度に浄化することができる。しかし、上記排水浄化装置を定期点検する際、またはイベント開催時等において臨時的に設置された排水浄化装置を移転する際等に、上記沈殿分離室および接触ばっ気室等からなる各浄化処理室内の排水を順次導出した後、それぞれ個別に洗浄する必要があるため、その作業が極めて煩雑であるとともに、洗浄作業に要する時間が長くなることが避けられず、上記浄化水の有効利用を図ることが困難であるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、浄化処理槽によって排水を浄化することにより得られた浄化水の有効利用を図ることにより、上記浄化水貯留槽の洗浄作業を容易化できる等の利点を有する排水浄化装置の洗浄方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、トイレから排出された汚水等の汚泥成分を含有する排水を段階的に浄化する複数の浄化処理室を備えた浄化処理槽と、この浄化処理槽とは別体に形成されるとともに、浄化処理槽から導出された浄化水を貯留する浄化水貯留槽とを有する排水浄化装置の洗浄方法であって、上記複数の浄化処理室の内部に収容された排水及び処理水の導出作業を行った後に、上記浄化水貯留槽内に貯留された浄化水を、浄化処理槽の最上流部に位置する最上流浄化処理室の上部から洗浄水として供給することにより、最上流浄化処理室の内壁面に付着した汚泥成分等を除去するとともに、最上流浄化処理室およびその下流側の浄化処理室内に上記浄化水からなる洗浄水を充填するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、上記浄化処理槽によって排水を浄化することにより得られた浄化水を浄化水貯留槽に貯留するとともに、上記浄化水貯留槽を構成する複数の浄化処理室の内部に収容された排水及び処理水の導出作業を行った後に、上記浄化水貯留槽内に貯留された浄化水を、浄化処理槽の最上流部に位置する最上流浄化処理室の上部から洗浄水として供給し、最上流浄化処理室の内壁面に付着した汚泥成分等を除去するとともに、最上流浄化処理室およびその下流側の浄化処理室内に上記浄化水からなる洗浄水を充填するように構成したものであり、これにより上記浄化水貯留槽の洗浄作業を容易化できる等の利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1および図2は、排水浄化装置の具体的構成を示し、この排水浄化装置は、鋼板材、アルミニウム合金材、ステンレス鋼材、プラスチック材、PC(プレストレスコンクリート)材、鉄筋コンクリート材、FRP(繊維強化プラスチック)材またはプラスチック材等からなる浄化処理槽1と、この浄化処理槽1から導出された浄化水を貯留する浄化水貯留槽2と有し、この浄化処理槽1および浄化水貯留槽2が地中に埋設され、あるいは地上に立設された状態で使用されるものである。
【0008】
上記浄化処理槽1は、最上流部に位置する沈殿分離室からなる最上流浄化処理室4と、その下流側に位置する接触ばっ気処理室からなる第1中流浄化処理室5と、その下流側の沈殿室からなる第2中流浄化処理室6と、その下流側の接触濾過室からなる第3中流浄化処理室7と、各浄化処理室4〜8の最下流部に位置する沈殿濾過室からなる最下流浄化処理室8と、この最下流浄化処理室8から導出された処理水を脱色処理して貯留する浄化水貯留室9とを有している。
【0009】
上記最上流浄化処理室(沈殿分離室)4は、図外のトイレから排出管3を介して導出された汚水、または生ゴミをディスポーザにより微粉砕することにより生成された雑排水等の汚泥成分を含有する排水中の紙および粗大異物等の汚泥成分を沈殿させて分離した後に、この分離後の処理水を上記第1中流浄化処理室5にオーバフローさせて導出するとともに、この第1中流浄化処理室5に浮遊物が流失するのをバッフルプレート10により阻止するように構成されている。なお、上記最上流浄化処理室4において沈殿した固形分は、定期的(例えば1年毎)に外部に吸い出されて処理される。
【0010】
上記第1中流浄化処理室5(接触ばっ気室)には、従来周知のプラスチック製接触材11が充填されるとともに、図外のブロアから供給された空気を放出する散気管12が上記プラスチック製接触材11の下方に配設されている。そして、上記最上流浄化処理室4の上部からオーバフローすることにより第1中流浄化処理室5内に導入された処理水が、散気管12から放出された空気によって撹拌されつつ、上記プラスチック製接触材11に付着して生息した微生物により、上記分離水中の汚泥成分が分解処理されるように構成されている。
【0011】
また、上記第1中流浄化処理室5と第2中流浄化処理室6との間には、連通路13が下端部に設けられ、第1中流浄化処理室5内において浄化処理された処理水が上記連通路13を介して第2中流浄化処理室6(沈殿室)内に導入されることにより、沈殿処理されることになる。この第2中流浄化処理室6内において沈殿処理された処理水は、導出管14を介して上記第3中流浄化処理室7内にオーバフローすることにより導入される。
【0012】
上記第3中流浄化処理室(接触濾過室)7内には、メッシュ状の袋体内にカキ、ホタテ貝、ホッキ貝、真珠貝、アサリ、シジミ、はまぐり、アオヤギ、カラス貝、サザエ、ミル貝もしくは貝化石等からなる貝殻、または死滅して白化した珊瑚が収容されてなる貝殻・珊瑚製接触材15が充填されるとともに、その下方にブロアから供給された空気を放出する散気管16が配設されている。
【0013】
上記貝殻は、図3に示すように、炭酸カルシウムを主成分とし、かつリン酸カルシウムや炭酸マグネシウム等の微量成分を含有しており、外面側の殻皮層aと、内面側の真珠層bと、その間の角柱層cとからなっている。そして、図4に示すように、上記貝殻の真珠層bが除去された状態で袋体内に収容されることにより上記接触材15が構成されている。
【0014】
上記貝殻の真珠層bを除去する方法としては、適宜の工具を使用して真珠層bを剥離する方法、海岸の波打ち際に貝殻を1年間程度放置して真珠層bを自然浸食させる方法、塩酸等の薬品を使用して真珠層bを溶解させる方法、または多数の貝殻を撹拌機に撹拌して貝殻同士を接触させることにより真珠層bを剥離させる方法等がある。なお、上記自然浸食もしくは撹拌法により真珠層bを除去する場合には、この真珠層bとともに、上記殻皮層aの一部も除去されることになる。
【0015】
そして、上記第2中流浄化処理室6から第3中流浄化処理室7内に導入された処理水は、散気管16から放出された空気によって撹拌されつつ、上記貝殻・珊瑚製接触材15に付着した状態で生息する微生物により、上記処理水中の汚泥成分が分解処理される。また、上記第2中流浄化処理室6の下端部からから第3中流浄化処理室7内にオーバフローして導入された処理水は、散気管16から放出された空気によって撹拌されつつ、上記貝殻・珊瑚製接触材15に付着した状態で生息する微生物により、上記処理水中の汚泥成分がさらに分解処理される。
【0016】
上記第3中流浄化処理室7において浄化処理された処理水は、その下端部から最下流浄化処理室8に導出される。この最下流浄化処理室(沈殿濾過室)8は、多孔質体からなるゼオライトが収容された濾過体17を有し、上記第3中流浄化処理室7から導出された処理水中の不純物を沈殿させて汚水と上澄み水とに分離するとともに、この上澄み水中の微細な不純物を上記濾過体17により濾過して浄化水を生成するように構成されている。上記最下流浄化処理室8において生成された浄化水は、上記浄化水貯留室9内にオーバフローして導出される。
【0017】
また、上記浄化水貯留室9には、図5に示すように、複数の透孔が形成された仕切り板19,20が上下に設置された吸着筒21と、この吸着筒21内の仕切り板19,20間に配設された活性炭収容体22と、浄化水貯留室9内の処理水を吸引して上記活性炭収容体22の下方部に吐出する循環ポンプ23および循環パイプ24を有する循環手段25とが設けられている。上記活性炭収容体22は、布材等からなる袋体内に石炭系の活性炭が充填されることにより構成されている。上記循環手段25により活性炭収容体22の下方部に吐出された処理水が、上記吸着筒21内を通って上記浄化水貯留室9内を循環するとともに、その際に、活性炭収容体22内の石炭系活性炭により色素成分が吸着されて効果的に脱色されるようになっている。
【0018】
上記浄化水貯留室9において脱色処理された浄化水は、図2に示すように、その一部が給水ポンプ26および給水パイプ27を有する給水手段28によってトイレの給水タンク(図示せず)に供給されるとともに、残りが、導出管30を介して上記浄化水貯留槽2に導出されて貯留される。この浄化水貯留槽2は、その容量が最上流浄化処理室4および第1,第2中流浄化処理室5,6の総容量に略等しい値に設定されている。
【0019】
また、上記給水パイプ27には、必要に応じて浄化水貯留室9内の浄化水を、上記第1,第3中流浄化処理室5,7および最下流浄化処理室8の上部から各浄化処理室5〜8内に洗浄水として供給することにより、各浄化処理室5〜8の内壁面を洗浄するための洗浄パイプ31〜33が連設されている。
【0020】
上記最上流浄化処理室4と、その下流側に位置する第1,第3中流浄化処理室5,7と、最下流浄化処理室8とは、図2および図6に示すように、浄化処理槽1の側面下部に設置された還流通路35を介して互いに接続されている。そして、上記還流通路35には、この還流通路35を開閉する第1,第2開閉弁36,37が設けられ、上記還流通路35の上流側に位置する第1開閉弁36を開放することにより、上記最上流浄化処理室4と、第1中流浄化処理室5および第2中流浄化処理室6とが連通状態となるように構成されている。また、上記第1開閉弁36を開放状態に維持しつつ、その下流側の第2開閉弁37を開放状態とすることにより、上記最上流浄化処理室4と、第3中流浄化処理室7および最下流浄化処理室8とが連通状態となるように構成されている。
【0021】
上記最上流浄化処理室4、第1〜第3中流浄化処理室5〜7、最下流浄化処理室8および浄化水貯留室9の上部には、清掃または点検用の開口部40〜43がそれぞれ形成されている。上記最上流浄化処理室4に形成された開口部40は、排水吸引手段の吸引ホースが挿入される吸引口として利用されるものである。また、通常時には、上記開口部40〜43を開閉可能に閉止する閉止蓋(図示せず)が設置されている。さらに、上記排水浄化装置には、浄化水貯留槽2に貯留された浄化水を、洗浄水として最上流浄化処理室4内に供給することにより、この最上流浄化処理室4の内壁面を洗浄するための給水ポンプ45および給水パイプ46を有する浄化水供給手段47が設けられている。
【0022】
上記構成において、図外のトイレから排出管3を介して最上流浄化処理室(沈殿分離室)4内に導入された排水等は、この最上流浄化処理室4内において紙および粗大異物等の汚泥成分が沈殿分離された後、第1中流処理室(接触ばっ気室)5内に導入される。この第1中流処理室5内に導入された処理水は、その汚泥成分が微生物により分解処理されるとともに、第2中流処理室(沈殿室)に導入されて沈殿処理された後、上記第3中流浄化処理室(接触濾過室)7および最下流浄化処理室(沈殿濾過室)8を経て浄化水貯留室9内に導入されて貯留され、さらに上記浄化水貯留槽2に導出されて貯留される。
【0023】
そして、野外演奏会等のイベント開催時または災害の発生時等に、所定個所に一時的に設置された上記排水浄化装置を撤去する際、または公園等において定常的に設置された公衆トイレ用の排水浄化装置を定期点検する際または補修する際等には、バキュームカー等に設けられた排水吸引手段の吸引ホースを、最上流浄化処理室4の開口部40に挿入し、その内部の排水を吸引して外部に導出する。また、上記還流通路35に設けられた第1,第2開閉弁(開閉手段)36,37を順次開放した状態で、最上流浄化処理室4内に導入された処理水を吸引して外部に導出する作業を継続することにより、第1〜第3中流浄化処理室5〜7および最下流浄化処理室8内から上記還流通路35を介して最上流浄化処理室4内に還流された処理水を順次外部に導出しつつ、上記浄化水供給手段47から供給される洗浄水により最上流浄化処理室4の内壁面に付着した汚泥成分等を除去するとともに、最上流浄化処理室4および第1,第2中流浄化処理室5,6内に上記浄化水からなる洗浄水を充填し、この洗浄水を利用して上記各浄化処理室4〜6の内壁面を洗浄する。
【0024】
このようにして各浄化処理室4〜8の上端部に形成された開口部40〜43に上記吸引ホースを順番に挿入してそれぞれ個別に内部の排水または処理水を外部に導出する等の繁雑な作業を要することなく、各浄化処理室4〜8の内部を迅速かつ容易に空にした状態で、野外演奏会等のイベント開催時または災害の発生時等に設置された上記排水浄化装置を撤去する作業、または公園等において定常的に設置された公衆トイレ用の排水浄化装置を定期点検する作業および補修する作業等を容易かつ適正に行うことが可能となる。
【0025】
上記のように構成された排水浄化装置は、トイレから排出された排水を段階的に浄化する複数の浄化処理室4〜8および浄化処理された浄化水を貯留する浄化水貯留室9を備えた浄化処理槽1と、この浄化処理槽1とは別体に形成されるとともに、浄化水処理槽1の浄化水貯留室9から導出された浄化水を貯留する浄化水貯留槽2とを備えているため、トイレから排出管3を介して導出された排水中の紙および粗大異物等の汚泥成分を最上流浄化処理室4において沈殿分離室後に、この最上流浄化処理室4から第1〜第3中流浄化処理室5〜7および最下流浄化処理室8に順次導出された処理水中の汚泥成分を微生物の作用等により段階的に浄化した状態で、この浄化水を上記浄化水貯留室9および浄化水貯留槽2内に導出して貯留し、給水手段28によってトイレの給水タンクに供給する等により、有効に利用することが可能となる。
【0026】
そして、上記浄化水貯留槽2の容量を、最上流部に位置する沈殿分離室からなる最上流浄化処理室4、その下流側に位置する接触ばっ気処理槽からなる第1中流浄化処理室5およびその下流側の沈殿室からなる第2中流浄化処理室6の総容量に略等しい値に設定したため、上記のように排水浄化装置を定期点検作業および補修作業を行う際等において、各浄化処理室4〜8の内部に収容された排水および処理水を順次外部に導出した後に、浄化水貯留槽2内の浄化水を最上流浄化処理室4および第1,第2中流浄化処理室5,6内を浄化水で満たして適正に洗浄できるという利点がある。
【0027】
特に、上記実施形態では、上記排水浄化装置の最上流部に位置する最上流浄化処理室4に、排水を吸引するための開口部(吸引口)40を設けるとともに、上記最上流浄化処理室4の下流側に配設された第1〜第3中流浄化処理室5〜7および最下流浄化処理室8内の処理水を最上流浄化処理室内に還流させる還流通路35を有する還流手段と、上記浄化水貯留槽2内に貯留された浄化水を最上流浄化処理室4内に供給する浄化水供給手段47とを設けたため、バキュームカー等に設けられた排水吸引手段の吸引ホースを、最上流浄化処理室4の開口部40に挿入して、その内部の排水を吸引することにより、その内壁面を洗浄することができる。
【0028】
すなわち、上記排水吸引手段により最上流浄化処理室4内に収容された排水を外部に導出した後に、上記還流通路35に設けられた第1,第2開閉弁(開閉手段)36,37を順次開放した状態で、最上流浄化処理室4内に導入された処理水を吸引して外部に導出する作業を継続することにより、第1〜第3中流浄化処理室5〜7および最下流浄化処理室8内から上記還流通路35を介して最上流浄化処理室4内に還流された処理水を順次外部に導出することができる。そして、上記浄化水供給手段47から供給される洗浄水によって最上流浄化処理室4の内壁面に付着した汚泥成分等を除去するとともに、最上流浄化処理室4および第1,第2中流浄化処理室5,6内に上記浄化水からなる洗浄水を充填することができる。したがって、各浄化処理室4〜8の上端部に形成された開口部40〜43に上記吸引ホースを順番に挿入してそれぞれ個別に内部の排水または処理水を外部に導出する等の繁雑な作業を要することなく、各浄化処理室4〜8の内部を迅速かつ容易に空にすることができる。
【0029】
また、上記実施形態では、浄化処理槽1の浄化水貯留室9内に貯留された浄化水を、第1,第3中流浄化処理室5,7および最下流浄化処理室8の上部から洗浄水としてそれぞれ供給する洗浄パイプ31〜33を備えた上記給水手段28からなる浄化水供給手段を設けたため、上記第1〜第3中流浄化処理室5〜7および最下流浄化処理室8内の処理水を最上流浄化処理室4内に還流させて順次外部に導出させる際に、上記各浄化処理室5〜8の内壁面に付着した汚泥成分等を、上記浄化水供給手段から供給される洗浄水により効果的に除去することができるという利点がある。
【0030】
さらに、上記実施形態では、排水浄化装置の第3中流浄化処理室7内に充填される貝殻・珊瑚接触材15として、少なくとも内面側の真珠層bが除去されて多孔質の角柱層cが露出したカキ殻等を使用したため、この貝殻・珊瑚接触材15と、上記第3中流浄化処理室7内に導入された処理水中の汚泥成分を分解処理する微生物との親和性を高めて、これらを好適に繁殖させることができる。したがって、上記多孔質の角柱層cにおいて繁殖した微生物により、処理水中の汚泥成分を効果的に分解処理して排水を効率よく浄化することができる。しかも、上記排水浄化装置の設置当初から、上記微生物の分解処理機能等を発揮させることができるため、上記排水浄化装置により浄化処理された浄化水を外部に放出した場合に、環境汚染が発生するのを効果的に防止することができるとともに、上記浄化水をトイレの洗浄水として利用することにより、水資源の有効利用を図ることができるという利点がある。
【0031】
また、上記第1中流浄化処理室5および第3中流浄化処理室7において排水がばっ気処理されることにより、処理水が酸性化した場合には、上記貝殻・珊瑚から炭酸カルシウム(CaCO)を迅速に溶解させて、上記処理水を中和することができる。すなわち、上記真珠層bが除去された貝殻は、その溶解が進行し易いという特性を有しているため、酸性化した処理水を効果的に中性化できるという利点がある。
【0032】
しかも、上記のように第3中流浄化処理室7において処理水が中性化されるので、太陽虫等の原生動物および腔腸動物を多量に発生、繁殖させることができる。このため、上記処理水中に存在する大腸菌等の細菌を、上記原生動物等に補食させて絶滅させることにより、上記排水浄化処装置から導出される浄化処理水中に細菌が混入するのを効果的に防止することができる。
【0033】
さらに、上記処理水にリン成分が含有されている場合には、下式に示すように、上記炭酸カルシウムから遊離したCaイオンと、処理水中のリンイオン(HPO)とを効果的に反応させることにより、処理水を迅速に中性化してリン酸カルシウム(Ca(OH)(PO)を生成することができる。そして、上記リン酸カルシウム(Ca(OH)(PO)を、浄化水貯留室9に配設された上記活性炭収容体22中の活性炭に吸着させて回収することにより、これを肥料等として使用可能であるという利点がある。
【0034】
5Ca+3HPO → Ca(OH)(PO+3H
なお、上記処理水中のリン酸カルシウム(Ca(OH)(PO)は、その一部が最下流浄化処理室8内において沈殿するとともに濾過体17により吸着され、その残りが上記活性炭吸着室22内において活性炭に吸着されることとなる。上記処理水中に残存する微量のリン成分を除去するためには、上記活性炭吸着室22内に、カキ殻等の貝殻が充填されたリン吸着筒を配設した構造とすることが望ましい。
【0035】
また、上記実施形態では、図5に示すような循環手段25を設け、浄化水貯留室9内の処理水を吸引して上記活性炭収容体22の下方部に吐出することにより、上記浄化水貯留室9内に処理水を循環させるように構成したため、上記処理水中の色素成分を、活性炭収容体22内に収容された石炭系活性炭により効果的に吸着して脱色作用を向上させることができるという利点がある。
【0036】
さらに、上記実施形態では、第3中流浄化処理室7の上流側にプラスチック製接触材11が充填された第1中流浄化処理室5と、この第1中流浄化処理室5において処理された処理水中の不純物等を沈殿させる沈殿室からなる第2中流浄化処理室6を配設し、排水をある程度浄化した状態で、第3中流浄化処理室7に供給するように構成したため、この第3中流浄化処理室7内に配設されたカキ殻等の貝殻が早期に汚損されたり、貝殻が溶解して消失したりするのを効果的に抑制できるという利点がある。
【0037】
また、上記浄化水貯留槽2内に貯留された浄化水を最上流浄化処理室4内に供給する浄化水供給手段47を設けるとともに、上記浄化水貯留室9内に貯留された浄化水を第1,第3中流浄化処理室5,7および最下流浄化処理室8内に洗浄水として供給する洗浄パイプ31〜33を有する給水手段28を設けてなる上記実施形態に代え、浄化水貯留室9内に貯留された浄化水を最上流浄化処理室4内に供給する浄化水供給手段と、上記浄化水貯留槽2内に貯留された浄化水を第1,第3中流浄化処理室5,7および最下流浄化処理室8等内に供給する浄化水供給手段とを設けた構造としてもよい。
【0038】
さらに、上記第1,第3中流浄化処理室5,7内の処理水を最上流浄化処理室4内に還流させる還流通路35を有する還流手段に代え、処理水移送ポンプまたはエアリフト(圧縮間空気を用いた移送手段)を設けることにより、上記処理水を強制的に最上流浄化処理室4内に還流させるようにしてもよい。
【0039】
また、図7に示すように、上記浄化水貯留室9内に貯留された浄化水を吸引する第1吸引パイプ51と、浄化水貯留槽2内に貯留された浄化水を吸引する第2吸引パイプ52と、両吸引パイプ51,52の合流部よりも上流側に配設された給水ポンプ53と、各浄化処理室4〜8内に洗浄水を供給する洗浄パイプ54〜57とを有する浄化水供給手段58を設け、上記両吸引パイプ51,52に設けられた開閉弁59,60の一方を閉止するとともに他方を開放した状態で、上記給水ポンプ53を作動させることにより、上記浄化水貯留室9または浄化水貯留槽2内の浄化水を吸引して上記各浄化処理室4〜8内に選択的に供給することにより、各浄化処理室4〜8の内壁面に付着した汚泥成分等を順次除去するように構成してもよい。
【0040】
さらに、浄化処理槽1の最下流部に設けられた浄化水貯留室9内に、図8に示すように、複数の活性炭収容体22a〜22cを設置するとともに、循環ポンプ23から吐出された処理水を各活性炭収容体22a〜22cの下方部にそれぞれ吐出させる分岐管24a〜24cを設け、この分岐管24a〜24cの上流部に位置する循環パイプ24に設けられた圧力計61の検出圧力に応じて各分岐管24a〜24cに設けられた自動開閉弁62a〜62cを開閉制御することにより、使用する活性炭収容体22a〜22cを順次切り換えるように構成してもよい。
【0041】
すなわち、上記分岐管24aに設けられた自動開閉弁62aを開放するとともに、他の自動開閉弁62b,62cを閉止した状態で、上記循環ポンプ23を作動させることにより、上記圧力計61により処理水の供給圧力を検出しつつ、第1の活性炭収容体22aに処理水を供給する。この第1の活性炭収容体22aに目詰まりが生じる等により、その処理能力が低下すると、上記圧力計61の検出圧力が上昇するため、これに対応して上記自動開閉弁62a〜62cの開閉制御を実行することにより、使用する活性炭収容体22a〜22cを順次切り換えるようにする。このように構成することにより、各活性炭収容体22a〜22cの使用時期および頻度を適正に設定してランニングコストを低下させることができるという利点がある。
【0042】
なお、上記浄化水貯留室9内に複数の活性炭収容体22a〜22cを設置するとともに、図9に示すように、各活性炭収容体22a〜22cの下方部にそれぞれ処理水を供給して循環させる複数の循環ポンプ23a〜23cおよび循環パイプ24a〜24cを有する循環手段25a〜25cを個別に設けた構造としてもよく、あるいは容量の大きな単一の循環ポンプ(図示せず)により、各活性炭収容体22a〜22cの下方部に対して同時に処理水を供給するように構成してもよい。
【0043】
また、図10に示すように、浄化水貯留槽2内に貯留された浄化水の異常、つまり浄化水貯留槽2内に貯留された浄化水の量が基準値以上となってこの貯留槽2が満杯になり、または貯留された浄化水の水質が低下してph、色度(濁度)、残留塩素濃度の何れかが基準値よりも悪化する等の異常が発生したか否かを検出する異常検出手段63と、この異常検出手段63において異常が検出された場合に異常検出信号を管理部64に送信する送信手段65を設けた構造としてもよい。このように構成した場合には、上記浄化処理槽1に設けられた各浄化処理室4〜8による排水の浄化機能が低下し、あるいは多量の排水が一時に排水処理槽1に導入される等により、各浄化処理室4〜8による排水の浄化機能が不足した状態にあるために、点検作業および補修作業等が必要であることを管理者に対して適正に認識させることができる。
【0044】
また、図11に示すように、浄化処理槽1の最上流浄化処理室4と並列に排水貯留槽66を設けるとともに、上記最上流浄化処理室4内に収容された排水を排水貯留槽66内に移送する移送ポンプ67および移送管68を備えた移送手段69を設けることにより、必要に応じて最上流浄化処理室4内の排水を排水貯留槽66内に移送するように構成してもよい。
【0045】
例えば、上記浄化水貯留槽2内に貯留された浄化水の異常を検出する異常検出手段63の検出信号に応じ、浄化水貯留槽2内が浄化水で満杯になり、あるいは最上流浄化処理室4内に大量の排水が流入して上記浄化水の水質が低下する等の異常が発生したことが検出された場合に、制御手段48から上記移送ポンプ67作動指令信号を出力してこの移送ポンプ67を作動させることにより、最上流浄化処理室4内の排水を排水貯留槽66内に移送した後、制御手段48から浄化水供給手段45の給水ポンプ46に作動指令信号を出力してこの給水ポンプ46を作動させることにより、浄化水貯留槽2内の浄化水を浄化処理槽1の最上流浄化処理室4等の内部に供給するように構成してもよい。なお、図10および図11において、47aは、浄化水供給手段47により浄化処理室4〜6に供給される浄化水の供給方向を切り換える三方切換弁である。
【0046】
上記のように構成した場合には、排水を吸引して外部に導出する作業の2回分を同時に行うことができるため、上記浄化処理槽1の点検作業および補修作業等を行う周期を約2倍に延ばすことができるという利点がある。なお、上記移送ポンプ67により最上流浄化処理室4内の排水を排水貯留槽66内に強制的に移送するようにした上記実施形態に代え、最上流浄化処理室4内の排水をオーバフローさせることにより、上記排水貯留槽66内に上記排水を移送させるように構成してもよい。
【0047】
また、図12に示すように、トイレから排出された汚水、または生ゴミをディスポーザにより微粉砕することによりされた生成された雑排水等の汚泥成分を含有する排水を段階的に浄化する複数の浄化処理室4〜8と、その最下流部に位置する最下流浄化処理室8から導出された浄化水を貯留する浄化水貯留室9を有する浄化処理槽1と、この浄化水処理槽1の最下流部に連設された浄化水貯留槽2と、上記浄化水処理槽1の最上流部に位置する最上流浄化処理室4と並列に設置された汚泥処理槽70と、上記最上流浄化処理室4内に収容された排水を汚泥分解槽に移送する移送管等からなる移送手段71とを備え、この移送手段71を介して上記汚泥分解槽70に移送された排水中の汚泥成分を嫌気分解処理する嫌気分解室72と、この嫌気分解室72から導出された処理水を好気分解処理する好気分解室73と、この好気分解室73から導出された処理水を沈殿分離処理する沈殿分離室74とを上記汚泥分解槽70に設けた構造としてもよい。
【0048】
上記嫌気分解室72には、移送手段71を介して最上流浄化処理室4内からオーバフローまたは強制的に移送された排水中の汚泥成分を構成する有機物を嫌気条件下で分解してメタンガスを生成するメタン菌が収容されている。また、上記好気分解室73には、嫌気分解室72から導出された処理水中の残存有機成分の分解およびアンモニアの硝化等を行う好気性生物が収容されている。そして、上記好気生分解室73により分解処理されて沈殿分離室74に導出された処理水は、この沈殿部隣室74内において沈殿処理された後、散水または放水され、あるいは防火水等として再利用される。
【0049】
また、上記嫌気分解室72には、その内部に収容された排水の一部を循環させる循環パイプ75が設けられている。この循環パイプ75には、ボイラ76から供給される廃熱または蒸気によって上記循環パイプ75内を循環する排水中の汚泥成分を70°C以上に加熱することにより、汚泥成分中の繊維質や角質の分解を促進するとともに、上記嫌気分解室72内の温度を、35°C〜37°C程度のメタン発酵菌による中温発酵に適した温度、または53°C〜56°C程度のメタン発酵菌による高温発酵に適した温度に加熱する加熱器77からなる加熱手段が設けられている。上記ボイラ76は、嫌気分解室72において生成されたメタンガスを燃料とし、上記浄化水貯留槽2内の浄化水を加熱することにより蒸気を生成するように構成されている。
【0050】
上記の構成によれば、最上流浄化処理室4内から汚泥分解槽70に移送手段71を介して移送された排水中の汚泥成分を、上記嫌気分解室72、好気分解室73および沈殿分解室74内において段階的に浄化処理することにより、上記汚泥成分を効率よく分解処理することができるため、上記浄化処理槽1の処理能力を超えた排水が供給された場合においても、これを容易に浄化処理することができ、しかも上記嫌気分解室72において生成されたメタンガス等のバイオガスをボイラ76等の燃料として有効に利用することができるという利点がある。
【0051】
また、上記実施形態では、移送手段17を介して汚泥分解槽70の嫌気分解室72に移送された排水中の汚泥成分を70°C以上に加熱することにより、汚泥成分中の繊維質や核質の分解を促進する加熱手段77を設けたため、汚泥分解槽70の嫌気分解室72に移送された排水中の汚泥成分を所定温度に加熱して上記繊維質や核質の分解を促進することができるとともに、嫌気分解室75の内部をメタン菌の発酵作用に適した温度に加熱することにより、上記排水をさらに効果的に浄化処理できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】排水浄化装置の全体構成を示す説明図である。
【図2】上記排水浄化装置の全体構成を示す平面図である。
【図3】貝殻接触材を構成する貝殻の断面図である。
【図4】貝殻の真珠層を除去した状態を示す断面図である。
【図5】最下流浄化処理室に設けられた循環手段の具体的構成を示す斜視図である。
【図6】還流通路の具体的構成を示す正面図である。
【図7】排水浄化装置の別の例を示す平面図である。
【図8】活性炭収容体の設置例を示す説明図である。
【図9】活性炭収容体の別の設置例を示す説明図である。
【図10】排水浄化装置のさらに別の例を示す平面図である。
【図11】排水浄化装置のさらに別の例を示す平面図である。
【図12】排水浄化装置のさらに別の例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 浄化処理槽
2 浄化水貯留槽
4 最上流浄化処理室
5 第1中流浄化処理室
6 第2中流浄化処理室
7 第3中流浄化処理室
8 最終浄化処理室
9 浄化水貯留室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレから排出された汚水等の汚泥成分を含有する排水を段階的に浄化する複数の浄化処理室を備えた浄化処理槽と、この浄化処理槽とは別体に形成されるとともに、浄化処理槽から導出された浄化水を貯留する浄化水貯留槽とを有する排水浄化装置の洗浄方法であって、上記複数の浄化処理室の内部に収容された排水及び処理水の導出作業を行った後に、上記浄化水貯留槽内に貯留された浄化水を、浄化処理槽の最上流部に位置する最上流浄化処理室の上部から洗浄水として供給することにより、最上流浄化処理室の内壁面に付着した汚泥成分等を除去するとともに、最上流浄化処理室およびその下流側の浄化処理室内に上記浄化水からなる洗浄水を充填することを特徴とする排水浄化装置の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−218477(P2006−218477A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20647(P2006−20647)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【分割の表示】特願2005−161868(P2005−161868)の分割
【原出願日】平成15年1月30日(2003.1.30)
【出願人】(595173145)永和国土環境株式会社 (6)
【Fターム(参考)】