説明

排泄物検知センサ

【課題】尿と便を識別して検知する排泄物検知センサを提供する。
【解決手段】並んで延びる少なくとも二対の導線1,2が、ともに防水性及び絶縁性のある担持体6と被覆体7との間に挟み込まれ、被覆体には、一対の導線同士を関連付ける尿導入孔8が形成されると共に、他の対の導線同士を関連付ける便導入孔9が形成され、尿が尿導入孔内に入ると一対の導線間が短絡し、便が便導入孔内に入ると他の対の導線間が短絡するようにする。これにより排尿と排便を区別して検知することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排尿、排便を検知することができる排泄物検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電極間に水分が付着して電流が流れると、水分の存在、発生を検知する水分検知センサが知られている(例えば、特許文献1,2,3参照。)。この水分検知センサは、例えば排泄物レシーバやオムツに使用され、排尿等により電極間に水分が付着して短絡することにより、排尿の発生を検知するようになっている。
【0003】
また、排泄物レシーバやオムツ内に挿入された受け皿で尿を受け、水分センサで排尿を検知する都度受け皿に溜まった尿を真空ポンプにより吸引するようにした採尿システムが知られている(例えば、特許文献4参照。)。この採尿システムによれば排尿について多数回にわたって繰り返し使用可能である。
【特許文献1】特開昭63−290950号公報
【特許文献2】特開2000−19136号公報
【特許文献3】特開2002−82080号公報
【特許文献4】特開2004−267517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の水分検知センサは、一対の電極しか備えていないので、排尿と排便のいずれであるか識別することが困難である。上記受け皿で尿を回収するタイプの排泄物レシーバやオムツにこの従来の水分検知センサを使用すれば、排便の場合にも真空ポンプが作動するので、チューブや真空ポンプが便の固形分で詰まり、尿の回収が困難になる。
【0005】
また、従来の水分検知センサは、電極間に電位差を生じさせ、電極間に水分が付着して電流が流れると、排尿等が発生したとの信号を出力するようになっているにすぎないので、電極自体の良否について判別することができない。このため、水分が電極間に付着したが、電極不良等により信号が発生せず、排尿の発生、尿の存在を検知することができないという不都合を生じる。
【0006】
さらに、従来の水分検知センサをオムツ等において排尿の検知に使用する場合、複数回にわたって排尿を検知しようとすると、時間が経過するにつれて抵抗値が変化することがあり、誤作動を起こしやすくなるという問題がある。
【0007】
従って、本発明は上記問題点を解決することができる排泄物検知センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するため、本発明は次のような構成を採用する。
【0009】
すなわち、請求項1に係る発明は、並んで延びる少なくとも二対の導線(1,2,3,4)が、ともに防水性及び絶縁性のある担持体(6)と被覆体(7)との間に挟み込まれ、この被覆体(7)又は担持体(6)には、少なくとも一対の導線(1,2)間を関連付ける尿導入孔(8)が形成されると共に、他の対の導線(3,4)間を関連付ける便導入孔(9)が形成され、尿が上記関連付けられた尿導入孔(8)内に入ると上記一対の導線(1,2)間が短絡し、便が上記関連付けられた便導入孔(9)内に入ると上記他の対の導線(3,4)間が短絡するようにした排泄物検知センサを採用する。
【0010】
この排泄物検知センサ(5)において、所望の対の導線(1,2)同士をこれらの導線(1,2)よりも抵抗値の大きい高抵抗導線(14)で結ぶようにしてもよい。また、担持体(6)及び被覆体(7)に厚さ方向に貫通する尿通過孔(15)を設けてもよい。
【0011】
また、この排泄物検知センサ(5)において、担持体(6)に導線(1,2,3,4,14)を印刷し、その上から被覆体(7)を印刷するようにしてもよい。導線(1,2,3,4,14)は導電性カーボンを含んだ導電性インキで印刷してもよい。導線(1,2,3,4)の印刷インキは高抵抗導線(14)の印刷インキよりも導電性カーボンをより多く含んでいるものとすることができる。尿導入孔(8)および便導入孔(9)が設けられる被覆体(7)又は担持体(6)は印刷インキ層の積層体として形成し、この積層体のうちの少なくとも一層(7b)を尿レジストインキで形成してもよい。また、積層体のうち尿レジストインキ層(7b)と導線(1,2,3,4,14)との間に介在する少なくとも一層(7a)を溶剤レジストインキで形成してもよい。この場合、尿レジストインキは、ポリエステルポリオールとイソシアネートとのウレタン結合インキ又はUV硬化型樹脂インキとすることができ、溶剤レジストインキは、ポリエステル樹脂インキとすることができる。
【0012】
また、導線(1,2,3,4,14)は、導電性物質として導電性カーボンのみを含んだ導電性インキで印刷してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、並んで延びる少なくとも二対の導線(1,2,3,4)が、ともに防水性及び絶縁性のある担持体(6)と被覆体(7)との間に挟み込まれ、この被覆体(7)又は担持体(6)には、少なくとも一対の導線(1,2)間を関連付ける尿導入孔(8)が形成されると共に、他の対の導線(3,4)間を関連付ける便導入孔(9)が形成され、尿が上記関連付けられた尿導入孔(8)内に入ると上記一対の導線(1,2)間が短絡し、便が上記関連付けられた便導入孔(9)内に入ると上記他の対の導線(3,4)間が短絡するようにした排泄物検知センサであるから、排尿と排便を区別して検知することができる。これにより、受け皿(16)で尿を回収するタイプの排泄物レシーバ(17)やオムツに使用した場合であっても、尿を回収するための真空ポンプ等の吸引機やチューブ(18)の便による詰まりを防止し、尿の回収を繰り返し行うことができる。
【0014】
また、本発明において、所望の対の導線(1,2)同士がこれらの導線(1,2)よりも抵抗値の大きい高抵抗導線(14)で結ばれた場合は、対になった導線(1,2)間に高抵抗導線(14)を介して電流を流すことができるので、導線(1,2)の良否を確認したうえで排尿又は排便を適正に検知することができる。
【0015】
また、本発明において、尿導入孔(8)、便導入孔(9)が設けられる被覆体(7)又は担持体(6)が印刷インキ層の積層体として形成され、この積層体のうちの少なくとも一層(7b)が尿レジストインキで形成されている場合は、排尿を複数回にわたって検知するようにしても、導線(1,2,3,4,14)の抵抗値が変化しない。したがって、排尿の発生を繰り返し正確に検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0017】
<実施の形態1>
図1ないし図5に示すように、この排泄物検知センサ5は、並んで延びる二対の導線1,2,3,4が、ともに防水性及び絶縁性のある担持体6と被覆体7との間に挟み込まれ、被覆体7には、少なくとも一対の導線1,2同士を関連付ける尿導入孔8が形成されると共に、他の対の導線3,4同士を関連付ける便導入孔9が形成され、尿Aが上記関連付けられた尿導入孔8内に入ると上記一対の導線1,2間が短絡し、便Bが上記関連付けられた便導入孔9内に入ると上記他の対の導線3,4間が短絡するようにした構造を備える。
【0018】
担持体6はこの排泄物検知センサ5の全体を担持するもので屈曲自在な帯状片として形成される。担持体6は例えば人体の股上よりやや長く形成される。担持体6は水分を通さないよう防水性を有し、電気を通さないよう絶縁性を有する。また、導線1,2,3,4等の回路部の良否を確認しやすくするため、望ましくは透明に形成される。担持体6は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン等の二軸延伸フィルムにより作られる。担持体6の厚さは、望ましくは30μm〜300μm、より望ましくは50μm〜100μmである。担持体は不透明でもよいが、望ましくは透明又は半透明に形成される。
【0019】
担持体6の基端には、図10に示すコネクタ11に連結するための位置決め孔12が必要に応じて形成される。また、排泄物検知センサ5とコネクタ11との位置関係を規制したり明示したりするための切欠13、目印30も必要に応じて設けられる。
【0020】
上記二対の導線1,2,3,4は比較的低抵抗であり、それぞれ担持体6である帯状片の両側縁に沿って平行に延びる。このうち内側の一対の導線1,2は排尿検出に用いられ、外側の一対の導線3,4は排便検出に用いられる。二対の導線1,2,3,4における上記コネクタ11を連結する基端には、比較的大きな面積の端子部1a,2a,3a,4aがそれぞれ形成される。また、排便検出用の導線3,4における上記コネクタ11を連結する基端とは反対側の末端には、拡張部3b,4bがそれぞれ形成される。排便検出用の導線3,4の末端である拡張部3b,4bは担持体6の末端に設けられるが、排尿検出用の導線1,2の末端は排便検出用の導線3,4の拡張部3b,4bよりも基端側に寄った箇所で終わっている。すなわち、排尿検出用の導線1,2の末端およびその近傍と、排便検出用の導線3,4の拡張部3b,4bは、それぞれ人体の排尿部と、排便部にそれぞれ対応している。
【0021】
導線1,2,3,4は端子部1a,2a,3a,4aや拡張部3b,4bを含め導電性インキを用いて担持体6に印刷することにより形成される。導電性インキは、バインダ、導電性金属粉、その他の充填剤を混練してなるもので、バインダとしてはポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリルウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂等を使用可能である。導電性金属粉としては、銀、金、銅、ニッケル、アルミニウム、導電性カーボン等を使用可能である。充填剤には、粘度調整剤、分散剤等が含まれる。導電性インキが、スクリーン印刷、ダイレクトグラビア印刷、フレキソ印刷等により担持体6上に細い帯状に塗布されることにより導線1,2,3,4が形成される。
【0022】
排尿検出用の導線1,2は、例えば幅1.5mm、厚さ10μm、望ましくは5μm〜30μmとなるように印刷される。排便検出用の導線3,4は、例えば幅0.5mm、厚さ10μm、望ましくは5μm〜30μmとなるように印刷される。これらの導線1,2,3,4は、比較的低抵抗であり、抵抗値は例えば上記導電性インキの導電性金属粉の含有量が調整されることにより、望ましくは0〜200kΩ、より望ましくは100kΩ以下とされる。この実施の形態1では100kΩ程度とされている。
【0023】
排尿検出用の一対の導線1,2同士は、これらの導線1,2よりも抵抗値の大きい高抵抗導線14で結ばれる。高抵抗導線14の抵抗値は、望ましくは1MΩ〜10MΩ、より望ましくは2MΩ〜6MΩに設定される。
【0024】
この高抵抗導線14は、各導線1,2の内側に沿って伸びるように設けられる。すなわち、高抵抗導線は14一方の導線1の末端からこの導線1に沿って基端側へと延び、途中で他方の導線2へと向かい、この導線2に沿ってその末端へと延びる。この結果、高抵抗導線14と一対の導線1,2は担持体6上で一本の電線となって連なり、一対の導線1,2の端子部1a,2a間に電位差が形成されることにより一定量の電流が流れる。
【0025】
高抵抗導線14は、一対の導線1,2の印刷に用いられる導電性インキと同様な組成の導電性インキで同様な印刷方式で印刷される。ただし、導電性インキに含まれる導電性金属粉の量が少なく、その結果、高抵抗導線14の抵抗値は、一対の導線1,2よりも大きく例えば数MΩ程度に設定される。また、一対の導線1,2と識別しやすくするため、これらの導線1,2よりも細く形成され、例えば幅0.5mm程度に形成される。
【0026】
被覆体7は、上記導線1,2,3,4、高抵抗導線14の上から、端子部1a,2a,3a,4aや後述する各種導入孔8,9の部分を除き、担持体6の略全面に積層される。被覆体7は、担持体6と共に上記導線1,2,3,4、高抵抗導線14、拡張部3b、4bを外部から絶縁する。
【0027】
被覆体7は具体的には印刷インキで形成される。印刷インキは、バインダ、顔料、その他の充填剤を混練してなるもので、バインダとしてはポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリルウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂等を使用可能である。また、バインダとしては、ポリエステルポリオールとイソシアネートとをウレタン結合させたもの、あるいはUV硬化型樹脂を使用することもできる。顔料としては、担持体6や導線1,2,3,4、高抵抗導線14と識別しやすくするため色違いの例えば白色顔料が使用される。充填剤には、粘度調整剤、分散剤等が含まれる。この印刷インキがスクリーン印刷、ダイレクトグラビア印刷等により担持体6の表面に導線1,2,3,4等の上から端子部1a,2a,3a,4a等の所定の部分を残すように塗布されることにより被覆体7が形成される。この被覆体7が絶縁膜及び防水膜として機能する。
【0028】
上記被覆体7には、排尿検出用の一対の導線1,2を局所的に露出させ、尿を導入する尿導入孔8が形成される。尿導入孔8は、排尿検出用の導線1,2の末端およびその近傍において、担持体6の長手方向中心線を対称軸として左右対称に二個ずつ設けられる。もちろん、それよりも少ない個数でもよいし、それよりも多い個数でもよい。尿導入孔8の位置は人体の排尿部とその周辺に対応する。図4に示すように、各導線1,2上の尿導入孔8に跨るように尿Aが付着すると、導線1,2間を電流が短絡して流れる。この電流値は短絡しない場合の電流値よりも大きく、これにより尿Aの排出が検知される。
【0029】
また、上記被覆体7には、排便検出用の一対の導線3,4を局所的に露出させ、便を導入する便導入孔9が形成される。便導入孔9は、排便検出用の導線3,4の拡張部3b,4bにおいて、担持体6の長手方向中心線を対称軸として左右対称に一個ずつ設けられる。もちろん、それよりも多い個数設けてもよい。便導入孔9の位置は人体の排便部とその周辺に対応する。図5に示すように、各導線3,4上の便導入孔9に跨るように便Bが軟便状態で付着すると、一対の導線3,4間を電流が短絡して流れることとなる。これにより便Bの付着が検知される。
【0030】
これらの尿導入孔8及び便導入孔9は被覆体7の印刷時に同時に非画線部として印刷される。このように被覆体7を印刷により形成することから、尿導入孔8や便導入孔9を小さく精度良く形成することができる。図示例では、これらの孔8,9は長方形であるが、円形、楕円形、正方形等の他の形状に適宜変更可能である。
【0031】
上記担持体6には、その表裏間を貫通するように尿通過孔15が形成される。図示例では、尿通過孔15は、担持体6における高抵抗導線14の平行に伸びる部分で挟まれた箇所に穿設される。具体的には、二つの長方形の尿通過孔15が担持体6の長手方向につなぎ部6aを残して並んで設けられる。尿通過孔15は、多数の小孔の集合によって形成する等他の形状、形態で穿設することも可能である。これにより、人体から排出された尿が尿通過孔15から担持体6の裏側へと通り抜け、後述する受け皿16に受け止められる。尿通過孔15は、例えば導線1,2,3,4、被覆体7等の印刷後に打ち抜き等により形成される。
【0032】
次に、上記排泄物検知センサの作用について説明する。
【0033】
排泄物検知センサ5の導線1,2,3,4、高抵抗導線14と被覆体7は透明フィルムからなる担持体6上に色違いのインキで印刷されていることから、導線1,2,3,4の断線の有無、被覆体7の欠損の有無等が目視により直ちに認識され、排泄物検知センサ5の良否の選別が簡易化される。
【0034】
この排泄物検知センサ5は、図10に示すように、パッド状の排泄物レシーバ17における不織布等からなる各種積層シートの間に挟みこまれた状態で使用される。図中、符号17aは排泄物レシーバ17における尿を受ける部分、符号17bは便を受ける部分を示す。尿を受ける部分17aの直下に排泄物検知センサ5の尿導入孔8が設定され、便を受ける部分17bの直下に排泄物検知センサ5の便導入孔9が設定される。また、排泄物レシーバ17内の尿を受ける部分17aにおける排泄物検知センサ5よりも下方には尿の受け皿16が設けられている。受け皿16はチューブ18で真空ポンプ等の吸引機19に接続され、受け皿16内の尿は吸引機19によりタンク20内に送られるようになっている。
【0035】
また、排泄物レシーバ17には、尿を受ける部分17aと便を受ける部分17bとを区画する手段として例えば袋部21が形成される。袋部21は、不織布等からなるシートを便を受ける部分17bから尿を受ける部分17aの後半部にわたって被せ、シール線21a上でヒートシールすることにより形成される。袋部21の存在により尿は便を受ける部分17bへの流入を阻止され、また、便は尿を受ける部分17aへの移動を阻止される。
【0036】
この排泄物レシーバ17は、図示しないオシメに着脱自在に取り付けられ、オシメを介して人体の股間にあてがわれる。
【0037】
排泄物検知センサ5の基端には制御装置22に電気的に結線されたコネクタ11が着脱自在に接続される。排泄物検知センサ5の基端の位置決め孔12及び切欠13を利用してコネクタ11が排泄物検知センサ5に正確に位置合わせされ、コネクタ11側の図示しない端子部に排泄物検知センサ5の端子部1a,2a,3a,4aが電気的に接合される。
【0038】
制御装置22は排泄物検知センサ5から来る信号を図示しないCPUで処理して各種の信号を出力するようになっている。制御装置22は、一対の導線1,2の端子部1a,2a間に電圧を印加し、高抵抗導線14を介して導線1,2に一定量の電流が流れると、この導線1,2には断線が無く正常であると判断する。導線1,2間に一定量の電流が流れない場合は、断線と判断しその旨の警報を発する。
【0039】
オシメを装着した者が尿を排出すると、その尿は排泄物レシーバ17の尿を受ける部分17aに染み込み、さらには排泄物検知センサ5側へと染み透り、図4に示すように排泄物検知センサ5の表面に接触して尿導入孔8内に侵入し、一対の導線1,2間を短絡させる。これにより、排泄物検知センサ5から制御装置22へと排尿発生の信号が送られ、制御装置22はこの信号を受けて吸引機19を作動させ、必要であれば図示しない警報器を作動させる。尿は排泄物検知センサ5の尿通過孔15を通って一旦受け皿16に受け止められ、そこから吸引機19によりタンク20へと送られる。
【0040】
また、オシメを装着した者が便を排出すると、その便の水分は排泄物レシーバ17の便を受ける部分17bを排泄物検知センサ5側へと染み透り、図5に示すように排泄物検知センサ5の表面に接触して便導入孔9内に侵入し、他の一対の導線3,4間を短絡させる。これにより、排泄物検知センサ5から制御装置22へと排便発生の信号が送られ、制御装置22はこの信号を受けると排便が生じた旨を知らせる図示しない警報器を作動させる。
【0041】
<実施の形態2>
この実施の形態2では、図6に示すように、排泄物検知センサ23の回路部における高抵抗導線25が実施の形態1の場合よりも短く形成される。すなわち、高抵抗導線25は一方の導線1の末端からこの導線1に沿って基端側へと延び、途中で担持体6の尿通過孔15,15間のつなぎ部6aを通って他方の導線2へと向かい、この導線2に沿ってその末端へと至っている。
【0042】
なお、図6中実施の形態1における部分と同じ部分には同じ符号を用いて示すこととし、重複した説明を省略する。
【0043】
<実施の形態3>
この実施の形態3では、図7に示すように、排泄物検知センサ26の尿検出用の導線1,2間を結ぶ高抵抗導線27が実施の形態2の場合よりもさらに短く形成され、二条の導線1,2の末端間を担持体6の幅方向に直線状に延びている。
【0044】
また、便検出用の導線3,4間にも高抵抗導線28が設けられている。この高抵抗導線28は導線3,4の拡張部3b,4b間を直線状に結んでいる。これにより、便検出用の一対の導線3,4に対しても端子部3a,4a間に電圧を印加し、高抵抗導線28を介して導線3,4に電流を流すことができる。電流が所定量流れる場合はこの便検出用の導線3,4は断線が無く正常であり、そうでない場合は不良品であるとして事前に正常品と交換することができる。
【0045】
なお、図7中実施の形態1,2における部分と同じ部分には同じ符号を用いて示すことし、重複した説明を省略する。
【0046】
<実施の形態4>
この実施の形態4における排泄物検知センサ29では、図8及び図9に示すように、尿導入孔8及び便導入孔9が設けられる被覆体7が印刷インキ層の積層体として形成される。具体的には、被覆体7は三層の印刷インキ層7a,7b,7cからなり、担持体6の表面にすでに印刷された回路部の導線1,2,3,4及び高抵抗導線14の上から第一の溶剤レジストインキ層7aが印刷され、その上から尿レジストインキ層7bが印刷され、さらにその上から第二の溶剤レジストインキ層7cが印刷される。また各層7a,7b,7cの印刷の際に非画線部として尿導入孔8及び便導入孔9が同時に形成される。
【0047】
溶剤レジストインキとしては、ポリエステル樹脂のインキが使用される。また、尿レジストインキとしては、ポリエステルポリオールとイソシアネートとのウレタン結合インキ又はUV硬化型樹脂インキが使用される。
【0048】
この排泄物検知センサ29を排泄物レシーバ17やオムツに装着した場合、多層の印刷インキ層7a,7b,7cからなる被覆体7で導線1,2,3,4及び高抵抗導線14が保護されていることから、尿は中間の尿レジストインキ層7bにより導線1,2,3,4及び高抵抗導線14への浸透を阻止され、したがって、回路部における導線1,2,3,4及び高抵抗導線14の抵抗値の変化が防止される。この結果、排尿を複数回にわたって適正に検知することができ、排泄物レシーバ17やオムツも複数回の排尿にわたって使用することができる。また、尿レジストインキ層7bが含有する溶剤等の成分の回路部への浸透が第一の溶剤レジストインキ層7aにより遮断され、回路部と反対側への浸透が第二の溶剤レジストインキ層7cにより遮断される。
【0049】
なお、図8及び図9中実施の形態1〜3における部分と同じ部分には同じ符号を用いて示すことし、重複した説明を省略する。
【0050】
<実施の形態5>
この実施の形態5における排泄物センサでは、上記実施の形態1〜4の各態様において、各種導線1,2,3,4,14が、導電性物質として導電性カーボンのみを含んだ導電性インキで印刷される。これにより、導線1,2,3,4,14は尿成分に対し更に高い耐性を示すこととなり、抵抗値の変動が抑止される。その結果この排泄物センサによればオムツに使用した場合に排尿を繰り返し適正に検知することが可能となる。
【0051】
以上本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、例えば上記実施の形態1〜5では尿導入孔と便導入孔を被覆体に設けたが、担持体に設けることも可能である。また、被覆体が印刷インキ層として設けられるとしたが、被覆体を担持体と同様なフィルムで形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態1に係る排泄物検知センサの表面図である。
【図2】排泄物検知センサの裏面図である。
【図3】回路部の平面図である。
【図4】図1中、IV−IV線矢視断面図である。
【図5】図1中、V−V線矢視断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る排泄物検知センサの回路部の平面図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係る排泄物検知センサの回路部の平面図である。
【図8】本発明の実施の形態4に係る排泄物検知センサの図4と同様な断面図である。
【図9】本発明の実施の形態4に係る排泄物検知センサの図5と同様な断面図である。
【図10】本発明に係る排泄物検知センサの使用例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0053】
1,2,3,4…導線
5…排泄物検知センサ
6…担持体
7…被覆体
7a…溶剤レジストインキ層
7b…尿レジストインキ層
8…尿導入孔
9…便導入孔
14…高抵抗導線
15…尿通過孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並んで延びる少なくとも二対の導線が、ともに防水性及び絶縁性のある担持体と被覆体との間に挟み込まれ、この被覆体又は担持体には、少なくとも一対の導線同士を関連付ける尿導入孔が形成されると共に、他の対の導線同士を関連付ける便導入孔が形成され、尿が上記関連付けられた尿導入孔内に入ると上記一対の導線間が短絡し、便が上記関連付けられた便導入孔内に入ると上記他の対の導線間が短絡するようにしたことを特徴とする排泄物検知センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の排泄物検知センサにおいて、所望の対の導線同士がこれらの導線よりも抵抗値の大きい高抵抗導線で結ばれたことを特徴とする排泄物検知センサ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の排泄物検知センサにおいて、担持体に導線が印刷され、その上から被覆体が印刷されたことを特徴とする排泄物検知センサ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の排泄物検知センサにおいて、担持体及び被覆体を厚さ方向に貫通する尿通過孔が設けられたことを特徴とする排泄物検知センサ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の排泄物検知センサにおいて、導線が導電性カーボンを含んだ導電性インキで印刷されたことを特徴とする排泄物検知センサ。
【請求項6】
請求項5に記載の排泄物検知センサにおいて、導線の印刷インキは高抵抗導線の印刷インキよりも導電性カーボンをより多く含んでいることを特徴とする排泄物検知センサ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の排泄物検知センサにおいて、尿導入孔が設けられる被覆体又は担持体が印刷インキ層の積層体として形成され、この積層体のうちの少なくとも一層が尿レジストインキで形成されていることを特徴とする排泄物検知センサ。
【請求項8】
請求項7に記載の排泄物検知センサにおいて、積層体のうち尿レジストインキ層と導線との間に介在する少なくとも一層が溶剤レジストインキで形成されていることを特徴とする排泄物検知センサ。
【請求項9】
請求項7に記載の排泄物検知センサにおいて、尿レジストインキが、ポリエステルポリオールとイソシアネートとのウレタン結合インキ又はUV硬化型樹脂インキであることを特徴とする排泄物検知センサ。
【請求項10】
請求項8に記載の排泄物検知センサにおいて、溶剤レジストインキがポリエステル樹脂インキであることを特徴とする排泄物検知センサ。
【請求項11】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の排泄物検知センサにおいて、導線が、導電性物質として導電性カーボンのみを含んだ導電性インキで印刷されたことを特徴とする排泄物検知センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−8791(P2008−8791A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180320(P2006−180320)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】