説明

排泥処理用混練装置及びそれを用いた排泥処理方法

【課題】混練装置及び排泥処理方法として、排泥の固化処理を効率よくかつ安定して行うことを可能にし、工事現場で発生する排泥の減容化や減量化を図る上で好適なものにする。
【解決手段】セメントを含む排泥を取り入れるとともに、該排泥に所定割合で凝集剤液を混練して略カンテン状の凝集物に処理する混練装置25において、内部の回転軸46に対して軸一端側から軸他端側に向けて受入用スクリュ47、攪拌翼48又は攪拌用スクリュ、排出用スクリュ49を順に軸装している装置本体40と、回転軸用の駆動手段50と、装置本体40のうち一端側に設けられて前記排泥をほぼ定量づつ受入スクリュ49側へ吐出移送可能にする定量供給手段42と、前記凝集剤液を装置本体40内に導入する凝集剤液用の注入口70とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象が地盤改良等で発生した排泥のうち、特に再利用し難いセメントを含む排泥を工事現場にて連続的に固化処理する上で好適な排泥処理用混練装置及びそれを用いた排泥処理方法に関する。なお、本明細書において、「セメント」はセメント系改良材を意味し、セメント類似物質を含む広義なものである。「凝集剤液」は凝集剤を水などに溶解したものを意味し、通常は凝集剤と助剤と水とで構成されている。
【背景技術】
【0002】
地盤改良工法では、セメント系の改良材を地盤に貫入したり引き抜かれる撹拌軸に沿って供給し地中に噴射して原位置土と混合し地盤強度を改良することがある。この工法では、地中に噴射された改良材のうち、一部が撹拌軸に沿って地表側に軸周りの土などと共に上昇排出される。この排泥は、セメントを含むために、一般的には再利用されることなく産業廃棄物として搬出処理されている。
【0003】
以上のような排泥は、含水比が高いため容量が増し、その分運搬費がかかり改良施工費に対する産廃処理費が割高なものとなっている。対策としては、排泥から水分を簡単に脱水したり分離できれば、水の再利用が可能となるだけではなく、脱水後の残滓も減容化されるため運送総量の減少により運搬経費も安価となる。ところが、従来の脱水装置ないしは分級装置としては、フィルタプレスがあるが、この装置を用いた脱水や分離方法だと、フィルタにセメントが固着するため、目詰りが発生し、脱水能力の低下とメンテナンスに煩わされ、装置そのものが大きく広い設置場所を必要とする。
【0004】
これに対し、下記特許文献1の泥水分離方法は、泥水に凝集剤及び分離剤を添加して攪拌し、前記泥水中の泥を固まりにした後、固まりとなった泥を通さず、水を通す水抜き部に前記泥水を通して泥と水とを分離するものである。泥水分離装置としては、泥水を収容可能な箱体に、泥が固まりとなった状態の泥水を内部に導入するための導入部と、水を通し、前記泥の固まりを通さない水抜き部と、内部に圧縮空気を供給する供給手段と、箱体の内外にわたる空気の流通を可能にする空気流通部とを設けたものである。また、前記水抜き部は箱体の側面に設けられており、この側面が下向きに近づくように箱体を傾斜させる傾斜装置を用いて水抜きを行うようになっている。
【特許文献1】特開2004−337757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の特許文献1の方法及び装置では、泥水が本発明の排泥に相当しているが、この排泥と凝集剤及び分離剤とを混ぜる手段としてミキサー車を用いているため、排泥の性状に応じた適切な混練処理が期待できず、処理対象の泥水や排泥を略カンテン状の凝集物に処理できたとしても、該凝集物の性状が大きくばらつき、それに起因して水抜き部を構成している網状体の網目の設定が難しく水抜き度合いなどが不安定になる。脱水ないしは分級装置では、凝集物の性状が安定していないことに加え、凝集物を箱体に入れ、該箱体を傾斜させて圧縮空気や重力により水を抜くようにしているため作業効率が悪い。
【0006】
本発明は以上のような課題を解決するものである。その目的は、排泥の固化処理を効率よくかつ安定して行うことを可能にし、それにより工事現場で発生する排泥の減容化や減量化を図る上で好適な混練装置及びそれを用いた排泥処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1の発明は、図面の例で特定すると、セメントを含む排泥を取り入れるとともに、該排泥に所定割合で凝集剤液を混練して略カンテン状の凝集物に処理する混練装置25において、内部の回転軸46に対して軸一端側から軸他端側に向けて受入用スクリュ47、攪拌翼48又は攪拌用スクリュ、排出用スクリュ49を順に軸装している装置本体40と、前記回転軸46を回転するモータ等の駆動手段50と、前記装置本体40のうち一端側に設けられて前記排泥をほぼ定量づつ前記受入スクリュ側へ吐出移送可能にする定量供給手段42と、前記凝集剤液を装置本体40内に導入する凝集剤液用の注入口70とを備えていることを特徴としている。
【0008】
以上の排泥処理用混練装置では次のように具体化することがより好ましい。
・前記凝集剤液用注入口70が、前記装置本体40内を前記受入用スクリュ、攪拌翼又は攪拌用スクリュ、排出用スクリュ等の配置位置に応じて複数箇所に区分けし、該区分けされた箇所に対応して設けられ、かつ、前記凝集剤液を供給する供給配管に付設されているバルブ71の切り替えにより選択使用可能になっていること(請求項2)、
・前記装置本体40のうち、前記排出用スクリュ49を配置している排出部45が、少なくともその底面に多数の排出用スリットを形成していること(請求項3)、
・前記定量供給手段42は、下側を前記装置本体に接続しているハウジング60と、前記ハウジング内に回転可能に支持されて軸周囲に放射状に立設した複数の羽根62を有するロ−タ軸61とを有しているとともに、前記ハウジング60が内周壁を形成している周囲部を弾性板65により構成していること(請求項4)、
・前記定量供給手段42は、下側を前記装置本体40に接続しているハウジング60と、前記ハウジング内に回転可能に支持されて軸周囲に放射状に立設した複数の羽根62を有するロ−タ軸61と、前記隣接する羽根同士の間に設けられて前記ロータ軸外周に近い軸側とそれより離れる外側とを画成する隔壁66と、前記隔壁に設けられて該隔壁の内外を貫通した清掃孔67と、前記ロータ軸61の軸受部近傍に設けられた導入孔68とを有し、流体が前記導入孔及び前記清掃孔より前記隔壁の内側から外側へ噴出可能になっていること(請求項5)、である。
【0009】
これに対し、請求項6の発明は、混練手段によりセメントを含む排泥に所定割合で凝集剤液を混練して略カンテン状の凝集物に処理する混練工程と、分級手段により前記混練工程で処理された前記凝集物から水分を分離する分級工程とを経る排泥処理方法において、前記混練手段を請求項1から5の何れかに記載の混練装置25にて構成し、かつ、前記分級手段26や27を前記混練装置より下段に配置して、前記混練装置で処理された前記凝集物を直接又はシュート等を介して落下作用にて前記分級手段側へ移送することを特徴としている。
【0010】
以上の前記分級手段は、前記凝集物に振動を加えつつ水分を分離する振動式分級手段26、及び/又は、前記凝集物ないしは前記振動式分級手段で水分の一部を分離したものを受け入れて加圧することで水分を分離する加圧式分級手段27により構成されていること(請求項7)が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
・請求項1の発明装置では、処理対象の排泥を定量供給手段を介してほぼ定量づつ装置本体内の受入スクリュ側へ移送するため、凝集剤液をその排泥量に合った適量づつ注入口から投入することで混練初期段階から混合ばらつきを抑え、攪拌翼で所定の粘性を持った常にほぼ均一性状の凝集物に処理でき、それにより次の凝集物から水分を分離する分級手段の水除去効率を向上したり安定した水分分離作用を維持可能にする。
・請求項2の発明装置では、例えば、処理対象の排泥性状に応じた混練処理や反応時間の長短などを考慮し、当該排泥を所定性状の凝集物に処理する上で最も適した箇所の注入口から凝集剤液を投入可能にする。
・請求項3の発明装置では、処理後の凝集物を装置本体の排出部底面に設けたスリットから落下方式で次工程つまり凝集物から水分を分離する分級工程に移送できる。
・請求項4の発明装置では、処理対象の排泥に混ざっている小石等の硬い異物が定量供給手段を構成しているハウジング内周と羽根との間に入り込んで噛み込んだ場合、弾性板が弾性変形を伴ってその噛み込み状態を解消できるようにして、定量供給手段の回転停止、及びそれに伴うモータ焼き付きなどの発生を防止できる。
・請求項5の発明装置では、定量供給手段が連続稼働により羽根等に排泥の固まりが付着堆積して、定量供給が不正確となったり凝集剤液との配合比も変ってくることから、例えば定期的に流体(気体、水、凝集剤液等)を圧送して清掃孔から噴出することで、前記堆積物を吹き払って故障を防いだり、メンテナンスを簡略化したり、定量供給を維持できる。
【0012】
・請求項6の発明方法では、以上の混練装置の利点に加え、排泥処理操作として混練装置で処理された凝集物を次工程である分級手段に落下作用で移送するため、処理経費を抑えかつ装置構成を簡略化できる。
・請求項7の発明方法は、分級手段の具体例を特定したことに意義があり、例えば、混練装置で処理された凝集物の性状に応じて振動式と加圧式とを使い分けたり、連続処理の場合に振動式及び加圧式を併用することで効率的な固化処理を実現可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について添付図面を参照して説明する。この説明では、全体の概要、凝集剤液、排泥処理設備及び方法、混練装置の順に詳述する。
【0014】
(概要)図1は本発明と地盤改良工法との関係を示し、符号1はセメントミルク製造プラント、符号2は改良対象地盤の地表部GLに設置された混合撹拌装置、符号15は排泥処理プラント(設備)である。ここで、攪拌混合装置2は、キャタピラ走行式のベースマシン3と、ベースマシン3の先端側に立設された起倒式の鉛直ガイド4と、ガイド4に沿って昇降可能な駆動ヘッド5と、駆動ヘッド5の下部に回転可能に垂設された中空の攪拌軸6と、攪拌軸6の下側外周に配置された複数の攪拌翼7とを備えている。セメントミルク製造プラント1は、サイロ8から供給されるセメント及び水道ないしは排泥処理プラント15で生成される水の供給を受けてセメントミルクを製造する。製造されたセメントミルクは、ポンプ9によりヘッド5の直下に設けたスイベルジョイント5aを介して攪拌軸6内の供給管に圧送され、攪拌軸6の下端側又は攪拌翼7に設けられた噴出口を通じて地中に噴出される。噴射後は、攪拌翼7で原位置土と混合され改良杭10として造成される。
【0015】
以上の造成作業に先立ち、改良位置の地表部付近には、攪拌軸6の貫入予定部に連絡溝11によって連通する、いわゆる釜揚と称される排泥一時貯留ピット12を造成し、またこの貯留ピット12の近傍に排泥処理プラント15を設置しておく。これにより、実施工では、改良杭10の造成に伴い、攪拌軸25に沿って地表部に上昇排出される排泥(セメント−水−土の混合物で、前記噴射口からの噴射量に比例した量)が連絡溝11を通じて貯留ピット12内に貯留される。そして、貯留ピット12内に一時貯留された排泥は、排泥処理プラント15に取り入れられ、該排泥処理プラントで各種処理を行うことにより、水分分離された後、ベルトコンベア16を介してダンプトラックなどの運搬車両17に移し替えられ、産業廃棄物として運搬車両17により運送排出される。すなわち、排泥処理プラント15は、攪拌混合装置1による工事量に比例して排出される排泥を現場処理により固形化し得る処理能力に設定され、前記造成作業と並行して稼働することで施工域の残土処理としても機能する。
【0016】
また、図2は排泥処理プラントの構成を模式的に示している。排泥処理プラント15は、設備本体20と、設備本体20に凝集剤液を供給するための凝集剤液製造プラント21と、前記貯留ピット12内に投入された複数の小型水中ポンプ22(図では1つのみ示している)と、ポンプ22に接続された中継槽23と、中継槽23内にあって、ここに集積された排泥を設備本体20に供給する第2の水中ポンプ24などを備えている。
【0017】
設備本体20には、ポンプ24及び凝集剤液製造プラント21から供給される排泥と凝集剤液を適宜の混合比で混練する混練装置25と、混練装置25の排出端下部に配置された振動式分級装置26と、振動式分級装置26の排出端下部に配置された加圧式分級装置27と、これら各装置及び凝集剤液製造プラント21、ポンプ22や23を連繋させつつ駆動制御するための制御盤(制御装置)28とを具備している。なお、制御盤28と前記各装置とは、破線で例示されるような電気信号線により接続されている。
【0018】
ここで、貯留ピット12内に投入されている小型水中ポンプ22は、大型ポンプを用いる場合に比べて、移動時などの取扱い性に優れているとともに、ポンプ吸込み口の網径がφ2インチであり、第2のポンプ24の網径φ3インチに比べて小さく、これによって排泥を吸引した時点で、排泥中に混在するゴミ、ガラ、砂利、土塊等の粗粒成分は濾過される。しかしながら、このようにすると配管抵抗が上がる。そこで、この形態では、図2の一部に拡大して示すように、配管22a中にエアノズル22bを挿入し、該エアノズル22b中に図示しない気体供給手段からの加圧空気を注入して空気輸送することで、ポンプ22の駆動能力が小さくても、流動抵抗を小さくして中継槽23まで連続輸送可能になるよう工夫されている。
【0019】
図2の排泥処理プラントにおいて、カンテン状凝集物を形成させる為に用いられる凝集剤及び凝集方法は、一般の有機高分子凝集剤並びに無機凝集剤を使用した処理方法を用いても良いが、図9の排出部45に示されている鋼棒材の間隔が、3〜6mmに設定していることにより、形成されたカンテン状凝集物が鋼棒材の隙間から漏れることを防ぐ為に通常の脱水装置で必要とされる凝集物より、強く、大きな凝集物を形成する必要がある。
【0020】
(凝集剤液)凝集剤製造プラント21は、処理方法により異なるが以下に示す凝集剤液を作液することができるが、必ずしも本凝集剤液に限定されるものではない。
(1)一液型凝集剤の作液方法及び処理方法
水道水100重量部に対し、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムの少なくとも一種類以上の無機塩を1重量部〜5重量部の範囲で溶解した溶液にアクリルアミド/ジメチルアミノエチルメタリレート塩化メチル4級塩共重合物とアクリルアミドアクリル酸ソーダ共重合物の混合物(テルフロックTG;株式会社テルナイト社製品)を0.5重量部から2.0重量部の範囲で添加したポリマー溶液を作液する。そして、本ポリマー水溶液に含まれるテルフロックTGを粉末換算でセメント混じり排泥中に含まれる乾燥固形分当り0.20〜0.40w/w%の添加率になるように添加、攪拌混合し、カンテン状凝集物を形成せしめる。
(2)二液型凝集剤の作液方法及び処理方法
二液型凝集剤を用いて処理する場合の凝集剤製造プラント21に於ける作液は、ポリマー水溶液のみの作液になる。一方で使用する無機凝集剤は、液体品であるため、そのまま、混練装置25で添加するか、或いは、一旦、別のタンクで希釈して、混練装置25で添加する。ポリマー溶液は、水道水100重量部に対し、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムの少なくとも一種類以上の無機塩を0重量部〜1.0重量部の範囲で溶解した溶液にポリアクリルアミド加水分解物、アクリルアミドアクリル酸ソーダ共重合物、(テルフロックAH、HS-916;株式会社テルナイト社製品)ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリレートの粉末品或いは逆相エマルジョン品を0.5から1.5重量部の範囲で添加し、本ポリマー水溶液に含まれる高分子凝集剤を粉末換算でセメント混じり排泥中に含まれる乾燥固形分当り0.10〜0.40w/w%の添加率になるように添加、攪拌混合し、高粘性のカンテン状物を形成せしめた後、ポリ塩化アルミニウム、硫酸バンド溶液を0.10から9.0重量部を添加、攪拌混合し、カンテン状凝集物を形成せしめる。
また、具体例として、上述した何れの処理方法においても100m/1日の排泥を処理する場合には、凝集剤液が20m程度必要となるなど、処理対象の排泥総量に比例して凝集剤液の使用量も多くなる。一般的には凝集剤液を工場で製造して現場に持ち込んでいる。しかし、以上のように使用量が多い場合には、工事現場で製造する方が品質及びコスト的に有利となる。
【0021】
図3は凝集剤液製造プラント21で凝集剤液を製造する手順例を示している。この製造では、最初に、水と無機塩を混合し、所要量の無機塩水溶液を作る。その攪拌時間は10sec以上である。次に、無機塩水溶液に凝集剤を順次添加して溶解させる。なお、この製造では、例えば、凝集剤を急激に溶解させると、ゲル化して、いわゆるダマを作り、均一な凝集剤液にならないので、例えば、凝集剤を少しづつ無機塩水溶液に添加して、所要濃度にまで上げることが好ましい。所定濃度に達した後は、全体を攪拌しつつ養生を行う。養生時間は2時間程度であり、養生後は粘調な液となる。養生後は、排泥処理作業に連動して配管系を通じて設備本体20側へポンプ圧送する。
【0022】
(排泥処理設備及び方法)図4と図5は設備本体20の具体的構造を示している。この設備本体20では、矩形立体枠状のフレーム30上にあって、最上段に前述の混練装置25を配置するとともに、その先端下部に位置して混練装置の25の長手方向と直交して振動式分級装置26を配置し、更に分級装置26の排出端下部に位置して該分級装置26と略平行して加圧式分級装置27を配置している。また、フレーム30には、点検等で使用される階段30aが一側部に設けられているとともに、混練装置25の下側スペースに制御盤28などを配置している。なお、以上の設備本体20は、例えば、全体を10トントラック等に他の機材などとともに積載して搬送可能な容積・重量であり、工事現場に搬送した後、簡単な配線や配管を施すことで直ちに稼働できるよう設計されている。
【0023】
そして、この排泥処理操作では、上記した一液型凝集剤を用いる場合、処理対象の排泥を、ほぼ定量ずつ、且つ凝集液を同時に加えつつ混練装置25に導入して練り混ぜることで、ほぼカンテン状の凝集物に処理できる。一方、二液型凝集剤を用いて処理する場合は、処理対象の排泥を、ほぼ定量ずつ、かつポリマー水溶液を同時に加えつつ混練装置25に導入して練り混ぜ、混練装置25の出口部分で、無機凝集剤の水溶液を添加し、混合することにより、ほぼカンテン状の凝集物に処理できる。その後、カンテン状凝集物を後述する混合装置の排出部から下側の振動式分級装置26に落下する。分級装置26では、受け止めた凝集物に振動を加えて当該凝集物から水分の一部を分離しつつ、凝集物を加振方向である装置一端側から他端側へ移送して、不図示のシュート内に落下し、該シュートを介して加圧式分級装置27に投入可能にする。分級装置27では、分級装置26で水分の一部を分離除去した凝集物を内部に受け入れるとともに、ピストン方式でその凝集物を圧縮して強制的に脱水することで略ペレット状の硬固化体に処理し、前開口を閉じている蓋を開操作することでその硬固化体を外部に押し出す。押し出された硬固化体は、上述したベルトコンベア16を介して運搬車両17側に移し替えられる。また、分級装置26と27で脱水された水は、各分級装置26と27の下方へ流下し、図示省略した水槽などに貯留された後、外部に放流されるか、或いは前記セメントミルク製造プラント1や凝集剤液製造プラント21の水として循環使用される。以上のようにして、形態例の排泥処理方法では、処理対象の排泥がペレット状の硬固化体に処理されることによって、容積及び重量共に大幅に圧縮され、減容化及び減量化を達成できる。
【0024】
なお、混練装置25で練り混ぜられた直後の凝集物は、排泥が凝集剤液により緩く固化しているだけで、内部に水分が多く含まれているため、分級条件によっては泥水化したりバラバラになってしまうので、予備試験で分級の操作条件を決める必要がある。具体的には、例えば、加圧式分級装置27の場合だと、カンテン状凝集物に急激な加圧力を加えると、水抜き用の道が固化体の内深くまで確保されず、その結果、固化体表面だけ固まり、内部が泥水化し易い。このため、この分級では、水分分離を確実にする上でプレス速度を300cm/min以下に抑えることが好ましい。この形態例では、そのようにプレス速度を抑えるため、図示のごとく2台の分級装置27を用いることで、前工程とのタクトがとれるようにしている。この場合、2台の分級装置27に対する振分けは、不図示のガイドシュート等で行っている。
【0025】
(混練装置)図6と図9は以上の混練装置25の細部を示している。この混練装置25は、混練室を形成している装置本体40と、装置本体40の一側部に立設された排泥受入用ホッパ41と、ホッパ41の付け根部に配置されてその回転毎に一定量の排泥を装置本体40内に向けて吐出する回転式定量供給手段42とを備えている。
【0026】
装置本体40は、横長状のケーシング43と、ケーシング43の先端部に隔壁44を介して連結されている排出部45とを有しているとともに、回転軸46をケーシング43及び排出部45内を前後に貫通した状態に配置している。回転軸46は、前後の軸端側を外へ突出し、前後の軸受部にて回転自在に支持されている。回転軸46には、ケーシング43内において、受入用スクリュ47と複数の攪拌翼48とが順に軸装され、排出部45内において、排出用スクリュ49が軸装されている。回転軸46は、駆動手段であるモータ50とベルト及びプーリ等を介して回転される。排出部45は少なくともその底面に多数の排出用スリットを形成している。つまり、排出部45は、例えば、U字形の鋼棒材を多数用いて、各鋼棒材を3〜6mm程度の間隔を保って配列支持した構成である。なお、排出部45には、排出量を制御する構成として、例えば、前記スリット幅を調整式にしたり、部分的に加圧することも考えられる。また、前記攪拌翼48は攪拌用スクリュの構成でもよい。攪拌翼48やスクリュ47,49並びに回転軸46には排泥の泥などが付着し易い。その対策としては、例えば、掻落用ブラシを付設したり、翼やスクリュを孔付きに形成したり一部を網目構造にする等、適宜に工夫される。
【0027】
また、定量供給手段42は、図7及び図8に示されるように、通路上側をホッパ41に接続し、通路下側をケーシング43に連結しているハウジング60と、ハウジング60内に回転可能に支持されて軸周囲に放射状に立設した複数の羽根62を有するロ−タ軸61とを有している。そして、定量供給手段42は、ロータ軸61がモータ64により所定速度で回転されると、ホッパ41側から送られてくる排泥を、ケーシング43内のうち、スクリュ47側にほぼ定量つづ吐出する。すると、その排泥は、スクリュ47により前方に送られ、攪拌翼48により後述するようにホッパ41やケーシング43の適宜位置から注入される凝集剤液と練り混ぜられて略カンテン状の凝集物に処理され、次いで、排出部45側の排出用スクリュ49により前記した排出用スリットを通じて、排出部45の下部に設けられている振動式分級装置26上に落下される。
【0028】
ところで、定量供給手段42に供給される排泥中には、小石等の異物が混入していることもあり、それが噛み込みやモータの焼き付きの原因になったり、更に排泥がロータ軸61や羽根62に堆積したまま放置すると、定量供給が維持されず不正確になる。このため、従来装置では定期点検やメンテナンスを頻繁に行わなくてはならない。この点、形態例のものは以下に述べるように工夫されている。
【0029】
すなわち、この形態例では、ハウジング60が内側通路の上下開口及び前後端部を除く内周壁を形成している周囲部をゴム製の弾性板65で構成している。これにより、この構造では、回転中に羽根62と弾性板65の間に小石などを挟み込んでも、弾性板65が外側に弾性変形することで噛み込みを解消し、モータの焼き付きなどを未然に防止できる。
【0030】
また、この形態例では、図7の一部に拡大して示すように、羽根62同士の間にそれぞれ設けられてロータ軸61外周に近い軸側とそれより離れる外側とを画成する隔壁66を有し、各隔壁66に複数の清掃孔67を形成している。すなわち、隔壁66は、羽根同士の間の空間を、ロータ軸61側と外側とに区画している。清掃孔67は、そのロータ軸側空間部から外側空間部へ通じている。一方、ハウジング60は、前後端部に装着されてロータ軸61の各端を軸受している一対のエンドプレート63を有している。エンドプレート63には、軸受孔の近傍に流体導入用ネジ孔68を開口し、該ネジ孔68にホースニップル69が接続されている。これにより、この構造では、例えば、ホースニップル69に圧縮空気や洗浄水用のホースを接続し、空気や水などの流体を圧送することにより、ロータ軸61と隔壁66との間に入り込んだ後、清掃孔67より隔壁66の外側へ噴出し、該噴射力により羽根62に固着した泥等を吹飛ばすことができる。
【0031】
ところで、以上の混練装置25を使用する場合には、排泥に対する、凝集方法、凝集剤の種類、凝集液の添加タイミングが問題になる。これは、同じ混練条件であっても、例えば、排泥の成分や性状によっては混合不足が生じたり、過混合により却ってフロック化し、元の泥水化が生ずることも起きるからである。但し、この傾向は排泥が同一土質であるならば、ほぼ同一傾向を示す。この点、例えば上記した一液型凝集剤を用いた凝集処理方法については、以下に述べるように工夫されている。
【0032】
すなわち、上記一液型凝集剤を用いた凝集処理例において、この形態例では凝集剤液の注入口(ノズル)として、ホッパ41のほか、図9に示すように、装置本体40内を受入用スクリュ47が配置されている導入区画、攪拌翼48が配置されている攪拌区画及び排出部45のある排出区画の三つのゾーンに区画し、各ゾーンに対応させて凝集剤液用の注入口70を付設し、各注入口70を凝集剤液用供給管路に設けられたバルブ71によって切替えることで、最適位置の注入口70を選択使用できるようにしている。これにより、練混条件を決める場合には、例えば、ホッパ41内の注入口70のバルブ71を開、他の3つを閉じて混練作業を行った結果、過混合であったら、次の前記導入区画の注入口70に切り替え、この区画も過混合であったと判断されたら、次の前記攪拌区画の注入口70に切り替えることにより、その土質に応じて適正な添加タイミングを知ることができ、これ以降はその位置を保つことにより、混練作業を常時安定した練り度合で行うことができる。
【0033】
なお、以上の形態例は本発明を何ら制約するものではない。本発明は、請求項1や6で特定される技術要素を備えておればよく、細部は必要に応じて種々変更可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を適用した排泥処理方法の全体の流れを示す概略説明図である。
【図2】上記排泥処理方法の要部を模式化した概略構成図である。
【図3】上記排泥処理方法に使用する凝集剤液を作る製造手順を示す流れ図である。
【図4】上記排泥処理方法に適用される排泥処理設備を示す平面図及び正面図である。
【図5】上記排泥処理設備の背面図と左側面図である。
【図6】上記設備の混練装置を示す平面図と背面図並びに側断面図及び正面図である。
【図7】上記混練装置における定量供給手段を示す模式部分拡大図である。
【図8】上記定量供給手段の模式分解斜視図である。
【図9】上記混練装置の本体部分を示す模式平面図である。
【符号の説明】
【0035】
15…排泥処理プラント(排泥処理設備)
20…設備本体
25…混練装置(手段)
26…振動式分級装置(手段)
27…加圧式分級装置(手段)
40…(混練)装置本体
41…ホッパ
42…定量供給手段
46…回転軸
47,49…スクリュ
48…攪拌翼
50…モータ(駆動手段)
60…ハウジング
61…ロータ軸
62…羽根
65…弾性板
66…隔壁
67…清掃孔
68…ネジ孔(導入孔)
70…注入口(ノズル)
71…バルブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントを含む排泥を取り入れるとともに、該排泥に所定割合で凝集剤液を混練して略カンテン状の凝集物に処理する混練装置において、
内部の回転軸に対して軸一端側から軸他端側に向けて受入用スクリュ、攪拌翼又は攪拌用スクリュ、排出用スクリュを順に軸装している装置本体と、
前記回転軸を回転するモータ等の駆動手段と、
前記装置本体のうち一端側に設けられて前記排泥をほぼ定量づつ前記受入スクリュ側へ吐出移送可能にする定量供給手段と、
前記凝集剤液を装置本体内に導入する凝集剤液用の注入口
とを備えていることを特徴とする排泥処理用混練装置。
【請求項2】
前記凝集剤液用注入口が、前記装置本体内を前記受入用スクリュ、攪拌翼又は攪拌用スクリュ、排出用スクリュ等の配置位置に応じて複数箇所に区分けし、該区分けされた箇所に対応して設けられ、かつ、前記凝集剤液を供給する供給配管に付設されているバルブの切り替えにより選択使用可能になっている請求項1に記載の排泥処理用混練装置。
【請求項3】
前記装置本体のうち、前記排出用スクリュを配置している排出部が、少なくともその底面に多数の排出用スリットを形成している請求項1又は2に記載の排泥処理用混練装置。
【請求項4】
前記定量供給手段は、下側を前記装置本体に接続しているハウジングと、前記ハウジング内に回転可能に支持されて軸周囲に放射状に立設した複数の羽根を有するロ−タ軸とを有しているとともに、前記ハウジングが内周壁を形成している周囲部を弾性板により構成している請求項1に記載の排泥処理用混練装置。
【請求項5】
前記定量供給手段は、下側を前記装置本体に接続しているハウジングと、前記ハウジング内に回転可能に支持されて軸周囲に放射状に立設した複数の羽根を有するロ−タ軸と、前記隣接する羽根同士の間に設けられて前記ロータ軸外周に近い軸側とそれより離れる外側とを画成する隔壁と、前記隔壁に設けられて該隔壁の内外を貫通した清掃孔と、前記ロータ軸の軸受部近傍に設けられた導入孔とを有し、流体が前記導入孔及び前記清掃孔より前記隔壁の内側から外側へ噴出可能になっている請求項1又は4に記載の排泥処理用混練装置。
【請求項6】
混練手段によりセメントを含む排泥に所定割合で凝集剤液を混練して略カンテン状の凝集物に処理する混練工程と、分級手段により前記混練工程で処理された前記凝集物から水分を分離する分級工程とを経る排泥処理方法において、
前記混練手段を請求項1から5の何れかに記載の混練装置にて構成し、かつ、前記分級手段を前記混練装置より下段に配置して、前記混練装置で処理された前記凝集物を直接又はシュート等を介して落下作用にて前記分級手段側へ移送することを特徴とする排泥処理方法。
【請求項7】
前記分級手段は、前記凝集物に振動を加えつつ水分を分離する振動式分級手段、及び/又は、前記凝集物ないしは前記振動式分級手段で水分の一部を分離したものを受け入れて加圧することで水分を分離する加圧式分級手段により構成されている請求項6に記載の排泥処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−7551(P2007−7551A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191470(P2005−191470)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)
【出願人】(390026446)株式会社テルナイト (17)
【Fターム(参考)】