説明

排液、吸引および排液吸引装置

【課題】従来技術の問題を解決し、感染防止機能を有し、かつ患者に拘束感のない排液、吸引、排液吸引装置を提供する。
【解決手段】体表に装着するための面板と、この面板の非接皮側に固定され体内から排出された体液を受け入れるパウチと、このパウチの一端に設けられた排出口とを具備する排液手段と、容器を圧縮して内部の空気を排出した後に圧縮された形状が復元することで内部に吸引圧を発生させて吸引口から体液を吸引するとともに貯留する吸引手段と、前記排液手段の排出口と前記吸引手段の吸引口を液的に連通し前記排液手段が受け入れた体液を前記吸引手段に向けて吸引するための連通手段とを具備し、前記排液手段のパウチと前記吸引手段の容器が前記連通手段に固定されてなるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内にドレーンを置き、創傷部や体腔内に貯留する血液や浸出液などを体外に持続的に誘導させるドレナージに使用する排液、吸引および排液吸引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドレナージは、排出されたものを通して、創傷部の状態を観察、確認し、治癒を促し感染を早期に発見する目的で行い、目的や部位により、閉鎖式ドレナージ、開放式ドレナージ、パウチドレナージが行われる。
【0003】
閉鎖式ドレナージは、体内の創部にドレーンを留置して滲出した体液を集め、ドレーンを体表に設けた開口部を通して体外に設けた吸引装置や貯留バッグに接続して体液を排出させる。このようなドレーンは、例えば、集液部には外面の長手方向に複数の溝を設けて体液と液的に連通させ、流出部は吸引できるように円筒状となっている(特許文献1参照)。ドレーンは開口部のまわりでは表面組織によって密閉され、大気ではなく殺菌された吸引装置にのみ開放されているので、汚染の危険が減じられる。閉鎖式ドレナージは後述する開放式ドレナージに比べて術後の感染リスクが低いためアメリカ疾病予防局(CDC)が推奨している。しかし、患者に拘束感が強く、また持続吸引装置を接続した場合には早期離床の観点から好ましくない。吸引装置として小型の携帯用吸引装置を接続した場合にも、患者が歩行する際には携帯用吸引装置をポシェットに収容して肩から吊り下げる必要があるため、患者のADL(Activity of Daily Life)を低下させている。
【0004】
携帯用吸引装置には、容器を圧縮して内部の空気を排出した後に圧縮された形状が復元することで内部に吸引圧を発生させて体液を吸引するとともに貯留するものでは、軟質の容器の内部に復元手段を設けたもの(特許文献2、3、4参照)、容器を構成する壁部材の弾性を復元力として利用するもの(特許文献5参照)、硬質の容器内に膨張収縮自在の手段を設けたもの(特許文献6参照)等がある。
【0005】
開放式ドレナージは、体内の体液の貯留部位にドレーンの一端を設置し、体液を毛細管現象で体外に誘導し、他端に設けたガーゼ、綿などに吸収させる。主として使用されるペンローズドレーンは肉薄のソフトな材質からなるため患者の拘束感は少ないものの、ガーゼ交換、排液の性状観察に脱衣を必要とし、さらに構造上吸引装置に接続することができず、体液が大気に触れるため感染の機会が高い。
【0006】
このようなペンローズドレーンの問題を解決するため、ドレーン内壁に設けた突起の形状を工夫してドレーンチューブの後端を排液バッグとの接続管に連結できるようにしたものもあるが(特許文献7参照)、患者の拘束感の解消には十分ではない。
【0007】
パウチドレナージは、体表にパウチを装着して排液を管理する方法であり、排液量が多く、持続吸引や頻回のガーゼ・ドレッシングの交換を要するもの、排液に悪臭のあるもの、開放式ドレーンを使用しても閉鎖的に排液管理を行いたいものに適している(特許文献8、9参照)。持続吸引装置に接続した事例としてパウチ内にカテーテルを複数本並べてパウチが密着しないように持続吸引した工夫の報告もある(非特許文献1参照)。しかし、吸引装置に接続しないときにはパウチ内に体液が貯留するため逆行性感染のおそれがあること、また吸引装置を接続した場合には患者に拘束感を生じるものとなっている。
【0008】
【特許文献1】特開2002−224222号公報
【特許文献2】米国特許第4161179号明細書
【特許文献3】特公平2−49747号公報
【特許文献4】特開2002−291869号公報
【特許文献5】特開2001−218830号公報
【特許文献6】特公昭63−1859号公報
【特許文献7】特開2003−235958号公報
【特許文献8】特開平9−192155号公報
【特許文献9】特開2001−231802号公報
【非特許文献1】金川 泰一朗、他2名、“術後管理を効率化するパウチドレナージの工夫 ”、2001年9月、日本大腸肛門病会誌、第54巻第9号、第667頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、感染防止機能を有し、かつ患者に拘束感のない排液、吸引、排液吸引装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る排液吸引装置によれば、上記課題は下記により達成される。体表に装着するための面板と、この面板の非接皮側に固定され体内から排出された体液を受け入れるパウチと、このパウチの一端に設けられた排出口とを具備する排液手段と、容器を圧縮して内部の空気を排出した後に圧縮された形状が復元することで内部に吸引圧を発生させて吸引口から体液を吸引するとともに貯留する吸引手段と、前記排液手段の排出口と前記吸引手段の吸引口を液的に連通し前記排液手段が受け入れた体液を前記吸引手段に向けて吸引するための連通手段とを具備し、前記排液手段のパウチと前記吸引手段の容器が前記連通手段に固定されてなることを特徴とする(請求項1の発明)。また、前記請求項1に記載の排液吸引装置において、前記排液手段のパウチと前記吸引手段の容器が互いに接合されていることを特徴とする(請求項2の発明)。
【0011】
また、排液装置の発明としては、体内に留置したドレーンを覆って体表に装着するための面板と、この面板の非接皮側に固定され前記留置されたドレーンに誘導されてきた体液を受け入れるパウチとを具備する排液装置において、前記パウチの内部に前記ドレーンの端部を受け入れるための受け入れ手段を設けたことを特徴とする(請求項3の発明)。さらに、前記請求項3に記載の排液装置において、前記受け入れ手段が断面形状が扁平である管状部材であることを特徴とする(請求項4の発明)。
【0012】
また、吸引装置の発明としては、軟質の容器を圧縮して内部の空気を排出した後に圧縮された形状が復元することで内部に吸引圧を発生させて体液を吸引するとともに貯留する吸引装置において、前記軟質の容器の内部に、互いに対向して配置された2枚の硬質の板状部材と、該2枚の板状部材の対応する両端部をそれぞれ互いに連結する板ばね部材とからなる復元手段を設けたことを特徴とする(請求項5の発明)。さらに、前記請求項5に記載の吸引装置において、前記硬質の板状部材と前記板ばね部材とが筒状に一体成形された樹脂からなることを特徴とする(請求項6の発明)。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、感染防止機能を有し、かつ患者に拘束感のない排液管理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態について以下に述べる。なお、排液、吸引および排液吸引装置の具体的な構成については、後述する実施例の項で述べる。
【0015】
本発明の排液吸引装置は、面板とパウチを主たる構成とする排液手段と所定の吸引手段とを連通手段に固定して一体化したものである。患者は面板によって排液手段と吸引手段を一体にして装着できるため、従来のパウチドレナージと持続吸引装置を接続したときのような煩わしさから解放される。
【0016】
排液手段の面板に使用する皮膚に貼付する皮膚保護材は、平均3日、最大5日程度連続して皮膚に貼付可能なものであればよく、オストミーパウチに周知のものが使用できる。ドレーン創に対応して開口部を形成した後、体表に貼り付ける。パウチは負圧を印加したときに十分な密封性を有するものであれば、ヒンジを取り付けたドーム型のキャップやジッパーによって開閉できるもの、また開閉手段を有しないもののいずれであってもよい。排液がスムースに排出口に流れるように、パウチの内壁が滑り性のある、例えばメタロセン触媒を用いて製造したポリオレフィン系プラスチックフィルム等が使用できる。また排液がスムースに流れるようにパウチの内部に一端をドレーンに近接させ、他端を排出口に連結させた中実または中空の棒状部材を配設してもよい。
【0017】
吸引手段は平均してマイナス20cmH2O程度の負圧を持続的に発生させるものであって、徒手により容器を圧縮して内部の空気を排出した後に圧縮された形状が復元することで内部に吸引圧を発生させて体液を吸引するものであれば、軟質の容器の内部に復元手段を設けたもの、容器を構成する壁部材の弾性を復元力として利用するもののいずれでもよい。容器は100ml〜300mlの排液を貯留することができ、柔軟な素材であって患者に違和感のないものであればよい。また排液の量や色を容易に観察できるように表を目盛り付きの透明な素材、裏を白色の素材としたものが好ましい。吸引手段の容器には溜まった排液を棄てるためのキャップ付き排出口、排液を排出する際に空気と置換してスムースに排出するための空気取り入れ口が設けられる。
【0018】
連通手段となる連通管には、目詰まりしたときにミルキング操作によって除去可能なように、エチレンプロピレンゴム、水素化ニトリルゴム等の合成ゴム、スチレン系、オレフィン系の熱可塑性エラストマー等の柔軟な材料を使用することができる。
【0019】
連通管の一端には逆流防止弁を設けるとよい。逆流防止弁は軟質の扁平状のチューブであって末端は密着し微小な圧力差によって密着した末端が押し広げられて排出された体液を吸引手段への一方向へのみ流れさせるものが使用できる。また、微圧によって動作できるものであれば自転車の空気入れに使用されるような側面に小孔を設けた有底筒にゴムを張着したものでもよい。逆流防止弁は、吸引手段に貯留された体液が逆行することがないように、吸引手段の容器の壁内面に接触しないように配置されている。
【0020】
排液手段と吸引手段を固定するには排液手段のパウチと吸引手段の容器を連通管に加熱加圧による融着または接着等の方法が適用でき、排液手段のパウチと吸引手段の容器を直接、互いに接合してもよい。
【0021】
また、本発明は、パウチの内部にドレーンの端部を受け入れるための受け入れ手段を設けた排液装置である。受け入れ手段には所定の強度を有する管状部材を使用することができる。排液装置が吸引されたときパウチ内の空気が排出されるとともに軟質なパウチの壁は変形して互いに密着する。受け入れ手段となる管状部材の断面を扁平状にしておくとパウチが管状部材の側面の全周に亘って隙間なく密着しやすくなるため、パウチ内のドレーンの下方では管状部材の内部のみを流路とすることができる。このためドレーンから排出された体液は管状部材の内部に流れ込み、連通管と逆流防止弁を経由して吸引手段へと流れる。扁平形状としては楕円状や半円状、また楕円状や半円状としてさらに両側をナイフエッジ状に薄くした形状となっているとさらにパウチが隙間なく密着するため効果的である。ドレーンを受け入れる管状部材の端部の内径は5〜10mm程度であって、また受け入れた後は体液の定常的な流れを形成できるように断面積が次第に縮小するように形成されていることが好ましい。
【0022】
パウチの底部に対応する管状部材の管壁に小孔を設けておくことにより、体液によって管状部材が目詰まりしたときには、管状部材の外面とパウチの内面の隙間を経由してこの小孔から再び管状部材の内部に入り排出口へと誘導することができる。
【0023】
また、本発明は軟質の容器の内部に、互いに対向して配置された2枚の硬質の板状部材とこの2枚の板状部材の対応する両端部をそれぞれ互いに連結する板ばね部材とからなる復元手段を設けた吸引装置である。外力が加わらない状態では復元手段は拡張して軟質の容器の壁を伸張している。復元手段の2枚の板状部材に対応する容器の表面を外部から手で押すことにより、板ばね部材の部分がより曲げられて2枚の板状部材を近接させる。このとき容器の壁は弛むことなく伸張状態のまま内容積を縮小して内部の空気を排出する。その後、復元手段が圧縮された形状から拡張し容器の壁を内方から押すと、復元手段の復元量に応じて容器の容積が増大し、容器の内部に負圧が発生し、体液を吸引して貯留する。
【0024】
板ばね部材の形状によっては硬質の板状部材の上面と軟質の容器の間に空間が生じる場合がある。この空間は吸引に寄与しないため、予め、硬質の板状部材の上面を軟質の容器の内面に接合しておくとよい。こうすれば、板状部材が密着した状態から、つねに復元手段の変形に応じて追従して容器を変形させて内部に効率よく体液を貯留することができる。
【0025】
硬質の板状部材の材料にはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等が使用される。
【0026】
板ばね部材は円弧状に湾曲したもの、2枚の板ばねをほぼV字状に接合したもの等が使用できる。板ばね部材の材料には前記硬質の板状部材として使用した材料、または熱可塑性エラストマーや合成ゴムを使用することができる。
【0027】
板状部材と板ばね部材から復元手段を製造するには、同種の部材で接着、加熱加圧溶着、または全体を断面が円筒状に一体成形する方法、異種の材料から組み合わせる場合には接着、加熱加圧溶着、または全体を断面が円筒状にインサート成形法によって製造することができる。
【0028】
使用する素材に共通する特性として、耐水性(耐膨潤、耐吸水)、耐アルコール性、耐アルカリ性、EOG(エチレンオキサイドガス)または放射線による耐滅菌処理性等があげられる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例に沿って説明する。
【0030】
(実施例1)
図1に、本発明の第1の実施例である、排液手段と吸引手段とを連通手段に固定して一体化した排液吸引装置の概略構成図を示す。この実施例では排液手段1のパウチ4と吸引手段2の容器5は連通手段である管状部材8の連通部8bに固定されるとともに、さらに排液手段1のパウチ4と吸引手段2の容器5が直接互いに接合されることにより、装置がねじれて使用に支障を来たさないようになっている。
【0031】
管状部材8は熱可塑性エラストマーからなり、上部は図示しないドレーンの端部を受け入れる受け入れ手段となり、上端はパウチのほぼ中央まで延在し断面形状は上部では半円状となっている。また下部は排液手段1と吸引手段2を液的に連通する連通手段となり、下端には逆流防止弁6が下端を吸引手段2の内部に突出させて付設されている。管状部材8の受け入れ部8aと連通部8bとは一体成形で形成することができるが、別々の部材を連結したものでもよい。
【0032】
吸引手段2には復元手段が軟質の袋状の容器を伸張させてその内部に収納されている。復元手段は一対の硬質の板状部材9と図上下に連設された一対の板ばね部材10a、10bとから成る。板ばね部材10a、10bには、それぞれ、逆流防止弁6と開閉用のキャップ11aを有する排出管11に対応して切り込みが設けられている。
【0033】
(実施例2)
図2に本発明の第2の実施例である排液装置の概略構成を、図3にパウチ内に設けられる管状部材の上面図(a)、平面図(b)、側面図(c)を示す。第2の実施例の排液装置は基本的に第1の実施例における排液手段1と同じである。
【0034】
排液装置は、患者の体表面に固定するため接皮側に粘着性の皮膚保護材を設けた面板3、面板3の非接皮側に取り付けられたパウチ4、パウチ4のほぼ中央を水平に開閉するためのジッパー13、パウチ4内に設けられた管状部材8、管状部材8下部の排出部7、排出部7を閉鎖するためのキャップ7aからなる。4bはパウチ4のヒートシール部を示す。
【0035】
パウチ4は全体としてほぼ円形で下部は逆三角形に狭められ、吸引せずに使用するときには排出された体液がスムースに底部に流れ落ちるようになっている。パウチ内に体液を貯留させないで使用する場合にはパウチは小型のものでよい。また吸引装置に接続した場合、吸引を開始すると、まずパウチ内から空気が排出され、この排出された空気によって吸引手段の貯留部の一部が無駄に占有されてしまう。このため、パウチから排出される空気を最小化するためにもパウチ全体をできるだけ小型に構成してある。
【0036】
パウチ内に設けられた管状部材8は、断面が下部では円形、上部ではラッパ状に広がりつつ扁平となっている。管状部材8の内面は平面としても、また毛細管力によって誘導できるように長さ方向にリブを設けたものとしてもよい。またパウチ4の底部に対応する管状部材8の管壁側面には小孔20が形成され、管状部材8の外側でパウチ4の底部に流れ込んできた体液があっても、底部に溜まることなく、この小孔20から管状部材8の内部に流れ込み、管状部材8の排出部7から排出できるようになっている。
【0037】
排液装置を吸引して使用するときにはパウチ4が管状部材8に密着して管状部材8の内部の空間を体液が流れるようになっている。すなわち、ドレーンの端部をこの管状部材8の内側に手技によって配置すると、体内からドレーンの端部に誘導されてきた体液は、ドレーンの端部から溢れ出して管状部材8の内部に流入し、さらに吸引の負圧によって下方へと徐々に流れて排出部7から外部に排出される。このようにパウチ内では吸引による負圧の作用によってドレーンから排出管までのほぼ定常的な流れが形成されるため、パウチ内に体液が溜まることがなく逆行感染のおそれを低減させることができる。
【0038】
(実施例3)
図4に本発明の第3の実施例である吸引装置の概略構成を、図5に吸引機構の模式図を示す。第3の実施例の吸引装置は基本的に第1の実施例における吸引手段2と同じである。なお図5は図4に対して90度回転させた状態の図を示す。また図5では吸引ポート等の細部は省略してある。
【0039】
この吸引手段では、復元手段が軟質の袋状の容器5を伸張させてその内部に収納されている。容器5を構成する軟質の袋は2枚の熱可塑性樹脂シートの周縁をヒートシールして袋状にしてある。復元手段は図の紙面に垂直方向に配置された一対の硬質の板状部材9(9c、9d)の両端にそれぞれ湾曲した板ばね部材10a、10bを連結したものである。板ばね部材10a、10bは図では硬質の板状部材9に接する辺の長さが短い台形状である。
【0040】
容器5と復元手段は、硬質の板状部材9の上面の外周と容器5の壁内面が接合され(9a)、拡張、圧縮の状態にかかわらずつねに復元手段が容器5の内壁に密接するように収容されている。容器5周縁のヒートシール部5aは、復元手段の変化に対応できるように、図4の上下方向では板ばね部材10a、10bの湾曲した外面に接し、図4の左右の板ばね部材10a、10bの両端に対応した部分では若干離間し、左右の中央部では圧縮状態では離間している。
【0041】
復元手段を構成する一対の板ばね部材10a、10bのうち上側の板ばね部材10aには体液を吸引する吸引ポート14と、吸引して貯留された体液を排出するための排液ポート15にそれぞれ対応して2ヶ所に切り込みが形成されている。吸引ポート14は弾性の管状部材であって下端には逆流防止弁が取り付けられている。排液ポート15にはキャップ16が取り付けられる。吸引ポート14、排液ポート15は容器5の袋にヒートシールによって密封して取り付けられている。吸引ポート14と排液ポート15の間には、この吸引装置を吊り下げるための吊り下げ穴17aを形成したタブ17が設けられている。復元手段の硬質の板状部材9には復元手段を圧縮状態のまま保持するロック機構12が設けられている。
【0042】
次に吸引の機構を説明する。復元手段が外力によって圧縮された状態の平面図を図5(a)、図5(a)のA1−A2に沿う断面図を(b)に示す。拡張した状態を(c)(d)に示す。復元手段を同図(b)(d)の上下に圧縮すると2枚の硬質の板状部材9c、9dは密着し、両端の板ばね部材10a、10bは最も湾曲された状態となる。容器5の壁は硬質の板状部材9c、9dの上面に接合されているためA1-A2断面では、全体として、復元手段の外形と同じである。このときのヒートシール部と復元手段との距離をL1とする。
【0043】
復元手段が拡張して2枚の硬質の板状部材9c、9dが離間すると、それに応じて容器5は拡張し、中央側部の壁は内側に食い込んだように変形する。2枚の硬質の板状部材9c、9dが離間した距離L2がL1のほぼ2倍に達すると、容器5中央側部の壁5cは硬質の板状部材に垂直な面を形成し、容器5の壁5c,5dが伸張することにより発生した応力と板ばね部材10a、10bの曲げ応力がバランスしたところで拡張は停止する。このように復元手段はつねに容器5を内方から押して拡張させるため、容器5の拡張に応じた負圧を内部に発生させることができる。
【0044】
図6に吸引機構の他の例を示す。この吸引機構に使用される板ばね部材10c、10dは、それぞれが2枚の湾曲した板ばね部材10c1と10c2, 10d1と10d2を、それぞれV字状に接合したものである。圧縮された状態では全体が平坦となるため図5のものと異なり、板状部材9の上面と容器5の壁の内面は必ずしも接合しておく必要はない。この機構においても拡張状態では容器5はつねに伸張状態となって復元手段の復元量に応じて容器5の内容積、負圧が変化するようになることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施例に係る排液吸収装置の概略構成図。
【図2】本発明の第2の実施例に係る排液装置の概略構成図。
【図3】本発明の管状部材を示す図。
【図4】本発明の第3の実施例に係る吸収装置の概略構成図。
【図5】本発明の吸引機構の模式図。
【図6】本発明の図5とは異なる吸引機構の模式図。
【符号の説明】
【0046】
1:排液手段、2:吸引手段、3:面板、4:パウチ、4a:開口部、4b:パウチのヒートシール部、5:容器、5a:容器のヒートシール部、5c,5d:容器の壁、6:逆流防止弁、7:排出部、7a,11a,16:キャップ、8:管状部材、8a:受け入れ部、8b:連通部、9,9c,9d:硬質の板状部材、9a:容器の壁と板状部材の接合部、10,10a,10b,10c,10d,10c1,10c2,10d1,10d2:板ばね部材、11:排出管、12:ロック機構、13:ジッパー、14:吸引ポート、15:排液ポート、17:タブ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
体表に装着するための面板と、この面板の非接皮側に固定され体内から排出された体液を受け入れるパウチと、このパウチの一端に設けられた排出口とを具備する排液手段と、
容器を圧縮して内部の空気を排出した後に圧縮された形状が復元することで内部に吸引圧を発生させて吸引口から体液を吸引するとともに貯留する吸引手段と、
前記排液手段の排出口と前記吸引手段の吸引口を液的に連通し前記排液手段が受け入れた体液を前記吸引手段に向けて吸引するための連通手段とを具備し、
前記排液手段のパウチと前記吸引手段の容器が前記連通手段に固定されてなることを特徴とする排液吸引装置。
【請求項2】
前記排液手段のパウチと前記吸引手段の容器が互いに接合されていることを特徴とする請求項1に記載の排液吸引装置。
【請求項3】
体内に留置したドレーンを覆って体表に装着するための面板と、この面板の非接皮側に固定され前記留置されたドレーンに誘導されてきた体液を受け入れるパウチとを具備する排液装置において、
前記パウチの内部に前記ドレーンの端部を受け入れるための受け入れ手段を設けたことを特徴とする排液装置。
【請求項4】
前記受け入れ手段が断面形状が扁平である管状部材であることを特徴とする請求項3に記載の排液装置。
【請求項5】
軟質の容器を圧縮して内部の空気を排出した後に圧縮された形状が復元することで内部に吸引圧を発生させて体液を吸引するとともに貯留する吸引装置において、
前記軟質の容器の内部に、互いに対向して配置された2枚の硬質の板状部材と、該2枚の板状部材の対応する両端部をそれぞれ互いに連結する板ばね部材とからなる復元手段を設けたことを特徴とする吸引装置。
【請求項6】
前記硬質の板状部材と前記板ばね部材とが筒状に一体成形された樹脂からなることを特徴とする請求項5に記載の吸引装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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