説明

掘削システム

【課題】ハンマーグラブが地盤上を滑って十分に切削地盤を掴み取ることができないという従来構造の掘削システムの具備する課題を、簡易な改良構造のもとで効果的に解消することのできる、掘削システムを提供する。
【解決手段】シリンダ機構20,30と、ピストンロッド22,32に装着されたシェル81、82からなるハンマーグラブ80と、別途のシリンダ機構10と、シリンダ21、31、11のそれぞれが固有のピストンロッドで内部を二分されてなるそれぞれの分割領域を流体連通する流路系41,42と、ピストンロッド12の一端が昇降する昇降空間72と、その外周に平坦区間とアプローチ区間を有する突起74と、を備えた昇降材70と、これらを一体とする基台50と、からハンマーグラブ制御機構100が形成され、ハンマーグラブ制御機構100と、これを収容するケーシング200と、から掘削システム300が構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場所打ち杭等の基礎工事等において、たとえばケーシング内の掘削土等を掴み出す際に適用されるハンマーグラブ制御機構を備えた、掘削システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
先端に切削チップが装着された鋼管等からなるケーシングを回転もしくは揺動しながら地盤内に立て込み、上方からワイヤ等で吊持され、開閉自在で対向するシェルから構成されたハンマーグラブを開姿勢で自由落下させてケーシング内の地盤に食い込ませ、ハンマーグラブを閉姿勢として地盤を掴み取り、ハンマーグラブを地上へ引き込んで掘削地盤を排出し、これを所定深度まで繰り返しながら地盤内に基礎用縦坑を造成する施工方法が基礎工事において適用されており、一般にオールケーシング工法と称されている。
【0003】
なお、上記するハンマーグラブに関し、シェルの駆動機構につながる油圧配管チューブ、動力ケーブル、ワイヤ等が捩じれて切れたりするのを防止することを目的としたものが特許文献1に開示されている。このハンマーグラブは、筒状基枠の下端部にシェル取付枠を固定し、シェル取付枠に複数個のシェルを枢着し、筒状基枠内にシェル開閉駆動用シリンダを配置し、筒状基枠内に昇降枠を昇降可能に設け、昇降枠内に軸受を介して相対回転可能に取り付けた連結用ロッドにシリンダの下端側を連結し、シリンダの上端側には内軸体とこれに回転可能に外嵌された外筒体とからなるスイベル機構の内軸体を同心状に連結し、外筒体を筒状基枠2側に固定すると共に、内軸体の上端側に吊り下げ接続部を設け、昇降枠とシェルとをリンク機構によって連動連結させ、シリンダの伸縮作動による昇降枠の昇降によってシェルを開閉させるようにしたものである。
【0004】
ところで、上記オールケーシング工法において、ケーシング内で開姿勢のハンマーグラブを構成するシェル先端を地盤に食い込ませ、次いでハンマーグラブを閉姿勢としようとした際に、シェル先端が地盤上を滑ってハンマーグラブが十分に地盤を掴み取ることができず、土砂を掴まないハンマーグラブを上方に引き込む等して、なかなか工事が進捗しないという問題がある。そして、一度このハンマーグラブの地盤上滑りが生じてしまうと、それを解消するのが容易でなく、たとえば、さらに高所からハンマーグラブを自由落下させてシェルの地盤内食い込み量を多くするといった方策や、別途の切削具で表層地盤を掘削し、ハンマーグラブが食い込み易い地盤に到達した段階で再度ハンマーグラブを適用するといった方策などを検討する必要があるものの、前者の場合には、ハンマーグラブの破損や生じ得る振動や騒音が近隣へ伝播するという致命的な問題を有しており、後者の場合には、別途の装置に要するコスト増や作業の煩雑性の問題があって、いずれも得策とは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−138394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、先行して地盤内に挿入されて地盤を切削するケーシングと、このケーシング内に配設されて切削地盤を掴み取るハンマーグラブを制御するハンマーグラブ制御機構と、から構成された掘削システムに関し、ハンマーグラブが地盤上を滑って十分に切削地盤を掴み取ることができないという従来構造の掘削システムの具備する課題を、簡易な改良構造のもとで効果的に解消することのできる、掘削システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明による掘削システムは、第1、第2のシリンダと、それぞれのシリンダ内で進退自在な第1、第2のピストンロッドと、からなる第1、第2のシリンダ機構と、前記第1、第2のピストンロッドの一端に回動自在に装着され、相互に開姿勢と閉姿勢を形成自在な第1、第2のシェルから構成されたハンマーグラブと、第3のシリンダと、該シリンダ内で進退自在な第3のピストンロッドと、からなる第3のシリンダ機構と、第1、第2、第3のシリンダのそれぞれが固有の前記ピストンロッドで内部を2つに分割されて、それぞれ第1の領域および第2の領域をなし、第1、第2、第3のシリンダのそれぞれの第1の領域を流体連通する第1の流路系、および、第1、第2、第3のシリンダのそれぞれの第2の領域を流体連通する第2の流路系と、前記第3のピストンロッドの少なくとも一端が昇降する昇降空間を備え、かつ、その外周に平坦区間と傾斜したアプローチ区間を有する突起を備えた、昇降材と、前記第1、第2、第3のシリンダ機構と、前記第1、第2の流路系と、前記昇降材と、弾性材によって前記第3のピストンロッドの昇降方向に直交する方向に往復自在とされた係止材と、を一体とする基台と、からハンマーグラブ制御機構が形成され、前記ハンマーグラブ制御機構と、これを収容するケーシングと、からなる掘削システムにおいて、前記昇降材が引き上げられた際に、昇降空間に第3のピストンロッドの前記一端が係止され、昇降材がさらに引き上げられることで第3のピストンロッドが第3のシリンダ内を摺動してその第1の領域内に収容されていた流体を第1の流路系を介して第1、第2のシリンダの第1の領域に提供し、提供された流体の流体圧によって第1、第2のピストンロッドが押し込まれることで第1、第2のシェルの開姿勢から閉姿勢への姿勢制御が実行されるようになっており、かつ、この開姿勢から閉姿勢への姿勢制御の際に、昇降材の前記突起が前記弾性材の付勢に抗して係止材を前記ケーシングの内壁面に押し付け、これによって、前記開姿勢から閉姿勢への姿勢制御の際の、ケーシング内におけるハンマーグラブ制御機構の位置決め固定が保障されるものである。
【0008】
本発明の掘削システムは、鋼管等からなるケーシングの先端には切削チップが装備され、ケーシングをベースマシンに装着されたオーガー等にて回転もしくは揺動することで地盤内に挿入し、次いで、その内部にハンマーグラブを具備するハンマーグラブ制御機構を自由落下等することで、開姿勢のハンマーグラブを地盤内に食い込ませ、これを閉姿勢とすることで地盤を掴み取り、排土する基礎工事に供されるものである。
【0009】
ここで、本発明の掘削システムは、このハンマーグラブを閉姿勢制御して切削地盤を掴み取るに際し、ハンマーグラブ制御機構をその外周に位置するケーシングの内壁に押圧してその位置決め固定を図るようになっており、これにより、切削地盤の掴み取りの際にハンマーグラブが地盤上を滑って切削地盤の掴み取りが不十分となることを抑止できるものである。
【0010】
そのための構成として、本掘削システムを構成するハンマーグラブ制御機構は、ハンマーグラブの姿勢変更を直接的に実行する第1、第2のシリンダ機構と、これに作動油等の流体を提供するとともに、これらのシリンダ機構から返ってくる作動油をその動作に有効利用する(第3の)ピストンロッドを具備する第3のシリンダ機構と、この第3のピストンロッドの摺動を実行する際に自身が昇降する昇降材と、この昇降材の移動過程でハンマーグラブ制御機構をケーシングに固定するために移動する係止材と、が基台にて一体に構成されたものとなっている。ここで、昇降材は、たとえば、ケーシング上方からワイヤ等を介して吊持等されており、このワイヤは、地上の油圧ポンプや油圧モータ等の駆動源にて上方に引き込まれるようになっていて、ワイヤの引き込みに同期して昇降材が上方に移動するようになっている。
【0011】
そして、特に、昇降材の周面には突起が設けてあり、係止材はバネ等の弾性材にて付勢されていて、昇降材の移動過程において、この突起に係止材が乗り上げることで該係止材が弾性材の付勢に抗してケーシングの内壁側に張り出し、さらに該内壁に当接し、押圧することで、ハンマーグラブ制御機構のケーシング内における位置決め固定が実現する。したがって、この位置決め固定を保障する所望の押圧力を奏することができるように、突起および係止材の剛性や寸法が設定される。
【0012】
なお、この位置決め固定の際には、2つのシェルは依然として開姿勢を呈しており、昇降材がさらに引き上げられると、今度は、昇降材に開設された昇降空間に第3のピストンロッドの一端が係止され、この時点で第3のピストンロッドの摺動準備がなされる。
【0013】
ところで、第1、第2、第3のシリンダ機構を構成する第1、第2、第3のシリンダはそれぞれ、固有のピストンロッドにてそれぞれの内部空間が二分されており、双方の空間には作動油(圧油)が収容されている。そして、さらに昇降材が上方に引き上げられると、昇降空間で係止された第3のピストンロッドの一端が上方に持ち上げられて該ロッドが上方に摺動し、この摺動により、第3のシリンダの第1の領域に収容されていた作動油が第1の流路系に押し出され、これが第1、第2のシリンダ内に提供されることで、第1、第2のピストンロッドが押し込まれ、これらに回動自在に装着されていた2つのシェルが当初の開姿勢から閉姿勢へ姿勢変更される。
【0014】
そして、この姿勢変更の際、すなわち、第3のシリンダの第1の領域内に収容されていた作動油が第1の流路系を介して第1、第2のシリンダの第1の領域に提供される際には、同時に、第1、第2のシリンダの第2の領域に収容されていた作動油は、双方に固有のピストンロッドから受ける押圧力によって第2の流路系を介して第3のシリンダの第2の領域に提供されるようになっており、このことにより、第3のシリンダに提供された作動油の流体圧によって第3のピストンロッドの摺動が助成され、効率的なピストンロッドの摺動に寄与する。
【0015】
また、上記する突起は、たとえば、両端に位置するテーパー状のアプローチ区間と、この2つのアプローチ区間の間の平坦区間からなり、昇降材(側方の突起)の上方移動によって、係止材がこの突起に乗り上げる際に、まずテーパー状のアプローチ区間を経ることで、該突起の平坦区間への係止材の効率的な乗り上げを保障することができる。
【0016】
また、係止材の先端、すなわち、係止材がケーシングの内壁と当接する先端には、繰り返しの押圧付与によって係止材が損傷するのを抑制するべく、樹脂ゴム等、変形性、圧縮性に優れた保護材を配しておくのがよい。
【0017】
昇降材がさらに引き上げられる過程で、第3のピストンロッドの摺動が進行し、これに起因して第1、第2のピストンロッドの摺動が同期進行することで、2つのシェルは除々に完全な閉姿勢へと移行していき、この際に、切削地盤が該2つのシェル内に掴み取られる。
【0018】
昇降材がさらに引き上げられ、係止材が突起の平坦区間を経て、さらに次のアプローチ区間を経ることで突起上の乗り上げ姿勢が解除される。そして、これにより、ケーシング内におけるハンマーグラブ制御機構の位置決め固定も解除され、閉姿勢のハンマーグラブのケーシングからの引き上げ準備が完了することとなる。
【0019】
上記するように、本発明による掘削システムによれば、ケーシング内部のハンマーグラブが地盤上を滑ることなく効果的に切削地盤を掴み取ることを保障でき、この作用効果に加えて、一連の作動油等の流体の流れをシステム内に好適に取り込んで、シェルの効率的な駆動とこの駆動源であるピストンロッドの効率的な摺動を実現することができる。さらには、ハンマーグラブの開姿勢から閉姿勢への一連の流れの中で、切削地盤の確実な掴み取りと、地盤を掴んだ状態の閉姿勢のハンマーグラブの引き上げ準備と、がスムースに実行される。
【発明の効果】
【0020】
以上の説明から理解できるように、本発明の掘削システムによれば、開閉姿勢制御されるシェルを直接的に駆動する第1、第2のシリンダ機構との間で流体を授受する、第3のシリンダ機構を構成するピストンロッドを移動させる昇降材を組み込み、この昇降材の移動の際にハンマーグラブによる地盤の掴み取りを保障させながら、さらにこの昇降材の移動によってハンマーグラブの開閉姿勢制御を実行することができ、施工性に優れた掘削システムが提供されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の掘削システムに関し、ハンマーグラブが開姿勢でケーシング内に配された状態を説明した模式図である。
【図2】図1の状態に続いて昇降材が上方に移動し、ハンマーグラブ制御機構がケーシング内で位置決め固定された状態を説明した模式図である。
【図3】昇降材の突起上に係止材が乗り上げる前後の状態を説明した模式図であって、(a)は乗り上げる前の状態を示す図であり、(b)は乗り上げた状態を示す図である。
【図4】図2の状態に続いて昇降材がさらに上方に移動し、ハンマーグラブが開姿勢から閉姿勢へ移行している状態を説明した模式図である。
【図5】図4の状態に続いて昇降材がさらに上方に移動し、ハンマーグラブが完全に閉姿勢となり、かつ、ハンマーグラブ制御機構のケーシングへの位置決め固定が解除された状態を説明した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ここで、図1,2,4,5は順に、本発明の掘削システムに関し、ハンマーグラブが開姿勢でケーシング内に配された状態を説明した模式図、図1の状態に続いて昇降材が上方に移動し、ハンマーグラブ制御機構がケーシング内で位置決め固定された状態を説明した模式図、図2の状態に続いて昇降材がさらに上方に移動し、ハンマーグラブが開姿勢から閉姿勢へ移行している状態を説明した模式図、図4の状態に続いて昇降材がさらに上方に移動し、ハンマーグラブが完全に閉姿勢となり、かつ、ハンマーグラブ制御機構のケーシングへの位置決め固定が解除された状態を説明した模式図をそれぞれ示している。また、図3aは図1の係止材付近の拡大図であり、図3bは図2の係止材付近の拡大図である。なお、図示するケーシングを回転もしくは揺動させるオーガー等を備えたベースマシンの図示は省略しており、たとえば図示するハンマーグラブ制御機構100は、ベースマシンのブーム先端からワイヤを介して吊持されるものである。また、ハンマーグラブ制御機構100を構成する各種構成部材が、剛性のある鋼、鉄等の金属素材から形成されることは勿論のことである。
【0023】
図示する本発明の掘削システム300は、その先端に切削チップ201を具備する鋼管等からなるケーシング200と、この内部に配され、自身の自由落下により切削された切削地盤、もしくはケーシング200にて切削された切削地盤を掴み取り、ケーシング外に排土するハンマーグラブ制御機構100と、から大略構成される。
【0024】
ここで、ハンマーグラブ制御機構100の構成を詳述する。
ハンマーグラブ制御機構100は、基台50の内部に、第1、第2、第3のシリンダ機構20、30、10を内蔵している。
【0025】
これら第1、第2のシリンダ機構20,30はそれぞれ、第1、第2のシリンダ21、31と、それぞれのシリンダ21、31内で進退自在な第1、第2のピストンロッド22、32と、から構成されており、第1、第2のピストンロッド22、32の先端には第1、第2のシェル81,82が回動自在に装着され、ハンマーグラブ80を構成している。なお、これら2つのシェル81,82は、それらの一端が第1、第2のピストンロッド22、32に装着され、それらの他端が枢動固定部51に回動自在に固定されており、これが回動支点を形成している。
【0026】
基台50内にはさらに別途の第3のシリンダ機構10が内蔵されており、第3のシリンダ機構10と第1、第2のシリンダ機構20,30との間で作動油の授受が実行され、各シリンダ機構のピストンロッド22、32、12が駆動される。
【0027】
より具体的には、第1、第2、第3のシリンダ21、31、11はそれぞれ、固有のピストンロッド22、32、12でそれらの内部空間が二分され、それぞれに固有の第1の領域と第2の領域を有し、各シリンダ機構の第1の領域同士が第1の流路系41で流体連通され、各シリンダ機構の第2の領域同士が第2の流路系42で流体連通されている。
【0028】
また、第3のピストンロッド12の一端には係合材73が装着され、これが、昇降材70の本体71の内部に画成された昇降空間72内で昇降自在に収容されている。この昇降材70の本体71にはさらに、その周面にケーシング200の内壁側に突の突起74が具備されている。
【0029】
上記する突起74は、たとえば図示のごとき縦断面視が台形を呈し、筒状の本体71をリング状に包囲するものであり、この断面視においては、たとえば図3bで示すように、2つのテーパー状のアプローチ区間平坦区間74b,74bと、その間の平坦区間74aとからなる輪郭を有している。
【0030】
一方、基台50にはさらに、弾性材63によって付勢され、第3のピストンロッド12の昇降方向(図4で示すY2方向)に直交する方向(図1のX方向)で往復自在とされた係止材60が装備されている。
【0031】
この係止材60は、本体61と、その先端に装着された弾性のある保護材62と、からなり、図1および図3aで示す状態、すなわち、係止材60が突起74に乗り上げられていない状態においては、保護材62はケーシング200とは離間しており、図2および図3bで示す状態、すなわち、係止材60が突起74の平坦区間74aに乗り上げられている状態においては、保護材62はケーシング200の内壁に当接し、ハンマーグラブ80が開姿勢から閉姿勢に移行する際にハンマーグラブ制御機構100全体を不動状態とするに要する押圧力:Qにてケーシング200を押圧する(X1方向)。
【0032】
次に、図1〜図5の順に、掘削システム300の一連の作動態様を説明する。
図1では、不図示の地盤内にケーシング200が挿入され、ハンマーグラブ制御機構100を構成する開姿勢のハンマーグラブ80をなす2つのシェル81、82が地盤内に食い込んでいる。
【0033】
この状態においては、第3のピストンロッド12の一端に装着された係合材73は昇降材70の昇降空間72の下端に係合されていない。
【0034】
ハンマーグラブ制御機構100を吊持するワイヤWを上方に引き込み力:Pで引っ張ると、図2で示すように、昇降材70は上方に移動し(Y1方向)、この上方移動の過程で、図3aから図3bで示すごとく、係止材60は、弾性材63の付勢に抗して昇降材70側方の突起74を、その一方のアプローチ区間74bを介して乗り上げ、その平坦区間74aに移行し、この段階で既述する所定の押圧力:Qにてケーシング200の内壁を押圧して、ハンマーグラブ制御機構100のケーシング200内における位置決め固定が実行される。
【0035】
図3a,bから明らかなように、突起74がテーパー状のアプローチ区間74bを有していることで、係止材60の突起70上への乗り入れがスムースとなる。
【0036】
そして、この図2で示す段階において、第3のピストンロッド12の一端に装着された係合材73は昇降材70の昇降空間72の下端に当接される。
【0037】
さらにワイヤWを上方へ引っ張ると、図4で示すように、係合材73は昇降材70に係合された姿勢で該昇降材70とともに上方へ移動され、この係合材73の上方移動によって第3のピストンロッド12の上方移動が実行される(Y2方向)。
【0038】
第3のピストンロッド12が上方に移動する際にピストンから作用する圧力により、第3のシリンダ11の上方空間(第1の領域)内の作動油Gが、第1の流路系41を介して第1、第2のシリンダ21、31の上方空間(第1の領域)へ押出される(Z1方向)。
【0039】
第1、第2のシリンダ21、31に流入した作動油Gによる流体圧により、第1、第2のピストンロッド22、32が下方へ押し込まれ(Y3方向)、この押込み力により、第1、第2のシェル81、82が開姿勢から閉姿勢へ移行しはじめる(Y4方向)。
【0040】
また、第1、第2のピストンロッド22、32が下方へ押し込まれることで、第1、第2のシリンダ21、31の下方空間(第2の領域)内の作動油Gの一部は、第2の流路系42を介して第3のシリンダ11の下方空間(第2の領域)に押出され(Z2方向)、第3のシリンダ11の下方空間に流入した作動油Gの流体圧により、第3のピストンロッド12の上方移動がより一層促進される。
【0041】
そして、この第1、第2のシェル81、82の閉姿勢への移行時(切削地盤を掴み取る際)に、ハンマーグラブ制御機構100は、その構成部材である係止材60がケーシング200に対して押圧姿勢を維持していることで、閉姿勢への移行時にハンマーグラブ80が地盤上を滑ることが抑止される。
【0042】
さらにワイヤWを上方へ引っ張ると、図5で示すように、係止材60は突起74から脱落してケーシング200に対する押圧姿勢を解除し、それと同時に、ハンマーグラブ80は完全に閉姿勢となり、所定量の切削地盤をその内部に掴み取った状態となっている。
【0043】
すなわち、ハンマーグラブ80が完全に閉姿勢を形成すると同時に、ハンマーグラブ制御機構100はケーシング200との位置決め固定が解除され、上方への引き上げ用意が同時に完了しているのである。
【0044】
上記するように、本発明の掘削システム300を適用することにより、開閉姿勢制御されるシェル81,82を直接的に駆動する第1、第2のシリンダ機構20,30との間で流体を授受する、第3のシリンダ機構10を構成するピストンロッド12を移動させる昇降材70を組み込み、この昇降材70の移動の際にハンマーグラブ80による地盤の掴み取りを保障させながら、さらにこの昇降材70の移動によってハンマーグラブの開閉姿勢制御を効率的に実行することができる。また、確実な切削地盤の取り込みに加えて、ハンマーグラブ80による地盤の取り込みとハンマーグラブの引き上げ準備とを同時に実行できることから、基礎工事の施工効率を従来構造のシステムに比して格段に向上させることができるものである。
【0045】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0046】
10…第3のシリンダ機構、11…第3のシリンダ、12…第3のピストンロッド、20…第1のシリンダ機構、21…第1のシリンダ、22…第1のピストンロッド、30…第2のシリンダ機構、31…第2のシリンダ、32…第3のピストンロッド、41…第1の流路系、42…第2の流路系、50…基台、51…枢動固定部、60…係止材、61…本体、62…保護材、63…弾性材(付勢材、バネ)、70…昇降材、71…本体、72…昇降空間、73…係合材、74…突起、74a…平坦区間、74b…アプローチ区間、80…ハンマーグラブ、81…第1のシェル、82…第2のシェル、100…ハンマーグラブ制御機構、200…ケーシング、201…切削チップ、300…掘削システム、W…ワイヤ、G…作動油

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1、第2のシリンダと、それぞれのシリンダ内で進退自在な第1、第2のピストンロッドと、からなる第1、第2のシリンダ機構と、
前記第1、第2のピストンロッドの一端に回動自在に装着され、相互に開姿勢と閉姿勢を形成自在な第1、第2のシェルから構成されたハンマーグラブと、
第3のシリンダと、該シリンダ内で進退自在な第3のピストンロッドと、からなる第3のシリンダ機構と、
第1、第2、第3のシリンダのそれぞれが固有の前記ピストンロッドで内部を2つに分割されて、それぞれ第1の領域および第2の領域をなし、第1、第2、第3のシリンダのそれぞれの第1の領域を流体連通する第1の流路系、および、第1、第2、第3のシリンダのそれぞれの第2の領域を流体連通する第2の流路系と、
前記第3のピストンロッドの少なくとも一端が昇降する昇降空間を備え、かつ、その外周に平坦区間と傾斜したアプローチ区間を有する突起を備えた、昇降材と、
前記第1、第2、第3のシリンダ機構と、前記第1、第2の流路系と、前記昇降材と、弾性材によって前記第3のピストンロッドの昇降方向に直交する方向に往復自在とされた係止材と、を一体とする基台と、からハンマーグラブ制御機構が形成され、
前記ハンマーグラブ制御機構と、これを収容するケーシングと、からなる掘削システムにおいて、
前記昇降材が引き上げられた際に、昇降空間に第3のピストンロッドの前記一端が係止され、昇降材がさらに引き上げられることで第3のピストンロッドが第3のシリンダ内を摺動してその第1の領域内に収容されていた流体を第1の流路系を介して第1、第2のシリンダの第1の領域に提供し、提供された流体の流体圧によって第1、第2のピストンロッドが押し込まれることで第1、第2のシェルの開姿勢から閉姿勢への姿勢制御が実行されるようになっており、
かつ、この開姿勢から閉姿勢への姿勢制御の際に、昇降材の前記突起が前記弾性材の付勢に抗して係止材を前記ケーシングの内壁面に押し付け、これによって、前記開姿勢から閉姿勢への姿勢制御の際の、ケーシング内におけるハンマーグラブ制御機構の位置決め固定が保障される、掘削システム。
【請求項2】
第3のシリンダの第1の領域内に収容されていた流体が第1の流路系を介して第1、第2のシリンダの第1の領域に提供される際に、第1、第2のシリンダの第2の領域に収容されていた流体が第2の流路系を介して第3のシリンダの第2の領域に提供され、提供された流体の流体圧によって第3のピストンロッドの摺動を助成するようになっている、請求項1に記載の掘削システム。
【請求項3】
前記突起の前記アプローチ区間を経ることで、該突起の前記平坦区間への前記係止材の乗り上げが保障される、請求項1または2に記載の掘削システム。
【請求項4】
前記昇降材がさらに引き上げられ、前記係止材が前記突起の前記平坦区間を経て、さらに次のアプローチ区間を経ることで突起上の乗り上げ姿勢が解除され、これによって、ケーシング内におけるハンマーグラブ制御機構の位置決め固定が解除され、かつ、閉姿勢のハンマーグラブのケーシングからの引き上げ準備が完了する、請求項1〜3のいずれかに記載の掘削システム。
【請求項5】
前記流体は作動油であり、前記シリンダは油圧シリンダである、請求項1〜4のいずれかに記載の掘削システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−149152(P2011−149152A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8915(P2010−8915)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(593157758)株式会社エーコー (8)
【出願人】(309017965)朝日技研株式会社 (2)
【Fターム(参考)】