掘削ビットと掘削ケーシング
【課題】 特に大礫又は玉石等の硬岩層に効率よく掘削ケーシングを圧入していくことを目標とした掘削ビットを提供する。
【解決手段】 旋回させながら土中に圧入させる掘削ケーシング2のケーシング本体21の下端部に取り付ける回転型ビット1であって、ケーシング本体21の下端部に固定する箱体12と、この取付本体12に支持させる回転軸13と、この回転軸13に嵌着する押圧ディスク11とからなり、押圧ディスク11は凸周面113を形成した主ディスク部111から前記凸周面113の外径以下で回転軸方向に補強ディスク部112を膨出させた回転型ビット1である。
【解決手段】 旋回させながら土中に圧入させる掘削ケーシング2のケーシング本体21の下端部に取り付ける回転型ビット1であって、ケーシング本体21の下端部に固定する箱体12と、この取付本体12に支持させる回転軸13と、この回転軸13に嵌着する押圧ディスク11とからなり、押圧ディスク11は凸周面113を形成した主ディスク部111から前記凸周面113の外径以下で回転軸方向に補強ディスク部112を膨出させた回転型ビット1である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大礫又は玉石等の硬質層に対する掘削効率の優れた掘削ビットと、これを用いた掘削ケーシングとに関する。
【背景技術】
【0002】
基礎工事等を目的として、旋回させながら土中に圧入させる掘削ケーシングは、金属製円筒であるケーシング本体の下端部に各種掘削ビットを取り付けた構造で、ケーシング本体を旋回(自転)させて掘削ビットにより土中をケーシング本体の範囲(ケーシング本体の水平断面を含む円環状の範囲)で掘削し、圧入していく。掘削ビットは、ビット本体の先端に硬質金属又はセラミック等からなる掘削用チップを取り付けた固定型ビットと、回転するローラ表面又はディスク周縁に前記掘削用チップを取り付けた回転型ビットとがある。各種固定型ビット又は回転型ビットは、掘削対象となる地層に合わせて種々の構成のものを選択又は組み合わせて用いられる。
【0003】
特許文献1は、掘削面に回転させながら接触させて掘削するカッタと、このカッタを保持するシャンク(支持枠)とから構成される回転型ビット(掘削用ビット)を提案している。カッタは、周縁に掘削用チップを埋め込む等して構成した掘削刃部(特許文献1[0017]参照)を有するカッタ本体と、このカッタ本体から突出する回転軸(ジャーナル)とからなり、カッタは前記掘削刃部のみをシャンク先端面より外方に突出させて、回転可能に保持されている。掘削ケーシングは、前記回転型ビットをケーシング本体の下端部に多数取り付けた構成である。
【0004】
【特許文献1】特開平10-252372号公報(2頁〜3頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の回転型ビットは、カッタ本体から突出させた回転軸をシャンクに設けた軸受け(軸受空間)に嵌め込んで、保持されている。これから、回転型ビット1基当たりの耐荷重性能は、軸受けに嵌め込まれる回転軸の長さに左右されることになる。ここで、掘削面の掘削に寄与するのはカッタ、特に掘削刃部であり、シャンクは掘削に寄与しないことから、シャンクの大型化は好ましくない。これから、特許文献1の回転型ビットは、シャンクの大きさが制約される結果、1基当たりの耐荷重性能もあまり大きくできないことが分かる。
【0006】
掘削ビット1基当たりの耐荷重性能が低い場合、掘削ケーシングに取り付ける際、より多くの掘削ビットを用いることが考えられる。しかし、特許文献1の回転型ビットは、従来の固定型ビットを周方向に多数並べた構成と同じであることから、1基当たりの単価は当然固定型ビットより高いと考えられるので、できるだけ使用数を少なくする方が好ましいことになる。しかも、特許文献1の回転型ビットは、掘削後回収することなく埋め殺しされることを想定しているから、特許文献1の回転型ビットを用いる掘削ケーシングは、コスト面から実用性が低い。
【0007】
更に、特許文献1の回転型ビットは、掘削刃部の欠損により、長寿命又は高い掘削効率を発揮できない虞れがある。具体的には、回転するカッタの掘削刃部が形成する平面視の軌跡は直線であるが、旋回するケーシング本体が形成する平面視の軌跡は円弧であるため、掘削ケーシングを旋回、圧入させていく過程で掘削刃部に捻れの力が加わることになり、この捻れの力が掘削刃部を欠損させる可能性がある。そこで、特に大礫又は玉石等の硬岩層に効率よく掘削ケーシングを圧入していくことを目標とし、1基当たりの耐荷重性能が必要十分で単価が安く、しかも確実に長寿命又は高い掘削効率を発揮できる掘削ビットを開発するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
検討の結果開発したものが、旋回させながら土中に圧入させる掘削ケーシングのケーシング本体の下端部に取り付ける掘削ビットであって、ケーシング本体の下端部に固定する取付本体と、この取付本体に支持させる回転軸と、この回転軸に嵌着する押圧ディスクとからなり、押圧ディスクは凸周面を形成した主ディスク部から前記凸周面の外径以下で回転軸方向に補強ディスク部を膨出させた掘削ビット、すなわち回転型ビットである。押圧ディスクは、円滑な押圧ディスクの回転が保証されれば直接的に嵌着してもよいが、ベアリングを介して嵌着することが望ましい。
【0009】
本発明と特許文献1とは同じ回転型ビットであるが、次の点で相違し、特に大礫又は玉石等に対する働きが異なっている。まず、本発明の回転型ビットは、押圧ディスクから突出した回転軸をシャンクに嵌めて支持するのではなく、取付本体に支持された回転軸に押圧ディスクを直接又はベアリングを介して嵌着している。これから、回転軸は固定で、回転軸に嵌着した押圧ディスクが掘削ケーシングの旋回につれて回転する。ここで、前記押圧ディスクは主ディスク部と補強ディスク部とからなるため、回転軸に支持される範囲が長くなり、掘削ビットとしての耐荷重性能を高めることができる。
【0010】
また、本発明の回転型ビットは、掘削用チップを並べた掘削刃部により大礫又は玉石等を掘削するのではなく、凸周面を形成した押圧ディスクを回転させて前記凸周面を大礫又は玉石等に押し付けて割り、更に押圧ディスクを押し込んで割れた大礫又は玉石等をケーシング本体の内外に押し分ける。このとき、主ディスク部及び補強ディスク部からなる肉厚の押圧ディスクは、分断された大礫又は玉石等を大きく押し分けることができ、およそケーシング本体の範囲から大礫又は玉石等を除外できる。
【0011】
本発明の回転型ビットは、上記押圧ディスクを次の構成にすることでより効率的に大礫又は玉石等を分断し、押し分けていくことできる。すなわち、押圧ディスクは、主ディスク部の凸周面が断面楔状で、この主ディスク部から前記凸周面の裾下縁の半径以下で回転軸方向に補強ディスク部を膨出させるとよい。断面楔状の凸周面は、大礫又は玉石等に押し込んで大きく分断できるので、掘削ケーシングの掘削効率を高めることができる。
【0012】
分断した大礫又は玉石等は、次に示す構成の押圧ディスクを用いることで、効率よくケーシング範囲から除外できる、すなわち、押圧ディスクは、凸周面の厚みで略扁平な主ディスク部と、この主ディスク部の片面又は両面から回転軸方向に膨出させた略円柱状の補強ディスク部とから構成し、押圧ディスクの半径方向で補強ディスク部を超える主ディスク部の部分を取付本体から突出させる構成にする。この押圧ディスクの断面形状は、補強ディスク部が主ディスク部の片面からのみ膨出している場合、鍔付きの帽子(ハット)状になる。この押圧ディスクは、前記鍔に相当する部分、すなわち押圧ディスクの半径方向で補強ディスク部を超える主ディスク部の部分を、分断された大礫又は玉石等に深く押し込んで、押し分けることができる。
【0013】
また、分断した大礫又は玉石等をケーシング範囲から除外する押圧ディスクは、凸周面の厚みで略扁平な主ディスク部と、この主ディスク部の前記凸周面の片側又は両側から連続した傾斜面を有する略円錐台状の補強ディスク部とから構成し、押圧ディスクの半径方向で補強ディスク部の最小外径を超える補強ディスク部及び主ディスク部の部分を取付本体から突出させてもよい。この押圧ディスクの断面形状は、補強ディスク部が主ディスク部の片面からのみ膨出している場合、補強ディスク部の最小外径部分から凸周面に至る傾斜側面を有する錐台状になる。この押圧ディスクは、前記鍔に相当する部分、すなわち補強ディスク部の最小外径を超える補強ディスク部及び主ディスク部の部分を、分断された大礫又は玉石等に深く押し込むと共に、広く押し分けることができる。
【0014】
このように、押圧ディスクは大礫又は玉石等を割り、押し分ける働きから構造を特定することが望ましい。これに対し、押圧ディスクを嵌着する回転軸を安定して支持するため、取付本体は回転軸を片持ち支持する構成にすることもできる。しかし、ケーシング本体の半径方向で対向する一対の支持部材から構成し、回転軸をこの支持部材間に架設して支持させる方が好ましい。この取付本体は、回転軸にかかる荷重を一対の支持部材に分けて受けることで、各支持部材に要求される構造強度を抑えており、それだけ支持部材が小型化できる結果、取付本体自体を小型化することができる。
【0015】
取付本体は、ケーシング本体の半径方向で対向する一対の支持面から構成し、回転軸を前記支持面間に架設して支持させる構成がより好ましい。これは、支持面を含む壁面から構成される箱体に回転軸を架設し、前記箱体に押圧ディスクを収納した回転型ビットを具体的に例示できる。本発明の回転型ビットも、特許文献1同様、回転する押圧ディスクの凸周面が形成する平面視の軌跡は直線であるのに対し、旋回するケーシング本体が形成する平面視の軌跡は円弧であるため、捻れの力が押圧ディスクから回転軸を経て取付本体に伝達される。支持面を含む壁面から構成される箱体として構成した取付本体は、こうした捻れの力に対抗する構造強度を有し、安定して回転軸を支持し、押圧ディスクの回転を保証する。
【0016】
取付本体は、押圧ディスクを嵌着する回転軸を支持しているため、回転型ビットの進行方向前後から、掘削面上の土砂、大礫又は玉石等に接触する可能性がある。これから、こうした掘削面上の土砂、大礫又は玉石等により取付本体が変形又は破損しないように、取付本体は、回転型ビットの進行方向前側又は後側にこの取付本体の保護手段を設けるとよい。この保護手段は、単に取付本体に直接土砂、大礫又は玉石等を接触させないカバーでもよいが、進行する取付本体の下縁部の軌跡上に配した掘削用チップから構成することが好ましい。前記掘削の掘削用チップは、掘削面を掘削するのではなく、回転型ビットの進行方向において、取付本体に接触する可能性のある土砂、大礫又は玉石等を掘削する。
【0017】
このほか、本発明の回転型ビットは大礫又は玉石等を割り、ケーシング本体内外に押し開くことを目的としており、ケーシング本体の外面の接線方向と押圧ディスクの回転とが完全に一致する必要はない。すなわち、回転軸は、ケーシング本体の略半径方向を向き、押圧ディスクはケーシング本体の外面の略接線方向で回転すればよい。押圧ディスクの回転とケーシング本体の外面の接線方向とがずれると、上記捻れの力が大きくなったり、偏在することになるが、既述したように、動かない回転軸は取付本体に安定かつ強固に支持できるため、ケーシング本体の外面の接線方向と押圧ディスクの回転とが多少ずれたぐらいでも、安定して押圧ディスクを回転させることができる。
【0018】
本発明の回転型ビットを用いた掘削ケーシングは、次のように構成するとよい。すなわち、ケーシング本体の下端部に掘削ビットを取り付け、旋回させながら土中に圧入させる掘削ケーシングであって、掘削ビットは凸周面を形成した主ディスク部から前記凸周面の外径以下で回転軸方向に補強ディスク部を膨出させた押圧ディスクを、ケーシング本体の下端部に固定する取付本体に支持させた回転軸に嵌着した回転型ビットであり、ケーシング本体の半径方向で最も外側に位置する取付本体、回転軸又は押圧ディスクがこのケーシング本体の外面に内接する位置関係で、前記掘削ビットをケーシング本体の下端部に取り付けた掘削ケーシングとする。
【0019】
回転型ビットにより割ることのできる大礫又は玉石等は、ケーシング本体の範囲に限定されず、回転する押圧ディスクの凸周面を押し付けることのできる範囲に及ぶ。これから、ケーシング本体の半径方向外側へはみ出すように回転型ビットを取り付けても、ケーシング本体を含む広い範囲で大礫又は玉石等を割り、掘削ケーシングを圧入できる。しかし、土中に圧入した掘削ケーシングは、ケーシング本体内をくり抜いても、ケーシング本体外に隙間を残すことは好ましくない。これから、回転型ビットにより大礫又は玉石等を割る働きは、ケーシング本体の外面から内側に留め、かつ掘削ケーシングの旋回を容易にするため、ケーシング本体の外面からはみ出さないように回転型ビットを取り付けるとよい。
【0020】
回転型ビットは、単純な金属製の円筒のケーシング本体の下端部に直接取り付けてもよいが、ケーシング本体の下端部に設けた環状フランジに取り付けた方が好ましい。既述したように、取付本体はケーシング本体の半径方向に対向する一対の支持部から構成したり、一対の支持面を含む壁面からなる箱体として構成するため、一定の幅を有する。これから、前記幅に相当する環状フランジに取り付けることで、取付本体はケーシング本体に強固に取り付けることができる。また、製造上の利便性から、掘削ビットは、ケーシング本体と別体の環状フランジに取り付け、この環状フランジをケーシング本体の下端部に取り付けてもよい。環状フランジに対する取付本体の取付やケーシング本体に対する別体の環状フランジの取付には、従来公知のボルト等の結合手段や、溶接等の固着手段を用いることができる。
【0021】
掘削ケーシングには、既述した構造又は構成の回転型ビットを複数用いる。ここで、掘削効率を向上させる観点から、回転型ビットは、主ディスク部から回転軸方向に膨出する補強ディスク部の膨出方向又は膨出量が異なる複数をビット単位とし、このビット単位でケーシング本体の下端部に取り付けるとよい。ビット単位を構成する各回転型ビットは、補強ディスク部の膨出方向又は膨出量を異ならせることで、それぞれ凸周面が描く軌跡をケーシング本体の半径方向にずらし、同じ大礫又は玉石等の広い範囲に各凸周面を交互に押し付けることで割りやすくし、またより大きく押し分けることができるようにする。
【0022】
好ましいビット単位は、主ディスク部からケーシング本体の半径方向内側に補強ディスク部を膨出させた内周側の回転型ビットと、主ディスク部からケーシング本体の半径方向外側に補強ディスク部を膨出させた外周側の回転型ビットとを組み合わせた構成(説明の便宜上、以下ダブルビット単位と呼ぶ)である。このダブルビット単位を構成する各回転型ビットの凸周面は、ケーシング本体の半径方向に近接しながら異なる2条の軌跡を描き、各凸周面の幅で大礫又は玉石等を割り、前記各凸周面の幅で割れた大礫又は玉石等を押し開いていく。
【0023】
また、ビット単位は、主ディスク部からケーシング本体の半径方向内側に補強ディスク部を膨出させた内周側の回転型ビットと、前記内周側の掘削ビットの補強ディスク部の半分の膨出量で主ディスク部からケーシング本体の半径方向内側及び外側にそれぞれ補強ディスク部を膨出させた中間周側の回転型ビットと、そして前記内周側の回転型ビットの補強ディスク部に等しい膨出量で主ディスク部からケーシング本体の半径方向外側に補強ディスク部を膨出させた外周側の回転型ビットとを組み合わせた構成(説明の便宜上、以下トリプルビット単位と呼ぶ)にしてもよい。このトリプルビット単位を構成する各回転型ビットの凸周面は、ケーシング本体の半径方向に近接しながら異なる3条の軌跡を描き、内周側及び中間周側の各凸周面の幅と中間周側及び外周側の各凸周面の幅とでそれぞれ大礫又は玉石等を割り、内周側及び外周側の各凸周面の幅で割れた大礫又は玉石等を押し開いていく。
【0024】
上記ダブルビット単位及びトリプルビット単位に対し、補強ディスク部の膨出方向又は膨出量をより細かくして、4種類以上の回転型ビットを組み合わせたビット単位を構成することも考えられる。しかし、このように多くの回転型ビットを用いる場合。ビット単位を多種類の回転型ビットで構成するのではなく、ダブルビット単位又はトリプルビット単位をそれぞれ複数単位用いるか、両者を組み合わせるとよい。
【0025】
このように、ビット単位は、ケーシング本体の半径方向にずれた凸周面を有する掘削ビットの組であればよく、ビット単位を構成する回転型ビットを連続又は近接してケーシング本体の下端部に取り付けてもよい。しかし、旋回する掘削ケーシングにおける重量バランスを考慮し、回転型ビットの集中配置により大礫又は玉石等を割る働きがケーシング本体の周方向で均等に発揮されるように、ビット単位を構成する複数の回転型ビットを周方向に等間隔で配することが好ましい。更に、ビット単位を2組以上用いる場合、各ビット単位を構成する複数の回転型ビットを周方向に等間隔で配し、かつ全回転型ビットを周方向に等間隔で配するとよい。
【0026】
このほか、回転型ビットの進行方向において、掘削面上の土砂、大礫又は玉石等から取付本体を保護するには、既述したように、各回転型ビットに保護手段を設ければよい。しかし、掘削ケーシングとして考えた場合、取付本体に支持させた回転軸に押圧ディスクを嵌着した回転型ビットのほか、掘削用チップを設けた固定型ビットを用い、回転型ビットの進行方向前側又は後側で固定型ビットをケーシング本体の下端部に取り付けることもできる。こうした異種の掘削ビットを組み合わせて掘削効率の向上を図る掘削ケーシングは、従来にも見られるが、本発明の掘削ケーシングでは、回転型ビットで大礫又は玉石等を割り、固定型ビットで掘削面上の土砂、大礫又は玉石等を取り除いて取付本体を保護する役割分担があり、掘削効率は主に回転型ビットで決定される点が相違する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の掘削ビット(回転型ビット)により、特に大礫又は玉石等の硬岩層に効率よく圧入できる掘削ケーシングを提供できるようになる。既述したように、硬岩層は大礫又は玉石等のほかには、掘削ケーシングの圧入を阻害する要因がないため、前記大礫又は玉石等の影響を除外できれば、かえって掘削効率が上がる。具体的には、本発明の掘削ビットを用いた掘削ケーシングの圧入は、数cm/分の掘削効率を誇ることができ、これまで数日を要した基礎工事等が、およそ1日で終えることができる。こうした掘削効率は、軟岩層に対する掘削ケーシングの圧入でもあまり見られないことから、本発明による高い掘削効率の効果が理解できる。
【0028】
しかも、本発明の掘削ビットは、1基当たりの耐荷重性能が必要十分で単価が安く、使用する数量を抑えながら、上記掘削効率を実現できる利点がある。例えば、本発明の掘削ビットは、埋め殺しにしてもコスト的に採算が見合うものとなり、上述の掘削効率の向上と合わさって、高い経済性を発揮する。従来の掘削を利用した掘削ケーシングでも、コストをかければ掘削効率を向上させることはできるものの、それでも本発明の高い掘削効率には及ばない。これから、本発明による高い経済性の効果が理解できる。
【0029】
このほか、本発明の掘削ビットは押圧ディスクに掘削用チップを用いなくていないため、回転軸又は取付本体の変形又は破損等の事態が生じない限り、掘削ビットとしての寿命を心配をする必要がない利点がある。これから、本発明に基づく掘削ケーシングは、任意の大きさのものを使用でき、しかも深度を問わず圧入していくことができる。これは、本発明が適用できる基礎工事等の場面に制約がなく、広く上記掘削効率の向上や高い経済性を享受できることを意味する。このように、本発明は、掘削効率の向上という性能面の改善をもたらしながら、高い経済性を発揮し、基礎工事の規模等を問わず、大礫又は玉石等の硬岩層であれば掘削ケーシングを圧入させることのできる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1は本発明の回転型ビット1を取り付けたケーシング本体21の下端部を上方から見た掘削ケーシング2の部分斜視図、図2はケーシング本体21の下端部を下方から見た掘削ケーシング2の部分斜視図、図3は掘削ケーシング2の底面図、図4は掘削ケーシング2の部分垂直断面図、図5はケーシング本体21と回転型ビット1を取り付けたビット側環状フランジ22との組付関係を表す図1相当斜視図、図6は本例の回転型ビット1を上方から見た斜視図、図7は本例の回転型ビット1を上方から見た分解斜視図、図8は本例の回転型ビット1の平面図、図9は正面方向から見た図8中A−A断面図、図10は背面方向から見た図8中A−A断面図、図11は図8中B−B断面図、図12は別例の回転型ビット4の図6相当斜視図である。
【0031】
本例の掘削ケーシング2は、図1〜図5に見られるように、本発明に基づく回転型ビット1,1を点対称に一対配した構成(ケーシング本体21の周方向に180度の等間隔で配した構成)である。各回転型ビット1は同じ仕様であるが、主ディスク部111の片面のみから補強ディスク部112を膨出させた断面鍔付き帽子状であるため、両回転型ビット1の押圧ディスク11の向きを揃えて配することにより、各回転型ビット1の押圧ディスク11における主ディスク部111の凸周面113が描く軌跡を内外に分けることができる。これから、本例は、一方が内周側の回転型ビット1、他方が外周側の回転型ビット1であるダブルビット単位を1組配した掘削ケーシング2の例である。
【0032】
各回転型ビット1は、直接ケーシング本体21の下端部に取り付けているのではなく、ケーシング本体21の下端部に設けたケーシング側環状フランジ23にボルト24及びナット25により着脱自在としたビット側環状フランジ22に取り付けている(図5参照)。ここで、各回転型ビット1は、取付本体の支持面121,15を構成する箱体12がビット側環状フランジ22の外周に内接するように配しており、ケーシング本体21のケーシング側環状フランジ23にビット側環状フランジ22を接続した際、ケーシング本体21の外面から各回転型ビット1が半径方向外側にはみ出さないようにしている。本例では、更に各回転型ビット1間にケーシング本体21の外面に相似で、回転型ビット1の箱体12の高さの倣い周面27を設け、回転型ビット1の内側へ大礫又は玉石等が潜り込まないようにしている。
【0033】
本例では、回転型ビット1,1の中間に、各回転型ビット1の箱体12の保護手段として、固定型ビット26,26を取り付けている。各固定型ビット26は、図3に見られるように、回転型ビット1の箱体12における各支持面121,15の幅に合わせ、ケーシング本体21の半径方向に2基ずつ並べて設けている。また、各固定型ビット26は、図4に見られるように、回転型ビット1の箱体12の下縁よりわずか(図4中Δ)に下方へ突出する掘削用チップ261を有している。これにより、回転型ビット1の箱体12に接触する可能性のある土砂、大礫又は玉石等を掘削用チップ261で掘削し、前記箱体12を保護できる。
【0034】
このように、固定型ビット26は、回転型ビット1の回転方向から回転型ビット1の箱体12に接触する可能性のある土砂、大礫又は玉石等を掘削し、回転型ビット1の箱体12を保護する。これから、箱体12の保護手段が回転型ビット1の進行方向前側又は後側に存在すればよいことがわかる。そこで、図12に見られるように、特に回転型ビットの回転方向前側で回転型ビットの箱体に接触する可能性のある土砂、大礫又は玉石等から箱体を防ぐため、回転型ビット4の進行方向前側にあたる箱体41前面に固定型ビット42を一体に設けてもよい。この場合も、前記固定型ビット42は、回転型ビット4の箱体41の下縁よりわずかに下方へ突出する掘削用チップ43を有していれば、箱体41に接触する虞れのある土砂、大礫又は玉石等を掘削し、箱体41を保護することができる。
【0035】
本例の回転型ビット1は、図6〜図11に見られるように、ビット側環状フランジ22に固定する取付本体である箱体12と、この箱体12がケーシング本体21の半径方向内外に対向させる支持面121,15に支持させる回転軸13と、この回転軸13に嵌着する押圧ディスク11とからなる。取付本体である箱体12は、一方の支持面121を構成する平坦な受け壁面122と、残る他方の支持面121を構成し、前記受け壁面122に開先を付き当てて溶接する囲い壁面123とからなる。この箱体12は上下に開放しており、上縁をビット側環状フランジ22に溶着し、下方の開放部分から押圧ディスク11を突出させる。
【0036】
回転軸13は、箱体12の対向する支持面121,121それぞれに設けた各軸受孔124,124に架設し、軸端面131を支持面121に倣わせた状態で溶着しており、回転不能に固定している。本例の回転軸13は、ケーシング本体21の半径方向を向いているため、この回転軸13に嵌着する押圧ディスク11の回転面はケーシング本体21の接線方向を向いている。押圧ディスク11は、凸周面113の厚みで略扁平な主ディスク部111と、この主ディスク部111の片面から回転軸方向に膨出させた略円柱状の補強ディスク部112とから構成している。この押圧ディスク11は、軸孔114にベアリング(図示略)を内装して前記回転軸13に嵌着している。本例の回転型ビット1は、回転軸13を箱体12の各支持面121に対して下縁寄りに設け、図9〜図11に見られるように、押圧ディスク11の半径方向で補強ディスク部112を超える主ディスク部111の部分を箱体12の下縁から突出させている。
【0037】
次に、上記回転型ビット1をケーシング本体21の下端部に取り付けた掘削ケーシング2が大礫又は玉石等の硬岩層を掘削していく様子について説明する。図13は回転型ビット1が硬岩層に達した段階の地中を表した断面図、図14は硬岩層51の玉石52に外周側の回転型ビット1の押圧ディスク11を押し付けている状態を表した図13中B矢視部相当断面図、図15は同じ玉石52に内周側の回転型ビット1の押圧ディスク11を押し付けている状態を表した図13中B矢視部相当断面図、図16は同じ玉石52に再び外周側の回転型ビット1の押圧ディスク11を押し付けている状態を表した図13中B矢視部相当断面図であり、図17は同じ玉石52を割ってケーシング本体21の内外に押し分けている状態を表した図13中B矢視部相当断面図である。
【0038】
本発明の回転型ビット1は、硬岩層51の大礫又は玉石を掘削するのではなく、押圧ディスク11の凸周面113を押し当てることにより筋付けを図り、前記筋に従って圧潰、ケーシング本体21の内外に押し分けて、掘削ケーシング2の圧入を実現する。押圧ディスク11が硬岩層51に至るまでの軟岩層53では、図13に見られるように、掘削ケーシング2の圧入だけで回転型ビット1を十分押し込むことができるほか、本例のように、回転型ビット1と共に固定型ビット26を配しておくことで、必要充分な掘削が可能である。
【0039】
まず、硬岩層51にある玉石52に、外周側の回転型ビット1が到達すると、玉石52に前記外周側の回転型ビット1が有する押圧ディスク11の凸周面113が押し当てられ、この玉石52の上面に筋付けがされ、場合によっては図14に見られるように、小さな亀裂521が刻み込まれる。掘削ケーシング2が半回転すると、今度は同じ玉石52に内周側の回転型ビット1が有する押圧ディスク11の凸周面113が押し当てられ、この玉石52の上面の別の部分に筋付けがされ、場合によっては図15に見られるように、小さな亀裂522が刻み込まれる。
【0040】
更に掘削ケーシング2が半回転すると、再び外周側の回転型ビット1が有する押圧ディスク11の凸周面113が玉石52の上面に押し当てられ、図16に見られるように、先に刻んだ亀裂521,522を拡大させ、最終的には玉石52を分断する。ここで、本例のように、玉石52の上面に対して内外に分かれて交互に各回転型ビット1の押圧ディスク11の凸周面113をそれぞれ別の部分に押し当てることで、玉石52を広範囲で圧潰し、ケーシング本体21の内外へ大きく分断できる。これにより、更に圧入が進んだ掘削ケーシング2は、図17に見られるように、押圧ディスク11の主ディスク部111を大きな亀裂523から玉石52に割り込ませ、ケーシング本体21の内外へ押し分けることができる。この場合も、各回転型ビット1の押圧ディスク11における主ディスク部111は、ケーシング本体21の半径方向にずれているため、それぞれが分断された玉石52を押し分けることになり、ケーシング本体21に対しては大きく押し開くことができる。
【0041】
図18はトリプルビット単位を構成する3種の回転型ビット1,3をケーシング本体21の下端部に取り付けた掘削ケーシング2の図3相当底面図、図19は中間周側の回転型ビット3の図8相当平面図であり、図20は中間周側の回転型ビット3を正面方向から見た図8中A−A相当断面図である。本例は、上述したダブルビット単位を構成する回転型ビット1に、中間周側の回転型ビット3を加えてトリプルビット単位を構成した例である。各回転型ビット1,3に対しては、進行方向前側に固定型ビット26,26を取り付け、各回転型ビット1,3の箱体12,32を保護している。
【0042】
各回転型ビットは、同じ大礫又は玉石等に押し当てるそれぞれの主ディスク部の凸周面がケーシング本体の半径方向にずれていることにより、効率よく大礫又は玉石等を分断できることは、上述した通りである。これから、主ディスク部111から回転軸方向の一方に補強ディスク部112を膨出させた内周側及び外周側の回転型ビット1に対し、図19及び図20に見られるように、主ディスク部311から回転軸方向の両方に補強ディスク部312,312を膨出させた中間周側の回転型ビット3を加えてトリプルビット単位を構成すると、より効率的に大礫又は玉石等を分断できる。本例では、各回転型ビット1,3による負荷をケーシング本体21の周方向へ均等に分散させるため、図18に見られるように、トリプルビット単位を構成する回転型ビット1,3をケ?シング本体21の周方向に等間隔で配している。
【0043】
ここで、中間周側の回転型ビット3における主ディスク部311の凸周面313は、内外周側の回転型ビット1における主ディスク部111の凸周面113の間にあればよい。しかし、各凸周面113,313による大礫又は玉石等の筋又は亀裂は、できるだけ相互に離れていることが望ましいため、本例の中間周側の回転型ビット3における押圧ディスク31は、主ディスク部311から回転軸方向内外へ均等に補助ディスク部312,312を膨出させ、主ディスク部311の凸周面313を内外周側の回転型ビット1における主ディスク部311の凸周面313の丁度中間に位置するように設定している。
【0044】
図21は別例の回転型ビット6,7を組み合わせたトリプルビット単位α,βを2組組み合わせてケーシング本体21の下端部に直接取り付けた掘削ケーシング2の図3相当底面図、図22は本例の掘削用ケーシング2の図2相当底面図、図23は外周側の別例の回転型ビット6の図8相当平面図、図24は外周側の別例の回転型ビット6を正面方向から見た図8中A−A相当断面図、図25は中間周側の別例の回転型ビット7の図8相当平面図であり、図26は中間周側の別例の回転型ビット7を正面方向から見た図8中A−A相当断面図である。内周側の回転型ビット6は、押圧ディスク61の向きが外周側の回転型ビット6と逆向きになっているだけなので、図23及び図24を参照するに留め、単独図示は省略している。
【0045】
本例の各回転型ビット6,7は、図22〜図26に見られるように、凸周面613,713の厚みで略扁平な主ディスク部611,711と、この主ディスク部611,711の前記凸周面613,713の片側又は両側から連続した傾斜面を有する略円錐台状の補強ディスク部612,712とから構成されている。補強ディスク部612が主ディスク部611の凸周面613,の片側から連続しているものが内周側又は外周側の回転型ビット6、補強ディスク部712が主ディスク部711の凸周面713の両側に連続しているものが中間周側の回転型ビット7である。内周側の回転ビット6と外周側の回転型ビット6とは同じもので、それぞれ押圧ディスク61の向きを反転させている。
【0046】
本例の各回転型ビット6,7は、上述の回転型ビット1(図6〜図11参照)のように、主ディスク部611,711と補強ディスク部612,712との間に凹面部分がなく、略円錐台状の外観を有しているため、補強ディスク部612,712による主ディスク部61,71の補強の程度が高く、主ディスク部611,711が捻れに強くなっている。また、こうした回転型ビット6,7は、補強ディスク部612,712を含めて全体が一体の楔状断面を構成しているので、図24及び図26に見られるように、各押圧ディスク61,71の半径方向で補強ディスク部612,712の最小外径を超える補強ディスク部612,712及び主ディスク部611,711の部分を取付本体である箱体62,72から突出させるとよい。
【0047】
ケーシング本体が大きくなると、掘削ケーシングの推力(圧入力)は概ねケーシング本体に比例して大きくなる。この場合、多くの回転型ビットを用いることにより、前記推力を回転型ビットの個数で割った値が各回転型ビットの耐荷重を下回るようにする。本例の掘削ケーシング2は、比較的大きなケーシング本体21を用い、ビット側環状フランジ及びケーシング側環状フランジを用いずに各回転型ビット6,7を直接ケーシング本体21の下端に取り付けた例で、上記トリプルビット単位α,βを2組、計6基の回転型ビット6,7を用い、各回転型ビット6,7にかかる荷重を小さくしている。多数の回転型ビット6,7を用いる理由は、各回転型ビット6,7当たりにかかる荷重を小さくすることが目的であるから、本例のほか、ダブルビット単位を3組用いてもよいし、すべてが異仕様の回転型ビットを必要数以上用いてもよい。
【0048】
本例では、ケーシング本体21に対する負荷を周方向に均等に分配するため、一方のトリプルビット単位αを構成する各回転型ビット6,7と、他方のトリプルビット単位βを構成する各回転型ビット6,7とをそれぞれ周方向に等間隔で配し、かつ全回転型ビットビット6,7を周方向に等間隔で配し、各回転型ビット6,7の進行方向前側及び後側、すなわち各回転型ビット6,7の中間位置に固定型ビット25,25を2基ずつ配している。この場合、各トリプルビット単位α,βを構成する回転型ビット6,7をまとめて連続する位置関係に並べることも考えられる。本例では、トリプルビット単位α,βを構成する各回転型ビット6,7を120度間隔で並べ、各トリプルビット単位α,βを180度ずらして、全回転型ビット6,7を等間隔に配している。これにより、各トリプルビット単位α,βを構成する各回転型ビット6,7は交互に並ぶことになり、また隣り合う回転型ビット6,7は異なる軌跡を描くため、同じ大礫又は玉石の分断、押し分けがより効率的に進めることができる
【実施例】
【0049】
本発明に基づく掘削ケーシングが、特に硬岩層に適しているか否かを確認するため、ダブルビット単位を1組だけ取り付けた小型の試験用掘削ケーシングを作成し、模擬硬岩層に対して掘削試験を実施した。
【0050】
試験用掘削ケーシングは、上記図23〜図25例示の回転型ビットを2個1組としてダブルビット単位を構成し、図1〜図3に見られるように、外径470mmのケーシング本体の下端部に点対称の位置関係で各回転型ビットを取り付け、各回転型ビットの中間位置に固定型ビットを取り付けた構成である。各回転型ビットは、主ディスク部の凸周面が外径145mmで、補強ディスク部を含めた厚みが44mmの押圧ディスクを箱体内の直径30mmの回転軸にベアリングを介して嵌着し、補強ディスク部から主ディスク部の凸周面にかけて、箱体の下縁から47mm突出させている。
【0051】
模擬硬岩層は、100〜300mm大の玉石をモルタルで固めた外径700mm、深さ300mmの扁平な円形ブロックである。ここで、玉石をモルタルで固めた理由は、実際の硬岩層の玉石相互が位置固定されている状態を再現するためである。この模擬硬岩層は、玉石間に充填、固化したモルタルの存在により、実際の硬岩層よりも固い地盤になっている。
【0052】
掘削試験は、試験用掘削ケーシングと模擬硬岩層との中心を揃え、5t〜8tにかけて徐々に推力を増加しながら、7rpmで試験用掘削ケーシングを模擬硬岩層に圧入していく手順で実施した。試験結果を表1に示す。表1中、掘削距離20mmからの結果である。
【0053】
【表1】
【0054】
表1から明らかなように、試験用掘削ケーシングの圧入速度は非常に速いもので、毎分10mm弱を誇る。この掘削速度において、玉石は25mm〜100mm大に分断され、ケーシング本体の内外に押し分けられていた。これから、本発明の掘削ケーシングは従来に比べて相当に速い掘削速度を有することが分かる。考察すれば、試験結果はコンクリートで玉石を固めた模擬硬岩層に対するものであり、実際の硬岩層には大礫又は玉石の間に流動性を備えた土砂が存在するため、大礫又は玉石はより割れやすく、また押し開かれやすくなり、更に掘削速度が高まることが推定される。このようにして、本発明は、特に硬岩層に対する掘削効率を高める効果があることが証明された。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の回転型ビットを取り付けたケーシング本体の下端部を上方から見た掘削ケーシングの部分斜視図である。
【図2】ケーシング本体の下端部を下方から見た掘削ケーシングの部分斜視図である。
【図3】掘削ケーシングの底面図である。
【図4】掘削ケーシングの部分垂直断面図である。
【図5】ケーシング本体と回転型ビットを取り付けた環状フランジとの組付関係を表す図1相当斜視図である。
【図6】本例の回転型ビットを上方から見た斜視図である。
【図7】本例の回転型ビットを上方から見た分解斜視図である。
【図8】本例の回転型ビットの平面図である。
【図9】正面方向から見た図8中A−A断面図である。
【図10】背面方向から見た図8中A−A断面図である。
【図11】図8中B−B断面図である。
【図12】別例の回転型ビットの図6相当斜視図である。
【図13】回転型ビットが硬岩層に達した段階の地中を表した断面図である。
【図14】硬岩層の玉石に外周側の回転型ビットの押圧ディスクを押し付けている状態を表した図13中B矢視部相当断面図である。
【図15】同じ玉石に内周側の回転型ビットの押圧ディスクを押し付けている状態を表した図13中B矢視部相当断面図である。
【図16】同じ玉石に再び外周側の回転型ビットの押圧ディスクを押し付けている状態を表した図13中B矢視部相当断面図である。
【図17】同じ玉石を割ってケーシング本体の内外に押し分けている状態を表した図13中B矢視部相当断面図である。
【図18】トリプルビット単位を構成する3種の回転型ビットをケーシング本体の下端部に取り付けた掘削ケーシングの図3相当底面図である。
【図19】中間周側の回転型ビットの図8相当平面図である。
【図20】中間周側の回転型ビットを正面方向から見た図8中A−A相当断面図である。
【図21】別例の回転型ビットを組み合わせたトリプルビット単位を2組組み合わせてケーシング本体の下端部に直接取り付けた掘削ケーシングの図3相当底面図である。
【図22】本例の掘削用ケーシング2の図2相当底面図である。
【図23】外周側の別例の回転型ビットの図8相当平面図である。
【図24】外周側の別例の回転型ビットを正面方向から見た図8中A−A相当断面図である。
【図25】中間周側の別例の回転型ビットの図8相当平面図である。
【図26】中間周側の別例の回転型ビットを正面方向から見た図8中A−A相当断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 回転型ビット(図1〜図11)
11 押圧ディスク
111 主ディスク部
112 補強ディスク部
113 凸周面
12 箱体
121 支持面
13 回転軸
2 掘削ケーシング
21 ケーシング本体
26 固定型ビット
261 掘削用チップ
3 回転型ビット
31 押圧ディスク
4 別例の回転型ビット
41 箱体
42 固定型ビット
43 掘削用チップ
6 回転型ビット
61 押圧ディスク
62 箱体
7 回転型ビット
71 押圧ディスク
72 箱体
α 一方のトリプルビット単位
β 他方のトリプルビット単位
【技術分野】
【0001】
本発明は、大礫又は玉石等の硬質層に対する掘削効率の優れた掘削ビットと、これを用いた掘削ケーシングとに関する。
【背景技術】
【0002】
基礎工事等を目的として、旋回させながら土中に圧入させる掘削ケーシングは、金属製円筒であるケーシング本体の下端部に各種掘削ビットを取り付けた構造で、ケーシング本体を旋回(自転)させて掘削ビットにより土中をケーシング本体の範囲(ケーシング本体の水平断面を含む円環状の範囲)で掘削し、圧入していく。掘削ビットは、ビット本体の先端に硬質金属又はセラミック等からなる掘削用チップを取り付けた固定型ビットと、回転するローラ表面又はディスク周縁に前記掘削用チップを取り付けた回転型ビットとがある。各種固定型ビット又は回転型ビットは、掘削対象となる地層に合わせて種々の構成のものを選択又は組み合わせて用いられる。
【0003】
特許文献1は、掘削面に回転させながら接触させて掘削するカッタと、このカッタを保持するシャンク(支持枠)とから構成される回転型ビット(掘削用ビット)を提案している。カッタは、周縁に掘削用チップを埋め込む等して構成した掘削刃部(特許文献1[0017]参照)を有するカッタ本体と、このカッタ本体から突出する回転軸(ジャーナル)とからなり、カッタは前記掘削刃部のみをシャンク先端面より外方に突出させて、回転可能に保持されている。掘削ケーシングは、前記回転型ビットをケーシング本体の下端部に多数取り付けた構成である。
【0004】
【特許文献1】特開平10-252372号公報(2頁〜3頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の回転型ビットは、カッタ本体から突出させた回転軸をシャンクに設けた軸受け(軸受空間)に嵌め込んで、保持されている。これから、回転型ビット1基当たりの耐荷重性能は、軸受けに嵌め込まれる回転軸の長さに左右されることになる。ここで、掘削面の掘削に寄与するのはカッタ、特に掘削刃部であり、シャンクは掘削に寄与しないことから、シャンクの大型化は好ましくない。これから、特許文献1の回転型ビットは、シャンクの大きさが制約される結果、1基当たりの耐荷重性能もあまり大きくできないことが分かる。
【0006】
掘削ビット1基当たりの耐荷重性能が低い場合、掘削ケーシングに取り付ける際、より多くの掘削ビットを用いることが考えられる。しかし、特許文献1の回転型ビットは、従来の固定型ビットを周方向に多数並べた構成と同じであることから、1基当たりの単価は当然固定型ビットより高いと考えられるので、できるだけ使用数を少なくする方が好ましいことになる。しかも、特許文献1の回転型ビットは、掘削後回収することなく埋め殺しされることを想定しているから、特許文献1の回転型ビットを用いる掘削ケーシングは、コスト面から実用性が低い。
【0007】
更に、特許文献1の回転型ビットは、掘削刃部の欠損により、長寿命又は高い掘削効率を発揮できない虞れがある。具体的には、回転するカッタの掘削刃部が形成する平面視の軌跡は直線であるが、旋回するケーシング本体が形成する平面視の軌跡は円弧であるため、掘削ケーシングを旋回、圧入させていく過程で掘削刃部に捻れの力が加わることになり、この捻れの力が掘削刃部を欠損させる可能性がある。そこで、特に大礫又は玉石等の硬岩層に効率よく掘削ケーシングを圧入していくことを目標とし、1基当たりの耐荷重性能が必要十分で単価が安く、しかも確実に長寿命又は高い掘削効率を発揮できる掘削ビットを開発するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
検討の結果開発したものが、旋回させながら土中に圧入させる掘削ケーシングのケーシング本体の下端部に取り付ける掘削ビットであって、ケーシング本体の下端部に固定する取付本体と、この取付本体に支持させる回転軸と、この回転軸に嵌着する押圧ディスクとからなり、押圧ディスクは凸周面を形成した主ディスク部から前記凸周面の外径以下で回転軸方向に補強ディスク部を膨出させた掘削ビット、すなわち回転型ビットである。押圧ディスクは、円滑な押圧ディスクの回転が保証されれば直接的に嵌着してもよいが、ベアリングを介して嵌着することが望ましい。
【0009】
本発明と特許文献1とは同じ回転型ビットであるが、次の点で相違し、特に大礫又は玉石等に対する働きが異なっている。まず、本発明の回転型ビットは、押圧ディスクから突出した回転軸をシャンクに嵌めて支持するのではなく、取付本体に支持された回転軸に押圧ディスクを直接又はベアリングを介して嵌着している。これから、回転軸は固定で、回転軸に嵌着した押圧ディスクが掘削ケーシングの旋回につれて回転する。ここで、前記押圧ディスクは主ディスク部と補強ディスク部とからなるため、回転軸に支持される範囲が長くなり、掘削ビットとしての耐荷重性能を高めることができる。
【0010】
また、本発明の回転型ビットは、掘削用チップを並べた掘削刃部により大礫又は玉石等を掘削するのではなく、凸周面を形成した押圧ディスクを回転させて前記凸周面を大礫又は玉石等に押し付けて割り、更に押圧ディスクを押し込んで割れた大礫又は玉石等をケーシング本体の内外に押し分ける。このとき、主ディスク部及び補強ディスク部からなる肉厚の押圧ディスクは、分断された大礫又は玉石等を大きく押し分けることができ、およそケーシング本体の範囲から大礫又は玉石等を除外できる。
【0011】
本発明の回転型ビットは、上記押圧ディスクを次の構成にすることでより効率的に大礫又は玉石等を分断し、押し分けていくことできる。すなわち、押圧ディスクは、主ディスク部の凸周面が断面楔状で、この主ディスク部から前記凸周面の裾下縁の半径以下で回転軸方向に補強ディスク部を膨出させるとよい。断面楔状の凸周面は、大礫又は玉石等に押し込んで大きく分断できるので、掘削ケーシングの掘削効率を高めることができる。
【0012】
分断した大礫又は玉石等は、次に示す構成の押圧ディスクを用いることで、効率よくケーシング範囲から除外できる、すなわち、押圧ディスクは、凸周面の厚みで略扁平な主ディスク部と、この主ディスク部の片面又は両面から回転軸方向に膨出させた略円柱状の補強ディスク部とから構成し、押圧ディスクの半径方向で補強ディスク部を超える主ディスク部の部分を取付本体から突出させる構成にする。この押圧ディスクの断面形状は、補強ディスク部が主ディスク部の片面からのみ膨出している場合、鍔付きの帽子(ハット)状になる。この押圧ディスクは、前記鍔に相当する部分、すなわち押圧ディスクの半径方向で補強ディスク部を超える主ディスク部の部分を、分断された大礫又は玉石等に深く押し込んで、押し分けることができる。
【0013】
また、分断した大礫又は玉石等をケーシング範囲から除外する押圧ディスクは、凸周面の厚みで略扁平な主ディスク部と、この主ディスク部の前記凸周面の片側又は両側から連続した傾斜面を有する略円錐台状の補強ディスク部とから構成し、押圧ディスクの半径方向で補強ディスク部の最小外径を超える補強ディスク部及び主ディスク部の部分を取付本体から突出させてもよい。この押圧ディスクの断面形状は、補強ディスク部が主ディスク部の片面からのみ膨出している場合、補強ディスク部の最小外径部分から凸周面に至る傾斜側面を有する錐台状になる。この押圧ディスクは、前記鍔に相当する部分、すなわち補強ディスク部の最小外径を超える補強ディスク部及び主ディスク部の部分を、分断された大礫又は玉石等に深く押し込むと共に、広く押し分けることができる。
【0014】
このように、押圧ディスクは大礫又は玉石等を割り、押し分ける働きから構造を特定することが望ましい。これに対し、押圧ディスクを嵌着する回転軸を安定して支持するため、取付本体は回転軸を片持ち支持する構成にすることもできる。しかし、ケーシング本体の半径方向で対向する一対の支持部材から構成し、回転軸をこの支持部材間に架設して支持させる方が好ましい。この取付本体は、回転軸にかかる荷重を一対の支持部材に分けて受けることで、各支持部材に要求される構造強度を抑えており、それだけ支持部材が小型化できる結果、取付本体自体を小型化することができる。
【0015】
取付本体は、ケーシング本体の半径方向で対向する一対の支持面から構成し、回転軸を前記支持面間に架設して支持させる構成がより好ましい。これは、支持面を含む壁面から構成される箱体に回転軸を架設し、前記箱体に押圧ディスクを収納した回転型ビットを具体的に例示できる。本発明の回転型ビットも、特許文献1同様、回転する押圧ディスクの凸周面が形成する平面視の軌跡は直線であるのに対し、旋回するケーシング本体が形成する平面視の軌跡は円弧であるため、捻れの力が押圧ディスクから回転軸を経て取付本体に伝達される。支持面を含む壁面から構成される箱体として構成した取付本体は、こうした捻れの力に対抗する構造強度を有し、安定して回転軸を支持し、押圧ディスクの回転を保証する。
【0016】
取付本体は、押圧ディスクを嵌着する回転軸を支持しているため、回転型ビットの進行方向前後から、掘削面上の土砂、大礫又は玉石等に接触する可能性がある。これから、こうした掘削面上の土砂、大礫又は玉石等により取付本体が変形又は破損しないように、取付本体は、回転型ビットの進行方向前側又は後側にこの取付本体の保護手段を設けるとよい。この保護手段は、単に取付本体に直接土砂、大礫又は玉石等を接触させないカバーでもよいが、進行する取付本体の下縁部の軌跡上に配した掘削用チップから構成することが好ましい。前記掘削の掘削用チップは、掘削面を掘削するのではなく、回転型ビットの進行方向において、取付本体に接触する可能性のある土砂、大礫又は玉石等を掘削する。
【0017】
このほか、本発明の回転型ビットは大礫又は玉石等を割り、ケーシング本体内外に押し開くことを目的としており、ケーシング本体の外面の接線方向と押圧ディスクの回転とが完全に一致する必要はない。すなわち、回転軸は、ケーシング本体の略半径方向を向き、押圧ディスクはケーシング本体の外面の略接線方向で回転すればよい。押圧ディスクの回転とケーシング本体の外面の接線方向とがずれると、上記捻れの力が大きくなったり、偏在することになるが、既述したように、動かない回転軸は取付本体に安定かつ強固に支持できるため、ケーシング本体の外面の接線方向と押圧ディスクの回転とが多少ずれたぐらいでも、安定して押圧ディスクを回転させることができる。
【0018】
本発明の回転型ビットを用いた掘削ケーシングは、次のように構成するとよい。すなわち、ケーシング本体の下端部に掘削ビットを取り付け、旋回させながら土中に圧入させる掘削ケーシングであって、掘削ビットは凸周面を形成した主ディスク部から前記凸周面の外径以下で回転軸方向に補強ディスク部を膨出させた押圧ディスクを、ケーシング本体の下端部に固定する取付本体に支持させた回転軸に嵌着した回転型ビットであり、ケーシング本体の半径方向で最も外側に位置する取付本体、回転軸又は押圧ディスクがこのケーシング本体の外面に内接する位置関係で、前記掘削ビットをケーシング本体の下端部に取り付けた掘削ケーシングとする。
【0019】
回転型ビットにより割ることのできる大礫又は玉石等は、ケーシング本体の範囲に限定されず、回転する押圧ディスクの凸周面を押し付けることのできる範囲に及ぶ。これから、ケーシング本体の半径方向外側へはみ出すように回転型ビットを取り付けても、ケーシング本体を含む広い範囲で大礫又は玉石等を割り、掘削ケーシングを圧入できる。しかし、土中に圧入した掘削ケーシングは、ケーシング本体内をくり抜いても、ケーシング本体外に隙間を残すことは好ましくない。これから、回転型ビットにより大礫又は玉石等を割る働きは、ケーシング本体の外面から内側に留め、かつ掘削ケーシングの旋回を容易にするため、ケーシング本体の外面からはみ出さないように回転型ビットを取り付けるとよい。
【0020】
回転型ビットは、単純な金属製の円筒のケーシング本体の下端部に直接取り付けてもよいが、ケーシング本体の下端部に設けた環状フランジに取り付けた方が好ましい。既述したように、取付本体はケーシング本体の半径方向に対向する一対の支持部から構成したり、一対の支持面を含む壁面からなる箱体として構成するため、一定の幅を有する。これから、前記幅に相当する環状フランジに取り付けることで、取付本体はケーシング本体に強固に取り付けることができる。また、製造上の利便性から、掘削ビットは、ケーシング本体と別体の環状フランジに取り付け、この環状フランジをケーシング本体の下端部に取り付けてもよい。環状フランジに対する取付本体の取付やケーシング本体に対する別体の環状フランジの取付には、従来公知のボルト等の結合手段や、溶接等の固着手段を用いることができる。
【0021】
掘削ケーシングには、既述した構造又は構成の回転型ビットを複数用いる。ここで、掘削効率を向上させる観点から、回転型ビットは、主ディスク部から回転軸方向に膨出する補強ディスク部の膨出方向又は膨出量が異なる複数をビット単位とし、このビット単位でケーシング本体の下端部に取り付けるとよい。ビット単位を構成する各回転型ビットは、補強ディスク部の膨出方向又は膨出量を異ならせることで、それぞれ凸周面が描く軌跡をケーシング本体の半径方向にずらし、同じ大礫又は玉石等の広い範囲に各凸周面を交互に押し付けることで割りやすくし、またより大きく押し分けることができるようにする。
【0022】
好ましいビット単位は、主ディスク部からケーシング本体の半径方向内側に補強ディスク部を膨出させた内周側の回転型ビットと、主ディスク部からケーシング本体の半径方向外側に補強ディスク部を膨出させた外周側の回転型ビットとを組み合わせた構成(説明の便宜上、以下ダブルビット単位と呼ぶ)である。このダブルビット単位を構成する各回転型ビットの凸周面は、ケーシング本体の半径方向に近接しながら異なる2条の軌跡を描き、各凸周面の幅で大礫又は玉石等を割り、前記各凸周面の幅で割れた大礫又は玉石等を押し開いていく。
【0023】
また、ビット単位は、主ディスク部からケーシング本体の半径方向内側に補強ディスク部を膨出させた内周側の回転型ビットと、前記内周側の掘削ビットの補強ディスク部の半分の膨出量で主ディスク部からケーシング本体の半径方向内側及び外側にそれぞれ補強ディスク部を膨出させた中間周側の回転型ビットと、そして前記内周側の回転型ビットの補強ディスク部に等しい膨出量で主ディスク部からケーシング本体の半径方向外側に補強ディスク部を膨出させた外周側の回転型ビットとを組み合わせた構成(説明の便宜上、以下トリプルビット単位と呼ぶ)にしてもよい。このトリプルビット単位を構成する各回転型ビットの凸周面は、ケーシング本体の半径方向に近接しながら異なる3条の軌跡を描き、内周側及び中間周側の各凸周面の幅と中間周側及び外周側の各凸周面の幅とでそれぞれ大礫又は玉石等を割り、内周側及び外周側の各凸周面の幅で割れた大礫又は玉石等を押し開いていく。
【0024】
上記ダブルビット単位及びトリプルビット単位に対し、補強ディスク部の膨出方向又は膨出量をより細かくして、4種類以上の回転型ビットを組み合わせたビット単位を構成することも考えられる。しかし、このように多くの回転型ビットを用いる場合。ビット単位を多種類の回転型ビットで構成するのではなく、ダブルビット単位又はトリプルビット単位をそれぞれ複数単位用いるか、両者を組み合わせるとよい。
【0025】
このように、ビット単位は、ケーシング本体の半径方向にずれた凸周面を有する掘削ビットの組であればよく、ビット単位を構成する回転型ビットを連続又は近接してケーシング本体の下端部に取り付けてもよい。しかし、旋回する掘削ケーシングにおける重量バランスを考慮し、回転型ビットの集中配置により大礫又は玉石等を割る働きがケーシング本体の周方向で均等に発揮されるように、ビット単位を構成する複数の回転型ビットを周方向に等間隔で配することが好ましい。更に、ビット単位を2組以上用いる場合、各ビット単位を構成する複数の回転型ビットを周方向に等間隔で配し、かつ全回転型ビットを周方向に等間隔で配するとよい。
【0026】
このほか、回転型ビットの進行方向において、掘削面上の土砂、大礫又は玉石等から取付本体を保護するには、既述したように、各回転型ビットに保護手段を設ければよい。しかし、掘削ケーシングとして考えた場合、取付本体に支持させた回転軸に押圧ディスクを嵌着した回転型ビットのほか、掘削用チップを設けた固定型ビットを用い、回転型ビットの進行方向前側又は後側で固定型ビットをケーシング本体の下端部に取り付けることもできる。こうした異種の掘削ビットを組み合わせて掘削効率の向上を図る掘削ケーシングは、従来にも見られるが、本発明の掘削ケーシングでは、回転型ビットで大礫又は玉石等を割り、固定型ビットで掘削面上の土砂、大礫又は玉石等を取り除いて取付本体を保護する役割分担があり、掘削効率は主に回転型ビットで決定される点が相違する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の掘削ビット(回転型ビット)により、特に大礫又は玉石等の硬岩層に効率よく圧入できる掘削ケーシングを提供できるようになる。既述したように、硬岩層は大礫又は玉石等のほかには、掘削ケーシングの圧入を阻害する要因がないため、前記大礫又は玉石等の影響を除外できれば、かえって掘削効率が上がる。具体的には、本発明の掘削ビットを用いた掘削ケーシングの圧入は、数cm/分の掘削効率を誇ることができ、これまで数日を要した基礎工事等が、およそ1日で終えることができる。こうした掘削効率は、軟岩層に対する掘削ケーシングの圧入でもあまり見られないことから、本発明による高い掘削効率の効果が理解できる。
【0028】
しかも、本発明の掘削ビットは、1基当たりの耐荷重性能が必要十分で単価が安く、使用する数量を抑えながら、上記掘削効率を実現できる利点がある。例えば、本発明の掘削ビットは、埋め殺しにしてもコスト的に採算が見合うものとなり、上述の掘削効率の向上と合わさって、高い経済性を発揮する。従来の掘削を利用した掘削ケーシングでも、コストをかければ掘削効率を向上させることはできるものの、それでも本発明の高い掘削効率には及ばない。これから、本発明による高い経済性の効果が理解できる。
【0029】
このほか、本発明の掘削ビットは押圧ディスクに掘削用チップを用いなくていないため、回転軸又は取付本体の変形又は破損等の事態が生じない限り、掘削ビットとしての寿命を心配をする必要がない利点がある。これから、本発明に基づく掘削ケーシングは、任意の大きさのものを使用でき、しかも深度を問わず圧入していくことができる。これは、本発明が適用できる基礎工事等の場面に制約がなく、広く上記掘削効率の向上や高い経済性を享受できることを意味する。このように、本発明は、掘削効率の向上という性能面の改善をもたらしながら、高い経済性を発揮し、基礎工事の規模等を問わず、大礫又は玉石等の硬岩層であれば掘削ケーシングを圧入させることのできる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1は本発明の回転型ビット1を取り付けたケーシング本体21の下端部を上方から見た掘削ケーシング2の部分斜視図、図2はケーシング本体21の下端部を下方から見た掘削ケーシング2の部分斜視図、図3は掘削ケーシング2の底面図、図4は掘削ケーシング2の部分垂直断面図、図5はケーシング本体21と回転型ビット1を取り付けたビット側環状フランジ22との組付関係を表す図1相当斜視図、図6は本例の回転型ビット1を上方から見た斜視図、図7は本例の回転型ビット1を上方から見た分解斜視図、図8は本例の回転型ビット1の平面図、図9は正面方向から見た図8中A−A断面図、図10は背面方向から見た図8中A−A断面図、図11は図8中B−B断面図、図12は別例の回転型ビット4の図6相当斜視図である。
【0031】
本例の掘削ケーシング2は、図1〜図5に見られるように、本発明に基づく回転型ビット1,1を点対称に一対配した構成(ケーシング本体21の周方向に180度の等間隔で配した構成)である。各回転型ビット1は同じ仕様であるが、主ディスク部111の片面のみから補強ディスク部112を膨出させた断面鍔付き帽子状であるため、両回転型ビット1の押圧ディスク11の向きを揃えて配することにより、各回転型ビット1の押圧ディスク11における主ディスク部111の凸周面113が描く軌跡を内外に分けることができる。これから、本例は、一方が内周側の回転型ビット1、他方が外周側の回転型ビット1であるダブルビット単位を1組配した掘削ケーシング2の例である。
【0032】
各回転型ビット1は、直接ケーシング本体21の下端部に取り付けているのではなく、ケーシング本体21の下端部に設けたケーシング側環状フランジ23にボルト24及びナット25により着脱自在としたビット側環状フランジ22に取り付けている(図5参照)。ここで、各回転型ビット1は、取付本体の支持面121,15を構成する箱体12がビット側環状フランジ22の外周に内接するように配しており、ケーシング本体21のケーシング側環状フランジ23にビット側環状フランジ22を接続した際、ケーシング本体21の外面から各回転型ビット1が半径方向外側にはみ出さないようにしている。本例では、更に各回転型ビット1間にケーシング本体21の外面に相似で、回転型ビット1の箱体12の高さの倣い周面27を設け、回転型ビット1の内側へ大礫又は玉石等が潜り込まないようにしている。
【0033】
本例では、回転型ビット1,1の中間に、各回転型ビット1の箱体12の保護手段として、固定型ビット26,26を取り付けている。各固定型ビット26は、図3に見られるように、回転型ビット1の箱体12における各支持面121,15の幅に合わせ、ケーシング本体21の半径方向に2基ずつ並べて設けている。また、各固定型ビット26は、図4に見られるように、回転型ビット1の箱体12の下縁よりわずか(図4中Δ)に下方へ突出する掘削用チップ261を有している。これにより、回転型ビット1の箱体12に接触する可能性のある土砂、大礫又は玉石等を掘削用チップ261で掘削し、前記箱体12を保護できる。
【0034】
このように、固定型ビット26は、回転型ビット1の回転方向から回転型ビット1の箱体12に接触する可能性のある土砂、大礫又は玉石等を掘削し、回転型ビット1の箱体12を保護する。これから、箱体12の保護手段が回転型ビット1の進行方向前側又は後側に存在すればよいことがわかる。そこで、図12に見られるように、特に回転型ビットの回転方向前側で回転型ビットの箱体に接触する可能性のある土砂、大礫又は玉石等から箱体を防ぐため、回転型ビット4の進行方向前側にあたる箱体41前面に固定型ビット42を一体に設けてもよい。この場合も、前記固定型ビット42は、回転型ビット4の箱体41の下縁よりわずかに下方へ突出する掘削用チップ43を有していれば、箱体41に接触する虞れのある土砂、大礫又は玉石等を掘削し、箱体41を保護することができる。
【0035】
本例の回転型ビット1は、図6〜図11に見られるように、ビット側環状フランジ22に固定する取付本体である箱体12と、この箱体12がケーシング本体21の半径方向内外に対向させる支持面121,15に支持させる回転軸13と、この回転軸13に嵌着する押圧ディスク11とからなる。取付本体である箱体12は、一方の支持面121を構成する平坦な受け壁面122と、残る他方の支持面121を構成し、前記受け壁面122に開先を付き当てて溶接する囲い壁面123とからなる。この箱体12は上下に開放しており、上縁をビット側環状フランジ22に溶着し、下方の開放部分から押圧ディスク11を突出させる。
【0036】
回転軸13は、箱体12の対向する支持面121,121それぞれに設けた各軸受孔124,124に架設し、軸端面131を支持面121に倣わせた状態で溶着しており、回転不能に固定している。本例の回転軸13は、ケーシング本体21の半径方向を向いているため、この回転軸13に嵌着する押圧ディスク11の回転面はケーシング本体21の接線方向を向いている。押圧ディスク11は、凸周面113の厚みで略扁平な主ディスク部111と、この主ディスク部111の片面から回転軸方向に膨出させた略円柱状の補強ディスク部112とから構成している。この押圧ディスク11は、軸孔114にベアリング(図示略)を内装して前記回転軸13に嵌着している。本例の回転型ビット1は、回転軸13を箱体12の各支持面121に対して下縁寄りに設け、図9〜図11に見られるように、押圧ディスク11の半径方向で補強ディスク部112を超える主ディスク部111の部分を箱体12の下縁から突出させている。
【0037】
次に、上記回転型ビット1をケーシング本体21の下端部に取り付けた掘削ケーシング2が大礫又は玉石等の硬岩層を掘削していく様子について説明する。図13は回転型ビット1が硬岩層に達した段階の地中を表した断面図、図14は硬岩層51の玉石52に外周側の回転型ビット1の押圧ディスク11を押し付けている状態を表した図13中B矢視部相当断面図、図15は同じ玉石52に内周側の回転型ビット1の押圧ディスク11を押し付けている状態を表した図13中B矢視部相当断面図、図16は同じ玉石52に再び外周側の回転型ビット1の押圧ディスク11を押し付けている状態を表した図13中B矢視部相当断面図であり、図17は同じ玉石52を割ってケーシング本体21の内外に押し分けている状態を表した図13中B矢視部相当断面図である。
【0038】
本発明の回転型ビット1は、硬岩層51の大礫又は玉石を掘削するのではなく、押圧ディスク11の凸周面113を押し当てることにより筋付けを図り、前記筋に従って圧潰、ケーシング本体21の内外に押し分けて、掘削ケーシング2の圧入を実現する。押圧ディスク11が硬岩層51に至るまでの軟岩層53では、図13に見られるように、掘削ケーシング2の圧入だけで回転型ビット1を十分押し込むことができるほか、本例のように、回転型ビット1と共に固定型ビット26を配しておくことで、必要充分な掘削が可能である。
【0039】
まず、硬岩層51にある玉石52に、外周側の回転型ビット1が到達すると、玉石52に前記外周側の回転型ビット1が有する押圧ディスク11の凸周面113が押し当てられ、この玉石52の上面に筋付けがされ、場合によっては図14に見られるように、小さな亀裂521が刻み込まれる。掘削ケーシング2が半回転すると、今度は同じ玉石52に内周側の回転型ビット1が有する押圧ディスク11の凸周面113が押し当てられ、この玉石52の上面の別の部分に筋付けがされ、場合によっては図15に見られるように、小さな亀裂522が刻み込まれる。
【0040】
更に掘削ケーシング2が半回転すると、再び外周側の回転型ビット1が有する押圧ディスク11の凸周面113が玉石52の上面に押し当てられ、図16に見られるように、先に刻んだ亀裂521,522を拡大させ、最終的には玉石52を分断する。ここで、本例のように、玉石52の上面に対して内外に分かれて交互に各回転型ビット1の押圧ディスク11の凸周面113をそれぞれ別の部分に押し当てることで、玉石52を広範囲で圧潰し、ケーシング本体21の内外へ大きく分断できる。これにより、更に圧入が進んだ掘削ケーシング2は、図17に見られるように、押圧ディスク11の主ディスク部111を大きな亀裂523から玉石52に割り込ませ、ケーシング本体21の内外へ押し分けることができる。この場合も、各回転型ビット1の押圧ディスク11における主ディスク部111は、ケーシング本体21の半径方向にずれているため、それぞれが分断された玉石52を押し分けることになり、ケーシング本体21に対しては大きく押し開くことができる。
【0041】
図18はトリプルビット単位を構成する3種の回転型ビット1,3をケーシング本体21の下端部に取り付けた掘削ケーシング2の図3相当底面図、図19は中間周側の回転型ビット3の図8相当平面図であり、図20は中間周側の回転型ビット3を正面方向から見た図8中A−A相当断面図である。本例は、上述したダブルビット単位を構成する回転型ビット1に、中間周側の回転型ビット3を加えてトリプルビット単位を構成した例である。各回転型ビット1,3に対しては、進行方向前側に固定型ビット26,26を取り付け、各回転型ビット1,3の箱体12,32を保護している。
【0042】
各回転型ビットは、同じ大礫又は玉石等に押し当てるそれぞれの主ディスク部の凸周面がケーシング本体の半径方向にずれていることにより、効率よく大礫又は玉石等を分断できることは、上述した通りである。これから、主ディスク部111から回転軸方向の一方に補強ディスク部112を膨出させた内周側及び外周側の回転型ビット1に対し、図19及び図20に見られるように、主ディスク部311から回転軸方向の両方に補強ディスク部312,312を膨出させた中間周側の回転型ビット3を加えてトリプルビット単位を構成すると、より効率的に大礫又は玉石等を分断できる。本例では、各回転型ビット1,3による負荷をケーシング本体21の周方向へ均等に分散させるため、図18に見られるように、トリプルビット単位を構成する回転型ビット1,3をケ?シング本体21の周方向に等間隔で配している。
【0043】
ここで、中間周側の回転型ビット3における主ディスク部311の凸周面313は、内外周側の回転型ビット1における主ディスク部111の凸周面113の間にあればよい。しかし、各凸周面113,313による大礫又は玉石等の筋又は亀裂は、できるだけ相互に離れていることが望ましいため、本例の中間周側の回転型ビット3における押圧ディスク31は、主ディスク部311から回転軸方向内外へ均等に補助ディスク部312,312を膨出させ、主ディスク部311の凸周面313を内外周側の回転型ビット1における主ディスク部311の凸周面313の丁度中間に位置するように設定している。
【0044】
図21は別例の回転型ビット6,7を組み合わせたトリプルビット単位α,βを2組組み合わせてケーシング本体21の下端部に直接取り付けた掘削ケーシング2の図3相当底面図、図22は本例の掘削用ケーシング2の図2相当底面図、図23は外周側の別例の回転型ビット6の図8相当平面図、図24は外周側の別例の回転型ビット6を正面方向から見た図8中A−A相当断面図、図25は中間周側の別例の回転型ビット7の図8相当平面図であり、図26は中間周側の別例の回転型ビット7を正面方向から見た図8中A−A相当断面図である。内周側の回転型ビット6は、押圧ディスク61の向きが外周側の回転型ビット6と逆向きになっているだけなので、図23及び図24を参照するに留め、単独図示は省略している。
【0045】
本例の各回転型ビット6,7は、図22〜図26に見られるように、凸周面613,713の厚みで略扁平な主ディスク部611,711と、この主ディスク部611,711の前記凸周面613,713の片側又は両側から連続した傾斜面を有する略円錐台状の補強ディスク部612,712とから構成されている。補強ディスク部612が主ディスク部611の凸周面613,の片側から連続しているものが内周側又は外周側の回転型ビット6、補強ディスク部712が主ディスク部711の凸周面713の両側に連続しているものが中間周側の回転型ビット7である。内周側の回転ビット6と外周側の回転型ビット6とは同じもので、それぞれ押圧ディスク61の向きを反転させている。
【0046】
本例の各回転型ビット6,7は、上述の回転型ビット1(図6〜図11参照)のように、主ディスク部611,711と補強ディスク部612,712との間に凹面部分がなく、略円錐台状の外観を有しているため、補強ディスク部612,712による主ディスク部61,71の補強の程度が高く、主ディスク部611,711が捻れに強くなっている。また、こうした回転型ビット6,7は、補強ディスク部612,712を含めて全体が一体の楔状断面を構成しているので、図24及び図26に見られるように、各押圧ディスク61,71の半径方向で補強ディスク部612,712の最小外径を超える補強ディスク部612,712及び主ディスク部611,711の部分を取付本体である箱体62,72から突出させるとよい。
【0047】
ケーシング本体が大きくなると、掘削ケーシングの推力(圧入力)は概ねケーシング本体に比例して大きくなる。この場合、多くの回転型ビットを用いることにより、前記推力を回転型ビットの個数で割った値が各回転型ビットの耐荷重を下回るようにする。本例の掘削ケーシング2は、比較的大きなケーシング本体21を用い、ビット側環状フランジ及びケーシング側環状フランジを用いずに各回転型ビット6,7を直接ケーシング本体21の下端に取り付けた例で、上記トリプルビット単位α,βを2組、計6基の回転型ビット6,7を用い、各回転型ビット6,7にかかる荷重を小さくしている。多数の回転型ビット6,7を用いる理由は、各回転型ビット6,7当たりにかかる荷重を小さくすることが目的であるから、本例のほか、ダブルビット単位を3組用いてもよいし、すべてが異仕様の回転型ビットを必要数以上用いてもよい。
【0048】
本例では、ケーシング本体21に対する負荷を周方向に均等に分配するため、一方のトリプルビット単位αを構成する各回転型ビット6,7と、他方のトリプルビット単位βを構成する各回転型ビット6,7とをそれぞれ周方向に等間隔で配し、かつ全回転型ビットビット6,7を周方向に等間隔で配し、各回転型ビット6,7の進行方向前側及び後側、すなわち各回転型ビット6,7の中間位置に固定型ビット25,25を2基ずつ配している。この場合、各トリプルビット単位α,βを構成する回転型ビット6,7をまとめて連続する位置関係に並べることも考えられる。本例では、トリプルビット単位α,βを構成する各回転型ビット6,7を120度間隔で並べ、各トリプルビット単位α,βを180度ずらして、全回転型ビット6,7を等間隔に配している。これにより、各トリプルビット単位α,βを構成する各回転型ビット6,7は交互に並ぶことになり、また隣り合う回転型ビット6,7は異なる軌跡を描くため、同じ大礫又は玉石の分断、押し分けがより効率的に進めることができる
【実施例】
【0049】
本発明に基づく掘削ケーシングが、特に硬岩層に適しているか否かを確認するため、ダブルビット単位を1組だけ取り付けた小型の試験用掘削ケーシングを作成し、模擬硬岩層に対して掘削試験を実施した。
【0050】
試験用掘削ケーシングは、上記図23〜図25例示の回転型ビットを2個1組としてダブルビット単位を構成し、図1〜図3に見られるように、外径470mmのケーシング本体の下端部に点対称の位置関係で各回転型ビットを取り付け、各回転型ビットの中間位置に固定型ビットを取り付けた構成である。各回転型ビットは、主ディスク部の凸周面が外径145mmで、補強ディスク部を含めた厚みが44mmの押圧ディスクを箱体内の直径30mmの回転軸にベアリングを介して嵌着し、補強ディスク部から主ディスク部の凸周面にかけて、箱体の下縁から47mm突出させている。
【0051】
模擬硬岩層は、100〜300mm大の玉石をモルタルで固めた外径700mm、深さ300mmの扁平な円形ブロックである。ここで、玉石をモルタルで固めた理由は、実際の硬岩層の玉石相互が位置固定されている状態を再現するためである。この模擬硬岩層は、玉石間に充填、固化したモルタルの存在により、実際の硬岩層よりも固い地盤になっている。
【0052】
掘削試験は、試験用掘削ケーシングと模擬硬岩層との中心を揃え、5t〜8tにかけて徐々に推力を増加しながら、7rpmで試験用掘削ケーシングを模擬硬岩層に圧入していく手順で実施した。試験結果を表1に示す。表1中、掘削距離20mmからの結果である。
【0053】
【表1】
【0054】
表1から明らかなように、試験用掘削ケーシングの圧入速度は非常に速いもので、毎分10mm弱を誇る。この掘削速度において、玉石は25mm〜100mm大に分断され、ケーシング本体の内外に押し分けられていた。これから、本発明の掘削ケーシングは従来に比べて相当に速い掘削速度を有することが分かる。考察すれば、試験結果はコンクリートで玉石を固めた模擬硬岩層に対するものであり、実際の硬岩層には大礫又は玉石の間に流動性を備えた土砂が存在するため、大礫又は玉石はより割れやすく、また押し開かれやすくなり、更に掘削速度が高まることが推定される。このようにして、本発明は、特に硬岩層に対する掘削効率を高める効果があることが証明された。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の回転型ビットを取り付けたケーシング本体の下端部を上方から見た掘削ケーシングの部分斜視図である。
【図2】ケーシング本体の下端部を下方から見た掘削ケーシングの部分斜視図である。
【図3】掘削ケーシングの底面図である。
【図4】掘削ケーシングの部分垂直断面図である。
【図5】ケーシング本体と回転型ビットを取り付けた環状フランジとの組付関係を表す図1相当斜視図である。
【図6】本例の回転型ビットを上方から見た斜視図である。
【図7】本例の回転型ビットを上方から見た分解斜視図である。
【図8】本例の回転型ビットの平面図である。
【図9】正面方向から見た図8中A−A断面図である。
【図10】背面方向から見た図8中A−A断面図である。
【図11】図8中B−B断面図である。
【図12】別例の回転型ビットの図6相当斜視図である。
【図13】回転型ビットが硬岩層に達した段階の地中を表した断面図である。
【図14】硬岩層の玉石に外周側の回転型ビットの押圧ディスクを押し付けている状態を表した図13中B矢視部相当断面図である。
【図15】同じ玉石に内周側の回転型ビットの押圧ディスクを押し付けている状態を表した図13中B矢視部相当断面図である。
【図16】同じ玉石に再び外周側の回転型ビットの押圧ディスクを押し付けている状態を表した図13中B矢視部相当断面図である。
【図17】同じ玉石を割ってケーシング本体の内外に押し分けている状態を表した図13中B矢視部相当断面図である。
【図18】トリプルビット単位を構成する3種の回転型ビットをケーシング本体の下端部に取り付けた掘削ケーシングの図3相当底面図である。
【図19】中間周側の回転型ビットの図8相当平面図である。
【図20】中間周側の回転型ビットを正面方向から見た図8中A−A相当断面図である。
【図21】別例の回転型ビットを組み合わせたトリプルビット単位を2組組み合わせてケーシング本体の下端部に直接取り付けた掘削ケーシングの図3相当底面図である。
【図22】本例の掘削用ケーシング2の図2相当底面図である。
【図23】外周側の別例の回転型ビットの図8相当平面図である。
【図24】外周側の別例の回転型ビットを正面方向から見た図8中A−A相当断面図である。
【図25】中間周側の別例の回転型ビットの図8相当平面図である。
【図26】中間周側の別例の回転型ビットを正面方向から見た図8中A−A相当断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 回転型ビット(図1〜図11)
11 押圧ディスク
111 主ディスク部
112 補強ディスク部
113 凸周面
12 箱体
121 支持面
13 回転軸
2 掘削ケーシング
21 ケーシング本体
26 固定型ビット
261 掘削用チップ
3 回転型ビット
31 押圧ディスク
4 別例の回転型ビット
41 箱体
42 固定型ビット
43 掘削用チップ
6 回転型ビット
61 押圧ディスク
62 箱体
7 回転型ビット
71 押圧ディスク
72 箱体
α 一方のトリプルビット単位
β 他方のトリプルビット単位
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回させながら土中に圧入させる掘削ケーシングのケーシング本体の下端部に取り付ける掘削ビットであって、ケーシング本体の下端部に固定する取付本体と、該取付本体に支持させる回転軸と、該回転軸に嵌着する押圧ディスクとからなり、押圧ディスクは凸周面を形成した主ディスク部から前記凸周面の外径以下で回転軸方向に補強ディスク部を膨出させた掘削ビット。
【請求項2】
押圧ディスクは、主ディスク部の凸周面が断面楔状で、該主ディスク部から前記凸周面の裾下縁の半径以下で回転軸方向に補強ディスク部を膨出させた請求項1記載の掘削ビット。
【請求項3】
押圧ディスクは、凸周面の厚みで略扁平な主ディスク部と、該主ディスク部の片面又は両面から回転軸方向に膨出させた略円柱状の補強ディスク部とから構成され、押圧ディスクの半径方向で補強ディスク部を超える主ディスク部の部分を取付本体から突出させた請求項1記載の掘削ビット。
【請求項4】
押圧ディスクは、凸周面の厚みで略扁平な主ディスク部と、該主ディスク部の前記凸周面の片側又は両側から連続した傾斜面を有する略円錐台状の補強ディスク部とから構成され、押圧ディスクの半径方向で補強ディスク部の最小外径を超える補強ディスク部及び主ディスク部の部分を取付本体から突出させた請求項1記載の掘削ビット。
【請求項5】
取付本体は、ケーシング本体の半径方向で対向する一対の支持部材からなり、回転軸を該支持部材間に架設して支持させた請求項1記載の掘削ビット。
【請求項6】
取付本体は、ケーシング本体の半径方向で対向する一対の支持面からなり、回転軸を前記支持面間に架設して支持させた請求項1記載の掘削ビット。
【請求項7】
取付本体は、掘削ビットの進行方向前側又は後側に該取付本体の保護手段を設けた請求項1記載の掘削ビット。
【請求項8】
保護手段は、進行する取付本体の下縁部の軌跡上に配した掘削の掘削用チップである請求項7記載の掘削ビット。
【請求項9】
回転軸は、ケーシング本体の略半径方向を向き、押圧ディスクはケーシング本体の外面の略接線方向で回転する請求項1記載の掘削ビット。
【請求項10】
ケーシング本体の下端部に掘削ビットを取り付け、旋回させながら土中に圧入させる掘削ケーシングであって、
掘削ビットは凸周面を形成した主ディスク部から前記凸周面の外径以下で回転軸方向に補強ディスク部を膨出させた押圧ディスクを、ケーシング本体の下端部に固定する取付本体に支持させた回転軸に嵌着した回転型であり、ケーシング本体の半径方向で最も外側に位置する取付本体、回転軸又は押圧ディスクが該ケーシング本体の外面に内接する位置関係で、前記掘削ビットをケーシング本体の下端部に取り付けた掘削ケーシング。
【請求項11】
掘削ビットは、ケーシング本体の下端部に設けた環状フランジに取り付けた請求項10記載の掘削ケーシング。
【請求項12】
掘削ビットは、ケーシング本体と別体の環状フランジに取り付け、該環状フランジをケーシング本体の下端部に取り付けた請求項10記載の掘削ケーシング。
【請求項13】
掘削ビットは、主ディスク部から回転軸方向に膨出する補強ディスク部の膨出方向又は膨出量が異なる複数をビット単位とし、該ビット単位でケーシング本体の下端部に取り付ける請求項10記載の掘削ケーシング。
【請求項14】
ビット単位は、主ディスク部からケーシング本体の半径方向内側に補強ディスク部を膨出させた内周側の掘削ビットと、主ディスク部からケーシング本体の半径方向外側に補強ディスク部を膨出させた外周側の掘削ビットとを組み合わせた請求項13記載の掘削ケーシング。
【請求項15】
ビット単位は、主ディスク部からケーシング本体の半径方向内側に補強ディスク部を膨出させた内周側の掘削ビットと、前記内周側の掘削ビットの補強ディスク部の半分の膨出量で主ディスク部からケーシング本体の半径方向内側及び外側にそれぞれ補強ディスク部を膨出させた中間周側の掘削ビットと、そして前記内周側の掘削ビットの補強ディスク部に等しい膨出量で主ディスク部からケーシング本体の半径方向外側に補強ディスク部を膨出させた外周側の掘削ビットとを組み合わせた請求項13記載の掘削ケーシング。
【請求項16】
ビット単位は、該ビット単位を構成する複数の掘削ビットを周方向に等間隔で配した請求項13記載の掘削ケーシング。
【請求項17】
ビット単位は、2組以上を用い、各ビット単位を構成する複数の掘削ビットを周方向に等間隔で配し、かつ全掘削ビットを周方向に等間隔で配した請求項13記載の掘削ケーシング。
【請求項18】
掘削ビットは、取付本体に支持させた回転軸に押圧ディスクを嵌着した回転型の掘削ビットのほか、掘削用チップを設けた固定型の掘削ビットを用いてなり、固定型の掘削ビットは回転型の掘削ビットの進行方向前側又は後側でケーシング本体の下端部に取り付けた請求項10記載の掘削ケーシング。
【請求項1】
旋回させながら土中に圧入させる掘削ケーシングのケーシング本体の下端部に取り付ける掘削ビットであって、ケーシング本体の下端部に固定する取付本体と、該取付本体に支持させる回転軸と、該回転軸に嵌着する押圧ディスクとからなり、押圧ディスクは凸周面を形成した主ディスク部から前記凸周面の外径以下で回転軸方向に補強ディスク部を膨出させた掘削ビット。
【請求項2】
押圧ディスクは、主ディスク部の凸周面が断面楔状で、該主ディスク部から前記凸周面の裾下縁の半径以下で回転軸方向に補強ディスク部を膨出させた請求項1記載の掘削ビット。
【請求項3】
押圧ディスクは、凸周面の厚みで略扁平な主ディスク部と、該主ディスク部の片面又は両面から回転軸方向に膨出させた略円柱状の補強ディスク部とから構成され、押圧ディスクの半径方向で補強ディスク部を超える主ディスク部の部分を取付本体から突出させた請求項1記載の掘削ビット。
【請求項4】
押圧ディスクは、凸周面の厚みで略扁平な主ディスク部と、該主ディスク部の前記凸周面の片側又は両側から連続した傾斜面を有する略円錐台状の補強ディスク部とから構成され、押圧ディスクの半径方向で補強ディスク部の最小外径を超える補強ディスク部及び主ディスク部の部分を取付本体から突出させた請求項1記載の掘削ビット。
【請求項5】
取付本体は、ケーシング本体の半径方向で対向する一対の支持部材からなり、回転軸を該支持部材間に架設して支持させた請求項1記載の掘削ビット。
【請求項6】
取付本体は、ケーシング本体の半径方向で対向する一対の支持面からなり、回転軸を前記支持面間に架設して支持させた請求項1記載の掘削ビット。
【請求項7】
取付本体は、掘削ビットの進行方向前側又は後側に該取付本体の保護手段を設けた請求項1記載の掘削ビット。
【請求項8】
保護手段は、進行する取付本体の下縁部の軌跡上に配した掘削の掘削用チップである請求項7記載の掘削ビット。
【請求項9】
回転軸は、ケーシング本体の略半径方向を向き、押圧ディスクはケーシング本体の外面の略接線方向で回転する請求項1記載の掘削ビット。
【請求項10】
ケーシング本体の下端部に掘削ビットを取り付け、旋回させながら土中に圧入させる掘削ケーシングであって、
掘削ビットは凸周面を形成した主ディスク部から前記凸周面の外径以下で回転軸方向に補強ディスク部を膨出させた押圧ディスクを、ケーシング本体の下端部に固定する取付本体に支持させた回転軸に嵌着した回転型であり、ケーシング本体の半径方向で最も外側に位置する取付本体、回転軸又は押圧ディスクが該ケーシング本体の外面に内接する位置関係で、前記掘削ビットをケーシング本体の下端部に取り付けた掘削ケーシング。
【請求項11】
掘削ビットは、ケーシング本体の下端部に設けた環状フランジに取り付けた請求項10記載の掘削ケーシング。
【請求項12】
掘削ビットは、ケーシング本体と別体の環状フランジに取り付け、該環状フランジをケーシング本体の下端部に取り付けた請求項10記載の掘削ケーシング。
【請求項13】
掘削ビットは、主ディスク部から回転軸方向に膨出する補強ディスク部の膨出方向又は膨出量が異なる複数をビット単位とし、該ビット単位でケーシング本体の下端部に取り付ける請求項10記載の掘削ケーシング。
【請求項14】
ビット単位は、主ディスク部からケーシング本体の半径方向内側に補強ディスク部を膨出させた内周側の掘削ビットと、主ディスク部からケーシング本体の半径方向外側に補強ディスク部を膨出させた外周側の掘削ビットとを組み合わせた請求項13記載の掘削ケーシング。
【請求項15】
ビット単位は、主ディスク部からケーシング本体の半径方向内側に補強ディスク部を膨出させた内周側の掘削ビットと、前記内周側の掘削ビットの補強ディスク部の半分の膨出量で主ディスク部からケーシング本体の半径方向内側及び外側にそれぞれ補強ディスク部を膨出させた中間周側の掘削ビットと、そして前記内周側の掘削ビットの補強ディスク部に等しい膨出量で主ディスク部からケーシング本体の半径方向外側に補強ディスク部を膨出させた外周側の掘削ビットとを組み合わせた請求項13記載の掘削ケーシング。
【請求項16】
ビット単位は、該ビット単位を構成する複数の掘削ビットを周方向に等間隔で配した請求項13記載の掘削ケーシング。
【請求項17】
ビット単位は、2組以上を用い、各ビット単位を構成する複数の掘削ビットを周方向に等間隔で配し、かつ全掘削ビットを周方向に等間隔で配した請求項13記載の掘削ケーシング。
【請求項18】
掘削ビットは、取付本体に支持させた回転軸に押圧ディスクを嵌着した回転型の掘削ビットのほか、掘削用チップを設けた固定型の掘削ビットを用いてなり、固定型の掘削ビットは回転型の掘削ビットの進行方向前側又は後側でケーシング本体の下端部に取り付けた請求項10記載の掘削ケーシング。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2006−37416(P2006−37416A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216499(P2004−216499)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(597125449)オリエント開発株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(597125449)オリエント開発株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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