説明

掘削土砂類の処理方法

【課題】有害物質が含まれている掘削された土砂類を大気開放状態にすることなく処理する。
【解決手段】トンネル1を掘削する掘削装置2による掘削工程と、この掘削された土砂類Sを前記トンネル1より排出する積み込み重機4、第1のコンベア3、第2のコンベア5、第3のコンベア8、運搬車両7を備えた排出工程と、前記掘削された土砂類Sの有害物質を処理するため有害物質処理剤Tと土砂類Sをミキサー6により混合する処理工程を備える。前記処理工程を前記排出工程である第2のコンベア5と第3のコンベア8の間にミキサー6を設けて湯外物質を処理する。有害物質処理剤Tは、未焼成カンラン岩を主成分とする。トンネル1内で土砂類Sに含まれる湯外物質を分解、不溶化、浄化でき、有害物質のトンネル1外への大気放出を可及的に低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル等の掘削土砂類の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、掘削機によって掘削された土砂類をトンネル後方に搬出する排出方法として、掘削機によってトンネルを掘削する場合、カッタ板により掘削した土砂類をカッタ板とその後方に設けている隔壁との間の土砂類取込室内に取り込んだのち、機内に配設しているスクリューコンベアによって土砂類取込室内の掘削土砂類を取り出し、トンネル内を走行するトロ台車に積載して搬送することが行われている(例えば特許文献1)。
【0003】
ところで、トンネル掘削作業において、自然的に有害重金属を含む地盤に遭遇することがある。この重金属は先進ボーリング等の調査で予め掘削前に調査されている。このような地盤中の重金属は土壌汚染対策法に準じて処分を図ることが望ましいとされたことから、従来では掘削工程で掘削した重金属を含んだ土砂類を排出工程によりトンネル外に排出し、そしてトンネル外で前記有害物質を処理するために土砂類を処理していた。
【0004】
そして、このような処理した土砂類は埋め戻しなどトンネル工事完成後に最終処分がなされる。
【特許文献1】特開平7−82989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、重金属を含んだ土砂類を排出工程によりトンネル外に排出し、そしてトンネル外でこれを処理しようとする場合、有害物質を含んだ土砂類は大気開放状態となって空気や水を汚染してしまうおそれがある。またトンネルの近くに土砂類の仮置き場所があって、該場所を処理場として土砂類を処理する場合にはそのようなおそれは比較的低くなるが、トンネル掘削場所は山間地などが多く、トンネル近くに土砂類の仮置き場所が得られることはまれである。
【0006】
解決しようとする問題点は、有害物質が含まれている掘削された土砂類を大気開放状態にすることなく処理する掘削土砂類の処理方法を提供する点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、掘削箇所を掘削する掘削工程と、この掘削された土砂類を前記掘削箇所より排出する排出工程と、前記掘削された土砂類の有害物質を処理する処理工程を備えた掘削土砂類の排出において、前記処理工程を前記排出工程の途中に設けたことを特徴とする掘削土砂類の処理方法である。
【0008】
請求項2の発明は、前記掘削箇所はトンネルなどの地下道であり、前記排出工程にミキサーを設けると共に、該ミキサーによって掘削土砂類と前記処理工程用の有害物質処理剤を混合することを特徴とする請求項1記載の掘削土砂類の処理方法である。
【0009】
請求項3の発明は、前記有害物質処理剤は、未焼成カンラン岩を主成分とする有害物質の分解・不溶化・浄化剤であって、有害重金属類、油類、揮発性有機化合物等の有害化学物質に汚染された土砂類の処理に適用されるものであることを特徴とする請求項1又は2記載の掘削土砂類の処理方法である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、掘削場所内で土砂類に含まれる湯外物質を処理でき、有害物質の掘削箇所の外への大気放出を可及的に低減することができ、さらに掘削箇所近くで処理用の土砂類の仮置き場所も不要となる。
【0011】
請求項2の発明によれば、トンネル内で土砂類に含まれる湯外物質を処理でき、さらにトンネル近くで処理用の土砂類の仮置き場所も不要となる。
【0012】
請求項3の発明によれば、未焼成のカンラン岩を主成分として使用することで、有害物質を確実に処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0014】
図1は実施例1を示しており、掘削箇所である地下道としてのトンネル1の掘削は掘削孔の先端1Aから入口1Bにかけて、掘削装置2、該掘削装置2によって掘削された土砂類Sを後述する第1のコンベア3へ積み込みする積み込み重機4、始端上方に集積用ホッパー3Aを備えると共に終端下方に排出用ホッパー3Bを備えた前記第1のコンベア3、排出用ホッパー3B側を始端5Aとし後述するミキサー6に終端5Bを接続するように設けられる第2のコンベア5、前記終端5Bに1次側6Aが設けられる混合、混練手段たるミキサー6、ミキサー6の2次側6Bを始端8Aとし後述するトラック等運搬車両7に終端8Bを接続するように設けられる第3のコンベア8が配置されている。そして、ミキサー6には水供給路9が接続している。またミキサー6には有害物質処理剤Tの供給路10が接続している。
【0015】
有害物質処理剤Tは以下のようなものである。未焼成カンラン岩を主成分とする有害物質の分解、不要化・浄化剤であって、例えば(1)未焼成カンラン岩と軽焼マグネサイトを含み、未焼成カンラン岩と軽焼マグネサイトの成分の重量比が1:99〜99:1であるもの、(2)未焼成カンラン岩と軽焼ドロマイトを含み、未焼成カンラン岩と軽焼マグネサイトの成分の重量比が1:99〜99:1であるもの、(3)未焼成カンラン岩と溶性燐肥を含み、未焼成カンラン岩と溶性燐肥の成分の重量比が1:99〜99:1であるもの、(4)未焼成カンラン岩と焼成貝殻粉末を含み、未焼成カンラン岩と焼成貝殻粉末の成分の重量比が1:99〜99:1であるものなどが用いられる。さらに(4)前記(1)〜(3)の有害物質処理剤Tに、遠赤外線放射成分を混合してもよい。
【0016】
火成岩の一種であるカンラン岩は、マグネシウムや鉄分を多量に含む天然の無機性鉱物であり、これに有害物質の種類に応じて軽焼マグネサイト、軽焼ドロマイト、溶性燐肥、焼成貝殻粉末を混合、添加することにより、有害物質処理剤Tとしての効率を高め、分離、分解と同時に不溶化及び浄化作用を行うものである。
【0017】
次に一般的な未焼成カンラン岩、及びその他の混合・添加剤の成分分析値などについて説明する。
【0018】
未焼成カンラン岩の成分分析値(重量%)は、MgO 48.32%、CaO 1.48%、SiO 39.36%、Fe 9.06%、Al 0.77%、残余である。
【0019】
軽焼マグネサイトの成分分析値(重量%)は、MgO 93.68%、CaO 1.28%、SiO 0.99%、Fe 0.23%、Al 0.21%、残余である。
【0020】
軽焼ドロマイトの成分分析値(重量%)は、MgO 40.32%、CaO 55.48%、SiO 1.05%、Fe 0.26%、Al 0.27%、残余である。
【0021】
焼成貝殻粉末の成分分析値(重量%)は、MgO 0.35%、CaO 96.28%、SiO 0.32%、Fe 0.12%、Al 0.55%、K0 0.42%、NaO 1.13%、残余である。
【0022】
溶性燐肥の成分分析値(重量%)は、MgO 12.35%、CaO 44.28%、SiO 21.56%、P 20.00%、残余である。
【0023】
そして、前記MgOは水和反応により水酸化イオンを放出し、これが有害物質の元素(例えば鉛Pb2+)を水酸化物(Pb(OH))として沈殿させ、さらに空気中の炭酸ガスと反応し、炭酸マグネシウム(MgCO・3HO)反応を促進する過程でケイ素粒子(SiO)元素の粒子間にマグネシウム炭酸塩結晶が成長して粒子を絡める。これにより有害元素を吸着した鉱物は強固な結晶体となる。
【0024】
MgO+HO→Mg(OH)
Mg(OH)+HO+CO→MgCO+2H
酸化カルシウムは酸性水を中和させる効果があり、さらに以下の反応によって酸性土壌や酸性水に含まれた例えば砒素や鉛など有害物質の元素が固定される。
【0025】
HAsO+Ca2++nHO→CaHAsO・nH
AsO2−+Ca2++nHO→CaHAsO・nHO+H
酸化鉄は、それが酸化物(Fe)であっても、水酸化物(Fe(OH))であっても、有害物質の元素は表面に吸着される。この反応は次の反応式で示され、赤鉄鉱や針鉄鉱が生成される。
【0026】
FeS+5/2HO+15/4O→2SO2−+4H+FeOOH
FeS+2HO+15/4O→2SO2−+4H+Fe
5酸化リン(P)は水酸化マグネシウムや水酸化カルシウムと反応し、リン酸塩の結晶(リン酸マグネシウムやリン酸カルシウム)の強固な結晶体の内部に有害物質の元素を封じ込めて固定化する。
【0027】
Ca2++PO3−+OH→Ca(POOH+Pb2+→Ca2++Pb(POOH
このように、有害物質処理剤Tの主成分である未焼成カンラン岩の酸化マグネシウムや酸化カルシウムが水と出会うと水和反応がおきて、水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウムを生成し、吸着及びイオン交換能によって、その針状結晶中又は固溶体中に有害物質を取り込む。その後、空気中の炭酸ガスと反応して炭酸マグネシウム及び炭酸カルシウム反応を進行しながら、先に針状結晶中又は固溶体中に取り込んだ有害物質を結晶化し、固定化する。さらに、リン酸を含有した成分を加えることにより、リン酸マグネシウムとなり、長期的に安定な不溶出の固形物が得られるものである。
【0028】
したがって、前記有害物質処理剤Tは、無機性炭酸化合物、水溶性有機物、圭酸塩、鉄塩や原油の成分である炭素と水素からできた炭化水素を含めたものと反応するため、様々な土壌中の成分と固化物を形成し、容易に溶出しない高高度の固化物となる。
【0029】
前記遠赤外線放射成分としては(4)結晶化ガラスとして、SiO2 45.0%、Li2CO3 21.5%、KNO3 2.6%、Ca3(PO42 3.0%、石英・長石斑岩 27.9%、(5)他の例としては、SiO2 40.0%、Li2CO3 20.6%、KNO3 2.1%、Ca3(PO42 2.5%、Al23 1.5%、マグネタイト(磁鉄鉱) 33.3%としている。尚、前記成分中、石英・長石斑岩及びマグネタイトは、加熱すると遠赤外線を放射する遠赤外線放射成分である。これらの成分のガラスをそれぞれ溶融し、所定形状に成形して冷却した後、熱処理工程にて、ゆっくりと段階的に昇温させながら結晶化を行うことで、結晶化ガラスが得られる。さらに(5)コーディエライト(2MgO−2Al23−5SiO2) 30%、木節粘土 30%、赤土 10%、石英・長石斑岩 30%、(6)コーディエライト 40%、木節粘土 35%、赤土 5%、マグネタイト(磁鉄鉱) 20%、第3実施例としては、コーディエライト 25%、木節粘土 20%、赤土 5%、石英・長石斑岩 20%、マグネタイト 30%のようなものでもよい。
【0030】
次に前記構成についてその作用を説明する。トンネル1の掘削は、掘削装置2により行われる。尚、掘削は発破によって行ってもよく、このような発破作業によって生じた岩石等のずりを含む土砂類Sを処理する場合もある。
【0031】
掘削された土砂類Sをトンネル1の入口1Bより外部に排出するために、土砂類Sは積み込み重機4により集積用ホッパー3Aに投入され、投入された土砂類Sは第1のコンベア3を介して排出用ホッパー3Bよりミキサー6に投入される。そしてミキサー6においては、水供給路9より水Wが供給されると共に、供給路10から有害物質処理剤Tが供給される。尚、この有害物質処理剤Tの供給は土砂類S中に有害物質が含まれている土砂類Sの場合に行われる。このミキサー6による土砂類Sと水と有害物質処理剤Tとの混合により有害物質は分解、不溶化、浄化される。このように処理された土砂類Sは、第3のコンベア8のコンベアを介して運搬車両7に積み込まれてトンネル1の外部へと搬出される。ミキサー6はバッチ式或いは連続式いずれの形式のものであってもよい。
【0032】
尚、ミキサー6の混合において、処理すべき有害物質が鉛の場合は、主成分のカンラン岩に、混合剤として、5酸化リン(P)を含む溶成燐肥を加えた処理剤Tを調合し、処理すべき有害物質が砒素の場合は、主成分のカンラン岩に、混合剤として、軽焼マグネサイトや軽焼ドロマイト、貝殻粉末などの酸化カルシウムや鉄分の多い混合剤を加えて処理剤Tを調合する。尚、調合は汚染物質に対応して適宜設定されるもので、重量比で1:99〜99:1までの幅広い調合となる。
【0033】
そして、混合において、酸化マグネシウムや水酸化カルシウムが水と出会うと、水和反応がおきて、水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウムを生成し、有害物質を水酸化物として沈殿させ、吸着及びイオン交換能によって、その針状結晶中又は固溶体中に有害物質を取り込んで固定化し、粒状化物となってミキサー6の2次側6Bより排出される。
【0034】
さらに、ミキサー6後の第3のコンベア8での移送中や運搬車両7、或いは運搬車両7による土砂類Sの積み下ろし場所においては、土砂類Sは養生されることとなる。この養生中は炭酸マグネシウムや炭酸カルシウムが空気中の炭酸ガスと反応する炭酸ガス反応が進行し、先に針状結晶中又は固溶体中に取り込んだ湯外物質を結晶化し固定化して、これを不溶の固化物として長期に固定可能に処理することができる。
【0035】
以上のように、前記実施例においてはトンネル1を掘削する掘削装置2による掘削工程と、この掘削された土砂類Sを前記トンネル1より排出する積み込み重機4、第1のコンベア3、第2のコンベア5、第3のコンベア8、運搬車両7を備えた排出工程と、前記掘削された土砂類Sの有害物質を処理するため有害物質処理剤Tと土砂類Sをミキサー6により混合する処理工程を備え、前記処理工程を前記排出工程である第2のコンベア5と第3のコンベア8の間にミキサー6を設けて処理したことにより、トンネル1内で土砂類Sに含まれる湯外物質を分解、不溶化、浄化でき、有害物質のトンネル1外への大気放出を可及的に低減することができ、さらにトンネル1近くで処理用の土砂類Sの仮置き場所も不要となり、工事の省スペース化を図ることができる。
【0036】
また、前記掘削箇所はトンネル1であり、前記排出工程にミキサー6を設けると共に、該ミキサー6によって掘削土砂類Sと前記処理工程用の有害物質処理剤Tを混合することで、トンネル1掘削工事における有害物質の大気放出や山間地などの土砂類Sの仮置き場所を確保できないような場所でも土砂類Sを処理して排出することができる。
【0037】
さらに、前記有害物質処理剤Tは、未焼成カンラン岩を主成分とする有害物質の分解・不溶化・浄化剤であって、有害重金属類、油類、揮発性有機化合物等の有害化学物質に汚染された土砂類Sの処理に適用されるものであることにより、原料製造過程に焼成工程を有しない未焼成のカンラン岩を使用することで、有害物質を確実に処理することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように本発明に係る掘削土砂類の処理方法は、地下鉄道、地下道、上水、下水などの水管設置などあらゆる掘削箇所に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例1を示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1 トンネル(掘削箇所)
2 掘削装置
3 第1のコンベア
4 積み込み重機
5 第2のコンベア
6 ミキサー
7 運搬車両
8 第3のコンベア
9 水供給路
10 有害物質処理剤の供給路
S 土砂類
T 有害物質処理剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削箇所を掘削する掘削工程と、この掘削された土砂類を前記掘削箇所より排出する排出工程と、前記掘削された土砂類の有害物質を処理する処理工程を備えた掘削土砂類の排出において、前記処理工程を前記排出工程の途中に設けたことを特徴とする掘削土砂類の処理方法。
【請求項2】
前記掘削箇所はトンネルなどの地下道であり、前記排出工程にミキサーを設けると共に、該ミキサーによって掘削土砂類と前記処理工程用の有害物質処理剤を混合することを特徴とする請求項1記載の掘削土砂類の処理方法。
【請求項3】
前記有害物質処理剤は、未焼成カンラン岩を主成分とする有害物質の分解・不溶化・浄化剤であって、有害重金属類、油類、揮発性有機化合物等の有害化学物質に汚染された土砂類の処理に適用されるものであることを特徴とする請求項1又は2記載の掘削土砂類の処理方法。


【図1】
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【公開番号】特開2008−38358(P2008−38358A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−210377(P2006−210377)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(504101175)有限会社渡良エンジニアリング (9)
【出願人】(506262494)株式会社アムス (10)
【Fターム(参考)】