掘削孔曲がり度測定装置及びそれを用いた掘削孔曲がり度測定方法
【課題】口径が比較的小径で、曲がりがあるために見通しができない形状の掘削孔の曲がり度を、掘削孔の内部環境による影響を受けることなく、しかも、手間を要することなく、簡便に正確な測定ができる掘削孔の曲がり度測定装置及びそれを用いた掘削孔の曲がり度測定方法を提供する。
【解決手段】掘削孔内に挿入されて掘削孔の曲がり度に応じて曲がり可能にされた内部空洞の筒体20と、この筒体20の一端部側に配置されて筒体20の他端部側に向けてレーザー光を照射するレーザー発光部22と、筒体20の他端部側に設置されてレーザー発光部22からのレーザー光が照射されるスクリーン24と、スクリーン24よりも他端部側に配置されてスクリーン24を撮像する撮像手段26と、撮像手段26の撮像データを伝送する伝送手段28と、伝送された撮像データに基づいて筒体20先端の位置ずれを算出する制御装置とを有する。
【解決手段】掘削孔内に挿入されて掘削孔の曲がり度に応じて曲がり可能にされた内部空洞の筒体20と、この筒体20の一端部側に配置されて筒体20の他端部側に向けてレーザー光を照射するレーザー発光部22と、筒体20の他端部側に設置されてレーザー発光部22からのレーザー光が照射されるスクリーン24と、スクリーン24よりも他端部側に配置されてスクリーン24を撮像する撮像手段26と、撮像手段26の撮像データを伝送する伝送手段28と、伝送された撮像データに基づいて筒体20先端の位置ずれを算出する制御装置とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削孔曲がり度測定装置及びそれを用いた掘削孔曲がり度測定方法に関し、特に、比較的小口径の掘削孔に用いるに適した掘削孔曲がり度測定装置及びそれを用いた掘削孔曲がり度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トンネル工事において掘削精度の測定にレーザーを用いることが知られており、このようなレーザーを用いた測定はトンネルの径が大きければ人力によって行うことができるが、トンネルの径が小さくなったり、小径の掘削孔の測定には適用できないものであった。
【0003】
特に、山岳トンネルのAGF工法においては、掘削機により切羽に小径の掘削孔を掘削し、そこに鋼管等を挿入して注入材を注入することでトンネルの安定を図るようにしているが、この際の掘削孔に曲がりが生じていると、均一な注入材の注入では有効な注入効果が得られないことがあるが、このような小径の掘削孔の曲がり度を測定するものが存在しないのが現状である。
【0004】
なお、ボーリング孔の曲がりを測定するものとしては、例えば特許文献1に示すような提案もなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−145388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような特許文献1に示すようなボーリング孔の曲がりを測定するものにあっては、保護ケースの水準器を用いて口元管の傾斜角を測定し、その測定値をゼロ較正データとし、また、装置本体をボーリング口元管からボーリング孔に挿入し、装置本体の送出量を一定としたり、送り出し手段によって制御したりすることで、この送出量によってボーリング孔の長さ方向での装置挿入位置を設定したりする必要があり、煩雑な手間を要するものである。
【0007】
本発明の目的は、口径が比較的小径で、曲がりがあるために見通しができない形状の掘削孔の曲がり度を、掘削孔の内部環境による影響を受けることなく、しかも、手間を要することなく、簡便に正確な測定ができる掘削孔の曲がり度測定装置及びそれを用いた掘削孔の曲がり度測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明の掘削孔曲がり度測定装置は、掘削孔内に挿入されて掘削孔の曲がり度に応じて曲がり可能にされた内部空洞の筒体と、この筒体の一端部側に配置されて前記筒体の他端部側に向けてレーザー光を照射するレーザー発光部と、前記筒体の他端部側に設置されて前記レーザー発光部からのレーザー光が照射されるスクリーンと、前記スクリーンよりも他端部側に配置されて前記スクリーンを撮像する撮像手段と、前記撮像手段の撮像データを伝送する伝送手段と、前記伝送された撮像データに基づいて前記筒体先端の位置ずれを算出する算出手段とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、筒体内にレーザー発光部と、スクリーンと、撮像手段とを設けることにより、レーザー光の照射されたスクリーンを撮像手段で撮像し、その撮像データを伝送手段により算出手段に伝送して、算出手段でその撮像データに基づいて筒体先端位置の位置ずれを算出することで、口径が比較的小径で、曲がりがあるために見通しができない形状の掘削孔の曲がり度を、手間をようすることなく簡便かつ正確に測定することができる。
【0010】
また、装置は筒体にて覆われているので、掘削孔の内部環境による影響を受けることなく、しかも、測定方向(鉛直方向、水平方向等)にも制限を受けることなく確実に測定をすることができる。
【0011】
本発明においては、所定長さの前記筒体と、レーザー発光部と、スクリーンと、撮像手段と、伝送手段とを測定ユニットとし、この測定ユニットを複数連結して前記掘削穴内に挿入され、各測定ユニットの伝送手段にて各測定ユニットの撮像データを前記算出手段に伝送するようにすることができる。
【0012】
このような構成とすることにより、複数の測定ユニットを連結して掘削孔内に挿入し、各測定ユニットの測定結果を算出手段にて算出することで、掘削孔の途中の曲がり度などの曲がり度の経過を含めた全体の複雑な曲がり度を曲がりの方向に制限されることなく、確実に測定することができる。
【0013】
本発明においては、前記レーザー発光部は、前記スクリーンの異なる位置にレーザー光を照射可能に複数設けられ、各レーザー発光部から照射位置を変化させてレーザー光を前記スクリーンに照射可能とされているようにすることができる。
【0014】
このような構成とすることにより、筒体の曲がり度が大きく、レーザー光の一部がスクリーンに到達できない場合でも、複数のレーザー発光部から発光位置を変化させて発光させることで、スクリーンへの照射範囲を拡大して、確実な測定を行うことが可能となる。
【0015】
この場合、前記複数のレーザー発光部は、中心位置に配設されたレーザー発光部と、その中心位置のレーザー発光部の周囲に配設された複数のレーザー発光部とを有するものとすることができる。
【0016】
このような構成とすることにより、中心位置のレーザー発光部の周囲に配設された複数のレーザー発光部により、発光位置を変化させて発光させることで、スクリーンへの照射範囲を拡大することができる。
【0017】
本発明においては、前記算出手段は、前記撮像データからレーザー光の照射中心位置を算出する中心位置算出手段を有するようにすることができる。
【0018】
このような構成とすることにより、中心位置算出手段を用いて画像処理によりレーザー光の照射中心位置を算出することで、より正確な曲がり度を測定することが可能となる。
【0019】
本発明の掘削孔曲がり度測定方法は、前述のいずれかに記載の掘削孔曲がり度測定装置を用いた掘削孔曲がり度測定方法であって、
前記筒体を一端部側を手前にして前記掘削孔に挿入する工程と、
前記レーザー発光部より前記スクリーンにレーザー光を照射する工程と、
前記レーザー光の照射された前記スクリーンを前記撮像手段にて撮像する工程と、
前記撮像手段にて撮像された撮像データを伝送手段を介して前記算出手段に伝送する工程と、
前記算出手段にて、伝送された前記撮像データに基づいて前記筒体先端の位置ずれを算出する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、レーザー光の照射されたスクリーンを撮像手段で撮像し、その撮像データを伝送手段により算出手段に伝送して、算出手段でその撮像データに基づいて筒体先端位置の位置ずれを算出することで、口径が比較的小径で、曲がりがあるために見通しができない形状の掘削孔の曲がり度を、手間を要することなく簡便かつ正確に測定することができる。
【0021】
また、装置は筒体にて覆われているので、掘削孔の内部環境による影響を受けることなく、しかも、測定方向(鉛直方向、水平方向等)にも制限を受けることなく確実に測定をすることができる。
【0022】
本発明においては、所定長さの前記筒体と、レーザー発光部と、スクリーンと、撮像手段と、伝送手段とを測定ユニットとし、
この測定ユニットを複数連結して前記掘削穴内に挿入する工程と、
各測定ユニットの伝送手段にて各測定ユニットの撮像データを前記算出手段に伝送する工程と、
各測定ユニットからの撮像データに基づいて前記算出手段により先端の測定ユニットの筒体先端の位置ずれを算出する工程と、
を含むようにすることができる。
【0023】
このような構成とすることにより、複数の測定ユニットを連結して掘削孔内に挿入し、各測定ユニットの測定結果を算出手段にて算出することで、掘削孔の途中の曲がり度などの曲がり度の経過を含めた全体の複雑な曲がり度を曲がりの方向に制限されることなく、確実に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる掘削孔曲がり度測定装置の要部透視状態斜視図である。
【図2】(A)は図1のA点の正面図、(B)図1のB点の正面図、(C)は図1のC点の正面図である。
【図3】本発明の一実施の形態にかかる掘削孔曲がり度測定装置の全体概略図である。
【図4】(A)は図3のモニタの測定結果画面、(B)は図3のモニタのトンネル横断面方向における注入結果シミュレーション画面、(C)は図3のトンネル縦断面方向における注入結果シミュレーション画面である。
【図5】(A)は図4(A)の撮像画面及びトンネル縦断方向の曲がり度画面の一部拡大図、(B)は図4(A)のトンネル横断方向の曲がり度画面の一部拡大図である。
【図6】筒体の曲がり度が大きい場合のレーザー光の照射範囲拡大状態を示す説明図である。
【図7】撮像データからレーザー光の照射中心位置を算出する状態を示す説明図である。
【図8】(A)は筒体のねじれ時における撮像データの補正前の状態を示す説明図、(B)はその補正後の状態を示す説明図である。
【図9】本発明の他の実施の形態にかかる掘削孔曲がり度測定装置の部分断面図である。
【図10】図9の掘削孔曲がり度測定装置を用いて掘削孔の曲がり度を測定する状態を示す説明図である。
【図11】図10における各位置のずれ量を算出するための計算式である。
【図12】指定計測範囲最大でずれた場合の最大ずれ量の計算結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0026】
図1〜図8は、本発明の一実施の形態にかかる掘削孔曲がり度測定装置を示す図である。
【0027】
図3は、本実施の形態にかかる掘削孔曲がり度測定装置の全体概略図で、図1は、その要部透視状態斜視図である。
【0028】
この掘削孔曲がり度測定装置10は、例えば、図3に示すように、山岳トンネルのAGF工法において、トンネル12の切羽14に注入材を注入するための掘削孔16を掘削した際に、その掘削孔16の曲がり度を測定して、その曲がり度に応じて注入材の注入量を制御することで、注入効果を高めようとするもので、複数の測定ユニット18を有している。
【0029】
各測定ユニット18は、図1に示すように、筒体20と、レーザー発光部22と、スクリーン24と、撮像手段26と、伝送手段28とを有し、この伝送手段28が外部の制御装置30と接続されるようになっている。
【0030】
筒体20は、掘削孔16内に挿入されて掘削孔16の曲がり度に応じて曲がり可能にされた内部空洞のものとされている。
【0031】
また、この筒体20は、例えば、掘削孔16の口径に対応して外径が70mm程度の断面円形のものとされている。
【0032】
さらに、測定ユニット18の長さが3m程度とされ、長さ12m程度の掘削孔16である場合に、掘削孔16内に筒体20が長手方向に4本挿入しうるようにされている。
【0033】
また、筒体20の材質は、掘削孔16の曲がり度に応じて曲がり可能なものであれば、塩化ビニルあるいは鉄製その他のものが採用できる。
【0034】
レーザー発光部22は、筒体20の一端部側に配置されて筒体20の他端部側に向けてレーザー光30を照射するもので、図2(A)に示すように、断面円形の筒体20の中心位置に1個、その周囲に等間隔で8個、合計9個設けられるようになっている。
【0035】
また、各レーザー発光部22は、例えば半導体レーザー発振装置にて構成されている。
【0036】
さらに、各レーザー発光部22は、図示せぬ接続ラインを介して図3に示す制御装置30と接続されるとともに、電源ラインを介して電源と接続され、制御装置30によって各レーザー発光部22からのレーザー光の照射が制御されるようになっている。
【0037】
スクリーン24は、筒体20の他端部側に設置されてレーザー発光部22からのレーザー光がレーザー発光部22と同一の配列パターンで照射されるようになっている。
【0038】
また、このスクリーン24は、半透明の材料で形成され、照射されたレーザー光が裏面側に映し出されるようになっている。
【0039】
撮像手段26は、スクリーン24よりも他端部側に配置されて、レーザー光が照射されたスクリーン24の裏面側を撮像するようになっている。
【0040】
この撮像手段26としては、例えばCCDカメラが用いられるようになっている。
【0041】
伝送手段28は、撮像手段26で撮像した撮像データを伝送ライン32を介して制御装置30に伝送するようになっている。
【0042】
この伝送手段28には、図示せぬ電源ラインを介して電源が供給されるようになっている。
【0043】
制御装置30は、パーソナルコンピュータ等から構成され、撮像手段26より伝送された撮像データに基づいて筒体20先端の位置ずれを算出する算出手段として機能する。
【0044】
また、制御装置30は、図示せぬが各レーザー発光部22に接続され、各レーザー発光部22からのレーザー光の照射を制御するとともに、撮像手段26の撮像制御を行うようになっている。
【0045】
例えば、制御装置30が最初の測定ユニット18の図2(A)に示す中心位置のレーザー発光部22からレーザー光を照射させ、そのレーザー光が同図(B)に示すスクリーン24の中心位置P1に照射されると、レーザー光が照射されたスクリーン24を撮像手段26が撮像し、伝送手段28がその撮像データを制御装置30に伝送する。
【0046】
制御装置30は、その撮像データに基づいて最初の測定ユニット18の先端の位置ずれ0を算出する。
【0047】
次に、第2の測定ユニット18の中心位置のレーザー発光部22からレーザー光を照射させ、そのレーザー光が同図(C)に示すスクリーン24のずれ位置P2に照射されると、レーザー光が照射されたスクリーン24を撮像手段26が撮像し、伝送手段28がその撮像データを制御装置30に伝送し、制御装置30がその撮像データに基づいて第2の測定ユニット18の先端の位置ずれ量Zを二次元的に算出する。
【0048】
このように、複数の測定ユニット18の位置ずれをそれぞれ測定することで、掘削孔16の全体の曲がり度を測定するようになっている。
【0049】
また、この制御装置30は、予め測定ユニット18の長さを記憶しており、それに基づいて図3に示すように、制御装置30に接続されたモニタ34に、図4(A)に示すような各測定ユニット18の撮像画面36掘削孔16のトンネル12縦断面方向の画面38及び横断面方向の画面40を表示して、三次元的に認識できるようにしている。
【0050】
この場合、図5(A)に示す縦断面方向の画面38及び同図(B)に示す横断面方向の画面40では、各測定ユニット18の撮像画面36と関連づけて表示するようにしている。
【0051】
また、制御装置30は、注入材の注入圧、注入量、土質による注入材の広がり具合を計算上算出して注入管理を行うようになっており、注入エリアが重ならないとき注入不足となるので、図4(B)のトンネル横断面方向及び同図(C)のトンネル縦断面方向における注入材42の注入結果シミュレーション画面44、46を表示し、各注入パイプごとの注入圧、注入量、パイプ延長、角度、パイプ挿入口座標などの履歴管理を行うようにしている。
【0052】
さらに、制御措置30は、図6に示すように、筒体20の曲がり度が大きく、レーザー光の一部がスクリーン24に到達できない場合でも、複数のレーザー発光部22から発光位置を切り替えて照射させることで、スクリーン24への照射範囲を範囲L分拡大して、確実な測定を行うことができるようにしている。
【0053】
例えば、中心位置のレーザー発光部22から、周辺位置のレーザー発光部22からのレーザー光の照射に切り替えることで、実現するようにしている。
【0054】
また、制御装置30(算出手段)は、図7に示すように、撮像データからレーザー光の照射中心位置Xを算出する中心位置算出手段としての機能を有する。
【0055】
このように、中心位置算出手段を用いて画像処理により各レーザー光の照射中心位置Xを算出することで、より正確な曲がり度を測定することができるようになっている。
【0056】
さらに、制御装置30は、複数のレーザー発光部22よりレーザー光をスクリーン24に照射し、それを撮像手段26にて撮像することで、その撮像データにより、図8(A)に示すように、筒体20のねじれによって、照射位置Yにねじれ回転が生じていることを認識ことができ、この場合、図8(B)に示すように、ねじれの角度分、ねじれ回転方向と逆方向に回転補正をかけることで、ねじれによる誤差を修正するようにしている。
【0057】
このように、筒体20内にレーザー発光部22と、スクリーン24と、撮像手段26とを設けることにより、レーザー光の照射されたスクリーン24を撮像手段26で撮像し、その撮像データを伝送手段28により制御装置30に伝送して、制御装置30でその撮像データに基づいて筒体20先端位置の位置ずれを算出することで、口径が比較的小径で、曲がりがあるために見通しができない形状の掘削孔の曲がり度を、手間を要することなく簡便かつ正確に測定することができる。
【0058】
また、装置は筒体にて覆われているので、掘削孔の内部環境による影響を受けることなく、しかも、測定方向(鉛直方向、水平方向等)にも制限を受けることなく確実に測定をすることができる。
【0059】
さらに、複数の測定ユニット18を連結して掘削孔16内に挿入し、各測定ユニット18の測定結果を制御装置30にて算出することで、掘削孔16の途中の曲がり度などの曲がり度の経過を含めた全体の複雑な曲がり度を曲がりの方向に制限されることなく、確実に測定することができる。
【0060】
次に、掘削孔曲がり度測定方法について説明する。
【0061】
まず、予め掘削孔16の長さに応じて、必要数の測定ユニット18、例えば4つの測定ユニット18を予め長さ方向に連結しておく。
【0062】
次いで、最初の測定ユニット18の筒体20を一端部側を手前にして掘削孔16に挿入し、順次連結した複数の測定ユニット18を挿入する。
【0063】
このようにして、掘削孔16の先端位置に最初の測定ユニット18の先端部が届くまで、掘削孔16内に複数の測定ユニット18を挿入する。
【0064】
次に、各測定ユニット18の伝送手段28に接続されている伝送ライン32を制御装置30に接続する。
【0065】
なお、各測定ユニット18のレーザー発光部22及び伝送手段28を電源に接続するとともに、各レーザー発光部22を制御装置30に接続しておく。
【0066】
この状態で、各測定ユニット18のレーザー発光部22よりスクリーン24にレーザー光を照射する。
【0067】
次いで、レーザー光の照射された各スクリーン24を撮像手段26にて撮像する。
【0068】
次に、この撮像手段26にて撮像された撮像データを伝送手段28、
伝送ライン32を介して制御装置30に伝送する。
【0069】
次いで、制御装置30は、伝送された前記撮像データに基づいて各測定ユニット18における筒体20先端の位置ずれを算出する。
【0070】
また、制御装置30は、モニタ34に図4(A)に示すような各測定ユニット18の撮像画面36及びトンネル縦断面方向の画面38、横断面方向の画面40を表示して、掘削孔16の曲がり度を三次元的に把握できるようにする。
【0071】
さらに、モニタ34には、図4(B)、(C)に示すような横断方向及び縦断面方向での注入結果シミュレーション画面を表示して、各掘削孔16の注入材の注入量を把握できるようにしている。
【0072】
このように、各測定ユニット18のレーザー光の照射されたスクリーン24を撮像手段26で撮像し、その撮像データを伝送手段28により制御装置30に伝送して、制御装置30でその撮像データに基づいて各筒体20先端位置の位置ずれを算出することで、口径が比較的小径で、曲がりがあるために見通しができない形状の掘削孔16の曲がり度を、手間を要することなく簡便かつ正確に測定することができる。
【0073】
また、各測定ユニット18は筒体にて覆われているので、掘削孔16の内部環境による影響を受けることなく、しかも、測定方向(鉛直方向、水平方向等)にも制限を受けることなく確実に測定をすることができることとなる。
【0074】
また、制御装置30では、図6に示すように、各測定ユニット18において、各レーザー発光部22から照射位置を変化させてレーザー光をスクリーン24に照射することにより、筒体20の曲がり度が大きく、レーザー光がスクリーン24に到達できない場合でも、スクリーン24への照射範囲を拡大して、確実な測定を行うことが可能となる。
【0075】
さらにまた、制御装置30は、図7に示すように、撮像データからレーザー光の照射中心位置Xを算出することで、より正確な曲がり度を測定するようになっている。
【0076】
そしてさらに、制御装置30は、複数のレーザー発光部22よりレーザー光をスクリーン24に照射し、それを撮像手段26にて撮像することで、その撮像データにより、図8(A)に示すように、筒体20のねじれによって、照射位置Yにねじれ回転が生じていることを認識し、図8(B)に示すように、ねじれの角度分、ねじれ回転方向と逆方向に回転補正をかけることで、ねじれによる誤差を修正するようにしている。
【0077】
図9及び図10には、本発明の掘削孔曲がり度測定装置10の他の実施の形態を示す。
【0078】
この実施の形態における掘削孔曲がり度測定装置10は、図9に示すように、各測定ユニット18のレーザー発光部22を筒48内に収納した発光部ユニット50として形成するとともに、撮像手段26、伝送手段28及び取り付け板52を筒54内に収納した撮像ユニット56として形成し、これら発光部ユニット50及び撮像ユニット56を剛性筒体58内に収納可能にしている。
【0079】
剛性筒体58は、金属製の変形しないものとされている。
【0080】
剛性筒体58の発光部ユニット50前方にはガラス板60が設置され、そのガラス板60を発光部ユニット50とで挟み込むように、Oリング62でシールされた状態で連結用筒体64の一端部が剛性筒体58内にさしこみ固定されるようになっている。
【0081】
また、剛性筒体58の撮像ユニット56手前にはスクリーン24が設置され、そのスクリーン24を撮像ユニット56とで挟み込むように、Oリング62でシールされた状態で連結用筒体64の一端部が剛性筒体58内にさしこみ固定されるようになっている。
【0082】
そして、剛性筒体58の両端から突出している連結用筒体62の外周に変形可能な材料で形成された延長用筒体66が連結されるようになっている。
【0083】
図9のような掘削孔曲がり度測定装置10を用いて掘削孔16の曲がり度を測定する場合の一例を図10に示す。
【0084】
この場合、掘削孔16の曲がり度が徐々に変化する場合を想定して、連結用筒体64の長さを変更することで、各測定ユニット18の長さを変更して接続していく。
【0085】
例えば、一番手前の測定ユニット18−1から奥(先端)から2番目の測定ユニット18−5まで5つの測定ユニットの長さを徐々に短くL1〜L5に設定し、それぞれの長さをL1=5m、L2=4m、L3=3m、L4=2m、L5=1mとした場合における各測定ユニット18−1〜18−5の先端位置におけるずれ量をそれぞれD1からD5とした。
【0086】
ここで、k番目(k=1〜5)の測定ユニット長をLkmm、計測範囲を±LMmmとすると、
【0087】
θk=atan(LM/Lk)
【0088】
i=k
Dk=Σ{Lk*sin( Σ atan(LM/Li))}
i=l
【0089】
となり、
各測定ユニット18−1〜18−5の先端位置におけるずれ量D1〜D5は、図11に示す式により求められる。
【0090】
これによって、指定計測範囲最大でずれた場合のずれ積算量を計算すると、図12に示すようになる。
【0091】
このように、長さの異なる測定ユニット18を用いた場合にも、掘削孔16のずれ量、ずれ積算量を三次元的に把握することが可能である。
【0092】
特に、掘削孔16の曲がり量の大きな先端部側で測定ユニットの長さを短くし、曲がり量の少ない入り口側で測定ユニット18の長さを長くすることで、効率よく、しかも精度の高い曲がり度の測定が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、種々の実施の形態に変形可能である。
【0094】
例えば、前記実施の形態では、1つの掘削孔に対して複数の測定ユニットを挿入するようにしているが、この例に限らず、短い掘削孔の場合には、1個の掘削孔曲がり度測定装置を用いて測定することも可能である。
【0095】
また、本発明は、AGF工法における掘削孔の曲がり度測定に限らず、ボーリング孔の先端位置測定や連壁掘削時の泥水中の掘削マシーンの位置計測等に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0096】
10 掘削孔曲がり度測定装置
16 掘削孔
18 測定ユニット
20 筒体
22 レーザー発光部
24 スクリーン
26 撮像手段
28 伝送手段
30 制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削孔曲がり度測定装置及びそれを用いた掘削孔曲がり度測定方法に関し、特に、比較的小口径の掘削孔に用いるに適した掘削孔曲がり度測定装置及びそれを用いた掘削孔曲がり度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トンネル工事において掘削精度の測定にレーザーを用いることが知られており、このようなレーザーを用いた測定はトンネルの径が大きければ人力によって行うことができるが、トンネルの径が小さくなったり、小径の掘削孔の測定には適用できないものであった。
【0003】
特に、山岳トンネルのAGF工法においては、掘削機により切羽に小径の掘削孔を掘削し、そこに鋼管等を挿入して注入材を注入することでトンネルの安定を図るようにしているが、この際の掘削孔に曲がりが生じていると、均一な注入材の注入では有効な注入効果が得られないことがあるが、このような小径の掘削孔の曲がり度を測定するものが存在しないのが現状である。
【0004】
なお、ボーリング孔の曲がりを測定するものとしては、例えば特許文献1に示すような提案もなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−145388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような特許文献1に示すようなボーリング孔の曲がりを測定するものにあっては、保護ケースの水準器を用いて口元管の傾斜角を測定し、その測定値をゼロ較正データとし、また、装置本体をボーリング口元管からボーリング孔に挿入し、装置本体の送出量を一定としたり、送り出し手段によって制御したりすることで、この送出量によってボーリング孔の長さ方向での装置挿入位置を設定したりする必要があり、煩雑な手間を要するものである。
【0007】
本発明の目的は、口径が比較的小径で、曲がりがあるために見通しができない形状の掘削孔の曲がり度を、掘削孔の内部環境による影響を受けることなく、しかも、手間を要することなく、簡便に正確な測定ができる掘削孔の曲がり度測定装置及びそれを用いた掘削孔の曲がり度測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明の掘削孔曲がり度測定装置は、掘削孔内に挿入されて掘削孔の曲がり度に応じて曲がり可能にされた内部空洞の筒体と、この筒体の一端部側に配置されて前記筒体の他端部側に向けてレーザー光を照射するレーザー発光部と、前記筒体の他端部側に設置されて前記レーザー発光部からのレーザー光が照射されるスクリーンと、前記スクリーンよりも他端部側に配置されて前記スクリーンを撮像する撮像手段と、前記撮像手段の撮像データを伝送する伝送手段と、前記伝送された撮像データに基づいて前記筒体先端の位置ずれを算出する算出手段とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、筒体内にレーザー発光部と、スクリーンと、撮像手段とを設けることにより、レーザー光の照射されたスクリーンを撮像手段で撮像し、その撮像データを伝送手段により算出手段に伝送して、算出手段でその撮像データに基づいて筒体先端位置の位置ずれを算出することで、口径が比較的小径で、曲がりがあるために見通しができない形状の掘削孔の曲がり度を、手間をようすることなく簡便かつ正確に測定することができる。
【0010】
また、装置は筒体にて覆われているので、掘削孔の内部環境による影響を受けることなく、しかも、測定方向(鉛直方向、水平方向等)にも制限を受けることなく確実に測定をすることができる。
【0011】
本発明においては、所定長さの前記筒体と、レーザー発光部と、スクリーンと、撮像手段と、伝送手段とを測定ユニットとし、この測定ユニットを複数連結して前記掘削穴内に挿入され、各測定ユニットの伝送手段にて各測定ユニットの撮像データを前記算出手段に伝送するようにすることができる。
【0012】
このような構成とすることにより、複数の測定ユニットを連結して掘削孔内に挿入し、各測定ユニットの測定結果を算出手段にて算出することで、掘削孔の途中の曲がり度などの曲がり度の経過を含めた全体の複雑な曲がり度を曲がりの方向に制限されることなく、確実に測定することができる。
【0013】
本発明においては、前記レーザー発光部は、前記スクリーンの異なる位置にレーザー光を照射可能に複数設けられ、各レーザー発光部から照射位置を変化させてレーザー光を前記スクリーンに照射可能とされているようにすることができる。
【0014】
このような構成とすることにより、筒体の曲がり度が大きく、レーザー光の一部がスクリーンに到達できない場合でも、複数のレーザー発光部から発光位置を変化させて発光させることで、スクリーンへの照射範囲を拡大して、確実な測定を行うことが可能となる。
【0015】
この場合、前記複数のレーザー発光部は、中心位置に配設されたレーザー発光部と、その中心位置のレーザー発光部の周囲に配設された複数のレーザー発光部とを有するものとすることができる。
【0016】
このような構成とすることにより、中心位置のレーザー発光部の周囲に配設された複数のレーザー発光部により、発光位置を変化させて発光させることで、スクリーンへの照射範囲を拡大することができる。
【0017】
本発明においては、前記算出手段は、前記撮像データからレーザー光の照射中心位置を算出する中心位置算出手段を有するようにすることができる。
【0018】
このような構成とすることにより、中心位置算出手段を用いて画像処理によりレーザー光の照射中心位置を算出することで、より正確な曲がり度を測定することが可能となる。
【0019】
本発明の掘削孔曲がり度測定方法は、前述のいずれかに記載の掘削孔曲がり度測定装置を用いた掘削孔曲がり度測定方法であって、
前記筒体を一端部側を手前にして前記掘削孔に挿入する工程と、
前記レーザー発光部より前記スクリーンにレーザー光を照射する工程と、
前記レーザー光の照射された前記スクリーンを前記撮像手段にて撮像する工程と、
前記撮像手段にて撮像された撮像データを伝送手段を介して前記算出手段に伝送する工程と、
前記算出手段にて、伝送された前記撮像データに基づいて前記筒体先端の位置ずれを算出する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、レーザー光の照射されたスクリーンを撮像手段で撮像し、その撮像データを伝送手段により算出手段に伝送して、算出手段でその撮像データに基づいて筒体先端位置の位置ずれを算出することで、口径が比較的小径で、曲がりがあるために見通しができない形状の掘削孔の曲がり度を、手間を要することなく簡便かつ正確に測定することができる。
【0021】
また、装置は筒体にて覆われているので、掘削孔の内部環境による影響を受けることなく、しかも、測定方向(鉛直方向、水平方向等)にも制限を受けることなく確実に測定をすることができる。
【0022】
本発明においては、所定長さの前記筒体と、レーザー発光部と、スクリーンと、撮像手段と、伝送手段とを測定ユニットとし、
この測定ユニットを複数連結して前記掘削穴内に挿入する工程と、
各測定ユニットの伝送手段にて各測定ユニットの撮像データを前記算出手段に伝送する工程と、
各測定ユニットからの撮像データに基づいて前記算出手段により先端の測定ユニットの筒体先端の位置ずれを算出する工程と、
を含むようにすることができる。
【0023】
このような構成とすることにより、複数の測定ユニットを連結して掘削孔内に挿入し、各測定ユニットの測定結果を算出手段にて算出することで、掘削孔の途中の曲がり度などの曲がり度の経過を含めた全体の複雑な曲がり度を曲がりの方向に制限されることなく、確実に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる掘削孔曲がり度測定装置の要部透視状態斜視図である。
【図2】(A)は図1のA点の正面図、(B)図1のB点の正面図、(C)は図1のC点の正面図である。
【図3】本発明の一実施の形態にかかる掘削孔曲がり度測定装置の全体概略図である。
【図4】(A)は図3のモニタの測定結果画面、(B)は図3のモニタのトンネル横断面方向における注入結果シミュレーション画面、(C)は図3のトンネル縦断面方向における注入結果シミュレーション画面である。
【図5】(A)は図4(A)の撮像画面及びトンネル縦断方向の曲がり度画面の一部拡大図、(B)は図4(A)のトンネル横断方向の曲がり度画面の一部拡大図である。
【図6】筒体の曲がり度が大きい場合のレーザー光の照射範囲拡大状態を示す説明図である。
【図7】撮像データからレーザー光の照射中心位置を算出する状態を示す説明図である。
【図8】(A)は筒体のねじれ時における撮像データの補正前の状態を示す説明図、(B)はその補正後の状態を示す説明図である。
【図9】本発明の他の実施の形態にかかる掘削孔曲がり度測定装置の部分断面図である。
【図10】図9の掘削孔曲がり度測定装置を用いて掘削孔の曲がり度を測定する状態を示す説明図である。
【図11】図10における各位置のずれ量を算出するための計算式である。
【図12】指定計測範囲最大でずれた場合の最大ずれ量の計算結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0026】
図1〜図8は、本発明の一実施の形態にかかる掘削孔曲がり度測定装置を示す図である。
【0027】
図3は、本実施の形態にかかる掘削孔曲がり度測定装置の全体概略図で、図1は、その要部透視状態斜視図である。
【0028】
この掘削孔曲がり度測定装置10は、例えば、図3に示すように、山岳トンネルのAGF工法において、トンネル12の切羽14に注入材を注入するための掘削孔16を掘削した際に、その掘削孔16の曲がり度を測定して、その曲がり度に応じて注入材の注入量を制御することで、注入効果を高めようとするもので、複数の測定ユニット18を有している。
【0029】
各測定ユニット18は、図1に示すように、筒体20と、レーザー発光部22と、スクリーン24と、撮像手段26と、伝送手段28とを有し、この伝送手段28が外部の制御装置30と接続されるようになっている。
【0030】
筒体20は、掘削孔16内に挿入されて掘削孔16の曲がり度に応じて曲がり可能にされた内部空洞のものとされている。
【0031】
また、この筒体20は、例えば、掘削孔16の口径に対応して外径が70mm程度の断面円形のものとされている。
【0032】
さらに、測定ユニット18の長さが3m程度とされ、長さ12m程度の掘削孔16である場合に、掘削孔16内に筒体20が長手方向に4本挿入しうるようにされている。
【0033】
また、筒体20の材質は、掘削孔16の曲がり度に応じて曲がり可能なものであれば、塩化ビニルあるいは鉄製その他のものが採用できる。
【0034】
レーザー発光部22は、筒体20の一端部側に配置されて筒体20の他端部側に向けてレーザー光30を照射するもので、図2(A)に示すように、断面円形の筒体20の中心位置に1個、その周囲に等間隔で8個、合計9個設けられるようになっている。
【0035】
また、各レーザー発光部22は、例えば半導体レーザー発振装置にて構成されている。
【0036】
さらに、各レーザー発光部22は、図示せぬ接続ラインを介して図3に示す制御装置30と接続されるとともに、電源ラインを介して電源と接続され、制御装置30によって各レーザー発光部22からのレーザー光の照射が制御されるようになっている。
【0037】
スクリーン24は、筒体20の他端部側に設置されてレーザー発光部22からのレーザー光がレーザー発光部22と同一の配列パターンで照射されるようになっている。
【0038】
また、このスクリーン24は、半透明の材料で形成され、照射されたレーザー光が裏面側に映し出されるようになっている。
【0039】
撮像手段26は、スクリーン24よりも他端部側に配置されて、レーザー光が照射されたスクリーン24の裏面側を撮像するようになっている。
【0040】
この撮像手段26としては、例えばCCDカメラが用いられるようになっている。
【0041】
伝送手段28は、撮像手段26で撮像した撮像データを伝送ライン32を介して制御装置30に伝送するようになっている。
【0042】
この伝送手段28には、図示せぬ電源ラインを介して電源が供給されるようになっている。
【0043】
制御装置30は、パーソナルコンピュータ等から構成され、撮像手段26より伝送された撮像データに基づいて筒体20先端の位置ずれを算出する算出手段として機能する。
【0044】
また、制御装置30は、図示せぬが各レーザー発光部22に接続され、各レーザー発光部22からのレーザー光の照射を制御するとともに、撮像手段26の撮像制御を行うようになっている。
【0045】
例えば、制御装置30が最初の測定ユニット18の図2(A)に示す中心位置のレーザー発光部22からレーザー光を照射させ、そのレーザー光が同図(B)に示すスクリーン24の中心位置P1に照射されると、レーザー光が照射されたスクリーン24を撮像手段26が撮像し、伝送手段28がその撮像データを制御装置30に伝送する。
【0046】
制御装置30は、その撮像データに基づいて最初の測定ユニット18の先端の位置ずれ0を算出する。
【0047】
次に、第2の測定ユニット18の中心位置のレーザー発光部22からレーザー光を照射させ、そのレーザー光が同図(C)に示すスクリーン24のずれ位置P2に照射されると、レーザー光が照射されたスクリーン24を撮像手段26が撮像し、伝送手段28がその撮像データを制御装置30に伝送し、制御装置30がその撮像データに基づいて第2の測定ユニット18の先端の位置ずれ量Zを二次元的に算出する。
【0048】
このように、複数の測定ユニット18の位置ずれをそれぞれ測定することで、掘削孔16の全体の曲がり度を測定するようになっている。
【0049】
また、この制御装置30は、予め測定ユニット18の長さを記憶しており、それに基づいて図3に示すように、制御装置30に接続されたモニタ34に、図4(A)に示すような各測定ユニット18の撮像画面36掘削孔16のトンネル12縦断面方向の画面38及び横断面方向の画面40を表示して、三次元的に認識できるようにしている。
【0050】
この場合、図5(A)に示す縦断面方向の画面38及び同図(B)に示す横断面方向の画面40では、各測定ユニット18の撮像画面36と関連づけて表示するようにしている。
【0051】
また、制御装置30は、注入材の注入圧、注入量、土質による注入材の広がり具合を計算上算出して注入管理を行うようになっており、注入エリアが重ならないとき注入不足となるので、図4(B)のトンネル横断面方向及び同図(C)のトンネル縦断面方向における注入材42の注入結果シミュレーション画面44、46を表示し、各注入パイプごとの注入圧、注入量、パイプ延長、角度、パイプ挿入口座標などの履歴管理を行うようにしている。
【0052】
さらに、制御措置30は、図6に示すように、筒体20の曲がり度が大きく、レーザー光の一部がスクリーン24に到達できない場合でも、複数のレーザー発光部22から発光位置を切り替えて照射させることで、スクリーン24への照射範囲を範囲L分拡大して、確実な測定を行うことができるようにしている。
【0053】
例えば、中心位置のレーザー発光部22から、周辺位置のレーザー発光部22からのレーザー光の照射に切り替えることで、実現するようにしている。
【0054】
また、制御装置30(算出手段)は、図7に示すように、撮像データからレーザー光の照射中心位置Xを算出する中心位置算出手段としての機能を有する。
【0055】
このように、中心位置算出手段を用いて画像処理により各レーザー光の照射中心位置Xを算出することで、より正確な曲がり度を測定することができるようになっている。
【0056】
さらに、制御装置30は、複数のレーザー発光部22よりレーザー光をスクリーン24に照射し、それを撮像手段26にて撮像することで、その撮像データにより、図8(A)に示すように、筒体20のねじれによって、照射位置Yにねじれ回転が生じていることを認識ことができ、この場合、図8(B)に示すように、ねじれの角度分、ねじれ回転方向と逆方向に回転補正をかけることで、ねじれによる誤差を修正するようにしている。
【0057】
このように、筒体20内にレーザー発光部22と、スクリーン24と、撮像手段26とを設けることにより、レーザー光の照射されたスクリーン24を撮像手段26で撮像し、その撮像データを伝送手段28により制御装置30に伝送して、制御装置30でその撮像データに基づいて筒体20先端位置の位置ずれを算出することで、口径が比較的小径で、曲がりがあるために見通しができない形状の掘削孔の曲がり度を、手間を要することなく簡便かつ正確に測定することができる。
【0058】
また、装置は筒体にて覆われているので、掘削孔の内部環境による影響を受けることなく、しかも、測定方向(鉛直方向、水平方向等)にも制限を受けることなく確実に測定をすることができる。
【0059】
さらに、複数の測定ユニット18を連結して掘削孔16内に挿入し、各測定ユニット18の測定結果を制御装置30にて算出することで、掘削孔16の途中の曲がり度などの曲がり度の経過を含めた全体の複雑な曲がり度を曲がりの方向に制限されることなく、確実に測定することができる。
【0060】
次に、掘削孔曲がり度測定方法について説明する。
【0061】
まず、予め掘削孔16の長さに応じて、必要数の測定ユニット18、例えば4つの測定ユニット18を予め長さ方向に連結しておく。
【0062】
次いで、最初の測定ユニット18の筒体20を一端部側を手前にして掘削孔16に挿入し、順次連結した複数の測定ユニット18を挿入する。
【0063】
このようにして、掘削孔16の先端位置に最初の測定ユニット18の先端部が届くまで、掘削孔16内に複数の測定ユニット18を挿入する。
【0064】
次に、各測定ユニット18の伝送手段28に接続されている伝送ライン32を制御装置30に接続する。
【0065】
なお、各測定ユニット18のレーザー発光部22及び伝送手段28を電源に接続するとともに、各レーザー発光部22を制御装置30に接続しておく。
【0066】
この状態で、各測定ユニット18のレーザー発光部22よりスクリーン24にレーザー光を照射する。
【0067】
次いで、レーザー光の照射された各スクリーン24を撮像手段26にて撮像する。
【0068】
次に、この撮像手段26にて撮像された撮像データを伝送手段28、
伝送ライン32を介して制御装置30に伝送する。
【0069】
次いで、制御装置30は、伝送された前記撮像データに基づいて各測定ユニット18における筒体20先端の位置ずれを算出する。
【0070】
また、制御装置30は、モニタ34に図4(A)に示すような各測定ユニット18の撮像画面36及びトンネル縦断面方向の画面38、横断面方向の画面40を表示して、掘削孔16の曲がり度を三次元的に把握できるようにする。
【0071】
さらに、モニタ34には、図4(B)、(C)に示すような横断方向及び縦断面方向での注入結果シミュレーション画面を表示して、各掘削孔16の注入材の注入量を把握できるようにしている。
【0072】
このように、各測定ユニット18のレーザー光の照射されたスクリーン24を撮像手段26で撮像し、その撮像データを伝送手段28により制御装置30に伝送して、制御装置30でその撮像データに基づいて各筒体20先端位置の位置ずれを算出することで、口径が比較的小径で、曲がりがあるために見通しができない形状の掘削孔16の曲がり度を、手間を要することなく簡便かつ正確に測定することができる。
【0073】
また、各測定ユニット18は筒体にて覆われているので、掘削孔16の内部環境による影響を受けることなく、しかも、測定方向(鉛直方向、水平方向等)にも制限を受けることなく確実に測定をすることができることとなる。
【0074】
また、制御装置30では、図6に示すように、各測定ユニット18において、各レーザー発光部22から照射位置を変化させてレーザー光をスクリーン24に照射することにより、筒体20の曲がり度が大きく、レーザー光がスクリーン24に到達できない場合でも、スクリーン24への照射範囲を拡大して、確実な測定を行うことが可能となる。
【0075】
さらにまた、制御装置30は、図7に示すように、撮像データからレーザー光の照射中心位置Xを算出することで、より正確な曲がり度を測定するようになっている。
【0076】
そしてさらに、制御装置30は、複数のレーザー発光部22よりレーザー光をスクリーン24に照射し、それを撮像手段26にて撮像することで、その撮像データにより、図8(A)に示すように、筒体20のねじれによって、照射位置Yにねじれ回転が生じていることを認識し、図8(B)に示すように、ねじれの角度分、ねじれ回転方向と逆方向に回転補正をかけることで、ねじれによる誤差を修正するようにしている。
【0077】
図9及び図10には、本発明の掘削孔曲がり度測定装置10の他の実施の形態を示す。
【0078】
この実施の形態における掘削孔曲がり度測定装置10は、図9に示すように、各測定ユニット18のレーザー発光部22を筒48内に収納した発光部ユニット50として形成するとともに、撮像手段26、伝送手段28及び取り付け板52を筒54内に収納した撮像ユニット56として形成し、これら発光部ユニット50及び撮像ユニット56を剛性筒体58内に収納可能にしている。
【0079】
剛性筒体58は、金属製の変形しないものとされている。
【0080】
剛性筒体58の発光部ユニット50前方にはガラス板60が設置され、そのガラス板60を発光部ユニット50とで挟み込むように、Oリング62でシールされた状態で連結用筒体64の一端部が剛性筒体58内にさしこみ固定されるようになっている。
【0081】
また、剛性筒体58の撮像ユニット56手前にはスクリーン24が設置され、そのスクリーン24を撮像ユニット56とで挟み込むように、Oリング62でシールされた状態で連結用筒体64の一端部が剛性筒体58内にさしこみ固定されるようになっている。
【0082】
そして、剛性筒体58の両端から突出している連結用筒体62の外周に変形可能な材料で形成された延長用筒体66が連結されるようになっている。
【0083】
図9のような掘削孔曲がり度測定装置10を用いて掘削孔16の曲がり度を測定する場合の一例を図10に示す。
【0084】
この場合、掘削孔16の曲がり度が徐々に変化する場合を想定して、連結用筒体64の長さを変更することで、各測定ユニット18の長さを変更して接続していく。
【0085】
例えば、一番手前の測定ユニット18−1から奥(先端)から2番目の測定ユニット18−5まで5つの測定ユニットの長さを徐々に短くL1〜L5に設定し、それぞれの長さをL1=5m、L2=4m、L3=3m、L4=2m、L5=1mとした場合における各測定ユニット18−1〜18−5の先端位置におけるずれ量をそれぞれD1からD5とした。
【0086】
ここで、k番目(k=1〜5)の測定ユニット長をLkmm、計測範囲を±LMmmとすると、
【0087】
θk=atan(LM/Lk)
【0088】
i=k
Dk=Σ{Lk*sin( Σ atan(LM/Li))}
i=l
【0089】
となり、
各測定ユニット18−1〜18−5の先端位置におけるずれ量D1〜D5は、図11に示す式により求められる。
【0090】
これによって、指定計測範囲最大でずれた場合のずれ積算量を計算すると、図12に示すようになる。
【0091】
このように、長さの異なる測定ユニット18を用いた場合にも、掘削孔16のずれ量、ずれ積算量を三次元的に把握することが可能である。
【0092】
特に、掘削孔16の曲がり量の大きな先端部側で測定ユニットの長さを短くし、曲がり量の少ない入り口側で測定ユニット18の長さを長くすることで、効率よく、しかも精度の高い曲がり度の測定が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、種々の実施の形態に変形可能である。
【0094】
例えば、前記実施の形態では、1つの掘削孔に対して複数の測定ユニットを挿入するようにしているが、この例に限らず、短い掘削孔の場合には、1個の掘削孔曲がり度測定装置を用いて測定することも可能である。
【0095】
また、本発明は、AGF工法における掘削孔の曲がり度測定に限らず、ボーリング孔の先端位置測定や連壁掘削時の泥水中の掘削マシーンの位置計測等に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0096】
10 掘削孔曲がり度測定装置
16 掘削孔
18 測定ユニット
20 筒体
22 レーザー発光部
24 スクリーン
26 撮像手段
28 伝送手段
30 制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削孔内に挿入されて掘削孔の曲がり度に応じて曲がり可能にされた内部空洞の筒体と、この筒体の一端部側に配置されて前記筒体の他端部側に向けてレーザー光を照射するレーザー発光部と、前記筒体の他端部側に設置されて前記レーザー発光部からのレーザー光が照射されるスクリーンと、前記スクリーンよりも他端部側に配置されて前記スクリーンを撮像する撮像手段と、前記撮像手段の撮像データを伝送する伝送手段と、前記伝送された撮像データに基づいて前記筒体先端の位置ずれを算出する算出手段とを有することを特徴とする掘削孔曲がり度測定装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記筒体と、レーザー発光部と、スクリーンと、撮像手段と、伝送手段とを測定ユニットとし、この測定ユニットを複数連結して前記掘削穴内に挿入され、各測定ユニットの伝送手段にて各測定ユニットの撮像データを前記算出手段に伝送することを特徴とする掘削孔曲がり度測定装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記レーザー発光部は、前記スクリーンの異なる位置にレーザー光を照射可能に複数設けられ、各レーザー発光部から照射位置を変化させてレーザー光を前記スクリーンに照射可能とされていることを特徴とする掘削孔曲がり度測定装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記複数のレーザー発光部は、中心位置に配設されたレーザー発光部と、その中心位置のレーザー発光部の周囲に配設された複数のレーザー発光部とを有することを特徴とする掘削孔曲がり度測定装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記算出手段は、前記撮像データからレーザー光の照射中心位置を算出する中心位置算出手段を有することを特徴とする掘削孔曲がり度測定装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の掘削孔曲がり度測定装置を用いた掘削孔曲がり度測定方法であって、
前記筒体を一端部側を手前にして前記掘削孔に挿入する工程と、
前記レーザー発光部より前記スクリーンにレーザー光を照射する工程と、
前記レーザー光の照射された前記スクリーンを前記撮像手段にて撮像する工程と、
前記撮像手段にて撮像された撮像データを伝送手段を介して前記算出手段に伝送する工程と、
前記算出手段にて、伝送された前記撮像データに基づいて前記筒体先端の位置ずれを算出する工程と、
を含むことを特徴とする掘削孔曲がり度測定方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記筒体と、レーザー発光部と、スクリーンと、撮像手段と、伝送手段とを測定ユニットとし、
この測定ユニットを複数連結して前記掘削穴内に挿入する工程と、
各測定ユニットの伝送手段にて各測定ユニットの撮像データを前記算出手段に伝送する工程と、
各測定ユニットからの撮像データに基づいて前記算出手段により先端の測定ユニットの筒体先端の位置ずれを算出する工程と、
を含むことを特徴とする掘削孔曲がり度測定方法。
【請求項1】
掘削孔内に挿入されて掘削孔の曲がり度に応じて曲がり可能にされた内部空洞の筒体と、この筒体の一端部側に配置されて前記筒体の他端部側に向けてレーザー光を照射するレーザー発光部と、前記筒体の他端部側に設置されて前記レーザー発光部からのレーザー光が照射されるスクリーンと、前記スクリーンよりも他端部側に配置されて前記スクリーンを撮像する撮像手段と、前記撮像手段の撮像データを伝送する伝送手段と、前記伝送された撮像データに基づいて前記筒体先端の位置ずれを算出する算出手段とを有することを特徴とする掘削孔曲がり度測定装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記筒体と、レーザー発光部と、スクリーンと、撮像手段と、伝送手段とを測定ユニットとし、この測定ユニットを複数連結して前記掘削穴内に挿入され、各測定ユニットの伝送手段にて各測定ユニットの撮像データを前記算出手段に伝送することを特徴とする掘削孔曲がり度測定装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記レーザー発光部は、前記スクリーンの異なる位置にレーザー光を照射可能に複数設けられ、各レーザー発光部から照射位置を変化させてレーザー光を前記スクリーンに照射可能とされていることを特徴とする掘削孔曲がり度測定装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記複数のレーザー発光部は、中心位置に配設されたレーザー発光部と、その中心位置のレーザー発光部の周囲に配設された複数のレーザー発光部とを有することを特徴とする掘削孔曲がり度測定装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記算出手段は、前記撮像データからレーザー光の照射中心位置を算出する中心位置算出手段を有することを特徴とする掘削孔曲がり度測定装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の掘削孔曲がり度測定装置を用いた掘削孔曲がり度測定方法であって、
前記筒体を一端部側を手前にして前記掘削孔に挿入する工程と、
前記レーザー発光部より前記スクリーンにレーザー光を照射する工程と、
前記レーザー光の照射された前記スクリーンを前記撮像手段にて撮像する工程と、
前記撮像手段にて撮像された撮像データを伝送手段を介して前記算出手段に伝送する工程と、
前記算出手段にて、伝送された前記撮像データに基づいて前記筒体先端の位置ずれを算出する工程と、
を含むことを特徴とする掘削孔曲がり度測定方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記筒体と、レーザー発光部と、スクリーンと、撮像手段と、伝送手段とを測定ユニットとし、
この測定ユニットを複数連結して前記掘削穴内に挿入する工程と、
各測定ユニットの伝送手段にて各測定ユニットの撮像データを前記算出手段に伝送する工程と、
各測定ユニットからの撮像データに基づいて前記算出手段により先端の測定ユニットの筒体先端の位置ずれを算出する工程と、
を含むことを特徴とする掘削孔曲がり度測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−27471(P2011−27471A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171382(P2009−171382)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(505011512)東海プラネット株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(505011512)東海プラネット株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
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