説明

掘削工具

【課題】掘削爪の脱着による掘削爪とホルダとの係合部の損傷が抑止され、簡素な形状により十分な抜け止め力を発揮し、維持できる掘削工具を提供する。
【解決手段】掘削爪10(30)と、ホルダ20(40)とを備える掘削工具1(2)であって、掘削爪は、掘削部11(31)がその前端側に設けられ、後端側に開口する孔部13又は後端側に突出する軸部(33)が形成された基部12(32)を有し、ホルダは、掘削爪の孔部に挿入される軸部21か、掘削爪の軸部が挿入される孔部(41)を有し、軸部の外周面及び孔部の内周面には互いに適合するテーパが設けられており、軸部が孔部に挿入された状態にて、互いに対向する軸部の外周面と孔部の内周面のうちいずれか一方又は双方に軸部の挿入方向Aに延在する溝14,15,22,23が形成され、軸部の挿入方向に延在し、溝に嵌め入れられ、軸部と孔部とに挟持された棒状弾性体28,29を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を掘削する掘削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤を掘削して掘削孔を形成する装置としてアースオーガが知られている。このアースオーガに設けられているオーガスクリューの下端部には、地盤を掘削する掘削工具であるオーガヘッドが接続されている。
オーガヘッドとしては、例えば、回転軸に対して略垂直方向に突出した羽部を有し、その羽部に複数の掘削爪が所定間隔に配設されたものがある。なお、羽部には、各掘削爪を支持するホルダが設けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
従来の掘削工具の掘削爪50は、例えば、図5(a)(b)に示すように、ホルダ60に挿入される略六角柱状あるいは略円柱状の軸部52と、軸部52の前端側に設けられて地盤に対して接触する掘削部51とを備えている。なお、掘削部51には、地盤を削る刃部512が設けられている。
そして、この軸部52の長手方向のほぼ中央部分に、ホルダ60の内壁面に係合する抜け止めリング521bが備えられた係合部521が設けられている。
しかし、軸部とホルダとの間の隙間は、軸部の挿入方向に沿い略平行であって略一定間隔の隙間であるので、この隙間に土砂が入り込んでしまうと、その土砂を介してホルダと軸部が噛み合わさってしまい、ホルダから軸部が抜け出にくくなり、磨耗などに伴う掘削爪の交換が困難になってしまうという問題があった。また、抜け止めリングが備えられた係合部の形成に労力・時間を要し不経済であった。
【0004】
これに対して特許文献2には、先端に向かって先細りとなるテーパが設けられた扁平形状の軸部を有する掘削爪と、この軸部に嵌合する支持孔を有するホルダと、軸部の後端に支持孔の内面に係合する樹脂リングからなる係合部が設けられた掘削工具が提案されている。また、同文献においてその軸部には、支持孔に挿入される方向に長く、支持孔の内面に向かって隆起する隆起部が形成され、支持孔には、隆起部が位置合わせされる位置決め溝部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−22593号公報
【特許文献2】特開2009−180030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載の発明によれば、掘削爪脱着時に土砂の混入が抑止され、また脱着が容易となる反面、樹脂リングが損傷し易く、損傷により抜け止め力が低下する。
また、掘削爪軸部およびホルダ支持孔の樹脂リング装着部の形成には、機械加工など労力・時間を要しコストも割高となる。
【0007】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、掘削爪の脱着による掘削爪とホルダとの係合部の損傷が抑止され、簡素な形状により十分な抜け止め力を発揮し、維持できる掘削工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、地盤を掘削する掘削爪と、前記掘削爪を支持するホルダと、を備える掘削工具であって、
前記掘削爪は、地盤と接触する掘削部がその前端側に設けられ、後端側に開口する孔部又は後端側に突出する軸部が形成された基部を有し、
前記ホルダは、前記掘削爪が孔部を有する場合には当該孔部に挿入される軸部を、前記掘削爪が軸部を有する場合には当該軸部が挿入される孔部を有し、
前記軸部の外周面には、当該軸部の先端側に向けて先細りになるテーパが設けられ、
前記孔部の内周面には、当該孔部の奥に向かって先細りになり、前記軸部のテーパに適合するテーパが設けられており、
前記軸部が前記孔部に挿入された状態にて、互いに対向する前記軸部の外周面と前記孔部の内周面のうちいずれか一方又は双方に前記軸部の挿入方向に延在する溝が形成され、
前記軸部の挿入方向に延在し、前記溝に嵌め入れられ、前記軸部と前記孔部とに挟持された棒状弾性体を備えることを特徴とする掘削工具である。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記棒状弾性体が前記軸部と前記孔部とに挟圧されて圧縮弾性変形した状態で、前記掘削爪が前記ホルダに取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の掘削工具である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、掘削爪とホルダとが軸方向に配した棒状弾性体を介して係合するので、掘削爪とホルダとの係合部の損傷が抑止されるという効果がある。
また本発明は、掘削爪とホルダとの間に棒状弾性体を挟持させることにより、棒状弾性体の弾性力、摩擦力によって十分な抜け止め力を発揮し、維持できるという効果がある。
また本発明は、掘削爪、ホルダの形状が簡素化され、掘削工具の製作手間が低減できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る掘削工具の斜視図であり、掘削爪とホルダを分離した状態を示す。
【図2】本発明の一実施形態に係る掘削工具の棒状弾性体を通り挿入方向に垂直な断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る掘削工具の縦断面図である。
【図4】本発明の他の一実施形態に係る掘削工具の縦断面図である。
【図5】従来の掘削工具を一部断面視して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。なお、本実施形態においては、ホルダに支持される掘削爪を備えるオーガヘッドなどの掘削工具を例に説明する。
【0013】
掘削工具1は、図1から図3に示すように、地盤を掘削する掘削爪10と、掘削爪10を支持するホルダ20と、棒状弾性体28,29とを備えている。
掘削爪10は、地盤と接触する掘削部11と、その掘削部11を支える基部12と、を備えている。
掘削部11は、掘削チップ11aと、これを保持するチップ保持部11bとから構成されている。掘削チップ11aは、例えば、タングステンカーバイドとコバルトの焼結体から成形されてなる刃部であり、チップ保持部11bに強固に固定されている。
【0014】
基部12には、後端側に開口する孔部13が形成されている。ホルダ20は、孔部13に挿入される軸部21を有する。孔部13は、少なくともその一端に軸部21が挿入される挿入口を有していれば良く、逆端は開口している必要ない。
軸部21の外周面には、該軸部の先端側に向けて先細りになるテーパが設けられている。孔部13の内周面には、孔部13の奥に向かって先細りになり、軸部21のテーパに適合するテーパが設けられている。孔部13及び軸部21の断面形状は、扁平した長円状のものを示すが、これに限らず、円形その他の形状を適用してもよい。図1中に軸部21の孔部13への挿入方向Aを示す。
【0015】
軸部21が孔部13に挿入されると、孔部13の内周面と軸部の外周面とが対向する。孔部13の内周面には、溝14、15が形成されている。軸部の外周面には、溝22,23が形成されている。これらの溝14、15、22,23は、上記テーパの角度だけ傾いて挿入方向Aに延在する。図2に示すように、軸部21が孔部13に挿入された状態にて、溝14と溝22、溝15と溝23とが対向する。溝14、15は、孔部13の挿入口まで切られている。溝22,23は、軸部21の先端面まで切られている。
【0016】
軸部21が孔部13に挿入された状態にて、一方の棒状弾性体28は、溝14及び溝22と同一方向に延在し、溝14及び溝22に略半身ずつ嵌め入れられ、軸部21と孔部13とに挟持される。他方の棒状弾性体29は、溝15及び溝23と同一方向に延在し、溝15及び溝23に略半身ずつ嵌め入れられ、軸部21と孔部13とに挟持される。
【0017】
一方の棒状弾性体28の弾性変形前における太さは、溝14及び溝22の深さの合計より大きくされている。他方の棒状弾性体29の弾性変形前における太さも、溝15及び溝23の深さの合計より大きくされている。
したがって、軸部21を孔部13に押し込むことによって、棒状弾性体28,29は、軸部21と孔部13とに挟圧されて圧縮弾性変形した状態で、掘削爪10がホルダ20に取り付けられる。棒状弾性体28,29の弾性力によって、孔部13の内周面及び軸部21の外周面に対し棒状弾性体28,29から垂直抗力が生じ、棒状弾性体28,29と、孔部13の内周面及び軸部21の外周面との間の摩擦力が高まり、軸部21を孔部13から抜け出させない抜け止め力が発揮される。
【0018】
また、掘削爪10のホルダ20への装着時には、軸部21の外周面と孔部13の内周面とが互いに近づいていくことで棒状弾性体28,29が太さ方向に圧縮され、掘削爪10のホルダ20からの離脱時には、軸部21の外周面と孔部13の内周面とがさらに近づくことなく離れていくので、棒状弾性体28,29、掘削爪10及びホルダ20への損傷は抑止される。
【0019】
棒状弾性体28,29は、金属、ゴム、樹脂等で構成される。棒状弾性体28,29の断面形状は、例えば図示したように円形とする。これに拘わらず、棒状弾性体28,29の断面形状を、中空円形、楕円形、多角形、X型などとしてもよく、その形状は問わない。溝14,15,22,23の深さ方向の断面形状は、棒状弾性体28,29の断面形状が円形の場合に、略半円形にするなど、棒状弾性体28,29を安定的に保持できる形状であれば足りる。
また、以上の構成にあっては、一つの棒状弾性体28(又は29)に対してこれを挟むように両側に溝を設けたが、片側のみであっても良い。片側のみであても棒状弾性体を安定的に保持できるからである。したがって、軸部21の外周面と孔部13の内周面のうちいずれか一方にのみに棒状弾性体を保持する溝が形成された構成とすることもできる。
【0020】
掘削爪10の抜け止め力は、棒状弾性体の材質のほか、長さと本数に依存するので、これらは、掘削爪10の重量に応じて定められる。
【0021】
図1〜図3に示した構成とは逆に、図4に示すように、後端側に突出する軸部33が形成された基部32を有する掘削爪30を適用してもよい。この場合、ホルダ40は、軸部33が挿入される孔部41を有するものとする。そして、同様に軸部33及び孔部41にテーパを設け、いずれか一方又は双方に棒状弾性体28を保持する溝を設けて実施しても同様の効果が得られる。なお、図4において、31は掘削部、31aは掘削チップ、31bはチップ保持部である。
【0022】
軸部の外周面及び孔部の内周面のテーパは、その全周に亘って設ける必要なないが、少なくとも棒状弾性体を保持する上記溝を形成する部位にはテーパを設けておく。軸部の孔部への押し込みによる棒状弾性体への圧縮力を得るためである。
【0023】
以上のように、テーパ付きで互いに嵌め合う孔部と軸部の少なくとも一方に、少なくとも一条の縦溝を設けた簡素な構造で掘削爪の保持構造を実現するので、掘削爪、ホルダの形状が簡素化され、掘削工具の製作手間が低減され、抜け止め力が十分に発揮され維持でき、脱着に伴う損傷は低減される。
【符号の説明】
【0024】
1 掘削工具
10 掘削爪
11 掘削部
11a 掘削チップ
11b チップ保持部
12 基部
13 孔部
14,15 溝
20 ホルダ
21 軸部
22,23 溝
28,29 棒状弾性体
2 掘削工具
30 掘削爪
32 基部
33 軸部
40 ホルダ
41 孔部
A 挿入方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を掘削する掘削爪と、前記掘削爪を支持するホルダと、を備える掘削工具であって、
前記掘削爪は、地盤と接触する掘削部がその前端側に設けられ、後端側に開口する後端孔部又は後端側に突出する後端軸部が形成された基部を有し、
前記ホルダは、前記掘削爪が孔部を有する場合には当該孔部に挿入される軸部を、前記掘削爪が軸部を有する場合には当該軸部が挿入される孔部を有し、
前記軸部の外周面には、当該軸部の先端側に向けて先細りになるテーパが設けられ、
前記孔部の内周面には、当該孔部の奥に向かって先細りになり、前記軸部のテーパに適合するテーパが設けられており、
前記軸部が前記孔部に挿入された状態にて、互いに対向する前記軸部の外周面と前記孔部の内周面のうちいずれか一方又は双方に前記軸部の挿入方向に延在する溝が形成され、
前記軸部の挿入方向に延在し、前記溝に嵌め入れられ、前記軸部と前記孔部とに挟持された棒状弾性体を備えることを特徴とする掘削工具。
【請求項2】
前記棒状弾性体が前記軸部と前記孔部とに挟圧されて圧縮弾性変形した状態で、前記掘削爪が前記ホルダに取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の掘削工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−144934(P2012−144934A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5487(P2011−5487)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000141521)株式会社技研製作所 (83)
【Fターム(参考)】