説明

掛止部材及びそれを備えた粉粒体案内具

【課題】クレーンやショベル等の重機で吊り上げ,吊り下げ,横引き等がされるつり具、土砂や穀類等の粉粒体等を案内する漏斗状の筒体等の被移動体に取り付けられ、掛止された重量物の掛止体の荷重に耐え得る高い機械的強度を有しており、重機を使って重量物の吊り上げや横引き等を行うことができ、また梃子の原理によって軽微な力と簡単な操作で重量物を外すことができ作業性に優れる掛止部材を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の掛止部材10は、基部が被移動体2に固着された支持部材11と、支持部材11の所定部に固定された枢軸12と、支持部材11との重なり部14を基部側に有し枢軸12に回動自在に固定されたレバー13と、支持部材11又はレバー13の重なり部14に形成若しくは配設され掛止体を掛止する掛止部16と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削した土砂や穀類等の粉粒体を保管する粉粒体保管袋の掛止紐等の掛止体を掛止する掛止部材及びそれを備えた粉粒体案内具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の基礎工事等において掘削した土砂を袋体に充填して保管したり、袋体に土砂を投入して大型土嚢を製造したりする際、土砂を投入し易くするために袋体を開口させた状態で保持しておく必要がある。作業員の手で袋体の開口部を広げておくには、2人以上の作業者が必要であるとともに、多量の土砂を投入するために重機を使用する場合には、袋体の近くに作業者がいては危険であるという問題があった。
そこで、作業者の手を使わずに袋体を開口させた状態で保持する技術として、種々の技術が開発されている。
【0003】
(特許文献1)に「袋体を収容する直方体の枠と、前記枠の上部に配設された掛止部と、を備え、前記掛止部が、前記枠の上部に水平に取り付けられた円筒と、前記円筒内に回転可能に貫設させた丸棒と、丸棒の一端に突設された把手と、前記丸棒の他端に突設された掛け部と、を備えた袋保持枠」が開示されている。
(特許文献2)には、「袋体を収容する枠体と、前記枠体に着脱可能に固定されたクランプと、前記クランプに突設された相対向する2つのピン保持板と、前記ピン保持板に形成された貫通孔よりも大きな頭部を有し前記袋体の開口端部に取り付けられた掛止紐を着脱自在に掛止するピン部材と、を備えた残土保管袋の開口固定具」が開示されている。
【特許文献1】実用新案登録第3047887号公報
【特許文献2】特開2005−82209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)に開示の技術は、袋体を枠内に収容した後、掛止紐を掛け部に掛止して袋体の開口部を広げた状態に保持することができ、土砂を開口部から袋体に投入して大型土嚢を造った後、把手を旋回させて掛け部を下向きにして掛止紐をスライドさせて丸棒から取り外すことができるものである。また、(特許文献2)に開示の技術は、袋体を枠内に収容した後、掛止紐をピン部材で掛止して袋体の開口部を広げた状態に保持することができ、土砂を開口部から袋体に投入して大型土嚢を造った後、貫通孔からピン部材を抜いて掛止紐を取り外すことができるものである。しかし、大型土嚢を移動させる場合には、掛止紐から掛け部やピン部材を抜いた後、重機に掛止紐を掛けて吊り上げて、枠の上部から取り出す必要があるため、大型土嚢が枠に引っ掛かり易く作業性に欠けるという課題を有していた。
(2)油圧ショベルのバケットを使って土砂を掘削採取し、袋体に土砂を投入して大型土嚢を造り、同じ油圧ショベルを使って掛止紐を吊り上げて大型土嚢を移動させる作業が一般的に行われるが、掛止紐から掛け部やピン部材を外す作業、大型土嚢の掛止紐を油圧ショベルに掛ける作業に時間を要するため、大型土嚢の製造数は、特許文献1に記載のように作業者2名で一日当たり150個程度(一日の稼働時間を7.5時間として一時間当たり20個程度)であった。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、掛止される掛止体による荷重に耐え得る高い機械的強度を有しているため重機等を使って吊り上げや横引き等を行うことができ、また脱着時には、梃子の原理によって軽微な力と簡単な操作で掛止体を外すことができ作業性に優れる掛止部材を提供することを目的とする。
また、本発明は、フレキシブルコンテナバッグの掛止紐等の掛止体を外す作業が短時間ででき、また粉粒体が充填された袋体を吊るしたまま横方向へ移動させて定置させられるので、袋体を移動させるため掛止体を掛け替える等の付帯作業が不要なため、粉粒体を袋体へ充填する作業の生産性を高めることができる粉粒体案内具を提供することを目的とする。
【0006】
上記従来の課題を解決するために本発明の掛止部材及びそれを備えた粉粒体案内具は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の掛止部材は、基部が被移動体に固着された支持部材と、前記支持部材の所定部に固定された枢軸と、前記支持部材との重なり部を基部側に有し前記枢軸に回動自在に固定されたレバーと、前記支持部材又は前記レバーの前記重なり部に形成若しくは配設され掛止体が掛止される掛止部と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)支持部材の基部が被移動体に固着されているので、一端が大型土嚢等の重量物に固着された掛止紐等の掛止体を掛止部に掛けて、クレーンや油圧ショベル等の重機で被移動体を移動させて吊り上げや横引き等を行うことができる。掛止体を掛止部から外すときは、レバーの先端側を持って所定の方向に回動させるだけで、掛止体を重なり部で跳ね上げて掛止体をレバーの先端側から外すことができる。このため、高い機械的強度を有するとともに、脱着時には梃子の原理によって軽微な力と簡単な操作で掛止体を外すことができ作業性に優れる。
【0007】
ここで、被移動体としては、クレーンやショベル等の重機で吊り上げ,吊り下げ,横引き等がされ移動させられるものであれば特に制限はなく、例えば機械設備、治具、箱等の容器、土砂や穀類等の粉粒体等を案内する漏斗状の筒体等が挙げられる。また、クレーンやショベル等の重機に取り付けられ、紐やワイヤ等の掛止体を使って荷を移動させるつり具等が用いられる。
【0008】
支持部材としては、炭素鋼等の金属製等で形成され基部が被移動体に固着され被移動体の側方に張り出した板状部材、棒状部材、環状部材等が用いられる。
枢軸としては、支持部材に回動可能に固定されたボルト、棒材等が用いられる。
レバーとしては、基部側に支持部材との重なり部を有し、枢軸に回動可能に固定された板状部材、棒状部材、パイプ材等が用いられる。
掛止部は、支持部材又はレバーの重なり部に形成若しくは配設され掛止用の紐やワイヤ等の掛止体が掛止される部分であり、レバーや支持部材と一体に形成することができる。また、レバーや支持部材とは別に形成し、レバーや支持部材の重なり部に配設することもできる。
【0009】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の掛止部材であって、前記掛止部が、前記掛止体が掛止される方向に湾出した構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)掛止部が角張らずに湾出しているので、掛止部に掛止される掛止紐等の掛止体の磨耗を防止し切れ難くすることができ掛止体の耐久性を高めることができる。
【0010】
ここで、掛止部を湾出させる手段としては、掛止部が形成されたレバーや支持部材を丸棒や丸パイプ等の棒材やパイプ材で形成すればよい。また、レバーや支持部材の一部や全部を湾出状に加工してもよい。また、半割れ状に形成したパイプ材等をレバーや支持部材に溶接等で固着してもよい。
【0011】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の掛止部材であって、前記重なり部の長さが、前記枢軸から前記レバーの先端までの長さより短く形成された構成を有している。
この構成により、請求項1又は2で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)レバーの基部側の重なり部の長さが、枢軸からレバーの先端までの長さより短く形成されているので、レバーの先端側を持ってレバーを所定方向に回動させて掛止体を跳ね上げる際、支点から作用点までの長さに比べて支点から力点の長さが長いため、軽微な力でレバーを回動させることができる。
【0012】
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の内いずれか1に記載の掛止部材であって、前記レバーの所定部に形成若しくは配設され前記支持部材又は前記被移動体に当接される当接部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1乃至3の内いずれか1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)レバーが、支持部材や被移動体に当接される当接部を備えているので、支持部材の基部側の掛止部に掛けられた掛止体を外す際、レバーは所定方向だけにしか回動できないため操作ミスがなく、レバーを跳ね上げて掛止体を確実に外すことができる。
【0013】
ここで、当接部としては、支持部材又は被移動体に当接することによりレバーを所定方向にしか回動できないようにしたものであれば特に制限なく用いることができ、例えば、レバーが板状部材で形成されている場合は、レバーの重なり部の縁に溶接等で固着された半割れ状に形成したパイプ材、レバーの重なり部の縁に溶接等で固着された突起や突条等を用いることができる。レバーがパイプ材で形成されている場合は、パイプ材の内壁面を当接部にすることができる。これらの当接部は支持部材に係止させることができる。また、レバーの端部を被移動体に係止させるようにすることもできる。
【0014】
本発明の請求項5に記載の粉粒体案内具は、漏斗状の筒体を備えた被移動体と、前記筒体の外側面の対称位置に基部が固着された請求項1乃至4の内いずれか1に記載の掛止部材の支持部材と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)被移動体の筒体の外側面の対称位置に支持部材の基部が固着されているので、粉粒体の投入場所で筒体の下部から袋体の開口部を被せて、袋体の掛止紐(掛止体)を掛止部に掛止すると、袋体を開口した状態で保持することができ、土砂や穀類等の粉粒体を被移動体の上部から投入すると筒体内に粉粒体が充填される。次に、油圧ショベル等の重機で被移動体を上方に吊り上げると筒体内の粉粒体は袋体内に導入され、さらに吊り上げたままの状態で所望の位置まで横方向に移動させることができる。所望の位置に定置させた後、掛止部材のレバーの先端側を持って下側に回動させるだけで、掛止紐(掛止体)を重なり部で跳ね上げてレバーの先端側から外すことができる。次に、油圧ショベル等の重機で被移動体を上方に吊り上げると袋体と分離するので、被移動体を粉粒体の投入場所に移動させ袋体を被せて粉粒体の投入作業を行うことができる。このように、支持部材から掛止紐(掛止体)を外す作業が短時間ででき、また粉粒体が充填された袋体を吊るしたまま横方向へ移動させて定置させられるので、掛止紐(掛止体)を掛け替える等の付帯作業が不要なため、粉粒体を袋体へ充填する作業の生産性を高めることができる。
【0015】
ここで、漏斗状の筒体としては、炭素鋼等の金属製等で形成され下部の開口部が、粉粒体を充填する袋体の開口部より小さく形成されたものが用いられる。
筒体で案内される粉粒体としては、フレキシブルコンテナバッグ等の袋体に充填して保管されるものであれば特に制限なく用いることができ、例えば、建物の基礎工事等において埋め戻しのために保管しておく土砂等の埋め戻し材、大型土嚢を製造するために充填する土砂等の充填材、小麦等の穀類、合成樹脂製品,ガラス製品,ゴム製品等の破砕物、カレット,ペレット,窯業原料等の工業原材料等が用いられる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の掛止部材及びそれを用いた粉粒体案内具によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)基部が被移動体に固着された支持部材と、前記支持部材の所定部に固定された枢軸と、前記支持部材との重なり部を基部側に有し前記枢軸に固定されたレバーと、前記支持部材又は前記レバーの前記重なり部に形成され掛止体を掛止する掛止部と、を備えているので、支持部材の基部側は掛止体による荷重に耐え得る高い機械的強度を有しており、重機を使って吊り上げや横引き等を行うことができ、掛止体を支持部材から外すときは、レバーの先端側を持って所定方向に回動させるだけで掛止体を重なり部で跳ね上げて、梃子の原理によって軽微な力と簡単な操作で掛止体をレバーの先端側から外すことができ作業性に優れた掛止部材を提供できる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)掛止部が、掛止体が掛止される方向に湾出しているので、掛止部に掛止される掛止紐等の掛止体が磨耗し難いため切れ難くすることができる掛止部材を提供できる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、
(1)レバーの基部側の重なり部の長さが、枢軸からレバーの先端までの長さより短く形成されているので、レバーの先端側を持ってレバーを下側に回動させて掛止体を跳ね上げる際、支点から作用点までの長さに比べて支点から力点の長さが長いため、軽微な力でレバーを回動させることができる使用性に優れた掛止部材を提供できる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の内いずれか1の効果に加え、
(1)レバーが、支持部材に掛止される当接部若しくは被移動体に当接される当接部を備えているので、支持部材の基部側に掛止された掛止体を外す際、レバーは所定方向だけにしか回動できないため操作ミスがなく、使用性に優れた掛止部材を提供できる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、
(1)漏斗状の筒体を備えた被移動体と、前記筒体の外側面の対称位置に基部が固着された掛止部材の支持部材と、を備えているので、支持部材から掛止体を外す作業が短時間ででき、また粉粒体が充填された袋体を吊るしたまま横方向へ移動させて定置させられるので、袋体を移動させるため掛止体を掛け替える等の付帯作業が不要なため、粉粒体を袋体へ充填する作業の生産性を高めることができる粉粒体案内具を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1における掛止部材を備えた粉粒体案内具の斜視図であり、図2(a)は実施の形態1における掛止部材の回動前の状態を示す斜視図であり、(b)は掛止部材の回動後の状態を示す斜視図であり、(c)は実施の形態1における掛止部材の側面図である。
図中、1は本発明の実施の形態1における掛止部材を備えた粉粒体案内具、2は粉粒体案内具1の漏斗状に形成された被移動体としての筒体、3は上部から下部に向かって縮径した上部筒体、3aは後述する支持部材11,11の裏側の上部筒体3の内面に固着された補強板、3bは両端部が各補強板3aに固着され筒体2内に架設されたパイプ状の補強部材、4は上部筒体3の下部に延設された下部筒体、5は上部筒体3の上縁の外周に固定された環状枠、6は環状枠5の上部の2箇所に対称状に突出して固着されたアイボルト等の上部掛着部材、7は環状枠5の下面で上部掛着部材6の下部に固着されたアイナット等の下部掛着部材、8はチェーン等で形成され一端が下部掛着部材7に固定され他端にフック等の係止部材が固着された外れ止め部材である。
10は上部掛着部材6の下側の上部筒体3の下端の外側面の2箇所に対称状に略水平に張り出して配設された本発明の実施の形態1における掛止部材、11は板状部材で形成され筒体2の長手方向と略平行に基部が筒体2の外側面に溶接等で固着された支持部材、12は支持部材11の先端側に穿設された貫通孔に挿通されたボルト等の枢軸、13は基部側の幅が支持部材11の幅と略同一若しくはやや狭い板状部材で形成され枢軸12で回動自在に固定されたレバー、14は枢軸12からレバー13の基部側の部分であって支持部材11と重なり合った重なり部である。本実施の形態においては、重なり部14の長さが枢軸12からレバー13の先端までの長さより短く形成されている。15はレバー13の先端に形成され外れ止め部材8の係止部材が着脱自在に掛着される孔部等の掛着部、16は上縁が湾出した半割れ状のパイプ材等で形成され重なり部14の上縁に配設固定され後述する掛止体23が掛止される掛止部、17は掛止部16の背面に形成された当接部であり、枢軸12を中心にレバー13を回動させたときに当接部17が支持部材11の基部側の上縁に当接される。
【0022】
以上のように構成された本発明の実施の形態1における粉粒体案内具について、図面を参照しながら、以下その使用方法を説明する。
図3は粉粒体案内具に袋体を装着して掛止体を掛止部材に掛けた状態を示す斜視図であり、図4は粉粒体案内具に粉粒体を投入する状態を示す斜視図であり、図5は粉粒体が投入された粉粒体案内具から袋体に粉粒体を導入する状態を示す斜視図であり、図6は粉粒体が充填された袋体の掛止体を掛止部材から外す状態を示す斜視図であり、図7は粉粒体案内具を粉粒体が充填された袋体から分離する状態を示す斜視図である。
図中、20は粉粒体案内具1の上部掛着部材6に両端が掛着されたワイヤ等の掛着部材、21はフレキシブルコンテナバッグ等の袋体、22は袋体21の開口部、23は一端が開口部22の縁部に対称状に固着された2本の掛止紐からなる掛止体、24は油圧ショベル等のバケット、24aはバケット24の基部に配設されたフック、25は土砂等の埋め戻し材,大型土嚢に充填する土砂等の充填材,小麦等の穀類等の粉粒体である。
【0023】
袋体21に粉粒体25を充填するときは粉粒体25の充填場所において、まず、図3に示すように、粉粒体案内具1の上部掛着部材6に両端が掛着された掛着部材20にフック24aを掛け、粉粒体案内具1を少し吊上げて床面と下部筒体4の下端との間に隙間をあけ、この隙間から下部筒体4の下方に袋体21を差し入れ、袋体21の開口部22に下部筒体4を挿通して、各々の掛止体23を各々の掛止部材10の重なり部14の上縁の掛止部16に掛ける。次いで、外れ止め部材8を掛着部15に掛着する。
次に、図4に示すように、粉粒体案内具1を吊り下げて床面に置いた後、掛着部材20からフック24aを外す。次に、土砂や穀類等の粉粒体25をバケット24で掬い、バケット24を粉粒体案内具1の上方へ移動させた後、バケット24を傾動して粉粒体25を粉粒体案内具1の筒体2内へ投入する。
次に、図5に示すように、再び、掛着部材20にフック24aを掛けて粉粒体案内具1を吊上げると、筒体2内に投入された粉粒体25は袋体21内に落下する。袋体21内に落下した粉粒体25によって、袋体21の掛止体23には粉粒体25による荷重が加わるが、掛止体23は重なり部14の上縁の掛止部16で掛止されており、掛止部16の背面に形成された当接部17が支持部材11の基部側の上縁に当接されているので、掛止体23は実質的に基部が筒体2に溶接等で固着された支持部材11の基部側に掛けられていることになり、粉粒体25の荷重に耐え得ることができる。このため、吊上げた状態のまま所望する位置(例えば、粉粒体25を充填した袋体21の保管場所)まで横方向に移動させて定置させることができる。
フック24aを掛着部材20に掛けたままの状態で、袋体21を所望の位置の床面に定置させると、掛止体23に粉粒体25による荷重はほとんどかかっていないので、図6に示すように、外れ止め部材8を掛着部15から外した後、掛止部材10のレバー13の先端側を持って下側に回動させて、梃子の原理によって掛止体23を重なり部14で跳ね上げてレバー13の先端側に移動させることができる。
次に、図7に示すように、掛着部材20を掛けたフック24aを上方に移動させると、袋体21の掛止体23はレバー13の先端側から外れ、粉粒体案内具1だけを吊上げることができる。吊上げた粉粒体案内具1を再び粉粒体25の充填場所に移動させ、筒体2に新しい袋体21を装着することで、粉粒体25の袋体21への充填作業を繰り返し行うことができる。
【0024】
以上のように、本発明の実施の形態1における掛止部材は構成されているので、以下のような作用が得られる。
(1)支持部材11の基部が被移動体としての筒体2に固着されているので、袋体21の掛止体23を支持部材11の基部側に掛けて、油圧ショベル等の重機で被移動体を移動させて、袋体の吊り上げや横引き等を行うことができる。掛止体23を支持部材11から外すときは、レバー13の先端側を持って下側に回動させるだけで、掛止体23を重なり部14で跳ね上げて掛止体23をレバー13の先端側から外すことができる。このため、粉粒体25が充填された袋体21の荷重に耐え得る高い機械的強度を有するとともに、梃子の原理によって軽微な力と簡単な操作で掛止体23を外すことができ作業性に優れる。
(2)レバー13の重なり部14の上縁に固着された掛止部16の上面が湾出しているので、掛止部16に掛止される掛止体23が磨耗し難いため切れ難く、またレバー13の先端側を持って下側に回動させて重なり部14で掛止体23を跳ね上げる際に掛止体23が掛止部16の上面を滑り易いため容易に外すことができる。
(3)レバー13の基部側の重なり部14の長さが、枢軸12からレバー13の先端までの長さより短く形成されているので、レバー13の先端側を持ってレバー13を下側に回動させて掛止体23を跳ね上げる際、支点(枢軸12)から作用点(掛止体23の位置)までの長さに比べて支点(枢軸12)から力点の長さが長いため、軽微な力でレバー13を回動させることができる。
(4)レバー13の上縁に支持部材11の上縁に当接される当接部17を備えているので、支持部材11の基部側に掛けられた掛止体23を外す際、レバー13は下側の一方向だけにしか回動できないため操作ミスがなく、レバー13を跳ね上げて掛止体23を確実に外すことができる。
(5)係止部材を先端に有する外れ止め部材8が筒体2に固着されているので、掛止体23を支持部材11に掛けた後、外れ止め部材8の係止部材を掛着部15に掛着することで、被移動体(筒体2)を移動させる際に掛止体23が外側にずれたとしても、外れるのを防止することができ安全性に優れる。
【0025】
また、以上のように本発明の実施の形態1における掛止部材を備えた粉粒体案内具は構成されているので、以下のような作用が得られる。
(1)筒体2の外側面の対称位置に支持部材11の基部が固着されているので、粉粒体25の投入場所で筒体2の下部から袋体21の開口部22を被せて、袋体21の掛止体23をレバー13の基部側の掛止部16に掛止すると袋体21を開口した状態で保持することができ、粉粒体25を筒体2の上部から投入すると筒体2内に粉粒体25が充填される。次に、筒体2を上方に吊り上げると筒体2内の粉粒体25は袋体21内に導入され、さらに吊り上げたままの状態で所望の位置まで横方向に移動させることができる。所望の位置に定置させた後、掛止部材10のレバー13の先端側を持って下側に回動させるだけで、掛止体23を重なり部14で跳ね上げてレバー13の先端側に移動させることができる。次に、筒体2を上方に吊り上げると、掛止体23がレバー13から外れて筒体2は袋体21と分離するので、筒体2を粉粒体25の投入場所に移動させて、新しい袋体21を被せて粉粒体25の投入作業を行うことができる。このように、レバー13を回動させるという極めて簡単な操作で支持部材11から掛止体23を外すことが短時間ででき、また粉粒体25が充填された袋体21を筒体2に吊るしたまま横方向へ移動させて定置させられるので、掛止体23を掛け替える等の付帯作業が不要なため、粉粒体25を袋体21へ充填する作業の生産性を高めることができる。実際に作業を行ってみたところ、袋体21に粉粒体25を充填し、粉粒体25を充填した袋体21を所望の位置に横移動させ定置する一連の作業が、一回2分間のサイクルでできることがわかった。これは、一時間当たり30個の充填作業ができることを示しており、従来の技術と比較して1.5倍の高生産性が得られることがわかった。
(2)支持部材11,11の裏側に両端部が固着され筒体2内に架設されたパイプ状の補強部材3aを備えているので、筒体2は、支持部材11,11に吊り下げられた袋体21の重みによって圧縮変形し難く耐久性に優れる。
【0026】
ここで、本実施の形態においては、支持部材11は略水平に筒体2に固着しているが、先端側に向かって斜め上向きに固着してもよい。この場合も同様の作用が得られる。
【0027】
(実施の形態2)
図8(a)は本発明の実施の形態2における掛止部材の斜視図であり、(b)は変形例の掛止部材の斜視図である。
図中、30は本発明の実施の形態2における掛止部材、30aはクレーン等の重機で荷を掛けて吊り上げ,吊り下げ,横引き等がされるつり具からなる被移動体、31は板状部材等で形成され溶接等で被移動体30aの両側に基部が固着された若しくは被移動体30aと一体形成された支持部材、32は支持部材31の先端側に穿設された貫通孔に挿通されたボルト等の枢軸、33は短手方向の断面が略円形状に形成されたパイプ材や棒鋼等で形成され枢軸32で回動自在に固定されたレバー、34は枢軸32からレバー33の基部側の部分であって支持部材31と重なり合った重なり部、35は重なり部34の上縁に形成され図示しないワイヤ等の掛止体が掛止される掛止部、36は枢軸32より先端側のレバー33の下縁に溶接等で固着され枢軸32より先端側の支持部材31の下縁に当接される当接部であり、枢軸32を中心にレバー33を回動させたときに支持部材31の先端側の下縁に当接される。
図8(b)において、30bは変形例の掛止部材、31aは上縁が湾出して形成され溶接等で被移動体30aに基部が固着された支持部材、35aは支持部材31aの上縁で図示しないワイヤ等の掛止体が掛止される湾出して形成された掛止部である。
以上のように構成された本発明の実施の形態2における掛止部材30及び変形例の掛止部材30bは、実施の形態1で説明したものと同様に、掛止紐やワイヤ等の図示しない掛止体を掛止部35又は掛止部35aに掛けて、クレーン等の重機で被移動体30aを移動させて吊り上げや横引き等を行うことができ、掛止体を掛止部35から外すときは、レバー33の先端側を持って下側に回動させるだけで、掛止体を重なり部34で跳ね上げて掛止体をレバー33の先端側から外すことができる。
【0028】
以上のように、本発明の実施の形態2における掛止部材は構成されているので、以下のような作用が得られる。
(1)レバー33が短手方向の断面が略円形状に形成されたパイプ材や棒鋼等で形成されており、掛止部35,35aが湾出しているので、掛止部35,35aに掛けられる図示しない掛止体を切れ難くすることができ、またレバー33の先端側を持って下側に回動させて重なり部34で掛止体を跳ね上げる際に掛止体がレバー33の上面を滑り易いため容易に外すことができる。
(2)レバー33の下縁に支持部材31の下縁に係止される当接部36を備えているので、支持部材31及び重なり部34に掛けられた図示しない掛止体を外す際、レバー33は下側の一方向だけにしか回動できないため操作ミスがなく、レバー33を跳ね上げて掛止体を確実に外すことができる。
【0029】
(実施の形態3)
図9(a)は本発明の実施の形態3における掛止部材が固着された被移動体の斜視図であり、(b)は実施の形態3における掛止部材の回動後の状態を示す斜視図であり、(c)は実施の形態3における掛止部材の側面図である。
図中、40は本発明の実施の形態3における掛止部材、41は鋼製等で形成された有底円筒状の容器からなる被移動体、42は板状部材等で形成され溶接等で被移動体41の両側に対称状に基部が溶接等で固着された支持部材、43は支持部材42の先端側に穿設された貫通孔に挿通されたボルト等の枢軸、44は基部側の幅が支持部材11の幅と略同一若しくはやや狭い板状部材で形成され枢軸43で回動自在に固定されたレバー、45は枢軸43からレバー44の基部側の部分であって支持部材42と重なり合った重なり部、46は半割れ状のパイプ材等で形成され重なり部45の下縁に配設固定され後述する掛止体48が掛止される掛止部、47は掛止部46の背面に形成された当接部であり、枢軸43を中心にレバー44を回動させたときに当接部47が支持部材42の基部側の下縁に当接される。48は両端が環状に形成されたワイヤ等の掛止体である。
【0030】
以上のように構成された本発明の実施の形態3における掛止部材は、実施の形態1で説明したものと同様に、掛止体48を掛止部46に掛けて、クレーン等の重機で掛止体48を吊上げて被移動体41の吊り上げや横引き等を行うことができ、掛止体48を掛止部46から外すときは、レバー44の先端側を持って上側に回動させるだけで、掛止体48を掛止体48で跳ね上げて掛止体48をレバー44の先端側から外すことができる。
【0031】
以上のように、本発明の実施の形態3における掛止部材は構成されているので、以下のような作用が得られる。
(1)基部が被移動体41に固着された支持部材42が、実質的に掛止体48で吊り下げられた被移動体41の荷重を負担するので、高い機械的強度を有するとともに、掛止体48の脱着時には梃子の原理によって、レバー44を回動させるだけの軽微な力と簡単な操作で掛止体48を外すことができ作業性に優れる。
【0032】
本実施の形態においては、有底円筒状の容器からなる被移動体41に掛止部材40が固着された場合について説明したが、クレーンやショベル等の重機で吊り上げ,吊り下げ,横引き等がされ移動させられるものであれば特に制限はなく、例えば機械設備、治具等の被移動体に掛止部材40を固着することもでき、この場合も同様の作用が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、掘削した土砂や穀類等の粉粒体を保管する粉粒体保管袋の掛止紐等を掛止する掛止部材及びそれを備えた粉粒体案内具に関し、掛止される掛止体による荷重に耐え得る高い機械的強度を有しているため重機等を使って吊り上げや横引き等を行うことができ、また脱着時には、梃子の原理によって軽微な力と簡単な操作で掛止体を外すことができ作業性に優れる掛止部材を提供することができ、また、フレキシブルコンテナバッグ等の掛止体を外す作業が短時間ででき、また粉粒体が充填された袋体を吊るしたまま横方向へ移動させて定置させられるので、袋体を移動させるため掛止体を掛け替える等の付帯作業が不要なため、粉粒体を袋体へ充填する作業の生産性を高めることができる粉粒体案内具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施の形態1における掛止部材を備えた粉粒体案内具の斜視図
【図2】(a)実施の形態1における掛止部材の回動前の状態を示す斜視図 (b)掛止部材の回動後の状態を示す斜視図 (c)実施の形態1における掛止部材の側面図
【図3】粉粒体案内具に袋体を装着して掛止体を掛止部材に掛けた状態を示す斜視図
【図4】粉粒体案内具に粉粒体を投入する状態を示す斜視図
【図5】粉粒体が投入された粉粒体案内具から袋体に粉粒体を導入する状態を示す斜視図
【図6】粉粒体が充填された袋体の掛止体を掛止部材から外す状態を示す斜視図
【図7】粉粒体案内具を粉粒体が充填された袋体から分離する状態を示す斜視図
【図8】(a)実施の形態2における掛止部材の斜視図 (b)変形例の掛止部材の斜視図
【図9】(a)実施の形態3における掛止部材が固着された被移動体の斜視図 (b)実施の形態3における掛止部材の回動後の状態を示す斜視図 (c)実施の形態3における掛止部材の側面図
【符号の説明】
【0035】
1 粉粒体案内具
2 筒体
3 上部筒体
3a 補強部材
4 下部筒体
5 環状枠
6 上部掛着部材
7 下部掛着部材
8 外れ止め部材
10 掛止部材
11 支持部材
12 枢軸
13 レバー
14 重なり部
15 掛着部
16 掛止部
17 当接部
20 掛着部材
21 袋体
22 開口部
23 掛止体
24 バケット
25 粉粒体
30,30b 掛止部材
30a 被移動体
31,31a 支持部材
32 枢軸
33 レバー
34 重なり部
35,35a 掛止部
36 当接部
40 掛止部材
41 被移動体
42 支持部材
43 枢軸
44 レバー
45 重なり部
46 掛止部
47 当接部
48 掛止体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部が被移動体に固着された支持部材と、前記支持部材の所定部に固定された枢軸と、前記支持部材との重なり部を基部側に有し前記枢軸に回動自在に固定されたレバーと、前記支持部材又は前記レバーの前記重なり部に形成若しくは配設され掛止体が掛止される掛止部と、を備えていることを特徴とする掛止部材。
【請求項2】
前記掛止部が、前記掛止体が掛止される方向に湾出していることを特徴とする請求項1に記載の掛止部材。
【請求項3】
前記重なり部の長さが、前記枢軸から前記レバーの先端までの長さより短く形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の掛止部材。
【請求項4】
前記レバーの所定部に形成若しくは配設され前記支持部材又は前記被移動体に当接される当接部を備えていることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1に記載の掛止部材。
【請求項5】
漏斗状の筒体を備えた被移動体と、前記筒体の外側面の対称位置に基部が固着された請求項1乃至4の内いずれか1に記載の掛止部材の支持部材と、を備えていることを特徴とする粉粒体案内具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−7183(P2008−7183A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−181526(P2006−181526)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(596141402)有限会社ちふりや工業 (3)
【Fターム(参考)】