説明

採光断熱材

【課題】高い断熱性を有し、設置された状態のままで換気することのできる採光断熱材を提供する。
【解決手段】複数の基材フィルムが、厚さが100μm〜3mmのガス層を挟んで各々対向した構造を有する採光断熱材であって、前記基材フィルムは、面積が5〜500mmの複数の穿孔を有し、開口率が0.2〜10.0%である採光断熱材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い断熱性を有し、設置された状態のままで換気することのできる採光断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の建築物では、省エネルギーの観点から、外界との高い断熱効果を達成し冷暖房の効率を極限にまで高める試みがなされている。また、冷暖房の効率を高めるためには部屋ごとに独立した冷暖房を行う必要がある。このような目的のために断熱性の高い壁材等が種々提案されている。
また、建築物の住環境等を考える場合に、採光は極めて重要である。しかしながら、現在の建築物においては採光部にはガラス窓を設置するのが一般的であるが、壁材等に比べ、採光部に高い断熱効果を発揮させることは難しい。「省エネルギー技術戦略報告書」(平成14年6月12日、経済産業省)によれば、全消費エネルギーの45%が窓等の開口部から損失しているといわれている。
【0003】
そこで、断熱性の高いガラスとして、いわゆるペアガラスが提案されている(例えば、特許文献1)。ペアガラスは、2枚のガラス間に隙間を設け、ガラス間を真空としたり、アルゴン等の不活性ガスを吹き込んだりしたものであり、ガラス間の空間の存在により、高い断熱効果が期待される。しかしながら、ペアガラスは通常のガラスに比べて重くて嵩張るという問題があり、コスト面でも数万〜十数万円/mかかり、通常の住宅へ応用するのは困難であった。更に、ペアガラスを長期間使用すると、空気が侵入して真空状態が破れたり、ガス抜けが起こったりして、性能が低下してしまうことがあった。
【0004】
これに対して、本発明者らは、複数の樹脂フィルムが、厚さが100μm〜3mmの空気層を挟んで各々対向した構造を有する採光断熱材を発明し、特許文献2に開示している。特許文献2に記載の採光断熱材は、軽量でありながら、高い断熱性と透明性とを両立することができる。
【0005】
特許文献2に記載の採光断熱材は、例えば、通常のガラスによる出窓状の採光部において、該ガラスの内側に該ガラスから離して、例えば、着脱又は開閉可能な状態で設置できることが記載されている。しかしながら、このような採光断熱材は、採光断熱材単独又は複合構成としての建具材そのものを取りはずしたり開いたりしなければ室内の空気を入れ換えることができず、換気している間は断熱効果を得ることができなかった。同様に、上記ペアガラスを含む窓ガラスや障子等の従来の建具についても、換気するためには建具そのものを開く必要があった。一方、閉じた状態のまま換気することのできる建具として、例えば、網戸が挙げられるが、通常、網戸は断熱作用をほとんど示すものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−026453号公報
【特許文献2】特開2006−291608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高い断熱性を有し、設置された状態のままで換気することのできる採光断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の基材フィルムが、厚さが100μm〜3mmのガス層を挟んで各々対向した構造を有する採光断熱材であって、前記基材フィルムは、面積が5〜500mmの複数の穿孔を有し、開口率が0.2〜10.0%である採光断熱材である。
以下、本発明を詳述する。
【0009】
本発明の採光断熱材は、複数の基材フィルムが、所定のガス層を挟んで各々対向した構造を有する。
本発明の採光断熱材は、2枚の基材フィルムの間にガス層が挟持された構成であってもよいが、後述する可視光線透過率を満たす限りにおいて、3枚以上の複数の基材フィルムの間にガス層が挟持された構成であることが好ましい。本発明の採光断熱材は、複数のガス層を有することにより、高い断熱効果を発揮することができ、また、基材フィルム間の温度差が小さく、結露の発生が抑制されることから、開口部に用いられるガラスや断熱材等の面材の端部処理において、枠材を取り付ける際に従来必要であった乾燥剤の量を低減したり、使用しないで済んだりする。
【0010】
本発明の採光断熱材においては、後述するように基材フィルムが穿孔を有しているが、該穿孔は、部分的に設けたり、層間を保持するスペーサで区切られた小室空間の互い違いに設けたりすることができる。そのため、穿孔を有さない部分や小室空間に対しては、適宜、上記ガス層にガスを置換充填したり、液体又は固体を挿入したりすることができる。
上記ガス層に空気以外のガスを置換充填する場合、該ガスとして、例えば、二酸化炭素等が挙げられる。また、上記ガス層には、芳香効果のあるガス、煙等を用いて着色したガス等を充填してもよい。このようなガスを充填することによって、本発明の採光断熱材に諸機能を付与することができる。
【0011】
上記ガス層に意匠性を付与するための液体を挿入する場合、該液体は特に限定されないが、例えば、色水等が好ましい。色水等を用いることによって、本発明の採光断熱材に意匠性を付与することができる。
なお、上記液体又は空気以外のガスを上記ガス層に挿入する場合には、これらの液体又は空気以外のガスを挿入する小室空間部のシール封止を充分に行う必要がある。
【0012】
上記ガス層に意匠性を付与するための固体を挿入する場合、該固体は特に限定されず、例えば、カラービーズ、人形、ぬいぐるみ、布又は衣料類、紙製のモール、ドライフラワー、湿度調整剤を付与した生花等のデイスプレイに使用される材料、絵、書等の居住空間のインテリア性を向上させる材料、ライト、ランプ等の発光体等が挙げられる。
上記ガス層に上記固体を挿入する場合は、上記固体が上記ガス層の全空間を充填するように挿入してもよく、上記ガス層の一部、例えば、上記ガス層における後述する小室空間の一部のみに挿入してもよい。上記固体を上記ガス層に挿入する場合は、ワイヤー、ピアノ線、ガラスファイバー等を用いる方法又は貼付する方法によって、上記固体の一部を固定してもよい。
【0013】
上記ガス層には、上記液体と上記固体とを組み合わせて挿入してもよく、上記ガス層において上記液体に上記固体を浮遊させたり、上記液体に上記固体を沈めたりしてもよい。
上記ガス層に上記液体又は上記固体を挿入する場合、上記基材フィルムは、自重に耐えることができる強度を有することが好ましい。
【0014】
上記ガス層の厚さの下限は100μm、上限は3mmである。
熱貫流率は、ガス層の厚さ、総厚み、及び、層の数に関係する。ガス層の厚さが0で層数が1のときには、熱貫流率は基材フィルム自身の熱貫流率に等しく、ガス層が充分に厚くなると、熱貫流率はガス自身の熱貫通率(理論値)に近くなることから、総厚みの増加に伴って熱貫流率は小さくなる、即ち、断熱性は高くなる。更に、一定の総厚みの下では、対流を生じない程度のガス層間隔であれば、総厚み中に占めるガス層の総厚みが一定以上になると、層数が増すごとにステファン・ボルツマンの法則に基づいた輻射熱低減の効果が増し、熱貫流率は極小値を示す。即ち、個々のガス層の厚さの下限が100μm、上限が3mmであることにより、本発明の採光断熱材は優れた断熱効果を得ることができる。
上記ガス層の厚さの好ましい下限は200μm、好ましい上限は2mmである。
【0015】
更に、上記ガス層の層数は、3〜20層であることが好ましい。上記ガス層の厚さが100μm〜3mmであり、かつ、上記ガス層の層数が3〜20層である場合に、本発明の採光断熱材は特に高い断熱効果を得ることができる。また、上記ガス層の厚さが200μm〜2mmである場合、上記ガス層の層数は、4〜10層であることが好ましい。
【0016】
上記ガス層は、周辺部を封止してもよい。上記ガス層の周辺部を封止することにより、本発明の採光断熱材の内部結露を防止することができる。上記ガス層は、上記基材フィルムを介して他のガス層と通じていてもよく、上記ガス層間をガスが移動できる構造を有していてもよい。即ち、不織布、5mmφ程度の穴あきフィルムを基材フィルムとして用いてもよい。
【0017】
上記ガス層は、複数の小室空間に分割されていることが好ましい。上記ガス層が複数の小室空間に分割されることにより、本発明の採光断熱材全体の強度を高めることができる。本発明の採光断熱材においては、後述するスペーサが小室空間分割の役割を果たしている。
【0018】
上記ガス層の各小室空間の大きさの好ましい下限は4cm、好ましい上限は1800cmである。上記ガス層の各小室空間の大きさが4cm未満であると、得られる採光断熱材の可視光線透過率が劣ったり、断熱性が低下したりすることがある。上記ガス層の各小室空間の大きさが1800cmを超えると、得られる採光断熱材の強度が劣ることがある。上記ガス層の各小室空間の大きさの好ましい下限は25cm、好ましい上限は600cmである。
【0019】
上記基材フィルムは、透明性に優れていれば特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムであることが好ましい。
上記樹脂フィルムは、透明性に優れていれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、アクリル、塩化ビニル、ポリビニルアルコール、トリ酢酸小室空間ロース等からなるフィルムが挙げられる。なかでも、自消性であって建築材として適合性がよいことから、ポリカーボネート、塩化ビニル、フッ素含有樹脂からなるフィルムが好適である。
【0020】
また、上記樹脂フィルムとして、耐傷性を向上させる目的で、ハードコートを施した樹脂フィルムを用いることが好ましい。このようなハードコートは特に限定されず、例えば、アクリル樹脂からなるハードコートが挙げられる。
上記ハードコートを施した樹脂フィルムとして、例えば、ポリカーボネート等からなるフィルムの表面にアクリル樹脂層が形成された、2層構造を有する樹脂フィルムを用いることが好ましい。更に、他の基材フィルム上に上記樹脂フィルムを積層する場合、上記樹脂フィルムとして、例えば、ポリブチレンテレフタレートを用いることが好ましい。
【0021】
上記基材フィルムは、面積が5〜500mmの複数の穿孔を有し、開口率が0.2〜10%である。
本発明の採光断熱材は、後述するように、例えば、固定部材を用いて窓の額縁に固定したり、通常のガラスによる出窓状の採光部において、該ガラスの内側に該ガラスから離して設置したりすることにより用いられてもよく、また、二重サッシの面材として用いられてもよい。このようにして用いられる場合、取りはずしたり開いたりしなければ換気することができない従来の採光断熱材や建具に対し、本発明の採光断熱材は、各々の基材フィルムが上記範囲内の面積の複数の穿孔を有しかつ上記範囲内の開口率を有することにより、例えば、室外に強い風が生じたときに、室外から室内への対流を生じさせ、設置された状態のままで換気することができる。
【0022】
なお、本明細書中、強い風とは、風速0.5m/秒(30m/分)以上の風を意味する。通常、室内では、風速0.5m/秒以下の環境であると想定されるため、室内環境との差異があれば本発明の採光断熱材は換気が可能となる。ただし、室内でエアコンをつけている場合には、吹出口の位置によっては風速1.2m/秒程度の風が室内の採光断熱材面表面に生じる可能性がある。この場合には、室外に風速1.2m/秒以上のより強い風が生じていないと、最適な換気を行うことができない。
また、本発明の採光断熱材は、風速1.5m/秒(90m/分)以上の風が生じたときに換気効率がさらに高まる。
【0023】
上記基材フィルムの上記穿孔の面積が5mm未満であったり、開口率が0.2%未満であったりすると、採光断熱材は、設置された状態のままで充分な換気機能を有することができない。上記基材フィルムの上記穿孔の面積が500mmを超えたり、開口率が10.0%を超えたりすると、例えば、室外に風速0.5m/秒(30m/分)以上の風が生じたとき、室外から室内へ必要以上の対流が生じ、採光断熱材の断熱性が低下する。
上記基材フィルムは、面積が6〜100mmの複数の穿孔を有することが好ましく、開口率が0.3〜6%であることが好ましく、開口率が0.5〜1.6%であることがより好ましい。
【0024】
上記穿孔の形状は特に限定されず、例えば、円形状、楕円形状、多角形状、短冊状、スリット状等が挙げられる。また、上記穿孔の形状は、例えば星形状等の意匠性を有する形状であってもよい。更に、1枚の基材フィルム上に存在する複数の穿孔は、全て同じ形状を有していてもよく、2種以上の形状を有していてもよい。
上記穿孔の分布状態は特に限定されず、上記基材フィルム上の一部に偏っていてもよいが、上記基材フィルム上に均一に分散していることが好ましい。
【0025】
上記穿孔を形成する方法は特に限定されず、例えば、孔明けパンチや孔明けジグによる打抜き等の手動加工する方法や、パンチロール加工、レーザー加工、超音波加工等の方法等が挙げられる。
【0026】
上記基材フィルムは、上記範囲内の面積の複数の穿孔を有しかつ上記範囲内の開口率を有していれば、全て同じ基材フィルムであってもよく、各々の基材フィルムが異なっていてもよい。即ち、上記基材フィルムは、基材フィルム間で、開口率並びに上記穿孔の位置、形状及び面積が重なっていてもよく、重なっていなくてもよい。開口率並びに上記穿孔の位置、形状及び面積をずらすことにより、採光断熱材を介して換気することのできる換気量や、断熱性を調整することができる。
具体的には、例えば、比較的外側に位置する基材フィルムとして、比較的開口率の小さい基材フィルムを用い、かつ、比較的内側に位置する基材フィルムとして、比較的開口率の大きい基材フィルムを用いることができる。このような構成の採光断熱材は、充分な換気機能を有しながら、断熱性を更に高めることができ、更に、異物が層内に入り込みにくい利点もある。
【0027】
上記基材フィルムとしてはまた、意匠性付与を目的とする意匠性フィルム、視認性調整を目的とする光学調整フィルム等の諸機能付与を目的とするフィルムを用いてもよい。
【0028】
本発明の採光断熱材が上記意匠性フィルムを有する場合には、意匠性付与の観点から、該意匠性フィルムと組み合わせて、上記ガス層にライト、ランプ、LED等の発光体を挿入することが効果的である。
上記発光体を上記ガス層に挿入する場合、配線が存在する場合には、適宜必要部を切り欠き、その部分をシールすることが必要である。上記発光体は、上記ガス層に挿入してもよいが、上記発光体を室内に配置し、室内側から室外を照射しても同様の意匠性付与効果が得られる。
【0029】
本発明の採光断熱材は、上記意匠性フィルムを複数枚有してもよい。上記意匠性フィルムを複数枚有することによって、グラデーション等の視覚的効果を生み出すことができ、奥行きを持たせ、立体的な視覚効果を生み出すことができる。
【0030】
本発明の採光断熱材は、例えば、視線遮断機能を付与することを目的とした光学調整フィルムを有する場合、該光学調整フィルムが上記範囲内の面積の複数の穿孔を有しかつ上記範囲内の開口率を有していれば、穿孔が存在していても視線遮断機能を失うことなく、断熱性、換気性及び視線遮断性を同時に発揮することができる。
【0031】
本発明の採光断熱材は、目的に応じて、上記基材フィルムに、宣伝用のロゴや部分貼りのシール等を貼付してもよい。
【0032】
上記基材フィルムの厚さは特に限定されないが、好ましい下限は10μm、好ましい上限は300μmである。上記基材フィルムの厚さが10μm未満であると、得られる採光断熱材の強度が劣ることがある。上記基材フィルムの厚さが300μmを超えると、同じ断熱効果を得ようとすると、必要以上に採光断熱材が厚くなることがある。上記基材フィルムの厚さのより好ましい下限は20μm、より好ましい上限は250μmである。本発明の採光断熱材において、表面のみの強度が必要とされる場合は、表面層にのみ厚い基材フィルムを用いてもよい。
【0033】
本発明の採光断熱材は、上記基材フィルム間に、スペーサを有することが好ましい。該スペーサは、上記ガス層の維持、即ち、上記基材フィルム間隔の維持、上記ガス層の周辺部の封止、上記ガス層の小室空間分割等を行うために用いられる。
【0034】
上記スペーサは特に限定されないが、採光断熱材の可視光線透過率を確保するために透明であることが好ましく、また、採光断熱材の断熱性能を阻害しないために断熱性が高いことが好ましい。このようなスペーサは特に限定されないが、例えば、中空体(発泡体を含む)、FRP、自己粘着性を有するアクリル樹脂等が好適である。
【0035】
上記スペーサの形状は特に限定されず、粒子状、線状等が挙げられる。また、上記スペーサの形状により、得られる採光断熱材に意匠性を付与してもよい。なお、上記ガス層が複数ある場合には、各々のガス層を規定するスペーサは同一の形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。例えば、隣接するガス層を規定するスペーサが直交するようにして、全体としてスペーサが格子状となっていてもよい。
【0036】
本発明の採光断熱材は、可視光線透過率の好ましい下限が20%である。可視光線透過率が20%未満であると、充分な採光を得ることができないことがある。本発明の採光断熱材は、可視光線透過率のより好ましい下限は30%、更に好ましい下限は40%である。
【0037】
本発明の採光断熱材は、単独で、又は、通常のガラスと併用して建築物の採光部に設置することにより、高い断熱性能を発揮することができ、かつ、設置された状態のままで換気することができる。
本発明の採光断熱材の設置態様は特に限定されず、例えば、固定部材を用いて窓の額縁に固定したり、通常のガラスによる出窓状の採光部において、該ガラスの内側に該ガラスから離して設置したりすることができる。また、本発明の採光断熱材を二重サッシの面材として用いることもできる。これらの設置態様において、例えば、本発明の採光断熱材を着脱可能なように設置することにより、季節や目的に合わせて本発明の採光断熱材を用いることができる。また、本発明の採光断熱材を開閉可能な形としてもよい。
【0038】
本発明の採光断熱材は、例えば、換気ガラリのような目的で用いることもできる。換気ガラリとは、視線を遮りながら通風及び換気を行うために、幅の狭い薄板を平行に取り付けた通気口のことをいう。このような目的で用いる場合、本発明の採光断熱材を部分的に用いることも効果的である。
本発明の採光断熱材は、部分的に使用したり、例えば、2組組み合わせて穿孔が開閉するようにスライドさせる機能を付与した建具として使用したりすることもできる。
【0039】
本発明の採光断熱材を製造する方法は特に限定されないが、例えば、図1に記載した態様の製造装置を用いる方法が挙げられる。
図1に記載した製造装置1は、ロール状に巻き取った基材フィルムのロールから基材フィルムを送り出す基材フィルム送り出し部2、ロール状に巻き取ったロールからスペーサを送り出すスペーサ送り出し部3、基材フィルムとスペーサとを積層する貼り合せ部4とからなる。また、図1に記載した製造装置は、更に、スペーサ送り出し部3から送り出したスペーサの両面にホットメルト接着剤を塗布する接着剤加工部5を有する。
【0040】
図1に記載した製造装置を用いて本発明の採光断熱材を製造する方法では、まず、スペーサ送り出し部3からスペーサを送り出す。送り出されたスペーサは、接着剤加工部5において両面にホットメルト接着剤が塗布される。次いで、スペーサの送り出しに合わせて、基材フィルムを送り出し部2から基材フィルムを送り出す。基材フィルムとスペーサとは、貼り合わせ部4においてエアブロー等により積層され、加熱されて接着される。上記エアブローは、積層の直前まで基材フィルムやスペーサが合着するのを防ぐとともに、積層後には熱風により接着するのにも用いられる。
なお、基材フィルムは、例えば、孔明けパンチにより穿孔を形成することにより、上述した範囲内の面積の穿孔と開口率とを有する基材フィルムを用いる。更に、この基材フィルムとスペーサとは、積層する前に、50〜130℃程度の予熱を行うことが好ましい。予熱により基材フィルムやスペーサの歪をとることができ、積層後に収縮等が発生するのを防止することができる。
【0041】
本発明の採光断熱材はまた、基材フィルム上に、発泡剤を含有する硬化性樹脂組成物(例えば、エポキシ系等熱硬化型硬化性樹脂組成物やウレタン系等反応型硬化性樹脂組成物等)や熱可塑性樹脂組成物を塗工した後、発泡剤を発泡させる方法によっても製造することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、高い断熱性を有し、設置された状態のままで換気することのできる採光断熱材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の採光断熱材を製造する製造装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0045】
(実施例1〜4)
厚み188μmのPETフィルム(東洋紡社製「A4300−188」)に対して、孔明けジグによる打ち抜き加工を行い、表1に示した穿孔形状、ピッチ、穿孔面積、開口率を有するフィルム原反を作製した。次いで、このフィルム原反を用いて、図1に記載した製造装置にて、総厚み10mm、層数5の採光断熱材の積層原反を作製した。この積層原反を裁断し、以下の各種評価に供した。
なお、ピッチとは、穿孔部分の幅、高さの中心点間距離を意味する。実施例1、2、4では幅方向、高さ方向にピッチが等間隔であるのに対し、実施例3では、幅方向と高さ方向とでピッチの異なる穿孔を形成した。
【0046】
(比較例1〜2)
厚み188μmのPETフィルム(東洋紡社製「A4300−188」)に対して、孔明けジグによる打ち抜き加工を行い、表1に示した穿孔形状、ピッチ、穿孔面積、開口率を有するフィルム原反を作製した。次いで、このフィルム原反を用いて、図1に記載した製造装置にて、総厚み10mm、層数5の採光断熱材の積層原反を作製した。この積層原反を裁断し、以下の各種評価に供した。
【0047】
(比較例3)
厚み188μmのPETフィルム(東洋紡社製「A4300−188」)を用いて、図1に記載した製造装置にて、総厚み10mm、層数5の採光断熱材の積層原反を作製した。この積層原反を裁断し、以下の各種評価に供した。
【0048】
(評価)
実施例及び比較例で得られた採光断熱材について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0049】
(1)熱貫流率
発泡ポリスチレンからなり、幅300×高さ1200mmの開口部を有する簡易断熱箱を作製し、開口部と対峙する箱内部の面に、面状ヒーターを設置した。開口部に開口面積と同じサイズを有する実施例及び比較例で得られたサンプルをセットし、簡易断熱箱を20℃に設定した恒温室に設置した。箱内温度を箱外温度よりも20℃高くなるように、面状ヒーターの加熱を行い、サンプル表面に50×50mmサイズの熱流板(英弘精機社製)を設置し、通過した熱量を、定常状態で測定した。箱内の空気温度と箱外の空気温度との差、及び、通過した熱量から、熱貫流率(W/m・K)を算出した。
穿孔のないサンプル(比較例3)との熱貫流率の差が0.05未満であった場合を◎と、0.05以上0.1未満であった場合を○と、0.1以上0.15未満あった場合を△と、0.15以上であった場合を×とした。
【0050】
(2)換気性
幅300×高さ1200mmの開口部を有する箱を作製し、箱外に扇風機を設置し、箱内部に風速計を設置した。扇風機の位置、設定は、開口部に何も設置しない状態で風速計が3m/秒になるようにした。
この開口部に対し、実施例及び比較例で得られたサンプルを取り付け、想定室内である箱内側の風速を測定した。風速計の数値が0.5m/秒以上であった場合を換気量充分として○と、0.5m/秒未満であった場合を換気量不足として×とした。
【0051】
(3)可視光線透過率
U−4100型分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、JIS R 3106に準拠した方法により、得られた採光断熱材の可視光線透過率(%)を測定した。
可視光線透過率が60%以上のものを◎と、20%以上60%未満のものを○と、20%未満のものを×とした。
【0052】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、高い断熱性を有し、設置された状態のままで換気することのできる採光断熱材を提供することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 製造装置
2 基材フィルム送り出し部
3 スペーサ送り出し部
4 貼り合せ部
5 接着剤加工部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基材フィルムが、厚さが100μm〜3mmのガス層を挟んで各々対向した構造を有する採光断熱材であって、
前記基材フィルムは、面積が5〜500mmの複数の穿孔を有し、開口率が0.2〜10.0%である
ことを特徴とする採光断熱材。

【図1】
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