説明

採水管の採水構造

【課題】 夾雑物の付着がなく、ガスの流入や発生を防ぎ、スムーズな採水ができる採水管を提供する。
【解決手段】 本発明の採水管3は、汚水の汚水槽から取水する取水部4と、取水部から取水した汚水を調整槽に送水する本体管3aとを有したもので、取水部は、本体管から延長した導水管41に一方端が閉じた鞘管42を装着し、かつ鞘管の開口端と導水管41に対して略直角方向にある固定部材43との間に汚水を流入させる制水開口部44を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水槽より汚水を採水して水質測定用の調整槽に送水する採水管の採水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の採水管としては、その先端にストレーナを取り付けて夾雑物を除去し、水質測定用の調整槽に送水するものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、採水管に金網などのフィルターを取り付けて夾雑物を除去しているものもある。
図5は汚水が貯蔵された汚水槽に採水管が取付けられた状態を示す側断面図である。汚水槽1の壁1aに採水管3が取付けられた部分の詳細を図6に示す。図において、2は止水部材、4は取水部である。取水部4は、導水管41とその端部に設けたフィルター46からなる。このフィルター46はメッシュ状の金網からなっている。
汚水槽1の汚水は、フィルター46により夾雑物が除去され導水管41を通過して採水管3の本体3aから水質測定用の調整槽に送水される。
このように、従来の採水管は、メッシュ状の金網を取り付けて汚水中の夾雑部を取り除いている。
【特許文献1】特公平6−50309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の採水管は、汚水内の夾雑物を取り除くためにメッシュ状の金網を取り付ける構造となっているため、ゴミが金網に付着蓄積し、採水ができないという問題があった。
また、夾雑物が付着すると、管内流れが乱流になるため、ガスの流入や発生が起こりスムーズな流れにならず小径の採水管では流量が不足することもある。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、夾雑物の付着を防ぐことができ、ガスの流入や発生のない、スムーズな採水ができる採水管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したものである。
請求項1に記載の発明は、導水管と、前記導水管の外周に間隙を設けて装着され一方端が開口し他方端が閉じた鞘管と、前記鞘管または前記導水管に対して略直角方向に設けた開口部材とを有し、前記導水管の外周に鞘管が間隙を設けて装着され、前記鞘管の一方端と前記開口部材との間に小さい間隔を設けた制水開口部から汚水を流入させ、前記導水管と前記鞘管との隙間で構成される層流部により前記汚水の流れを層流にするようにしたものである。
請求項2に記載の発明は、導水管と、前記導水管の外周に間隙を設けて装着され一方端が開口し他方端が閉じその部分に前記導水管を挿入する挿入孔を持つ鞘管と、前記鞘管または前記導水管に対して略直角方向に設けた開口部材と、前記導水管と前記鞘管との間に前記開口部材に固定された第二導水管とを有し、前記第二導水管に前記導水管が挿入され、前記鞘管の一方端と前記開口部材との間に小さい間隔を設けた制水開口部から汚水を流入させ、前記第二導水管と前記鞘管との隙間で構成される層流部により前記汚水の流れを層流にするようにしたものである。
請求項3に記載の発明は、前記導水管が、採水管の端部または個別の管体である。
請求項4に記載の発明は、前記開口部材が、汚水槽の壁または前記導水管を固定する固定部材である。
請求項5に記載の発明は、前記制水開口部の間隔を、1から5mmの範囲としたものである。
請求項6に記載の発明は、前記制水開口部の開口部面積と、前記層流部の通水面積と、前記導水管の通水面積との比が、1:1.0〜1.2:1.0〜3.0になるようしたものである。
請求項7に記載の発明は、前記鞘管の長さを、前記導水管の端部から前記汚水槽の壁または開口部材の面までの長さの1.1〜1.3倍としたものである。
請求項8に記載の発明は、前記鞘管の開口部側の端部外周に、面取り部を設けているものである。
請求項9に記載の発明は、前記鞘管の面取り部は、銅または金により被覆したものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1、3、4に記載の発明によれば、制水開口部を設けたことにより、流水の静止部ができるため、夾雑部の流入を防ぎ、夾雑物が付着しないようになる。
導水管内の流れを層流にすることのより、空気の流入や放出がなくなる。また、
請求項2に記載の発明によれば、導水管と鞘管との間に開口部材に固定された第二導水管を設けたので、汚水槽の壁に採水管を設置する孔を設ける必要がなく、汚水槽の内部に採水管を設置できる。
請求項5に記載の発明によれば、制水開口部の間隔を特定したので、夾雑物が詰まりにくくなる。
請求項6に記載の発明によれば、制水開口部面積、層流部の通水面積、導水管の通水面積との比を特定したので、管内が層流になるため、ガスの流入や発生を防ぐことができる。
請求項7に記載の発明によれば、鞘管の長さを特定したので、流入する夾雑物の混入を大幅に制限することができる。
請求項8、9に記載の発明によれば、面取り部を設けたので流れがスムーズになり、汚泥や夾雑物が付着しにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0007】
本発明の実施例1を図1に示す。図1は採水管の側断面図である。図において、取水部4は、導水管41、鞘管42、固定部材43、制水開口部44、取付ねじ45からなっている。 図2は制水開口部44の詳細を示す部分拡大断面図である。
本発明が従来技術と異なる部分は、鞘管42と制水開口部44を備えた点である。
【0008】
鞘管42は、取水口にて導水管41をカバーするように取り付けられ、取付ねじ45によって制水開口部44の幅を調整できる構造となっている。そして制水開口部44、すなわち、壁1aに固定している固定部材43と鞘管42の端部の距離を1〜5mmに設定している。さらに、導水管41の長さLdに対する鞘管の長さLsの比が、1.1〜1.3倍になるようにしている。このような構造にすることにより、採水管へ流入する夾雑物の混入を大幅に制限することができる。
また、導水管41内は層流となるように、制水開口部44の開口部面積と、層流部41aの通水面積と、導水管41の通水面積との比を、1:1.0〜1.2:1.0〜3.0になるようしている。これらの比率は種々の実験により得られたものでありこの範囲であれば、管内が層流になるため、ガスの流入や発生を防ぐことができる。しかし、これらの比率の範囲を外れると層流部41や導水管41内が乱流になったり、制水開口部44が閉塞状態になり取水が困難になったりする。
また、導水管41の長さLdに対する鞘管の長さLsの比が、1.1〜1.3倍になるようにしている。このような構造にすることにより、採水管へ流入する夾雑物の混入を大幅に制限することができる。これは図2に示すように、汚水の流れが制水開口部44では鉛直方向であるが、層流部41aでは水平方向に直角に変化(図中の矢印)しておりこのため、流速が急に遅くなるので夾雑物の付着が起こりにくくなるものと考えられる。また、上記の長さ比が1以下では、必要な採水量が得られず、1.3以上では夾雑物が層流部41aに混入したり、詰まったりするので好ましくない。
【実施例2】
【0009】
図3は、本発明の実施例2を示す鞘管42の拡大断面図である。本実施例では鞘管42の開口部側は、端部の外側の角を切削加工して、面取り部(図中のB部)を設けている。そして鞘管の面取り部には、銅または金のめっきにより被覆してある。
面取り部を設けたので流れがスムーズになり、汚泥や夾雑物が付着しにくくなる。
本実施例が実施例1と異なる部分は、面取り部を設けた点である。
【実施例3】
【0010】
図4は、本発明の実施例3を示す採水構造の側断面図である。図において、411は第二導水管である。本実施例は、第二導水管411の一方端を溶接により固定した固定部材43を、汚水槽の内壁に取り付け、第二導水管411より直径が大きく一方端が閉じた鞘管42を他方端の開口部から挿入し、さらに鞘管42の一方端に設けた挿入孔から導水管41を挿入して組み立てたものである。
制水開口部44は実施例1と同じく鞘管42と固定部材43とで構成されており、層流部は鞘管42と第二導水管とで構成されている。
このよう汚水槽の内部に取水部を設ける構造にすることにより、実施例1の効果の他に汚水槽の壁に採水管を設置する孔を設ける必要がなくなり、短期間に採水管を設置できる効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1を示す採水管の側断面図
【図2】図1の部分拡大側断面図
【図3】本発明の実施例2を示す鞘管の拡大断面図
【図4】本発明の実施例3を示す採水構造の側断面図
【図5】従来の採水管が設置された汚水槽の側断面図
【図6】従来の採水管を示す側断面図
【符号の説明】
【0012】
1 汚水槽
1a 壁
2 止水部材
3 採水管
4 取水部
41 導水管
411 第二導水管
42 鞘管
43 固定部材
44 開口部
45 取付ねじ
46 フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導水管と、前記導水管の外周に間隙を設けて装着され一方端が開口し他方端が閉じた鞘管と、前記鞘管または前記導水管に対して略直角方向に設けた開口部材と、前記鞘管の一方端と前記開口部材との間に間隔を設けた制水開口部と、前記導水管と前記鞘管との隙間の層流部とを有したことを特徴とする採水管の採水構造。
【請求項2】
導水管と、前記導水管の外周に間隙を設けて装着され一方端が開口し他方端が閉じその閉じた端部に前記導水管を挿入する挿入孔を持つ鞘管と、前記鞘管または前記導水管に対して略直角方向に設けた開口部材と、前記導水管と前記鞘管との間に間隙を設けて装着されかつ前記開口部材に固定された第二導水管と、前記鞘管の一方端と前記開口部材との間に間隔を設けた制水開口部と、前記第二導水管と前記鞘管との隙間の層流部とを有したことを特徴とする採水管の採水構造。
【請求項3】
前記導水管は、採水管の端部または個別の管体であることを特徴とする請求項1または2記載の採水管の採水構造。
【請求項4】
前記開口部材は、汚水槽の壁または前記導水管を固定する固定部材であることを特徴とする請求項1または2記載の採水管の採水構造。
【請求項5】
前記制水開口部の間隔を、1から5mmの範囲としたものであることを特徴とする請求項1または2記載の採水管の採水構造。
【請求項6】
前記制水開口部の開口部面積と、前記層流部の通水面積と、前記導水管の通水面積との比が、1:1.0〜1.2:1.0〜3.0になるようしたものであることを特徴とする請求項1または2記載の採水管の採水構造。
【請求項7】
前記鞘管の長さは、前記導水管の端部から前記汚水槽の壁または開口部材の面までの長さの1.1〜1.3倍としたものであることを特徴とする請求項1または2記載の採水管の採水構造。
【請求項8】
前記鞘管の開口部側の端部外周は、面取り部が設けられたものであることを特徴とする請求項1または2記載の採水管の採水構造。
【請求項9】
前記鞘管の面取り部は、銅または金により被覆されたものであることを特徴とする請求項8記載の採水管の採水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−63488(P2009−63488A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232795(P2007−232795)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】