説明

採血室の入退室管理システム

【課題】本発明は、採血室の入退室をRF−ID等の非接触式媒体を用いて自動的に管理し、該当する患者が不在のときは、次の順番の患者を優先して呼び出し表示し、効率の良い採血作業を実現する。
【解決手段】患者が検査受付カードを所持して採血室入り口ゲートを通過すると、ゲートに設置したリーダが非接触でこれを感知し、当該患者の入退室をチェックすることができる。そのため、前記リーダの検知信号を採血室等に設置されたパソコン制御端末へ出力し、処理することにより、採血室における患者の入退室、つまり、患者の在室、不在を自動的に管理することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採血室の入退室をRF−ID等の非接触式媒体を用いて自動的に管理し、該当する患者が不在のときは、次の順番の患者を優先して呼び出し表示するようにした採血室の入退室管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
採血作業にあっては、医師が自らのパソコン端末へ当該患者の検査採血情報を入力すると、自動的に医事システムコンピュータのデータベースに登録される。一方、採血室では、患者の採血受付を行い、これを検査システムの採血管準備装置に反映させている。採血管準備装置では、前記データベースから当該受付患者の患者情報を取得し、患者の検査に必要な採血管を検査項目別に選択して取り出している。そして、患者ID等の情報を印字した識別ラベルを各採血管へ貼付して、患者別にトレイへ収納し、採血室の採血作業現場へ順次搬出している。
【0003】
採血作業現場では、搬送されて来たトレイの患者に関する情報を、トレイに貼付された識別ラベルやトレイに入れられた採血指示書、または採血管に貼付された識別ラベルから読み取り、これを表示装置に表示して患者を呼び出し、採血するようにしている。しかしながら、採血室に患者が不在のときは、トレイが採血現場へ溜まり、円滑な採血作業が行われなくなる。またトレイ間違いによる採血管の選択ミスが発生する虞れもある。
このように、採血作業現場では、搬送されて来るトレイと患者呼出とのタイミングを図ることは、採血作業ミス及び効率の観点から非常に重要である。このようなトレイと患者呼出とのタイミングに関する従来技術として、特許文献1に記載されたものがある。
【0004】
特許文献1の技術にあっては、採血管準備装置と採血現場との間に採血管移送システムを設置している。そして、採血管準備装置で準備されたラベル貼付済の採血管収納トレイを、前記移送システムの移送経路から採血現場へ取り出すタイミングとして、採血現場の採血作業者のスイッチ操作で行うようにしている。これにより、採血作業者が次の患者のトレイを要求しているときにのみ、トレイが採血現場へ供給されるようになり、トレイが採血現場で不用意に溜まらないようにしている。
【0005】
一方、採血作業においては、準備された採血管と採血患者とが一致していることも重要である。これを確認する従来技術として、特許文献2に記載されたものがある。
この特許文献2の技術にあっては、非接触式のRF−IDを埋め込んだリストバンドを患者に装着し、採血室に設置された台に患者が手を置くことで台に装着されたアンテナが前記RF−IDの情報を非接触で読み取り、検査情報等をディスプレイで表示して準備された採血管と採血患者との一致を確認するようにしている。
【特許文献1】特開平10−328169号公報
【特許文献2】特開2002−132962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、患者は採血室で一旦、受付をした後、検尿のためにトイレへ行ったり、売店へ行ったり、電話をかけにいったり、採血室を不在にすることがある。このような場合に、前記特許文献1の技術では、トレイの供給を採血作業者のスイッチ操作で開始するようにすることで不用意なトレイの滞留を防止するようにしているものの、それであっても供給されてきた一つのトレイの患者が不在であるときには、このトレイをストックヤードに一時的に預けておかねばならない。そのため、トレイが供給されてきたときから、患者不在であることの確認をし、トレイをストックヤードへ預けるまでの間の患者呼出、一定の応答時間の経過、不在であることの判断、不在であると判断した後のトレイの移動に要する時間の分だけ、採血作業が無駄に停止するということがあった。
【0007】
また一定時間が経過した後は、前記不在であった患者の再呼出をし、採血作業を開始する必要があるが、依然として不在である場合は、再呼出のための時間が無駄となり、また採血作業者にとっては再呼出の手続を行うこと自体が煩雑でもあった。
更に、不在患者が戻って来たことを患者自らが採血作業者に告知したときは、優先的に現在の呼出を行っている患者の前に割り込んで採血作業を行うこともあり、呼出を受けている患者に迷惑を掛けるという問題もあった。
【0008】
また特許文献2の技術にあっては、患者が呼び出されて採血作業を開始するときに、準備された採血管や採血情報と患者との一致を確認するのみであり、患者が不在であるときの呼出に関する問題を解決するものではなく、採血作業の効率に関しては前記特許文献1の場合と同じ欠点を有していた。
【0009】
本発明は従来の前記問題点に鑑みてこれを改良除去したものであって、採血室の入退室をRF−ID等の非接触式媒体を用いて自動的に管理し、該当する患者が不在のときは、次の順番の患者を優先して呼び出し表示するようにした採血室の入退室管理システムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために本発明が採用した請求項1の手段は、採血室の検査受付カードにRF−IDなどの非接触式媒体を用い、採血室入り口のゲートに、当該非接触式媒体のリーダを設置し、該リーダの信号を制御端末へ出力し、制御端末で採血室の入退室を自動的に管理するようにしたことを特徴とする採血室の入退室管理システムである。
【0011】
また前記課題を解決するために本発明が採用した請求項2の手段は、前記制御端末は、患者の呼出を行うための表示装置に接続されており、該当する患者が不在のときはこれを非表示とし、次の患者を呼び出し表示させる請求項1に記載の採血室の入退室管理システムである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明にあっては、検査受付カードにRF−IDなどの非接触式媒体を用いている。そのため、採血室の入り口ゲートに、前記非接触式媒体のリーダを設置するだけで、患者が採血室に在室しているか又は不在であるかの管理を行うことができる。すなわち、患者が検査受付カードとしての非接触式媒体を所持して採血室入り口ゲートを通過すると、ゲートに設置したリーダが非接触でこれを感知し、当該患者の入退室をチェックすることができる。そのため、前記リーダの検知信号を採血室等に設置されたパソコン制御端末へ出力し、処理することにより、採血室における患者の入退室、つまり、患者の在室、不在を自動的に管理することが可能となる。
【0013】
請求項2の発明にあっては、採血室等に設置されたパソコン制御端末を、患者の呼出表示を行う表示装置に接続し、患者が採血室に不在であることが確認されているときには、採血管準備装置から当該不在患者の採血管を収納したトレイが採血室へ搬送されてきても、採血現場へは供給しないようにし、また表示装置には当該不在患者の呼出表示をしないようにしている。
一方、患者が採血室に在室しているときは、採血管準備装置から当該在室患者の採血管を収納したトレイが採血室へ搬送されてくると、採血現場へ供給し、同時に表示装置に当該在室患者の呼出表示を行うようにしている。そして、患者が採血台の椅子へ座るのを待って採血作業を開始するようにしている。
【0014】
このように患者の不在、在室を自動的に管理してトレイの供給、呼出表示を行うことにより、全く無駄のない採血作業を行うことができる。また採血作業現場へは、順番を待っている在室患者のトレイのみを供給できるので、他の患者の採血管と取り間違いをするなどのことは皆無となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明に係る採血室の入退室管理システムの構成を、図面に示す実施の形態に基づいて説明すると、次の通りである。図1は、採血室Aの全体レイアウトを示す平面図である。同図に示す如く、採血室Aの室内には、採血管準備装置1と、3つの採血台2A,2B,2Cと、これに付随する採血椅子3A,3B,3C及び呼出表示装置4A,4B,4Cと、待合用の長椅子5A,5Bと、制御用のパソコン端末6とが設置されている。また採血室Aの入口に設置されたゲートには、RF−ID読み取り専用のリーダ7が組み込まれている。前記制御用のパソコン端末6は、前記リーダ7からの出力信号を受け、これを採血管準備装置1及び呼出表示装置4A,4B,4Cへ出力するように設定されている。更に、採血室Aの採血作業者から見えやすい壁面には、患者の在室、不在を一括して表示する表示装置10(例えば、プラズマディスプレイ等)が設置されている。なお、表示装置10は、画面
をニ分割する等して、一方の分割画面に患者の在室、不在を一括して表示
し、他方の分割画面に患者の呼出表示をするようにしてもよい。
【0016】
更に、採血室Aの入口の外には、採血受付8が設置されている。この採血受付8は、診察券などから患者IDを取得して検査受付を行い、受付をした患者に対しては検査受付カードとしての非接触式のRF−ID媒体9を発行する。そして、RF−ID媒体9の患者情報を採血管準備装置1へ出力するように設定されている。なお、RF−ID媒体9としては、カード型式であってもよく、リストバンドであってもよく、帳票型式であってもよく、その形態は問わないが、非接触式でリードライトできるものであればよい。
【0017】
次に、このように構成された採血室の入退室管理システムの動作態様を説明する。医師の診察を受けた患者で、血液検査が必要な場合、検査指示内容が医師のパソコンを通じて医事コンピュータのデータベース及びオーダリングシステムコンピュータなどに登録される。患者は、採血室へ行き、入口前の受付8で受付を行う。受付8では、カード型式などのRF−ID媒体9を患者に手渡すと共に、受付用のパソコン端末などから当該患者のIDを採血管準備装置1及び制御用パソコン端末6へ連絡する。採血管準備装置1では、前記医事コンピュータのデータベースから当該受付患者の患者情報を取得し、患者の検査に必要な採血管を検査項目別に選択して取り出している。そして、患者ID等の情報を印字した識別ラベルを各採血管へ貼付して、患者別にトレイへ収納し、そのストックヤード1Aにストックしている。
【0018】
採血作業現場では、RF−ID媒体9を所持している患者が採血室入口ゲートを通過すると、ゲートに装着したリーダ7が非接触で前記RF−ID媒体9の情報を読み取り、制御用のパソコン端末6へ信号を出力する。そのため、どの患者が採血室Aに在室しているか及びどの患者が不在であるか(出て行った場合と、入室していない場合の両方を含む)の管理を自動的に行うことができる。この管理状況は、例えば、採血室Aの採血作業者から見えやすい壁面に設置したプラズマディスプレイ10等により、一括して表示され、採血作業者が容易に確認できるようにしている。
【0019】
各採血作業者は、前記プラズマディスプレイ10に在室であることが表示されている患者のトレイのみを採血管準備装置1から取り出して担当する採血台2A〜2Cのいずれかへ手作業で供給する。不在である患者は、先に採血受付をした場合であっても、これを飛ばして次の在室患者が優先的に採血されるようにする。各採血作業台には、トレイや採血管のラベル又は検査指示書の患者情報を読み取る手段(バーコードリーダやICカードリーダ)が備え付けられており、供給されてきたトレイのこれらのいずれかの患者情報を読み込み、当該トレイに対応する患者の検査受付番号を対応する呼出表示装置4A,4B,4Cのいずれかへ表示する。またトレイ側からの情報により、呼出表示装置の採血作業者側のディスプレイ又は専用のディスプレイには、当該患者のID、検査項目及び採血量などがデータベースからダウンロードされて表示されている。
【0020】
在室している患者は、表示装置4A〜4Cのいずれかに自分の検査受付番号が表示されると、表示された採血台の方へ行き、椅子へ座る。採血作業者は、トレイ側(採血管ラベル)から読み込んだ患者IDと、患者自身とが一致しているかの確認を行う。確認は、採血台のディスプレイに表示されているトレイ側から読み込んだ患者情報と、データベースからダウンロードした情報と、RF−ID媒体9から読み込んだ情報又は口頭で聞き取った情報とを比較して行えばよい。採血作業者は、表示された検査項目と採血管とが一致しているかの確認を行いながら採血作業を実施する。
【0021】
患者が不在である場合は、プラズマディスプレイ10に表示されないか若しくは同ディスプレイ10の不在患者欄に不在表示されるので、採血作業者が不在患者のトレイを採血台へ供給することはなく、不在患者の呼出が行われることもない。そのため、在室患者のみの採血作業を実施でき、効率が良い。また不在患者のトレイが採血台へストックされることもなく、他の患者の採血管と取り間違いが起こることもない。
【0022】
一方、不在であった患者が採血室Aへ入室した場合は、これを入口ゲートのリーダ7が自動的に読み取り、制御用のパソコン端末6がプラズマディスプレイ10に患者が在室に変更になったことを点滅などの表示で知らせる。採血作業者は、これを見て採血管準備装置1のストックヤード1Aから当該患者のトレイを取り出し、採血台へ手作業で供給する。そして、以後はトレイに貼付された識別ラベルやトレイに入れられた採血指示書、または採血管に貼付された識別ラベルから患者情報を読み取り、これを呼出表示装置4A,4B,4Cのいずれかに表示して患者を呼び出し、採血するようにしている。
従って、採血作業者は不在患者を一定時間経過ごとに再呼出を行う必要がなく、また不在であった患者は採血室Aへ入室したことを採血作業者へ告知する必要がない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
ところで、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、採血管準備装置1においても、制御用パソコン端末6からの入退室管理情報を取得し、在室患者の採血管入りトレイと、不在患者の採血管入りトレイとを分けてストックするようにしてもよい。また不在患者が採血室へ入室したときは、該当する不在患者のトレイをストックしている区画をランプで点滅表示させるなどすればよい。これにより、採血作業者がトレイを探す負担を軽減することが可能となる。更に、トレイに貼付される識別ラベルの患者情報、採血管の識別ラベルの患者情報、検査指示書の患者情報は、ラベル紙に印字したものであってもよく、ICチップを埋め込んで非接触式でリードライトするものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態に係るものであり、採血室の全体のレイアウトを示す平面図である。
【符号の説明】
【0025】
1…採血管準備装置、1A…ストックヤード、2A,2B,2C…採血台、3A,3B,3C…採血用椅子、4A,4B,4C…呼出表示装置、5A,5B…待合用長椅子、6…制御用パソコン端末、7…リーダ、8…採血受付、9…RF−ID媒体(検査受付カード)、10…表示装置(プラズマディスプレイ)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
採血室の検査受付カードにRF−IDなどの非接触式媒体を用い、採血室入り口のゲートに、当該非接触式媒体のリーダを設置し、該リーダの信号を制御端末へ出力し、制御端末で採血室の入退室を自動的に管理するようにしたことを特徴とする採血室の入退室管理システム。
【請求項2】
前記制御端末は、患者の呼出を行うための表示装置に接続されており、該当する患者が不在のときはこれを非表示とし、次の患者を呼び出し表示させる請求項1に記載の採血室の入退室管理システム。




【図1】
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【公開番号】特開2007−114921(P2007−114921A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304025(P2005−304025)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(395000337)株式会社アステックコーポレーション (32)
【Fターム(参考)】