説明

探査用棒カメラ

【課題】本発明の探査用棒カメラは、簡単な構造で、災害時の瓦礫の内部を広角度で探査でき、電気の供給が受けられない災害現場でも長時間探査作業が可能である。
【解決手段】本発明は、先端部にカメラ6を取り付けた回転プーリー10を備えた探査部7と、ハンドルノブ18Cとスプール19Bを有するリール18を備えた把持部8と、探査部7と把持部8とを連結するロッド9とからなり、ワイヤ13の先端がテンションスプリング12を介して探査部7に締結し、このワイヤ13の後端が回転プーリー10を半周した後、把持部8のリール18のスプール18Bに巻回し、このワイヤ13を介してリール18の回転力を回転プーリー10に伝達し、カメラ6の角度を操作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事故や天災地変に伴う災害時に生存者を探査して人命を救助するための防災用簡易探査カメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
事故や天災地変に伴う災害発生時等に、被害者または瓦礫等で埋もれた被災者を探査して救助するレスキュー装置が種々開発されている。例えば、被災時における倒壊ビルディング、家屋等の下に埋まった被災者の目視検索、確認等のために特開平10−83015号に開示されるような目視検索用のCCDカメラ装置が提供されている。この目視検索用のCCDカメラ装置は、先端部を可撓自在なチューブとした伸縮自在な把持棒と、この把持棒の先端チューブに小型のCCDカメラ、照明ランプ、マイクロフォン等を内蔵したシリンダー状カメラ部と、テレビジョン受像機等を内蔵したコントロールボックスとから構成されている。先端部のシリンダー状カメラ部の後部には、CCDカメラの角度を変えるための4本のワイヤが接続され、把持棒の手元からこのワイヤを操作してカメラ部の方向を変換する構造となっている。
【0003】
また、通常、このようなレスキュー装置の電源には、バッテリを使用しており、前記特許文献1の目視検索用のCCDカメラ装置もDC電源(バッテリ)からケーブルを通して前記CCDカメラ、テレビジョン受像機、マイクロフォン等に電力を供給している。
【特許文献1】特開平10−83015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的にこのようなレスキュー装置の必要条件として、なるべく構造が簡単で、取り扱いが容易であること。即ち、特別な訓練や講習を受けることなく、現場での簡単な説明だけで容易に操作でき、多少乱暴に扱っても壊れないようなものが好ましい。また、救出作業が長時間かかる場合があるので、如何なる状況にあっても長時間にわたって装置を使い続けられることが必要である。
【0005】
その意味から前記特許文献1のレスキュー装置は、電源にバッテリを使用しているが、バッテリの蓄電量には限界があるので、長時間に及ぶ探査には不適当である。
また、前記特許文献1のレスキュー装置は構造が簡単であるという点では問題はないが、前記レスキュー装置の固有の問題点として、カメラ部の操作に関して視野角度が狭く、また操作が容易ではない。
【0006】
即ち、前記従来のレスキュー装置は、カメラ部の角度を4本のワイヤの操作によって変更しているが、前記のようにシリンダー状カメラ部が可撓自在なチューブの先端に取り付けられている。このため、復帰力の有る可撓自在なチューブをワイヤで引っ張り、カメラ部を所定の方向に向けるのは容易なことではない。しかも、可撓性チューブの曲げる角度には限界があり、ワイヤを引っ張ることにより可撓性のチューブを曲げてカメラ部の角度を大きく変えるのは困難である。
【0007】
本発明はかかる課題を解決するためになされたもので、構造が簡単で、取り扱いも容易で、探査できるカメラの視野角度が広角であり、しかも、手動で発電できて電源が切れる心配のない探査用棒カメラを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、回転可能にカメラが取り付けられた先端側の探査部と、リールを備えた後端側の把持部と、前記探査部と把持部とを接続するロッドとからなり、ワイヤの一端がテンションスプリングを介して探査部に固定され、他端が把持部のリールに巻回し、リールの回転力がワイヤを介して探査部のカメラに伝達されることを特徴とする。
【0009】
前記発明では、探査部にカメラが回転可能に取り付けられ、このカメラがワイヤを介して把持部のリールにより回転する。これにより、カメラの撮影角度を変えることができる。
【0010】
また、本発明の探査用棒カメラは、手動式発電機が装備されており、この手動式発電機は、基台となるフレームの上部に、回転軸を介して手動により回転するフライホイールと、このフライホイールの回転力が伝達されて発電する発電機とを備えている。
【0011】
手動式発電機を装備することにより、探査用棒カメラに安定的に電気を供給することが可能となる。しかも、構造が簡単であるため、操作が容易である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の探査用棒カメラは、簡単な構造で、災害時の瓦礫の内部を広角度で探査でき、電気の供給が受けられない災害現場でも長時間探査作業が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は本発明の探査用棒カメラの使用状態図、図2は探査用棒カメラの一部を省略した平面図、図3は探査用棒カメラの探査部の平面図、図4は探査用棒カメラの把持部の平面図、図5は探査用棒カメラの探査部の側面図、図6は探査用棒カメラの把持部の側面図である。
【0014】
この実施の形態の探査用棒カメラは、救助者1が携行して被害者または瓦礫等で埋もれた被災者を探査するための長尺な探査用棒カメラ2に、手動で電気を発電して前記探査用棒カメラ2やコントロールボックス(TVモニター)3にケーブル4を介して電気を供給する手動式発電機5を備えている。
【0015】
前記探査用棒カメラ2は、CCDカメラ6を装備した先端部の探査部7と、CCDカメラ6を操作する手元の把持部8と、前記探査部7と把持部8とを連結する長尺なロッド9から構成されている。
【0016】
探査部7は図2、図3に示すように、回転プーリー10に取り付けられたCCDカメラ6がブラケット11を介してロッド9の先端に取り付けられたものである。CCDカメラ6のレンズ6Aは図2に示すように通常はテンションスプリング12により後方側(把持部8方向)を向いている。このCCDカメラ6の視野角は一般的には50度から70度程度であるが、後述するように、この探査用棒カメラ2ではほぼ全方位を観察することが可能である。
【0017】
なお、前記CCDカメラ6は、既存の一般的なものを使用しているが、この探査部7のカメラはCCDカメラ6に限定されず、手元でモニターできるものであれば他の種類のものであってもよい。また、CCDカメラ6以外に照明装置、マイクロフォン、その他のセンサーを探査部7に装備してもよい。なお、探査用棒カメラ2の先端部(CCDカメラ6、回転プーリー10)を保護カバー2Aで覆って保護している。
【0018】
前記回転プーリー10は円盤状であって、片面に滑車板10Aを備えており、この滑車板10AにCCDカメラ6を回転するためのワイヤ13が半周だけ接し、後述するように一点を固定ピン10Eで固定している。回転プーリー10はCCDカメラ6の取付金具14を取り付けるために所定の厚みを有する円形の厚板であって、材質は合成樹脂であってもアルミニウムのような金属であってもよい。滑車板10Aは前記のように、ワイヤ13が接するために、溝10Dが外周側縁に周設されている。
【0019】
前記回転プーリー10の中心部には軸孔10Bが形成されている。この軸孔10Bに、回転軸10Cが挿入され、この回転軸10Cが先端ジョイント16の軸受部162Aに軸支されて、回転プーリー10が回転可能に軸支されている。
【0020】
図5に示すように、CCDカメラ6を回転プーリー10に取り付ける取付金具14はL字金具14Aと、このL字金具14Aの側面にボルト、ナットにより固定された保持金具14Bとから構成されている。前記L字金具14Aは底片がボルト、ナットにより回転プーリー10の所定の位置に固定されている。即ち、前記L字金具14Aは、回転プーリー10上にボルト、ナットにより固定されている。前記保持金具14Bは、平面視が略三角形状、側面視がコ字状に形成されており、前記CCDカメラ6はコ字状の保持金具14Bの内部に装着されている。取付金具14に取り付けられたCCDカメラ6は、回転プーリー10の回転に伴って角度にして約180度回転可能である。
【0021】
回転プーリー10を軸支するブラケット11は、2本の並行な連結パイプ15A,15Bが先端ジョイント16と後端ジョイント17により、固定されている。連結パイプ15A,15Bの一方は他方よりも長く、この後端ジョイント17より後方に突出した一方の連結パイプ15Aの部分にロッド9の先端部を嵌め込むように構成されている。一方と他方の連結パイプ15A,15Bは筒状のパイプで、アルミニウムのような軽金属製パイプを用いている。
【0022】
先端ジョイント16は、上下一対の板体が一方と他方の連結パイプ15A,15Bの先端部に重ね合わされてボルトとナットにより強固に固定されている。この先端ジョイント16の板体は、一方と他方の連結パイプ15A,15Bに固定する長方形状のジョイント部161Aと、先端部が半円形状で先端方向に多少幅狭となった軸受部162Aとからなり、平面視T字形に形成されている。
【0023】
一方と他方の連結パイプ15A,15Bの後端側には、後端ジョイント17がボルトとナットにより強固に固定されている。この後端ジョイント17は長方形状の上下一対の板体からなり、一方と他方の連結パイプ15A,15Bを上下から挟んで、中央部の2箇所をボルトとナットで固定している。
【0024】
前記のように一方の連結パイプ15Aに接続されたロッド9は、図面では省略しているが、長尺なパイプであって、アルミニウムのような軽金属製又はグラスファイバー、カーボンロッド、合成樹脂、木材等の長尺なロッドで、その材質は問わない。また、このロッド9は長さを伸縮できるものであってもよい。
【0025】
次に、把持部8について説明する。
把持部8は、探査用棒カメラ2を使用する際に救助者1がCCDカメラ6を操作するためのもので、探査部7を倒壊した建物等の瓦礫の中に差し入れて救助者1の手元でCCDカメラ6の撮影する角度を変えることができる。この把持部8は、救助者1が把持する把持部本体8Aを有し、その把持部本体8Aの先端にロッド9の後端部を挿入する連結部8Bを備え、側部にはワイヤ13の後端を巻き付けるリール18が取り付けられている。把持部本体8Aはアルミ等の軽金属又は合成樹脂等のパイプできており、連結部8Bは把持部本体8Aより大径のパイプである。把持部本体8Aの後端には、ワイヤ13の方向を転換するガイドプーリー19が把持部本体8Aの内部に設けられている。即ち、図6に示すように、把持部本体8Aの後端部が楕円形状に扁平され、その内部に、上下からプーリースペーサ19Aで挟まれたガイドプーリー19が配置され、ガイドプーリー19及びプーリースペーサ19Aにプーリー軸19Bが挿通されて、軸支されている。
【0026】
リール18は釣用の既存のリールを使用してもよい。このリール18は、リールフレーム18Aにワイヤ13の後端を巻き付けたスプール18Bを有し、ハンドルノブ18Cを回転することによりスプール18Bを回転してワイヤ13を巻き取ったり、巻き戻したりすることができる。
【0027】
次に、ワイヤ13の張りかたについて説明する。
ワイヤ13の先端部には、テンションスプリング12が接続している。このテンションスプリング12はブラケット11の他方の連結パイプ15B内に配置され、先端が連結パイプ15B(探査部)に固定されている。ワイヤ13はこのテンションスプリング12の後端に接続され、他方の連結パイプ15Bを通って回転プーリー10の滑車板10Aに半周接して、一方の連結パイプ15A、ロッド9内を通り、さらに、把持部8を通って、ガイドプーリー19により方向変換されスプール18Bに巻き付いている。さらに、図2、図3に図示された状態において、ワイヤ13の滑車板10Aに接し始めるCCDカメラ6側の始端を固定ピン10Eにより固定している。これにより、リール18の回転力はワイヤ13を介して直接滑車板10Aに伝達されるので、ワイヤ13と滑車板10Aとの滑りがなくなりCCDカメラ6の正確な角度調整が可能になる。
【0028】
なお、上記の実施の形態では、CCDカメラ6はワイヤ13の操作により、回転プーリー10を回転して撮影する角度を変えていたが、CCDカメラ6を回転するには必ずしも回転プーリー10を用いる必要はなく、回転するロッドの一端にカメラを取り付けてワイヤ13によりロッドの他端を引っ張ってCCDカメラ6を回転するようにしてもよい。また、円形の回転板の中心にCCDカメラ6を固定して、その回転板の回転軸に巻回したワイヤを引っ張ることによりCCDカメラ6を回転するような構成であってもよい。このように、CCDカメラ6を回転する機構は回転プーリー10を使用するものには限定されない。
【0029】
次に探査用棒カメラ2の操作方法について説明する。
図1に示すように、救助者1は探査用棒カメラ2を抱えて、探査が必要な所(例えば震災で倒壊した家屋の中等)に探査用棒カメラ2の探査部7を差し入れる。そして、リール18のハンドノブ18Cを操作すると、ワイヤ13がスプール18Bに巻き取られ、テンションスプリング12の付勢力に抗しながらワイヤ13が手繰られることによって、回転プーリー10が回転する。回転プーリー10の回転により、この回転プーリー10に取り付けられたCCDカメラ6が回転する。
図2の状態をリール18によりワイヤ13を巻き取る前の状態とすると、この状態ではCCDカメラ6のレンズ6Aは図2に示すように後方側(把持部8方向)を向いている。図5に示す状態で探査用棒カメラ2のロッド9の長手方向の軸芯を中心に360度回転すると後方がほぼ観察できる。例えば古墳のような大きな空洞の入口に小さな孔しか開いていない場合に、入口側の小さな孔から探査用棒カメラ2を差し入れて、その状態で棒カメラ2を360度回転すると、入口側の様子を観察することができる。撮影された内部の様子はコントロールボックス3のテレビカメラに写し出される。
【0030】
後方の観察が終わると、リール18でワイヤ13を少し巻取り、回転プーリー10を回転させCCDカメラ6の撮影角度を変える。このCCDカメラ6の角度を変えて前記と同じように探査用棒カメラ2のロッド9の長手方向の軸芯を中心に360度回転すると角度を変えた状態で周囲が観察できる。リール18でワイヤ13を巻取ることにより、図2の平面視において180度の角度でCCDカメラ6は回転する。この操作と前記の探査用棒カメラ2の360度のロッド9の軸芯を中心とする回転を合わせるとほぼ全方位の観察が可能となる。従って、視野の狭いCCDカメラ6であっても全方位での探査ができる。
【0031】
なお、ハンドルノブ18Cを戻せばテンションスプリング12の付勢力によってワイヤ13が元の状態に戻されてそれに伴って回転プーリー10が元の状態に復帰してCCDカメラ6も図2の最初の位置に戻る。
【0032】
リール18のスプール18Bと、滑車板10Aの関係については、リール18のスプール18Bの円周と滑車板10Aの円周とを同じにすれば、CCDカメラ6を180度回転するとすれば、ハンドルノブ18Cの回転角も180度回転すればよい。このように、ハンドルノブ18Cの角度とCCDカメラ6の角度を同じにすれば、探査部7が瓦礫の中に隠れていてもCCDカメラ6の角度がわかるので、操作には都合がよい。何れにしろ、リール18のスプール18Bと滑車板10Aの大きさの比率はハンドルノブ18Cの操作のしやすい比率にすればよい。
【0033】
次に、手動式発電機について説明する。
災害時には一般の電源からの電気の供給が期待できないことが多いので、通常、レスキュー装置の電源にバッテリを使用する場合が多い。バッテリ以外には小型のエンジン発電機、太陽電池パネル等が考えられる。しかし、長時間に及ぶ探査作業にはバッテリは不向きであり、小型発電機も大きなエンジン音によって被災者のわずかな生存音を聞き逃すおそれがある。太陽電池も天候に左右される欠点がある。
【0034】
レスキュー用の発電機は、信頼のおける電源を必要とするが、その他に構造が簡単で操作が容易で経験の無い者でも操作が可能であること、気象条件、環境条件等に左右されず発電が可能であること、長時間作業でも作業者に負担がかからないこと、運搬が容易であること、保管場所を取らないこと等が要求される。
【0035】
CCDカメラによる撮影のように、あまり電力を必要としない場合は、人間が手動で発電する手動式発電機が安定的にしかもどのような条件でも発電が可能であるので、複数の人間の助力があればレスキュー装置の電源としては好ましい。本実施の形態では、フライホイールを用いた災害時用の手動式発電機を採用した。この実施の形態では、細かく分割して持ち運びし易く、しかも保管場所をとらないように工夫をしている。
【0036】
図7は手動式発電機の斜視図、図8は側面図である。この手動式発電機は、T字形フレーム20の上面にフライホイール21が回転可能に軸支され、後端に発電機22を装備している。
【0037】
T字形フレーム20は、断面コ字状の2本の棒状鋼材20A,20BをT字形に当接してボルト、ナットで固定して組み立てる構造のものである。このT字形フレーム20にはフライホイール21を取り付けるための回転軸23が取り付けられている。即ち、このT字形フレーム20のT字の縦棒部分20Bの上面に、フライホイール21の回転軸23のベース板24を嵌め込むための2本の突起25が平行に形成され、この2本の突起25の間にベース板24を嵌め込め込んでボルト、ナットで固定する。ベース板24を固定することにより、回転軸23及びフライホイール21がT字形フレーム20に支持される。
【0038】
前記フライホイール21の回転軸23は、筒体26内にベアリング構造体(図示せず)が収納されており、ベアリング構造体の回転軸(図示せず)の先端に円板状のフランジ27が取り付けられている。このフランジ27は、中央部にフライホイール21の中央孔に嵌め込む円形凸部27Aを有し、この円形凸部27Aの外周部に多数のネジ孔が穿設された鍔部27Bを備え、フライホイール21の分割片21Aの内周部をボルト、ナットで固定して車輪状になるように構成されている。
【0039】
フライホイール21は、約30−40キログラムの重さを有し、回転すると慣性により回転する。このフライホイール21は前記のように扇形の8枚の分割片21Aからなり前記回転軸23のフランジ27に固定されて車輪状に組み立てられる。このフライホイール21の分割片21Aの一片には、回転用のハンドル29が取り付けられている。
【0040】
なお、フライホイール21は分割すると運搬や保管に便利であるが、必ずしも分割する必要はなく、車輪状で一体のものであってもよい。
T字形フレーム20のT字の縦棒部分20Bの後端部には、着脱可能に発電機22が取り付けられている。この発電機22はスライド板30Aに固定されており、このスライド板30AがT字形フレーム20の後端部の長手方向にスライド可能に嵌め込まれている。前記スライド板30は、下方に突出した突起30AがT字形フレーム20の後端部の長孔31に嵌め込まれ、長孔31に沿って摺動する。スライド板30はスプリング(図示せず)によりフライホイール21側に付勢されており、このスプリングにより、発電機22の回転軸22Aが前記フライホイール21の外周縁に当接する。従って、フライホイール21の回転に伴って発電機22の回転軸22Aが回転して発電する。この手動式発電機により、探査用棒カメラ2に取り付けられたCCDカメラ6やコントロールボックス3に電源を供給することができる。
なお、上記の実施の形態では、スプリングにより、発電機22の回転軸22Aが前記フライホイール21の外周縁に当接する構成としたが、本発明の手動式発電機5はかかる構成に限定されず、例えばフライホイール21と発電機22の回転軸22Aとをベルトやチェンで繋ぐ構成であってもよい。また、フライホイール21の重さを調節するために、水や砂、砂利等を錘とする構成にしてもよい。
【0041】
図9は探査用棒カメラ用電源部のブロック図である。
この棒カメラ用電源部35は前記の手動式発電機5で発電した電気を電気二重層コンデンサ36に蓄えると共に、コンデンサ36に電気が所定の電圧まで蓄えられると、余剰の電力は直接DC−DC電源として使用できるものである。
【0042】
この棒カメラ用電源部35は、中継コネクタ37を介して手動式発電機5にケーブルで接続されている。手動式発電機5には整流回路が内蔵されており、直流電流が棒カメラ用電源部35に入力される。
【0043】
この棒カメラ用電源部35には上限電圧カット回路38を備えており、この上限電圧カット回路35は手動式発電機5の発生電圧が所定以上(例えば18V以上)になると、電流をカットして以降の回路に電流が流れないようにストップする。これにより、電気二重層コンデンサ36やその後のDC-DC電源回路40の入力定格電圧を保障する。
【0044】
前記上限電圧カット回路38を通過した電流は、次の3つのルートを流れて探査用棒カメラ2およびコントロールボックス3の電源として使用される。
1)定電流回路39から電気二重層コンデンサ36に流れて、電気二重層コンデンサ36に電気を蓄えるルート。第3スイッチ(SW3)により回路を開閉する。
2)電気二重層コンデンサ36に蓄えられた電力をDC-DC電源回路40を経由して探査用棒カメラ2等に電力を供給するルート。第2スイッチ(SW2)により回路を開閉する。
3)上限電圧カット回路38から直接にDC-DC電源回路40を経由して探査用棒カメラ2等に電力を供給するルート。第1スイッチ(SW1)により回路を開閉する。
【0045】
前記の定電流回路39は、電気二重層コンデンサ36の電位が低くても、手動式発電機5のフライホイール21の手回しを軽くするものである。即ち、電気二重層コンデンサ36が完全な放電状態では、電位が0となるので、手動式発電機5から見ると短絡状態に近く、このため、フライホイール21の手回しが非常に重たくなり、回しづらくなる。電気二重層コンデンサ36が空の状態でも、手回しが可能なレベルの電流しか流れないようにすることで、手動式発電機5の長時間の手回し発電が可能となる。
【0046】
DC−DC電源部40は、電源電圧(例えば、12V)を安定化するものである。即ち、CCDカメラ6やモニター3は安定した電圧入力の仕様になっている。しかし、DC−DC電源部40の入力電圧範囲は9V−18Vであるとすると、SW1、SW2をONして、手動式発電機5と電気二重層コンデンサ36とから電源が供給されると、9V−18Vの範囲の変動する電圧がDC−DC電源部40に供給されることになる。このため、DC−DC電源部40は電源電圧を12Vに安定化する作用をはたすものである。
【0047】
各種電圧電流監視回路41は、前記第1スイッチ(SW1)、第2スイッチ(SW2)、第3スイッチ(SW3)をON,OFFし、前記の3つのルートに流れる電流を制御する。この各種電圧電流監視回路41には電流メータ42と電圧メータ43が接続されており、救助者1は手動式発電機5の電流と電圧をモニターすることができる。なお、各スイッチ(SW1)(SW2)(SW3)はNチャンネルMOSトランジスタを直列に2個配置したものであるが、スイッチは必ずしもこのような構成に限定されない。
【0048】
以下において、各種電圧電流監視回路41によるスイッチ(SW1)(SW2)(SW3)の制御方法を図10のフローチャートを用いて説明する。
ステップ1(S1);手動式発電機5のハンドル29を回して発電を開始する。発電の方法はフライホイール21のハンドル29を回せばよく、全く操作は簡単である。発電した交流電流は発電機5内の整流器で整流され、棒カメラ用電源部35に流れる。手動式発電機5の上限電圧が高いと前記のように棒カメラ用電源部35の上限電圧カット回路38でカットされる。
【0049】
ステップ2(S2);手動式発電機5で発電された電気は上限電圧カット回路38の所定電圧(18V)より低ければ電気二重層コンデンサ36に電気を蓄えるように各種電圧電流監視回路41はスイッチ(SW1)(SW2)(SW3)を制御する。即ち、スイッチ(SW1)(SW2)はOFFにして、スイッチ(SW3)はONにすると、手動式発電機5で発電された電流は、上限電圧カット回路38、定電流回路39を流れて、スイッチ(SW3)を通って電気二重層コンデンサ36に流れる。そして、電気二重層コンデンサ36が所定電圧(例えば、15V)になるまで電力が蓄えられる。
【0050】
ステップ3(S3);電気二重層コンデンサ36が所定電圧(15V)まで上昇すると、スイッチ(SW1)(SW2)がON、(SW3)がOFFに切り換わる。このようにスイッチ(SW1)(SW2)(SW3)が切り換わると、(SW2)がONになっているので、電気二重層コンデンサ36からDC-DC電源回路40を通って探査用棒カメラ2等に電力を供給することができる。されに、上限電圧カット回路38から直接にDC-DC電源回路40を通って探査用棒カメラ2等に直接電力を供給することができる。
【0051】
ステップ4(S4);前記のステップ3で探査用棒カメラ2等を操作するための電力が確保できたことになるので、探査用棒カメラ2等を操作して被災者の探査を開始する。この操作の方法については前記の通りである。
【0052】
ステップ5(S5);探査用棒カメラ2等の操作により、電気二重層コンデンサ36に蓄えられた電力が消費されるので、電気二重層コンデンサ36の電圧が所定の電圧以下になってくる。その時はステップ2に戻り、電気二重層コンデンサ36に電気を蓄電するためにスイッチ(SW1)(SW2)はOFF、(SW3)はONに切り換わる。
【0053】
ステップ6(S6)、ステップ7(S7);前記のステップ5で電気二重層コンデンサ36に蓄えられた電力がまだ十分であるか、手動式発電機5からの電気の供給が十分に有りコンデンサ36からの電力の消費分を補っており、探査を継続できる場合は、スイッチ(SW1)(SW2)がON、(SW3)がOFFの状態を維持して探査を継続する。
【0054】
ステップ8(S8);探査を終了する場合は、手動式発電機5をストップする。電気二重層コンデンサ36に蓄積された電気は放電されて、コンデンサ36内の電気はゼロになる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は災害時の人命救助に使用する際に、簡単な構造でしかも確実な操作が可能でしかも電気の供給を受けられない災害現場であっても探査作業ができる探査用棒カメラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の探査用棒カメラの使用状態図である。
【図2】本発明の探査用棒カメラの一部省略平面図である。
【図3】本発明の探査用棒カメラの探査部の平面図である。
【図4】本発明の探査用棒カメラの把持部の平面図である。
【図5】本発明の探査用棒カメラの左側面図である。
【図6】本発明の探査用棒カメラの右側面図である。
【図7】本発明の手動式発電機の斜視図である。
【図8】本発明の手動式発電機の正面図である。
【図9】本発明の棒カメラ用電源部のブロック図である。
【図10】本発明の棒カメラ用電源部の制御方法を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
2 探査用棒カメラ
5 手動式発電機
6 CCDカメラ(カメラ)
7 探査部
8 把持部
9 ロッド
10 回転プーリー
12 テンションスプリング
13 ワイヤ
18 リール
20 T字形フレーム(フレーム)
21 フライホイール
22 発電機
23 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能にカメラが取り付けられた先端側の探査部と、リールを備えた後端側の把持部と、前記探査部と把持部とを接続するロッドとからなり、ワイヤの一端がテンションスプリングを介して探査部に固定され、他端が把持部のリールに巻回し、リールの回転力がワイヤを介して探査部のカメラに伝達されることを特徴とする探査用棒カメラ。
【請求項2】
回転可能なカメラが、リール回転前は後方を向いており、リールの回転によりワイヤを介して少なくとも180度回転することを特徴とする請求項1に記載の探査用棒カメラ。
【請求項3】
探査用棒カメラに手動式発電機が装備されており、この手動式発電機は、基台となるフレームの上部に、回転軸を介して手動により回転するフライホイールと、このフライホイールの回転力が伝達されて発電する発電機とを備えた請求項1に記載の探査用棒カメラ。
【請求項4】
手動式発電機はフライホイールの外周縁に発電機の回転軸が当接していることを特徴とする請求項3に記載の探査用棒カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−105860(P2009−105860A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278245(P2007−278245)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(507356143)
【Fターム(参考)】