説明

接合方法および接合体

【課題】2つの基材同士を、低コストで微細な形状にパターニングされた接合膜で接合する接合方法、かかる接合方法で接合された接合膜を備える接合体を提供すること。
【解決手段】本発明の接合方法は、第1の基材、第2の基材22および第3の基材23を用意する工程と、第1の基材の撥液性が付与されている面側に、シリコーン材料を含有する液状材料を塗布・乾燥して、所定形状にパターニングされた接合膜3を得る工程と、接合膜3の表面付近に接着性を発現させ、接合膜3を介して第1の基材と第2の基材22とを接合させた後、第1の基材と第2の基材22とを離間することにより、接合膜3を第1の基材から第2の基材22に転写する工程と、転写された接合膜3の表面付近に接着性を発現させ、接合膜3を介して第2の基材22と第3の基材23とを接合することにより、これら同士が接合された接合体1を得る工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合方法および接合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、基板上に所定形状にパターニングされた膜を形成する方法として、膜の構成材料を含有する液状材料を、所定形状となるように塗布法を用いて基板上に塗布することによりパターニングされた液状被膜を形成し、この液状被膜を乾燥することにより、所定形状にパターニングされた膜を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような液状材料を用いてパターニングされた膜を形成する形成方法は、2つの基板同士を接合するために、熱または光硬化性樹脂を含有する接合膜を、基板上に所定形状に形成する場合にも適用し得る。
しかしながら、このような基板上に液状材料を塗布する方法では、基板に対する液状材料の濡れ性によっては、所定形状に塗布された液状被膜が基板上で濡れ広がり、その結果、形成される膜のパターニング精度が低下してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−289226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高い成膜精度でパターニングされた接合膜を用いて2つの基材同士を接合することができる接合方法、かかる接合方法で接合された接合膜を備える接合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の接合方法は、シリコーン材料を含有する液状材料に対する撥液性を少なくとも表面付近に有する第1の基材と、接合膜を介して互いに接合する第2の基材および第3の基材とを用意する第1の工程と、
前記第1の基材の撥液性が付与されている面側に、前記液状材料を塗布して、所定形状にパターニングされた液状被膜を形成した後、乾燥することにより、前記所定形状にパターニングされた接合膜を得る第2の工程と、
前記接合膜にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に接着性を発現させ、当該接合膜を介して前記第1の基材と前記第2の基材とを接合させた後、前記第1の基材と前記第2の基材とを離間することにより、前記接合膜を前記第1の基材から前記第2の基材に転写する第3の工程と、
転写された前記接合膜にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に接着性を発現させ、当該接合膜を介して前記第2の基材と前記第3の基材とを接合することにより、これら同士が接合された接合体を得る第4の工程とを有することを特徴とする。
これにより、高い成膜精度でパターニングされた接合膜を用いて第2の基材と第3の基材とを接合することができる。
【0007】
本発明の接合方法では、前記第2の工程において、前記第2の基材の前記接合膜を介して前記第3の基材と接合する側の面のほぼ全面に、前記接合膜を形成することが好ましい。
これにより、接合膜同士間での接合をより強固なものとすることができる。
本発明の接合方法では、前記第2の工程において、前記第3の基材の前記接合膜を介して前記第2の基材と接合する側の面のほぼ全面に、前記接合膜を形成することが好ましい。
これにより、接合膜同士間での接合をより強固なものとすることができる。
【0008】
本発明の接合方法では、前記第2の工程において、前記液状皮膜は、前記液状材料を液滴吐出法を用いて液滴として供給することにより形成されることが好ましい。
液滴吐出法によれば、より高い成膜精度で接合膜を形成することができる。
本発明の接合方法では、前記液滴吐出法は、圧電素子による振動を利用して前記液状材料を、インクジェットヘッドが備えるノズル孔から液滴として吐出するインクジェット法であることが好ましい。
インクジェット法によれば、目的とする領域(位置)に、液状材料を液滴として、優れた位置精度で供給することができる。また、圧電素子の振動数および液状材料の粘度等を適宜設定することにより、液滴のサイズ(大きさ)を、比較的容易に調整できることから、液滴のサイズを小さくすれば、たとえ所定形状が微細なものであったとしても、この形状に対応した液状被膜を確実に形成することができる。
【0009】
本発明の接合方法では、前記所定形状は、前記接合膜による接合を必要とする部位に対応した形状をなしていることが好ましい。
本発明の接合方法では、前記シリコーン材料は、その主骨格がポリジメチルシロキサンで構成され、この主骨格が分枝状をなしていることが好ましい。
これにより、シリコーン材料の分枝鎖同士が互いに絡まり合うようにして接合膜が形成されることから、得られる接合膜は特に膜強度に優れたものとなる。
本発明の接合方法では、前記シリコーン材料は、前記ポリジメチルシロキサンが有するメチル基の少なくとも1つがフェニル基で置換されていることが好ましい。
これにより、接合膜をより膜強度に優れたものとすることができる。
【0010】
本発明の接合方法では、前記シリコーン材料は、シラノール基を複数個有することが好ましい。
これにより、シリコーン材料が有する水酸基とポリエステル樹脂が有する水酸基とを確実に結合させることができ、シリコーン材料とポリエステル樹脂とが脱水縮合反応することにより得られるポリエステル変性シリコーン材料を確実に合成することができる。
さらに、液状被膜を乾燥させて接合膜を得る際に、隣接するシリコーン材料が有するシラノール基に含まれる水酸基同士が結合することとなり、得られる接合膜の膜強度が優れたものとなる。
【0011】
本発明の接合方法では、前記シリコーン材料は、ポリエステル樹脂と脱水縮合反応させることにより得られたポリエステル変性シリコーン材料であることが好ましい。
これにより、接合膜をより膜強度に優れたものとすることができる。
本発明の接合方法では、ポリエステル樹脂は、飽和多塩基酸と多価アルコールとのエステル化反応により得られるものであることが好ましい。
本発明の接合方法では、前記第3の工程および第4の工程において、前記接合膜に対する前記エネルギーの付与は、前記接合膜にプラズマを接触させることにより行われることが好ましい。
これにより、接合膜を、極めて短時間(例えば、数秒程度)で活性化させることが可能であり、結果として、接合体を短時間で製造することができる。
【0012】
本発明の接合方法では、前記プラズマの接触を、大気圧下で行うことが好ましい。
大気圧下で行われるプラズマの接触、すなわち、大気圧プラズマ処理によれば、接合膜の周囲が減圧状態とならないので、プラズマの作用により、例えば、接合膜を構成するポリエステル変性シリコーン材料が含んでいるポリジメチルシロキサン骨格が備えるメチル基を切断、除去して、接合膜の表面付近に接着性を発現させる際に、この切断が不要に進行するのを防止することができる。
【0013】
本発明の接合方法では、前記プラズマの接触は、互いに対向する電極間に電圧を印加した状態で、これらの間にガスを導入することにより、プラズマ化された前記ガスを前記接合膜に供給することによりなされることが好ましい。
これにより、容易かつ確実に、接合膜にプラズマを接触させ、接合膜の表面付近に接着性を確実に発現させることができる。
【0014】
本発明の接合方法では、前記第2の基材および前記第3の基材の前記接合膜と接触する部分は、シリコン材料、金属材料またはガラス材料を主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、表面処理を施さなくても、十分な接合強度が得られる。
本発明の接合方法では、前記第2の基材および前記第3の基材の前記接合膜と接触する部分には、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されていることが好ましい。
これにより、基材の接合面が清浄化および活性化され、接合面に対して接合膜が化学的に作用し易くなる。その結果、基材の接合面と接合膜との接合強度を高めることができる。
【0015】
本発明の接合方法では、前記表面処理は、プラズマ処理または紫外線照射処理であることが好ましい。
これにより、接合膜を形成するために、基材の表面を特に最適化することができる。
本発明の接合方法では、さらに、前記第2の基材と前記第3の基材とを接合させた後に、前記接合膜に対して、前記第2の基材と前記第3の基材との接合強度を高める処理を行う工程を有することが好ましい。
これにより、接合体の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
【0016】
本発明の接合方法では、前記接合強度を高める処理を行う工程は、前記接合膜を加熱する方法、および前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われることが好ましい。
これにより、接合体の接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
本発明の接合体は、前記第2の基材と前記第3の基材とが、本発明の接合方法により形成された接合膜を介して接合されてなることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い接合体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の基材上に液状材料を塗布する際に用いる液滴吐出装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は断面図である。
【図3】本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図4】本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図5】本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図6】接合膜にプラズマを接触させる際に用いる大気圧プラズマ装置を示す概略図である。
【図7】本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図8】本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図9】本発明の接合体が適用されたアクティブマトリクス型の有機発光装置の実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の接合方法および接合体を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
まず、本発明の接合方法および接合体を説明するのに先立って、本発明の接合方法で液状材料を供給する際に用いられる液滴吐出装置の一例について説明する。
<液滴吐出装置>
図1は、第1の基材上に液状材料を塗布する際に用いる液滴吐出装置を示す斜視図、図2は、図1に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は断面図である。
【0019】
図1に示すように、本工程で用いる液滴吐出装置500は、後述する接合膜3を形成する際に用いる液状材料35を保持するタンク501と、チューブ510と、チューブ510を介してタンク501から液状材料35が供給される吐出走査部502とを備える。吐出走査部502は、液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)514を備える液滴吐出手段503と、液滴吐出手段503の位置を制御する第1位置制御装置504(移動手段)と、後述する接合膜3を形成する第1の基材21を保持するステージ506と、ステージ506の位置を制御する第2位置制御装置508(移動手段)と、制御手段512とを備えている。タンク501と、液滴吐出手段503における液滴吐出ヘッド514とは、チューブ510で連結されており、タンク501から液滴吐出ヘッド514に液状材料35が圧縮空気によって供給される。
【0020】
制御手段(制御装置)512は、例えば、演算部やメモリー等を内蔵するマイクロコンピュータやパーソナルコンピュータ等のコンピュータで構成されており、制御手段512には、図示しない操作部からの信号(入力)が、それぞれ、随時入力される。
また、制御手段512は、操作部からの信号等に基づき、予め設定されたプログラムに従って、液滴吐出装置500の各部の作動(駆動)をそれぞれ制御する。
【0021】
第1位置制御装置504は、制御手段512からの信号に応じて、液滴吐出手段503をX軸方向、およびX軸方向に直交するZ軸方向に沿って移動させる。さらに、第1位置制御装置504は、Z軸に平行な軸の回りで液滴吐出手段503を回転させる機能も有する。本実施形態では、Z軸方向は、鉛直方向(つまり重力加速度の方向)に平行な方向である。第2位置制御装置508は、制御手段512からの信号に応じて、X軸方向およびZ軸方向の双方に直交するY軸方向に沿ってステージ506を移動させる。さらに、第2位置制御装置508は、Z軸に平行な軸の回りでステージ506を回転させる機能も有する。
【0022】
ステージ506は、X軸方向とY軸方向との双方に平行な平面を有する。また、ステージ506は、液状材料35を付与して接合膜3を形成する第1の基材21をその平面上に固定、または保持できるように構成されている。
上述のように、液滴吐出手段503は、第1位置制御装置504によってX軸方向に移動させられる。一方、ステージ506は、第2位置制御装置508によってY軸方向に移動させられる。つまり、第1位置制御装置504および第2位置制御装置508によって、ステージ506に対する液滴吐出ヘッド514の相対位置が変わる(ステージ506に保持された第1の基材21と、液液滴吐出手段503とが相対的に移動する)。
【0023】
制御手段512は、液状材料35を吐出すべき相対位置を表す吐出データを外部情報処理装置から受け取るように構成されている。
液状材料35を第1の基材21上に供給する際には、液滴吐出ヘッド514と第1の基材21とを相対的に走査しつつ、第1の基材21上に液状材料35を吐出する。すなわち、第2位置制御装置508の作動により、第1の基材21が保持されているステージ506をY軸方向に移動させ、液滴吐出手段503の下を通過させつつ、液滴吐出手段503が備える液滴吐出ヘッド514のノズル518から液状材料35の液滴(インク滴)31を吐出して、第1の基材21上の膜形成領域41に付与する(着弾させる)。以下、この動作を「塗布走査(液滴吐出ヘッド514と第1の基材21との主走査)」と言うことがある。
【0024】
そして、この液状材料35を第1の基材21上に供給する工程においては、通常は、前記塗布走査(走査)を複数回行うようになっている。なお、前記塗布走査の回数は、1回でもよいことは言うまでもない。
本実施形態では、液滴吐出ヘッド514は、図2(a)および(b)に示すように、インクジェットヘッドで構成されている。すなわち、本実施形態で説明する液滴吐出装置は、インクジェット装置である。
【0025】
液滴吐出ヘッド514は、振動板526と、ノズルプレート528とを備えている。振動板526と、ノズルプレート528との間には、タンク501から、チューブ510および孔531を介して供給される液状材料35が常に充填される液だまり529が位置している。
また、振動板526と、ノズルプレート528との間には、複数の隔壁522が位置している。そして、振動板526と、ノズルプレート528と、1対の隔壁522とによって囲まれた部分がキャビティ(インク室)520である。キャビティ520はノズル518に対応して設けられているため、キャビティ520の数とノズル518の数とは同じである。キャビティ520には、1対の隔壁522間に位置する供給口530を介して、液だまり529から液状材料35が供給される。
【0026】
振動板526上には、それぞれのキャビティ520に対応して、振動子524が位置する。振動子524は、駆動素子としてのピエゾ素子(圧電素子)524Cと、ピエゾ素子524Cを挟む1対の電極524A、524Bとを含む。この1対の電極524A、524Bとの間に駆動電圧(信号)を印加する(与える)ことで、ピエゾ素子524Cの振動に追従して振動板526が振動することにより、対応するノズル518から液状材料35が液滴31として吐出される。
【0027】
この場合、前記駆動電圧(例えば、駆動電圧の大きさ等)を調整することにより、ノズル518から吐出される液状材料35の吐出動作1回当りの吐出量(液滴量)を調整することができるようになっている。
なお、ノズル518からZ軸方向に液状材料35が吐出されるように、ノズル518の形状が調整されている。
【0028】
制御手段512は、複数の振動子524のそれぞれに互いに独立に駆動電圧を印加するように構成されていてもよい。つまり、ノズル518から吐出される液状材料35の吐出動作1回当りの吐出量が、制御手段512からの信号、すなわち、駆動電圧に応じてノズル518毎に制御されてもよい。また、制御手段512は、塗布走査の間に吐出動作を行うノズル518と、吐出動作を行わないノズル518とを設定することでもできる。
【0029】
なお、1つのノズル518と、ノズル518に対応するキャビティ520と、キャビティ520に対応する振動子524とを含んだ部分により吐出部が構成される。この吐出部は、1つの液滴吐出ヘッド514において、ノズル518の数と同じ数だけ存在することとなる。
上記のような液滴吐出装置500を用いて、第1の基材21上に液状材料を液滴31として供給することにより、第1の基材21の接合面(上面)210の所望の位置に液状材料を供給することができる。これにより、膜形成領域41の形状に対応して第1の基材21上に液状被膜30を、ひいては接合膜3を確実に形成することができる。すなわち、第1の基材21に、所定形状にパターニングされた液状被膜30(接合膜3)を確実に形成することができる。
【0030】
なお、液滴吐出ヘッド514は、駆動素子として、上述したピエゾ素子の代わりに静電アクチュエータを用いるものでもよい。また、液滴吐出ヘッド514は、駆動素子として電気熱変換素子を用い、この電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用して液状材料35を吐出するバブルジェット方式(「バブルジェット」は登録商標)の構成であってもよい。
本発明の接合方法において、以上のような液滴吐出装置を用いて、所定形状にパターニングされた接合膜を第1の基材21上に形成することができ、この第1の基材21上に形成された接合膜3を、第2の基材22上に転写することにより、第2の基材22と第3の基材23とを接合する。
【0031】
以下、本発明の接合方法について説明する。
<接合方法>
本発明の接合方法は、シリコーン材料を含有する液状材料35に対する撥液性を少なくとも表面付近に有する第1の基材21と、接合膜3を介して互いに接合する第2の基材22および第3の基材23とを用意する第1の工程と、第1の基材21の撥液性が付与されている面側に、液状材料35を塗布して、所定形状にパターニングされた液状被膜30を形成した後、乾燥することにより、前記所定形状にパターニングされた接合膜3を得る第2の工程と、接合膜3にエネルギーを付与することにより、接合膜3の表面付近に接着性を発現させ、この接合膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とを接合させた後、第1の基材21と第2の基材22とを離間することにより、接合膜3を第1の基材21から第2の基材22に転写する第3の工程と、転写された接合膜3にエネルギーを付与することにより、接合膜3の表面付近に接着性を発現させ、この接合膜3を介して第2の基材22と第3の基材23とを接合することにより、これら同士が接合された接合体1を得る第4の工程とを有するものである。
【0032】
かかる方法によれば、第1の基材21の目的とする領域に対して高い成膜精度で前記所定形状にパターニングされた、シリコーン材料を原材料とする接合膜3を形成することができ、この接合膜3を第2の基材22に転写することができるため、この接合膜3の表面付近に発現した接着性により、2つの基材22、23同士を強固に接合することができる。
なお、本明細書中で、「所定形状」とは、接合膜3による接合を必要とする部位に対応した形状のことを言い、本実施形態では、後述する第2の基材22および第3の基材23における接合面220、230の膜形成領域41に対応した形状のことを言う。
【0033】
以下、この本発明の接合方法の第1実施形態を、工程ごとに詳述する。
<<第1実施形態>>
図3〜図5は、本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)、図6は、接合膜にプラズマを接触させる際に用いる大気圧プラズマ装置を示す概略図である。なお、以下の説明では、図3〜図6中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
本実施形態の接合方法は、第1の基材21上に、所定形状にパターニングされて形成した接合膜3を、第2の基材22上に転写した後、この第2の基材22と第3の基材23とを接合膜3を介して接合する接合方法である。
【0034】
[1]まず、表面付近に撥液性を有する第1の基材21と、接合膜3を介して互いに接合する第2の基材22および第3の基材23とを用意する(第1の工程)。
第1の基材21は、表面付近に撥液性を有するものであれば、如何なる構成のものであってもよく、例えば、図3(a)に示すように、母材212の上面に、撥液性を有する撥液膜211が設けられたものが挙げられる。
【0035】
また、撥液膜211は、フッ素系材料で構成される膜や、フッ素原子を含有するカップリング剤で構成される単分子膜等が挙げられる。
フッ素系材料のうち、フッ素系有機材料の具体例としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、パーフルオロエチレン−プロペン共重合体(FEP)およびエチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)等が挙げられる。一方、フッ素系無機材料の具体例としては、例えば、フッ化チタン酸カリウム、ケイフッ化カリウム、フッ化ジルコン酸カリウムおよびケイフッ酸等が挙げられる。
【0036】
また、フッ素原子を含有するカップリング剤としては、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0037】
母材212の構成材料としては、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリブテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アラミド系樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等の樹脂系材料、Fe、Ni、Co、Cr、Mn、Zn、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Al、W、Ti、V、Mo、Nb、Zr、Pr、Nd、Smのような金属、またはこれらの金属を含む合金、炭素鋼、ステンレス鋼、インジウム錫酸化物(ITO)、ガリウムヒ素のような金属系材料、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコンのようなシリコン系材料、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス系材料、アルミナ、ジルコニア、MgAl、フェライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのようなセラミックス系材料、グラファイトのような炭素系材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
【0038】
また、第2の基材22および第3の基材23は、互いに接合すべきものが適宜選択され、特に限定されるものではないが、その構成材料としては、前述した母材212の構成材料と同様のものが挙げられる。
さらに、第2の基材22および第3の基材23は、それぞれ、その表面に、Niめっきのようなめっき処理、クロメート処理のような不働態化処理、または窒化処理等を施したものであってもよい。
【0039】
なお、第2の基材22の構成材料と第3の基材23の構成材料とは、それぞれ同じでも、異なっていてもよい。
また、第2の基材22の熱膨張率と第3の基材23の熱膨張率は、ほぼ等しいのが好ましい。これらの熱膨張率がほぼ等しければ、第2の基材22と第3の基材23とを接合した際に、その接合界面に熱膨張に伴う応力が発生し難くなる。その結果、最終的に得られる接合体1において、剥離を確実に防止することができる。
【0040】
なお、後に詳述するが、第2の基材22の熱膨張率と第3の基材23の熱膨張率が互いに異なる場合でも、後述する工程において、第2の基材22と第3の基材23とを接合する際の条件を最適化することにより、これらを高い寸法精度で強固に接合することができる。
また、2つの基材22、23は、互いに剛性が異なるのが好ましい。これにより、2つの基材22、23をより強固に接合することができる。
【0041】
また、2つの基材22、23のうち、少なくとも一方の構成材料は、樹脂材料であるのが好ましい。樹脂材料は、その柔軟性により、2つの基材22、23を接合した際に、その接合界面に発生する応力(例えば、熱膨張に伴う応力等)を緩和することができる。このため、接合界面が破壊し難くなり、結果的に、接合強度の高い接合体1を得ることができる。
【0042】
なお、上記のような観点から、2つの基材22、23のうちの少なくとも一方は、可撓性を有しているのが好ましい。これにより、接合体1の接合強度のさらなる向上を図ることができる。さらに、2つの基材22、23の双方が可撓性を有している場合には、全体として可撓性を有し、機能性の高い接合体1が得られる。
また、各基材22、23の形状は、それぞれ、接合膜3を支持する面を有するような形状であればよく、例えば、板状(層状)、塊状(ブロック状)、棒状等とされる。
【0043】
なお、本実施形態では、図3〜5に示すように、各基材22、23がそれぞれ板状をなしている。これにより、各基材22、23は撓み易くなり、2つの基材22、23を重ね合わせたときに、互いの形状に沿って十分に変形し得るものとなる。このため、2つの基材22、23を重ね合わせたときの密着性が高くなり、最終的に得られる接合体1における接合強度が高くなる。
また、各基材22、23が撓むことによって、接合界面に生じる応力を、ある程度緩和する作用が期待できる。
この場合、各基材22、23の平均厚さは、特に限定されないが、0.01〜10mm程度であるのが好ましく、0.1〜3mm程度であるのがより好ましい。
【0044】
次に、必要に応じて、第2の基材22および第3の基材23の接合面220および接合面230に接合される接合膜3との密着性を高める表面処理を施す。これにより、接合面220および接合面230が清浄化および活性化され、接合面220および接合面230に対して接合膜3が化学的に作用し易くなる。その結果、後述する工程において、接合面220および接合面230に対して接合膜3を接合したとき、接合面220および接合面230と接合膜3との接合強度を高めることができる。
【0045】
この表面処理としては、特に限定されないが、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。
なお、表面処理を施す第2の基材22および第3の基材23が、樹脂材料(高分子材料)で構成されている場合には、特に、コロナ放電処理、窒素プラズマ処理等が好適に用いられる。
【0046】
また、表面処理として、特にプラズマ処理または紫外線照射処理を行うことにより、接合面220および接合面230を、より清浄化および活性化することができる。その結果、接合面220および接合面230と接合膜3との接合強度を特に高めることができる。
また、第2の基材22および第3の基材23の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜3との接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる第2の基材22および第3の基材23の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
【0047】
このような材料で構成された第2の基材22および第3の基材23は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、水酸基が結合している。したがって、このような酸化膜で覆われた第2の基材22および第3の基材23を用いることにより、上記のような表面処理を施さなくても、第2の基材22および第3の基材23の接合面220および接合面230と接合膜3との接合強度を高めることができる。
【0048】
なお、この場合、第2の基材22および第3の基材23の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合膜3を形成する膜形成領域41に位置する接合面220および接合面230付近が上記のような材料で構成されていればよい。
また、表面処理に代えて、第2の基材22および第3の基材23の接合面220および接合面230に、あらかじめ、被覆層を形成しておいてもよい。
【0049】
この被覆層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、接合膜3との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような被覆層上に接合膜3を接合することにより、最終的に、信頼性の高い接合体1を得ることができる。
かかる被覆層の構成材料としては、例えば、アルミニウム、チタンのような金属系材料、金属酸化物、シリコン酸化物のような酸化物系材料、金属窒化物、シリコン窒化物のような窒化物系材料、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボンのような炭素系材料、シランカップリング剤、チオール系化合物、金属アルコキシド、金属−ハロゲン化合物のような自己組織化膜材料、樹脂系接着剤、樹脂フィルム、樹脂コーティング材、各種ゴム材料、各種エラストマーのような樹脂系材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
また、これらの各材料で構成された被覆層の中でも、酸化物系材料で構成された被覆層によれば、第2の基材22および第3の基材23と接合膜3との間の接合強度を特に高めることができる。
なお、上記のような表面処理および被覆層の形成は、必要に応じて行えばよく、特に高い接合強度を必要としない場合には、省略することができる。
【0051】
[2]次に、第1の基材21の撥液膜211が形成されている面側に、シリコーン材料を含有する液状材料35を塗布して、所定形状にパターニングされた液状被膜30を形成した後、乾燥することにより、前記所定形状にパターニングされた接合膜3を得る(第2の工程)。
【0052】
以下、本工程について詳述する。
[2−1]まず、シリコーン材料を含有する液状材料35を、例えば、前述した液滴吐出装置500による液滴吐出法を用いて液滴31として、第1の基材21の撥液膜211が形成されている側の面である接合面210上に供給する。
これにより、図3(a)に示すような接合面210の膜形成領域41に、接合面210の非膜形成領域42に供給することなく、液滴31を選択的に供給することができる。その結果、図3(b)に示すように、第1の基材21上に、膜形成領域41の形状、すなわち所定形状にパターニングされた液状被膜30が形成される。
【0053】
ここで、本実施形態では、接合面220の膜形成領域41に液状材料を選択的に塗布(供給)する方法として、液滴吐出装置500を用いて液状材料35を液滴31として供給する液滴吐出法が用いられる。
液滴吐出法を用いて、液状材料を位置選択的に供給することにより、液状材料に無駄が生じるのを確実に防止することができる。また、例えば、基板上にレジスト層を形成して、これをマスクとして用いて膜をパターニングする場合と比較して、接合膜3を形成するまでの工程数の削減、時間の短縮および製造コストの削減を図ることができる。
【0054】
さらに、本実施形態では、液滴吐出法は、液滴吐出ヘッド514としてインクジェットヘッドを備えるインクジェット法が用いられる。インクジェット法によれば、目的とする領域(位置)に、液状材料を液滴31として、優れた位置精度で供給することができる。また、ピエゾ素子524Cの振動数および液状材料の粘度等を適宜設定することにより、液滴31のサイズ(大きさ)を、比較的容易に調整できることから、液滴31のサイズを小さくすれば、たとえ膜形成領域41の形状が微細なものであったとしても、膜形成領域41の形状に対応した液状被膜30を確実に形成することができる。
【0055】
液状材料の粘度(25℃)は、通常、0.5〜200mPa・s程度であるのが好ましく、3〜20mPa・s程度であるのがより好ましい。液状材料の粘度をかかる範囲とすることにより、液滴の吐出をより安定的に行うことができるとともに、微細な形状の膜形成領域41を描画し得る大きさの液滴31を吐出することができる。さらに、この液状材料で構成される液状被膜30を次工程[2−2]で乾燥させた際に、接合膜3を形成するのに十分な量のシリコーン材料を液状材料中に含有したものとすることができる。
【0056】
また、液状材料の粘度をかかる範囲内とすれば、具体的には、液滴31の量(液状材料の1滴の量)を、平均で、0.1〜40pL程度に、より現実的には1〜30pL程度に設定し得る。これにより、接合面220に供給された際の液滴31の着弾径が小さなものとなることから、微細な形状の接合膜3をも確実に形成することができる。
さらに、接合面220の膜形成領域41に供給する液滴31の供給量を適宜設定することにより、形成される接合膜3の厚さの制御を比較的容易に行うことができる。
【0057】
また、本発明では、液状材料35が液滴31として塗布(供給)される接合面210には撥液性が付与されている。これにより、接合面210上に塗布された液滴31は、接合面210上に供給された際に、接合面210上での濡れ広がりが的確に抑制または防止された状態で供給される。そのため、液状被膜30は、優れたパターニング精度で、膜形成領域41の形状を維持した状態で接合面210上に形成されることとなる。
【0058】
液状被膜30の接合面210に対する濡れ性は、例えば、液状被膜30の接合面210に対する接触角で表すことができ、その接触角は、好ましくは80〜110°程度、より好ましく85〜100°程度とされる。かかる関係を満足するように液状材料35の種類および撥液膜211の種類を適宜選択することにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0059】
また、液滴31として吐出される液状材料は、前述のようにシリコーン材料を含有するものであるが、シリコーン材料単独で、液状をなし目的とする粘度範囲である場合、シリコーン材料をそのまま液状材料として用いることができる。また、シリコーン材料単独で、固形状または高粘度の液状をなす場合には、液状材料として、シリコーン材料の溶液または分散液を用いることができる。
【0060】
シリコーン材料を溶解または分散するための溶媒または分散媒としては、例えば、アンモニア、水、過酸化水素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等を用いることができる。
【0061】
シリコーン材料は、液状材料中に含まれ、次工程[2−2]において、この液状材料を乾燥させることにより形成される接合膜3の主材料として構成するものである。
ここで、「シリコーン材料」とは、ポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物であり、通常、主骨格(主鎖)部分が主としてオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、その主骨格が少なくとも1つのシラノール基を備える化合物のことを言い、主鎖の途中から枝分かれする分枝状の構造を有するものであってもよく、主鎖が環状をなす環状体であってもよく、主鎖の末端同士が連結しない直鎖状のものであってもよい。
例えば、ポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物において、オルガノシロキサン単位は、その末端部では下記一般式(1)で表わされる構造単位を有し、連結部では下記一般式(2)で表わされる構造単位を有し、また、分枝部では下記一般式(3)で表わされる構造単位を有している。
【0062】
【化1】

[式中、各Rは、それぞれ独立して、置換または無置換の炭化水素基を表し、各Zは、それぞれ独立して、水酸基または加水分解基を表し、Xはシロキサン残基を表し、aは1〜3の整数を表し、bは0または1〜2の整数を表し、cは0または1を表す。]
【0063】
なお、シロキサン残基とは、酸素原子を介して隣接する構造単位が有するケイ素原子に結合しており、シロキサン結合を形成している置換基のことを表す。具体的には、−O−(Si)構造(Siは隣接する構造単位が有するケイ素原子)となっている。
このようなシリコーン材料において、ポリオルガノシロキサン骨格は、分枝状をなすもの、すなわち上記一般式(1)で表わされる構造単位、上記一般式(2)で表わされる構造単位および上記一般式(3)で表わされる構造単位で構成されているのが好ましい。この分枝状をなすポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物(以下、「分枝状化合物」と略すこともある。)は、主骨格(主鎖)部分が主としてオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる化合物であり、主鎖の途中でオルガノシロキサン単位の繰り返しが分枝するとともに、主鎖の末端同士が連結しないものである。
【0064】
この分枝状化合物を用いることにより、次工程[2−2]において、液状材料35中に含まれるこの化合物の分枝鎖同士が互いに絡まり合うようにして接合膜3が形成されることから、得られる接合膜3は特に膜強度に優れたものとなる。
なお、上記一般式(1)〜上記一般式(3)中、基R(置換または無置換の炭化水素基)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、ビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられる。さらに、これらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部または全部が、I)フッ素原子、塩素原子、臭素原子のようなハロゲン原子、II)グリシドキシ基のようなエポキシ基III)メタクリル基のような(メタ)アクリロイル基、IV)カルボキシル基、スルフォニル基のようなアニオン性基等で置換された基等が挙げられる。
【0065】
基Zが加水分解基である場合、この加水分解基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基等のケトオキシム基、アセトキシ基等のアシルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基等が挙げられる。
また、分枝状化合物は、その分子量が、1×10〜1×10程度のものであるのが好ましく、1×10〜1×10程度のものであるのがより好ましい。分子量をかかる範囲内に設定することにより、液状材料35の粘度を上述したような範囲内に比較的容易に設定することができる。
【0066】
このような分枝状化合物は、その化合物中において、シラノール基(水酸基)を複数有するものであるのが好ましい。すなわち、上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位において、基Zを複数有しており、これらの基Zが水酸基であるのが好ましい。これにより、分枝状化合物が有する水酸基とポリエステル樹脂が有する水酸基とを確実に結合させることができ、後述する、分枝状化合物とポリエステル樹脂とが脱水縮合反応することにより得られるポリエステル変性シリコーン材料を確実に合成することができる。さらに、次工程[2−2]において、液状被膜30を乾燥させて接合膜3を得る際に、シリコーン材料すなわち分枝状化合物中に残存しているシラノール基に含まれる水酸基同士が結合することとなり、得られる接合膜3の膜強度が優れたものとなる。
【0067】
また、シラノール基が有するシリコン原子に連結している炭化水素基は、フェニル基であるのが好ましい。すなわち、基Zが水酸基である上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位に存在する基Rは、フェニル基であるのが好ましい。これにより、シラノール基の反応性がより向上するため、隣接する分枝状化合物が有する水酸基同士の結合がより円滑に行われるようになる。また、分枝状化合物中のメチル基の少なくとも1つをフェニル基に置換して、得られる接合膜3中に、フェニル基が含まれる構成とすることにより、接合膜3をより膜強度に優れたものとし得るという利点も得られる。
【0068】
さらに、シラノール基が存在しないシリコン原子に連結している炭化水素基は、メチル基であるのが好ましい。すなわち、基Zが存在しない上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位に存在する基Rは、メチル基であるのが好ましい。このように、基Zが存在しない上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位に存在する基Rがメチル基である化合物は、比較的入手が容易で、かつ安価であるとともに、後工程
[3]および後工程[4]において、接合膜3にエネルギーを付与することにより、メチル基が容易に切断されて、その結果として、接合膜3に確実に接着性を発現させることができるため、分枝状化合物(シリコーン材料)として好適に用いられる。
以上のことを考慮すると、分枝状化合物としては、例えば、下記一般式(4)で表わされる化合物が好適に用いられる。
【0069】
【化2】

[式中、nは、それぞれ独立して、0または1以上の整数を表す。]
【0070】
さらに、上述した分枝状化合物は、比較的柔軟性に富む材料である。そのため、後工程
[4]において、接合膜3を介して第2の基材22と第3の基材23とを接合して接合体1を得る際に、例えば、第2の基材22と第3の基材23の各構成材料が互いに異なるものを用いる場合であったとしても、各基材22、23間に生じる熱膨張に伴う応力を確実に緩和することができる。これにより、最終的に得られる接合体1において、剥離が生じるのを確実に防止することができる。
【0071】
また、分枝状化合物は、耐薬品性に優れているため、薬品類等に長期にわたって曝されるような部材の接合に際して効果的に用いることができる。具体的には、例えば、樹脂材料を浸食し易い有機系インクが用いられる工業用インクジェットプリンタの液滴吐出ヘッドを製造する際に、接合膜3を用いて接合すれば、その耐久性を確実に向上させることができる。また、分枝状化合物は、耐熱性にも優れていることから、高温下に曝されるような部材の接合に際しても効果的に用いることができる。
さらに、上記のようなシリコーン材料は、ポリエステル変性シリコーン材料であるのが好ましい。
【0072】
ここで、本明細書中において、「ポリエステル変性シリコーン材料」とは、シリコーン材料と、ポリエステル樹脂とを脱水縮合反応させることにより得られたものである。
また、「ポリエステル樹脂」とは、飽和多塩基酸と多価アルコールとのエステル化反応により得られるものを言い、1分子中に少なくとも2つの水酸基を備えるものが好適に用いられる。
【0073】
このようなポリエステル樹脂を、上述したシリコーン材料と縮合反応させると、ポリエステル樹脂が有する水酸基とシリコーン材料が有するシラノール基(水酸基)とが脱水縮合反応し、これにより、シリコーン材料にポリエステル樹脂が連結されたポリエステル変性シリコーン材料が得られる。
飽和多塩基酸としては、特に限定されないが、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸およびアジピン酸等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
また、多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、飽和多塩基酸と多価アルコールとをエステル化反応させる際の、それぞれの含有量は、飽和多塩基酸が有するカルボキシル基よりも多価アルコールが有する水酸基よりも多くなるように設定する。これにより、合成されるポリエステル樹脂は、その1分子中において、少なくとも2つの水酸基を備えるものとなる。
【0075】
このようなポリエステル樹脂は、その分子中に、フェニレン基を有しているのが好ましい。かかる構成のポリエステル樹脂を含有するポリエステル変性シリコーン材料を用いて接合膜3を形成すると、形成される接合膜3は、ポリエステル樹脂中にフェニレン基が含まれることに起因して、特に優れた膜強度を発揮するものとなる。
以上のことを考慮すると、ポリエステル樹脂としては、例えば、下記一般式(5)で表わされる化合物が好適に用いられる。
【0076】
【化3】

[式中、nは、0または1以上の整数を表す。]
【0077】
上記のようなポリエステル樹脂をポリエステル変性シリコーン材料が備えているものであるとすると、ポリエステル変性シリコーン材料は、通常、螺旋構造をなしているポリオルガノシロキサン骨格から、ポリエステル樹脂が露出するような状態で存在していることとなる。そのため、次工程[2−2]において、液状被膜30を乾燥させて接合膜3を得る際に、隣接するポリエステル変性シリコーン材料が備えるポリエステル樹脂同士が互いに接触する機会が増大することとなる。その結果、ポリエステル変性シリコーン材料中において、ポリエステル樹脂同士が絡まり合ったり、これらが備える水酸基同士が脱水縮合して化学的に結合したりするため、得られる接合膜3の膜強度を確実に向上させることができる。
【0078】
また、後工程[4]において、接合膜3を介して第2の基材22と第3の基材23とを接合した際に、接合膜3と第2の基材22との界面および接合膜3と第3の基材23との界面において、ポリエステル樹脂が備えるケトン基と、各基材22、23が備える水酸基との間で水素結合が生じることから、かかる結合によっても、接合膜3は、第2の基材22の接合面220および第3の基材23の接合面230に対して、強固に接合されたものとなる。
【0079】
[2−2]次いで、第1の基材21上に供給された液状材料、すなわち、接合面210の膜形成領域41に選択的に形成された液状被膜30を乾燥する。これにより、図3(c)に示すように、膜形成領域41の形状(所定形状)に対応してパターニングされた接合膜3が形成される。
液状被膜30を乾燥させる際の温度は、25℃以上であるのが好ましく、25〜100℃程度であるのがより好ましい。
【0080】
また、乾燥させる時間は、0.5〜48時間程度であるのが好ましく、15〜30時間程度であるのがより好ましい。
かかる条件で液状被膜30を乾燥させることにより、次工程[3]および後工程[4]において、エネルギーを付与することにより接着性が好適に発現する接合膜3を確実に形成することができる。また、シリコーン材料として前記工程[2−1]で説明したようなシラノール基を有するもの、または、ポリエステル変性シリコーン材料を用いた場合には、これらの材料が有するシラノール基同士を、確実に結合させることができるため、形成される接合膜3を膜強度に優れたものとすることができる。
【0081】
さらに、乾燥させる際の雰囲気の圧力は、大気圧下であってもよいが、減圧下であるのが好ましい。具体的には、減圧の程度は、133.3×10−5〜1333Pa(1×10−5〜10Torr)程度であるのが好ましく、133.3×10−4〜133.3Pa(1×10−4〜1Torr)程度であるのがより好ましい。これにより、接合膜3の膜密度が緻密化して、接合膜3をより優れた膜強度を有するものとすることができる。
【0082】
以上のように、接合膜3を形成する際の条件を適宜設定することにより、形成される接合膜3の膜強度等を所望のものとすることができる。
接合膜3の平均厚さは、10〜10000nm程度であるのが好ましく、50〜5000nm程度であるのがより好ましい。供給する液状材料の量を適宜設定して、形成される接合膜3の平均厚さを前記範囲内とすることにより、第2の基材22と第3の基材23とを接合した接合体の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、より強固に接合することができる。
【0083】
すなわち、接合膜3の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜3の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、接合体の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
さらに、接合膜3の平均厚さをかかる範囲とすることにより、接合膜3がある程度弾性に富むものとなることから、後工程[4]において、第2の基材22と第3の基材23とを接合する際に、接合膜3と接触させる第3の基材23の接合面230にパーティクル等が付着していても、このパーティクルを接合膜3で取り囲むようにして接合膜3と接合面230とが接合することとなる。そのため、このパーティクルが存在することによって、接合膜3と接合面230との界面における接合強度が低下したり、この界面において剥離が生じたりするのを的確に抑制または防止することができる。
【0084】
[3]次に、接合膜3にエネルギーを付与することにより、接合膜3の表面付近に接着性を発現させ、この接合膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とを接合させた後、第1の基材21と第2の基材22とを離間することにより、接合膜3を第1の基材21から第2の基材22に転写する(第3の工程)。
【0085】
以下、本工程について詳述する。
[3−1]まず、接合面210の膜形成領域41に形成された接合膜3の表面32に対してエネルギーを付与する。
接合膜3にエネルギーを付与すると、この接合膜3では、表面32付近の分子結合の一部が切断し、表面32が活性化されることに起因して、表面32付近に第2の基材22に対する接着性が発現する。
【0086】
このような状態の接合膜3は、第2の基材22と、化学的結合に基づいて強固に接合可能なものとなる。
ここで、本明細書中において、表面32が「活性化された」状態とは、上述のように接合膜3の表面32の分子結合の一部、具体的には、例えば、ポリジメチルシロキサン骨格が備えるメチル基が切断されて、接合膜3中に終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)が生じた状態の他、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、さらに、これらの状態が混在した状態を含めて、接合膜3が「活性化された」状態と言うこととする。
【0087】
接合膜3に付与するエネルギーは、いかなる方法を用いて付与するものであってもよいが、例えば、接合膜3にエネルギー線を照射する方法、接合膜3を加熱する方法、接合膜3に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法、接合膜3をプラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、接合膜3をオゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。これにより、接合膜3の表面を効率よく活性化させることができる。
【0088】
これらの中でも、接合膜3に対するエネルギーの付与は、図3(d)に示すように、特に、接合膜3をプラズマに曝す方法を用いるのが好ましい。
ここで、接合膜3にエネルギーを付与する方法として、接合膜3をプラズマに曝す方法が好ましく用いられる理由を説明するのに先立って、エネルギー線として紫外線を選択し、接合膜3に紫外線を照射する場合における問題点について説明する。
【0089】
A:まず、接合膜3の表面32の活性化に長時間(例えば、1分〜数十分)を要する。また、紫外線照射を短時間にした場合、第2の基材22と第3の基材23とを接合する工程において、その接合に長時間(数十分以上)を要する。すなわち、接合体1を得るのに長時間を要する。
B:また、紫外線を用いた場合、この紫外線は、接合膜3を厚さ方向に透過し易い。このため、基材(本実施形態では、第1の基材21)の構成材料(例えば、樹脂材料)等によっては、基材の接合膜3との界面(接触面)において劣化が生じ、接合膜3が基材から剥離し易くなる。
【0090】
さらに、紫外線は、接合膜3の厚さ方向に透過する際に、接合膜3全体に作用し、その全体において、例えば、ポリジメチルシロキサン骨格が備えるメチル基が切断、除去される。すなわち、接合膜3中における有機成分の量が極端に低下し、その無機化が進行する。このため、有機成分の存在に起因する接合膜3の柔軟性が全体として低下し、得られる接合体1では、接合膜3の層内剥離が生じ易くなる。
【0091】
C:さらに、接合された接合体1を、第2の基材22を第3の基材23から剥離して、各基材22、23をそれぞれ分別してリサイクルや再利用に用いる場合、この操作は、接合体1に対して、剥離用エネルギーを付与することにより各基材22、23同士を剥離し得る。このとき、例えば、接合膜3中に残存するメチル基(有機成分)がポリジメチルシロキサン骨格から切断、除去され、切断された有機成分がガスとなる。このガス(ガス状の有機成分)は、接合膜3にへき乖を生じさせ、接合膜3が分割される。
【0092】
しかしながら、紫外線を照射した場合、前述のように、接合膜3全体の無機化が進行するため、剥離用エネルギーを付与した場合でも、ガスになる有機成分が極めて少なく、接合膜3にへき乖が生じ難いという問題がある。
これに対して、接合膜3の表面32をプラズマに曝した場合では、接合膜3の表面32付近において、選択的に、この接合膜3を構成する材料の分子結合の一部、例えば、ポリジメチルシロキサン骨格が備えるメチル基が切断される。
【0093】
なお、このプラズマによる分子結合の切断は、プラズマの荷電に基づく化学的な作用のみならず、プラズマのペニング効果に基づく物理的な作用によって引き起こされるため、極めて短時間で生じる。したがって、接合膜3を、極めて短時間(例えば、数秒程度)で活性化させることが可能であり、結果として、接合体1を短時間で製造することができる。
【0094】
また、プラズマは、接合膜3の表面32に選択的に作用し、その内部にまで影響を及ぼし難い。このため、分子結合の切断は、接合膜3の表面32付近で選択的に生じる。すなわち、接合膜3は、その表面32付近で選択的に活性化される。しかがって、紫外線を用いて接合膜3を活性化させる場合の不都合(前述したようなBおよびCの不都合)が生じ難い。
【0095】
このように、接合膜3の活性化にプラズマを用いることにより、接合体1において、接合膜3の層内剥離が生じ難く、第2の基材22を第3の基材23から剥離する場合には、この剥離操作を確実に行うことができる。
また、紫外線照射により接合膜3を活性化させる場合、照射する紫外線の強度に依存する接合膜3の活性化の程度の変化が極めて大きい。このため、第2の基材22と第3の基材23との接合に適した程度に接合膜3を活性化させるには、紫外線照射の厳密な条件管理が必要である。また、厳密な管理をしない場合、得られる接合体1間における、第1の基材21と第2の基材22との接合強度のバラつきが生じる。
【0096】
これに対して、プラズマにより接合膜3を活性化させる場合、接触させるプラズマの濃度に依存する接合膜3の活性化の程度の変化は穏やかである。したがって、第2の基材22と第3の基材23との接合に適した程度に接合膜3を活性化させるのに、プラズマを発生させる条件を厳密に管理する必要がない。換言すれば、接合膜3の活性化にプラズマを用いる場合、接合体1の製造条件の許容範囲が広い。また、厳密な管理をしなくとも、得られる接合体1間において、第2の基材22と第3の基材23との接合強度のバラつきが生じ難い。
【0097】
さらに、紫外線照射により接合膜3を活性化させる場合、接合膜3の活性化すなわち接合膜3中の有機物の脱離に伴って、接合膜3自体が収縮(特に、膜厚の低下)するという問題がある。接合膜3が収縮した場合、第2の基材22と第3の基材23とを高い接合強度で接合することが困難となる。
これに対して、プラズマにより接合膜3を活性化させる場合、前述したように、接合膜3の表面付近が選択的に活性化されるため、接合膜3の収縮はないか極めて少ない。したがって、接合膜3を比較的薄く形成した場合であっても、第2の基材22と第3の基材23とを高い接合強度で接合することができる。また、この場合、高い寸法精度の接合体1を得ることができるとともに、接合体1の薄型化を図ることも可能である。
【0098】
以上のように、プラズマにより接合膜3を活性化させる場合には、紫外線により接合膜3を活性化させる場合に比べて、多くのメリットがある。
また、接合膜3に対するプラズマの接触は、減圧下で行うようにしてもよいが、大気圧下において行うのが好ましい。すなわち、接合膜3を大気圧プラズマで処理するのが好ましい。大気圧プラズマ処理によれば、接合膜3の周囲が減圧状態とならないので、プラズマの作用により、例えば、ポリエステル変性シリコーン材料のポリジメチルシロキサン骨格が備えるメチル基を切断、除去する際(接合膜3の活性化の際)に、この切断が不要に進行するのを防止することができる。
かかる大気圧下におけるプラズマ処理は、例えば、図6に示す大気圧プラズマ処理装置を用いて行うことができる。
【0099】
図6は、大気圧プラズマ装置の構成を示す概略図である。
図6に示す大気圧プラズマ装置1000は、接合膜3が形成された第1の基材21(以下、単に「被処理基板W」と言う。)を搬送する搬送装置1002と、搬送装置1002の上方に設置されたヘッド1010とを備えている。
この大気圧プラズマ装置1000では、ヘッド1010が備える印加電極1015と対向電極1019との間に、プラズマが発生するプラズマ発生領域pが形成される。
【0100】
以下、各部の構成について説明する。
搬送装置1002は、被処理基板Wを積載可能な移動ステージ1020を有している。この移動ステージ1020は、搬送装置1002が有する移動手段(図示せず)の作動により、x軸方向に移動することができる。
なお、移動ステージ1020は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属材料で構成されている。
【0101】
ヘッド1010は、ヘッド本体1101と、印加電極1015と、対向電極1019とを有している。
ヘッド1010には、移動ステージ1020(搬送装置1002)の上面とヘッド1010の下面1103との間隙1102に、プラズマ化された処理ガスGを供給するガス供給流路1018が設けられている。
【0102】
ガス供給流路1018は、ヘッド1010の下面1103に形成された開口部1181で開口している。また、図6に示すように、下面1103の左側には、段差が形成されている。これにより、ヘッド本体1101の左側部分と移動ステージ1020との間隙1104が、間隙1102よりも小さく(狭く)なっている。このため、プラズマ化された処理ガスGが間隙1104に入り込むのを抑制または防止されて、x軸正方向に優先的に流れるようになっている。
【0103】
なお、ヘッド本体1101は、例えば、アルミナ、石英等の誘電体材料で構成されている。
ヘッド本体1101には、ガス供給流路1018を挟むように、印加電極1015と対向電極1019とが対抗して設置され、これにより一対の平行平板型電極が構成されている。これらのうち、印加電極1015は高周波電源1017に電気的に接続され、対向電極1019は接地されている。
【0104】
これら印加電極1015および対向電極1019は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属材料で構成されている。
このような大気圧プラズマ装置1000を用いて、被処理基板Wをプラズマ処理する場合、まず、印加電極1015と対向電極1019との間に電圧を印加して、電界Eを発生させる。この状態で、ガス供給流路1018に、処理ガスGを流入させる。このとき、ガス供給流路1018に流入した処理ガスGは、電界Eの作用により放電してプラズマ化される。このプラズマ化された処理ガスGは、下面1103側の開口部1181から、間隙1102内に供給される。これにより、プラズマ化された処理ガスGが被処理基板Wに設けられた接合膜3の表面32に接触して、プラズマ処理が施される。
【0105】
かかる大気圧プラズマ装置1000を用いることにより、容易かつ確実に、接合膜3にプラズマを接触させ、接合膜3を活性化させることができる。
ここで、印加電極1015と移動ステージ1020(被処理基板W)と間の距離、すなわち、間隙1102高さ(図6中、h1で示す長さ)は、高周波電源1017の出力や、被処理基板Wに施すプラズマ処理の種類等を考慮して適宜決定されるが、0.5〜10mm程度であるのが好ましく、0.5〜2mm程度であるのがより好ましい。これにより、接合膜3にプラズマを接触させて、接合膜3をより確実に活性化させることができる。
【0106】
また、印加電極1015と対向電極1019との間に印加する電圧は、1.0〜3.0kVp−p程度であるのが好ましく、1.0〜1.5kVp−p程度であるのがより好ましい。これにより、印加電極1015と移動ステージ1020と間に電界Eをより確実に発生させることができ、ガス供給流路1018に供給された処理ガスGを確実にプラズマ化させることができる。
【0107】
高周波電源1017の周波数(印加する電圧の周波数)は、特に限定されないが、10〜50MHz程度であるのが好ましく、10〜40MHz程度であるのがより好ましい。
処理ガスGの種類としては、特に限定されないが、例えば、ヘリウムガス、アルゴンガスのような希ガス、酸素ガス等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、処理ガスGには、希ガスを主成分とするガスを用いるのが好ましく、特にヘリウムガスを主成分とするガスを用いるのが好ましい。
【0108】
すなわち、処理に用いるプラズマは、ヘリウムガスを主成分とするガスをプラズマ化したものであるのが好ましい。ヘリウムガスを主成分とするガス(処理ガスG)は、プラズマ化の際にオゾンを発生させ難く、このため、接合膜3の表面32のオゾンによる変質(酸化)を防止することができる。その結果、接合膜3の活性化の程度が低下するのを抑制すること、すなわち、接合膜3を確実に活性化させることができる。さらに、ヘリウムガスのプラズマは、前述したペニング効果が極めて高く、接合膜3の活性化を短時間でかつ確実に行うことができる観点からも好ましい。
【0109】
この場合、ヘリウムガスを主成分とするガスのガス供給流路1018への供給速度は、1〜20SLM程度であるのが好ましく、5〜15SLM程度であるのがより好ましい。これにより、接合膜3の活性化の程度を制御し易くなる。
また、このガス(処理ガスG)中のヘリウムガスの含有量は、85vol%以上が好ましく、90vol%以上(100%も含む)がより好ましい。これにより、前述した効果をさらに顕著に発揮させることができる。
また、移動ステージ1020の移動速度は、特に限定されないが、1〜20mm/秒程度であるのが好ましく、3〜6mm/秒程度であるのがより好ましい。このような速度でプラズマを接合膜3に接触させることにより、短時間であるにもかかわらず、接合膜3を十分かつ確実に活性化させることができる。
【0110】
[3−2]次に、図4(a)に示すように、接合膜3と第2の基材22とが密着するように、接合膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とを貼り合わせる。これにより、図4(b)に示すように、前記工程[3−1]において、接合膜3の表面32に第2の基材22に対する接着性が発現していることから、接合膜3と第2の基材22の接合面220とが化学的に結合する。
【0111】
ここで、本工程において、接合膜3と第2の基材22とを接合するメカニズムについて説明する。
例えば、第2の基材22の接合面220に水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、第1の基材21に形成された接合膜3と、第2の基材22の接合面220とが接触するように、これらを貼り合わせたとき、接合膜3の表面32に存在する水酸基と、第2の基材22の接合面220に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、第1の基材21と第2の基材22とが接合されると推察される。
【0112】
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合を伴って表面から切断される。その結果、接合膜3と第2の基材22との接触界面では、水酸基が結合していた結合手同士が結合する。これにより、接合膜3と第2の基材22とがより強固に接合されると推察される。
また、第1の基材21の接合膜3の表面や内部、および、第2の基材22の接合面220や内部に、それぞれ終端化されていない結合手すなわち未結合手(ダングリングボンド)が存在している場合、第1の基材21と第2の基材22とを貼り合わせた時、これらの未結合手同士が再結合する。この再結合は、互いに重なり合う(絡み合う)ように複雑に生じることから、接合界面にネットワーク状の結合が形成されることとなる。これにより、接合膜3と第2の基材22とが特に強固に接合される。
【0113】
なお、前記工程[3−1]で活性化された接合膜3の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、前記工程[3−1]の終了後、できるだけ早く本工程[3−2]を行うようにするのが好ましい。具体的には、前記工程[3−1]の終了後、60分以内に本工程[3−2]を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜3の表面が十分な活性状態を維持しているので、接合膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とを貼り合わせたとき、接合膜3と第2の基材22との間に十分な接合強度を得ることができる。
【0114】
換言すれば、活性化させる前の接合膜3は、シリコーン材料を乾燥させて得られた接合膜であるため、化学的に比較的安定であり、耐候性に優れている。このため、活性化させる前の接合膜3は、長期にわたる保存に適したものとなる。したがって、そのような接合膜3を備えた第1の基材21を多量に製造または購入して保存しておき、必要な個数のみに前記工程[3−1]に記載したエネルギーの付与を行うようにすれば、後述する接合体1の製造効率の観点から有効である。
【0115】
[3−3]次に、第1の基材21と第2の基材22とを離間する。
ここで、前述したように、接合膜3は、第1の基材21が備える撥液膜211上に形成されているため、第1の基材21との結合強度は極めて低い。これに対して、接合膜3は、第2の基材22の接合面220に対して化学的に結合しているため、第2の基材22との結合強度は、接合膜3と第1の基材21との接合強度と比較して極めて高くなる。
そのため、第1の基材21と第2の基材22とを離間すると、接合膜3は、第1の基材21と接合する接合面210から剥離するため、図4(c)に示すように、第1の基材21から第2の基材22に転写される。
【0116】
[4]次に、転写された接合膜3にエネルギーを付与することにより、接合膜3の表面付近に接着性を発現させ、この接合膜3を介して第2の基材22と第3の基材23とを接合することにより、これら同士が接合された接合体1を得る(第4の工程)。
以下、本工程について詳述する。
[4−1]まず、第1の基材21から第2の基材22に転写された接合膜3に対してエネルギーを付与する。
【0117】
ここで、接合膜3は、第1の基材21から第2の基材22に転写されているため、第1の基材21と接合していた側の面が、第2の基材22上で露出していることとなる。
接合膜3は、エネルギーが付与されると、その表面付近の分子結合の一部が切断し、表面が活性化されることに起因して、接着性が発現するものである。そのため、本工程にように、一度、他の基材(本実施形態では、第1の基材21)と接合していた面に対しても、再度、エネルギーを付与することにより、この面に接着性を発現させることができる。
接合膜3に付与するエネルギーは、いかなる方法を用いて付与するものであってもよいが、前記工程[3−1]で説明したのと同様に、図4(d)に示すように、特に、接合膜3をプラズマに曝す方法を用いるのが好ましい。
【0118】
[4−2]次に、第2の基材22に形成された接合膜3と第3の基材23とが密着するように、第2の基材22と第3の基材23とを貼り合わせる(図5(a)参照)。これにより、前記工程[4−1]において、接合膜3の表面に第3の基材23に対する接着性が発現していることから、接合膜3と第3の基材23の接合面230とが化学的に結合する。その結果、第2の基材22と第3の基材23とが、膜形成領域41において選択的に形成された接合膜3により部分的に接合され、図5(b)に示すような接合体1が得られる。
ここで、本工程において、接合膜3と第3の基材23とは、前記工程[3−2]で説明した接合膜3と第2の基材22とが接合するメカニズムと同一のメカニズムにより接合される。
【0119】
以上のように本発明の接合方法では、接合体1は、撥液膜211を有する第1の基材21上に予め接合膜3を形成し、この接合膜3を第2の基材22に転写した後、接合膜3を介して第2の基材22と第3の基材23とを接合することにより得られる構成となっている。そのため、第1の基材21上での液状材料の濡れ広がりが的確に防止または抑制されることから、膜形成領域41の形状が微細なものであったとしても、膜形成領域41の形状に対応した接合膜3を形成することができる。そして、接合膜3を第1の基材21から第2の基材22に転写できることから、この接合膜3を介して第2の基材22と第3の基材23とが接合された接合体1を確実に得ることができる。
【0120】
また、かかる構成の接合体1では、従来の接合方法で用いられていた接着剤のように、主にアンカー効果のような物理的結合に基づく接着ではなく、共有結合のような短時間で生じる強固な化学的結合に基づいて、2つの基材22、23が接合されている。このため、接合体1は短時間で形成することができ、かつ、極めて剥離し難く、接合ムラ等も生じ難いものとなる。
【0121】
また、このような接合方法によれば、高温(例えば、700℃以上)での熱処理を必要としないことから、耐熱性の低い材料で構成された第2の基材22および第3の基材23をも、接合に供することができる。
また、接合膜3を介して第2の基材22と第3の基材23とを接合しているため、各基材22、23の構成材料に制約がないという利点もある。
【0122】
以上のことから、本発明によれば、第2の基材22および第3の基材23の各構成材料の選択の幅をそれぞれ広げることができる。
また、第2の基材22の熱膨張率と第3の基材23の熱膨張率が互いに異なっている場合には、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
【0123】
具体的には、第2の基材22と第3の基材23との熱膨張率の差にもよるが、第2の基材22および第3の基材23の温度が25〜50℃程度である状態下で、第2の基材22と第3の基材23とを貼り合わせるのが好ましく、25〜40℃程度である状態下で貼り合わせるのがより好ましい。このような温度範囲であれば、第2の基材22と第3の基材23との熱膨張率の差がある程度大きくても、接合界面に発生する熱応力を十分に低減することができる。その結果、接合体1における反りや剥離等の発生を確実に抑制または防止することができる。
【0124】
また、この場合、具体的な第2の基材22と第3の基材23との間の熱膨張係数の差が、5×10−5/K以上あるような場合には、上記のようにして、できるだけ低温下で接合を行うことが特に推奨される。
また、本実施形態によれば、第2の基材22と第3の基材23とを接合する際に、これらが対向する面全体を接合するのではなく、接合膜3が選択的に形成された膜形成領域41において接合する。この接合の際、接合膜3を形成する膜形成領域41の大きさを適宜設定することのみで、接合される領域を簡単に選択することができる。これにより、例えば、第2の基材22と第3の基材23とが接合する接合膜3の面積や形状を制御して、接合体1の接合強度を容易に調整することができる。その結果、例えば、接合膜3を容易に剥離可能な接合体1が得られる。
【0125】
すなわち、接合体1の接合強度を調整可能であると同時に、接合体1を分離する際の強度(割裂強度)を調整可能である。
かかる観点から、容易に分離可能な接合体1を作製する場合には、接合体1の接合強度は、人の手で容易に分離可能な程度の大きさであるのが好ましい。これにより、接合体1を分離する際、装置等を用いることなく、簡単に行うことができる。
【0126】
また、第2の基材22と第3の基材23とが接合する接合膜3の面積や形状を適宜設定することにより、接合膜3に生じる応力の局所集中を緩和することができる。これにより、例えば、第2の基材22と第3の基材23との間で熱膨張率差が大きい場合でも、各基材22、23を確実に接合することができる。
さらに、本実施形態にかかる接合方法によれば、非膜形成領域42では、図5(c)に示すように、第2の基材22と第3の基材23との間に、接合膜3の厚さに相当する距離(高さ)の空間3Cが形成される。この空間3Cを活かすため、膜形成領域41の形状を適宜調整することにより、第2の基材22と第3の基材23との間に、閉空間や流路を形成したりすることができる。
【0127】
以上のようにして、図5(b)に示す接合体(本発明の接合体)1を得ることができる。
このようにして得られた接合体1は、第2の基材22と第3の基材23との間の接合強度が4MPa(40kgf/cm)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm)以上であるのがより好ましい。このような接合強度を有する接合体1は、その剥離を十分に防止し得るものとなる。また、本発明の接合方法によれば、第2の基材22と第3の基材23とが上記のような大きな接合強度で接合された接合体1を効率よく作製することができる。
なお、接合体1を得る際、または、接合体1を得た後に、この接合体1に対して、必要に応じ、以下の2つの工程([5A]および[5B])のうちの少なくとも1つの工程(接合体1の接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、接合体1の接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
【0128】
[5A] 得られた接合体1を、第2の基材22と第3の基材23とが互いに近づく方向に加圧する。
これにより、第2の基材22の表面および第3の基材23の表面に、それぞれ接合膜3の表面がより近接し、接合体1における接合強度をより高めることができる。
また、接合体1を加圧することにより、接合体1中の接合界面に残存していた隙間を押し潰して、接合面積をさらに広げることができる。これにより、接合体1における接合強度をさらに高めることができる。
【0129】
なお、この圧力は、第2の基材22および第3の基材23の各構成材料や各厚さ、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、第2の基材22および第3の基材23の各構成材料や各厚さ等に応じて若干異なるものの、0.2〜100MPa程度であるのが好ましく、1〜50MPa程度であるのがより好ましい。これにより、接合体1の接合強度を確実に高めることができる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、第2の基材22および第3の基材23の各構成材料によっては、各基材22、23に損傷等が生じるおそれがある。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、接合体1を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を図ることができる。
【0130】
[5B] 得られた接合体1を加熱する。
これにより、接合体1における接合強度をより高めることができる。
このとき、接合体1を加熱する際の温度は、室温より高く、接合体1の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、接合体1が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
【0131】
また、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、前記工程[5A]、[5B]の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、図5(c)に示すように、接合体1を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、接合体1の接合強度を特に高めることができる。
【0132】
<<第2実施形態>>
次に、本発明の接合方法の第2実施形態について説明する。
図7、図8は、本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図7、図8中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、接合方法の第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態にかかる接合方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0133】
本実施形態にかかる接合方法は、第1の基材21の接合面(表面)210の膜形成領域41に接合膜3が形成される他に、さらに第2の基材22および第3の基材23の接合面(表面)220および接合面230のほぼ全面にも接合膜3が形成されている。そして、第2の基材22および第3の基材23がそれぞれ備える接合膜3の表面付近に接着性を発現させ、これら接合膜3同士を、第1の基材21から転写された接合膜3を介して接触させることにより、第2の基材22と第3の基材23とを接合させて、接合体1を得た以外は前記第1実施形態と同様である。
【0134】
[1’]まず、前記工程[1]と同様の第1の基材21、第2の基材22および第3の基材23を用意する。
[2’]次に、前記工程[2]で説明したのと同様にして、第1の基材21の接合面220の膜形成領域41に所定形状にパターニングされた接合膜3を形成するとともに、第2の基材22および第3の基材23の接合面220および接合面230のほぼ全面にも接合膜3を形成する。
【0135】
[3’]次に、図7(a)に示すように、第2の基材22の接合面220に形成された接合膜3にエネルギーを付与することにより、第2の基材22に形成された接合膜3の表面付近に接着性を発現させる。
そして、図7(b)に示すように、各基材21、22に形成された接合膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とを接合させた後、第1の基材21と第2の基材22とを離間することにより、第1の基材21に形成されていた接合膜3を第1の基材21から第2の基材22に転写する(図7(c)参照。)。
【0136】
本実施形態のように、第1の基材21および第2の基材22の双方に接合膜3が設けられている構成とすることにより、接合膜3同士間での接合がより強固なものとなるため、第1の基材21に接合されていた接合膜3を、より確実に第1の基材21から剥離することができる。
なお、第2の基材22に形成された接合膜3にエネルギーを付与する方法としては、前記工程[3]で説明したのと同様の方法を用いることができ、接合膜3をプラズマに曝す方法が特に好ましく用いられる。
また、接合膜3に対するエネルギーの付与は、第2の基材22に形成された接合膜3ばかりでなく第1の基材21に形成された接合膜3に行うようにしてもよい。さらに、第2の基材22に形成された接合膜3へのエネルギーの付与を省略して、第1の基材21に形成された接合膜3に対して単独で行うようにしてもよい。
【0137】
[4’]次に、図8(a)に示すように、第3の基材23の接合面230に形成された接合膜3にエネルギーを付与することにより、第3の基材23に形成された接合膜3の表面付近に接着性を発現させる。
そして、図8(b)に示すように、各基材22、34に形成された接合膜3を介して第2の基材22と第3の基材23とを接合することにより、これら同士が接合された接合体1を得ることができる。
【0138】
本実施形態のように、第2の基材22および第3の基材23の双方に接合膜3が設けられている構成とすることにより、接合膜3同士間での接合がより強固なものとなるため、得られた接合体1は、より優れた接合強度を有するものとなる。
なお、接合膜3に対するエネルギーの付与は、第3の基材23に形成された接合膜3ばかりでなく第2の基材22に転写された接合膜3に行うようにしてもよい。さらに、第3の基材23に形成された接合膜3へのエネルギーの付与を省略して、第2の基材22に転写された接合膜3に対して単独で行うようにしてもよい
【0139】
以上のようにして接合体1を得ることができる。
なお、接合体1を得た後、この接合体1に対して、必要に応じ、前記第1実施形態の工程[5A]および[5B]のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。
例えば、図8(c)に示すように、接合体1を加圧しつつ、加熱することにより、接合体1の各基材22、23同士がより近接する。これにより、各接合膜3の界面における水酸基の脱水縮合や未結合手同士の再結合が促進される。その結果、接合膜3の一体化がより進行し、最終的には、ほぼ完全に一体化される。
また、本実施形態では、第2の基材22および第3の基材23の接合面(表面)220および接合面230のほぼ全面に接合膜3を形成する場合について説明したが、かかる場合に限定されず、接合面(表面)220および接合面230の何れか一方に前記接合膜3を形成するようにしてもよい。
【0140】
<有機発光装置>
次に、本発明の接合体を有機発光装置に適用した場合の実施形態について説明する。
図9は、本発明の接合体が適用されたアクティブマトリクス型の有機発光装置の実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図9中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0141】
図9に示す有機発光装置410は、全体形状が板状をなすTFT回路基板(基板)420と、このTFT回路基板420上に設けられ、発光色が赤色(R)の有機EL素子401R、緑色(G)の有機EL素子401Gおよび青色(B)の有機EL素子401Bと、各有機EL素子401R、401G、401B同士を区画する隔壁部435と、TFT回路基板420に対向する上基板(保護基板)409とを有している。
【0142】
なお、以下では、有機EL素子401R、401G、401Bを総称して有機EL素子401と言うことがある。また、有機EL素子401R、401G、401Bをそれぞれ構成する有機半導体層(有機半導体層積層体)407R、407G、407Bを総称して有機半導体層407と言うことがある。また、有機半導体層407R、407G、407Bをそれぞれ構成する発光層406R、406G、406Bを総称して発光層406と言うことがある。
【0143】
基板421は、有機発光装置410を構成する各部の支持体となるものであり、上基板409は、例えば、各有機EL素子(有機発光素子)401R、401G、401Bの上側に配置され、これらの素子を保護する保護膜等として機能するものである。
また、本実施形態の有機発光装置410は、上基板409(後述する陰極(第2の電極)408)側から光を取り出す構成(トップエミッション型)であるため、上基板409は、実質的に透明(無色透明、着色透明、半透明)とされ、一方、基板421は、特に、透明性は要求されない。
このような基板421には、各種ガラス材料基板および各種樹脂基板のうち比較的硬度の高いものが好適に用いられる。
【0144】
一方、上基板409には、各種ガラス材料基板および各種樹脂基板のうち透明なものが選択され、例えば、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料や、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートのような樹脂材料等を主材料として構成される基板を用いることができる。このような材料を用いることにより、上基板409が優れた光透過性を示すこととなり、よって、当該上基板409から光が確実に出射する(図9参照)。
【0145】
回路部422は、基板421上に形成された下地保護層423と、下地保護層423上に形成された駆動用TFT(スイッチング素子)424と、第1層間絶縁層425と、第2層間絶縁層426とを有している。
駆動用TFT424は、半導体層241と、半導体層241上に形成されたゲート絶縁層242と、ゲート絶縁層242上に形成されたゲート電極243と、ソース電極244と、ドレイン電極245とを有している。
【0146】
このような回路部422上に、各駆動用TFT424に対応して、それぞれ、有機EL素子401R、401G、401Bが設けられている。
また、図9に示すように、隣接する有機EL素子401R、401G、401B同士は、隔壁部(バンク)435により区画されている。この隔壁部435は、互いに対向配置された陽極403と陰極408との間に設けられ、これらの電極間の距離を規制する機能も有している。
【0147】
隔壁部435は、板状をなす第1隔壁部431と、第1隔壁部431上に設けられたブロック状をなす第2隔壁部432とで構成される。第1隔壁部431は、隣接する陽極403間をまたぐように設けられている。また、第1隔壁部431は、陽極403に接する(接合した)陽極接合部311と、TFT回路基板420の回路部422の上面に接する(接合した)基板接合部312とを有している。これにより、隔壁部435がTFT回路基板420に対して確実に固定される。第2隔壁部432は、主に有機半導体層407を包囲する部位である。この第2隔壁部432は、その両側面321が上方に向かって互いに接近するように傾斜した傾斜面となっている。また、第2隔壁部432の上面(頂面)322は、平面を構成している。
【0148】
このような構成の複数の隔壁部435は、全体として平面視での形状が格子状をなしている。これにより、各隔壁部435の内側に有機半導体層407(有機EL素子401)を設けることができ、このように設けられた有機半導体層407は、マトリクス状をなす。よって、有機EL素子401を有機発光装置410に好適に用いることができる。また、隔壁部435が格子状をなすことにより、隔壁部435の陰極408に対する接合箇所を比較的多く確保することができる。よって、陰極408との接合強度が高まり、有機発光装置410の長寿命化を確実に図ることができる。
第1隔壁部431および第2隔壁部432の構成材料は、耐熱性、撥液性、インク溶剤耐性、下地層との密着性等を考慮して選択される。
【0149】
具体的には、第1隔壁部431および第2隔壁部432の構成材料としては、例えば、SiOのようなシリコン酸化物(無機材料)や、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂のような樹脂材料(有機材料)が挙げられる。また、第1隔壁部431の構成材料と第2隔壁部432の構成材料とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
このような隔壁部435の高さは、陽極403、正孔輸送層405および発光層406の合計の厚さにもよるが、例えば、30〜500nm程度とするのが好ましい。かかる高さとすることにより、十分に隔壁(バンク)としての機能が発揮される。
【0150】
本実施形態では、各有機EL素子401R、401G、401Bの陽極403は、個別電極(画素電極)を構成し、各駆動用TFT424のドレイン電極245に配線427により電気的に接続されている。また、正孔輸送層405および発光層406R、406G、406Bを備える有機半導体層407R、407G、407Bとは、各有機EL素子401R、401G、401Bに対して個別に形成されており、陰極408は、共通電極とされている。
【0151】
そして、各有機EL素子401R、401G、401Bは、平面視において、マトリクス状に配置され、3つの有機EL素子401R、401G、401Bにより1画素が構成されている。
有機発光装置410では、個別に(複数)設けられた陽極403と、これらの陽極403を平面視で包含するように設けられた陰極408と、各陽極403にそれぞれ対応するように陰極408との間に設けられた有機半導体層407R、407G、407Bとで、有機EL素子401R、401G、401Bが構成されている。なお、本実施形態では、有機半導体層407R、407G、407Bは、陽極403側から正孔輸送層405と発光層406R、406G、406Bとがこの順で積層された積層体となっている。
【0152】
また、陰極408が全陽極403を包含するようなものであることにより、当該陰極408が全陽極403に対応する共通電極となり、個別に陰極408を設けるのが省略され、有機発光装置410の構造を簡単なものとすることができる。
陽極403は、TFT回路基板420の回路部422の上面(一方の面)に設けられ(積層され)、正孔輸送層405(有機半導体層407)に正孔を注入する電極である。
【0153】
この陽極403の構成材料(陽極材料)としては、導電性を有するものであればよく、特に限定されないが、仕事関数が大きく、導電性に優れた材料を用いるのが好ましい。
このような陽極材料としては、例えば、ITO(酸化インジウムと酸化亜鉛との複合物)、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の酸化物、Al、Ni、Co、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0154】
陽極403の平均厚さは、特に限定されないが、10〜200nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。陽極403の厚さが薄すぎると、陽極403としての機能が充分に発揮されなくなるおそれがあり、一方、陽極403が厚過ぎると、後述する正孔と電子との再結合を発光層406において行うことができず、有機EL素子401の発光効率等の特性が低下するおそれがある。
【0155】
なお、陽極材料には、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂材料を用いることもできる。
陰極408は、有機半導体層407(発光層406)に電子を注入する電極である。
この陰極408の構成材料(陰極材料)としては、有機発光装置410が陰極408側から光を取り出すトップエミッション構造であるため透光性を有する透明導電性材料が選択される。
【0156】
このような陰極材料としては、インジウムティンオキサイド(ITO)、フッ素含有インジウムティンオキサイド(FITO)、アンチモンティンオキサイド(ATO)、インジウムジンクオキサイド(IZO)、アルミニウムジンクオキサイド(AZO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、フッ素含有酸化スズ(FTO)、フッ素含有インジウムオキサイド(FIO)、インジウムオキサイド(IO)、等の透明導電性材料が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0157】
陰極408の平均厚さは、特に限定されないが、100〜3000nm程度であるのが好ましく、500〜2000nm程度であるのがより好ましい。陰極408の厚さが薄すぎると、陰極408としての機能が充分に発揮されなくなるおそれがあり、一方、陰極408が厚過ぎると、陰極材料の種類等によっては、光の透過率が低下して、トップエミッション型の構造を有する有機EL素子401として、実用に適さなくなるおそれがある。
【0158】
以上のような構成の有機発光装置410において、第2隔壁部432と、陰極408との接合体に、本発明の接合体が適用されている。
すなわち、第2隔壁部432の上面322と、陰極408の下面との接合に、本発明の接合方法が用いられる。この場合、陰極408上に、第2隔壁部432の上面322の形状に対応した接合膜3を撥液性が付与された他の基板から転写し、この接合膜3を介して第2隔壁部432の上面322と、陰極408の下面とを接合することにより、これら同士が接合された接合体を得ることができる。
【0159】
以上、本発明の接合方法および接合体を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の接合方法では、必要に応じて、1以上の任意の目的の工程を追加してもよい。
また、本発明の接合体は、有機発光装置以外のものに適用可能であることは言うまでもない。具体的には、本発明の接合体は、例えば、液滴吐出ヘッド、水晶デバイス等に適用することができる。
【実施例】
【0160】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
(実施例1)
まず、第1の基材として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmの単結晶シリコン基板の表面にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜が形成されたものを用意し、さらに、第2の基材および第3の基材として、それぞれ、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmのガラス基板を用意し、これらガラス基板に対して酸素プラズマによる下地処理を行った。
【0161】
次に、シリコーン材料として、ポリエステル変性シリコーン材料を含有する液状材料(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル・ジャパン合同会社製、「XR32−A1612」)を用意し、インクジェット法により第1の基材上に、この液状材料を5pLの液滴として供給して、液状被膜を、アルファベットの大文字「E」の形状に各部の幅が約60μmとなるように形成した。
【0162】
次に、この液状被膜を、200℃で、1時間乾燥・硬化させることにより、第1の基材上に、接合膜(平均厚さ:約100nm、各部の幅60μm)を形成した。
次に、第1の基材上に形成された接合膜に、図6に示す大気圧プラズマ装置を用いて、以下に示す条件でプラズマを接触させた。これにより、接合膜を活性化させて、その表面に接着性を発現させた。
【0163】
<プラズマ処理条件>
・処理ガス :ヘリウムガスと酸素ガスとの混合ガス
・ガス供給速度:10SLM
・電極間距離 :1mm
・印加電圧 :1kVp−p
・電圧周波数 :40MHz
・移動速度 :1mm/秒
【0164】
次に、接合膜のプラズマを接触させた面と、第2の基材の表面とが接触するように、第1の基材と第2の基材とを重ね合わせた。そして、第1の基材と第2の基材とを50MPaで加圧しつつ、常温(25度前後)で20秒間維持することにより、第2の基材に対する接合膜の接合強度の向上を図った。
次に、第1の基材と前記第2の基材とを離間することにより、第1の基材上に形成された接合膜を第2の基材上に転写させた。
【0165】
次に、第2の基材上に転写された接合膜に、図6に示す大気圧プラズマ装置を用いて、上記に示した条件と同様にしてプラズマを接触させた。これにより、再度、接合膜を活性化させて、その表面に接着性を発現させた。
次に、接合膜のプラズマを接触させた面と、第3の基材の表面とが接触するように、第2の基材と第3の基材とを重ね合わせた。そして、第2の基材と第3の基材とを50MPaで加圧しつつ、常温(25度前後)で20秒間維持することにより、第3の基材に対する接合膜の接合強度の向上を図った。
以上の工程を経ることにより、第2の基材と第3の基材とが、アルファベットの大文字「E」の形状にパターニングされた接合膜を介して接合された接合体を得た。
そして、この接合体の第2の基材と第3の基材との間の接合強度を、QUAD GROUP社製「ロミュラス」)を用いて測定したところ、4MPa以上であった。
【0166】
(実施例2)
第2の基材として、ガラス基板に代えて、ステンレス鋼基板を用意し、第3の基材として、ガラス基板に代えて、ポリイミド基板を用意した以外は、前記実施例1と同様にして、接合体を得た。
本実施例2においても、前記実施例1と同様に、アルファベットの大文字「E」の形状に接合膜(平均厚さ:約100nm、各部の幅60μm)が形成され、さらに、接合体の第2の基材と第3の基材との間の接合強度が4MPa以上であった。
【0167】
(実施例3)
第2の基材および第3の基材の一方の面のほぼ全面にも、第1の基材上に接合膜を形成したのと同様の液状材料を用いて接合膜を形成し、このような接合膜が形成された第2の基材および第3の基材を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、接合体を得た。
本実施例3においても、前記実施例1と同様に、アルファベットの大文字「E」の形状に接合膜(平均厚さ:約100nm、各部の幅60μm)が形成され、さらに、接合体の第2の基材と第3の基材との間の接合強度が4MPa以上であった。
【符号の説明】
【0168】
1……接合体 21……第1の基材 22……第2の基材 23……第3の基材 3……接合膜 210、220、230……接合面 211……撥液膜 212……母材 30……液状被膜 31……液滴 32……表面 35……液状材料 3C……空間 41……膜形成領域 42……非膜形成領域 500…液滴吐出装置 501…タンク 502…吐出走査部 503…液滴吐出手段 504…第1位置制御装置 506…ステージ 508…第2位置制御装置 510…チューブ 512…制御手段 514…液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド) 518…ノズル 520…キャビティ 522…隔壁 524…振動子 524A、524B…電極 524C…ピエゾ素子 526…振動板 528…ノズルプレート 529…液だまり 530……供給口 531……孔 401R、401G、401B……有機EL素子 403……陽極 431……第1隔壁部 311……陽極接合部 312……基板接合部 432……第2隔壁部 321……側面 322……上面(頂面) 435……隔壁部(バンク) 405……正孔輸送層 406R、406G、406B……発光層 407R、407G、407B……有機半導体層 408……陰極 409……上基板 410……有機発光装置 420……TFT回路基板 421……基板 422……回路部 423……下地保護層 424……駆動用TFT 241……半導体層 242……ゲート絶縁層 243……ゲート電極 244……ソース電極 245……ドレイン電極 425……第1層間絶縁層 426……第2層間絶縁層 427……配線 1000……大気圧プラズマ装置 1002……搬送装置 1010……ヘッド 1101……ヘッド本体 1102、1104……間隙 1103……下面 1015……印加電極 1017……高周波電源 1018……ガス供給流路 1019……対向電極 1181……開口部 1020……移動ステージ E……電界 G……処理ガス p……プラズマ発生領域 W……被処理基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン材料を含有する液状材料に対する撥液性を少なくとも表面付近に有する第1の基材と、接合膜を介して互いに接合する第2の基材および第3の基材とを用意する第1の工程と、
前記第1の基材の撥液性が付与されている面側に、前記液状材料を塗布して、所定形状にパターニングされた液状被膜を形成した後、乾燥することにより、前記所定形状にパターニングされた接合膜を得る第2の工程と、
前記接合膜にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に接着性を発現させ、当該接合膜を介して前記第1の基材と前記第2の基材とを接合させた後、前記第1の基材と前記第2の基材とを離間することにより、前記接合膜を前記第1の基材から前記第2の基材に転写する第3の工程と、
転写された前記接合膜にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に接着性を発現させ、当該接合膜を介して前記第2の基材と前記第3の基材とを接合することにより、これら同士が接合された接合体を得る第4の工程とを有することを特徴とする接合方法。
【請求項2】
前記第2の工程において、前記第2の基材の前記接合膜を介して前記第3の基材と接合する側の面のほぼ全面に、前記接合膜を形成する請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記第2の工程において、前記第3の基材の前記接合膜を介して前記第2の基材と接合する側の面のほぼ全面に、前記接合膜を形成する請求項1または2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記第2の工程において、前記液状皮膜は、前記液状材料を液滴吐出法を用いて液滴として供給することにより形成される請求項1ないし3のいずれかに記載の接合方法。
【請求項5】
前記液滴吐出法は、圧電素子による振動を利用して前記液状材料を、インクジェットヘッドが備えるノズル孔から液滴として吐出するインクジェット法である請求項4に記載の接合方法。
【請求項6】
前記所定形状は、前記接合膜による接合を必要とする部位に対応した形状をなしている請求項1ないし5のいずれかに記載の接合方法。
【請求項7】
前記シリコーン材料は、その主骨格がポリジメチルシロキサンで構成され、この主骨格が分枝状をなしている請求項1ないし6のいずれかに記載の接合方法。
【請求項8】
前記シリコーン材料は、前記ポリジメチルシロキサンが有するメチル基の少なくとも1つがフェニル基で置換されている請求項7に記載の接合方法。
【請求項9】
前記シリコーン材料は、シラノール基を複数個有する請求項1ないし8のいずれかに記載の接合方法。
【請求項10】
前記シリコーン材料は、ポリエステル樹脂と脱水縮合反応させることにより得られたポリエステル変性シリコーン材料である請求項1ないし9のいずれかに記載の接合方法。
【請求項11】
ポリエステル樹脂は、飽和多塩基酸と多価アルコールとのエステル化反応により得られるものである請求項10に記載の接合方法。
【請求項12】
前記第3の工程および第4の工程において、前記接合膜に対する前記エネルギーの付与は、前記接合膜にプラズマを接触させることにより行われる請求項1ないし11のいずれかに記載の接合方法。
【請求項13】
前記プラズマの接触を、大気圧下で行う請求項12に記載の接合方法。
【請求項14】
前記プラズマの接触は、互いに対向する電極間に電圧を印加した状態で、これらの間にガスを導入することにより、プラズマ化された前記ガスを前記接合膜に供給することによりなされる請求項12または13に記載の接合方法。
【請求項15】
前記第2の基材および前記第3の基材の前記接合膜と接触する部分は、シリコン材料、金属材料またはガラス材料を主材料として構成されている請求項1ないし14のいずれかに記載の接合方法。
【請求項16】
前記第2の基材および前記第3の基材の前記接合膜と接触する部分には、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されている請求項1ないし15のいずれかに記載の接合方法。
【請求項17】
前記表面処理は、プラズマ処理または紫外線照射処理である請求項16に記載の接合方法。
【請求項18】
さらに、前記第2の基材と前記第3の基材とを接合させた後に、前記接合膜に対して、前記第2の基材と前記第3の基材との接合強度を高める処理を行う工程を有する請求項1ないし17のいずれかに記載の接合方法。
【請求項19】
前記接合強度を高める処理を行う工程は、前記接合膜を加熱する方法、および前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われる請求項18に記載の接合方法。
【請求項20】
前記第2の基材と前記第3の基材とが、請求項1ないし19のいずれかに記載の接合方法により形成された接合膜を介して接合されてなることを特徴とする接合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−229272(P2010−229272A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77812(P2009−77812)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】