説明

接合焼結体および接合焼結体を備えたプラネタリキャリア

【課題】凸部が破損するのを防止することができ、凸部の強度を増すために凸部を大きくするのを不要にして、小型化および軽量化することができる接合焼結体および接合焼結体を備えたプラネタリキャリアを提供すること。
【解決手段】凸部31dの高さHを縦方向とし、環状プレート31、32の回転方向における凸部31dの幅Wを横方向としたときに、凸部31dの縦横比(W/H)が2以上になるように凸部31dが接合面31cから突出し、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力Aが大きい凸部31dの幅方向一側面A1および凹部33aの内周一側面B1の傾斜角度βを、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力Bが小さい凸部31dの幅方向他側面A2および凹部33aの内周他側面B2の傾斜角度αに対して小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合焼結体および接合焼結体を有するプラネタリキャリアに関し、特に、一対の焼結体がろう付けによって接合された接合焼結体および接合焼結体を有するプラネタリキャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車両に搭載される自動変速機等に設けられた遊星歯車装置は、放射方向内方に円周方向に離隔して設けられた複数の第1のシャフト孔を有する第1のキャリアプレートと、放射方向内方に第1のシャフト孔に対向する第2のシャフト孔を有する第2のキャリアプレートと、第1のシャフト孔と第2のシャフト孔との間に架設されたピニオンシャフトと、ピニオンシャフトに対して回転自在に支持され、サンギヤおよびリングギヤに噛合されるピニオンギヤとを備えたプラネタリキャリアを備えており、このプラネタリキャリアは、第1のキャリアプレートおよび第2のキャリアプレートを鋳鉄や銅板を用いて全周機械加工により製作している。
【0003】
ところが、この機械加工は、加工工程が多く、コスト高を招くことから、第1の焼結体である第1のキャリアプレートおよび第2の焼結体である第2のキャリアプレートを圧粉体の焼結により成形し、第1のキャリアプレートから第2のキャリアプレートに向かって突出する突出片の先端を、第2のキャリアプレートの接合面にろう付けにより接合することにより、加工工程を少なくして低コストで製造するようにしている。
【0004】
ところで、このように第1のキャリアプレートおよび第2のキャリアプレートをろう付けにより接合するためには、第1のキャリアプレートの第1のシャフト孔および第2のキャリアプレートの第2のシャフト孔を合わせるために、第1のキャリアプレートおよび第2のキャリアプレートを回転方向に位置決めして接合する必要がある。
【0005】
このため、従来のプラネタリキャリアにあっては、第1のキャリアプレートの突出片の先端に凹部を形成するとともに、第2のキャリアプレートの接合面に縦横比(幅W/高さH)が1より小さく、凹部の深さよりも高い凸部を設け、凸部を凹部に嵌合したときに突出片と接合面の間に一定のクリアランスを形成した状態で、第1のキャリアプレートおよび第2のキャリアプレートの回転方向の位置決めを行うようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
一般的に、第1のキャリアプレートまたは第2のキャリアプレートには、突出片と接合面の間にろう材を流し込むための貫通孔が形成されており、この貫通孔を通して突出片と接合面の間にろう材を流し込むことにより、毛細管現象を利用して突出片を接合面するようにして第1のキャリアプレートと第2のキャリアプレートとを接合している。
【特許文献1】特開2003−251458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来のプラネタリキャリアにあっては、突出片の先端に凹部が形成されるとともに、第2のキャリアプレートの接合面に縦横比が1より小さく凹部の深さよりも高い凸部が設けられているため、凸部が高くなってしまう。
【0008】
このため、第1のキャリアプレートから第2のキャリアプレートに大きな動力が伝達される場合に、凸部と凹部の間に充填されたろう材の弾性変形によってろう材を介して凸部と凹部が干渉してしまい、凸部が破損するおそれがあった。
【0009】
また、第2のキャリアプレートを焼結炉内で焼結しているときや、凸部を下方にして第2のキャリアプレートを設置した場合等に凸部が破損する可能性が高いため、第2のキャリアプレートの不良率が高くなるおそれがある。
【0010】
このように凸部が破損するのを防止するためには、凸部の強度を確保すればよいが、このようにすれば、必然的に凸部が大きくなり、プラネタリキャリアが大型化および高重量化してしまうことになる。
【0011】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、凸部が破損するのを防止することができ、凸部の強度を増すために凸部を大きくするのを不要にして、小型化および軽量化を図ることができる接合焼結体および接合焼結体を備えたプラネタリキャリアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る接合焼結体は、上記目的を達成するため、(1)第1の焼結体および第2の焼結体を有し、前記第1の焼結体から前記第2の焼結体に向かって突出する突出片の先端を、前記第2の焼結体の接合面にろう付けすることにより、前記第1の焼結体と前記第2の焼結体が一定の距離を隔てて接合される接合焼結体において、前記突出片の先端に設けられた位置決め用の凹部または凸部と、前記第2の焼結体の接合面に設けられ、前記凸部または凹部に嵌合することにより、前記第1の焼結体と前記第2の焼結体の回転方向の位置決めを行う位置決め用の凸部または凹部とを備え、前記凸部の高さをHとし、前記第1の焼結体および前記第2の焼結体の回転方向における前記凸部の幅をWとしたときの縦横比(W/H)が少なくとも1以上になるように前記凸部を構成し、前記凸部の幅方向両側面の傾斜角度と前記凸部の幅方向両側面に当接する前記凹部の内周両側面の傾斜角度とを、前記第1の焼結体および前記第2の焼結体のいずれか一方から前記第1の焼結体および前記第2の焼結体のいずれか他方に伝達される動力に応じて異なる傾斜角度に設定したものから構成されている。
【0013】
このように、凸部の縦横比(W/H)が1以上になるように凸部を構成し、凸部の幅方向両側面の傾斜角度と凸部の幅方向両側面に当接する凹部の内周両側面の傾斜角度とを、第1の焼結体および第2の焼結体のいずれか一方から第1の焼結体および第2の焼結体のいずれか他方に伝達される動力に応じて異なる傾斜角度に設定したので、例えば、第2の焼結体から第1の焼結体に伝達される動力が大きい凸部の幅方向一側面および凹部の内周一側面の傾斜角度を、第2の焼結体から第1の焼結体に伝達される動力が小さい凸部の幅方向他側面および凹部の内周他側面の傾斜角度に対して小さくすることにより、第2の焼結体から第1の焼結体に大きな動力が伝達されたときに、凸部と凹部の間に充填されるろう材が弾性変形することにより、凹部の一側面から凸部の幅方向一側面の基端部に加わる回転モーメントを小さくすることができる。
【0014】
また、凸部の幅方向他側面および凹部の内周他側面の傾斜角度を、凸部の幅方向一側面および凹部の内周一側面の傾斜角度より大きくしても、凹部の内周他側面からろう材を介して凸部の幅方向他側面に伝達される動力が小さいので、凸部と凹部の間に充填されるろう材を介して凹部の内周他側面から凸部の幅方向他側面の基端部に加わる回転モーメントは小さい。
【0015】
したがって、凸部の幅方向両側面の基端部に加わる回転モーメントを小さくすることができ、凸部が破損するのを防止することができる。
【0016】
また、凸部の縦横比(W/H)を1以上にすることにより、凸部の幅方向両側面の傾斜角度を大きくしつつ凸部を低くすることができるので、例えば、凸部が形成される第1の焼結体を焼結炉内で焼結しているときや、凸部を下方にして第1の焼結体を設置した場合等に凸部が破損する可能性を低くすることができ、第1の焼結体の不良率を低くすることができる。
【0017】
このように凸部が破損するのを防止することができるため、凸部の強度を確保するために凸部を大きくする必要がなく、接合焼結体を小型化および軽量化することができる。
【0018】
上記(1)に記載の接合焼結体において、(2)前記第1の焼結体および前記第2の焼結体の一方から前記第1の焼結体および前記第2の焼結体のいずれか他方に伝達される動力が大きい前記凸部の幅方向一側面および前記凹部の内周一側面の傾斜角度を、前記第1の焼結体および前記第2の焼結体の一方から前記第1の焼結体および前記第2の焼結体のいずれか他方に伝達される動力が小さい前記凸部の幅方向他側面および前記凹部の内周他側面の傾斜角度に対して小さくしたものから構成されている。
【0019】
この構成により、例えば、第2の焼結体から第1の焼結体に伝達される動力が大きい凸部の幅方向一側面および凹部の内周一側面の傾斜角度を、第2の焼結体から第1の焼結体に伝達される動力が小さい凸部の幅方向他側面および凹部の内周他側面の傾斜角度に対して小さくすることにより、第2の焼結体から第1の焼結体に動力が伝達されたときに、凸部と凹部の間に充填されるろう材が弾性変形することにより、ろう材を介して凹部の一側面から凸部の幅方向一側面の基端部に加わる回転モーメントを小さくすることができる。
【0020】
また、凸部の幅方向他側面および凹部の内周他側面の傾斜角度を、凸部の幅方向一側面および凹部の内周一側面の傾斜角度より大きくしても、凹部の内周他側面からろう材を介して凸部の幅方向他側面に伝達される動力が小さいので、凸部と凹部の間に充填されるろう材が弾性変形することにより、凹部の内周他側面からろう材を介して凸部の幅方向他側面の基端部に加わる回転モーメントを小さくすることができる。
【0021】
したがって、凸部の幅方向両側面の基端部に加わる回転モーメントを小さくすることができ、凸部が破損するのを防止することができる。
【0022】
上記(1)に記載の接合焼結体において、(3)動力を伝達する前記第1の焼結体および前記第2の焼結体のいずれか一方に設けられた前記凸部の幅方向両側面または前記凹部の内周両側面の傾斜角度を、動力が伝達される側の前記第1の焼結体および前記第2の焼結体のいずれか他方に設けられた前記凹部の内周両側面または前記凸部の幅方向両側面の傾斜角度よりも小さくしたものから構成されている。
【0023】
この構成により、例えば、動力を伝達する側の凹部の内周両側面の傾斜角度を、動力が伝達される側の凸部の幅方向両側面の傾斜角度よりも小さくすることにより、凸部を凹部に確実に嵌合して第1の焼結体と第2の焼結体との位置決めを良好に行いつつ、凸部と凹部の間に充填されるろう材が弾性変形することにより、凹部の内周両側面からろう材を介して凸部の幅方向両側面の基端部に加わる回転モーメントを小さくすることができる。
【0024】
したがって、凸部の幅方向両側面の基端部に加わる回転モーメントを小さくすることができ、凸部が破損するのを防止することができる。
【0025】
上記(1)に記載の接合焼結体において、(4)前記第1の焼結体および前記第2の焼結体の一方から前記第1の焼結体および前記第2の焼結体のいずれか他方に伝達される動力が大きい前記凸部の幅方向一側面および前記凹部の内周一側面の傾斜角度を、前記第1の焼結体および前記第2の焼結体の一方から前記第1の焼結体および前記第2の焼結体のいずれか他方に伝達される動力が小さい前記凸部の幅方向他側面および前記凹部の内周他側面の傾斜角度に対して小さくするとともに、動力を伝達する前記第1の焼結体および前記第2の焼結体のいずれか一方に設けられた前記凸部の幅方向両側面または前記凹部の内周両側面の傾斜角度を、動力が伝達される側の前記第1の焼結体および前記第2の焼結体のいずれか他方に設けられた前記凹部の内周両側面または前記凸部の幅方向両側面の傾斜角度よりも小さくしたものから構成されている。
【0026】
この構成により、例えば、第2の焼結体から第1の焼結体に伝達される動力が大きい凸部の幅方向一側面および凹部の内周一側面の傾斜角度を、第2の焼結体から第1の焼結体に伝達される動力が小さい凸部の幅方向他側面および凹部の内周他側面の傾斜角度に対して小さく、第2の焼結体から第1の焼結体に伝達される動力が大きい凸部の幅方向一側面および凹部の内周一側面の傾斜角度を、第2の焼結体から第1の焼結体に伝達される動力が小さい凸部の幅方向他側面および凹部の内周他側面の傾斜角度に対して小さくすることにより、凸部を凹部に確実に嵌合して第1の焼結体と第2の焼結体との位置決めを良好に行いつつ、第2の焼結体から第1の焼結体に大きな動力が伝達されたときに、凸部と凹部の間に充填されるろう材が弾性変形することにより、凹部の一側面からろう材を介して凸部の幅方向一側面の基端部に加わる回転モーメントを小さくすることができる。
【0027】
また、凸部の幅方向他側面および凹部の内周他側面の傾斜角度を、凸部の幅方向一側面および凹部の内周一側面の傾斜角度より大きくしても、凹部の内周他側面からろう材を介して凸部の幅方向他側面に伝達される動力が小さいので、凸部と凹部の間に充填されるろう材が弾性変形することにより、凹部の内周他側面からろう材を介して凸部の幅方向他側面の基端部に加わる回転モーメントを小さくすることができる。
【0028】
したがって、凸部の幅方向両側面の基端部に加わる回転モーメントを小さくすることができ、凸部が破損するのを防止することができる。
【0029】
上記(1)ないし(4)に記載の接合焼結体において、(5)前記凸部の高さに対して前記凹部の深さを深くすることにより、前記凸部の上面と前記凹部の底面との間に隙間を形成したものから構成されている。
【0030】
このように、凸部の高さに対して凹部の深さを深くすることにより、凸部の上面と凹部の底面との間に隙間を形成したので、突出片の先端を接合面に直接当接させて突出片の先端と接合面の間に一定量のろう材を充填させることができる。
【0031】
これに対して、従来のように、凸部の高さを凹部の深さよりも高くして突出片の先端と接合面の間に一定のクリアランスを確保した場合には、凸部の高さと凹部の深さによって突出片の先端と接合面の間のクリアランスのばらつきが大きくなってしまうため、突出片の先端と接合面の間のろう材の接合面積のばらつきが大きくなってろう付け強度のばらつきが大きくなってしまう。
【0032】
本発明では、突出片の先端と接合面の間に一定のクリアランスを確保する必要がないので、突出片の先端と接合面の間にクリアランスのばらつきが生じるのを防止することができ、突出片の先端と接合面の間のろう材の接合面積のばらつきを無くして、ろう付け強度のばらつきが生じるのを防止することができる。
【0033】
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の接合焼結体を有するプラネタリキャリアであって、(6)前記第1の焼結体が、放射方向内方に円周方向に離隔して設けられた複数の第1のシャフト孔を有する第1のキャリアプレートから構成されるとともに、前記第2の焼結体が放射方向内方に前記第1のシャフト孔に対向する第2のシャフト孔を有する第2のキャリアプレートから構成され、前記第1のシャフト孔と前記第2のシャフト孔との間に架設された複数のピニオンシャフトと、前記ピニオンシャフトに対して回転自在に支持され、サンギヤおよびリングギヤに噛合されるピニオンギヤとを備え、前記第1のキャリアプレートまたは前記第2のキャリアプレートの放射方向外周部にトランスミッションケースにスプライン嵌合されるスプライン部が形成されるものから構成されている。
【0034】
この構成により、凸部が破損するのを防止することができ、凸部の強度を増すために凸部を大きくするのを不要にして、小型化および軽量化を図ることができる第1のキャリアプレートおよび第2のキャリアプレートを備えたプラネタリキャリアを得ることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、凸部が破損するのを防止することができ、凸部の強度を増すために凸部を大きくするのを不要にして、小型化および軽量化することができる接合焼結体および接合焼結体を備えたプラネタリキャリアを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明に係る接合焼結体および接合焼結体を備えたプラネタリキャリアの実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0037】
(第1の実施の形態)
図1〜図6は、本発明に係る接合焼結体および接合焼結体を備えたプラネタリキャリアの第1の実施の形態を示す図であり、本発明のプラネタリキャリアをハイブリッド車両に適用した例を示している。
【0038】
まず、構成について説明する。
図1および図2において、動力伝達装置1は、トランスミッションケース2を有しており、トランスミッションケース2内には、変速機構を構成する複合遊星歯車装置3と、フロントドライブシャフト44、45への差動出力が可能なディファレンシャル装置4と、蓄電された電力により車両を駆動させる駆動用モータ5と、図示しないエンジンからの動力により発電可能なモータジェネレータ6と、動力伝達装置1の各部にオイルを供給するオイルポンプ7とが収納されている。
【0039】
複合遊星歯車装置3は、駆動用モータ5から出力された動力を伝達する第1の遊星歯車装置11と、エンジンから出力された動力を伝達する第2の遊星歯車装置12とを含んで構成されており、駆動用モータ5およびエンジンから出力された動力をディファレンシャル装置4に選択的に伝達できるようになっている。
【0040】
トランスミッションケース2は、エンジン側に締結支持されるハウジング21と、ハウジング21のエンジン側とは反対側の開口端に固定されたケース22とを有している。
【0041】
また、ケース22のハウジング21側とは反対側の開口端には、ケースカバー23が装着されており、ケースカバー23のケース22側の反対側には、オイルポンプカバー24が装着されている。
【0042】
また、ハウジング21には、ハウジングカバー25が装着されており、ハウジング21内をモータジェネレータ6の収納部分とエンジンからの駆動力伝達機構であるダンパー要素14の収納部分とに画成している。
【0043】
そして、これらハウジング21、ケース22、ケースカバー23、ハウジングカバー25によってトランスミッションケース2が構成されるとともに、複合遊星歯車装置3、ディファレンシャル装置4、駆動用モータ5およびモータジェネレータ6を収納する収納部分が形成される。
【0044】
ケース22の所定個所には、複合遊星歯車装置3の一端部を回転自在に支持するベアリング27が装着されており、ハウジング21の所定個所には、複合遊星歯車装置3の他端部を回転自在に支持するベアリング28が装着されている。
【0045】
モータジェネレータ6および第2の遊星歯車装置12の回転中心部分には、モータジェネレータ6および第2の遊星歯車装置12を貫通するように延在するインプットシャフト15が配設されており、駆動用モータ5および第1の遊星歯車装置11の回転中心部分には、駆動用モータ5および第1の遊星歯車装置11を貫通するように延在するオイルポンプ駆動軸16が配設されている。
【0046】
インプットシャフト15は、一端部がクランクシャフト17に回転方向一体に係合されるとともに、他端部が第2の遊星歯車装置12に接続されており、エンジンからの動力を複合遊星歯車装置3に伝達するようになっている。
【0047】
オイルポンプ駆動軸16は、一端部がインプットシャフト15に回転方向一体に係合されるとともに、他端部がオイルポンプ7に接続されており、インプットシャフト15からの動力をオイルポンプ7に伝達するようになっている。
【0048】
また、トランスミッションケース2内には、複合遊星歯車装置3から出力された動力をディファレンシャル装置4に伝達するカウンタドリブンギヤ41およびファイナルドライブギヤ42が設けられている。
【0049】
カウンタドリブンギヤ41は、後述する複合遊星歯車装置3のリングギヤ13に噛合しており、このカウンタドリブンギヤ41はファイナルドライブギヤ42が一体に形成されたカウンタシャフト43にスプライン結合している。
【0050】
ディファレンシャル装置4は、中空のデフケース51を備えており、デフケース51は、ベアリング58、59を介してケース22およびハウジング21に回転自在に支持されている。
【0051】
デフケース51の外周部には、ファイナルドライブギヤ42と歯合するファイナルギヤ52が締結されており、複合遊星歯車装置3から出力された動力がファイナルギヤ52を介してデフケース51に伝達されるようになっている。
【0052】
また、デフケース51の内部には、ピニオンギヤシャフト53が一体的に形成されており、ピニオンギヤシャフト53には、一対のディファレンシャルピニオンギヤ54、55が回転自在に支持されている。
【0053】
各ディファレンシャルピニオンギヤ54、55には、2体のサイドギヤ56、57がそれぞれ歯合しており、各サイドギヤ56、57にはフロントドライブシャフト44、45がそれぞれ接続され、各フロントドライブシャフト44、45には、図示しない前輪がそれぞれ固定されている。
【0054】
なお、このような複数のギヤ54、55、56、57による減速やディファレンシャル装置4の機能等は公知であり、ここでは詳述しない。
【0055】
駆動用モータ5は、永久磁石61が装着されたロータ62と、三相コイル63が巻回されたステータ64とを有しており、永久磁石同期電動機として構成されている。
【0056】
ロータ62は、軸方向に貫通孔が形成されており、この貫通孔にオイルポンプ駆動軸16を挿通させた状態で、ベアリング66、67を介してケース22およびケースカバー23に回転自在に支持されている。
【0057】
モータジェネレータ6は、永久磁石71が装着されたロータ72と、三相コイル73が巻回されたステータ74とを有しており、駆動用モータ5と同様に永久磁石同期発電電動機として構成されている。
【0058】
ロータ72は、軸方向に貫通孔が形成されており、この貫通孔にインプットシャフト15を挿通させた状態で、ベアリング76、77を介してハウジング21およびハウジングカバー25に回転自在に支持されている。
【0059】
駆動用モータ5およびモータジェネレータ6のロータ62、72は、それぞれステータ64、74の内周との間にわずかな空隙を挟んで配置されており、力行時にはロータ62、72に回転力を発生させ、回生時にはロータ62、72の回転により磁界を発生させるようになっている。
【0060】
また、駆動用モータ5およびモータジェネレータ6のステータ64、74は、それぞれ詳細は図示しないが、例えば磁性体を積層した環状のヨーク65、75が巻線用溝を隔てる複数のステータティースを有し、このヨーク65、75の巻線用溝に三相コイル63、73が巻回されている。
【0061】
ここで、図2を参照して複合遊星歯車装置3について詳細に説明する。図2は、図1の動力伝達装置1の断面図の部分拡大図である。
【0062】
図2において、複合遊星歯車装置3は、駆動用モータ5の出力減速用の第1の遊星歯車装置11と、エンジン側からの動力をモータジェネレータ6と後述するリングギヤ13とに分配する動力分配機能を有する第2の遊星歯車装置12とによって構成されており、それら第1の遊星歯車装置11および第2の遊星歯車装置12は外周側のリングギヤR1とリングギヤR2とを回転軸の軸方向に連ねた一体型外輪部材としてのリングギヤ13により一体的に構成されている。
【0063】
具体的には、第1の遊星歯車装置11は、サンギヤS1と、サンギヤS1を取り囲む内歯のリングギヤR1と、サンギヤS1の周りに周方向等間隔に設けられてサンギヤS1およびリングギヤR1に噛合する複数のピニオンギヤP1と、複数のピニオンギヤP1を自転可能に支持するとともにケース22に固定されたプラネタリキャリアCr1とを有している。
【0064】
サンギヤS1は、駆動用モータ5のロータ62のエンジン側の端部にスプライン結合しており、ロータ62と一体に回転するようになっている。
【0065】
プラネタリキャリアCr1は、本発明のプラネタリキャリアを構成するものであり、複数のピニオンギヤP1の両端側に位置する一対の環状プレート31、32と、これらを連結する突出片33とから構成されており、プラネタリキャリアCr1の駆動モータ5側の環状プレート31の外周には複数の回り止め用のスプライン部37が設けられている。なお、図2では、スプライン部37の突起部分を示している。
【0066】
第2の遊星歯車装置12は、サンギヤS2と、サンギヤS2を取り囲む内歯のリングギヤR2と、サンギヤS2の周りに周方向等間隔に設けられてサンギヤS2およびリングギヤR2に噛合する複数のピニオンギヤP2と、複数のピニオンギヤP2を自転可能に支持するとともにインプットシャフト15に連結されたプラネタリキャリアCr2とを有している。
【0067】
サンギヤS2は、モータジェネレータ6のロータ72のケース21側の端部にスプライン結合しており、ロータ72と一体に回転するようになっている。
【0068】
プラネタリキャリアCr2は、複数のピニオンギヤP2の両端側に位置する一対の環状プレート35a、35bと、これらを連結する突出部36とから構成されている。
【0069】
リングギヤ13は、環状のリングギヤR1およびリングギヤR2を軸方向に連ねて構成されており、内周面には周方向に沿って断面矩形状の環状溝13aが形成され、外周面には周方向に沿って半径方向外側に突出した環状凸部13bが形成されている。
【0070】
また、環状凸部13bの外周には、外歯が形成されており、リングギヤ13の出力歯車となっている。
【0071】
次に、図3、図4に基づいてプラネタリキャリアCr1の構成を具体的に説明する。図3は、プラネタリキャリアCr1の斜視図であり、図4は、プラネタリキャリアの断面図である。
【0072】
図3、図4において、環状プレート31は、第1のキャリアプレートを構成するものであり、放射方向内方に円周方向に離隔して設けられた複数の第1のシャフト孔としてのシャフト孔31aが形成されている。
【0073】
環状プレート32は、第2のキャリアプレートを構成するものであり、放射方向内方にシャフト孔31aに対向する第2のシャフト孔としてのシャフト孔32aが形成されている。また、環状プレート31および環状プレート32の内周部には、サンギヤS1およびベアリングが挿入される貫通孔31b、32bが同軸上に形成されている。
【0074】
シャフト孔31aとシャフト孔32aとの間にピニオンシャフト34が架設されており、このピニオンシャフト34にはピニオンギヤP1が回転自在に支持されている。また、環状プレート31の放射方向外周部には、ケース22にスプライン嵌合されるスプライン部37が形成されている。
【0075】
また、環状プレート32には、環状プレート31に向かって突出する複数の突出片33が一体的に形成されており、この突出片33は、環状プレート32の周方向に離隔して設けられている。
【0076】
この突出片33は、その先端が環状プレート31の接合面31cに接合されることにより、環状プレート31、32の間にピニオンギヤP1が介装されるように環状プレート31、32を一定の距離を隔てて接合している。
【0077】
一方、本実施の形態の環状プレート31、32は、加工工程を少なく、低コストで製造可能な焼結によって成形されており、環状プレート31が第1の焼結体を構成しているとともに環状プレート32が第2の焼結体を構成している。また、本実施の形態では、環状プレート31、32が接合焼結体を構成している。
【0078】
すなわち、鉄系等からなる焼結用粉末を加圧成形することにより、あるいは、プレス成形により一体的に形成することにより、環状プレート31および突出片33を有する環状プレート32がそれぞれ成形されている。
【0079】
また、環状プレート32の突出片33の先端には凹部33aが形成されているとともに、環状プレート31の接合面31cには凸部31dが形成されており、凸部31dを凹部33aに嵌合することにより、シャフト孔31a、32aの回転方向の位置合決めおよび貫通孔31b、32bの軸方向の位置合決めを行うようにしている。なお、この凹部33aおよび凸部31dは、焼結炉内において加圧成形時、あるいは、プレス成形時に環状プレート31、32と一体的に形成される。
【0080】
また、突出片33に対向する環状プレート31の位置には貫通孔31eが形成されており、この貫通孔31eにろう材を置き、ろう材が溶散し突出片33の先端と環状プレート32の接合面31cとの間に供給するようになっている。
【0081】
このろう材供給部から突出片33の先端と環状プレート32の接合面31cとの間に供給されるろう材は、毛細管現象によって突出片33の先端と環状プレート32の接合面31cとの間に浸透することで、突出片33を環状プレート32の接合面31cに強固に接合するようになっている。
【0082】
また、図5に示すように、凸部31dの高さHを縦方向とし、環状プレート31、32の回転方向における凸部31dの幅Wを横方向としたときに、凸部31dの縦横比(W/H)が大きくなるように凸部31dが接合面31cから突出している。本実施の形態では、縦横比(W/H)は2以上に設定されている。なお、図5は、図4の矢印X方向から見た凸部31dおよび凹部33aの断面図である。
【0083】
また、凸部31dの高さHに対して凹部33aの深さDが深く形成されており、凸部31dの上面と凹部33aの底面との間には一定の隙間Sが形成されている。このため、突出片33と接合面31cの間に充填されるろう材38に加えて、凸部31dと凹部33aの間にもろう材39が毛細管現象により充填されている。
【0084】
なお、説明の便宜上、凸部31dの上面と凹部33aの底面に充填されたろう材38と突出片33の先端と環状プレート32の接合面31cとの間に供給されるろう材39の厚みを同じ厚みにしているが、ろう材39に対してろう材38の厚みは小さい。
【0085】
また、凸部31dの幅方向両側面の傾斜角度と凸部31dの幅方向両側面に当接する凹部33aの内周両側面の傾斜角度とは、環状プレート32から環状プレート31に加わる回転方向の動力に応じて異なる傾斜角度に設定されている。
【0086】
具体的には、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力が大きい凸部31dの幅方向一側面A1および凹部33aの内周一側面B1の傾斜角度βは、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力が小さい凸部31dの幅方向他側面A2および凹部33aの内周他側面B2の傾斜角度αに対して小さくなっている。
【0087】
本実施の形態の動力伝達装置1は、高負荷運転時等に駆動用モータ5を使って運転を行う場合(力行)に、駆動用モータ5が一方向に回転駆動されるため、駆動用モータ5のロータ62からサンギヤS1、ピニオンギヤP1およびリングギヤ13を介してフロントドライブシャフト44、45に動力が伝達される。
【0088】
また、図示しないアクセルペダルの踏み込みが解除されると、フロントドライブシャフト44、45からリングギヤ13、ピニオンギヤP1およびサンギヤSを介して駆動用モータ5のロータ62に動力が伝達され(回生)、駆動用モータ5が他方向に回転駆動されるため、エンジンブレーキが発生し、駆動用モータ5の発電により生じた電力を充電するようになっている。
【0089】
プラネタリキャリアCr1は、環状プレート31のスプライン部37がケース22に固定されているとともに、共通のリングギヤ13を有しているため、ピニオンギヤP1を介してプラネタリキャリアCr1に動力が伝達される。
【0090】
このため、動力は、駆動用モータ5を力行させたときに大きく、エンジンブレーキ発生時に駆動用モータ5を回生させたときに小さいものとなる。
【0091】
そして、駆動用モータ5が力行されたときには、環状プレート32から環状プレート31に矢印で示す大きな動力Aが加わり、駆動用モータ5が回生されたときには、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力Aよりも小さく、動力Aと反対方向に矢印で示す動力Bが加わることになる。
【0092】
そして、環状プレート32から環状プレート31に動力Aが加わったときには、環状プレート32からろう材38を介して環状プレート31に動力Aが伝達され、凸部31dの幅方向一側面A1と凹部33aの内周一側面B1の間に充填されたろう材39の弾性変形分の負荷が凸部31dに加わる。
【0093】
本実施の形態では、凸部31dの縦横比(W/H)が2以上になるように凸部31dを接合面31cから突出し、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力Aが大きい凸部31dの幅方向一側面A1および凹部33aの内周一側面B1の傾斜角度βを、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力Bが小さい凸部31dの幅方向他側面A2および凹部33aの内周他側面B2の傾斜角度に対して小さくしているため、図5に示すように、凹部33aからろう材39を介して凸部31dの傾斜面に加わる動力Aは、環状プレート32および環状プレート31の回転方向の動力A21に対して、凸部31dの傾斜方向に沿った方向の動力A22および凸部31dの傾斜方向と直交する方向の動力A23に分解され、この動力A21〜A23は、凸部31dの傾斜面に沿って分布する。
【0094】
このとき、凸部31dの基端部D1に動力A23による曲げモーメントが作用するが、この凸部31dの傾斜面と直交する方向の動力A23は、凸部31dの幅方向一側面A1および凹部33aの内周一側面B1の傾斜角度βが小さいほど小さいものとなるため、凸部31dの基端部D1に作用する曲げモーメントは非常に小さいものとなる。
【0095】
比較のために図6に示すように、縦横比(W/H)が1より小さい従来の凸部の基端部に加わる曲げモーメントについて説明すると、縦横比(W/H)の大きい凸部31dにろう材39を介して凹部33aから加わる動力Aは、凸部31dの傾斜面において動力A31に対して動力A32、A33に分解された動力となり、この動力A31〜A33は、凸部31dの傾斜面に沿って分布する。
【0096】
このときに凸部31dの基端部D1に加わる動力A33は大きいものであるため、凸部31dの基端部D1に加わる曲げモーメントは大きくなってしまい、凸部31dが破損し易いものとなる。
【0097】
一方、本実施の形態では、凸部31dの幅方向他側面A2および凹部33aの内周他側面B2の傾斜角度が、凸部31dの幅方向一側面A1および凹部33aの内周一側面の傾斜角度B1よりも大きいが、凹部33aの内周他側面B2からろう材39を介して凸部31dの幅方向他側面A1に伝達される動力Bは小さいので、動力B23も小さいものとなる。
【0098】
このため、凸部31dの基端部D1に加わる動力B23は小さいものとなり、凸部31dと凹部33aの間に充填されるろう材39を介して凹部33aの内周他側面B2から凸部31dの幅方向他側面Aの基端部D2に加わる回転モーメントは小さいものとなる。
【0099】
このように本実施の形態では、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力に応じて凸部31dの幅方向一側面A1および幅方向他側面A2の基端部D1、D2に加わる回転モーメントを小さくすることができるため、凸部31dが破損するのを防止することができる。
【0100】
また、本実施の形態では、凸部31dの縦横比(W/H)を大きくして凸部31dの幅方向一側面A1および幅方向他側面A2の傾斜角度を小さくしつつ、凸部31dを低くすることができるので、例えば、環状プレート31を焼結炉内で焼結しているときや、凸部31dを下方にして環状プレート31を設置した場合等に凸部31dが破損する可能性を低くすることができ、環状プレート31の不良率を低くすることができる。
【0101】
このように、凸部31dが破損するのを防止することができるため、凸部31dの強度を確保するために凸部31dを大きくする必要がなく、プラネタリキャリアCr1を小型化および軽量化することができる。
【0102】
また、本実施の形態では、凸部31dの高さに対して凹部33aの深さDを深くすることにより、凸部31dの上面と凹部33aの底面との間に隙間Sを形成したので、突出片33の先端を接合面31cに直接当接させて突出片33の先端と接合面31cの間に一定量のろう材38を充填させることができる。
【0103】
すなわち、従来のように凸部の高さを凹部の深さよりも高くして突出片の先端と接合面の間に一定のクリアランスを確保した場合には、凸部の高さと凹部の深さによって突出片の先端と接合面の間のクリアランスのばらつきが大きくなってしまうため、突出片の先端と接合面の間のろう材の接合面積のばらつきが大きくなってろう付け強度のばらつきが大きくなってしまう。
【0104】
本実施の形態では、突出片33の先端と接合面31cの間に一定のクリアランスを確保する必要がないので、突出片33の先端と接合面31cの間にクリアランスのばらつきが生じるのを防止することができ、ろう材38により突出片33の先端と接合面31cの間の接合面積のばらつきを無くして、ろう付け強度のばらつきが生じるのを防止することができる。
【0105】
(第2の実施の形態)
図7は、本発明に係る接合焼結体および接合焼結体を備えたプラネタリキャリアの第2の実施の形態を示す図であり、第1の実施の形態と同一の構成には同一番号を付して説明を省略する。
【0106】
図7において、環状プレート31の接合面31cには凸部31fが設けられており、この凸部31fの縦横比(W/H)は2以上に設定されている。また、環状プレート32の突出片33の先端部には凹部33bが設けられており、この凹部33bには凸部31fが嵌合するようになっている。
【0107】
また、凹部33bの内周一側面B3および内周他側面B4の傾斜角度β1、β2は、凸部31fの幅方向一側面A3および幅方向他側面A4の傾斜角度α1、α2よりも小さくなっている。
【0108】
すなわち、動力を伝達する環状プレート32に設けられた凹部33bの内周一側面B3および内周他側面B4の傾斜角度β1、β2は、環状プレート32から動力が伝達される環状プレート31に設けられた凸部31fの幅方向一側面A3および幅方向他側面A4の傾斜角度α1、α2よりも小さくなっており、凸部31fの上面と凹部33bの底面との間には一定の隙間Sが形成されている。このため、突出片33と接合面31cの間に充填されるろう材38に加えて、凸部31dと凹部33bの間にもろう材39が充填されている。
【0109】
また、凸部31fの幅方向一側面A3および幅方向他側面B4の傾斜角度α1、α2は、同じ傾斜角度であり、凹部33bの内周一側面B3および内周他側面B4の傾斜角度β1、β2は、同じ傾斜角度となっている。
【0110】
本実施の形態では、環状プレート32から環状プレート31に動力Aが加わったときには、環状プレート32からろう材38を介して環状プレート31に動力Aが伝達され、凸部31dの幅方向一側面A3と凹部33bの内周一側面B3の間に充填されたろう材39の弾性変形分の負荷が凸部31dに加わる。
【0111】
このとき、凹部33bの傾斜面からろう材39に加わる動力Aに対する動力A41が、動力A42、A43に分解され、この動力A41〜A43は、凹部33bの内周一側面B3に接する凸部31dの傾斜面に沿って分布することになる。
【0112】
このとき、ろう材39を介して凸部31fの基端部D3に動力A43による曲げモーメントが作用するが、この凹部33bの傾斜面に沿って分布される動力A43は、凹部33bの幅方向一側面A3の傾斜角度β2が小さいほど小さいものとなるため、凸部31fの基端部D3に作用する曲げモーメントは非常に小さいものとなる。
【0113】
また、凹部33bの内周他側面B4からろう材39を介して凸部31fの幅方向他側面A3に伝達される動力Bは小さいので、動力B43も小さいものとなる。このため、凸部31fの幅方向他側面A4の基端部D4に加わる回転モーメントは、凸部31fの基端部D3に加わる回転モーメントよりも小さくなる。
【0114】
このように本実施の形態では、凸部31fの縦横比(W/H)が2以上になるように凸部31fを接合面31cから突出し、環状プレート32の突出片33に設けられた凹部33bの内周一側面B3および内周両側面B4の傾斜角度を、凸部31fの幅方向一側面A3および幅方向他側面A4の傾斜角度よりも小さくすることにより、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力に応じて凸部31fと凹部33bの間に充填されるろう材39が弾性変形することにより、凹部33bの内周一側面B3および内周他側面B4から凸部31fの幅方向一側面A3および幅方向他側面A4の基端部D3、D4に加わる回転モーメントを小さくすることができる。このため、凸部31fが破損するのを防止することができ、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態では、動力を伝達する環状プレート32に設けられた凹部33bの内周一側面B3および内周他側面B4の傾斜角度β1、β2は、環状プレート32から動力が伝達される環状プレート31に設けられた凸部31fの幅方向一側面A3および幅方向他側面A4の傾斜角度α1、α2よりも小さくしたので、凸部31fを凹部33bに確実に嵌合して環状プレート31、32の位置決めをより一層良好に行うことができる。
【0115】
(第3の実施の形態)
図8は、本発明に係る接合焼結体および接合焼結体を備えたプラネタリキャリアの第3の実施の形態を示す図であり、第1の実施の形態と同一の構成には同一番号を付して説明を省略する。
【0116】
図8において、環状プレート31の接合面31cには凸部31gが設けられており、この凸部31gの縦横比(W/H)は2以上に設定されている。また、環状プレート32の突出片33の先端部には凹部33cが設けられており、この凹部33cには凸部31gが嵌合するようになっている。
【0117】
また、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力が大きい凸部31gの幅方向一側面A5の傾斜角度α11および凹部33cの内周一側面B5の傾斜角度β11は、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力が小さい凸部31dの幅方向他側面A6の傾斜角度α12および凹部33cの内周他側面B6の傾斜角度β12に対して小さくなっている。
【0118】
また、凹部33cの内周一側面B5の傾斜角度β11は、凸部31gの幅方向一側面A5の傾斜角度α11よりも小さくなっているとともに、凹部33cの内周他側面B6の傾斜角度β12は、凸部31gの幅方向他側面A6の傾斜角度α12よりも小さくなっている。
【0119】
すなわち、環状プレート31に動力を伝達する凹部33cの内周一側面B5の傾斜角度β11は、環状プレート32から動力が伝達される凸部31gの幅方向一側面A5の傾斜角度α11よりも小さくなっているとともに、環状プレート31に動力を伝達する凹部33cの内周他側面B6の傾斜角度β12は、環状プレート32から動力が伝達される凸部31gの幅方向他側面A6の傾斜角度α12よりも小さくなっている。このため、突出片33と接合面31cの間に充填されるろう材38に加えて、凸部31gと凹部33cの間にもろう材39が充填されている。
【0120】
本実施の形態では、環状プレート32から環状プレート31に動力Aが加わったときには、環状プレート32からろう材38を介して環状プレート31に動力Aが伝達され、凸部31dの幅方向一側面A5と凹部33cの内周一側面B5の間に充填されたろう材39の弾性変形分の負荷が凸部31dに加わる。
【0121】
このとき、凹部33cの傾斜面からろう材39に加わる動力Aに対する動力A51が、動力A52、A53に分解され、この動力A51〜A53は、凹部33cの内周一側面B5に接する凸部31dの傾斜面に沿って分布することになる。
【0122】
このとき、ろう材39を介して凸部31gの基端部D5に動力A53による曲げモーメントが作用するが、この凹部33cの傾斜面に沿って分布される動力A53は、凹部33cの内周一側面B5の傾斜角度β11が小さいほど小さいものとなるため、凸部31gの基端部D5に作用する曲げモーメントは非常に小さいものとなる。
【0123】
また、凸部31gの幅方向他側面A6の傾斜角度α12および凹部33cの内周他側面B6の傾斜角度β12が、凸部31gの幅方向一側面A5の傾斜角度α11および凹部33cの内周一側面B5の傾斜角度β11よりも大きいが、凹部33cの内周他側面B6からろう材39を介して凸部31gの幅方向他側面A5に伝達される動力Bは小さいので、動力B53も小さいものとなる。
【0124】
このため、凸部31gと凹部33cの間に充填されるろう材39を介して凹部33cの内周他側面B6から凸部31gの幅方向他側面A6の基端部D6に加わる回転モーメントは小さい。
【0125】
このように本実施の形態では、凸部31gの縦横比(W/H)が2以上になるように凸部31gを突出片33から突出し、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力が大きい凸部31gの幅方向一側面A5の傾斜角度α11および凹部33aの内周一側面B5の傾斜角度β11を、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力が小さい凸部31dの幅方向他側面A6の傾斜角度α12および凹部33aの内周他側面B6の傾斜角度β12に対して小さくし、さらに、凹部33cの内周一側面B5の傾斜角度β11を、凸部31gの幅方向一側面A5の傾斜角度α11よりも小さくするとともに、凹部33cの内周他側面B6の傾斜角度β12を、凸部31gの幅方向他側面A6の傾斜角度α12よりも小さくした。
【0126】
このため、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力に応じて、凸部31gと凹部33cの間に充填されるろう材39が弾性変形することにより、凹部33cの内周一側面B5および内周他側面B6から凸部31gの幅方向一側面A5および幅方向他側面A6の基端部D5、D6に加わる回転モーメントを小さくすることができる。このため、凸部31gが破損するのを防止することができ、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態では、凹部33cの内周一側面B5の傾斜角度β11を、凸部31gの幅方向一側面A5の傾斜角度α11よりも小さくするとともに、凹部33cの内周他側面B6の傾斜角度β12を、凸部31gの幅方向他側面A6の傾斜角度α12よりも小さくしたので、凸部31gを凹部33cに確実に嵌合して環状プレート31、32の位置決めをより一層良好に行うことができる。
【0127】
(第4の実施の形態)
図9は、本発明に係る接合焼結体および接合焼結体を備えたプラネタリキャリアの第4の実施の形態を示す図であり、第1の実施の形態と同一の構成には同一番号を付して説明を省略する。本実施の形態では、凸部と凹部の位置関係が第1の実施の形態と逆になっており、図9は、図4の矢印X方向から見たときに凸部と凹部の位置関係が逆になった場合の断面図である。
【0128】
図9において、環状プレート32の突出片33の先端には凸部33dが形成されているとともに、環状プレート31の接合面31cには凹部31hが形成されており、凹部33hを凸部33dに嵌合することにより、シャフト孔31a、32aの回転方向の決めおよび貫通孔31b、32bの軸方向の位置決めを行うようにしている。
【0129】
また、凸部33dの高さHを縦方向とし、環状プレート31、32の回転方向における凸部33dの幅Wを横方向としたときに、凸部33dの縦横比(W/H)が大きくなるように凸部33dが突出片33の先端から突出している。本実施の形態では、縦横比(W/H)は2以上に設定されている。
【0130】
また、凸部33dの高さHに対して凹部31hの深さDが深く形成されており、凸部33dの上面と凹部31hの底面との間には一定の隙間Sが形成されている。このため、突出片33と接合面31cの間に充填されるろう材38に加えて、凸部33dと凹部33aの間にもろう材39が充填されている。
【0131】
また、凸部33dの傾斜角度と凸部33dの幅方向両側面に当接する凹部33aの内周両側面の傾斜角度とは、環状プレート32から環状プレート31に加わる回転方向の動力に応じて異なる傾斜角度に設定されている。
【0132】
具体的には、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力が大きい凸部33dの幅方向一側面A7および凹部31hの内周一側面B7の傾斜角度βは、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力が小さい凸部33dの幅方向他側面A8および凹部31hの内周他側面B8の傾斜角度αに対して小さくなっている。
【0133】
本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に駆動用モータ5が一方向に回転駆動されたときには、環状プレート32から環状プレート31に大きな動力Aが加わり、駆動用モータ5が他方向に回転駆動されたときには、環状プレート32から環状プレート31に動力Aよりも小さく、動力Aと反対方向の動力Bが加わることになる。
【0134】
そして、環状プレート32から環状プレート31に動力Aが加わったときには、環状プレート32からろう材38を介して環状プレート31に動力Aが伝達され、凸部33dの幅方向一側面A7と凹部31hの内周一側面B7の間に充填されたろう材39の弾性変形分の負荷が動力Aの反力として凸部33dに加わる。
【0135】
本実施の形態では、凸部33dの縦横比(W/H)が2以上になるように凸部33dを突出片33の先端から突出し、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力が大きい凸部33dの幅方向一側面A7および凹部31hの内周一側面B7の傾斜角度βを、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力が小さい凸部33dの幅方向他側面A8および凹部31hの内周他側面B8の傾斜角度に対して小さくしているため、凸部33dの傾斜面に加わる動力Aに対して動力A61が、動力A62、A63に分解され、この動力A61〜A63は、凸部33dの傾斜面に沿って分布することになる。
【0136】
このとき、凸部33dの基端部D7に動力A63による曲げモーメントが作用するが、この凸部33dの傾斜面に沿って分布される動力A63は、凸部33dの幅方向一側面A7および凹部31hの内周一側面B7の傾斜角度βが小さいほど小さいものとなるため、凸部33dの基端部D7に作用する曲げモーメントは非常に小さいものとなる。
【0137】
また、本実施の形態では、凸部33dの幅方向他側面A8および凹部31hの内周他側面B8の傾斜角度が、凸部33dの幅方向一側面A7および凹部31hの内周一側面B7の傾斜角度よりも大きいが、凸部33dの幅方向他側面A8からろう材39を介して凹部の内周他側面B8に伝達される動力Bは小さいので、動力B63も小さいものとなる。このため、ろう材38の弾性変形による反力によって凸部33dの幅方向他側面Aの基端部D8に加わる回転モーメントは小さい。
【0138】
このように本実施の形態では、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力に応じて、凸部33dの幅方向一側面A7および幅方向他側面A8の基端部D7、D8に加わる回転モーメントを小さくすることができるため、凸部33dが破損するのを防止することができ、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0139】
(第5の実施の形態)
図10は、本発明に係る接合焼結体および接合焼結体を備えたプラネタリキャリアの第5の実施の形態を示す図であり、第1の実施の形態と同一の構成には同一番号を付して説明を省略する。本実施の形態では、凸部と凹部の位置関係が第1の実施の形態と逆になっており、図10は、図4の矢印X方向から見たときに凸部と凹部の位置関係が逆になった場合の断面図である。
【0140】
図10において、環状プレート32の突出片33の先端部には凸部33eが設けられており、この凸部33eの縦横比(W/H)は2以上に設定されている。また、環状プレート31の接合面31cには凹部31iが設けられており、この凹部31iには凸部33eが嵌合するようになっている。
【0141】
また、凹部31iの内周一側面B9および内周他側面B10の傾斜角度β21、β22は、凸部33eの幅方向一側面A9および幅方向他側面A10の傾斜角度α21、α22よりも小さくなっている。すなわち、動力を伝達する環状プレート32に設けられた凸部33eの幅方向一側面A9および幅方向他側面A10の傾斜角度α21、α22は、環状プレート32から動力が伝達される環状プレート31に形成された凹部31iの内周一側面B9、B10の傾斜角度β21、β21よりも小さくなっており、凸部33eの上面と凹部31iの底面との間には一定の隙間Sが形成されている。このため、突出片33と接合面31cの間に充填されるろう材38に加えて、凸部33eと凹部33aの間にもろう材39が充填されている。
【0142】
また、凸部33eの幅方向一側面A9および幅方向他側面A10の傾斜角度β21、β21は、同じ傾斜角度であり、凹部31iの内周一側面B9および内周他側面B10の傾斜角度β21、β22は、同じ傾斜角度となっている。
【0143】
本実施の形態では、環状プレート32から環状プレート31に動力Aが加わったときには、環状プレート32からろう材38を介して環状プレート31に動力Aが伝達され、凸部33eの幅方向一側面A9と凹部33aの内周一側面B9の間に充填されたろう材39の弾性変形分の反力の負荷が動力Aとして凸部33eに加わる。
【0144】
このとき、凹部31iの傾斜面からろう材39に加わる動力Aに対して動力A71が、動力A72、A73に分解され、この動力A71〜A73は、凸部31dの傾斜面に沿って分布する。
【0145】
このとき、凸部33eの基端部D9に動力A73による曲げモーメントが作用するが、この凹部31iの傾斜面に沿って分布される動力A73は、凹部31iの幅方向一側面A9の傾斜角度β21が小さいほど小さいものとなるため、凸部33eの基端部D9に作用する曲げモーメントは非常に小さいものとなる。
【0146】
また、凸部33eの幅方向他側面B10からろう材39を介して凹部31iの内周他側面B10に伝達される動力Bは小さいので、動力B73も小さいものとなる。このため、凸部33eの幅方向他側面B10の基端部D10に加わる回転モーメントは、凸部33eの基端部D9に加わる回転モーメントよりも小さくなる。
【0147】
このように本実施の形態では、凸部33eの縦横比(W/H)が2以上になるように凸部33eを突出片33から突出し、動力を伝達する環状プレート32に設けられた凸部33eの幅方向一側面A9および幅方向他側面A10の傾斜角度α21、α22を、環状プレート32から動力が伝達される環状プレート31に形成された凹部31iの内周一側面B9、B10の傾斜角度β21、β21よりも小さくすることにより、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力に応じて、凸部33eと凹部31iの間に充填されるろう材39が弾性変形することにより、凸部33eの幅方向一側面A9および幅方向他側面A10の基端部D9、D10に加わる回転モーメントを小さくすることができる。このため、凸部33eが破損するのを防止することができ、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0148】
(第6の実施の形態)
図11は、本発明に係る接合焼結体および接合焼結体を備えたプラネタリキャリアの第6の実施の形態を示す図であり、第1の実施の形態と同一の構成には同一番号を付して説明を省略する。本実施の形態では、凸部と凹部の位置関係が第1の実施の形態と逆になっており、図11は、図4の矢印X方向から見たときに凸部と凹部の位置関係が逆になった場合の断面図である。
【0149】
図11において、環状プレート32の突出片33の先端部には凸部33fが設けられており、この凸部33fの縦横比(W/H)は2以上に設定されている。また、環状プレート31の接合面31cには凹部31jが設けられており、この凹部31jには凸部33fが嵌合するようになっている。
【0150】
また、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力が大きい凸部33fの幅方向一側面A11の傾斜角度α31および凹部33aの内周一側面B11の傾斜角度β31は、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力が小さい凸部33fの幅方向他側面A12の傾斜角度α32および凹部33aの内周他側面B12の傾斜角度β32に対して小さくなっている。
【0151】
また、凹部31jの内周一側面B11の傾斜角度β31は、凸部33fの幅方向一側面A11の傾斜角度α31よりも小さくなっているとともに、凹部31jの内周他側面B12の傾斜角度β32は、凸部33fの幅方向他側面A12の傾斜角度α32よりも小さくなっている。
【0152】
すなわち、動力を伝達する環状プレート32に設けられた凸部33fの幅方向一側面A11の傾斜角度α31は、環状プレート32から動力が伝達される環状プレート31に設けられた凹部31jの内周一側面B11の傾斜角度β31よりも小さくなっているとともに、環状プレート31に動力を伝達する凸部33fの内周他側面B32の傾斜角度β32は、環状プレート32から動力が伝達される凸部33fの幅方向他側面A32の傾斜角度α32よりも小さくなっている。このため、突出片33と接合面31cの間に充填されるろう材38に加えて、凸部31gと凹部31jの間にもろう材39が充填されている。
【0153】
本実施の形態では、環状プレート32から環状プレート31に動力Aが加わったときには、環状プレート32からろう材38を介して環状プレート31に動力Aが伝達され、凸部33fの幅方向一側面A11と凹部31jの内周一側面B11の間に充填されたろう材39の弾性変形分の反力の負荷が動力Aとして凸部33fに加わる。
【0154】
このとき、凹部31jの傾斜面に加わる動力Aに対する動力A81が、動力A82、A83に分解され、この動力A81〜A83は、凸部33fの傾斜面に沿って分布することになる。
【0155】
このとき、凸部33fの基端部D11に動力A83による曲げモーメントが作用するが、この凹部31jの傾斜面に沿って分布される動力A83は、凸部33fの幅方向一側面A11の傾斜角度α31が小さいほど小さいものとなるため、凸部33fの基端部D11に作用する曲げモーメントは非常に小さいものとなる。
【0156】
また、凸部33fの幅方向他側面A12の傾斜角度α32および凹部31jの内周他側面B12の傾斜角度β32は、凸部33fの幅方向一側面A11の傾斜角度α31および凹部31jの内周一側面B11の傾斜角度β31よりも大きいが、凸部33fの幅方向他側面A12からろう材39を介して凹部31jの内周他側面B12に伝達される動力Bは小さいので、動力B83も小さいものとなる。
このため、凸部33fの幅方向他側面B12の基端部D12に加わる回転モーメントは、凸部33fの基端部D11に加わる回転モーメントよりも小さくなる。
【0157】
このように本実施の形態では、凸部33fの縦横比(W/H)が2以上になるように凸部33fを突出片33から突出し、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力が大きい凸部33fの幅方向一側面A11の傾斜角度α31および凹部31jの内周一側面B11の傾斜角度β31を、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力が小さい凸部31fの幅方向他側面A12の傾斜角度α32および凹部31jの内周他側面B12の傾斜角度β12に対して小さく、さらに、動力を伝達する環状プレート32に設けられた凸部33fの幅方向一側面A11の傾斜角度α31を、環状プレート32から動力が伝達される環状プレート31に設けられた凹部31jの内周一側面B11の傾斜角度β31よりも小さくしている。
【0158】
このため、環状プレート32から環状プレート31に伝達される動力に応じて、凸部33fと凹部31jの間に充填されるろう材39が弾性変形することにより、凸部33fの幅方向一側面A11および幅方向他側面A12の基端部D11、D12に加わる回転モーメントを小さくすることができる。
このため、凸部33fが破損するのを防止することができ、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0159】
なお、上記各実施の形態では、環状プレート31を第1の焼結体から構成し、環状プレート32を第2の焼結体から構成しているが、環状プレート32を第1の焼結体から構成し、環状プレート31を第2の焼結体から構成してもよい。
また、上記各実施の形態では、縦横比(W/H)を2以上にしているが、縦横比(W/H)は、少なくとも1以上あればよい。
【0160】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0161】
以上のように、本発明に係る接合焼結体および接合焼結体を備えたプラネタリキャリアは、凸部が破損するのを防止することができ、凸部の強度を増すために凸部を大きくするのを不要にして、接合焼結体を小型化および軽量化することができるという効果を有し、一対の焼結体がろう付けによって接合された接合焼結体および接合焼結体を有するプラネタリキャリア等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】本発明に係る接合焼結体および接合焼結体を備えたプラネタリキャリアの第1の実施の形態を示す図であり、プラネタリキャリアを備えた動力伝達装置の構成図である。
【図2】本発明に係る接合焼結体および接合焼結体を備えたプラネタリキャリアの第1の実施の形態を示す図であり、図1の動力伝達装置の断面図の部分拡大図である。
【図3】本発明に係る接合焼結体および接合焼結体を備えたプラネタリキャリアの第1の実施の形態を示す図であり、プラネタリキャリアの斜視図である。
【図4】本発明に係る接合焼結体および接合焼結体を備えたプラネタリキャリアの第1の実施の形態を示す図であり、プラネタリキャリアの断面図である。
【図5】本発明に係る接合焼結体および接合焼結体を備えたプラネタリキャリアの第1の実施の形態を示す図であり、図4の矢印X方向から見た凸部および凹部の断面図である。
【図6】本発明に係る接合焼結体および接合焼結体を備えたプラネタリキャリアの第1の実施の形態を示す図であり、従来構造の凸部に加わる動力を示す図である。
【図7】本発明に係る接合焼結体および接合焼結体を備えたプラネタリキャリアの第2の実施の形態を示す図であり、図4の矢印X方向から見た凸部および凹部の断面図である。
【図8】本発明に係る接合焼結体および接合焼結体を備えたプラネタリキャリアの第3の実施の形態を示す図であり、図4の矢印X方向から見た凸部および凹部の断面図である。
【図9】本発明に係る接合焼結体および接合焼結体を備えたプラネタリキャリアの第4の実施の形態を示す図であり、図4の矢印X方向から見た凸部および凹部の断面図である。
【図10】本発明に係る接合焼結体および接合焼結体を備えたプラネタリキャリアの第5の実施の形態を示す図であり、図4の矢印X方向から見た凸部および凹部の断面図である。
【図11】本発明に係る接合焼結体および接合焼結体を備えたプラネタリキャリアの第6の実施の形態を示す図であり、図4の矢印X方向から見た凸部および凹部の断面図である。
【符号の説明】
【0163】
2 トランスミッションケース
31 環状プレート(第1のキャリアプレート、第1の焼結体)
31a シャフト孔(第1のシャフト孔)
31d、31f、31g 凸部
31c 接合面
31h、31i、31j 凹部
32 環状プレート(第2のキャリアプレート、第2の焼結体)
32a シャフト孔(第2のシャフト孔)
33 突出片
33a、33b、33c 凹部
33d、33e、33f 凸部
34 ピニオンシャフト
37 スプライン部
S1 サンギヤ
P1 ピニオンギヤ
Cr1 プラネタリキャリアCr
R1 リングギヤ
A1、A3、A5、A7、A9、A11 幅方向一側面
B1、B3、B5、B7、B9、B11 内周一側面
A2、A4、A6、A8、A10、A12 幅方向他側面
B2、B4、B6、B8、B10、B12 内周他側面
D1〜D12 基端部
α、α1、α2、α11、α12、α21、α22、α31、α32 傾斜角度
β、β1、β2、β11、β12、β21、β22、β31、β32 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の焼結体および第2の焼結体を有し、前記第1の焼結体から前記第2の焼結体に向かって突出する突出片の先端を、前記第2の焼結体の接合面にろう付けすることにより、前記第1の焼結体と前記第2の焼結体が一定の距離を隔てて接合される接合焼結体において、
前記突出片の先端に設けられた位置決め用の凹部または凸部と、前記第2の焼結体の接合面に設けられ、前記凸部または凹部に嵌合することにより、前記第1の焼結体と前記第2の焼結体の回転方向の位置決めを行う位置決め用の凸部または凹部とを備え、
前記凸部の高さをHとし、前記第1の焼結体および前記第2の焼結体の回転方向における前記凸部の幅をWとしたときの縦横比(W/H)が少なくとも1以上になるように前記凸部を構成し、
前記凸部の幅方向両側面の傾斜角度と前記凸部の幅方向両側面に当接する前記凹部の内周両側面の傾斜角度とを、前記第1の焼結体および前記第2の焼結体のいずれか一方から前記第1の焼結体および前記第2の焼結体のいずれか他方に伝達される動力に応じて異なる傾斜角度に設定したことを特徴とする接合焼結体。
【請求項2】
前記第1の焼結体および前記第2の焼結体の一方から前記第1の焼結体および前記第2の焼結体のいずれか他方に伝達される動力が大きい前記凸部の幅方向一側面および前記凹部の内周一側面の傾斜角度を、前記第1の焼結体および前記第2の焼結体の一方から前記第1の焼結体および前記第2の焼結体のいずれか他方に伝達される動力が小さい前記凸部の幅方向他側面および前記凹部の内周他側面の傾斜角度に対して小さくしたことを特徴とする請求項1に記載の接合焼結体。
【請求項3】
動力を伝達する前記第1の焼結体および前記第2の焼結体のいずれか一方に設けられた前記凸部の幅方向両側面または前記凹部の内周両側面の傾斜角度を、動力が伝達される側の前記第1の焼結体および前記第2の焼結体のいずれか他方に設けられた前記凹部の内周両側面または前記凸部の幅方向両側面の傾斜角度よりも小さくしたことを特徴とする請求項1に記載の接合焼結体。
【請求項4】
前記第1の焼結体および前記第2の焼結体の一方から前記第1の焼結体および前記第2の焼結体のいずれか他方に伝達される動力が大きい前記凸部の幅方向一側面および前記凹部の内周一側面の傾斜角度を、前記第1の焼結体および前記第2の焼結体の一方から前記第1の焼結体および前記第2の焼結体のいずれか他方に伝達される動力が小さい前記凸部の幅方向他側面および前記凹部の内周他側面の傾斜角度に対して小さくするとともに、動力を伝達する前記第1の焼結体および前記第2の焼結体のいずれか一方に設けられた前記凸部の幅方向両側面または前記凹部の内周両側面の傾斜角度を、動力が伝達される側の前記第1の焼結体および前記第2の焼結体のいずれか他方に設けられた前記凹部の内周両側面または前記凸部の幅方向両側面の傾斜角度よりも小さくしたことを特徴とする請求項1に記載の接合焼結体。
【請求項5】
前記凸部の高さに対して前記凹部の深さを深くすることにより、前記凸部の上面と前記凹部の底面との間に隙間を形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1の請求項に記載の接合焼結体。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1の請求項に記載の接合焼結体を有するプラネタリキャリアであって、
前記第1の焼結体が、放射方向内方に円周方向に離隔して設けられた複数の第1のシャフト孔を有する第1のキャリアプレートから構成されるとともに、前記第2の焼結体が放射方向内方に前記第1のシャフト孔に対向する第2のシャフト孔を有する第2のキャリアプレートから構成され、
前記第1のシャフト孔と前記第2のシャフト孔との間に架設された複数のピニオンシャフトと、前記ピニオンシャフトに対して回転自在に支持され、サンギヤおよびリングギヤに噛合されるピニオンギヤとを備え、前記第1のキャリアプレートまたは前記第2のキャリアプレートの放射方向外周部にトランスミッションケースにスプライン嵌合されるスプライン部が形成されることを特徴とするプラネタリキャリア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−37591(P2010−37591A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200857(P2008−200857)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】